説明

湿式現像剤

【課題】保管安定性と定着性を確保しながら、トナー粒子の帯電性を調整することの可能な湿式現像剤を提供すること。
【解決手段】少なくとも着色剤とバインダー樹脂とからなるトナー粒子を高分子分散剤を用いて不揮発性のキャリア液に分散してなる湿式現像剤である。高分子分散剤はピロリドン基を有し、キャリア液は一般式(RCOO)M(Rは置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、Mは2価の金属を表す。)で表される金属セッケンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複写機、プリンタ、デジタル印刷機等の湿式電子写真方式を用いた画像形成装置に用いる湿式現像剤に関する
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成においては、一般的には、感光体等の静電潜像担持体に原稿画像や画像データに応じた画像露光をする等して静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して可視トナー像とし、そのトナー像を記録材に転写定着させて目的とする画像を得ている。
【0003】
現像方式は乾式現像法と湿式現像法に分けることができる。乾式現像法は、現像剤としてトナー又はトナーに磁性等を有するキャリアを加えたものを用いる。乾式トナーには、通常、顔料とバインダー樹脂を主要成分とし、必要に応じて荷電制御剤、導電制御剤、可塑剤、離型剤等が内添又は外添されたものが用いられている。一方、湿式現像法では、電気絶縁性の分散媒(キャリア液)中に、顔料とバインダー樹脂を主要成分とするトナー粒子及び荷電制御剤、分散安定剤等を分散させた液体現像剤が用いられている。湿式現像剤に用いるトナー粒子は、大気中に逃散する恐れがないため、微細にすることができ、平均粒径がサブミクロンのものも実用可能である。そのため、高解像度を有する画像が得られる、トナー像の定着が容易である等の利点を有している。
【0004】
湿式現像法では、帯電したトナー粒子が静電潜像担持体上の静電潜像に静電的に付着することにより現像が行われる。トナー粒子の帯電性を制御するために、従来、金属セッケン、脂肪酸等の荷電調整剤を添加する方法が知られている。(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特表2007−505953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、荷電調整剤のみでトナー粒子の帯電性を制御しようとすると、荷電調整剤の添加量が増大して、定着性が低下する。一方、分散剤は、現像剤の保管安定性を確保するために添加されるが、添加量を増やすとトナー粒子の帯電量が増加する。そのため、分散剤の添加量を変えることによってもトナー粒子の帯電性を制御することが可能である。しかし、分散剤を過剰に添加すると、トナー粒子にキャリア液が保持され易くなるため、定着性が低下するという問題がある。また、帯電量が増加するとトナー粒子が感光体等のトナー担持体に強固に付着するようになるため、トナー担持体に対するクリーニング性が低下し、クリーニングしても残留トナーが増加するという問題もある。したがって、保管安定性と定着性を確保しながら、トナー粒子の帯電性を調整するのが困難であるのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決し、保管安定性と定着性を確保しながら、トナー粒子の帯電性を調整することの可能な湿式現像剤を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題点を解決するため、本発明の湿式現像剤は、少なくとも着色剤とバインダー樹脂とからなるトナー粒子を高分子分散剤を用いて不揮発性のキャリア液に分散してなる湿式現像剤であって、高分子分散剤はピロリドン基を有し、キャリア液は一般式(RCOO)M(Rは置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、Mは2価の金属を表す。)で表される金属セッケンを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、上記金属セッケンに、炭素数が5〜15の脂肪酸の金属塩を用いることができる。
【0009】
また、上記バインダー樹脂に、酸価20mgKOH/g以上のポリエステル樹脂を用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピロリドン基を有する高分子分散剤を用いるとともに、荷電調整剤として一般式(RCOO)M(Rは置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、Mは2価の金属を表す。)で表される金属セッケンを用いるようにしたので、保管安定性と定着性を確保しながら、トナー粒子の帯電性を調整することは可能である。ピロリドン基を有する高分子分散剤は、少量の添加でも保管安定性を確保できること、そして金属セッケンが定着性に影響を与えることなくトナー粒子の帯電性の調整が可能であることによると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の湿式現像剤は、少なくとも着色剤とバインダー樹脂とからなるトナー粒子を高分子分散剤を用いて不揮発性のキャリア液に分散してなる湿式現像剤であって、高分子分散剤はピロリドン基を有し、キャリア液は一般式(RCOO)M(Rはアルキル基、Mは2価の金属を表す。)で表される金属セッケンを含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る湿式現像剤は、少なくともキャリア液、トナー粒子、高分子分散剤を含むものである。
(キャリア液)
キャリア液は、不揮発性で、誘電率が3以下の電気的絶縁性が高い溶媒を用いることができる。例えば、臭気、無公害性、コストの点から、流動パラフィン、シリコンオイル、動植物油、鉱物油等を用いることができるが、流動パラフィンが好ましい。なお、本発明において不揮発性の溶媒とは、特に断らない限り、引火点70℃以上の溶媒である。
【0013】
(トナー粒子)
本発明に用いるトナー粒子は少なくとも着色剤とバインダー樹脂を含むものである。
バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂であり、実質的にキャリア液に溶解しないものであれば特に限定されない。特にポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂はシャープメルト性を有しており、保管安定性と定着性の両立を図ることが可能である。
【0014】
具体的に、ポリエステル樹脂とは多塩基酸と多価アルコールの重縮合によって得られるものをいう。多塩基酸として、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びその酸無水物、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、そしてトリメリット酸である。
【0015】
多価アルコールとしては、多価アルコールとしては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール等のプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、4−ブタンジオール等のブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1、6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール(脂肪族グリコール)及びこれらのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール等のビスフェノール類及びこれらのアルキレンオキサイド付加物のフェノール系グリコール類、単環或いは多環ジオール等の脂環式及び芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール等を挙げることができる。これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0016】
以上の多塩基酸と多価アルコールを重縮合することにより所望のポリエステル樹脂を得ることができる。重縮合の方法としては、従来公知の重縮合の方法を用いることができる。原料モノマーの種類によっても異なるが、一般的には150℃〜300℃程度の温度下で行う。
【0017】
また、雰囲気ガスとして不活性ガスを用いたり、各種の溶媒を使用したり、反応容器内圧力を常圧又は減圧にする等、任意の条件で行うことができる。反応促進のためにエステル化触媒を用いてもよい。エステル化触媒としては、テトラブチルジルコネート、ジルコニウムナフテネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、3/1しゅう酸第1スズ/酢酸ナトリウムのような金属有機化合物等を使用できるが、生成物であるエステルを着色しないものが好ましい。また、アルキルホスフェイト、アリルホスフェイト等を触媒又は色相調整剤として使用してもよい。
【0018】
生成物であるポリエステル樹脂の分子量を制御するためには、重合温度、反応系圧力、反応時間等を調整すればよい。また、反応させるカルボン酸とアルコールとのモル比、重合体の分子量等により酸価を制御することができる。分子量は重量平均分子量(Mw)が
3000〜100000が好ましく、その下限を下回ると保管性が悪化し、その上限を超えると熱による溶融が困難となる。
【0019】
ポリエステル樹脂の酸価は、20mgKOH/g以上が好ましい。より好ましくは、20〜80mgKOH/gである。20mgKOH/g以上の酸価を有するポリエステル樹脂は、ピロリドン基を有する高分子分散剤とともに用いると、保管安定性と定着性を向上させることができるからである。
【0020】
本発明の現像剤に用いる着色剤には公知の顔料や染料を用いることができる。
具体的には、ファーネストブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、C.I.ピグメントブラック、オルトアニリンブラック、トルイジンオレンジ、パーマネントカーミンFB、ファーストイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、C.I.ピグメントブルー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントイエロー、ジオキサンバイオレット、ピクトリアピュアブルー、アルカリブルートナー、アルカリブルーRトナー、ファーストイエロー10G、オルトニトロアニリンオレンジ、トルイジンレッド、バリウムレッド2B、カルシウムレッド2B、ピグメントスカーレッド3Bレーキ、アンソシン3Bレーキ、ローダミン6Bレーキ、メチルバイオレットレーキ、ベーシックブルー6Bレーキ、ファーストスカイブルー、レフレックスブルーG、ブリリアントグリーンレーキ、フタロシアニングリーンG、紺青、群青、酸化鉄粉、亜鉛華、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、アルミナホワイト、アルミニウム粉、昼光蛍光顔料、パール顔料等を挙げることができる。
【0021】
また、着色剤の分散性を向上させるため、表面処理や表面修飾等により表面に、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、アミド基等の官能基を付与した着色剤を用いることもできる。
【0022】
着色剤の配合量は、バインダー樹脂100重量部に対して3〜50重量部、好ましくは5〜30重量部である。3重量部より少ないと所望の濃度が得られず、50重量部より多いとバインダー樹脂への分散性や定着性を損なう恐れがあるからである。
【0023】
(高分子分散剤)
高分子分散剤には、ピロリドン基を有するものを用いることが好ましい。例えば、N−ビニルピロリドンの単独重合体や(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体等を挙げることができるが、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0024】
高分子分散剤をトナー粒子100重量部に対して0.5〜100重量部、より好ましくは1〜20重量部添加することができる。0.5重量部より少ないと分散性が低下し、100重量部より多いとキャリア液がトナー粒子に浸透し易くなり、定着性が低下する。
【0025】
(金属セッケン)
金属セッケンには、一般式(RCOO)M(Rは置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、Mは2価の金属を表す。)で表される金属セッケンを用いることができる。2つのRは、同じでも異なっていても良い。また、Rは直鎖でも分岐鎖でも環状構造を含むものでも良い。好ましくは、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、リシノレイン酸、リノレイン酸、ベヘニン酸、エルカ酸等の単体脂肪酸、牛脂脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等の炭素数4以上の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸と、Ca、Ba、Mg等のアルカリ土類金属、Ti、Zn、Cu、Mn、Zr、Pb、Co、Fe等の2価金属との塩を挙げることができる。これらを1種又は2種以上混合して用いることもできる。さらに好ましくは、炭素数5〜15の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸と上記の金属との塩である。さらに、好ましくはオクチル酸と上記金属との塩、さらに好ましくはオクチル酸カルシウムである。
【0026】
金属セッケンの添加量は、トナー粒子100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、その下限を下回るとクリーニング性が低下し、その上限を超えると帯電性が悪化する。
【0027】
(現像剤の製造)
上記のバインダー樹脂と上記の着色剤等からなる着色混練物をカッターミル、ジェットミル等を用いて粗粉砕し、着色剤がその二次粒径が50nm〜1μm、好ましくは50nm〜300nmに分散された粗粉砕トナーを得る。この粗粉砕トナーに対し、さらに高分子分散剤を含むキャリア液中で湿式粉砕を施し、トナー粒子の体積平均粒径が0.1〜10μm程度、好ましくは0.5〜5μm程度になるまで微粉砕して濃厚液体現像剤を得る。このようにして得られた濃厚液体現像剤を、必要に応じて、荷電制御剤等の添加剤等を含むキャリア液で適当な濃度になるまで希釈・分散処理をして液体現像剤を得る。
【実施例】
【0028】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例中「部」とあるのは特に断らない限り「重量部」を表し、「Mw」とあるのは「重量平均分子量」を表し、「Mn」とあるのは「数平均分子量」を表し、「Tg」とあるのは「ガラス転移温度」を表す。
【0029】
以下の実施例において、Mw及びMnは、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィーの結果から算出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフポンプ TRI ROTAR−V型(日本分光社製)、紫外分光検出器 UVIDEC−100−V型(日本分光社製)、50cm長さのカラム Shodex GPC A−803(昭和電工社製)を用いて行い、そのクロマトグラフィーの結果から、被検試料の分子量をポリスチレン換算Mw及びMnとして求めた。なお、被検試料はバインダー樹脂0.05gを20mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させたものを用いた。
【0030】
Tgは、示差走査熱量計 DSC−20(セイコー電子工業(株)製)を用い、試料量35mg、昇温速度10℃/minの条件で測定した。酸価は、JIS K5400法に基づいて測定した。
【0031】
(ポリエステル樹脂の製造)
製造例1
還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を備えた丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を1600部とテレフタル酸を790部、トリメリット酸100部を入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮合又は脱アルコール重縮合を行った。生成したポリエステル樹脂の酸価又は反応溶液の粘度が所定の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエステル樹脂Aを得た。
【0032】
得られたポリエステル樹脂Aは、Mw=7000、Mn=2200、Tg=68.3℃、酸価=27.0mgKOH/gであった。
【0033】
製造例2
還流冷却器、水・アルコール分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を備えた丸底フラスコに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を1600部とビスフェノールAエチレンオキサイド付加物320部とテレフタル酸を790部、トリメリット酸200部を入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、200〜240℃の温度で脱水重縮合又は脱アルコール重縮合を行った。生成したポリエステル樹脂の酸価又は反応溶液の粘度が所定の値になったところで反応系の温度を100℃以下に下げ、重縮合を停止させた。このようにして熱可塑性ポリエステル樹脂Bを得た。
【0034】
得られたポリエステル樹脂Bは、Mw=12000、Mn=3200、Tg=78.3℃、酸価=47.0mgKOH/gであった。
【0035】
(現像剤の製造)
実施例1
ポリエステル樹脂A 100重量部と銅フタロシアニン15重量部とを混合し、ヘンシェルミキサーにて十分混合し、二軸押出混練機で溶融混合後、冷却しその後粗粉砕した。そしてジェット粉砕機にて微粉砕して平均粒径6μmのトナー粒子を得た。
【0036】
このトナー粒子25重量部に高分子分散剤としてV−216(ISP社製、ポリビニルピロリドン)を1重量部、オクチル酸カルシウム(炭素数8のアルキル基を有する金属セッケン)を0.2重量部、流動パラフィンを75重量部(引火点200℃)、ジルコニアビーズを100重量部混合し、サンドミルにて120時間攪拌し、現像剤を得た。現像剤中のトナー粒子の平均粒径は2.6μmであった。
【0037】
実施例2
ポリエステル樹脂B 100重量部とカーボンブラック(MA−100、三菱化成社製)10重量部とを混合し、ヘンシェルミキサーにて十分混合し、二軸押出混練機で溶融混合後、冷却しその後粗粉砕した。そしてジェット粉砕機にて微粉砕して平均粒径6μmのトナー粒子を得た。
【0038】
このトナー粒子を25重量部に高分子分散剤としてV−220(ISP社製)を2重量部、Diccate Ca(炭素数10のアルキル基を有する合成脂肪酸カルシウムセッケン)を0.5重量部、流動パラフィンを75重量部(引火点200℃)、ジルコニアビーズを100重量部を混合し、サンドミルにて120時間攪拌し、現像剤を得た。現像剤中のトナー粒子の平均粒径は2.9μmであった。
【0039】
実施例3
ポリエステル樹脂B 100重量部とキナクリドン20重量部とを混合し、ヘンシェルミキサーにて十分混合し、二軸押出混練機で溶融混合後、冷却しその後粗粉砕した。ジェット粉砕機にて微粉砕して平均粒径6μmのトナー粒子を得た。
【0040】
このトナー粒子25重量部に、高分子分散剤としてV−216を6重量部、流動パラフィンを75重量部(引火点140℃)、ナフテン酸カルシウム(炭素数8〜22のアルキル基を有するカルシウムセッケン)を0.7重量部、ジルコニアビーズを100重量部混合し、サンドミルにて120時間攪拌し、現像剤を得た。現像剤中のトナー粒子の平均粒径は3.1μmであった。
【0041】
実施例4
ナフテン酸カルシウムに代えてオクチル酸コバルトを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。得られた現像剤中のトナー粒子の平均粒径は2.6μmであった。
【0042】
実施例5
ナフテン酸カルシウムに代えてステアリン酸亜鉛を用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。得られた現像剤中のトナー粒子の平均粒径は2.7μmであった。
【0043】
比較例1
高分子分散剤V−216を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で行った。得られた現像剤中のトナー粒子の平均粒径は7.3μmであった。
【0044】
比較例2
ナフテン酸カルシウムを添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0045】
比較例3
高分子分散剤として、V−216を1重量部に代えて、ポリエステルアミン系のソルパーズS13940(アビシア社製)を10重量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0046】
比較例4
高分子分散剤として、V−216を1重量部に代えて、ポリエステルアミン系のソルパーズS13940(アビシア社製)を1重量部用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0047】
製造した上記の現像剤について、湿式画像形成装置の実験機を用いて実写試験を行いことにより、定着性と耐熱保管安定性の評価を行った。
【0048】
図1は、湿式画像形成装置の実験機の構成の一例を示す模式図である。ドラム状の像担持体201の周囲には、矢印で示す回転方向に順に、帯電装置203、露光装置204、現像ローラ103、中間転写体301、像担持体クリーニングブレード204がそれぞれ配設され、中間転写体301の周囲には、1次転写ローラ302、ベルト搬送ローラ305、対向ローラ306、二次転写ローラ307、テンションローラ308が配設されている。
【0049】
像担持体201の表面を帯電装置203により、所定の表面電位に一様に帯電させ、その後、露光装置204により画像情報の露光を行い、像担持体201の表面に静電潜像を形成する。次いで、像担持体201の静電潜像は、現像ローラ103によりトナー粒子及びキャリア液を含む現像液102が入った現像槽100中で現像され像担持体201の表面にトナー像が形成される。この時、トナー粒子だけでなくキャリア液も像担持体201の表面に付着する。なお、現像ローラ103表面の現像液塗布層は、規制ブレード101により一定厚さに保持される。
【0050】
次に像担持体201上のトナー像は、302に所定の電圧を印加することによって、中間転写体301に転写される。302にはトナー粒子と逆極性の電圧が印加され、このとき像担持体との電位差は300V〜3kVである。
【0051】
中間転写体301には、図1に示すベルトや図2に示すローラを用いることができる。
中間転写体がベルトの場合、ベルト材質は樹脂や弾性体であり、ラフ紙への転写性を考えると弾性体が好ましく、また耐熱性があるものが好ましい。厚さは50μm〜1mm、体積抵抗率は10〜1012Ωcm、表面抵抗率は10〜1012Ω/□が望ましい。樹脂としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、フッ素系樹脂、ポリフェニルサルフェート等、弾性体としては、シリコンゴム、フッ素ゴム、EPDM、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が開示できるが、これに限定されない。搬送の安定性を考えると、樹脂基体の上に弾性体がある複層タイプのベルトが望ましい。この場合、樹脂基体の厚さは50〜200μm、弾性体の厚さは200μm〜1mmが望ましい。また、最表層は、離型性が高いことが好ましく、そのため、表層はフッ素系、シリコン系等の低表面エネルギーの重合体を用いて、あるいはプラズマ処理等により厚さ1μm以下の硬い層を設けることが好ましい。
【0052】
中間転写体に転写された現像剤は、二次転写部(306、307)で印字媒体に転写される。307にトナーと逆極性の電圧が印加されている。309、310は熱ローラで、トナーが定着される。
【0053】
(保管安定性評価)
現像剤をガラス瓶に入れ、50℃で24時間保管し、保管前後の粒径を島津製作所製のSALD−2200を用いて測定した。粒径変化率(保管後の平均粒径/保管前の粒径)が1.2以下のものを○とし、1.2を超えるものを×とした。
【0054】
(定着性評価)
評価する現像剤を現像槽102に入れ、メディア上のトナー量が3g/mになるようにソリッド画像を現像、転写条件を調整した。システム速度は180mm/sec、熱ローラの温度は180℃、NIP通過時間は40msecの条件にて画像サンプルをだした。
【0055】
定着性の評価はテープ剥離試験にて行い(テープ;3Mメンディングテープ)、剥離したテープの濃度を測定し、定着性を判定した。テープ剥離前後の反射濃度をX−Rite社の濃度計を用いて測定し、前後の濃度比が95%以上のものを◎、90%以上95%未満のものは○、90%未満のものを×とした。
【0056】
(クリーニング性評価)
現像ローラ上103上に現像剤薄層を10g/m形成し、ウレタンゴム性のクリーニングブレード101を20N/mで押し当てたときのクリーニング性を目視評価し、クリーニング残が見られるものを×、クリーニング残がないものを○とした。
【0057】
【表1】

【0058】
以上の通り、本発明によれば、保管安定性と定着性とを両立させ、さらにクリーニング性に優れる湿式現像剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】湿式画像形成装置の構成の一例を示す模式図である。
【図2】湿式画像形成装置の構成の別の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0060】
100 現像槽
101 規制ブレード
102 現像液
103 現像ローラ
201 像担持体
202 クリーニングブレード
203 帯電装置
204 露光装置
301 中間転写体
302 1次転写ローラ
305 ベルト搬送ローラ
306 対向ローラ
307 二次転写ローラ
308 テンションローラ
309 熱ローラ
310 熱ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤とバインダー樹脂とからなるトナー粒子を高分子分散剤を用いて不揮発性のキャリア液に分散してなる湿式現像剤であって、
上記高分子分散剤はピロリドン基を有し、上記キャリア液は一般式(RCOO)M(Rは置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、Mは2価の金属を表す。)で表される金属セッケンを含む湿式現像剤。
【請求項2】
上記金属セッケンが、炭素数が5〜15の脂肪酸の金属塩である請求項1記載の湿式現像剤。
【請求項3】
上記バインダー樹脂が、酸価20mgKOH/g以上のポリエステル樹脂である請求項1又は2に記載の湿式現像剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−251085(P2009−251085A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95929(P2008−95929)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】