説明

溶融材料を噴霧するロータリーアトマイザー

溶融材料を受け取って該溶融材料の液滴を噴射するロータリーアトマイザーであって、該ロータリーアトマイザー、溶融材料を受け入れる回転ウェルを有する、ロータリーアトマイザー。前記ウェルは、底部及び該底部の周りの周縁から延びる周壁を備え、該周壁の上部が、上部内縁及び該上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で延びるリップ領域を有する。好ましくは、前記上部内縁まで延びる前記周壁の上領域が、実質的に垂直である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融材料を噴霧する装置及び方法に関する。特に、本発明は溶融材料の造粒に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのタイプの溶融材料造粒機は、ロータリーアトマイザーを含む。このタイプの造粒機では、溶融材料を回転皿と接触させてから、遠心力によってロータリーアトマイザーの中心から半径方向に噴射させる(projected)。理想的には、噴射された溶融材料液滴は、ロータリーアトマイザーからの噴射後からさらなる使用のために回収されるまでの時間に十分に冷却凝固する。種々の造粒機及びロータリーアトマイザーの設計が現存している。
【0003】
これらの現在の設計の欠点のいくつかは、(i)寸法が大きく、造粒機は、ロータリーアトマイザーから噴射された溶融材料液滴を十分に凝固させるために半径を最大10mにする必要がある場合が多いこと、(ii)ロータリーアトマイザーから噴射される溶融材料液滴の冷却を助けるための大量の空気流の使用に費用がかかり非効率的であること、(iii)溶融スラグ造粒機内で、非理想的なロータリーアトマイザー設計からできる繊維状の凝固スラグである「スラグウール」が発生し、これは、費用がかかる清掃要件の原因となり造粒機の動作効率を低下させること、及び(iv)回収段階中の噴射液滴に残っている余熱が、噴射液滴を表面に張り付かせ、凝集させ、かつ/又は再溶融させることである。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、現存するものよりも改善されたロータリーアトマイザーを含む溶融材料造粒機を設計した。
【0005】
一態様において、造粒機であって、
溶融材料を受け取って該溶融材料の液滴を噴射するロータリーアトマイザーを備え、該ロータリーアトマイザーは、
溶融材料を受け入れる回転ウェルであって、底部及び該底部の周りの周縁から延びる周壁を備え、該周壁の上部が、上部内縁及び該上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で延びるリップ領域を有する、回転ウェル、
を有する、造粒機が提供される。
【0006】
本発明の好ましい形態では、前記上部内縁まで延びる前記周側壁の上領域が、実質的に垂直である。前記周壁の前記リップ領域は、前記底部の前記周縁から離間していることが好ましい。前記底部が平面である場合、前記周側壁の高さ、したがって前記周縁からの前記リップ領域の距離が、前記ウェルの深さである。この実施の形態では、前記底部及び前記周壁は、実質的に直角を成して実質的に垂直の壁を提供し得る。前記底部は、前記ウェルの深さが前記周壁の高さよりも大きくなるように、円錐形状又は多面体形状等の平坦以外の構成であってもよい。しかしながら、これらの実施の形態でも、前記底部の前記周縁から前記周壁の前記リップ領域まで離間距離が設けられる。
【0007】
前記周壁は、上領域及び下領域を備えることが好ましい。好ましい実施の形態では、前記上領域及び前記下領域は、前記周壁が直線状であるように同一直線上に整列する。しかしながら、前記周壁の前記下領域は、前記ウェルの前記底部に対して75度〜105度傾斜し得る。前記周壁の前記上領域及び前記下領域の整列に関係なく、前記上部内縁まで延びる前記周壁の前記上領域が実質的に垂直であることが本発明の動作には重要である。
【0008】
別の態様において、溶融材料を造粒する方法であって、
回転するロータリーアトマイザーのウェル内に溶融材料のプールを形成するステップであって、前記ウェルは、底部及び該ウェルの前記底部の周りの周縁から延びる周側壁を備え、該周壁は、上部内縁及び該上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で傾斜するリップ領域を有する、形成するステップと、
前記リップ領域から前記溶融材料の液滴を噴射するように一定の速度で前記ロータリーアトマイザーを回転させるステップと、
前記溶融材料を細粒として凝固させるステップと、
を含み、該方法は、飛翔中に前記液滴の大部分を凝固させるステップと、凝固した前記液滴をコレクターへ向けるステップとをさらに含むことが好ましい、
溶融材料を造粒する方法が提供される。
【0009】
この態様の好適な形態では、前記プールに加えられる前記溶融材料は、回転するアトマイザーが発生させる遠心力の影響下で前記周壁を上って進む。前記溶融材料は、前記ウェル内での滞留時間後に前記周壁の前記上部内縁に到達した後で前記アトマイザーから噴射される。
【0010】
本出願人らは、溶融材料の流れを一時的に中断させて溶融材料のウェルを維持し、その中心から前記アトマイザーの外縁へ溶融材料が加えられることによって、溶融材料が前記ウェル内により均一に広がってリップで液体薄膜を形成した後で、リップで微細な液滴をきれいに作り出すように噴霧されるのに役立つことを発見した。
【0011】
これは、前記溶融材料がほぼ即座に外縁に広がる従来技術のディスクとは対照的である。
【0012】
別の態様では、ロータリーアトマイザーであって、
溶融材料を受け入れるウェルであって、底部及び該底部の周りの周縁から延びる周壁を備え、該周壁の上部が、上部内縁及び上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で延びるリップ領域を有する、ウェルを備える、ロータリーアトマイザーが提供される。
【0013】
別の態様では、溶融材料を噴霧する方法であって、
回転するロータリーアトマイザーのウェル内に溶融材料のプールを形成するステップであって、前記ウェルは、底部及び該ウェルの前記底部の周りの周縁から延びる周側壁を備え、該周壁が、上部内縁及び該上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で傾斜するリップ領域を有する、形成するステップと、
前記リップ領域から前記溶融材料の液滴を噴射するように一定の速度で前記ロータリーアトマイザーを回転させるステップであって、前記溶融材料は前記ウェル内での滞留時間を有する、回転させるステップと、
を含む、溶融材料を噴霧する方法が提供される。
【0014】
上記態様の好ましい形態では、前記溶融材料はスラグである。
【0015】
前記周壁の前記上部内縁から前記底部までの垂直距離によって規定される前記周壁の高さは、前記底部の直径に対して10%〜50%であり得る。前記周壁の高さは、約4mm〜約50mmであり得る。これらの実施の形態では、前記底部の直径は、約40mm〜約100mmであり得る。
【0016】
いくつかの実施の形態では、前記造粒機は、密閉又は実質的に密閉されたチャンバーであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】明確にするために構造特徴の数を減らして示す、本発明の造粒機及びロータリーアトマイザーの中心軸を通る断面を示す図である。
【図2】本発明のロータリーアトマイザーの一実施形態の中心軸を通る断面を示す図である。
【図3】本発明のロータリーアトマイザーの別の実施形態の中心軸を通る断面を示す図である。
【図4】本発明と共に用いられる造粒機の中心軸を通る断面を示す図である。
【図5(a)】本発明によるロータリーアトマイザーの一実施形態の断面図である。
【図5(b)】本発明によるロータリーアトマイザーの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明のロータリーアトマイザーの特徴及び動作を示す。通常の動作では、溶融材料2が供給手段4によってロータリーアトマイザー8に供給される。供給手段4は、一定のスピン速度でスピンしているロータリーアトマイザー8のウェル6へ溶融材料2を向け、溶融材料2は、そこに溜まって溶融材料プール10を形成する。スピン手段16を介して実質的に垂直な軸を中心にロータリーアトマイザー6を回転させると、その力で溶融材料プール8がロータリーアトマイザー8の周壁14を上る。一定のスピン速度で、溶融材料プールは、周壁14の上部まで上る。この一定のスピン速度を超えると、溶融材料は、周壁14の上部の内縁18を越えて押し出される。溶融材料は、続いて、リップ領域20の少なくとも一部に接触した後でロータリーアトマイザー8から噴射される。こうして形成された溶融材料液滴22は、造粒機の内部に軌道24で噴射され、最終的にコレクター32へ向けて進められる。
【0019】
ロータリーアトマイザー8及び造粒機の設計に影響を及ぼす重要な因子として、供給手段4を通る溶融材料2の流量、ロータリーアトマイザー8のスピン速度、溶融材料液滴22の噴射温度、溶融材料液滴22の軌道距離及び飛翔時間を含む軌道24、溶融材料液滴22のサイズ、溶融材料2を構成する材料、付加的な冷却(環状空気流及び/又は衝突面の冷却等)の有無が挙げられる。すなわち、造粒機の任意の一構成要素の正確な設計及び動作条件は、多くの場合は造粒機の任意の他の構成要素の設計及び動作条件に応じて変わると共に、造粒対象の材料の物理的及び化学的特性に応じて変わる。例えば、流量が多いほどウェル6の容積を大きくする必要がある場合があり、供給温度が高いほどウェル6の容積を大きくする、かつ/又は軌道を長くする必要がある場合があり、溶融材料の熱伝導率が低いほど軌道を長くする必要があり得る。そうではあるが、この説明は、通常の設計パラメーター及び動作条件の指標としての役割を果たす値を提供する。
【0020】
溶融材料2は、粒状形態を生成することが望ましい任意の溶融材料であり得る。例えば、溶融材料は、溶融金属、ポリマー、マット、又はガラスであり得る。好ましい実施形態では、溶融材料は、金属を精製するために鉱石を精錬するプロセスからの副産物(スラグとしても知られている)である。水砕(granulated)スラグは、いかなる目的にも用いることができるが、セメント及びコンクリートの製造に特に有用であり得る。
【0021】
供給手段4は、当該技術分野で既知の任意の適当な手段であり得る。例えば、供給手段4は、管、パイプ、チャネル、トラフ、又は他の形態の導管であり得る。溶融材料2は、当該技術分野で既知の任意の手段によって供給手段4の端から放出され得る。例えば、溶融材料2は、ノズル、スパウト、タップ、又は供給を制御する他の手段によって放出され得る。代替的に、溶融材料2は、供給を制御する他の手段を一切用いずに供給手段4の端から放出され得る。スラグに関する場合、供給手段4は、スラグ投入口(drop)と呼ばれ得る。
【0022】
溶融材料2は、供給手段4を介して高温(本明細書では以下で「供給温度」と呼ばれる)で供給される。供給温度は、材料が実質的に溶融するいかなる温度であってもよく、材料自体に応じて決まる。典型的な製鉄スラグに関する場合、溶融材料2の供給温度は、約1400℃〜約1600℃であり得る。明らかに、供給温度は、供給手段4の端とウェル6との間の熱損失に起因して、溶融材料2がウェル6によって受け取られる時点の温度よりもわずかに高い可能性があるが、本明細書のために、これら2つの温度は同等と見なされるものとする。供給手段4を通ってロータリーアトマイザー8のウェル6に入る溶融材料2の流量は、可変であり、造粒機の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、流量は、実証又はパイロットプラントでの約1kg/分〜商業・産業プラントの場合の数トン/分であり得る。この流量は、出湯量(tapping rate)と呼ばれ得る。
【0023】
ロータリーアトマイザー8は、供給手段4から放出された溶融材料2がウェル6によって受け取られるように位置決めされる。スピン手段16は、実質的に垂直な軸を中心にロータリーアトマイザーを回転又はスピンさせるために用いられる。スピン手段16は、当該技術分野で既知の任意のものであり得る。例えば、スピン手段16は、磁気駆動式又は歯車駆動式であり得る。スピン速度は、可変であり、造粒機の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、スピン速度は、約600rpm〜約3000rpmであり得る。ロータリーアトマイザー8の設計は、溶融材料プール10の実質的に全部が、従来技術のロータリーアトマイザーでの場合のような溶融材料のシート又はリボンとしてではなく、溶融材料液滴22として噴射されるような設計である。スラグに関する場合、溶融材料液滴22の噴射は、スラグプールの形成を抑制する。溶融材料液滴22の形状及びサイズは、可変であり、造粒機の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、溶融材料液滴22は、直径約0.5mm〜約5mm(90%以上は直径2mm)の実質的に球状であり、一定の条件で形成される場合に均一のサイズ範囲内で形成され得る。ロータリーアトマイザー8からの溶融材料液滴22の噴射速度は、可変であり、造粒機の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。通常、ロータリーアトマイザー8からの溶融材料液滴22の噴射速度は、約1.5m/秒〜約8m/秒である。
【0024】
ウェル6は、図2、図3、図5(a)、及び図5(b)により詳細に示されている。ウェル6の寸法は、溶融材料プール10がウェル6内にできるような寸法である。特に、ウェル6の寸法は、ロータリーアトマイザー8がスピン手段16によって回転させられているときに溶融材料プール10がウェル6内にできるような寸法である。すなわち、溶融材料2は、ウェル6内での滞留時間を有する溶融材料プール10を形成し、周壁14及び内縁18は、溶融材料を噴射させる堰として働く。
【0025】
ロータリーアトマイザー8のウェル6は、当該技術分野で既知の任意の材料から構成され得る。アトマイザーの材料の好ましい要件は、低費用、高伝熱性、及び加工性である。例えば、ロータリーアトマイザー8は、耐火材料又は銅から構成され得る。好ましくは、ロータリーアトマイザー8は、ステンレス鋼又は鋳鉄から構成される。
【0026】
スラグ−金属界面における熱損失に起因した冷却が、溶融材料プール10の溶融材料2の層をウェル6の表面上で凝固させる。この凝固層は、表面を攻撃的な溶融スラグによる侵食から保護する役割を果たすと共に、溶融スラグプールからの熱移動を(金属スピンディスクの場合2桁以上大きく)低減することでウェル6の過熱及び溶融を回避する役割を果たす。必要な場合に下からのウェル6の制御冷却と組み合わせると、本発明は、十分に保護された条件下でのスピンディスク(金属又は非金属耐火材料製)の連続動作を可能にする。
【0027】
定常状態条件下では、溶融材料プールは、溶融材料を受け入れ、遠心力下で溶融材料を広げ、最終的に周壁14の上部の内縁18から微細な液滴を作り出すように溶融材料を噴霧する。溶融材料プール及び凍結層は、実質的な熱損失を伴わない溶融材料の滑らかな流れ及び広がりに好都合な条件を提供する。後述するように、堰(18及び20)の設計は、内縁18における円滑な噴霧を見込んだものである。
【0028】
従来技術のロータリーアトマイザーは、通常は平坦又は凹状のディスク設計を有し、溶融材料は、実質的にロータリーアトマイザーによる受け取りの直後にロータリーアトマイザーから噴射される。平面は、溶融材料を噴霧前に理想的に広がらずに滑らせるか又は跳ね返らせる場合がある。さらに、溶融材料は、金属平面上で凝固し得る。凝固層は、平面に付着することができないため、表面から持ち上がる。場合によっては、金属を保護するために金属スピンディスクを耐火表面でコーティングした。しかしながら、金属表面上に安定した耐火コーティングを形成及び結合することは困難であり、耐火表面自体が攻撃的な溶融スラグによる侵食を受ける。
【0029】
ウェル6は、溶融材料2が対流時間を有する溶融材料プール10を形成するような設計を有する。ウェル6の寸法は、可変であり、造粒機の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。ウェル6は、底部12及び周壁14によって画定される。周壁14は、底部12に対して傾斜し得る。傾斜は、底部12と周壁14との間の角度αが約60度よりも大きいようなものとすべきである。例えば、底部12と周壁14との間の角度αは、約60度〜約165度であり得る。好ましくは、底部12と周壁14との間の角度αは、約80度〜約100度であり得る。
【0030】
周壁14の上部の内縁18から底部12までの垂直距離によって規定されるウェル6の深さは、内縁18におけるウェル6の直径未満であり得る。ウェル6の深さとウェル6の直径との比は、約1:10〜約1:2であり得る。好ましくは、ウェル6の深さとウェル6の直径との比は、約1:6〜約1:3であり得る。より好ましくは、ウェル6の深さとウェル6の直径との比は、約1:5〜約1:4であり得る。通常、ウェル6の深さは、約4mm〜約50mmである。通常、底部12の直径は、約40mm〜約100mmである。これらの寸法のアトマイザーは、通常は100kg/時〜800kg/時の出湯量で動作可能である。
【0031】
ウェルの相対寸法を規定するさらなる方法は、ロータリーアトマイザーの中心垂直軸を通る垂直断面で見たときに(図2及び図3に示されるように)、周壁14が直角三角形の斜辺を画定すると見なされ、かつウェル6の深さが直角三角形の一辺を1単位長に規定すると見なされる場合、直角三角形の他方の辺の長さは、約0単位〜約1単位であり得る。
【0032】
周壁14の上部の内縁18は、リップ領域20の内縁も表す。この場合、リップ領域20は、リップ領域20の外側部分が内縁と同じレベルになるか又は内縁よりも低くなるように、内縁と水平な角度で又は内縁から水平線よりも下に傾斜する。すなわち、リップ領域は、直線的に又は段状若しくは段階的に(in steps or stages)下り傾斜する。リップ領域20が内縁18から傾斜する角度は、水平線よりも約0度〜約60度下であり得る。好ましくは、リップ領域20が内縁18から傾斜する角度は、水平線よりも下に5度〜60度、最も好ましくは約15度〜約45度であり得る。好ましくは、リップ領域20の長さは少なくとも約10mmである。これは、従来技術のロータリーアトマイザーとは異なる。
【0033】
理論に束縛されることは望まないが、本発明者らは、周側壁の実質的に垂直な上領域15によって形成される内縁及び水平又は下方に傾斜したリップ領域20が、溶融材料液滴22の制御及び放出効率を向上させると考える。より詳細には、溶融材料プール10からの溶融材料2は、ロータリーアトマイザー8から噴射される前にリップ領域20の少なくとも一部に接触すると思われる。内縁19からの溶融材料液滴のリップにおける接触及び連続噴射は、凝固した溶融材料の薄層をリップ領域20上に内縁18から数ミリメートル水平に延ばして形成させる。この固体薄層と傾斜リップ20との間の空隙が、噴霧(液滴形成)前にリップに形成される溶融材料の薄層の望ましくない急冷を妨げる。この急冷は、スピンディスクにおける円滑な噴霧に悪影響を及ぼすものである(例えば、スラグウール又は塊状粒子の形成)。この凝固薄層からの溶融材料の連続噴射は、球状により近い溶融材料液滴22を作り出すのに好都合な条件を提供する。
【0034】
すなわち、連続的な定常状態動作では、溶融材料プール10の平均温度が一定のままであるべきである。しかしながら、プロセス変数、例えば溶融材料2の供給温度又は流量が変わる場合、溶融材料プール10の温度が変わり得るため、さらに下流の動作を乱す可能性があり得る。したがって、いくつかの実施形態では、ロータリーアトマイザー8の構成に用いられる材料の厚さは、溶融材料プール10の温度をより安定させる能力を提供するような厚さである。すなわち、ロータリーアトマイザーの大部分を用いて、溶融材料プール10からの熱の形態のエネルギーを吸収させることができる。この利点は、比較的薄い金属片又は耐火材料片から構成される平坦又は凹状のディスクを通常は備える従来技術のロータリーアトマイザーによっては得られない。
【0035】
図4に示される造粒機内での使用では、ロータリーアトマイザー8は、造粒機内の実質的に中心に位置決めされる。より典型的には、ロータリーアトマイザー8は、スピンしてその円周の周りのおそらくどこにおいても半径方向に溶融材料液滴22を噴射しているため、造粒機を実質的に環状にすることが好ましい。当該技術分野で既知の任意のコレクター32を粒状材料(granulated material:造粒物)34の回収に用いることができる。例えば、コレクター32は、単に少なくとも半凝固した溶融材料液滴22が造粒機から出ることができるように位置決めされた任意の寸法の開口であってもよく、又は少なくとも半凝固した溶融材料液滴22の出口用の少なくとも1つの孔を有する環状トラフであってもよい。本発明のロータリーアトマイザー8は、当該技術分野で既知のいかなる造粒機で用いることもできる。
【0036】
溶融材料液滴22は、ロータリーアトマイザー8から密閉又は実質的に密閉されたチャンバーであり得るチャンバー40に噴射される。半凝固液滴26が衝突面28と衝突して破砕液滴30が形成された後、粒状材料34はコレクターへ向けられ、コレクターは、図4ではコレクター32として造粒機100の周辺へ向けて配置されるように描かれている。
【0037】
チャンバー40は、実質的に円錐台形(錐台とも呼ばれる)である上境界面42を有し得る。上境界面42の円錐台形は、供給手段4へ向かって上窄まりになって垂直線と共に鋭角の円錐台形角度を成す。上境界面42は、供給手段4まで延びていてもよく、又は供給手段4への途中まで延びていてもよい。衝突面28は、上境界面42内に位置決めされ得る。好ましくは、上境界面42の少なくとも一部が衝突面28である。
【0038】
チャンバー40は、下境界面44を有し得る。下境界面44は、任意の形状であり得る。下境界面44の特に好ましい形状は、粒状材料34をコレクター32へ向けるのに適した形状である。例えば、下境界面44は、造粒機100の中心軸へ向かって上窄まり又は下窄まりの実質的に円錐台形でもあり得る。図4は、下境界面44を上窄まり錐台として示している。この場合、コレクターが下境界面44内に又は下境界面44に隣接して位置決めされることが好ましい。例えば、下境界面44が上窄まり錐台である場合、コレクター32は、周辺の場所に位置決めされ得る。下境界面44が下窄まり錐台である場合、コレクターは、中心寄りの場所に位置決めされ得る。後者の場合、コレクターの場所は、最も中心の場所にある必要はなく、造粒機の周辺よりも中心寄りの任意の位置とすることができる。
【0039】
上境界面42、衝突面28、及び/又は下境界面44は、冷却され得る。例えば、上境界面42、衝突面28、及び/又は下境界面44は、空気、水、若しくは他の冷媒、又は当該技術分野で既知の任意の他の材料によって、これらと上境界面42、衝突面28、及び/又は下境界面44の外面との接触によって冷却され得る。
【0040】
図4には、代替的な軌道24が示されている。軌道24は、可変であり、造粒機100の他の構成要素の設計及び動作条件と造粒対象の材料とに応じて決まる。最も重要なことであるが、ロータリーアトマイザー8の設計及び動作は、得られる軌道24の性質に重要である。図4に示される軌道24の両方の例で、上述の実施形態が存在する。すなわち、溶融材料液滴22は、ロータリーアトマイザーから衝突面28へ向けて噴射されてから、破砕液滴30として、続いて粒状材料34としてコレクター32へ向け直される。いずれの場合も、液滴の軌道は、接線成分及び動径成分を有する。軌道24の場合、粒子は、下境界面44上でコレクター32へ向かって下方に螺旋運動する。
【0041】
本明細書において開示及び規定された本発明は、言及された、又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせのすべてを包含することが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせのすべてが、本発明の種々の代替的な態様を構成する。
【0042】
本明細書で用いられる「備える」という用語(又はその文法上の変形)は、「含む」と言う用語と同等であり、他の要素又は特徴の存在を除外するものとみなすべきではないことも理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒機であって、
溶融材料を受け取って該溶融材料の液滴を噴射するロータリーアトマイザーを備え、該ロータリーアトマイザーは、
溶融材料を受け入れる回転ウェルであって、底部及び該底部の周りの周縁から延びる周壁を備え、該周壁の上部が、上部内縁及び該上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で延びるリップ領域を有する、回転ウェル、
を有する、造粒機。
【請求項2】
前記上部内縁まで延びる前記周壁の上領域が、実質的に垂直である、請求項1に記載の造粒機。
【請求項3】
前記周壁の前記リップ領域は、前記底部の前記周縁から離間している、請求項1に記載の造粒機。
【請求項4】
前記底部は平面であり、該底部及び前記周壁は、実質的に直角を成して実質的に垂直の壁を提供する、請求項1に記載の造粒機。
【請求項5】
前記周壁は、上領域及び下領域を備え、前記周壁の前記下領域は、前記ウェルの前記底部に対して75度〜105度傾斜している、請求項1に記載の造粒機。
【請求項6】
前記上部内縁まで延びる前記周壁の上領域が、実質的に垂直である、請求項5に記載の造粒機。
【請求項7】
溶融材料を造粒する方法であって、
回転するロータリーアトマイザーのウェル内に溶融材料のプールを形成するステップであって、前記ウェルは、底部及び該ウェルの前記底部の周りの周縁から延びる周壁を備え、該周壁は、上部内縁及び該上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で傾斜するリップ領域を有する、形成するステップと、
前記リップ領域から前記溶融材料の液滴を噴射するように一定の速度で前記ロータリーアトマイザーを回転させるステップと、
前記溶融材料を細粒として凝固させるステップと、
を含み、該方法は、飛翔中に前記液滴の大部分を凝固させるステップと、凝固した前記液滴をコレクターへ向けるステップとをさらに含むことが好ましい、
溶融材料を造粒する方法。
【請求項8】
前記上部内縁まで延びる前記周壁の上領域が、実質的に垂直であり、前記プールに加えられる前記溶融材料は、前記周壁を上って進み、前記ウェル内での滞留時間後に前記周壁の前記上部内縁に到達した後で前記アトマイザーから噴射される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ロータリーアトマイザーであって、
溶融材料を受け入れるウェルであって、底部及び該底部の周りの周縁から延びる周壁を備え、該周壁の上部が、上部内縁及び該上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で延びるリップ領域を有する、ウェルを備える、ロータリーアトマイザー。
【請求項10】
前記上部内縁まで延びる前記周壁の上領域が、実質的に垂直である、請求項9に記載のロータリーアトマイザー。
【請求項11】
前記周壁の前記リップ領域は、前記底部の前記周縁から離間している、請求項9に記載のロータリーアトマイザー。
【請求項12】
前記周壁は、上領域及び下領域を備え、前記周壁の前記下領域は、前記ウェルの前記底部に対して75度〜105度傾斜している、請求項9に記載のロータリーアトマイザー。
【請求項13】
前記上部内縁まで延びる前記周壁の前記上領域が、実質的に垂直である、請求項12に記載のロータリーアトマイザー。
【請求項14】
溶融材料を噴霧する方法であって、
回転するロータリーアトマイザーのウェル内に溶融材料のプールを形成するステップであって、前記ウェルは、底部及び該ウェルの前記底部の周りの周縁から延びる周壁を備え、該周壁は、上部内縁及び該上部内縁から水平線よりも下に0度〜60度の角度で傾斜するリップ領域を有する、形成するステップと、
前記リップ領域から前記溶融材料の液滴を噴射するように一定の速度で前記ロータリーアトマイザーを回転させるステップであって、前記溶融材料は、前記ウェル内での滞留時間を有する、回転させるステップと、
を含む、溶融材料を噴霧する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5(a)】
image rotate

【図5(b)】
image rotate


【公表番号】特表2011−525419(P2011−525419A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515021(P2011−515021)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000835
【国際公開番号】WO2009/155667
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(590003283)コモンウェルス サイエンティフィック アンドインダストリアル リサーチ オーガナイゼーション (11)
【Fターム(参考)】