説明

溶接位置検出方法、及び溶接位置検出装置

【課題】
溶接線の進行方向が大きく変化するワークに対してセンシングを行う場合、進行方向の変化に応じてロボットの姿勢を変更する必要がある。このため、教示に時間を要したり、ロボットがワークや治具等と干渉したりする。
【解決手段】
マニピュレータM1に取付けられた溶接トーチ14に対して開先位置検出センサLSが可動機構62を介して設けられる。溶接線の進行方向が変化する場合は、開先位置検出センサLSの溶接トーチ14に対する相対位置であるセンシング位置を、ロボットの姿勢変更により変更するのではなく、可動機構62により変更するようにしている。教示工数低減、干渉低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットにおける溶接位置検出方法、及び溶接位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶接ロボットにより自動溶接する場合、溶接ロボットの溶接トーチに対して開先位置検出センサが取り付けられ、この開先位置検出センサから投射されたレーザ光によりワークの開先位置を非接触で検出し、検出した開先位置を溶接できる溶接システムが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
このような開先位置検出センサにより、溶接線ごとに開先位置を認識し、各溶接線のずれを検出できるため、ワークの設置ずれや加工ずれが発生した場合でも、自動溶接することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−24777号公報
【特許文献2】特開平10−71470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2では、開先位置検出センサは、溶接トーチの前方ないし先端に取り付けることが想定されている。このため、溶接線の進行方向が大きく変化する場合、ワークの開先位置に開先位置検出センサからレーザ光を適切に照射するには、溶接トーチの位置、姿勢をそれに合わせて大きく動作させる必要がある。
【0006】
また、特許文献1、2では、開先位置検出センサのレーザ光をワーク開先位置に垂直に当てる必要があるため、例えば、溶接線方向が90°変化した場合、それに合わせて開先位置検出センサの角度も90°変更する必要がある。
【0007】
具体的に図を使用して説明する。
図12には、図示しないロボットのマニピュレータの先端に設けられた出力フランジ100に対してブラケット102を介して溶接トーチ103が設けられた従来技術1の構成を示す。溶接トーチ103には開先位置検出センサ104が一体に取り付け固定されている。開先位置検出センサ104は、レーザ光をFOVで示す範囲(照射範囲、すなわち、視野範囲)を照射し、当該範囲に存在する開先検出を行って直交する溶接線Y3,Y4を検出する。
【0008】
図12中、Mで示されている開先位置検出センサ104は、溶接線Y3を検出している場合を示し、この場合、溶接トーチ103の位置姿勢は、図12に示す通りである。一方、溶接線Y4に沿って移動した後、溶接線方向が90度異なる溶接線Y4を開先位置検出センサ104により検出させる場合は、Nで示されている通り、出力フランジ100の向き、すなわち、図示しないマニピュレータの位置姿勢を変更して、溶接トーチ103及び開先位置検出センサ104の向きを90度変更する。
【0009】
図13には、図示しないロボットのマニピュレータの先端に設けられた出力フランジ100に対してブラケット102を介して溶接トーチ103が設けられた従来技術2の構成を示す。従来技術2では、出力フランジ100の下部に対して開先位置検出センサ105が一体に取り付け固定されている。開先位置検出センサ105は、レーザ光をFOVで示す範囲(視野範囲)を照射し、当該範囲に存在する開先検出を行って直交する溶接線Y3,Y4を検出する。
【0010】
図13中、Sで示されている開先位置検出センサ105は、溶接線Y3を検出している場合を示し、この場合、溶接トーチ103の位置姿勢は、図13に示す通りである。一方、溶接線Y3に沿って移動した後、溶接線方向が90度異なる溶接線Y4を開先位置検出センサ105により検出させる場合は、Tで示されている通り、出力フランジ100の向き、すなわち、図示しないマニピュレータの位置姿勢を変更して、溶接トーチ103及び開先位置検出センサ105の向きを90度変更する。
【0011】
図11は、従来技術の上記のことを簡略化したものである。図11中、Pは溶接ロボットの設置位置を表し、点線はワークW上の溶接線Y5,Y6を示している。溶接線Y5,Y6は互いに直交している。又、Q1、Q2は、マニピュレータがJ1軸〜J6軸で構成されている場合の出力フランジ100を有するJ6軸の溶接線Y5,Y6上の位置を示し、○印の中の矢印はJ6軸の向きを示している。この矢印は、開先位置検出センサ104,105により溶接線Y5,Y6を検出する場合の向きである。図11に示すように、J6軸の向きは、溶接線が90度異なる場合は、その向きも溶接線に合わせて90度向きを変更する。
【0012】
図11〜図13のことを纏めると、従来技術には以下のような問題がある。
(1)溶接線のセンシング時とセンシング後の実溶接の姿勢が大きく異なるケースがあり、センシングから実溶接の姿勢に移動する時間が必要となるため、タクトタイムが延びてしまう。
【0013】
(2)溶接トーチを大きく動作させると、溶接トーチ或いは開先位置検出センサが、ワーク又は治具に干渉する危険性がある。
(3)ロボットが無理な姿勢を取ることで、マニピュレータに引き回されたケーブル類(溶接用電源ケーブルなど)を傷める可能性がある。
【0014】
(4) 又、上記の(2)、(3)の問題があるため、ロボットの姿勢に配慮しながら教示プログラムを作成する必要があることから、教示作業に大きな時間を要する。
本発明の目的は、タクトタイム及び教示作業時間の短縮ができ、また、ワーク又は治具への干渉の恐れを減らすことができ、また、溶接ケーブル等を傷めることもない溶接位置検出方法、及び溶接位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、溶接トーチを有するマニピュレータの自由端に対して、開先を検出する開先検出手段が位置変更手段を介して設けられ、或いは、マニピュレータの自由端に設けられた溶接トーチに対して開先を検出する開先検出手段が位置変更手段を介して設けられ、前記開先検出手段の前記溶接トーチに対する相対位置(以下、センシング位置という)を前記位置変更手段により変更する溶接位置検出装置の溶接位置検出方法であって、前記マニピュレータがセンシングアプローチ点に位置したときに、前記開先検出手段を前記位置変更手段により前記センシングアプローチ点と関連付けされたセンシング位置に変更することを特徴とする溶接位置検出方法を要旨としている。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1において、教示時に、前記センシングアプローチ点において前記開先検出手段が取り得る前記複数のセンシング位置のうち、1つを開先のセンシング位置として選択し、前記選択したセンシング位置を、前記センシングアプローチ点に関連付けて教示プログラムに格納し、前記教示プログラム再生時に、前記マニピュレータがセンシングアプローチ点に位置したときに、前記開先検出手段を前記位置変更手段により前記センシングアプローチ点と関連付けされたセンシング位置に変更することを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2において、前記センシングアプローチ点において前記複数のセンシング位置に前記開先検出手段がそれぞれ位置した際の、各センシング位置と、前記溶接トーチとの位置関係データを演算し、前記演算した結果をそれぞれ位置関係データ記憶手段に記憶し、前記センシングアプローチ点で関連付けされたセンシング位置で前記開先検出手段がセンシングを行ったセンシング結果に基づいて開先位置を算出する際、前記位置関係データ記憶手段に記憶した当該センシング位置と前記溶接トーチとの位置関係データに基づいて開先位置を算出することを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、開先を検出する開先検出手段と、溶接トーチが取り付けられたマニピュレータの自由端に設けられて、又は前記溶接トーチに設けられて前記開先検出手段の前記溶接トーチに対する相対位置(以下、センシング位置という)を変更可能にする位置変更手段と、センシングアプローチ点において、前記開先検出手段が位置するべきセンシング位置が記述された教示プログラムを記憶する教示プログラム記憶手段と、前記教示プログラムの再生時に、前記センシングアプローチ点に前記マニピュレータを移動させた際、当該センシングアプローチ点に関連付けされたセンシング位置に前記開先検出手段が位置するように前記位置変更手段を移動制御する位置変更制御手段を備えることを特徴とする溶接位置検出装置を要旨としている。
【0019】
請求項5の発明は、請求項4において、教示時に、前記センシングアプローチ点において前記開先検出手段が取り得る前記複数のセンシング位置のうち、1つを開先のセンシング位置として選択する選択手段と、前記選択手段が選択したセンシング位置を、前記センシングアプローチ点に関連付けて前記教示プログラムに格納するプログラム作成手段を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5において、前記センシングアプローチ点において前記複数のセンシング位置に前記開先検出手段がそれぞれ位置した際の、各センシング位置と、前記溶接トーチとの位置関係データを演算する演算手段と、前記演算手段の演算結果をそれぞれ記憶する位置関係データ記憶手段と、前記センシングアプローチ点で関連付けされたセンシング位置で前記開先検出手段がセンシングを行ったセンシング結果に基づいて開先位置を算出する際、前記位置関係データ記憶手段に記憶した当該センシング位置と前記溶接トーチとの位置関係データに基づいて開先位置を算出する算出手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の溶接位置検出方法によれば、溶接線の進行方向が大きく変化する場合において、進行方向の変化に応じてロボットの姿勢を変更しなくてもセンシングできるようにしたことによって、タクトタイム及び教示作業時間を短縮することができる。又、ワーク又は治具への干渉の危険性を減らすことができる。さらに、ロボットに無理な姿勢変化をさせないようにしたことによって、マニピュレータに付随する溶接ケーブル等を傷めることもなくすることができる。
【0022】
請求項2の溶接位置検出方法によれば、開先検出手段が取り得る複数のセンシング位置のうち、1つを開先のセンシング位置として選択できるようにしたことによって、ロボットとワークや周辺治具等との位置関係に応じて、干渉が起きない適切なセンシング位置を作業者が選択することができる。
【0023】
請求項3の溶接位置検出方法によれば、センシングアプローチ点において複数のセンシング位置に前記開先検出手段がそれぞれ位置した際の、各センシング位置と、前記溶接トーチとの位置関係データを演算する。すなわち、開先検出手段に位置に応じたキャリブレーションを行なうようにしたことによって、その後に行われる開先位置の算出を正確に行うことができる。
【0024】
請求項4の溶接位置検出装置によれば、溶接線の進行方向が大きく変化する場合において、進行方向の変化に応じてロボットの姿勢を変更しなくてもセンシングできるようにしたことによって、タクトタイム及び教示作業時間を短縮することができる。又、ワーク又は治具への干渉の危険性を減らすことができる。さらに、ロボットに無理な姿勢変化をさせないようにしたことによって、マニピュレータに付随する溶接ケーブル等を傷めることもなくすることができる。
【0025】
請求項5の溶接位置検出装置によれば、開先検出手段が取り得る複数のセンシング位置のうち、1つを開先のセンシング位置として選択できるようにしたことによって、ロボットとワークや周辺治具等との位置関係に応じて、干渉が起きない適切なセンシング位置を作業者が選択することができる。
【0026】
請求項6の溶接位置検出装置によれば、センシングアプローチ点において複数のセンシング位置に前記開先検出手段がそれぞれ位置した際の、各センシング位置と、前記溶接トーチとの位置関係データを演算する。すなわち、開先検出手段に位置に応じたキャリブレーションを行なうようにしたことによって、その後に行われる開先位置の算出を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は一実施形態のアーク溶接ロボット制御システムのブロック図、(b)は同じくティーチペンダントTPの概略図。
【図2】ロボット制御装置RC、ティーチペンダントTP、センサコントローラ、及びレーザセンサのブロック図。
【図3】ツール座標系、センサ座標系、メカニカルインターフェイス座標系との関係の説明図。
【図4】セットアップ時における位置関係演算処理のフローチャート。
【図5】教示作業のフローチャート。
【図6】教示プログラム再生時のフローチャート。
【図7】教示プログラム再生時のフローチャート。
【図8】第1実施形態の溶接ロボットの向きと開先位置検出センサのレーザ光の投光範囲の説明図。
【図9】第1実施形態の溶接トーチと開先位置検出センサの溶接線が90度変わったときの向きを示す説明図。
【図10】第2実施形態の溶接トーチと開先位置検出センサの溶接線が90度変わったときの向きを示す説明図。
【図11】従来技術の溶接ロボットの向きと開先位置検出センサのレーザ光の投光範囲の説明図。
【図12】従来技術1の溶接トーチと開先位置検出センサの溶接線が90度変わったときの向きを示す説明図。
【図13】従来技術2の溶接トーチと開先位置検出センサの溶接線が90度変わったときの向きを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の溶接位置検出方法及び溶接位置検出装置の一実施形態を図1〜図9を参照して説明する。なお、以下では、説明の便宜上、アーク溶接ロボットを単に溶接ロボットという。
【0029】
図1に示すように溶接位置検出装置としての溶接ロボット制御システム10は、ワーク(作業対象物)Wに対して溶接トーチ14の教示位置を教示するティーチペンダントTPと、溶接作業を行うマニピュレータM1を制御するロボット制御装置RCとを備えている。
【0030】
マニピュレータM1は、フロア等に固定されるベース部材12と、複数の軸を介して連結された複数のアーム13とを備える。図1(a)に示すように、最も先端側に位置するアーム13(すなわち、手首部)の先端(すなわち、自由端)に設けられた出力フランジ60には、ブラケット61を介して溶接トーチ14が設けられている。
【0031】
前記溶接トーチ14は、溶加材としてのワイヤ15を内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤ15の先端とワークWとの間にアークを発生させ、その熱でワイヤ15を溶着させることによりワークWに対してアーク溶接を施す。アーム13間には複数のモータ(図示しない)が配設されており、モータの駆動によって溶接トーチ14を前後左右に自在に移動できるように構成されている。なお、前後とは、溶接トーチ14が溶接線に沿って進行する方向を前とし、その180度反対方向を後ろとする。又、左右とは前記進行する方向を人が向いたときを基準として、左右という。
【0032】
又、溶接トーチ14には、位置変更手段としての可動機構62を介して、ワークWの開先位置を検出する開先位置検出センサLSが取り付けられている。開先位置検出センサLSは、開先検出手段に相当する。
【0033】
可動機構62は、図9に示すように、溶接トーチ14の軸心の周りで異なる2つの取付け位置間を回動自在に設けられている。
本実施形態では、この2つの取付け位置を角度で表すと、取付け位置0度と、取付け位置90度としている。なお、取付け位置0度、及び取付け位置90度の詳細な説明は後述する。
【0034】
可動機構62は図2に示すように駆動源としての駆動器63に作動連結されている。駆動器63は、図9では図示はしないが、溶接トーチ14側或いは開先位置検出センサLS側に設けられている。
【0035】
駆動器63を電動モータで構成する場合、可動機構62は減速機を含む様に構成されている。そして、電動モータの回転駆動により、開先位置検出センサLSを、減速機を含む可動機構62を介して、取付け位置0度、又は、取付け位置90のいずれか一方に移動させて配置することが可能である。
【0036】
又、駆動器63を、ソレノイド、或いは、空圧シリンダ、油圧シリンダ、電動シリンダ(以下、まとめてシリンダ類という)で構成してもよい。この場合は、例えば、溶接トーチ14側(固定側)に駆動器63を配置し、開先位置検出センサLS側(可動側)に駆動器63のロッドを連結する。そして、ソレノイド、或いは前記シリンダ類のロッドの進退させることにより、開先位置検出センサLSを、取付け位置0度、又は、取付け位置90度のいずれか一方に配置することが可能である。
【0037】
前記ロボット制御装置RCには、可搬式操作部としてのティーチペンダントTPが接続されている。図1(b)に示すようにティーチペンダントTPには、センシング命令キー31、テンキー32の各種キーや、センシング位置を入力するための位置番号入力器33、センシング位置を選択するための位置番号選択器34を有するキーボード35を備えている。ティーチペンダントTPの位置番号選択器34は、選択手段に相当する。又、ティーチペンダントTPには、図1(b)に示すように、液晶表示装置等からなるディスプレイ38を備える。
【0038】
前記各種キー、テンキー32、位置番号入力器33、位置番号選択器34等のキーボード35上のキーの操作により、通信インターフェイス36を介して各種の教示データがロボット制御装置RCに数値入力される。
【0039】
又、モード選択キー37の入力により、モード選択信号が通信インターフェイス36を介して各種の教示データがロボット制御装置RCに数値入力される。
又、ティーチペンダントTPは、教示モードにおいて、前記各種キーを手動操作すると、前記各種キー入力に基づいて、ロボット制御装置RCはマニピュレータM1を作動させ、溶接トーチ14を移動させることが可能である。センシング命令キー31は、センシング命令入力手段に相当する。
【0040】
ロボット制御装置RCは、図2に示すようにコンピュータからなる。すなわち、ロボット制御装置RCはCPU(中央処理装置)20、マニピュレータM1を制御するための各種プログラムや、その他の処理を行うための各種プログラムを記憶する書換可能なROM21や、作業メモリとなるRAM22、並びに各種データ、教示プログラムを格納するための書き換え可能な不揮発性メモリからなる記憶部23を備える。CPU20は、位置変更制御手段、演算手段、算出手段、及びプログラム作成手段に相当する。RAM22は位置関係データ記憶手段に相当する。記憶部23は、教示プログラム記憶手段に相当する。
【0041】
ロボット制御装置RCでは、ティーチペンダントTPの通信インターフェイス36から送信された各種の教示データがキーボードインターフェイス24を介して入力されるとともに、前記教示データが教示プログラムの作成に使用される。記憶部23は、開先位置検出センサLSにて視野範囲FOV(図3参照)を測定して得られた距離情報(測距データ)を記憶するための領域を有する。又、記憶部23は、教示時に作成される教示プログラムを記憶するための領域を有する。
【0042】
ロボット制御装置RCは、教示モードではティーチペンダントTPの手動操作によって、サーボドライバ25を介して前記モータ(図示しない)を駆動制御することにより、マニピュレータM1を動作させ、又、教示プログラムの再生時には、該教示プログラムに従い、サーボドライバ25を介して前記モータ(図示しない)を駆動制御することにより、マニピュレータM1を動作させる。又、ロボット制御装置RCは、溶接電流及び溶接電圧といった溶接条件を溶接電源WPS(図1(a)参照)に対して出力し、溶接電源WPSからパワーケーブルPKを通じて供給される電力によって溶接作業を行わせる。
【0043】
さらに、ロボット制御装置RCは、I/Oボード27を介して、可動機構62の制御部65の通信インターフェイス64に接続されている。通信インターフェイス64は、駆動器63に対してロボット制御装置RCから送信されたI/O信号を駆動器63に出力するとともに、駆動器63が、開先位置検出センサLSを取付位置け0度、又は取付け位置90度の位置に移動完了を行った際に、駆動完了信号をロボット制御装置RCのI/Oボード27に出力するようにしている。なお、駆動器63の駆動完了信号を出力する装置は、例えば、開先位置検出センサLSが取付位置け0度、又は取付け位置90度の位置に位置したことを検出する図示しないリミットスイッチであってもよく、或いは、電動モータをサーボモータとした場合に、その回転量を検出するエンコーダの検出結果に基づいた信号であってもよい。
【0044】
(開先位置検出センサLSについて)
開先位置検出センサLSは、レーザの発光及び受光によりワークWまでの距離を測定する走査型のレーザ変位センサであり、マニピュレータM1の手首部の先端に搭載されている。図2に示すように開先位置検出センサLSは、レーザをワークWに向けて発光する発光部41と、ワークWで反射したレーザを受光する受光部42等を備える。前記発光部41で発光されたレーザは、ワークWで乱反射され、受光部42で受光される。受光部42は、例えばCCDラインセンサ(ラインレーザセンサ)により構成されており、視野範囲FOVにおける開先位置検出センサLSからワークWまでの距離を測定するようにされている。
【0045】
(取付け位置0度、及び取付け位置90度について)
本実施形態では、開先位置検出センサLSが、取付け位置0度及び取付け位置90度に位置した場合でも、図3に示すように、レーザ照射方向がツール座標系(X,Y,Z)のいずれかの軸と平行となるようにセンサヘッドLSaが配置されている。
【0046】
すなわち、本実施形態では、例えば、取付け位置0度のときは、開先位置検出センサLSのカメラ座標系(XC1,YC1,ZC1)のZC1軸を、ツール座標系のZ軸と平行となるようにされている。又、取付け位置90度のときは、カメラ座標系(XC2,YC2,ZC2)のZC2軸を、ツール座標系のZ軸と平行になるようにされている。
【0047】
なお、ツール座標系は図3に示すように、溶接トーチ14の軸心にZ軸を一致させたものとしている。
又、本実施形態では、図3に示すように溶接トーチ14に対して、開先位置検出センサLSのセンサヘッドLSaはレーザ照射方向がZ−方向となるように設定されている。
【0048】
そして、開先位置検出センサLSが取付け位置0度のときは、溶接トーチ14の溶接進行方向がツール座標系のX軸になるように設定されている。
一方、開先位置検出センサLSが取付け位置90度のときは、ツール座標系のX軸とカメラ座標系のXC1軸とが平行になるように設定されている。
【0049】
又、開先位置検出センサLSが取付け位置90度のときは、溶接トーチ14の溶接進行方向がツール座標系のY軸になるように設定されるとともに、ツール座標系のY軸とカメラ座標系のXC2軸とが平行になるように設定されている。
【0050】
図2に示すように、開先位置検出センサLSは、CPU43(中央処理装置)、ROM44、RAM45及び通信インターフェイス46を備えている。ROM44には、開先位置計測処理プログラム、開先基準各計測処理プログラム、及び開先形状認識処理プログラム等の各種プログラムが格納されている。又、RAM45は、前記プログラムの実行時の作業メモリである。
【0051】
開先位置検出センサLSは、通信インターフェイス46を介してセンサインターフェイスユニット51の通信HUB52に接続されている。又、通信HUB52には、センサコントローラ53の図示しない通信インターフェイスが接続されている。
【0052】
又、前記通信HUB52には、ロボット制御装置RCの通信インターフェイス26がセンサヘッドケーブルHCを介して接続されている。
センサコントローラ53は、図示しないCPU、ROM、RAM及び書き換え可能な記憶装置を備えている。前記記憶装置は、例えばハードディスク、或いは書き換え可能な半導体メモリ等から構成されるとともに、開先形状、及びワークWの板厚に応じた多数の開先認識のための開先認識データが格納されている。
【0053】
又、センサコントローラ53のROMには、開先形状設定器の機能を実現するプログラム、板厚設定器の機能を実現するプログラム等の各種ソフトウェアプログラムが格納されている。そして、センサコントローラ53は、ティーチペンダントTPのキーボード(図示しない)が操作されて、通信インターフェイス36、26、通信HUB52及び図示しない通信インターフェイスを介して開先形状及びワークの板厚の設定に関する要求がセンサコントローラ53に入力されると、その要求に応じた開先形状設定及び板厚設定がされる。又、その設定された開先形状及び板厚に応じた開先認識データが、図示しない通信インターフェイス、通信HUB52、及び通信インターフェイス46を介して開先位置検出センサLSのRAM45に格納される。
【0054】
なお、以下では、特に断らない限り、「教示」とはティーチペンダントTPを使用して入力することをいう。
(作用)
上記のように構成された溶接ロボット制御システム10の作用を図4〜図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
(セットアップ処理)
まず、セットアップ処理について説明する。
作業者はティーチペンダントTPのモード選択キー37を使用してセットアップモードを選択操作する。この操作により、ロボット制御装置RCのCPU20は、セットアップを図4に示すフローチャートに従って行う。
【0056】
S11では、CPU20は、ROM21の位置関係演算処理プログラム21Aに従って、開先位置検出センサLSと溶接トーチ14との各取付け位置の関係を下記の演算方法により、可動機構62による開先位置検出センサLSの取付け位置0度、及び取付け位置90度のそれぞれの位置関係を表す変換行列Cnを演算する。なお、nは1又は0である。
【0057】
取付け位置0度の場合、
C1=(J6−1J6C1 ……(1)
取付け位置90度の場合、
C2=(J6−1J6C2 ……(2)
ここで、J6は、図3に示すように出力フランジ60の特定部位を原点としたメカニカルインターフェイス座標系(X,Y,Z)とツール座標系の変換行列である。
【0058】
J6C1は、図3に示すように、メカニカルインターフェイス座標系(X,Y,Z)と取付け位置0度のときのカメラ座標系(XC1,YC1,ZC1)の変換行列である。J6C2は、図3に示すように、メカニカルインターフェイス座標系(X,Y,Z)と取付け位置90度のときのカメラ座標系(XC2,YC2,ZC2)の変換行列である。
【0059】
次の、S12では、作業者は、ティーチペンダントTPの位置番号入力器33を操作して、位置番号<0>、<1>のそれぞれに対して上記式(1)、及び式(2)の演算結果を割り付けして、RAM22の位置関係保存器22A(すなわち、位置関係保存領域)に保存する。なお、位置番号の<0>、<1>は例示であり、限定するものではなく、他の数字、或いは位置番号の代わりに記号であってもよい。
【0060】
この後、作業者は、ティーチペンダントTPを操作してセットアップモードを終了する。
(教示モード)
次に、作業者はティーチペンダントTPのモード選択キー37を使用して教示モードを選択操作する。
【0061】
図5は、教示モードで行う、センシングアプローチ点で行われる教示作業の処理のフローチャートである。
S21では、ティーチペンダントTPを操作して、開先位置検出センサLSによりワークWの開先位置を検出する位置に、マニピュレータM1及び溶接トーチ14を移動させ、センシングアプローチ点を教示する。
【0062】
この後、S22では、作業者は、ティーチペンダントTPのセンシング命令キー31を操作して、センシング命令ZJTRNを教示する。
次の、S23では、ティーチペンダントTPの位置番号選択器34を操作して、前記センシング命令ZJTRNのパラメータとしての位置番号<0>、<1>のうちいずれかを選択して、このセンシングアプローチ点での開先位置検出センサLSの位置決めを行う。すなわち、取付け角度を決定する。
【0063】
S21〜S23での入力又は選択された教示データは、図示しない教示プログラム作成プログラムに従って教示プログラムとして生成されて記憶部23に格納される。
(教示プログラムの再生)
次に、上記のように作成された教示プログラムの再生時の処理を図6及び図7を参照して説明する。なお、教示プログラムが起動されると、該プログラムの実行中に、ROM21に格納された種々の処理プログラムが読み出されて実行されるとともに、RAM22、及び記憶部23に格納された種々の教示データが読み出される。
【0064】
ティーチペンダントTPを操作して教示プログラムを起動させると、S31では、CPU20は、センシングアプローチ点までマニピュレータM1及び溶接トーチ14(すなわち溶接ロボット)を移動させる。
【0065】
S32では、前記センシングアプローチ点でのセンシング命令ZJTRNをROM21に格納されたセンシング実行処理プログラム21Cに従って実行する。図7は、S32の処理のさらに、詳細なフローチャートである。
【0066】
S41〜S45はROM21に格納された選択位置実行処理プログラム21Dに従って行われる処理であり、S46の処理は、ROM21に格納された駆動指令処理プログラム21Eに従って行われる処理である。
【0067】
すなわち、S41では、CPU20は、センシング命令ZJTRNのパラメータである位置番号が<0>か否かを判定する。
前記パラメータである位置番号が<0>の場合は、S42に移行し、位置番号が<1>の場合は、S44に移行する。
【0068】
S42では、CPU20は、位置番号<0>をI/0信号に変換する。
又、S43では、CPU20は、選択された位置番号<0>に割り付けられた位置関係の変換行列C1をRAM22の位置関係保存器22Aから選択する。
【0069】
又、S44では、CPU20は、位置番号<1>をI/0信号に変換する。S45では、CPU20は、選択された位置番号<1>に割り付けられた位置関係の変換行列C2をRAM22の位置関係保存器22Aから選択する。
【0070】
S43又はS45からS46に移行すると、CPU20は、S42又はS44で変換したI/O信号をI/Oボード27を介して、可動機構62の通信インターフェイス64に出力する。
【0071】
図6に戻って、S33では、可動機構62の駆動源である駆動器63は、受信したI/O信号に基づいて、開先位置検出センサLSを動作させるが、CPU20は、駆動完了信号受信処理プログラム21Fに従って制御部65から駆動完了信号を受信するまで待機する。なお、本実施形態では、開先位置検出センサLSの初期位置は、例えば、取付け位置0度としているが、限定するものではなく、初期位置は取付け位置90度としてもよい。
【0072】
CPU20は、可動機構62の制御部65からの駆動完了信号を受信すると、S34に移行する。
S34では、CPU20は、センシング実行処理プログラム21Cに従って移動したアプローチ点で、開先位置検出センサLSにセンシング命令を通信インターフェイス26を介して発信する。センサインターフェイスユニット51の通信HUB52及び通信インターフェイス46を介してセンシング命令を受信すると、開先位置検出センサLSは、前記センシング命令に基づいてレーザー光を発光部41から照射するとともにワークWからの反射光を受光部42にて受光する。開先位置検出センサLSのCPU43は、ROM44に格納した開先計測処理プログラムに従ったCPU43による開先計測処理により開先位置座標A(カメラ座標)を計測する。このときの開先位置座標Aは、開先位置検出センサLSの取付け位置でのカメラ座標である。この開先位置座標Aは、通信インターフェイス46、センサインターフェイスユニット51を介して通信インターフェイス26に送信される。ロボット制御装置RCでは、前記開先位置座標Aを、ROM21の開先位置保存処理プログラム21Bに従ってRAM22の開先位置座標Aの記憶領域に格納する。
【0073】
そして、CPU20は、ROM21に格納されたツール座標系変換処理プログラム21Gに従って、カメラ座標の開先位置座標Aを、S43、又はS45で選択した位置関係の変換行列Cnを使用して、ツール座標系の開先位置座標A'に変換した後、ROM21の開先位置保存処理プログラム21Bに従ってRAM22の変換後の開先位置座標A’の記憶領域に格納する。
【0074】
上記の構成による利点を図8、図9を参照して説明する。
図8中、Pは溶接ロボットの設置位置を表し、点線はワークW上の溶接線Y1,Y2を示している。又、R1,R2はそれぞれ溶接線Y1,Y2の開先位置検出行うためのセンシングアプローチ点を示している。溶接線Y1,Y2は互いに直交している。又、Q1、Q2は、マニピュレータM1がJ1軸〜J6軸で構成されている場合の出力フランジ60を有するJ6軸の溶接線Y1,Y2上の位置を示し、○印の中の矢印はJ6軸の向きを示している。この矢印は、開先位置検出センサLSにより溶接線Y1,Y2を検出する場合の向きである。図8に示すように、J6軸の向きは、溶接線が90度異なる場合であっても、その向きを溶接線に合わせて90度向きを変更する必要がなくなる。
【0075】
又、図9は、図8での内容と同様のことを、互いに直交する溶接線Y3,Y4において、斜視図で示したものである。又、R3,R4はそれぞれ溶接線Y3,Y4の開先位置検出行うためのセンシングアプローチ点を示している。
【0076】
図9に示すように、J6軸の向きは、溶接線が90度異なる場合であっても、J6軸の向きを溶接線に合わせて90度向きを変更する必要がなくなる。
なお、溶接線Y1,Y2、又は溶接線Y3,Y4が互いに直交する場合だけでなく、斜交していた場合にも、適宜に取付け位置を選択することにより、J6軸の向きの変化を従来よりも抑制することは可能である。
【0077】
本実施形態の溶接位置検出方法、及び溶接位置検出装置によれば、下記の特徴がある。
(1)本実施形態の溶接位置検出装置の溶接位置検出方法では、マニピュレータM1の自由端に設けられた溶接トーチ14に対して開先を検出する開先位置検出センサLS(開先検出手段)が可動機構62(位置変更手段)を介して設けられ、開先位置検出センサLSの溶接トーチ14に対する相対位置であるセンシング位置、すなわち、取付け位置を可動機構62により変更するようにしている。
【0078】
そして、開先位置検出センサLSを、センシングアプローチ点に位置したときに、可動機構62により、センシングアプローチ点と関連付けされた取付け位置0度又は取付け位置90度(センシング位置)に変更する。
【0079】
この結果、本実施形態によれば、タクトタイム、及び教示作業時間の短縮ができるとともに、開先検出手段の適用範囲を増やすことができる。又、ワーク又は治具への干渉が減らせるため、製品(ワーク)、溶接ロボットに付設されるケーブル、ワークを固定するための治具を傷めることを抑制でき、ロボットの無理な姿勢変化が減るため、マニピュレータに付随する溶接ケーブル等を傷めることもなくすることができる方法を提供できる。
【0080】
(2) 本実施形態の溶接位置検出方法では、教示時に、センシングアプローチ点において開先位置検出センサLS(開先検出手段)が取り得る複数の取付け位置(センシング位置)のうち、1つを、開先を検出するための開先位置検出センサLSの取付け位置(センシング位置)として選択する。
【0081】
そして、選択したセンシング位置を、センシングアプローチ点に関連付けて前記教示プログラムに格納する。又、教示プログラム再生時に、開先位置検出センサLS(開先検出手段)を、センシングアプローチ点に位置したときに、可動機構62(位置変更手段)により、センシングアプローチ点と関連付けされた取付け位置(センシング位置)に変更する。
【0082】
この結果、本実施形態の方法によれば、教示時に、溶接線に応じて、開先位置検出センサLSが取り得る複数の取付け位置(センシング位置)のうち、1つを、開先を検出するための開先位置検出センサLSの取付け位置(センシング位置)として選択できるため、製品(ワーク)、溶接ロボットに付設されるケーブル、或いは、ワークを固定するための治具を傷めることを抑制できるように作業者が適切なセンシング位置を任意に選択することができる。
【0083】
(3) 本実施形態の溶接位置検出方法では、センシングアプローチ点において複数の取付け位置(センシング位置)に開先位置検出センサLSがそれぞれ位置した際の、各取付け位置と、溶接トーチ14との位置関係データ(変換行列)を演算する。そして、演算した結果をそれぞれRAM22(位置関係データ記憶手段)に記憶する。
【0084】
又、センシングアプローチ点で関連付けされた取付け位置(センシング位置)で開先位置検出センサLSがセンシングを行ったセンシング結果に基づいて開先位置を算出する際、RAM22(位置関係データ記憶手段)に記憶した当該取付け位置(センシング位置)と溶接トーチ14との位置関係データ(変換行列)に基づいて開先位置座標A’(開先位置)を算出する。
【0085】
この結果、本方法によれば、センシングアプローチ点において複数のセンシング位置に前記開先検出手段がそれぞれ位置した際の、各取付け位置と、溶接トーチ14との位置関係データ(変換行列)を演算して、位置のキャリブレーションが行われるため、その後に行われる開先位置座標A’(開先位置)の算出を正確に行うことができる。
【0086】
(4) 本実施形態の溶接位置検出装置では、開先を検出する開先位置検出センサLS(開先検出手段)と、溶接トーチ14に設けられて開先位置検出センサLSの溶接トーチ14に対する取付け位置(センシング位置)を変更可能にする可動機構62(位置変更手段)と、センシングアプローチ点において、開先位置検出センサLSが位置するべき取付け位置(センシング位置)が記述された教示プログラムを記憶する記憶部23(教示プログラム記憶手段)を備える。
【0087】
又、本実施形態の溶接位置検出装置では、教示プログラムの再生時に、センシングアプローチ点にマニピュレータM1を移動させた際、当該センシングアプローチ点に関連付けされた取付け位置(センシング位置)に開先位置検出センサLS(開先検出手段)が位置するように可動機構62を移動制御するCPU20(位置変更制御手段)を備える。
【0088】
この結果、本実施形態によれば、タクトタイム、及び教示作業時間の短縮ができるとともに、開先検出手段の適用範囲を増やすことができる。又、ワーク又は治具への干渉が減らせるため、製品(ワーク)、溶接ロボットに付設されるケーブル、ワークを固定するための治具を傷めることを抑制でき、ロボットの無理な姿勢変化が減るため、マニピュレータに付随する溶接ケーブル等を傷めることもなくすることができる溶接位置検出装置を提供できる。
【0089】
(5) 本実施形態の溶接位置検出装置は、教示時に、センシングアプローチ点において開先位置検出センサLSが取り得る前記複数の取付け位置(センシング位置)のうち、1つを、開先を検出するための開先位置検出センサLSの取付け位置(センシング位置)として選択する位置番号選択器34(選択手段)を備える。又、位置番号選択器34(選択手段)が選択した取付け位置(センシング位置)を、前記センシングアプローチ点に関連付けて教示プログラムに格納するCPU20(プログラム作成手段)を備える。
【0090】
この結果、本実施形態の溶接位置検出装置は、教示時に、溶接線に応じて、開先位置検出センサLSが取り得る複数の取付け位置(センシング位置)のうち、1つを開先を検出するための開先位置検出センサLSの取付け位置(センシング位置)として選択できるため、製品(ワーク)、溶接ロボットに付設されるケーブル、或いは、ワークを固定するための治具を傷めることを抑制できるように作業者が適切なセンシング位置を任意に選択することができる。
【0091】
(6) 本実施形態の溶接位置検出装置は、センシングアプローチ点において複数の取付け位置(センシング位置)に開先位置検出センサLS(開先検出手段)がそれぞれ位置した際の、各取付け位置(センシング位置)と、溶接トーチ14との位置関係データを演算するCPU20(演算手段)と、CPU20の演算結果をそれぞれ記憶するRAM22(位置関係データ記憶手段)を備える。
【0092】
又、溶接位置検出装置は、センシングアプローチ点で関連付けされた取付け位置(センシング位置)で開先位置検出センサLSがセンシングを行ったセンシング結果に基づいて開先位置を算出する際、前記位置関係データ記憶手段に記憶した当該取付け位置(センシング位置)と溶接トーチ14との位置関係データ(変換行列)に基づいて開先位置座標A’(開先位置)を算出するCPU20(算出手段)を備える。
【0093】
この結果、本実施形態の溶接位置検出装置は、センシングアプローチ点において複数の取付け位置(センシング位置)に開先位置検出センサLSがそれぞれ位置した際の、各取付け位置(センシング位置)と、溶接トーチ14との位置関係データを演算する。すなわち、位置のキャリブレーションが行われるため、その後に行われる開先位置の算出を正確に行うことができる。
【0094】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を、図10を参照して説明する。図10は、マニピュレータM1の自由端に設けられた出力フランジ60の下部に、開先位置検出センサLSが可動機構62を介して出力フランジ60の軸心の周りで回動自在に支持されたものである。この場合の可動機構の駆動源として、第1実施形態と同様の駆動源で構成することが可能である。本実施形態における電気的な構成は第1実施形態と同様である。
【0095】
このように開先位置検出センサLSを出力フランジ60の下部に設けられた構成においても、第1実施形態と同様の方法で、実施すれば第1実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0096】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成してもよい。
・ 前記各実施形態では、センシング位置、すなわち、開先位置検出センサLSの取付け位置は、2つとしたが、2つの位置に限定するものではなく、多数の位置で位置決めするようにしてもよい。
【0097】
この場合、可動機構62の駆動器63としてはステップモータ等の駆動源を使用することにより実現できる。又、電動シリンダを使用すれば、複数の位置に位置決めすることも可能である。
【0098】
このように多数の位置決めが可能な可動機構62の場合、図4のS11の代わりにS11Aとして、下記の様に実行する。
(S11A)
CPU20は、位置関係演算処理プログラム21Aに従って、開先位置検出センサLSと溶接トーチ14の関係の演算方法により、可動機構62が位置決めする位置ごとに位置関係(変換行列)Cn(n=0,1,2,3……N)を演算する。
【0099】
(S12A)
又、図4のS12の代わりにS12Aとして、下記の様に実行する。
CPU20は、位置関係演算処理プログラム21Aに従って、位置番号入力器33で入力された任意の位置番号を、演算した位置関係Cnに割付け、位置関係保存器22Aに保存する。
【0100】
この関係は、下記の通りとなる。
[取付け位置角度] → 位置関係→ <位置番号>
[0°] →C1=(J6−1J6C1 →<0>
[30°] →C2=(J6−1J6C2 →<1>
[45°] →C3=(J6−1J6C3 →<2>
・・・
[N°] →Cn=(J6−1J6Cn →<x>
なお、ここでは、開先位置検出センサLSと溶接トーチ14の相対的な取付け位置を角度として説明したが、相対的な取付け位置(x,y,z)においても、同様の方法が適用可能である。
【0101】
(S32A)
又、図6のS32の代わりにS32Aとして、下記の様に実行する。
まず、センシング実行処理プログラムに従って、センシング命令ZJTRNを実行する。
【0102】
次に、センシング命令ZJTRNのパラメータの位置番号選択器34で選択された角度は、選択位置実行処理プログラム21Dが実行されて処理される。
すなわち、CPU20は、選択位置実行処理プログラム21Dに従って、位置番号選択器34で選択された取付け位置(角度)はI/O信号に変換して、駆動指令処理プログラム21Eに従ってI/Oボード27を介して、可動機構62の通信インターフェイス64に出力する。
【0103】
そして、CPU20は、選択位置実行処理プログラム21Dに従って、選択された角度に応じた位置関係の変換行列Cn=(J6−1J6Cnを選択する。
以上のように構成しても、開先位置検出センサLSの取付け位置を多数設けることにより、隣接する溶接線の斜交状態に応じてマニピュレータM1の変化の抑制を行うことができる取付け位置を選択可能とすることができる。
【0104】
・ 又、開先位置検出センサLSの代わりに、開先検出手段としてレーザセンサを使用した倣い用のセンサシステムにも適用できる。
・ 前記実施形態の開先位置検出センサLSは、ラインレーザセンサを使用したが、レーザをミラーに当てて走査するスキャニング型のレーザ変位センサに代えてもよい。
【符号の説明】
【0105】
M1…マニピュレータ、14…溶接トーチ、
20…CPU(位置変更制御手段、演算手段、算出手段、プログラム作成手段)、22…RAM(位置関係データ記憶手段)
23…記憶部(教示プログラム記憶手段)
62…可動機構(位置変更手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチを有するマニピュレータの自由端に対して、開先を検出する開先検出手段が位置変更手段を介して設けられ、或いは、マニピュレータの自由端に設けられた溶接トーチに対して開先を検出する開先検出手段が位置変更手段を介して設けられ、前記開先検出手段の前記溶接トーチに対する相対位置(以下、センシング位置という)を前記位置変更手段により変更する溶接位置検出装置の溶接位置検出方法であって、
前記マニピュレータがセンシングアプローチ点に位置したときに、前記開先検出手段を前記位置変更手段により前記センシングアプローチ点と関連付けされたセンシング位置に変更することを特徴とする溶接位置検出方法。
【請求項2】
教示時に、前記センシングアプローチ点において前記開先検出手段が取り得る前記複数のセンシング位置のうち、1つを開先のセンシング位置として選択し、
前記選択したセンシング位置を、前記センシングアプローチ点に関連付けて教示プログラムに格納し、
前記教示プログラム再生時に、前記マニピュレータがセンシングアプローチ点に位置したときに、前記開先検出手段を前記位置変更手段により前記センシングアプローチ点と関連付けされたセンシング位置に変更することを特徴とする請求項1に記載の溶接位置検出方法。
【請求項3】
前記センシングアプローチ点において前記複数のセンシング位置に前記開先検出手段がそれぞれ位置した際の、各センシング位置と、前記溶接トーチとの位置関係データを演算し、
前記演算した結果をそれぞれ位置関係データ記憶手段に記憶し、
前記センシングアプローチ点で関連付けされたセンシング位置で前記開先検出手段がセンシングを行ったセンシング結果に基づいて開先位置を算出する際、前記位置関係データ記憶手段に記憶した当該センシング位置と前記溶接トーチとの位置関係データに基づいて開先位置を算出することを特徴とする請求項2に記載の溶接位置検出方法。
【請求項4】
開先を検出する開先検出手段と、
溶接トーチが取り付けられたマニピュレータの自由端に設けられて、又は前記溶接トーチに設けられて前記開先検出手段の前記溶接トーチに対する相対位置(以下、センシング位置という)を変更可能にする位置変更手段と、
センシングアプローチ点において、前記開先検出手段が位置するべきセンシング位置が記述された教示プログラムを記憶する教示プログラム記憶手段と、
前記教示プログラムの再生時に、前記センシングアプローチ点に前記マニピュレータを移動させた際、当該センシングアプローチ点に関連付けされたセンシング位置に前記開先検出手段が位置するように前記位置変更手段を移動制御する位置変更制御手段を備えることを特徴とする溶接位置検出装置。
【請求項5】
教示時に、前記センシングアプローチ点において前記開先検出手段が取り得る前記複数のセンシング位置のうち、1つを開先のセンシング位置として選択する選択手段と、
前記選択手段が選択したセンシング位置を、前記センシングアプローチ点に関連付けて前記教示プログラムに格納するプログラム作成手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の溶接位置検出装置。
【請求項6】
前記センシングアプローチ点において前記複数のセンシング位置に前記開先検出手段がそれぞれ位置した際の、各センシング位置と、前記溶接トーチとの位置関係データを演算する演算手段と、
前記演算手段の演算結果をそれぞれ記憶する位置関係データ記憶手段と、
前記センシングアプローチ点で関連付けされたセンシング位置で前記開先検出手段がセンシングを行ったセンシング結果に基づいて開先位置を算出する際、前記位置関係データ記憶手段に記憶した当該センシング位置と前記溶接トーチとの位置関係データに基づいて開先位置を算出する算出手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の溶接位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−27966(P2013−27966A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167382(P2011−167382)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】