説明

滑り止めマット

【課題】吸着効果による滑り止め機能が得られるにもかかわらず取り扱いが簡便であり、しかも不快感を生じるとのない、耐滑り性の非常に高い滑り止めマットを提供する。
【解決手段】この発明の滑り止めマット10では、中間層12が非通気性を有しており、表面層14は、実質的に連続気泡群Fが形成されていることによって通気性が付与されているので、非通気性を有する中間層12と、通気性を有する表面層14とが協働することにより滑り止めマット10全体を吸盤として機能させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の床面或いは浴槽内といった濡れて滑り易い場所に敷いて使用する場合であっても高い耐滑り性を発揮できる滑り止めマットに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の床面或いは浴槽内といった濡れて滑り易い場所では、滑って転倒するのを防止するために滑り止めマットと呼ばれる樹脂性のマットを敷くことが一般に行われている。
【0003】
従来の滑り止めマットは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体といった熱可塑性樹脂を母材とするものが一般的であるが、これら熱可塑性樹脂を母材とする滑り止めマットは、静摩擦係数に比べて動摩擦係数が非常に小さいため、使用時に滑り止めマットの位置がずれやすく、場合によってはバランスを崩して転倒してしまうという危険性があった。
【0004】
また、滑り止めマットの母材である熱可塑性樹脂そのものに吸水性はないため、従来の滑り止めマットを例えば浴室の濡れた床面に敷いた場合には、当該マットと床面との間に水膜が形成されてしまい、この水膜によってマットと床面との間の摩擦係数(静摩擦係数および動摩擦係数)が極端に低下して滑り止めマットがより一層滑りやすくなってしまうのである。
【0005】
かかる問題を解消する手段として、滑り止めマットの裏面に吸盤を設ける技術が各種提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。このような吸盤付きの滑り止めマットによれば、当該吸盤の吸着力によって滑り止めマットを床面にしっかりと吸着固定でき、滑り止めマットが滑るのを防止できる。
【特許文献1】特開2002−10938号公報
【特許文献2】特開2004−248698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の吸盤付滑り止めマットにおいて吸盤の吸着機能を発揮させるためには、吸盤を床面に押し当てて吸盤付滑り止めマットを床面にしっかりと吸着固定させる必要があるが、かかる吸着固定作業を行うためには、身体を屈めたり浴槽内に顔を突っ込まなければならず、非常に不安定な体勢での作業を強いられる。しかも、一度床面に吸着固定させた滑り止めマットの配置位置を変更する必要が生じた場合には、滑り止めマットを吸盤の吸着力に抗して引き剥がさなければならず、特に体の不自由な者や高齢者にとってこれらの作業を行うことは大変な重労働であった。
【0007】
また、滑り止めマットの使用時には、吸盤のゴツゴツとした凹凸感が肌を直接刺激して不快感を生じるという問題もあった。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、吸着効果による滑り止め機能が得られるにもかかわらず取り扱いが簡便であり、しかも不快感を生じることのない、耐滑り性の非常に高い滑り止めマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、「中間層12と、中間層12の表裏両面に形成された表面層14とを有する滑り止めマット10、10’、10’’であって、中間層12は、非通気性であり、表面層14は、ブタジエン共重合体を水素添加することにより得られる熱可塑性弾性樹脂と発泡剤と多孔質粒子Zとの混練物よりなり、かつ、実質的に連続気泡群Fが形成されている」ことを特徴とする滑り止めマット10、10’、10’’である。
【0010】
なお、本願発明において「実質的に連続気泡群Fが形成されている」とは、独立気泡が混在してもよいが、主として連続気泡群Fからなり、全体として通気性を有することを意味する。
【0011】
また、「中間層12が非通気性である」とは、中間層12そのものが非通気性の材料で構成されていることのみならず、中間層12は通気性を有する材料で構成されているが、中間層12と表面層14とを接着する接着材層によって非通気性を担保する場合も含む概念である。
【0012】
この発明の滑り止めマット10、10’、10’’では、中間層12が非通気性を有しており、表面層14は、実質的に連続気泡群Fが形成されていることによって通気性が付与されているので、非通気性を有する中間層12と、通気性を有する表面層14とが協働することにより滑り止めマット10、10’、10’’全体を吸盤として機能させることが可能となる。
【0013】
すなわち、床面に敷いた滑り止めマット10、10’、10’’を踏むなどして滑り止めマット10に外から押圧力を加えると、当該押圧力が加えられた部分の連続気泡群F’が押し潰される(図2参照)。ここで、床面と接する側の表面層14は、非通気性を有する中間層12と床面との間に挟まれていることから、当該押し潰された部分の連続気泡群F’内部の圧力が低下し、ちょうど吸盤のような働きをして床面に吸い付くことができるのである。
【0014】
一方、押圧力を取り除くと、しばらくの間は上記吸着固定効果が維持されるものの、上述したように表面層14には通気性が付与されていることから、周囲の空気や水が極く僅かずつではあるが連続気泡群F’内に流入する。その結果、連続気泡群F’の内部圧力は次第に元の状態に戻り、上記吸着固定効果が解除されるのである。
【0015】
このように、本発明の滑り止めマット10、10’、10’’によれば、踏むなどして外から押圧力を加えると、当該押圧力が加えられた部分の表面層14が床面に吸盤のように吸い付いて吸着固定効果が得られ、反対に、押圧力を取り除けば、吸着固定効果が徐々に解除されるのである。
【0016】
また、表面層14は、その原料として、ブタジエン共重合体を水素添加して得られる熱可塑性弾性樹脂が用いられているので、その理由は明らかとはなっていないが、静摩擦係数および動摩擦係数の両方に優れた表面層14を得ることができ、上記吸着固定効果とも相俟って耐滑り性に非常に優れた滑り止めマット10、10’、10’’を提供できるのである。
【0017】
なお、本発明の滑り止めマット10、10’、10’’は、上述したように非通気性を有する中間層12と、通気性を有する表面層14との協働作用により滑り止めマット10全体を吸盤として機能させるようにしたものであるから、従来のように、滑り止めマットを床面に吸着固定させるための別部材からなる吸盤を必要とはしない。したがって、吸盤と同様の吸着固定効果が得られるにもかかわらず、従来のようなゴツゴツとした不快感を生じることはない。
【0018】
請求項2に記載の発明は、「少なくとも床面と接する側の表面層14には、その表面に溝16が刻設されている」ことを特徴とする。
【0019】
この発明では、滑り止めマット10を濡れた場所に敷いた時に溝16が排水溝として機能できる。したがって、滑り止めマット10’と床面との間に水膜が介在する場合には、当該水膜をこの溝16を通して滑り止めマット10’の外方へ押し出すことができる。その結果、滑り止めマット10’と床面とが水膜を介することなく直接接触でき、滑り止めマット10’の吸着固定効果を確実に発揮させることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、「一方の表面層14から他方の表面層14まで貫通する水抜き用の孔18が設けられている」ことを特徴とする。
【0021】
この発明では、滑り止めマット10’’を湯船に沈めて使用する際、湯(水)が水抜き用の孔18を通り抜けることができるのであるが、その際、滑り止めマット10’’には適度な抵抗力が生じ、滑り止めマット10’’を湯船中にまっすぐ沈めることができるのである。
【0022】
請求項4に記載の発明は、「中間層12の比重は1よりも大きい」ことを特徴とするものである。この発明によれば、滑り止めマット10、10’、10’’を浴槽内に沈めて使用する場合であっても滑り止めマット10、10’、10’’が浮力で浮き上がるようなことはない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、吸着固定効果による滑り止め機能が得られるにもかかわらず取り扱いが簡便であり、しかも使用時の不快感を生じることのない、耐滑り性に非常に優れた滑り止めマットを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明が適用された滑り止めマットを図示実施例にしたがって詳述する。
【0025】
[実施例1]
本発明にかかる滑り止めマット10は、図1に示すように、中間層12と表面層14とで大略構成されている。
【0026】
中間層12は、非通気性を有する樹脂製のシート状部材であり、その母材としては、強度と柔軟性とを兼ね備えたSBR(スチレンブタジエンゴム)や天然ゴムなどのエラストマが好ましい。
【0027】
また、中間層12は、滑り止めマット10を浴槽内に沈めて使用する際に滑り止めマット10が浮力で浮き上がるのを防止する必要があることから、その比重を1よりも大きく設定しておくことが望ましい。なお、中間層12の比重を大きくする手段としては、増量剤(たとえば、沈降性バリウムなど)を上記エラストマに混練する方法が採用される。
【0028】
表面層14は、少なくとも熱可塑性弾性樹脂と発泡剤と多孔質粒子Zとを含む混練物よりなり、かつ、実質的に連続気泡群Fが形成されたシート状部材であり、中間層12の表裏両面に形成されている。
【0029】
ここで、「実質的に連続気泡群Fが形成され」とは、独立気泡が混在してもよいが、主として連続気泡群Fからなり、全体として通気性を有することを意味する。
【0030】
また、連続気泡群Fを形成するための具体的手法としては、例えば、発泡剤、発泡助剤、架橋剤を適宜組み合わせることにより達成できるが、より簡単な方法としては、熱可塑性物質と発泡剤との混練物に多孔質粒子Zを添加し、これを発泡させることで達成でき、これにより、連続気泡群Fからなる発泡体(すなわち、表面層14)が得られることになる。
【0031】
熱可塑性弾性樹脂は、表面層14の母材となるものであり、ブタジエン共重合体を水素添加することによって得られるオレフィン系熱可塑性弾性樹脂(例えば、商品名:SOE−SO 旭化成ケミカルズ株式会社製)がそのまま用いられる。なお、この熱可塑性弾性樹脂は、フィラー(充填材)を大量に加えても柔軟性が損なわれることはないため、表面層14の設計自由度を高めることができる。
【0032】
発泡剤は、表面層14の内部に連続気泡を形成するためのものであり、当分野で公知のものを利用することが可能であるが、とりわけ化学発泡剤が好ましく、有機系発泡剤及び無機系発泡剤の何れをも用いることができる。
【0033】
また、これらの化学発泡剤のうち、熱分解型の方が好適に用いられるが、反応型のものであってもよい。例えば、熱分解型無機系発泡剤には、炭酸塩、重炭酸塩、亜硝酸塩、水素化物等があり、具体的には炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等が好ましいものとして挙げられる。また、熱分解型有機系発泡剤には、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジ化物、ニトロソ化物、トリアゾール化物等があり、具体的にはアゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等が挙げられる。
【0034】
多孔質粒子Zは、発泡剤が発泡する際の発泡核として機能するものであり、発泡・膨張時には、これらが発泡ガスを若干吸収して膨張の程度を制御できる点で好適なものである。また、発泡体(表面層14)形成後には、脱臭・消臭・吸放湿等の作用を奏することができる点でも好適なものである。
【0035】
多孔質粒子Zとしては、無機粉粒体或いは有機粉粒体の何れであっても良く、例えば、前者にはセラミック、酸化鉄、鉱石等に由来するものが挙げられ、具体的には、酸性処理粘土、フラー土、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、ゼオライト、人工ゼオライト、白土、含水若しくは無水珪酸、シリカゲル、活性炭、パーライト、バーミキュライト、マグネシア等が挙げられる(本実施例では、多孔質粒子Zとしてゼオライトが採用されている)。また、後者には、籾殻、木炭、デキストリン等が挙げられる。
【0036】
なお、「粉粒体」とは、粒状,粉状は勿論のこと、微細な繊維状も含まれる概念である。また、上記多孔質粒子Zは、1種で用いられても良くまた2種以上混合して用いられても良い。
【0037】
発泡助剤は、表面層14を形成するに際し必要に応じて添加されるものであり、その具体例としては、亜鉛華、尿素、ジンクステアレート、サリチル酸等が好ましいものとして挙げられる。
【0038】
架橋剤も、発泡助剤と同様、表面層14を形成するに際し必要に応じて添加されるものであり、その具体例としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド等が挙げられ、具体的には、ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0039】
次に、滑り止めマット10の製造方法について説明する。まず、中間層12については、下記表1に記載された配合に従い、また、表面層14については、下記表2に記載された配合に従って各配合物をそれぞれ個別にオープンロール、バンバリーミキサ、加圧ニーダ等で均一に混練し、滑り止めマット10を製造する各混練物をそれぞれ調整した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
得られた各混練物について、ロール、押出気等で成形して中間層用混練物12’および表面層用混練物14’をそれぞれ得た。このとき、中間層用混練物12’については約2mmの厚さに成形し、表面層用混練物14’については約1mmの厚さに成形した。
【0043】
次いで、加熱・加圧用プレス内に中間層用混練物12’と2枚の表面層用混練物14’とを積層し(このとき、表面層用混練物14’の間に中間層用混練物12’が配されるように各混練物がサンドイッチ状に積層される。)、然る後、一段加熱・加圧発泡方式により、温度150〜180℃、圧力:150〜100kg/cm2で10〜15分程度保持した。これにより、中間層用混練物12’からは中間層12が得られ、表面層用混練物14’からは表面層用混練物14’が発泡・膨張することにより表面層14が得られ、全体として目的とする滑り止めマット10が得られた。なお、中間層12の比重は、約2.7g/cm3と水の比重(1.0g/cm3)に比べて非常に大きいものであった。
【0044】
以上のようにして形成された滑り止めマット10を使用する際には、目的の場所(たとえば浴室の床面や浴槽の底面等)に敷くだけでよい。
【0045】
そして、たとえば浴室の床面に敷いた滑り止めマット10を踏むなどして滑り止めマット10に外から押圧力を加えると、当該押圧力が加えられた部分の連続気泡群F’が押し潰される(図2参照)。
【0046】
ここで、床面と接する側の表面層14は、非通気性を有する中間層12と床面との間に挟まれることになるので、当該押し潰された部分の連続気泡群F’内部の圧力は低下し、その結果、滑り止めマット10がちょうど吸盤のような働きをして床面に吸い付くことができるのである(つまり、滑り止めマット10が床面に吸着固定されるのである。)。
【0047】
一方、押圧力を取り除くと、しばらくの間は上記吸着固定効果が維持されるものの、上述したように表面層14には通気性・通水性が付与されていることから、周囲の空気や水分が極く僅かずつではあるが連続気泡群F’内に流入する。その結果、連続気泡群F’の内部圧力はやがて元の状態に戻り、上記吸着固定効果は解除される。なお、連続気泡群F’内への水分の流入は、連続気泡群F(F’)や、連続気泡群F(F’)内に存在する多孔質粒子Zの毛細管現象によって引き起こされると考えられる。
【0048】
このように、本発明の滑り止めマット10によれば、足で踏むなどして滑り止めマット10に外から押圧力を加えるだけで吸盤と同様の吸着固定効果が得られ、反対に、滑り止めマット10の上から退くなどして押圧力を取り除くだけで上記吸着固定効果が自然に解除される。したがって、従来の吸盤付滑り止めマットのように、吸盤機能を発現させるための面倒な作業を必要とはせず、その取り扱いは非常に簡単なものである。
【0049】
また、本発明の滑り止めマット10は、上述したように非通気性を有する中間層12と、通気性を有する表面層14との協働作用により滑り止めマット10全体を吸盤として機能させることができるものであり、従来のように別部材からなる吸盤を別途設ける必要はない。したがって、使用時においてゴツゴツとした不快感を生じることもない。
【0050】
また、表面層14は、その原料として、ブタジエン共重合体を水素添加して得られる熱可塑性弾性樹脂が用いられているので、その理由は必ずしも明らかとはなっていないが、表面層14の静摩擦係数および動摩擦係数が共に優れた表面層14を得ることができ(静摩擦係数0.83,動摩擦係数0.82;JIS K 7125:1999に準拠した試験結果による)、上記吸着固定効果とも相俟って耐滑り性に非常に優れた滑り止めマット10を得ることができる。
【0051】
なお、滑り止めマット10の高い耐滑り性は、表面層14の母材の材質(すなわち、ブタジエン共重合体を水素添加して得られる熱可塑性弾性樹脂)と上記吸着効果とが相俟ってはじめて発揮されるものであり、その何れか一方だけでは十分な耐滑り性を発揮することができないものである。
【0052】
また、表面層14の連続気泡群Fや多孔質粒子Zは、上述したように毛細管現象によって水分を吸収できるものであるから(すなわち、吸水性が付与されているから)、滑り止めマット10と床面との間に水膜が介在するような場合であっても、表面層14が当該水膜を吸水して滑り止めマット10(より詳しくは、表面層14)と床面とを直接接触させることができる。したがって、従来のように水膜の存在による静摩擦係数や動摩擦係数の低下が生じることもない。
【0053】
また、上述したように、表面層14には吸水性が付与されているのであるから、滑り止めマット10を浴槽内に沈めた時には、表面層が浴槽内の湯を吸収して滑り止めマット10全体が素早く暖まる。したがって、入浴直前に滑り止めマット10を湯船の中に入れた場合であっても、肌が滑り止めマット10に触れてヒヤっとすることはない。
【0054】
また、滑り止めマット10を予め湯船に浸けておけば、連続気泡群F内の多孔質粒子Zが湯中に存在する塩素等を吸着できる。したがって、水道水に含まれる塩素などの有害物質によって肌が荒れてしまうような敏感肌の人であっても安心して入浴をすることが可能となる。
【0055】
さらにまた、中間層12は、比重が1よりも大きいので、滑り止めマット10を湯船に入れて使用した場合であっても、浮力で浮き上がることはない。しかも、本実施例のように中間層12の比重を1よりも遥かに大きく設定した場合(具体的には、比重が2以上であることが好ましく、本実施例では、中間層12の比重が約2.7g/cm3である。)には、大重量の滑り止めマット10を得ることができる。ここで、大重量の滑り止めマット10を濡れた床面に敷いた場合には、滑り止めマット10と床面との間に挟まれた水膜が滑り止めマット10の自重によって滑り止めマット10の外方に押し出される。つまり、滑り止めマット10を敷くだけで滑り止めマット10と床面とが直接接触することとなり、水膜による静摩擦係数や動摩擦係数の低下を抑止することが可能となるのである。
【0056】
なお、得られた滑り止めマット10をローラー等で圧縮すれば、図3に示すように、連続気泡群Fの内壁と接着している多孔質粒子Z(Z1)を前記内壁から引き離したり、多孔質粒子Z(Z2)の表面を被覆している気泡膜片fを剥離したり、上記連続気泡群F内でくっつき合っている多孔質粒子Z(Z3)の塊を分割したり、多孔質粒子Zそのものを粉砕することができ、そのままでは機能の発現に寄与し得なかった多孔質粒子Zを泡群F内に露出させることができる。そして、滑り止めマット10全体として多孔質粒子Zの諸機能(すなわち、吸放湿機能、ガス吸着機能など)を最大限まで増強できるようになる。
【0057】
[実施例2]
第2実施例の滑り止めマット10’は、表面層14の表面全面に溝16を形成した例である。
【0058】
溝16は、滑り止めマット10’を濡れた床面に敷いたときに排水溝として機能するものであり、本実施例では、斜め方向に直線状に伸びる複数の溝16が所定間隔を隔てて形成されている(これにより、表面層14の表面には、略ダイヤ形状の凹凸パターンが構成されることとなる。)。各溝16の端部は、表面層14の側面に達するように形成されており、これにより溝16が排水溝としてより効果的に機能できることとなる。
【0059】
溝16の形成方法としては、表面層14の表面を切削する方法など種々の方法が考えられるが、本実施例では、対応する凹凸パターンが形成された金型を表面層14の表面に熱圧締する方法が採用されている。なお、溝16は、少なくとも床面と接する側の表面層14の表面に形成すれば良い。
【0060】
滑り止めマット10’を濡れた床面に敷いた場合には、滑り止めマット10’と床面との間に挟まれた水膜が溝16を通って滑り止めマット10’の外方に押し出される。したがって、滑り止めマット10’と床面とが水膜を介することなく直接接触でき、滑り止めマット10’の吸盤効果をより確実に発揮させることができる。
【0061】
なお、溝16の構成は上述実施例に限定されるものではなく、例えば、波型やジグザク型など種々の形状が考えられる。
【0062】
[実施例3]
また、図4に示す滑り止めマット10’’のように、一方の表面層14から他方の表面層14まで貫通する水抜き用の孔18を形成するようにしてもよい。
【0063】
この実施例によれば、滑り止めマット10’’を湯船に沈めて使用する際、湯が水抜き用の孔18を通り抜けることができるのであるが、その際、滑り止めマット10’’には適度な抵抗力が生じ、滑り止めマット10’’を湯船中にまっすぐ沈めることができる。
【0064】
なお、上記溝16と孔18とはそれぞれ単独で形成するようにしてもよいし、両方を同時に形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本願発明の第1実施例を示す図である。
【図2】滑り止めマットに押圧力を付与したときの表面層14の状態を示す部分拡大図である。
【図3】滑り止めマットをローラーで圧縮したときの表面層14の状態を示す部分拡大図である。
【図4】本願発明の第2実施例を示す図である。
【図5】本願発明の第3実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10、10’、10’’…滑り止めマット
12…中間層
14…表面層
16…溝
18…孔
F…連続気泡
Z…多孔質粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層と、前記中間層の表裏両面に形成された表面層とを有する滑り止めマットであって、
前記中間層は、非通気性であり、
前記表面層は、ブタジエン共重合体を水素添加することにより得られる熱可塑性弾性樹脂と発泡剤と多孔質粒子とを含む混練物よりなり、かつ、実質的に連続気泡群が形成されていることを特徴とする滑り止めマット。
【請求項2】
少なくとも床面と接する側の表面層には、その表面に溝が刻設されていることを特徴とする請求項1に記載の滑り止めマット。
【請求項3】
前記一方の表面層から前記他方の表面層まで貫通する水抜き用の孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の滑り止めマット。
【請求項4】
前記中間層の比重は1よりも大きいことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の滑り止めマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−244497(P2007−244497A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69367(P2006−69367)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(500084108)シンエイテクノ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】