説明

溶接用ロボット

【課題】一線式パワーケーブルの耐久性を向上させ、溶接用ワイヤがねじれることを減少させる溶接用ロボットを提供する。
【解決手段】上アームと、第4軸回りに回転する胴体と、第5軸回りに揺動する揺動体と、第6軸回りに回転する回転体と、回転体に取付けられた溶接用トーチと、上アームの基端部に取付けられて溶接用ワイヤを送出するワイヤ送給機と、溶接用ワイヤの挿通孔が中心軸に形成されて上アームとワイヤ送給機との間に設けられた導電性の給電部材と、給電部材の先端部に接続されて上アーム及び胴体の挿通孔を通過して胴体の長手方向に延びて溶接用ワイヤと電力とガスとを一体にして溶接用トーチに供給する一線式パワーケーブルとを備え、給電部材の基端部がワイヤ送給機の溶接用ワイヤ送出口に回転自在に取付けられ、給電ケーブル及びガスホースを給電部材の外周に巻いて連結している溶接用ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用ロボットの溶接用トーチに接続された一線式パワーケーブルに掛かる負荷を軽減するための給電ケーブル等の取付け構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、溶接の作業能率を向上させるために、溶接用ロボットを用いて溶接を自動化することが広く行われている。図6は、多関節ロボットを使用したときの溶接用ロボットの一般的な構成を示す図である。
同図において、マニピュレータ1の手首部2の先端に、溶接用トーチ3が取付けられ、ワイヤリール4に巻かれた溶接用ワイヤ5が、マニピュレータ1に取付けられたワイヤ送給機6によって溶接用トーチ3に送給される。また、溶接用電源装置7から溶接用トーチ3に電力が供給され、ガスボンベ38から溶接用トーチ3にガスが供給される。ティーチペンダント8からロボット制御装置9に指令信号が入力され、このロボット制御装置9からの信号がマニピュレータ1に入力されて、第1軸乃至第6軸から成る6つの軸を回転させて、溶接用トーチ3の先端位置が制御される。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
[従来技術1]
従来、マニピュレータ1の手首部先端2の溶接用トーチ3及びワイヤ送給機6の取付け構造は、図7に示す構造であった。図7は、従来技術1のマニピュレータ1の手首部2の先端の溶接用トーチ3及びワイヤ送給機6の取付け構造を示す図である。同図において、ワイヤリール4はマニピュレータ1に取付けられていて、ワイヤ送給機6が、マニピュレータ1の上アーム10の上に取付けられている。溶接用トーチ3は、連結部材11によって手首部2に取付けられている。
ワイヤリール4に巻かれた溶接用ワイヤは、ワイヤ送給機6によって送出され、電力とガスとを一体となって供給するための一線式パワーケーブル12の中心を進行して、溶接用トーチ3に供給される。
第1軸J1乃至第6軸J6が設けられて、それぞれの軸が矢印で示したように旋回、揺動又は回転することによって、溶接用トーチ3の先端位置や姿勢を変化させることができる。
【0004】
一線式パワーケーブル12は、中心に溶接用ワイヤをガイドするためのコイルライナが設けられ、その外周にガスを流すためのホースが設けられている。そして、このホースの外周には、電力を供給するための導電線が被覆され、最外周が絶縁被覆されている。このように、一線式パワーケーブル12は多重構造であるために、曲げ剛性が高く曲げ難い。そのために、溶接用トーチ3が動くときの引きつれを少なくするために、長さに余裕を持たせて、たるませている。即ち、ケーブル12の変形を可能にするために、ケーブル12をワイヤ送給機6から溶接用トーチ3まで上アーム10外の空間に設けて、溶接用トーチ3が動作しても、ケーブル12のその都度の複雑な変形をある程度許容させている。
【0005】
また、マニピュレータ1を最大範囲に亘って動作させた場合に、一線式パワーケーブル12に負荷が掛からないケーブル長さに設定している。また、ケーブル12の耐久性を低下させることなく、被溶接物に対する溶接姿勢、治具との干渉、溶接ワイヤの送給性等への影響を考慮しながら、最適な長さへ変更することが可能である。
【0006】
図7において、マニピュレータ1を動作させて第6軸J6を回転させると、一線式パワーケーブル12がマニピュレータ1の手首部2に当り、第6軸J6を、それ以上回転させることができない。同図に示す斜線部分が干渉領域となる。従って、例えば、被溶接物に対する溶接用トーチ3の先端角度を一定として被溶接物の円周を溶接する場合、一線式パワーケーブル12が手首部2に当たって第6軸J6を回転させることができない。そのために、溶接できない部分は、溶接を一端停止させて、溶接用トーチ3の先端角度を変更させて、この先端角度に対応した溶接電流値、溶接電圧値及び溶接速度に変化させて溶接しなければならない。
また、被溶接物の円周を多層盛り溶接する場合、一線式パワーケーブル12がマニピュレータ1の手首部2に当り、第6軸J6をそれ以上回転させることができないために、継ぎ目のない溶接ビードを形成することもできない。
【0007】
[従来技術2]
上述した従来技術1において、マニピュレータ1を動作させて第6軸J6を回転させたときに、一線式パワーケーブル12がマニピュレータ1の手首部2と干渉するという課題を解決するために、図8及び図9に示す一線式パワーケーブル12の配線構造が提案されている。図8は、従来技術2の溶接用ロボットのマニピュレータを示す図であり、図9は、従来技術2の溶接用ロボットの固定給電部材の構造を説明するための示す図である。
【0008】
図8において、基台13の上には旋回ベース14が取付けられ、第1軸J1回りに旋回する。旋回ベース14の上には下アーム15が取付けられ、第2軸J2回りに揺動する。下アーム15の上端には上アーム16が取付けられ、第3軸J3回りに揺動する。上アーム16の先端部に胴体17が取付けられて、この胴体17は、上アーム16の長手方向の第4軸J4(手首第1軸)回りに回転する。胴体17の先端部に揺動体19が取付けられて、第4軸J4(手首第1軸)に直交する第5軸J5(手首第2軸)回りに揺動する。揺動体19の先端部に回転体20が取付けられて、第5軸J5(手首第2軸)に直交する第6軸J6(手首第3軸)回りに回転する。回転体20に溶接用トーチ3が取付けられている。
第1軸J1乃至第6軸J6には、減速機を介したモータが設けられていて、図6に示したロボット制御装置9からの指令を入力して駆動される。
【0009】
図8に示した下アーム15の上端において揺動する揺動台21にワイヤ送給機6が取付けられていて、上アーム16の基端部が、この揺動台21に回転自在に支持されている。ワイヤ送給機16から溶接用ワイヤが第4軸J4(手首第1軸)に略平行に送出される。上アーム16は、減速機22を介したモータ23によって作動する。
【0010】
図9において、上アーム16とワイヤ送給機6との間に固定給電部材24が設けられていて、この固定給電部材24の外周面に給電ケーブル25とガスホース26とが連結されている。また、この固定給電部材24の中心軸に、溶接用ワイヤの挿通孔が形成されている。
【0011】
胴体17には支持部材27が設けられて、この支持部材27の面が第4軸J4(手首第1軸)と垂直を成し、一線式パワーケーブル12の挿通孔18が形成されている。この挿通孔18を第4軸J4(手首第1軸)から上方へオフセットさせた位置に形成している。
一線式パワーケーブル12は、溶接用ワイヤが中心を進行し、電力とガスとを一体にして供給する。この一線式パワーケーブル12の基端部を固定給電部材24の先端部に接続し、このケーブル12は上アーム16及び胴体17の挿通孔18を通過して、胴体17の長手方向に延びて溶接用トーチ3に接続されている。
上記の胴体17は、その先端側が第4軸J4(手首第1軸)から側方へオフセットされていて、揺動体19は回転体20を片持ち支持している。このために、一線式パワーケーブル12は、胴体17の内部及び近隣空間で胴体17の長手方向に沿わすことができる。
【0012】
上述したように、図8に示した従来技術2の溶接用ロボットは、一線式パワーケーブル12が、上アーム16及び胴体17の挿通孔18を通過して、胴体17の長手方向に延びて溶接用トーチ3に接続されている。そのために、マニピュレータ1を動作させたときに、一線式パワーケーブル12が胴体17、被溶接物又は治具等と干渉することを軽減させることができるので、マニピュレータ1を自在に動作させることができ、最適な溶接用トーチの姿勢を取ることができる。
しかし、後述する課題を有する。
【特許文献1】特開2003−94168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術2の溶接用ロボットは、構造上、第4軸J4と第5軸J5とが一直線上になったときの一線式パワーケーブル12の長さが、最適なケーブル長さになる。この流さは、溶接用ロボットを使用する場合、固定長さとなる。従って、胴体17、被溶接物又は治具等との干渉を回避できるが、ケーブル12の長さに余裕を持たせることができないために、マニピュレータ1を動作したときに発生する一線式パワーケーブル12への外力が、直接、このケーブル12に掛かり、これを回避することができなかった。
【0014】
そのために、一線式パワーケーブル12として、耐久性を向上させたものを使用しているが、かなりの負荷が掛かるために、交換周期が早く、その結果、コストや交換の工数が掛かり、作業効率が低下するという不具合があった。
【0015】
そこで、一線式パワーケーブル12の耐久性や溶接用ワイヤの送給性を確保するために、ケーブル12に掛かる負荷を少しでも軽減させるには、マニピュレータ1の動作範囲や動作速度を制限する必要があった。
【0016】
また、マニピュレータ1の第6軸J6を回転させると、一線式パワーケーブル12がねじれ、溶接用トーチ3に送給する溶接用ワイヤがねじれ易くなり、ワイヤの先端位置を所望の溶接狙い位置に一致させることができない。この結果、均一で美麗な溶接ビード外観を得ることができない。
また、溶接用ワイヤがねじれ易くなると、溶接用ワイヤと溶接用トーチ3の先端に取付けた給電チップとの接触点が一定にならない。この結果、溶接用ワイヤと給電チップとの接触点からワイヤの先端までの長さであるワイヤ突き出し長が一定にならないために、ワイヤの溶融量が一定にならず、溶け込み形状を均一にすることができない。
【0017】
本発明は、一線式パワーケーブルの耐久性を向上させ、溶接用ワイヤがねじれることを減少させて、溶接結果の品質を向上させ、マニピュレータの動作範囲や動作速度を拡大して複雑な形状を有する被溶接物への適応性を向上させることができる溶接用ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、第1の発明は、
一線式パワーケーブルの挿通孔が形成された上アームと、
この上アームの先端部に取付けられて基端部に前記一線式パワーケーブルの挿通孔が形成されて前記上アームの長手方向の手首第1軸回りに回転する胴体と、
この胴体の先端部に取付けられて前記手首第1軸に直交する手首第2軸回りに揺動する揺動体と、
この揺動体の先端部に取付けられて前記手首第2軸に直交する手首第3軸回りに回転する回転体と、
この回転体に取付けられた溶接用トーチと、
前記上アームの基端部に取付けられて溶接用ワイヤを前記手首第1軸に略平行に送出するワイヤ送給機と、
給電ケーブルとガスホースとが外周面に連結されて前記溶接用ワイヤの挿通孔が中心軸に形成されて前記上アームと前記ワイヤ送給機との間に設けられた導電性の給電部材と、
前記給電部材の先端部に接続されて前記上アーム及び前記胴体の挿通孔を通過して前記胴体の長手方向に延びて中心を進行する前記溶接用ワイヤと電力とガスとを一体にして前記溶接用トーチに供給する前記一線式パワーケーブルとを備えた溶接用ロボットにおいて、
前記導電性の給電部材の基端部が前記ワイヤ送給機の溶接用ワイヤ送出口に回転自在に取付けられ、
前記給電ケーブル及び前記ガスホースを前記給電ケーブルの材質及び形状によって予め定められた巻半径及び巻回数で前記給電部材の外周に巻いてたるみを形成して連結していることを特徴とする溶接用ロボットである。
【0019】
第2の発明は、
第1の発明の給電ケーブルがストランドワイヤで形成されていることを特徴とする溶接用ロボットである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の溶接用ロボットは、一線式パワーケーブルの挿通孔が形成された上アームと、この上アームの先端部に取付けられて基端部に前記一線式パワーケーブルの挿通孔が形成されて上アームの長手方向の手首第1軸回りに回転する胴体と、この胴体の先端部に取付けられて手首第1軸に直交する手首第2軸回りに揺動する揺動体と、この揺動体の先端部に取付けられて手首第2軸に直交する手首第3軸回りに回転する回転体と、この回転体に取付けられた溶接用トーチと、上アームの基端部に取付けられて溶接用ワイヤを手首第1軸に略平行に送出するワイヤ送給機と、給電ケーブルとガスホースとが外周面に連結されて溶接用ワイヤの挿通孔が中心軸に形成されて上アームとワイヤ送給機との間に設けられた導電性の給電部材と、給電部材の先端部に接続されて上アーム及び胴体の挿通孔を通過して胴体の長手方向に延びて中心を進行する溶接用ワイヤと電力とガスとを一体にして溶接用トーチに供給する一線式パワーケーブルとを備え、給電部材の基端部がワイヤ送給機の溶接用ワイヤ送出口に回転自在に取付けられ、給電ケーブル及びガスホースを給電部材との連結部付近に給電ケーブルの材質及び形状によって予め定められた巻半径及び巻回数で給電部材の外周に巻いて、たるみを形成して、給電部材の外周面に連結している。
【0021】
この結果、マニピュレータ1を動作させたときに、一線式パワーケーブル12に掛かる回転力の負荷を軽減させることができるので、一線式パワーケーブル12の耐久性を向上させることができる。さらに、溶接用ワイヤがねじれることが減少して、溶接用ワイヤを安定して送給することができ、溶接結果の品質を向上させることができる。
また、従来技術2のように、一線式パワーケーブル12に掛かる負荷を軽減させるためにマニピュレータ1の動作範囲や動作速度を制限する必要が無いので、マニピュレータ1の動作範囲や動作速度を拡大することができ、複雑な形状を有する被溶接物への適応性を向上させることができる。
また、マニピュレータ1を動作させたときの一線式パワーケーブル12のねじれを抑制することができるので、ケーブル12の接続時に、ねじれによって収縮する長さを考慮する必要が無くなり、作業性を向上させることができる。また、ねじれによって収縮する長さを考慮することによって生じるたるみを、無くすことができるので、このたるみによって生じる溶接用ワイヤの送給性の低下を、防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[実施の形態1]
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
図1は、本発明の溶接用ロボットのマニピュレータを示す図であり、図2は、本発明の溶接用ロボットの回転給電部材の構造を説明するための図であり、図3は、その断面構造を示す図である。
図1において、上アーム16とワイヤ送給機6との間に回転給電部材28が設けられていて、この回転給電部材28の外周面に給電ケーブル29とガスホース30とが連結されている。図1及び図2において、図8及び図9に示した従来技術2の機能と同機能に同符号を付して、説明を省略する。
【0023】
以下、本発明の回転給電部材28の構造を詳細に説明する。
図3において、ブッシュ31が回転給電部材28の基端部に嵌め合わされ、このブッシュ31にガイドアダプタ32が挿入されている。このガイドアダプタ32は、ワイヤ送給機6(図2参照)の溶接用ワイヤ送出口6aに挿入されて、スリップリング33が、ガイドアダプタ32と溶接用ワイヤ送出口6aとに挿通されて、ガイドアダプタ32がワイヤ送給機6に固定されている。
この結果、ブッシュ31が嵌め合わされた回転給電部材28が、ガイドアダプタ32の回りに回転自在に取付けられる。このブッシュ31に、ベアリングを設けて回転性を向上させても良い。
【0024】
図3に示すガイドアダプタ32の中にインレットガイド34が設けられて、このインレットガイド34は、回転給電部材28の中に挿入された一線式パワーケーブル12のコイルライナ35に接続されている。これらのインレットガイド34及びコイルライナ35によって、溶接用ワイヤが溶接用トーチ3まで送給される。
図2に示すように、給電ケーブル29及びガスホース30が、回転給電部材28の回りに巻かれて、図3に示す給電ケーブル連結部36及びガスホース連結部37へそれぞれ連結されている。回転給電部材28は導電性を有するので、給電ケーブル29から供給された電力が回転給電部材28を流れて、一線式パワーケーブル12へ供給される。また、ガスホース30からのガスが回転給電部材28の内部を流れて、一線式パワーケーブル12へ供給される。
【0025】
図4は、本発明の溶接用ロボットの給電ケーブル29の回転給電部材28への接続状態を説明する図であり、図5は、本発明の溶接用ロボットの給電ケーブル29の回転給電部材28への接続状態をワイヤ送給機側から見たときの図である。
【0026】
給電ケーブル29は、回転給電部材28との連結部付近にたるみを設けて、回転給電部材28の給電ケーブル連結部36に連結している。この給電ケーブル29は、マニピュレータ1が動作する前の給電ケーブル29に十分なたるみが有るときは、図4(A)及び図5の29aに示すように、回転給電部材28との連結部付近にたるみが存在する。
そして、マニピュレータ1が動作して、一線式パワーケーブル12に回転力が働いて、このパワーケーブル12に接続された回転給電部材28が回転したときは、図4(B)及び図5の29bに示すように、連結部付近のたるみが減少することによって、給電ケーブル29に掛かる引っ張り力を抑制している。
【0027】
このたるみは、給電ケーブル29の材質及び形状によって予め定められた巻半径及び巻回数で、回転給電部材28の外周面に巻いて連結することによって形成している。
図4及び図5には、給電ケーブル29のみを示しているが、ガスホース30も同様の接続状態で回転給電部材28へ連結される。
【0028】
給電ケーブル29及びガスホース30は、回転給電部材28が回転して曲げの負荷が、ある程度掛かる。そのために、給電ケーブル29は、耐久性を有するストランドワイヤを使用し、ガスホース30は軟質のソフトナイロンチューブを使用している。
【0029】
以下、動作を説明する。
図1において、マニピュレータ1が動作すると、第4軸J4(手首第1軸)、第5軸J5(手首第2軸)及び第6軸J6(手首第3軸)が回転することによって、一線式パワーケーブル12に回転力が働く。この結果、一線式パワーケーブル12に接続されている回転給電部材28も回転する。このとき、この回転給電部材28が図4(A)から同図(B)に示す方向に回転すると、この回転給電部材28に連結された給電ケーブル29及びガスホース30の巻半径が減少することによってたるみが減少して、給電ケーブル及びガスホースに働く引っ張り力が抑制されることになる。
また、回転給電部材28が反対方向に回転したときは、巻半径が増加する方向に広がることによって、同様に、引っ張り力が抑制されることになる。
【0030】
この結果、マニピュレータ1を動作させたときに、一線式パワーケーブル12に掛かる回転力の負荷を軽減させることができるので、一線式パワーケーブル12の耐久性を向上させることができる。さらに、溶接用ワイヤがねじれることが減少して、溶接用ワイヤを安定して送給することができ、溶接結果の品質を向上させることができる。
また、従来技術2のように、一線式パワーケーブル12に掛かる負荷を軽減させるためにマニピュレータ1の動作範囲や動作速度を制限する必要が無いので、マニピュレータ1の動作範囲や動作速度を拡大することができ、複雑な形状を有する被溶接物への適応性を向上させることができる。
また、マニピュレータ1を動作させたときの一線式パワーケーブル12のねじれを抑制することができるので、ケーブル12の接続時に、ねじれによって収縮する長さを考慮する必要が無くなり、作業性を向上させることができる。また、ねじれによって収縮する長さを考慮することによって生じるたるみを、無くすことができるので、このたるみによって生じる溶接用ワイヤの送給性の低下を、防ぐことができる。
【0031】
上述した本発明の溶接用ロボットは、6軸から成るマニピュレータを使用した場合を説明したが、6軸に限られるものではなく、手首第1軸、手首第2軸及び手首第3軸から成る3軸以上の軸を設けたマニピュレータにも適用することができる。
また、本発明は、溶接用トーチをマニピュレータの先端に取付けた溶接用ロボットについて説明したが、溶接用ロボットに限られるものではなく、ハンドリングロボット、塗装ロボット及び溶射ロボット等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の溶接用ロボットのマニピュレータを示す図である。
【図2】本発明の溶接用ロボットの回転給電部材の構造を説明するための図である。
【図3】本発明の溶接用ロボットの回転給電部材の断面構造を示す図である。
【図4】本発明の溶接用ロボットの給電ケーブル29の回転給電部材28への接続状態を説明する図でる。。
【図5】本発明の溶接用ロボットの給電ケーブル29の回転給電部材28への接続状態をワイヤ送給機側から見たときの図である。
【図6】多関節ロボットを使用したときの溶接用ロボットの一般的な構成を示す図である。
【図7】従来技術1のマニピュレータ1の手首部2の先端の溶接用トーチ3及びワイヤ送給機6の取付け構造を示す図である。
【図8】従来技術2の溶接用ロボットのマニピュレータを示す図である。
【図9】従来技術2の溶接用ロボットの固定給電部材の構造を説明するための示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 マニピュレータ
2 手首部
3 溶接用トーチ
4 ワイヤリール
5 溶接用ワイヤ
6 ワイヤ送給機
6a 溶接用ワイヤ送出口
7 溶接用電源装置
8 ティーチペンダント
9 ロボット制御装置
10 上アーム
11 連結部材
12 一線式パワーケーブル
13 基台
14 旋回ベース
15 下アーム
16 ワイヤ送給機
16 上アーム
17 胴体
18 挿通孔
19 揺動体
20 回転体
21 揺動台
22 減速機
23 モータ
24 固定給電部材
25 給電ケーブル
26 ガスホース
27 支持部材
28 回転給電部材
29 給電ケーブル
30 ガスホース
31 ブッシュ
32 ガイドアダプタ
33 スリップリング
34 インレットガイド
35 コイルライナ
36 給電ケーブル連結部
37 ガスホース連結部
38 ガスボンベ
J1 第1軸
J2 第2軸
J3 第3軸
J4 第4軸
J5 第5軸
J6 第6軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一線式パワーケーブルの挿通孔が形成された上アームと、
この上アームの先端部に取付けられて基端部に前記一線式パワーケーブルの挿通孔が形成されて前記上アームの長手方向の手首第1軸回りに回転する胴体と、
この胴体の先端部に取付けられて前記手首第1軸に直交する手首第2軸回りに揺動する揺動体と、
この揺動体の先端部に取付けられて前記手首第2軸に直交する手首第3軸回りに回転する回転体と、
この回転体に取付けられた溶接用トーチと、
前記上アームの基端部に取付けられて溶接用ワイヤを前記手首第1軸に略平行に送出するワイヤ送給機と、
給電ケーブルとガスホースとが外周面に連結されて前記溶接用ワイヤの挿通孔が中心軸に形成されて前記上アームと前記ワイヤ送給機との間に設けられた導電性の給電部材と、
前記給電部材の先端部に接続されて前記上アーム及び前記胴体の挿通孔を通過して前記胴体の長手方向に延びて中心を進行する前記溶接用ワイヤと電力とガスとを一体にして前記溶接用トーチに供給する前記一線式パワーケーブルとを備えた溶接用ロボットにおいて、
前記導電性の給電部材の基端部が前記ワイヤ送給機の溶接用ワイヤ送出口に回転自在に取付けられ、
前記給電ケーブル及び前記ガスホースを前記給電ケーブルの材質及び形状によって予め定められた巻半径及び巻回数で前記給電部材の外周に巻いてたるみを形成して連結していることを特徴とする溶接用ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の給電ケーブルがストランドワイヤで形成されていることを特徴とする溶接用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−150378(P2006−150378A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341734(P2004−341734)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】