説明

湯水混合水栓

【課題】閉弁後において吐水管内に熱い湯又は冷たい水が残ってしまい、次に水栓使用する際にその熱い湯又は冷たい水が吐水されてしまう問題を解決できる湯水混合水栓を提供する。
【解決手段】湯側バルブ25と水側バルブ26のそれぞれの開度を変化させることで吐水の温度調節及び流量調節を行う湯水混合水栓10において、湯側バルブ25,水側バルブ26のうち開弁状態で開度の大きい方をバルブ1,小さい方をバルブ2としたとき、バルブ1が速度vで閉方向に動作して閉弁するまでの所要時間tをバルブ1の開度に基づいて算出し、次にバルブ2が同じ時間tかけて閉弁するための動作速度をバルブ2の開度に基づいて算出し、バルブ1を速度vで、バルブ2を速度vで同時に閉弁方向に動作させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は湯水混合水栓に関し、詳しくは互いに独立して開度を調節可能な湯側バルブと水側バルブとを備えた湯水混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
湯水混合水栓の1種として、互いに独立して開度を調節可能な湯側バルブと水側バルブとを備え、それら湯側バルブと水側バルブのそれぞれの開度を変化させることで湯と水の混合比率を変化させて吐水の温度調節を行うとともに吐水の流量調節を行う湯水混合水栓が公知である。
例えば下記特許文献1にこの種の湯水混合バルブが開示されている。
【0003】
従来において、この種の湯水混合水栓にあっては、湯側バルブ及び水側バルブを開弁状態から閉弁させるに際して、湯側バルブ,水側バルブの開度とは関係無くそれらを最大速度で閉方向に動作させるようになしていた。
【0004】
しかしながらこのようにすると、例えば湯側バルブの開度が大、水側バルブの開度が小であるとき、図4に模式的に示しているように水側バルブが先に閉弁状態となり、湯側バルブが後に閉弁状態となることによってバルブの下流側、例えば吐水管内部に熱い湯が残ってしまう。
【0005】
この場合、比較的短い時間内で次に使用者が湯水混合水栓を使用し吐水を行ったときに、使用者の予期しない熱い湯が吐水されてしまうといった不都合を生じる。
また逆に水側バルブの開度が大、湯側バルブの開度が小であるとき、先に湯側バルブが閉弁状態となって水側バルブがその後で閉弁することとなり、吐水管に冷たい水が残ってしまう。
このときには、使用者が次に水栓を使用したときに予期せず冷たい水が吐水されてしまい、使用者に不快感を与えてしまう。
【0006】
尚、下記特許文献2にはこの種の問題を解決することを狙いとした湯水混合水栓が開示されているが、この特許文献2に開示のものは解決手段において本発明と異なっており、本発明とは別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−22704号公報
【特許文献2】実開昭53−131230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情を背景とし、閉弁後においてバルブの下流側に熱い湯又は冷たい水が残ってしまい、次に水栓使用する際にその熱い湯又は冷たい水がいきなり吐水されてしまうことによる不都合を解決することのできる湯水混合水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して請求項1のものは、湯側バルブと水側バルブ及びそれらを動作制御する制御部を備え、それら湯側バルブと水側バルブのそれぞれの開度を変化させることで湯と水の混合比率を変化させて吐水の温度調節を行うとともに吐水の流量調節を行う湯水混合水栓において、前記湯側バルブ及び水側バルブを開弁状態から閉弁させるに際して、該湯側バルブ,水側バルブのうち前記開弁状態で開度の大きい方をバルブ1,小さい方をバルブ2としたとき、前記制御部は、該バルブ1が速度vで閉方向に動作して閉弁するまでの所要時間tを該バルブ1の開度に基づいて算出し、次に前記バルブ2が該時間tかけて閉弁するための動作速度を該バルブ2の開度に基づいて算出し、該バルブ1を速度vで、該バルブ2を速度vで同時に閉方向に動作させるようにそれら湯側バルブ,水側バルブを動作制御するものとなしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0010】
以上のような本発明によれば、湯側バルブ及び水側バルブを開弁状態から閉弁させるに際し、開弁状態における湯と水の混合比率を実質的に保ったまま、湯側バルブ及び水側バルブを閉方向に動作させて湯側バルブ及び水側バルブを同時に閉弁させることが可能となり、従って湯側バルブ及び水側バルブの何れをも閉弁させた後においてバルブの下流側の吐水管内部に、それまで使用していた混合水とほぼ同じ温度の混合水を残すことが可能となり、次に使用者が再び湯水混合水栓を使用して吐水させたときに使用者の予期に反して熱い湯が出たり、或いは冷たい水が出たりするのを回避し得て、湯水混合水栓を快適に使用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の湯水混合水栓の図である。
【図2】バルブを同時に閉弁させる際の湯水の混合比率の変化及び湯側バルブ,水側バルブの動作速度の関係を表した図である。
【図3】バルブの一形態例を示した図である。
【図4】本発明の背景説明のための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の湯水混合水栓(自動水栓)で、12は湯水混合水栓10における吐水管である。
吐水管12は、カウンタ上面等横設された取付面14から起立する形態で設けられている。
吐水管12は、ここでは全体として逆U字状のグースネック形状をなしており、その先端に吐水口16が備えられている。
【0013】
また吐水管12には、吐水口16の近傍位置且つ吐水管12の前面に、吐止水の操作を行うスイッチ18が備えられている。
スイッチ18は非接触式のスイッチであって、使用者がそこに手をかざすとスイッチ18がこれを感知して、吐水口16から吐水させる。
【0014】
この湯水混合水栓10では、吐水口16から吐水させた後、使用者がスイッチ18の前方から手を外しても吐水が継続され、そしてその吐水継続状態の下で再び使用者がスイッチ18の前方に手をかざすと、スイッチ18による手検知によって吐水口16からの吐水が停止される。
即ちこの実施形態において、スイッチ18はこれを操作するごとに吐水と止水とを交互に行わせる交互スイッチとされている。
【0015】
図1において、20は熱湯を供給する給湯路、22は冷水を供給する給水路で、24はそれら給湯路20,給水路22を通じて送られて来た湯と水とを混合状態で吐水管12に供給する混合水路である。
給湯路20と給水路22とには、それぞれ独立して開度が調節可能な湯側バルブ25,水側バルブ26が設けられている。
ここで湯側バルブ25は、弁部28とその駆動部となるモータ(ここではステッピングモータ)30とを有している。
水側バルブ26も同様に弁部32とその駆動部となるモータ(ステッピングモータ)34とを有している。
【0016】
36は、それら湯側バルブ25,水側バルブ26を動作制御する制御部で、これら湯側バルブ25,水側バルブ26のモータ30,34がそれぞれ制御部36に電気的に接続されている。
またこの制御部36には上記のスイッチ18が電気的に接続されている。
【0017】
この実施形態では、湯側バルブ25,水側バルブ26の各モータ30,34にパルス供給すると、モータ30,34がステップ動作して弁部28,32の開度をステップ動作分だけ変化させる。
そして湯側バルブ25,水側バルブ26の開度に応じた量で給湯路20,給水路22からの湯,水が混合水路24へと到って、それら湯,水の混合水が混合水路24を経て吐水口16から吐水される。
【0018】
この実施形態では、湯側バルブ25,水側バルブ26のそれぞれの開度に応じて湯と水との混合比率が定まり、そしてその混合比率によって吐水口16からの吐水の温度が決定される。
また湯側バルブ25,水側バルブ26の開度をそれぞれ大小変化させることによって吐水口16からの吐水の流量が増大又は減少変化せしめられる。
更に湯側バルブ25,水側バルブ26をそれぞれ閉弁させることで止水が行われる。
尚、吐水口16からの吐水の温度及び吐水の流量は図示を省略する設定部で設定され、制御部36はこれに基づいて湯側バルブ25,水側バルブ26のそれぞれの開度を制御する。
【0019】
この実施形態では、湯側バルブ25及び水側バルブ26を開弁状態から閉弁させる際、その開弁状態における湯と水の混合比率を保ったまま、湯側バルブ25及び水側バルブ26を閉方向に動作させて、湯側バルブ25及び水側バルブ26を同時に閉弁させる。
そのように制御部36が湯側バルブ25及び水側バルブ26を動作制御する。詳しくはそれらのモータ30,34を動作制御する。
【0020】
図2(イ)はこれを模式的に表している。
図の例は、開弁状態において湯側バルブ25の開度が水側バルブ26の開度の2倍であって、湯と水との混合比率が2:1の場合の例である。
この実施形態では、湯側バルブ25と水側バルブ26との開度を2:1に保ったまま、即ち湯と水との混合比を2:1に保ったまま、湯側バルブ25と水側バルブ26とが閉方向に動作し、最終的にそれら湯側バルブ25及び水側バルブ26が閉弁する。
このとき湯側バルブ25と水側バルブ26とは同時に閉弁する。
【0021】
図2(ロ)は、制御部36において上記のようにして湯側バルブ25,水側バルブ26を動作制御するための具体的な方法を示している。
ここでは開弁状態にある湯側バルブ25を速度vで閉弁させるまでの所要時間tを、現在の湯側バルブ25の開度(開度はモータ30に供給したパルス数で決定される)に基づいて算出する。
そして開度のより小さい水側バルブ26が同じ時間tかけて閉弁するための水側バルブ26の動作速度vを現在の水側バルブ26の開度に基づいて算出する。
そして湯側バルブ25,水側バルブ26をそれぞれv,vの速度で同時に閉方向に動作させる。
このようにすると湯側バルブ25,水側バルブ26が同じ開度の比率を保ったまま、即ち同じ湯水混合比を保ったまま閉方向に動作し、最終的に同時にそれらが閉弁する。
尚、ウォーターハンマー防止のため湯側バルブ25,水側バルブ26をそれぞれ閉弁直前で減速しても良い。
この場合には閉弁間際で湯と水の混合比率が僅かに変化するが、吐水管内に残る混合水温度はそのことによって大きく影響されず、実質的には減速を行わないときの混合水温度と同じような温度となる。
【0022】
以上は湯側バルブ25,水側バルブ26のそれぞれが開弁状態の下で、湯側バルブ25の開度が水側バルブ26の開度よりも大である場合の例であるが、逆に水側バルブ26の開度が大で、湯側バルブ25の開度が小である場合においても、水側バルブ26の動作速度が湯側バルブ25の動作速度よりも速くなる点を除いて基本的に上記と同様である。
【0023】
図3は、制御部36において湯側バルブ25,水側バルブ26を同時に閉弁させる際の各バルブの動作速度の算出内容を示している。
図中ステップS10は、湯側バルブ25と水側バルブ26との開度の大小を判定するためのステップで、このステップS10において湯側バルブ25が水側バルブ26に対して開度が大であると判定されたときには、湯側バルブ25を最大速度で閉方向に動作するものとして(最大速度で動作させることで使用者の操作感を良好とし、また無駄水の発生を抑えることができる)、また現在の湯側バルブ25の開度を閉弁に到るまでの移動量として(ステップS12,S14)、閉弁に到るまでの時間tをステップS16で算出する。
そして水側バルブ26の開度を閉弁に到るまでの必要な移動量として、その水側バルブ26が時間tをかけて閉弁するための水側バルブ26の動作速度を求める。
【0024】
一方、ステップS10において水側バルブ26の開度が湯側バルブ25の開度よりも大であると判定されたときには、水側バルブ26が最大動作速度で動作したときに閉弁に到るまでの時間tを求め、そして湯側バルブ25の現在の開度に基づいて湯側バルブ25が時間tかけて閉弁に到るに必要な動作速度を求める(ステップS20,S22,S24,S26)。
【0025】
以上のような本実施形態によれば、湯側バルブ25及び水側バルブ26の何れをも閉弁させた後において、バルブの下流側の吐水管12内部にそれまで使用していた混合水とほぼ同じ温度の混合水が残ることとなり、従って次に使用者が再び湯水混合水栓10を使用して吐水させたときに使用者の予期に反して熱い湯が出たり、或いは冷たい水が出たりするといった不都合を生じず、湯水混合水栓10を快適に使用することができる。
【0026】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態の湯水混合水栓はあくまで一例であって、本発明は他の様々な形態の湯水混合水栓に適用可能である等、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 湯水混合水栓
25 湯側バルブ
26 水側バルブ
36 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯側バルブと水側バルブ及びそれらを動作制御する制御部を備え、それら湯側バルブと水側バルブのそれぞれの開度を変化させることで湯と水の混合比率を変化させて吐水の温度調節を行うとともに吐水の流量調節を行う湯水混合水栓において、
前記湯側バルブ及び水側バルブを開弁状態から閉弁させるに際して、該湯側バルブ,水側バルブのうち前記開弁状態で開度の大きい方をバルブ1,小さい方をバルブ2としたとき、前記制御部は、該バルブ1が速度vで閉方向に動作して閉弁するまでの所要時間tを該バルブ1の開度に基づいて算出し、次に前記バルブ2が該時間tかけて閉弁するための動作速度を該バルブ2の開度に基づいて算出し、該バルブ1を速度vで、該バルブ2を速度vで同時に閉方向に動作させるようにそれら湯側バルブ,水側バルブを動作制御するものとなしてあることを特徴とする湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−33091(P2011−33091A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178300(P2009−178300)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】