溶融ガラスの供給管及びガラスの成形装置
【課題】板状、管状、棒状等のガラスの生産において、形状の異なるガラスの少量多品種生産を容易とする成型ノズルへ溶融ガラスを供給する供給管と、該供給管を備えたガラスの成形装置を提供する。
【解決手段】長手方向に沿って内部に形成された溶融ガラスの通路と、通路の一端に設けられ、溶融ガラスの供給装置から溶融ガラスを通路内へ導入する第1の開口202と、通路を塞ぐ堰203と、第1の開口202と堰203との間に形成され、通路内の溶融ガラスを導出する第2の開口204と、を有し、下端200bに生産すべきガラスの形状に応じた成型ノズルが接続される。
【解決手段】長手方向に沿って内部に形成された溶融ガラスの通路と、通路の一端に設けられ、溶融ガラスの供給装置から溶融ガラスを通路内へ導入する第1の開口202と、通路を塞ぐ堰203と、第1の開口202と堰203との間に形成され、通路内の溶融ガラスを導出する第2の開口204と、を有し、下端200bに生産すべきガラスの形状に応じた成型ノズルが接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスの供給管及びガラスの成形装置に関し、特に、溶融ガラスの供給装置からの溶融ガラスを成形ノズルに供給する溶融ガラスの供給管及び該溶融ガラスの供給管を備えたガラスの成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの生産方法として、従来からダウンドロー法やフュージョン法などが知られている。ダウンドロー法は、ベルと呼ばれる成形体の外周面に沿って、溶融炉から溶融ガラスを流出させることで管状のガラスを生産する生産方法である(例えば、特許文献1参照)。また、フュージョン法は、耐火物(例えば、煉瓦)の容器に溶融ガラスを供給し、該容器から溢れ出た溶融ガラスを、容器の側面を這わせるようにして下方へ誘導する。そして、容器の下部において、この誘導した溶融ガラスの背面同士を当接させながら下方へ引いていくことで板状のガラスを生産する生産方法である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−321934号公報
【特許文献2】特開2003−81653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、ガラスが様々な用途に使用されるようになっている。例えば、デジタルカメラやプロジェクタでは、ガラスは、マイクロレンズ、撮像素子(例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ)の視感度を補正するフィルターガラス、撮像素子のカバーガラス等に使用されている。また、その他にも、ガラスは、映像表示装置のカバーガラス、タッチパネルのカバーガラス、スマートフォン等の電子機器の筐体として使用されている。このように、現在では、ガラスは、種々の用途で使用されているが、上記のような用途では、電子機器のモデルチェンジ等により頻繁に仕様が変更される。このため、近年では、少量多品種生産が可能なガラスの生産方法が求められている。
【0005】
しかしながら、従来のガラスの製造方法では、成形できるガラスの形状が固定されており、少量多品種生産を行うことができなかった。例えば、ダウンドロー法では、溶融ガラスの形状を決定するベル(成形体)に接続されたシャフト(軸)を支持する必要がある。通常、このシャフトは、溶融炉内を通って天井に吊り下げられる構造となっているため、成形するガラスの形状を変更する際には、このシャフトごとベルを取り外す必要がある。しかしながら、生産ラインを長時間止めて、シャフトごとベルを交換することは困難であり、他の形状のガラスを生産するために装置構成を変更することは実用的ではない。また、フュージョン法についても、耐火物の容器を取り換えるには、多大な時間が必要となる。このため、ダウンドロー法と同様に、他の形状のガラスを生産するために装置構成を変更することは実用的ではない。
【0006】
本発明は、上記の事情に対処してなされたものであり、生産するガラスの形状を簡易に変更できる溶融ガラスの供給管及びガラスの成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶融ガラスの供給管は、溶融ガラスの供給装置に接続され、ガラスを成形する成形ノズルへ溶融ガラスを供給する溶融ガラスの供給管であって、長手方向に沿って内部に形成された溶融ガラスの通路と、通路の一端に設けられ、溶融ガラスの供給装置から溶融ガラスを通路内へ導入する第1の開口と、通路を塞ぐ堰と、第1の開口と堰との間に形成され、通路内の溶融ガラスを導出する第2の開口と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶融ガラスの供給装置に接続される溶融ガラスの供給管を取り換えることで、生産するガラスの形状を容易に変更することができる。このため、少量多品種生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るガラス成形装置の構成図。
【図2】実施形態に係る溶融ガラスの供給管の構成図。
【図3】実施形態に係る溶融ガラスの供給管の構成図(他の形状)。
【図4】実施形態に係る成形ノズルの構成図。
【図5】実施形態に係る成形ノズルの構成図(他の形状1)。
【図6】実施形態に係る成形ノズルの構成図(他の形状2)。
【図7】成形ノズル(他の形状2)で成形したガラス管の外観図。
【図8】実施形態に係る成形ノズルの構成図(他の形状3)。
【図9】成形ノズル(他の形状3)で成形したガラス管の外観図。
【図10】実施形態に係る継手の構成図。
【図11】実施例2に係る成形ガラスの写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るガラス成形装置1の構成図である。ガラス成形装置1は、溶融ガラスGを生成・供給する溶融ガラスの供給装置100(以下、単に供給装置100と記載する)と、供給装置100に溶接により接続される溶融ガラスの供給管200(以下、単に供給管200と記載する)と、供給管200の下端に溶接により接続され、供給管200から供給される溶融ガラスGを所望の形状に成形するガラスの成形ノズル300(以下、単に成形ノズル300と記載する)と、供給管200及び成形ノズル300の周囲に配置され、供給管200及び成形ノズル300を流れる溶融ガラスGを加熱する加熱手段400と、を備える。
【0011】
(供給装置100の構成)
供給装置100は、溶融窯110と、清澄槽(リファイナ)120と、撹拌手段130とを備える。溶融窯110は、ガラス原料である珪砂(けいしゃ)、ソーダ灰、石灰石などを加熱して溶融する。清澄槽120は、ガラス化反応により発生するH2O、CO2、O2などの気体あるいは溶融時に巻き込まれた空気が原因で、溶融ガラスG中に生じた気泡を取り除く。
【0012】
撹拌手段130は、溶融ガラスGを収容する撹拌槽131と、図示しないモータにより駆動されて回転する回転軸132と、この回転軸132に取り付けられ、撹拌槽131内に収容されている溶融ガラスGを撹拌する撹拌翼133とを備える。撹拌手段130は、清澄槽120から送出される溶融ガラスGを撹拌して均質化する。均質化された溶融ガラスGは、撹拌槽131の底部に設けられた流出孔131aから流出する。
【0013】
(供給管200の構成)
図2は、供給管200の構成図である。図2(a)は、供給管200の外観図である。図2(b)は、図2(a)の線分X−Xにおける供給管200の断面図である。供給管200は、耐熱性及び耐腐食性を考慮し、白金(Pt)、又は白金合金(例えば、白金−ロジウム系の合金)で形成された円筒形の部材である。
【0014】
供給管200は、長手方向に沿って内部に形成された溶融ガラスGの通路201と、供給管200の上端200a、すなわち通路201の一端に設けられ、供給装置100から溶融ガラスGを通路201内へ導入する開口202(第1の開口)と、通路201を塞ぐ堰203と、開口202と堰203との間に形成され、通路201内の溶融ガラスGを導出させる複数の開口204(第2の開口)とを有する。
【0015】
供給管200は、開口202が設けられた上端200aを上にして、流出孔131aが設けられた撹拌槽131の底部に溶接により接続される。また、供給管200の下端200bには、成形ノズル300が溶接により接続される。
【0016】
(溶融ガラスGの流れ)
次に、供給管200における溶融ガラスの流れについて説明する。溶融ガラスGは、供給装置100から、供給管200の開口202を通って通路201へと流入する。流入した溶融ガラスGは、重力により通路201を下側へと進み、通路201の途中に設けられた堰203まで到達する。そして、溶融ガラスGがさらに供給されることにより、通路201が溶融ガラスGで開口204の高さまで満たされると、複数の開口204から溶融ガラスGが供給管200の外側へと流出する。
【0017】
複数の開口204から流出した溶融ガラスGは、重力により供給管200の外周面を下側へと流れる。供給管200の外周面を下側へと流れる際、複数の各開口204から流れ出る溶融ガラスGは、互いに接触することで合流し、最終的に円筒形の状態となって流れる。
【0018】
なお、円筒形の状態となった際の溶融ガラスGの厚みを均一にするためには、溶融ガラスGが流れる供給管200の外径を真円に近い形状とすることが好ましい。例えば、供給管200の外周に凹部がある場合、この凹部を流れる溶融ガラスGの厚みが局所的に厚くなってしまう虞がある。溶融ガラスGには、表面張力により、その外周面を真円に保とうとする力が働くため、凹んだ部分を埋めるようにして溶融ガラスGが凹部に流れ込むためである。
【0019】
なお、円筒形の状態となった際の溶融ガラスGの厚みを均一にするためには、供給管200の外周における開口204から成形ノズル300の下端302bまでの距離を十分に確保することが好ましい。これにより、溶融ガラスGが平坦な状態へ推移する時間を確保することで、溶融ガラスGの厚みを均一にすることが可能となる。
【0020】
図3は、供給管200の他の構成図である。図3(a)は、供給管200の外観図である。図3(b)は、図3(a)の線分X−Xにおける供給管200の断面図である。上述のように供給管200の外周における開口204から成形ノズル300の下端302bまでの距離を十分に確保するには、図3に示すように、供給管200において、堰203の下方に供給管200の外周から延在するスカート部205(延長部)を設けてもよい。もしくは、供給管200に接続される成形ノズル300において、上端300aから下端300bまでの距離を十分に確保するようにしてもよい。
【0021】
また、円筒形の状態となった際の溶融ガラスGの厚みを均一にするためには、供給管200の外周を流れる溶融ガラスGに温度差がないことも重要である。温度差がある場合、溶融ガラスGの粘性が異なるため、供給管200の外周を流れる溶融ガラスGがその流れる位置によって異なる厚みとなる虞がある。
【0022】
このため、この実施形態では、供給管200の外周を流れる溶融ガラスGを均等に加熱する加熱手段400(詳細は、後述する)を備え、供給管200を流れる溶融ガラスGを加熱している。また、溶融ガラスGを加熱することで、溶融ガラスGの粘性が低くなり、溶融ガラスGの流動性が向上する。このため、表面張力の作用を促すことができ、溶融ガラスGの表面をより平滑な面とすることができる。
【0023】
なお、複数の開口204が、供給管200の径方向に対して互いに離れすぎていると、複数の各開口204から流れ出る溶融ガラスGが互いに接触せずに、溶融ガラスGが円筒形の状態とならない。結果、供給管200の下端200bに接続された成形ノズル300にて、ガラスを所望の成形することができない。
【0024】
このため、供給管200に形成された複数の開口204は、各開口204から流れ出る溶融ガラスGが互いに接触して、円筒形の状態となる程度に互いに近接させる必要がある。しかしながら、開口204を互いに近接させるために、開口204の数を供給管200の径方向に増やしたり、開口204を供給管200の径方向に広げた場合、供給管200の径方向における断面積が減少し、供給管200が破断する虞がある。
【0025】
このため、開口204の数を増やす場合は、供給管200の径方向ではなく、長手方向に沿って開口204の数を増やすほうが好ましい。また、開口204を広げる場合、供給管200の径方向ではなく、長手方向に開口204を長孔となるように広げるほうが好ましい。
【0026】
上記のように、開口204の数を増やしたり、開口204を広げたりすることで、供給管200の径方向における断面積の減少を極力抑制することができるので、供給管200の強度が低下しすぎて破損してしまうことを効果的に抑制することができる。なお、溶融ガラスGの流量を増やす際には、供給管200の外周面を流れる溶融ガラスGの厚みを均一とする観点から、開口204を広げるよりは、開口204の数を増やすほうが好ましい。
【0027】
また、この際、開口204は、供給管200の径方向に対して均等の間隔で形成することが好ましい。開口204を供給管200の径方向に均等の間隔で形成することで、供給管200の外周面を流れる溶融ガラスGの厚みを効果的に均一とすることができる。
【0028】
また、流出方向の開口204と堰203との距離は、極力短いことが好ましい。これは、通路201内における開口204下端と堰203との間に、溶融ガラスGが停滞することを抑制するためである。
【0029】
なお、この実施形態では、供給管200を供給装置100の撹拌槽131の底部に接続しているが、接続する位置は、底部に限られない。例えば、撹拌槽131の側面に接続してもよい。この場合、供給管200の開口204よりも上流の位置で、下側に向かって屈曲した形状となる。また、供給管200の上端200aを、例えば、溶融窯110や清澄槽120の底部もしくは側面に接続するように構成してもよい。
【0030】
(成形ノズル300の構成)
図4は、成形ノズル300の構成図である。図4(a)は、成形ノズル300の正面図、図4(a)は、成形ノズル300の側面図である。以下、成形ノズル300の構成について、図4を参照して説明する。
【0031】
成形ノズル300は、供給管200からの溶融ガラスGの厚みを均一にするための上端部301と、溶融ガラスGを所望の形状に成形するための下端部302から構成される。成形ノズル300は、耐熱性及び耐腐食性を考慮し、白金(Pt)、又は白金合金(例えば、白金−ロジウム系等の合金)で形成される。供給管200と同じ材料で成形ノズル300を形成することで、溶接による接続が容易となる。
【0032】
成形ノズル300の上端部301は、供給管200の下端200bの外径と略同じ外径の円筒形状となっており、上端300aが供給管200の下端200bと溶接により接続される。下端部302は、上端部301から流れてくる溶融ガラスGを板状の形状に形成するため、下端300bへと向かうに従い、円筒形状から、左右から押しつぶされた扁平形状へと変化している。
【0033】
つまり、下端部302は、長手方向に垂直な径方向における外周面の断面形状が、下端300bへと向かうに従い、円形から長円へと変化し、下端300bでは、矩形状(長方形)となっている。
【0034】
(溶融ガラスGの流れ)
次に、成形ノズル300における溶融ガラスGの流れについて説明する。
溶融ガラスGは、重力により、供給管200の下端200bから成形ノズル300の上端300aへと流れる。この際、溶融ガラスGは、成形ノズル300の外周面全体に均一な厚みで巻き付いた状態で流れる。また、成形ノズル300の外周面を流れる溶融ガラスGの外周面は、表面張力により略真円となっている。
【0035】
溶融ガラスGは、さらに、成形ノズル300の上端部301から下端部302へと流れる。そして、成形ノズル300の下端300bへと進むに従い、溶融ガラスGの外周面の形状が、成形ノズル300の下端部302の外周面の形状に合わせて、円形から長円へと変化し、成形ノズル300の下端300bにおいて、成形面300c側を流れる溶融ガラスGと成形面300d側を流れる溶融ガラスGとが合流し、板形状となって成形ノズル300の下端300bから流れ落ちる。
【0036】
板形状となった溶融ガラスGは、図示しないドローイング設備(例えば、ローラ)により、徐冷装置又は採板装置へと搬送される。
【0037】
(成形ノズル300のその他の構成)
なお、図4では、溶融ガラスGを板形状に成形する成形ノズルについて説明したが、成形ノズル300の形状を変えることにより、様々な形状のガラスを成形することができる。図5、図6及び図8は、成形ノズル300のその他の形状(成形ノズル310,320,320A)を示した図である。以下、図5、図6及び図8を参照して、成形ノズル300のその他の形状である成形ノズル310,320,320Aについて説明する。
【0038】
なお、成形ノズル310,320,320Aについても、成形ノズル300と同様、白金(Pt)、又は白金合金(例えば、白金−ロジウム系等の合金)で形成される。供給管200と同じ材料で成形ノズル310,320,320Aを形成することで、溶接による接続が容易となる。
【0039】
(その他の形状1)
図5に示す成形ノズル310は、ガラスロッドを成形するための成形ノズルである。以下、成形ノズル310の構成について、図5を参照して説明する。成形ノズル310は、供給管200からの溶融ガラスGの厚みを均一にするための上端部311と、溶融ガラスGを所望の形状に成形するための下端部312から構成される。
【0040】
成形ノズル310の上端部311は、供給管200の下端200bの外径と略同じ外径の円筒形状となっており、上端310aが供給管200の下端200bと溶接により接続される。下端部312は、上端部311から流れてくる溶融ガラスGをロッド(棒)形状に形成するため、下端310bを頂点とした円錐形状となっている。
【0041】
(溶融ガラスGの流れ)
次に、成形ノズル310における溶融ガラスGの流れについて説明する。
溶融ガラスGは、重力により、供給管200の下端200bから成形ノズル310の上端310aへと流れる。この際、溶融ガラスGは、成形ノズル300の外周面全体に均一な厚みで巻き付いた状態で流れる。また、成形ノズル310の外周面を流れる溶融ガラスGの外周面は、表面張力により略真円となっている。
【0042】
溶融ガラスGは、さらに、成形ノズル310の上端部311から下端部312へと流れる。そして、成形ノズル310の下端310bへと進むに従い、溶融ガラスGは、肉厚が厚く変化しながらその直径(外径)が小さくなり、下端310bにおいて、下端部312の外周面を流れる溶融ガラスGが合流してロッド形状となる。
【0043】
ロッド形状となった溶融ガラスGは、図示しないドローイング設備(例えば、ローラ)により、徐冷装置又は採板装置へと搬送される。
【0044】
(その他の形状2)
図6に示す成形ノズル320は、ガラス管を成形するための成形ノズルである。図6(a)は、成形ノズル320の外観図である。図6(b)は、図6(a)の線分X−Xでの成形ノズル320の断面図である。なお、図6(a)及び図6(b)では、供給管200の下端200bに成形ノズル320を接続した状態を図示している。以下、図6(a)及び図6(b)を参照して成形ノズル320の構成について説明する。
【0045】
成形ノズル320は、溶融ガラスGを所望の形状のガラス管に成形するための内管321及び外管322から構成される。内管321は、ガラス管の長手方向に直交する面の内周面(以下、単に内周面と記載する)の断面形状を成形するための管である。内管321の上端321aは、供給管200の下端200bに溶接により接続される。内管321は、上端321aから下端321bへ行くに従い、外周面の断面形状が所望の形状(ここでは、略矩形)へと緩やかに変化する。
【0046】
外管322は、ガラス管の長手方向に直交する面の外周面(以下、単に外周面と記載する)の断面形状を成形するための管である。外管322の上端322aは、供給管200に形成された開口204よりも上流側で、供給管200と溶接により接続される。外管322は、上端322aから下端322bへ行くに従い、内周面の断面形状が所望の形状(ここでは、略長円形)へと緩やかに変化する。また、外管322には、空気抜き用の孔322cが形成されている。
【0047】
成形ノズル320は、ガラス管Rの内周面の断面形状を成形する内管321と、ガラス管の外周面の断面形状を成形する外管322とを備え、内管321の下端321bにおける断面形状と外管322の下端322bにおける断面形状とが非相似であるので、ガラス管Rの内周面及び外周面の断面形状を非相似形に成形することができる。
【0048】
なお、内管321と外管322とで形成される空間(溶融ガラスGの通路)の断面積は、成形ノズル320の上端から下端へ行くに従い徐々に狭く、つまり漸減するように構成されている。このため、内管321と外管322との間を流れる溶融ガラスGが受ける圧力損失は、成形ノズル320の上端で最も小さく、下端に行くに従い大きくなる。
【0049】
なお、内管321と外管322との間を流れる溶融ガラスGが受ける圧力損失は、溶融ガラスGの粘性とも関係する。このため、予め、溶融ガラスGの粘性を確認し、内管321と外管322とで形成される空間内に溶融ガラスGを隙間なく行き渡らせることができる圧力損失となるように成形ノズル320の空間を形成することに留意する。
【0050】
(溶融ガラスGの流れ)
次に、成形ノズル320における溶融ガラスGの流れについて説明する。
供給管200の開口204から流出した溶融ガラスGは、内管321と外管322とで形成される空間内を成形ノズル320の下端に向かって流れる。この際、内管321と外管322とで形成される空間(溶融ガラスGの通路)の断面積が、成形ノズル320の上端から下端へ行くに従い漸減するように構成されているため、溶融ガラスGは、成形ノズル320の長手方向に対して垂直方向に広がり、内管321と外管322とで形成される空間内に隙間なく行き渡った状態で、成形ノズル320の下端から流出する。また、内管321と外管322とで形成される空間内の気体は、外管322の孔322cと成形ノズル320の下端から溶融ガラスGに押し出されるようにして排気される。
【0051】
図7は、成形ノズル320を使用して成形されるガラス管R1の外観図である。成形ノズル320を使用して成形されたガラス管R1は、ガラス管R1を図7の線分X−Xもしくはガラス管R1の長手方向の軸に直交する方向で切断され、電子機器(例えば、スマートフォン)の筐体として使用される。この成形ノズル320では、電子機器の筐体の表面が、平滑性に優れるガラス管R1の外側表面(火造り面)となるため、ガラス管R1を成形後に表面を研磨処理等する必要がなく、電子機器の筐体の生産性が向上する。
【0052】
なお、図6(a)及び図6(b)に示す成形ノズル320は、内管321の下端321bと、外管322の下端322bとが略同一の高さ(位置)にあるが、異なる高さ(位置)としてもよい。さらに、内管321の上端321aの断面形状を、予め所望の形状(ここでは、略矩形)としてもよい。
【0053】
また、成形ノズル320に、内管321の内壁へ気体(例えば、ドライエアや不活性ガス(N2,Ar等))を供給するためのノズルを備えるようにしてもよい。内管321の内壁へ気体(ガス)を供給して、成形ノズル320により所望の形状となったガラス管内の圧力を調整することで、溶融ガラスGが成形ノズル320を離れる際に表面張力により径方向に縮小することを抑制することができる。
【0054】
このため、成形ノズル320により成形されるガラス管Rの形状(特に、ガラス管の内径と外径)を精度よく制御することができる。また、供給される気体(ガス)は、内管321を冷却するため、内管321と外管322との間を流れる溶融ガラスGを冷却する効果も有する。
【0055】
(その他の形状3)
図8に示す成形ノズル320Aは、一部が開口、すなわち断面がC字形状のガラス管を成形するための成形ノズルである(本発明では、断面がC字型のものもガラス管に含むものとする)。図8(a)は、成形ノズル320Aの外観図である。図8(b)は、図8(a)の線分X−Xでの断面図である。なお、図8(a)及び図8(b)では、供給管200の下端200bに成形ノズル320Aを接続した状態を図示している。以下、図8(a)及び図8(b)を参照して成形ノズル320Aの構成について説明する。なお、図6で説明した構成と同じ構成には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0056】
図8(a)及び図8(b)に示すように、成形ノズル320Aが備える外管322Aは、一部が開口している。この開口の端部(両端)は、それぞれ内側(内管321)に向かって折り曲げられ、溶接により内管321と接合されている。このため、外管322Aと内管321により形成される空間の断面形状は、一部が欠けた形状(C字型)となっている。
【0057】
図9は、成形ノズル320Aを使用して成形されるガラス管R2の外観図である。成形ノズル320Aを使用した場合、すでに一部が開口した、断面形状がC字型のガラス管R2が成形される。このため、ガラス管R2を切断する必要がなく、電子機器の筐体の生産性が向上する。その他の効果は、成形ノズル320と同じである。なお、成形ノズル320Aを使用する場合、供給管200の開口204が形成された位置と外管322Aの開口部の位置とが重ならないよう留意する。
【0058】
(加熱手段400の構成)
加熱手段400は、例えば、ランプヒータであり、赤外線ランプ401と、その背後に配置された反射ミラー402とを備える。赤外線ランプ401及び反射ミラー402は、それぞれ半円弧状の部品を2つ組み合わせてリング状にしたものを複数段積み重ねて構成されており、全体として円筒形の形状をなし、供給管200及び成形ノズル300を取り囲むようにして取り付けられている。
【0059】
加熱手段400により溶融ガラスGを加熱することで、溶融ガラスGの粘性が低くなり、溶融ガラスGの流動性が向上する。このため、表面張力の影響を受けやすくなり、溶融ガラスGの表面をより平滑な面とすることができる。
【0060】
(その他の実施形態)
図10は、継手500の構成図である。図10(a)は、継手500の外観図である。図10(b)は、継手500を供給管200及び成形ノズル300に接続した状態を示した図である。
【0061】
継手500は、供給管200の下端200bに溶接により接続される上端部501と、継手500の外周面を下端200bへ向かって流れる溶融ガラスGの外径を広げるための傾斜部502と、成形ノズル300,310,320,又は302Aのいずれかと溶接により接続される下端部503とを備える。図10(b)では、成形ノズル300と接続した状態を示した。
【0062】
なお、継手500は、耐熱性及び耐腐食性を考慮し、白金(Pt)、又は白金合金(例えば、白金−ロジウム系等の合金)で形成される。供給管200や成形ノズル300,310,320,又は302Aと同じ材料で継手500を形成することで、溶接による接続が容易となる。
【0063】
図10に示すように、継手500を供給管200と成形ノズル300との間に接続することで、成形するガラスの大きさを任意に変更することができる。例えば、図10に示す例では、より幅の広い板ガラスを成形することができる。その他の効果は、実施形態に係る効果と同じである。
【実施例】
【0064】
次に、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
この実施例で用いた溶融ガラス(ソーダライムガラス)の組成は、下記のとおりである。なお、各組成の表示は、酸化物基準の質量%表示である。
SiO2 69%
Al2O3 2%
Na2O 13%
K2O 2%
CaO 9%
MgO 5%
【0066】
次に、実施例1,2における試料(ガラス成形品)の作成について説明する。
(装置構成)
実施例1,2では、図4に示す成形ノズル300(実施例1)と、図6に示す成形ノズル320(実施例2)とを、それぞれロジウム10%を含有する白金合金にて作製した。なお、実施例2の成形ノズル下端における内管及び外管の断面形状は、それぞれ略矩形及び略長円とした。この各実施例1,2の成形ノズルを溶融ガラスの供給管に溶接により接続し、供給管及び成形ノズルの側面には、成形ノズルを均質(均等)に加熱することができる加熱手段(例えば、ランプヒータ)を設けた。
【0067】
(実施例1)
上述した組成のガラス原料を電気炉に投入した後、1300℃の温度にてガラス原料を溶融した。その後、加熱手段により供給管及び成形ノズルを加熱した状態で、電気炉に接続された供給管から溶融したガラスを流出させた。供給管から流出した溶融ガラスは、図4に示す成形ノズルの下端において合流し、板ガラスの形状となって固化した。
【0068】
(実施例2)
実施例1で使用した供給管を、図6に示す成形ノズルを接続した供給管に取り換えた後、加熱手段により供給管及び成形ノズルの温度を上げ、電気炉に接続された供給管から成形ノズルへ溶融したガラスを流出させた。供給管から流出した溶融ガラスは、図6に示す成形ノズルの下端から管形状となって流出し固化した。なお、実施例2では、供給管及び成形ノズル内の溶融ガラスに流動性を持たせるために、成形ノズルの先端温度が1000℃となるように供給管及び成形ノズルを加熱手段により加熱した。
【0069】
実施例2で成形したガラス管の写真を図11に示す。図11から、ガラス管の内周面(略矩形)と外周面(略長円形)とが非相似形の断面形状を有していることがわかる。また、成形されたガラス管の断面寸法は、長辺長さが36.8mm、短辺長さが24.0mm、一番厚い肉厚部が5.5mm、一番薄い肉厚部が2.6mmであった。
【0070】
以上のように、本発明によれば、溶融ガラスの供給装置に接続される溶融ガラスの供給管を取り換えることで、生産するガラスの形状を容易に変更することができる。このため、少量多品種生産が可能となる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の省略や置き換え、又は、変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の溶融ガラスの供給管及びガラスの成形装置は、溶融ガラスの供給装置に接続される溶融ガラスの供給管を取り換えることで、生産するガラスの形状を容易に変更することができるので、少量多品種生産が可能となる。このため、モデルチェンジ等により頻繁に仕様が変更されるガラス、例えば、デジタルカメラやプロジェクタのマイクロレンズ、撮像素子の視感度を補正するフィルターガラスや撮像素子のカバーガラス、映像表示装置のカバーガラス、タッチパネルのカバーガラスやスマートフォン等の筐体として使用されるガラス等の生産に好適である。
【符号の説明】
【0073】
1…ガラス成形装置、100…溶融ガラスの供給装置、110…溶融窯、120…清澄槽、130…撹拌手段、130…清澄槽、131…撹拌槽、131a…流出孔、132…回転軸、133…撹拌翼、200…溶融ガラスの供給管、200a…上端、200b…下端、201…通路、202…開口(第1の開口)、203…堰、204…開口(第2の開口)、205…スカート部(延長部)、300,310,320,320A…ガラスの成形ノズル、400…加熱手段、500…継手、G…溶融ガラス、R1,R2…ガラス管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスの供給管及びガラスの成形装置に関し、特に、溶融ガラスの供給装置からの溶融ガラスを成形ノズルに供給する溶融ガラスの供給管及び該溶融ガラスの供給管を備えたガラスの成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの生産方法として、従来からダウンドロー法やフュージョン法などが知られている。ダウンドロー法は、ベルと呼ばれる成形体の外周面に沿って、溶融炉から溶融ガラスを流出させることで管状のガラスを生産する生産方法である(例えば、特許文献1参照)。また、フュージョン法は、耐火物(例えば、煉瓦)の容器に溶融ガラスを供給し、該容器から溢れ出た溶融ガラスを、容器の側面を這わせるようにして下方へ誘導する。そして、容器の下部において、この誘導した溶融ガラスの背面同士を当接させながら下方へ引いていくことで板状のガラスを生産する生産方法である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−321934号公報
【特許文献2】特開2003−81653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、ガラスが様々な用途に使用されるようになっている。例えば、デジタルカメラやプロジェクタでは、ガラスは、マイクロレンズ、撮像素子(例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ)の視感度を補正するフィルターガラス、撮像素子のカバーガラス等に使用されている。また、その他にも、ガラスは、映像表示装置のカバーガラス、タッチパネルのカバーガラス、スマートフォン等の電子機器の筐体として使用されている。このように、現在では、ガラスは、種々の用途で使用されているが、上記のような用途では、電子機器のモデルチェンジ等により頻繁に仕様が変更される。このため、近年では、少量多品種生産が可能なガラスの生産方法が求められている。
【0005】
しかしながら、従来のガラスの製造方法では、成形できるガラスの形状が固定されており、少量多品種生産を行うことができなかった。例えば、ダウンドロー法では、溶融ガラスの形状を決定するベル(成形体)に接続されたシャフト(軸)を支持する必要がある。通常、このシャフトは、溶融炉内を通って天井に吊り下げられる構造となっているため、成形するガラスの形状を変更する際には、このシャフトごとベルを取り外す必要がある。しかしながら、生産ラインを長時間止めて、シャフトごとベルを交換することは困難であり、他の形状のガラスを生産するために装置構成を変更することは実用的ではない。また、フュージョン法についても、耐火物の容器を取り換えるには、多大な時間が必要となる。このため、ダウンドロー法と同様に、他の形状のガラスを生産するために装置構成を変更することは実用的ではない。
【0006】
本発明は、上記の事情に対処してなされたものであり、生産するガラスの形状を簡易に変更できる溶融ガラスの供給管及びガラスの成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶融ガラスの供給管は、溶融ガラスの供給装置に接続され、ガラスを成形する成形ノズルへ溶融ガラスを供給する溶融ガラスの供給管であって、長手方向に沿って内部に形成された溶融ガラスの通路と、通路の一端に設けられ、溶融ガラスの供給装置から溶融ガラスを通路内へ導入する第1の開口と、通路を塞ぐ堰と、第1の開口と堰との間に形成され、通路内の溶融ガラスを導出する第2の開口と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶融ガラスの供給装置に接続される溶融ガラスの供給管を取り換えることで、生産するガラスの形状を容易に変更することができる。このため、少量多品種生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るガラス成形装置の構成図。
【図2】実施形態に係る溶融ガラスの供給管の構成図。
【図3】実施形態に係る溶融ガラスの供給管の構成図(他の形状)。
【図4】実施形態に係る成形ノズルの構成図。
【図5】実施形態に係る成形ノズルの構成図(他の形状1)。
【図6】実施形態に係る成形ノズルの構成図(他の形状2)。
【図7】成形ノズル(他の形状2)で成形したガラス管の外観図。
【図8】実施形態に係る成形ノズルの構成図(他の形状3)。
【図9】成形ノズル(他の形状3)で成形したガラス管の外観図。
【図10】実施形態に係る継手の構成図。
【図11】実施例2に係る成形ガラスの写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るガラス成形装置1の構成図である。ガラス成形装置1は、溶融ガラスGを生成・供給する溶融ガラスの供給装置100(以下、単に供給装置100と記載する)と、供給装置100に溶接により接続される溶融ガラスの供給管200(以下、単に供給管200と記載する)と、供給管200の下端に溶接により接続され、供給管200から供給される溶融ガラスGを所望の形状に成形するガラスの成形ノズル300(以下、単に成形ノズル300と記載する)と、供給管200及び成形ノズル300の周囲に配置され、供給管200及び成形ノズル300を流れる溶融ガラスGを加熱する加熱手段400と、を備える。
【0011】
(供給装置100の構成)
供給装置100は、溶融窯110と、清澄槽(リファイナ)120と、撹拌手段130とを備える。溶融窯110は、ガラス原料である珪砂(けいしゃ)、ソーダ灰、石灰石などを加熱して溶融する。清澄槽120は、ガラス化反応により発生するH2O、CO2、O2などの気体あるいは溶融時に巻き込まれた空気が原因で、溶融ガラスG中に生じた気泡を取り除く。
【0012】
撹拌手段130は、溶融ガラスGを収容する撹拌槽131と、図示しないモータにより駆動されて回転する回転軸132と、この回転軸132に取り付けられ、撹拌槽131内に収容されている溶融ガラスGを撹拌する撹拌翼133とを備える。撹拌手段130は、清澄槽120から送出される溶融ガラスGを撹拌して均質化する。均質化された溶融ガラスGは、撹拌槽131の底部に設けられた流出孔131aから流出する。
【0013】
(供給管200の構成)
図2は、供給管200の構成図である。図2(a)は、供給管200の外観図である。図2(b)は、図2(a)の線分X−Xにおける供給管200の断面図である。供給管200は、耐熱性及び耐腐食性を考慮し、白金(Pt)、又は白金合金(例えば、白金−ロジウム系の合金)で形成された円筒形の部材である。
【0014】
供給管200は、長手方向に沿って内部に形成された溶融ガラスGの通路201と、供給管200の上端200a、すなわち通路201の一端に設けられ、供給装置100から溶融ガラスGを通路201内へ導入する開口202(第1の開口)と、通路201を塞ぐ堰203と、開口202と堰203との間に形成され、通路201内の溶融ガラスGを導出させる複数の開口204(第2の開口)とを有する。
【0015】
供給管200は、開口202が設けられた上端200aを上にして、流出孔131aが設けられた撹拌槽131の底部に溶接により接続される。また、供給管200の下端200bには、成形ノズル300が溶接により接続される。
【0016】
(溶融ガラスGの流れ)
次に、供給管200における溶融ガラスの流れについて説明する。溶融ガラスGは、供給装置100から、供給管200の開口202を通って通路201へと流入する。流入した溶融ガラスGは、重力により通路201を下側へと進み、通路201の途中に設けられた堰203まで到達する。そして、溶融ガラスGがさらに供給されることにより、通路201が溶融ガラスGで開口204の高さまで満たされると、複数の開口204から溶融ガラスGが供給管200の外側へと流出する。
【0017】
複数の開口204から流出した溶融ガラスGは、重力により供給管200の外周面を下側へと流れる。供給管200の外周面を下側へと流れる際、複数の各開口204から流れ出る溶融ガラスGは、互いに接触することで合流し、最終的に円筒形の状態となって流れる。
【0018】
なお、円筒形の状態となった際の溶融ガラスGの厚みを均一にするためには、溶融ガラスGが流れる供給管200の外径を真円に近い形状とすることが好ましい。例えば、供給管200の外周に凹部がある場合、この凹部を流れる溶融ガラスGの厚みが局所的に厚くなってしまう虞がある。溶融ガラスGには、表面張力により、その外周面を真円に保とうとする力が働くため、凹んだ部分を埋めるようにして溶融ガラスGが凹部に流れ込むためである。
【0019】
なお、円筒形の状態となった際の溶融ガラスGの厚みを均一にするためには、供給管200の外周における開口204から成形ノズル300の下端302bまでの距離を十分に確保することが好ましい。これにより、溶融ガラスGが平坦な状態へ推移する時間を確保することで、溶融ガラスGの厚みを均一にすることが可能となる。
【0020】
図3は、供給管200の他の構成図である。図3(a)は、供給管200の外観図である。図3(b)は、図3(a)の線分X−Xにおける供給管200の断面図である。上述のように供給管200の外周における開口204から成形ノズル300の下端302bまでの距離を十分に確保するには、図3に示すように、供給管200において、堰203の下方に供給管200の外周から延在するスカート部205(延長部)を設けてもよい。もしくは、供給管200に接続される成形ノズル300において、上端300aから下端300bまでの距離を十分に確保するようにしてもよい。
【0021】
また、円筒形の状態となった際の溶融ガラスGの厚みを均一にするためには、供給管200の外周を流れる溶融ガラスGに温度差がないことも重要である。温度差がある場合、溶融ガラスGの粘性が異なるため、供給管200の外周を流れる溶融ガラスGがその流れる位置によって異なる厚みとなる虞がある。
【0022】
このため、この実施形態では、供給管200の外周を流れる溶融ガラスGを均等に加熱する加熱手段400(詳細は、後述する)を備え、供給管200を流れる溶融ガラスGを加熱している。また、溶融ガラスGを加熱することで、溶融ガラスGの粘性が低くなり、溶融ガラスGの流動性が向上する。このため、表面張力の作用を促すことができ、溶融ガラスGの表面をより平滑な面とすることができる。
【0023】
なお、複数の開口204が、供給管200の径方向に対して互いに離れすぎていると、複数の各開口204から流れ出る溶融ガラスGが互いに接触せずに、溶融ガラスGが円筒形の状態とならない。結果、供給管200の下端200bに接続された成形ノズル300にて、ガラスを所望の成形することができない。
【0024】
このため、供給管200に形成された複数の開口204は、各開口204から流れ出る溶融ガラスGが互いに接触して、円筒形の状態となる程度に互いに近接させる必要がある。しかしながら、開口204を互いに近接させるために、開口204の数を供給管200の径方向に増やしたり、開口204を供給管200の径方向に広げた場合、供給管200の径方向における断面積が減少し、供給管200が破断する虞がある。
【0025】
このため、開口204の数を増やす場合は、供給管200の径方向ではなく、長手方向に沿って開口204の数を増やすほうが好ましい。また、開口204を広げる場合、供給管200の径方向ではなく、長手方向に開口204を長孔となるように広げるほうが好ましい。
【0026】
上記のように、開口204の数を増やしたり、開口204を広げたりすることで、供給管200の径方向における断面積の減少を極力抑制することができるので、供給管200の強度が低下しすぎて破損してしまうことを効果的に抑制することができる。なお、溶融ガラスGの流量を増やす際には、供給管200の外周面を流れる溶融ガラスGの厚みを均一とする観点から、開口204を広げるよりは、開口204の数を増やすほうが好ましい。
【0027】
また、この際、開口204は、供給管200の径方向に対して均等の間隔で形成することが好ましい。開口204を供給管200の径方向に均等の間隔で形成することで、供給管200の外周面を流れる溶融ガラスGの厚みを効果的に均一とすることができる。
【0028】
また、流出方向の開口204と堰203との距離は、極力短いことが好ましい。これは、通路201内における開口204下端と堰203との間に、溶融ガラスGが停滞することを抑制するためである。
【0029】
なお、この実施形態では、供給管200を供給装置100の撹拌槽131の底部に接続しているが、接続する位置は、底部に限られない。例えば、撹拌槽131の側面に接続してもよい。この場合、供給管200の開口204よりも上流の位置で、下側に向かって屈曲した形状となる。また、供給管200の上端200aを、例えば、溶融窯110や清澄槽120の底部もしくは側面に接続するように構成してもよい。
【0030】
(成形ノズル300の構成)
図4は、成形ノズル300の構成図である。図4(a)は、成形ノズル300の正面図、図4(a)は、成形ノズル300の側面図である。以下、成形ノズル300の構成について、図4を参照して説明する。
【0031】
成形ノズル300は、供給管200からの溶融ガラスGの厚みを均一にするための上端部301と、溶融ガラスGを所望の形状に成形するための下端部302から構成される。成形ノズル300は、耐熱性及び耐腐食性を考慮し、白金(Pt)、又は白金合金(例えば、白金−ロジウム系等の合金)で形成される。供給管200と同じ材料で成形ノズル300を形成することで、溶接による接続が容易となる。
【0032】
成形ノズル300の上端部301は、供給管200の下端200bの外径と略同じ外径の円筒形状となっており、上端300aが供給管200の下端200bと溶接により接続される。下端部302は、上端部301から流れてくる溶融ガラスGを板状の形状に形成するため、下端300bへと向かうに従い、円筒形状から、左右から押しつぶされた扁平形状へと変化している。
【0033】
つまり、下端部302は、長手方向に垂直な径方向における外周面の断面形状が、下端300bへと向かうに従い、円形から長円へと変化し、下端300bでは、矩形状(長方形)となっている。
【0034】
(溶融ガラスGの流れ)
次に、成形ノズル300における溶融ガラスGの流れについて説明する。
溶融ガラスGは、重力により、供給管200の下端200bから成形ノズル300の上端300aへと流れる。この際、溶融ガラスGは、成形ノズル300の外周面全体に均一な厚みで巻き付いた状態で流れる。また、成形ノズル300の外周面を流れる溶融ガラスGの外周面は、表面張力により略真円となっている。
【0035】
溶融ガラスGは、さらに、成形ノズル300の上端部301から下端部302へと流れる。そして、成形ノズル300の下端300bへと進むに従い、溶融ガラスGの外周面の形状が、成形ノズル300の下端部302の外周面の形状に合わせて、円形から長円へと変化し、成形ノズル300の下端300bにおいて、成形面300c側を流れる溶融ガラスGと成形面300d側を流れる溶融ガラスGとが合流し、板形状となって成形ノズル300の下端300bから流れ落ちる。
【0036】
板形状となった溶融ガラスGは、図示しないドローイング設備(例えば、ローラ)により、徐冷装置又は採板装置へと搬送される。
【0037】
(成形ノズル300のその他の構成)
なお、図4では、溶融ガラスGを板形状に成形する成形ノズルについて説明したが、成形ノズル300の形状を変えることにより、様々な形状のガラスを成形することができる。図5、図6及び図8は、成形ノズル300のその他の形状(成形ノズル310,320,320A)を示した図である。以下、図5、図6及び図8を参照して、成形ノズル300のその他の形状である成形ノズル310,320,320Aについて説明する。
【0038】
なお、成形ノズル310,320,320Aについても、成形ノズル300と同様、白金(Pt)、又は白金合金(例えば、白金−ロジウム系等の合金)で形成される。供給管200と同じ材料で成形ノズル310,320,320Aを形成することで、溶接による接続が容易となる。
【0039】
(その他の形状1)
図5に示す成形ノズル310は、ガラスロッドを成形するための成形ノズルである。以下、成形ノズル310の構成について、図5を参照して説明する。成形ノズル310は、供給管200からの溶融ガラスGの厚みを均一にするための上端部311と、溶融ガラスGを所望の形状に成形するための下端部312から構成される。
【0040】
成形ノズル310の上端部311は、供給管200の下端200bの外径と略同じ外径の円筒形状となっており、上端310aが供給管200の下端200bと溶接により接続される。下端部312は、上端部311から流れてくる溶融ガラスGをロッド(棒)形状に形成するため、下端310bを頂点とした円錐形状となっている。
【0041】
(溶融ガラスGの流れ)
次に、成形ノズル310における溶融ガラスGの流れについて説明する。
溶融ガラスGは、重力により、供給管200の下端200bから成形ノズル310の上端310aへと流れる。この際、溶融ガラスGは、成形ノズル300の外周面全体に均一な厚みで巻き付いた状態で流れる。また、成形ノズル310の外周面を流れる溶融ガラスGの外周面は、表面張力により略真円となっている。
【0042】
溶融ガラスGは、さらに、成形ノズル310の上端部311から下端部312へと流れる。そして、成形ノズル310の下端310bへと進むに従い、溶融ガラスGは、肉厚が厚く変化しながらその直径(外径)が小さくなり、下端310bにおいて、下端部312の外周面を流れる溶融ガラスGが合流してロッド形状となる。
【0043】
ロッド形状となった溶融ガラスGは、図示しないドローイング設備(例えば、ローラ)により、徐冷装置又は採板装置へと搬送される。
【0044】
(その他の形状2)
図6に示す成形ノズル320は、ガラス管を成形するための成形ノズルである。図6(a)は、成形ノズル320の外観図である。図6(b)は、図6(a)の線分X−Xでの成形ノズル320の断面図である。なお、図6(a)及び図6(b)では、供給管200の下端200bに成形ノズル320を接続した状態を図示している。以下、図6(a)及び図6(b)を参照して成形ノズル320の構成について説明する。
【0045】
成形ノズル320は、溶融ガラスGを所望の形状のガラス管に成形するための内管321及び外管322から構成される。内管321は、ガラス管の長手方向に直交する面の内周面(以下、単に内周面と記載する)の断面形状を成形するための管である。内管321の上端321aは、供給管200の下端200bに溶接により接続される。内管321は、上端321aから下端321bへ行くに従い、外周面の断面形状が所望の形状(ここでは、略矩形)へと緩やかに変化する。
【0046】
外管322は、ガラス管の長手方向に直交する面の外周面(以下、単に外周面と記載する)の断面形状を成形するための管である。外管322の上端322aは、供給管200に形成された開口204よりも上流側で、供給管200と溶接により接続される。外管322は、上端322aから下端322bへ行くに従い、内周面の断面形状が所望の形状(ここでは、略長円形)へと緩やかに変化する。また、外管322には、空気抜き用の孔322cが形成されている。
【0047】
成形ノズル320は、ガラス管Rの内周面の断面形状を成形する内管321と、ガラス管の外周面の断面形状を成形する外管322とを備え、内管321の下端321bにおける断面形状と外管322の下端322bにおける断面形状とが非相似であるので、ガラス管Rの内周面及び外周面の断面形状を非相似形に成形することができる。
【0048】
なお、内管321と外管322とで形成される空間(溶融ガラスGの通路)の断面積は、成形ノズル320の上端から下端へ行くに従い徐々に狭く、つまり漸減するように構成されている。このため、内管321と外管322との間を流れる溶融ガラスGが受ける圧力損失は、成形ノズル320の上端で最も小さく、下端に行くに従い大きくなる。
【0049】
なお、内管321と外管322との間を流れる溶融ガラスGが受ける圧力損失は、溶融ガラスGの粘性とも関係する。このため、予め、溶融ガラスGの粘性を確認し、内管321と外管322とで形成される空間内に溶融ガラスGを隙間なく行き渡らせることができる圧力損失となるように成形ノズル320の空間を形成することに留意する。
【0050】
(溶融ガラスGの流れ)
次に、成形ノズル320における溶融ガラスGの流れについて説明する。
供給管200の開口204から流出した溶融ガラスGは、内管321と外管322とで形成される空間内を成形ノズル320の下端に向かって流れる。この際、内管321と外管322とで形成される空間(溶融ガラスGの通路)の断面積が、成形ノズル320の上端から下端へ行くに従い漸減するように構成されているため、溶融ガラスGは、成形ノズル320の長手方向に対して垂直方向に広がり、内管321と外管322とで形成される空間内に隙間なく行き渡った状態で、成形ノズル320の下端から流出する。また、内管321と外管322とで形成される空間内の気体は、外管322の孔322cと成形ノズル320の下端から溶融ガラスGに押し出されるようにして排気される。
【0051】
図7は、成形ノズル320を使用して成形されるガラス管R1の外観図である。成形ノズル320を使用して成形されたガラス管R1は、ガラス管R1を図7の線分X−Xもしくはガラス管R1の長手方向の軸に直交する方向で切断され、電子機器(例えば、スマートフォン)の筐体として使用される。この成形ノズル320では、電子機器の筐体の表面が、平滑性に優れるガラス管R1の外側表面(火造り面)となるため、ガラス管R1を成形後に表面を研磨処理等する必要がなく、電子機器の筐体の生産性が向上する。
【0052】
なお、図6(a)及び図6(b)に示す成形ノズル320は、内管321の下端321bと、外管322の下端322bとが略同一の高さ(位置)にあるが、異なる高さ(位置)としてもよい。さらに、内管321の上端321aの断面形状を、予め所望の形状(ここでは、略矩形)としてもよい。
【0053】
また、成形ノズル320に、内管321の内壁へ気体(例えば、ドライエアや不活性ガス(N2,Ar等))を供給するためのノズルを備えるようにしてもよい。内管321の内壁へ気体(ガス)を供給して、成形ノズル320により所望の形状となったガラス管内の圧力を調整することで、溶融ガラスGが成形ノズル320を離れる際に表面張力により径方向に縮小することを抑制することができる。
【0054】
このため、成形ノズル320により成形されるガラス管Rの形状(特に、ガラス管の内径と外径)を精度よく制御することができる。また、供給される気体(ガス)は、内管321を冷却するため、内管321と外管322との間を流れる溶融ガラスGを冷却する効果も有する。
【0055】
(その他の形状3)
図8に示す成形ノズル320Aは、一部が開口、すなわち断面がC字形状のガラス管を成形するための成形ノズルである(本発明では、断面がC字型のものもガラス管に含むものとする)。図8(a)は、成形ノズル320Aの外観図である。図8(b)は、図8(a)の線分X−Xでの断面図である。なお、図8(a)及び図8(b)では、供給管200の下端200bに成形ノズル320Aを接続した状態を図示している。以下、図8(a)及び図8(b)を参照して成形ノズル320Aの構成について説明する。なお、図6で説明した構成と同じ構成には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0056】
図8(a)及び図8(b)に示すように、成形ノズル320Aが備える外管322Aは、一部が開口している。この開口の端部(両端)は、それぞれ内側(内管321)に向かって折り曲げられ、溶接により内管321と接合されている。このため、外管322Aと内管321により形成される空間の断面形状は、一部が欠けた形状(C字型)となっている。
【0057】
図9は、成形ノズル320Aを使用して成形されるガラス管R2の外観図である。成形ノズル320Aを使用した場合、すでに一部が開口した、断面形状がC字型のガラス管R2が成形される。このため、ガラス管R2を切断する必要がなく、電子機器の筐体の生産性が向上する。その他の効果は、成形ノズル320と同じである。なお、成形ノズル320Aを使用する場合、供給管200の開口204が形成された位置と外管322Aの開口部の位置とが重ならないよう留意する。
【0058】
(加熱手段400の構成)
加熱手段400は、例えば、ランプヒータであり、赤外線ランプ401と、その背後に配置された反射ミラー402とを備える。赤外線ランプ401及び反射ミラー402は、それぞれ半円弧状の部品を2つ組み合わせてリング状にしたものを複数段積み重ねて構成されており、全体として円筒形の形状をなし、供給管200及び成形ノズル300を取り囲むようにして取り付けられている。
【0059】
加熱手段400により溶融ガラスGを加熱することで、溶融ガラスGの粘性が低くなり、溶融ガラスGの流動性が向上する。このため、表面張力の影響を受けやすくなり、溶融ガラスGの表面をより平滑な面とすることができる。
【0060】
(その他の実施形態)
図10は、継手500の構成図である。図10(a)は、継手500の外観図である。図10(b)は、継手500を供給管200及び成形ノズル300に接続した状態を示した図である。
【0061】
継手500は、供給管200の下端200bに溶接により接続される上端部501と、継手500の外周面を下端200bへ向かって流れる溶融ガラスGの外径を広げるための傾斜部502と、成形ノズル300,310,320,又は302Aのいずれかと溶接により接続される下端部503とを備える。図10(b)では、成形ノズル300と接続した状態を示した。
【0062】
なお、継手500は、耐熱性及び耐腐食性を考慮し、白金(Pt)、又は白金合金(例えば、白金−ロジウム系等の合金)で形成される。供給管200や成形ノズル300,310,320,又は302Aと同じ材料で継手500を形成することで、溶接による接続が容易となる。
【0063】
図10に示すように、継手500を供給管200と成形ノズル300との間に接続することで、成形するガラスの大きさを任意に変更することができる。例えば、図10に示す例では、より幅の広い板ガラスを成形することができる。その他の効果は、実施形態に係る効果と同じである。
【実施例】
【0064】
次に、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
この実施例で用いた溶融ガラス(ソーダライムガラス)の組成は、下記のとおりである。なお、各組成の表示は、酸化物基準の質量%表示である。
SiO2 69%
Al2O3 2%
Na2O 13%
K2O 2%
CaO 9%
MgO 5%
【0066】
次に、実施例1,2における試料(ガラス成形品)の作成について説明する。
(装置構成)
実施例1,2では、図4に示す成形ノズル300(実施例1)と、図6に示す成形ノズル320(実施例2)とを、それぞれロジウム10%を含有する白金合金にて作製した。なお、実施例2の成形ノズル下端における内管及び外管の断面形状は、それぞれ略矩形及び略長円とした。この各実施例1,2の成形ノズルを溶融ガラスの供給管に溶接により接続し、供給管及び成形ノズルの側面には、成形ノズルを均質(均等)に加熱することができる加熱手段(例えば、ランプヒータ)を設けた。
【0067】
(実施例1)
上述した組成のガラス原料を電気炉に投入した後、1300℃の温度にてガラス原料を溶融した。その後、加熱手段により供給管及び成形ノズルを加熱した状態で、電気炉に接続された供給管から溶融したガラスを流出させた。供給管から流出した溶融ガラスは、図4に示す成形ノズルの下端において合流し、板ガラスの形状となって固化した。
【0068】
(実施例2)
実施例1で使用した供給管を、図6に示す成形ノズルを接続した供給管に取り換えた後、加熱手段により供給管及び成形ノズルの温度を上げ、電気炉に接続された供給管から成形ノズルへ溶融したガラスを流出させた。供給管から流出した溶融ガラスは、図6に示す成形ノズルの下端から管形状となって流出し固化した。なお、実施例2では、供給管及び成形ノズル内の溶融ガラスに流動性を持たせるために、成形ノズルの先端温度が1000℃となるように供給管及び成形ノズルを加熱手段により加熱した。
【0069】
実施例2で成形したガラス管の写真を図11に示す。図11から、ガラス管の内周面(略矩形)と外周面(略長円形)とが非相似形の断面形状を有していることがわかる。また、成形されたガラス管の断面寸法は、長辺長さが36.8mm、短辺長さが24.0mm、一番厚い肉厚部が5.5mm、一番薄い肉厚部が2.6mmであった。
【0070】
以上のように、本発明によれば、溶融ガラスの供給装置に接続される溶融ガラスの供給管を取り換えることで、生産するガラスの形状を容易に変更することができる。このため、少量多品種生産が可能となる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の省略や置き換え、又は、変更を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の溶融ガラスの供給管及びガラスの成形装置は、溶融ガラスの供給装置に接続される溶融ガラスの供給管を取り換えることで、生産するガラスの形状を容易に変更することができるので、少量多品種生産が可能となる。このため、モデルチェンジ等により頻繁に仕様が変更されるガラス、例えば、デジタルカメラやプロジェクタのマイクロレンズ、撮像素子の視感度を補正するフィルターガラスや撮像素子のカバーガラス、映像表示装置のカバーガラス、タッチパネルのカバーガラスやスマートフォン等の筐体として使用されるガラス等の生産に好適である。
【符号の説明】
【0073】
1…ガラス成形装置、100…溶融ガラスの供給装置、110…溶融窯、120…清澄槽、130…撹拌手段、130…清澄槽、131…撹拌槽、131a…流出孔、132…回転軸、133…撹拌翼、200…溶融ガラスの供給管、200a…上端、200b…下端、201…通路、202…開口(第1の開口)、203…堰、204…開口(第2の開口)、205…スカート部(延長部)、300,310,320,320A…ガラスの成形ノズル、400…加熱手段、500…継手、G…溶融ガラス、R1,R2…ガラス管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスの供給装置に接続され、ガラスを成形する成形ノズルへ前記溶融ガラスを供給する溶融ガラスの供給管であって、
長手方向に沿って内部に形成された前記溶融ガラスの通路と、
前記通路の一端に設けられ、前記溶融ガラスの供給装置から前記溶融ガラスを前記通路内へ導入する第1の開口と、
前記通路を塞ぐ堰と、
前記第1の開口と前記堰との間に形成され、前記通路内の溶融ガラスを導出する第2の開口と、
を有することを特徴とする溶融ガラスの供給管。
【請求項2】
前記第2の開口は、複数の貫通孔からなることを特徴とする請求項1に記載の溶融ガラスの供給管。
【請求項3】
前記複数の貫通孔は、前記輸送管の長手方向の長さが、前記輸送管の径方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項2に記載の溶融ガラスの供給管。
【請求項4】
前記堰の下流側に設けられ、前記第2の開口から導出される前記溶融ガラスの径方向における厚みを均一化する延長部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶融ガラスの供給管。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の溶融ガラスの供給管と、
前記溶融ガラスの供給管の他端側に取り付けられ、前記第2の開口から導出される前記溶融ガラスを形成する成形ノズルと、
を備えることを特徴とするガラスの成形装置。
【請求項6】
前記溶融ガラスの供給管の周囲に配置され、前記通路を流れる前記溶融ガラスを加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のガラスの成形装置。
【請求項7】
前記溶融ガラスの供給管と、前記成形ノズルとの間に位置し、前記溶融ガラスの供給管の外径を大きくする継手をさらに備えることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガラスの成形装置。
【請求項1】
溶融ガラスの供給装置に接続され、ガラスを成形する成形ノズルへ前記溶融ガラスを供給する溶融ガラスの供給管であって、
長手方向に沿って内部に形成された前記溶融ガラスの通路と、
前記通路の一端に設けられ、前記溶融ガラスの供給装置から前記溶融ガラスを前記通路内へ導入する第1の開口と、
前記通路を塞ぐ堰と、
前記第1の開口と前記堰との間に形成され、前記通路内の溶融ガラスを導出する第2の開口と、
を有することを特徴とする溶融ガラスの供給管。
【請求項2】
前記第2の開口は、複数の貫通孔からなることを特徴とする請求項1に記載の溶融ガラスの供給管。
【請求項3】
前記複数の貫通孔は、前記輸送管の長手方向の長さが、前記輸送管の径方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項2に記載の溶融ガラスの供給管。
【請求項4】
前記堰の下流側に設けられ、前記第2の開口から導出される前記溶融ガラスの径方向における厚みを均一化する延長部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶融ガラスの供給管。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の溶融ガラスの供給管と、
前記溶融ガラスの供給管の他端側に取り付けられ、前記第2の開口から導出される前記溶融ガラスを形成する成形ノズルと、
を備えることを特徴とするガラスの成形装置。
【請求項6】
前記溶融ガラスの供給管の周囲に配置され、前記通路を流れる前記溶融ガラスを加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のガラスの成形装置。
【請求項7】
前記溶融ガラスの供給管と、前記成形ノズルとの間に位置し、前記溶融ガラスの供給管の外径を大きくする継手をさらに備えることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガラスの成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−86991(P2013−86991A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226827(P2011−226827)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
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