説明

溶融材料の造粒機

造粒機であって、溶融材料を受け取って該溶融材料の液滴を噴射するロータリーアトマイザーと、液滴の軌道内に配置されて該液滴が衝突する衝突面であって、ロータリーアトマイザーから、(i)液滴の全部又は実質的に全部が該衝突面に衝突し、(ii)液滴の大部分が該衝突面との接触前に完全に凝固しないような距離及び角度にある、衝突面とを備える、造粒機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融材料を造粒する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのタイプの溶融材料造粒機は、ロータリーアトマイザーを含む。このタイプの造粒機では、溶融材料を回転皿と接触させてから、遠心力によってロータリーアトマイザーの中心から半径方向に噴射させる。理想的には、噴射された溶融材料液滴は、ロータリーアトマイザーからの噴射後からさらなる使用のために回収されるまでの時間に十分に冷却凝固する。種々の造粒機及びロータリーアトマイザーの設計が現存している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの現在の設計の欠点のいくつかは、(i)寸法が大きく、造粒機は、ロータリーアトマイザーから噴射された溶融材料液滴を十分に凝固させるために半径を最大10mにする必要がある場合が多いこと、(ii)ロータリーアトマイザーから噴射される溶融材料液滴の冷却を助けるための大量の空気流の使用に費用がかかり非効率的であること、(iii)溶融スラグ造粒機内で、非理想的なロータリーアトマイザー設計からできる繊維状の凝固スラグである「スラグウール」が発生し、これは、費用がかかる清掃の原因となり造粒機の動作効率を低下させること、及び、(iv)回収段階中の噴射液滴に残っている余熱が、噴射液滴を表面に張り付かせ、凝集させ、かつ/又は再溶融させることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願人らは、現存するものよりも改善されたロータリーアトマイザーを含む溶融材料造粒機を設計した。本出願人らは、液滴が完全に凝固することができる距離内に十分に入る短い距離だけアトマイザーから離して位置決めされた衝突面へ向けて液滴を噴射することによって、十分な硬さのない半凝固液滴が表面との衝突時に分裂することを発見した。これにより、高温のままである内側コア材料が露出されて、通常可能であるよりも速く冷却されることができる。したがって、飛翔距離を大幅に短縮すること及び半凝固液滴を衝突面と衝突させることによって、造粒機のサイズを大幅に小さくすることができ、冷却空気カーテンを設ける必要なく粒子を冷却することができる。これによりさらに、造粒機の運転費が減る。
【0005】
一態様において、造粒機であって、
溶融材料を受け取って溶融材料の液滴を噴射するロータリーアトマイザーと、
前記液滴の軌道内に配置されて前記液滴が衝突する衝突面であって、前記ロータリーアトマイザーから、
(i)前記液滴の全部又は実質的に全部が該衝突面に衝突し、
(ii)前記液滴の一部が該衝突面との接触前に完全に凝固しない
ような距離及び角度にある、衝突面と、を備える造粒機が提供される。
【0006】
液滴が凝固する際、凝固シェルの熱伝達特性に起因して、液体コアがあまり急速に冷めることができなくなると考えられる。本出願人は、半凝固液滴が衝突面に衝突すると、半凝固液滴の少なくとも一部が破砕して、衝突面との衝突時に溶融材料を露出させることを発見した。
【0007】
さらに、前記衝突面との接触後に、半凝固液滴と衝突面との衝突が半凝固液滴をコレクターへ向け直す。
【0008】
本発明の好ましい形態では、液滴の割合は、最大寸法又は直径が3mm以上である。液滴が衝突面に衝突するときに、液滴が20体積%よりも多く好ましくは90体積%よりも少なく凝固していることが好ましい。以前の研究では、プロセス設計は、張り付きを回避するために衝突前に実質的に凝固するのに十分な冷却に基づく(したがって、大きな筐体及びより長い飛翔時間を必要とする)ものであった。
【0009】
別の態様において、溶融材料を造粒する方法であって、
溶融材料の液滴をロータリーアトマイザーから衝突面へ向けて噴射して、前記液滴の一部が飛翔中に半凝固する工程と、
前記液滴の一部が前記衝突面との衝突時に完全に凝固しないように、前記半凝固液滴の全部又は実質的に全部を前記液滴の軌道内に配置されている衝突面に衝突させる工程と、
前記半凝固液滴をコレクターへ向け直す工程と、を含む溶融材料を造粒する方法が提供される。
【0010】
好ましい形態では、半凝固液滴の一部は、凝固が50%未満である。溶融材料はスラグであることが好ましい。
【0011】
上記態様のいくつかの実施の形態では、衝突面が軌道に対して配置される角度は、30度よりも大きく75度未満であり得る。好ましい一形態では、範囲の下限は45度よりも大きく、範囲の上限は60度未満であり得る。衝突角度は、半凝固液滴を衝突面に張り付かせるほど大きすぎてはならず、衝突角度の選択は、材料の特性及びアトマイザーからの距離、したがって凝固の程度に応じて決まる。
【0012】
いくつかの実施の形態では、造粒機は、密閉又は実質的に密閉されたチャンバーであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】明確にするために構造特徴の数を減らして示す、本発明の造粒機の中心軸を通る断面を示す図である。
【図2】明確にするために構造特徴の数を減らして示す、本発明の造粒機の平面図である。
【図3】本発明の造粒機の好ましい実施形態の中心軸を通る断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の造粒機の特徴及び動作を示す。通常の動作では、溶融材料2が供給手段4によって造粒機100に供給される。供給手段4は、スピン手段16によって一定のスピン速度でスピンしているロータリーアトマイザー8へ溶融材料2を向ける。実質的に垂直な軸を中心としたスピンは、溶融材料2を軌道24でロータリーアトマイザー8から噴射させる。こうして形成された溶融材料液滴22は、軌道24で衝突面28へ向けて噴射される。溶融材料液滴22の一部は、衝突面28に衝突する前には、完全に凝固せずに、溶融材料コアの周りに凝固シェルがある半凝固液滴26を形成する。衝突面26に対する半凝固液滴26の衝突力は、半凝固液滴26の少なくとも一部の少なくとも凝固シェルを破砕させて破砕液滴30を形成させる。衝突面28によって向け直された破砕液滴30を含む全液滴が、さらに凝固しながらコレクター32へ向かって進む。
【0015】
造粒機100の設計に影響を及ぼす重要な因子として、供給手段4を通る溶融材料2の流量、ロータリーアトマイザー8のスピン速度、溶融材料液滴22の噴射温度、衝突面28との衝突前の溶融材料液滴22の軌道距離及び飛翔時間、溶融材料液滴22の寸法、溶融材料2を構成する材料、付加的な冷却(環状空気流及び/又は衝突面の冷却等)の有無が挙げられる。すなわち、造粒機100の任意の一構成要素の正確な設計及び動作条件は、多くの場合は造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件に応じて変わると共に、造粒対象の材料の物理的及び化学的特性に応じて変わる。例えば、供給温度が高いほど衝突面28との衝突前の軌道を長くする必要があり得ると共に、溶融材料の熱伝導率が低いほど衝突面28との衝突前の軌道を長くする必要があり得る。そうではあるが、この説明は、通常の設計パラメーター及び動作条件の指標としての役割を果たす値を提供する。
【0016】
溶融材料2は、粒状形態を生成することが望ましい任意の溶融材料であり得る。例えば、溶融材料は、溶融金属、ポリマー、マット、又はガラスであり得る。好ましい実施形態では、溶融材料は、金属を精製するために鉱石を精錬するプロセスからの副産物(スラグとしても知られている)である。粒状スラグは、いかなる目的にも用いることができるが、セメント及びコンクリートの製造に特に有用であり得る。
【0017】
供給手段4は、当該技術分野で既知の任意の適当な手段であり得る。例えば、供給手段4は、管、パイプ、チャネル、トラフ、又は他の形態の導管であり得る。適当な改良型のアトマイザーが、全内容が参照により援用されるオーストラリア仮特許出願第2008903296号及び後続の同時係属中の国際特許出願に記載されている。溶融材料2は、当該技術分野で既知の任意の手段によって供給手段4の端から放出され得る。例えば、溶融材料2は、ノズル、スパウト、タップ、又は供給を制御する他の手段によって放出され得る。代替的に、溶融材料2は、供給を制御する他の手段を一切用いずに供給手段4の端から放出され得る。スラグに関する場合、供給手段4は、スラグ投入口と呼ばれ得る。
【0018】
溶融材料2は、供給手段4を介して高温(本明細書では以下で「供給温度」と呼ばれる)で供給される。供給温度は、材料が実質的に溶融するいかなる温度であってもよく、材料自体に応じて決まる。製鉄スラグに関する場合、溶融材料2の供給温度は、約1400℃〜約1600℃であり得る。明らかに、供給温度は、供給手段4の端とロータリーアトマイザー8との間の熱損失に起因して、溶融材料2がロータリーアトマイザー8によって受け取られる時点の温度よりもわずかに高い可能性があるが、本明細書のために、これら2つの温度は同等と見なされるものとする。供給手段4を通ってロータリーアトマイザー8に入る溶融材料2の流量は、可変であり、造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、流量は、小工場又は試験装置での約1kg/分〜工業規模の工場の場合の数トン/分であり得る。この流量は、出湯量と呼ばれ得る。
【0019】
ロータリーアトマイザー8は、供給手段4から放出された溶融材料2がロータリーアトマイザー8の受け部によって受け取られるように位置決めされる。スピン手段16は、実質的に垂直な軸を中心にロータリーアトマイザーを回転又はスピンさせるために用いられる。スピン手段16は、当該技術分野で既知の任意のものであり得る。例えば、スピン手段16は、磁気駆動式又は歯車駆動式であり得る。スピン速度は、可変であり、造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、スピン速度は、約600rpm〜約3000rpmであり得る。ロータリーアトマイザーの設計は、当該技術分野で既知の任意のものであり得る。溶融材料液滴22の形状及びサイズは、可変であり、造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、溶融材料液滴22は、直径約0.5mm〜約5mmの実質的に球状である。ロータリーアトマイザー8からの溶融材料液滴22の噴射速度は、可変であり、造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、ロータリーアトマイザー8からの溶融材料液滴22の噴射速度は、約1.5m/秒〜約8m/秒である。
【0020】
ロータリーアトマイザー8は、当該技術分野で既知の任意の材料から構成され得る。アトマイザーの材料の好ましい要件は、低費用、高伝熱性、及び加工性である。例えば、ロータリーアトマイザー8は、耐火材料又は銅から構成され得る。好ましくは、ロータリーアトマイザー8は、ステンレス鋼又は鋳鉄から構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、図2に関して、ロータリーアトマイザー8は造粒機100内の実質的に中心に位置決めされる。より典型的には、ロータリーアトマイザー8は、衝突面28によって画定される領域内の実質的に中心に位置決めされる。すなわち、ロータリーアトマイザー8は、スピンして、その円周の周りのどこにおいても半径方向に溶融材料液滴22を噴射しているため、噴射された溶融材料液滴22の全部又は実質的に全部の軌道内に衝突面28を配置させることが好ましい。すなわち、衝突面28が環状であることが好ましい。
【0022】
噴射された溶融材料液滴22の全部又は実質的に全部は、続いて、衝突面28へ向かう軌道を辿る。衝突面は、液滴の一部が衝突面と衝突する前に完全に凝固せずに半凝固液滴26を形成するような距離だけロータリーアトマイザーから離れて位置決めされる。半凝固液滴26は、凝固した外側領域又はシェルと溶融した内側領域又はコアとを有する。距離は、溶融材料、材料の温度、及び液滴サイズに応じて決まる。液滴サイズはさらに、アトマイザーの回転速度、したがって液滴の流出速度に応じて決まる。
【0023】
同じく、衝突面28は、半凝固液滴26の大部分が衝突前に完全に凝固していないような、また半凝固液滴26と衝突面28との衝突が半凝固液滴26の少なくとも一部を破砕させて破砕液滴30を形成させるような、距離及び角度に位置決めされる。半凝固液滴26のこの破砕は、凝固した外側領域を亀裂、破壊、破裂、又は他の形で破砕させ、溶融した内側領域の少なくとも一部を破砕液滴30の外部に露出させる。理論に束縛されることは望まないが、本発明者らは、溶融した内側領域の外部への露出が、衝突面28との衝突時に破砕しない場合の半凝固液滴26よりも速く破砕液滴30を冷却凝固させると考える。衝突面28が軌道に対して配置される角度を変更して、衝突力を制御することもできる。衝突面28が軌道に対して配置される角度βは、30度よりも大きく約75度以下であり得る。この角度は、衝突の半径方向で測定される。範囲の下限は45度よりも大きく、範囲の上限は60度未満であり得る。したがって、接触角度の好ましい範囲は、これらの制限範囲の順列を含む。当業者であれば、衝突面28との衝突時の半凝固液滴26の破砕が、速度、凝固の程度、衝突角度β、及び半凝固液滴26のサイズの関数であるか否かを理解するであろう。
【0024】
理論に束縛されることは望まないが、衝突及び分裂(1つの大きな半凝固液滴から複数のより小さな液滴に)は、約3mm以上で好ましくは約50%未満の固形分(体積%)の液滴で生じ得ると考えられる。これは、液滴半径に対して約20%の凝固シェルの直線厚さに相当する。
【0025】
部分凝固の程度は、液滴飛翔時間(衝突前)、液滴温度(より厳密には液相線温度よりも高い過熱度)、及び速度(カップスピン速度及びカップ直径に応じて決まる)によって確定される。液体材料の粘度及び表面張力も考慮事項であり得る。
【0026】
本発明者らによる衝突実験では、液滴が一瞬(飛翔時間)で傾斜屋根と衝突した。衝突前の飛翔時間の範囲内(0.02秒〜0.12秒程度)では、大きな液滴(全液滴のうち0%ではないものの約1%を構成する直径約3mm以上のもの)は、50体積%未満凝固してわずか30%凝固すると考えられ、大きな液滴のいくつかは、衝突時に崩壊した。小さな液滴(2mm以下のもの)は、衝突前により高い固形分に達し、あまり分裂を示さなかった。本出願人が観察したところ、アトマイザーから衝突面までの距離は、2mm以上の液滴(全液滴のうち5%未満だが0%ではない)の凝固が衝突時に50体積%未満であるような距離である。
【0027】
衝突及び分裂は、非常に速く或る程度無作為なプロセスである。凝固が約50体積%未満である大きな液滴は、凝固の程度がより高い小さな液滴よりも崩壊の可能性が高いと思われる。
【0028】
液滴の表面がほとんど凝固していない場合、液滴は、衝突時に跳ね返って崩壊するのではなく平坦になって汚れになる。これは、凝固の程度が約20体積%固形分と推定される値よりも小さい場合に生じると考えられる。したがって、凝固のレベルは、20体積%よりも大きく好ましくは80体積%未満であるべきである。汚れを回避するのに適した条件は、試験によって(例えば、出湯温度等の溶融材料のプロセス条件によって)容易に求めることができる。
【0029】
衝突面は、当該技術分野で既知の任意の材料から作られ得る。例えば、衝突面28は、耐火材料又は金属であり得る。好ましくは、衝突面28は、ステンレス鋼から構成される。
【0030】
衝突面28との衝突後、破砕液滴30は、さらに凝固して造粒物34になり、これがさらなる使用のために回収され得る。造粒物34は通常、凝固した材料又は少なくとも凝固した外側領域若しくはシェルを有する材料の粒子から成り、溶融した内側領域又はコアも有し得る。当該技術分野で既知の任意のコレクター32を造粒物34の回収に用いることができる。例えば、コレクター32は、単に造粒物34が造粒機100から出ることができるように位置決めされた任意の寸法の開口であってもよく、又は造粒物34の出口用の少なくとも1つの孔を有する環状トラフであってもよい。
【0031】
図3は、動作中であり得る造粒機100のより完全な描写を示す。溶融材料液滴22は、ロータリーアトマイザー8から密閉又は実質的に密閉されたチャンバーであり得るチャンバー40に噴射される。半凝固液滴26が衝突面28と衝突して破砕液滴30が形成された後、造粒物34はコレクターへ向けられ、コレクターは、図3ではコレクター32として造粒機100の周辺へ向けて配置されるように描かれている。
【0032】
チャンバー40は、実質的に円錐台形(錐台とも呼ばれる)である上境界面42を有し得る。上境界面42の円錐台形は、供給手段4へ向かって上窄まりになって垂直線と共に鋭角の円錐台形角度を成す。上境界面42は、供給手段4まで延びていてもよく、又は供給手段4への途中まで延びていてもよい。衝突面28は、上境界面42内に位置決めされ得る。好ましくは、上境界面42の少なくとも一部が衝突面28である。
【0033】
チャンバー40は、下境界面44を有し得る。下境界面44は、任意の形状であり得る。下境界面44の特に好ましい形状は、造粒物34をコレクター32へ向けるのに適した形状である。例えば、下境界面44は、造粒機100の中心軸へ向かって上窄まり又は下窄まりの実質的に円錐台形でもあり得る。図3は、下境界面44を上窄まり錐台として示している。この場合、コレクターが下境界面44内に又は下境界面44に隣接して位置決めされることが好ましい。例えば、下境界面44が上窄まり錐台である場合、コレクター32は、周辺の場所に位置決めされ得る。下境界面44が下窄まり錐台である場合、コレクターは、中心寄りの場所に位置決めされ得る。後者の場合、コレクターの場所は、最も中心の場所にある必要はなく、造粒機の周辺よりも中心寄りの任意の位置とすることができる。
【0034】
上境界面42、衝突面28、及び/又は下境界面44は、冷却され得る。例えば、上境界面42、衝突面28、及び/又は下境界面44は、空気、水、若しくは他の冷媒、又は当該技術分野で既知の任意の他の材料によって、これらと上境界面42、衝突面28、及び/又は下境界面44の外面との接触によって冷却され得る。
【0035】
図3には、代替的な軌道24も示されている。軌道24は、可変であり、造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。最も重要なことであるが、ロータリーアトマイザー8の設計及び動作は、得られる軌道24の性質に重要である。図3に示される軌道24の両方の例で、上述の実施形態が存在する。すなわち、溶融材料液滴22は、ロータリーアトマイザーから衝突面28へ向けて噴射されてから、破砕液滴30として、続いて造粒物34としてコレクター32へ向け直される。いずれの場合も、液滴の軌道は、接線成分及び動径成分を有する。軌道24の場合、粒子は、下境界面44上でコレクター32へ向かって下方に螺旋運動する。
【0036】
いくつかの実施形態、特にチャンバー40が密閉又は実質的に密閉されたチャンバーであるような実施形態では、造粒機100は、溶融材料の冷却を促し、造粒物34の凝集の回避を助け、かつ造粒物34をコレクターへ向けて進ませる空気流をさらに含み得る。好ましくは、空気流は、定常状態のときに正味の上向き速度成分が実質的にない環状の性質を有する。すなわち、従来技術の一部の造粒機とは異なり、本発明の造粒機は、動作時に溶融材料の十分な冷却を達成するために上向きの空気流を必要としない。例えば、本発明の造粒機は、溶融材料液滴の軌道が通過するカーテンを形成するための上向きの空気流を必要とせず、半凝固液滴をさらに冷却するための流動床タイプの装置の存在も必要としない。環状空気流を有する実施形態は、円錐台形の造粒機に特によく適しており、空気流はサイクロン流と言うことができる。
【0037】
造粒機100内の空気の速度は、可変であり、造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、空気流の速度は、約2m/秒〜約20m/秒である。
【0038】
造粒機を通る空気の流量は、可変であり、造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まり、本発明の造粒機のさらなる利点の実現を可能にするようにさらに制御可能であることが望ましい。より詳細には、空気流を用いて、溶融材料からの熱の形態のエネルギーの回収を助けることができる。例えば、造粒機を通る空気の流量が少ないほど、造粒機から出る空気の温度が高くなる。主に、造粒機を通る空気の流量は、必要な空気流速度及び造粒機の体積の関数である。例えば、造粒機体積が小さく、それに対応して空気流量が少ないほど、造粒機から出る空気の温度が高くなる。通常、スラグに関する場合、造粒機を通る空気の流量は、造粒機から出る空気の温度が約400℃よりも高くなるように、場合によっては造粒機から出る空気の温度が約600℃よりも高くなるようになっている。また、造粒機から出る造粒物は、同じく回収することができる熱の形態のエネルギーを含んでいる。スラグに関する場合、造粒物は、約800℃未満の平均温度で造粒機から出る。放出された細粒の余熱は、例えば、当該技術分野で既知の充填層向流熱交換器に回収することができる。熱気の形態で回収されたエネルギーは、乾燥、予熱、蒸気発生、発電、及び/又は脱塩に用いることができる。
【0039】
本明細書において開示及び規定された本発明は、言及された、又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせのすべてを包含することが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせのすべてが、本発明の種々の代替的な態様を構成する。
【0040】
本明細書で用いられる「備える」という用語(又はその文法上の変形)は、「含む」と言う用語と同等であり、他の要素又は特徴の存在を除外するものとみなすべきではないことも理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒機であって、
溶融材料を受け取って溶融材料の液滴を噴射するロータリーアトマイザーと、
前記液滴の軌道内に配置されて前記液滴が衝突する衝突面であって、前記ロータリーアトマイザーから、
(i)前記液滴の全部又は実質的に全部が該衝突面に衝突し、
(ii)前記液滴の一部が該衝突面との接触前に完全に凝固しない
ような距離及び角度にある衝突面と、を備える造粒機。
【請求項2】
請求項1に記載の造粒機であって、
前記衝突面との接触後に、半凝固粒子又は凝固粒子を回収するためのコレクター領域をさらに備える請求項1に記載の造粒機。
【請求項3】
前記コレクター領域は、環状の形状であり、前記衝突面から半径方向外方にある請求項2に記載の造粒機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の造粒機であって、
前記粒子を前記コレクター領域へ向ける円錐台形の下面をさらに備える造粒機。
【請求項5】
溶融材料を造粒する方法であって、
溶融材料の液滴をロータリーアトマイザーから衝突面へ向けて噴射して、前記液滴の大部分が飛翔中に半凝固する工程と、
前記液滴の一部が前記衝突面との衝突時に完全に凝固しないように、前記半凝固液滴の全部又は実質的に全部を前記液滴の軌道内に配置されている前記衝突面に衝突させる工程と、
前記半凝固液滴をコレクターへ向け直す工程と、を含む溶融材料を造粒する方法。
【請求項6】
前記衝突面が前記半凝固液滴の前記軌道に対して配置される角度は、30度を超え75度未満である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記衝突面が前記半凝固液滴の前記軌道に対して配置される角度は、30度を超え60度未満である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記衝突面が前記半凝固液滴の前記軌道に対して配置される角度は、45度を超え75度未満である請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記衝突面が前記半凝固液滴の前記軌道に対して配置される角度は、45度を超え60度未満である請求項5に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−526200(P2011−526200A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515020(P2011−515020)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000834
【国際公開番号】WO2009/155666
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(590003283)コモンウェルス サイエンティフィック アンドインダストリアル リサーチ オーガナイゼーション (11)
【Fターム(参考)】