説明

湾曲した織物を使用したブラジャーの肩紐

【課題】 ブラジャーの着用時に、肩紐が肩からずり落ちないようにする。
【解決手段】 肩紐1は伸縮性の織物10からなり、織物10は、表組織と裏組織からなる。
表組織は、表経糸11と緯糸12が交差して形成される。裏組織は、裏経糸13,14がそれぞれ緯糸12と交差して形成される。裏経糸13は、二つの裏経糸13A,13Bがそれぞれ緯糸12と異なる交差構造を有する。さらに、裏経糸14は、二つの裏経糸14A,14Bがそれぞれ緯糸12と異なる交差構造を有する。裏組織がこのような交差構造となることにより、裏組織には凹凸が形成される。
伸縮性を有する共通糸15を、緯糸12と交差するように配置することによって、織物10が伸縮性を有する。
織物10でできた肩紐1を有するブラジャー2を着用することにより、肩紐のずり落ちを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物を使用したブラジャーの肩紐に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブラジャー着用時に肩紐がずれることを防ぐため、肩紐を湾曲させたブラジャーがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−38315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、伸縮性のある経編生地を円弧状に切断して、ブラジャーの肩紐としている。このため、生地を円弧状に切断する必要がある。
さらに、編物であるため、生地の表面に凹凸がなく滑らかであり、滑りやすいという問題がある。
【0005】
また、肩紐を湾曲させるために、織物の経糸の太さを変えたり、生地を張り合わせて幅方向の緊締力を変えたものもあるが、これらの肩紐では幅方向において厚さが異なり、ブラジャーの着用時にアウターに響きやすいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
表経糸と、表経糸と交差する緯糸からなる、表組織と、裏経糸と、裏経糸と交差する緯糸からなる、裏組織と、緯糸と交差する伸縮性の共通糸と、からなる伸縮性織物の肩紐において、表経糸は全て同じ太さであり、裏経糸は全て同じ太さであり、共通糸は全て同じ太さであり、且つ、緯糸は全て同じ太さであって、肩紐の幅方向一端側の表経糸及び裏経糸を密に配置し、幅方向他端側の表経糸及び裏経糸を粗に配置することにより、幅方向に湾曲させたことを特徴とする、肩紐を使用する。
【0007】
上記の肩紐において、肩紐の幅方向一端側の表経糸と、幅方向他端側の表経糸は、幅方向一端側の表経糸1.2から1.3に対して幅方向他端側の表経糸1の割合で配置されていることを特徴とする、肩紐を使用する。
【発明の効果】
【0008】
肩の傾斜の首側に伸縮率の高いストラップ幅側端部が来るように配置し、外側に伸縮率の低いストラップ幅側端部が来るように配置することにより、形成されたカーブによって着用時のストラップのずり落ちを防ぎ、さらに、肩にかかる圧迫感を軽減し、肩にかかる圧力を一定に保つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の平面図である。
【図2】本発明の実施形態の背面図である。
【図3】本発明の織構造の平面図である。
【図4】本発明の織物を長さ方向に沿った任意の線で切断し、断面を簡略化した図である。
【図5】本発明の織組織の組織図である。
【図6】本発明の肩紐を使用したブラジャーを着用した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示されているのは、本発明の実施形態である肩紐1である。肩紐1は、織物10からなり、幅方向(図1中、横方向)において緊締力が異なり、幅方向に湾曲している。
【0011】
図2は、図1の肩紐1の反対側を示しており、肩紐1を使用したブラジャーの着用時に、肌に接する側である。肌に接する側の肩紐1の表面には凹凸が形成され、ブラジャー着用時にすべることを防いでいる。
【0012】
図3は、織物である肩紐1の織構造の組織図である。肩紐1に使用される織物10の表組織は袋組織、裏組織は混合組織からなる。本発明では、織物10の表面側を表組織、裏面側を裏組織というものとする。肩紐1においては、裏組織が肌に接する側となる。
【0013】
まず、表組織について説明する。
表組織は表経糸11Aと表経糸11Bの組織からなる。
表組織の表経糸11Aと11Bは、ナイロンフィラメント又はナイロン加工糸からなる。緯糸12も、同様にナイロンフィラメントからなる。表経糸11Aと11Bは、緯糸12と略直角に交差する。図4に示されているように、織物10の表組織においては、表経糸11Aと11Bが緯糸12に対し、3回上がった後、1回下がる交差を繰り返す構造となっており、表経糸11Aと11Bは、織物10の長さ方向において、2つ位相がずれている。
なお、織物10において使用される表経糸11Aと11Bは、同じ太さで同じパワーを有する。なお、織物10の幅方向両端の2本の表経糸を異なる太さとして、糸浮きを防止してもよい。同様に、緯糸12も、全て同じ太さで同じパワーを有する。なお、表経糸11Aまたは11Bの一部を、他の表経糸とは異なる66ナイロン加工糸としてカーブの方向が認識できるようにしてもよい。
【0014】
次に、裏組織について説明する。
裏組織は、緯糸12との交差構造の異なる裏経糸13A、13Bを使った組織と、緯糸12との交差構造の異なる裏経糸14A、14Bを使った組織からなり、表面に凹凸を形成する。
裏組織の各経糸13,14は、ナイロン加工糸からなる。各裏経糸13,14は緯糸12と略直角に交差する。なお、織物10において使用される各裏経糸13,14は、全て同じ太さで同じパワーを有する。同様に緯糸12も全て同じ太さで同じパワーを有する。
【0015】
図4に示されているように、裏組織では、裏経糸13Aは緯糸12に対し、2回上がった後、2回下がり、さらに2回上がった後、5回下がり、2回上がった後、2回下がり、2回上がった後、7回下がる。裏経糸13Aと緯糸12は、このような交差構造を繰り返す。裏経糸13Bは緯糸12に対し、2回上がった後、9回下がり、さらに2回上がった後、11回下がる。裏経糸13Bと緯糸12は、このような交差構造を繰り返す。
【0016】
さらに、裏経糸14Aは緯糸12に対し、2回上がった後、2回下がり、さらに2回上がった後、7回下がり、2回上がった後、2回下がり、2回上がった後、5回下がる。裏経糸14Aと緯糸12は、このような交差構造を繰り返す。裏経糸14Bは緯糸12に対し、2回上がった後、9回下がり、さらに2回上がった後、11回下がる。裏経糸14Bと緯糸12は、このような交差構造を繰り返す。
【0017】
裏組織の経糸13,14は、織物10の幅方向(図3の左右方向)に13A,13B,13B,13A,14A,14B,14B,14Aの順に並ぶ。このような並びとすることにより、裏組織の表面に凹凸を形成することができる。
【0018】
表経糸11と裏経糸13は、上から見た状態で、表糸1本配置した後、裏経糸1本を配置し、さらに表経糸2本を織物10の幅方向に配置し、同様に、表経糸11と裏経糸14は、上から見た状態で表糸1本配置した後、裏経糸1本を配置し、さらに表経糸2本を織物10の幅方向に配置する。さらに、緯糸12は、上から見た状態で織物10の長さ方向に配置される。
【0019】
また、表組織と裏組織の共通糸15が適宜配置される。図3においては、表経糸11と裏経糸13が合わせて4本につき共通糸15が1本の割合で配置される。同様に、表経糸11と裏経糸14が合わせて4本につき共通糸15が1本の割合で配置される。共通糸15は、緯糸12に対して1回あがった後、1回下がる。
共通糸15は、ポリウレタン糸であり、経糸や緯糸に比べると伸縮性を有する。よって、共通糸15を配置することにより、織物10が伸縮性を有するようになる。なお、共通糸15も全て同じ太さである。
本実施形態では、表経糸11と裏経糸13が合わせて4本、表経糸11と裏経糸14が合わせて4本につき共通糸15を1本配置しているが、この構成でなくてもよいのはもちろんである。
なお、図4は、表経糸11、裏経糸13,14、共通糸15と緯糸12の交差構造を理解するための図であって、実際の断面がこのようになっているわけではない。表経糸11、裏経糸13,14、共通糸15は、表組織、裏組織においてそれぞれ略同一平面上にあり、緯糸12は全て略同一平面上にある。
【0020】
また、緯糸12のほつれを防ぐため、織物10の幅方向の一端に、不図示の絡み糸を経糸と同じ方向に設けている。絡み糸は、緯糸12と同時に編みこまれ、緯糸が解けないようになっている。解れ防止用糸としては、絡み糸を用いる以外に、熱融着糸を用いてもよい。織物10の幅方向の一端に、不図示の熱融着糸を経糸と同じ方向に設けて緯糸12と交差させ、熱圧着によって緯糸12と一体化させる。
【0021】
以上のような構成の織物10において、幅方向の一端側の表経糸11、裏経糸13,14を密に配置し、幅方向他端側のそれらの糸を粗に配置する。このようにすることによって、一端側と他端側のパワーが異なり、パワーの弱い他端側に織物が湾曲する。一端側の表経糸11、裏経糸13,14が1.2から1.3に対し、他端側の表経糸11、裏経糸13,14が1の割合であることが好ましいが、1.27:1の割合であれば最適である。
【0022】
このような構成にすることにより、一端側と他端側のパワー差を4から6%となり、所望の湾曲した織物を得ることができる。
【0023】
この織物10からできた肩紐1をブラジャー2に着用すると、図6の状態となる。肩紐1は40センチの長さに対して、幅方向におおよそ2から3センチ湾曲する。さらに、肩紐1の肌側には、前述のように凹凸が形成されている。
【符号の説明】
【0024】
1 ブラジャーの肩紐
2 ブラジャー
10 織物
11 表経糸
12 緯糸
13 裏経糸
14 裏経糸
15 共通糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表経糸と、該表経糸と交差する緯糸からなる、表組織と、
裏経糸と、該裏経糸と交差する緯糸からなる、裏組織と、
前記緯糸と交差する伸縮性の共通糸と、
からなる伸縮性織物の肩紐において、
前記表経糸は全て同じ太さであり、前記裏経糸は全て同じ太さであり、前記共通糸は全て同じ太さであり、且つ、前記緯糸は全て同じ太さであって、
前記肩紐の幅方向一端側の前記表経糸及び前記裏経糸を密に配置し、幅方向他端側の前記表経糸及び前記裏経糸を粗に配置することにより、
幅方向に湾曲させたことを特徴とする、肩紐。
【請求項2】
前記肩紐の幅方向一端側の前記表経糸と、幅方向他端側の前記表経糸は、該幅方向一端側の該表経糸1.2から1.3に対して該幅方向他端側の該表経糸1の割合で配置されていることを特徴とする、
請求項1記載の肩紐。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96048(P2013−96048A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254380(P2011−254380)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(593104039)トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社 (26)
【Fターム(参考)】