説明

滑り止め体を通る弾性フレックス区域を有するフレックス・スタッド、そのスタッドを備えたソールおよびサッカーシューズ

【課題】 良好な牽引力および改善されたソールの可撓性の両方が可能なように、従来技術の欠点を少なくともある程度克服したスタッド、ソールおよびスパイクシューズを提供する。
【解決手段】 ソール(20)のためのスタッド(24)において、少なくとも第1のスタッド(50)と第2のスタッド(52)、および第1のスタッド部分(50)と第2のスタッド部分(52)を互いに接続する少なくとも1つの第1の歪み区画(26)であって、スタッド(24)がソール(20)に取り付けられ、このソールが曲げられたときに歪む少なくとも1つの第1の歪み区画(26)を有してなる。ソール(20)において、少なくとも1つのスタッド(24)を有してなる。スパイクシューズ(80)において、ソール(20)を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイクシューズのスタッド、ソールおよびスパイクシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
スタッドおよびスパイクシューズ、特にサッカーに使用されるものは、芝生などの軟らかいグラウンドへの良好な捉え力(grip)および牽引力(traction)を提供するために主に使用される。このために、スパイクシューズは、グラウンドに食い込んで、スパイクシューズがグラウンド上で滑るのを防ぐことができるスタッドを備えている。
【0003】
サッカーおよび他のスポーツにおいて、それぞれの競技場の土壌状態には大きな差がある。これは、それによりグラウンドが軟らかくなる雨などの外的影響のためかもしれない。他方で、グラウンドは、乾ききって非常に硬いかもしれない。さらに、グラウンドの状態は、分野の異なるスポーツで異なるであろう。これらの条件としては、小さな隆起またはより大きな窪みが挙げられるであろう。
【0004】
したがって、様々なタイプのスタッドおよびスパイクシューズが開発されてきた。スタッドは、一般に、回転対称の形状を有するが、三角形または細長い形状などの様々な形状を有してもよい。スタッドにより、典型的にサッカーや多くの他のスポーツに行われるように、スピードや方向の急激な変化が可能になる。
【0005】
従来技術には、力の伝達を改善するために開発されたスタッドまたはスパイクシューズ、もしくは様々なグラウンド状態に適合するスタッドまたはスパイクシューズが開示されている。
【0006】
これらの課題を解決するために、特許文献1には、いくつかのスタッドがバネを介して接続されているスパイクシューズが開示されている。例えば、図3aは、より大きなスタッドが軟らかいグラウンドに食い込み、最初のスタッドに接続された他のスタッドには、バネを介して力が伝達されないことを示している。他方で、図3bは、硬いグラウンドでは、スタッドはソールの方向に押し込まれ、よって、バネが小さなスタッドに力を伝達し、次いで、グラウンドの捉え力を改善するために、小さなスタッドは押し出される。
【0007】
さらに、特許文献2には、ソールのフォアフット区域に互いに関係なく動くスタッドを備えたソールを有するサッカーシューズが開示されている。このために、スタッドは、分割された要素に取り付けられている。図3を参照のこと。分割された要素はソールの弾性層に取り付けられ、この弾性層は圧力が印加されると伸び、それゆえ、スタッドが動くであろう。
【0008】
同様に、特許文献3には、ソールの単一セグメントが分割され、したがって、セグメントが独立して動けるスパイク付きソールが開示されている。図27を参照のこと。
【0009】
特許文献4には、一片の弾性材料から製造されたスポーツシューズのソールが開示されている。このソールは、ソールから下方に延在する複数のスタッドを備えている。開示されたシューズは、人工芝で良好な捉え力を提供するのに特に有用であり、さらに、人工芝を傷めない。
【0010】
特許文献5は、移動式コアを含むスタッドに関する。このために、移動式コアは、スタッドに組み込まれ、バネを介して外側に押されるであろう。それゆえ、スタッドは、グラウンドの性質に応じて、グラウンドに入り込むであろう。
【0011】
特許文献6は、1つのスタッドに加わる力によりソールが変形するかもしれず、これは、シューズを着用する競技者にとって不快であろうという状況に関する。この不快さは、スタッドが1つだけ動くのを妨ぐようにいくつかのスタッドをグループ化することによって低減する。
【0012】
特許文献7において、軸方向の力を緩衝する課題も対処されている。この中で、競技者の快適さを増すように働く緩衝フック要素が使用されている。
【0013】
特許文献8もこの問題に対処しており、この文献には保持要素および支持要素からなるスタッドが開示されている。これらの要素の間には中間要素が取り付けられており、この中間要素は、支持要素の弾性動作を支持方向に支持する。
【0014】
特許文献9も、スタッドを備えたソールを有するスポーツシューズの緩衝を改善することに向けられている。このために、スタッドに角度の付いた本体が取り付けられており、これにより、変形がもたらされ、それゆえ、軸方向ではない力が印加されると緩衝を提供するであろう。
【0015】
また、特許文献10には、力を低減させるためにスタッドに取り付けられたいわゆるバンパーの使用が開示されている。スタッドは、バンパーを介してソールに取り付けられている。
【0016】
特許文献11は、剛性の異なる区域を有するソールに関する。これにより、足の押し離し(rolling-off)が改善されるであろう。
【0017】
特許文献12は、スポーツシューズへのスタッドの取付けに関する。スタッドは、所定の力を超えた場合、怪我を防ぐために、シューズから開放される。
【0018】
特許文献13は、履き心地を改善するように働く2つのスタッドのシステムに関する。
【0019】
特許文献14は、競技用シューズシステムおよび取外し可能な滑り止め体に関する。この滑り止め体は、下側に下方に突出した略円形のリッジパターンおよび上側に上方に突出したネジ切り軸部を有するディスク形本体を有する。
【0020】
特許文献15は、接地基部およびこの接地基部に取り付けられた弾性のシューズの踵係合部を含むシューズの踵支持手段に関する。
【0021】
特許文献16は、ソールと、接地する底面および底面に形成された窪みとを有するソールに取り付けられた第1のスタッドを含む、特に人工芝用のスポーツシューズに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第03/071893号パンフレット
【特許文献2】英国特許出願公開第2425706A号明細書
【特許文献3】米国特許第5384973号明細書
【特許文献4】米国特許第3593436号明細書
【特許文献5】独国実用新案第29807086U1号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1857006A1号明細書
【特許文献7】独国特許第4123302号明細書
【特許文献8】独国特許第2313646号明細書
【特許文献9】欧州特許第0356637B1号明細書
【特許文献10】米国特許第5505012号明細書
【特許文献11】独国特許出願公開第19652462A1号明細書
【特許文献12】米国特許第5617653号明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第3433337A1号明細書
【特許文献14】米国特許第5901472号明細書
【特許文献15】国際公開第2010/012047A1号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2008/152502A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来技術において提供された全ての解決策は不完全である。スタッドをソールに取り付けると、取付区域におけるソールの剛性が増加する。このことは、回転対称ではないスタッドに特に当てはまる。そのようなスタッドは、迅速な方向変化のためには回転対称のスタッドよりも適しているであろうが、非対称スタッドは、一般に、より大きい取付区域を有し、これによりその区域におけるソールの剛性が著しく増加してしまう。それゆえ、通常は、シューズの屈曲区域においてはスタッドはシューズに取り付けられず、これにより、捉え力が減少するが、可撓性は増し、履き心地は改善される。別の典型的な実施の形態において、スタッドは屈曲区域に取り付けられており、これにより、捉え力は改善されるが、可撓性は減少してしまう。これにより、履き心地は低下し、また、足は最適に押し離されなくなるので、牽引力も減少するであろう。それゆえ、公知のスパイクシューズは、一般に、良好な牽引力を提供し、ひいては屈曲区域におけるシューズの可撓性が減少するように構築されている。それゆえ、サッカーなどのスポーツに要求される加速などの動作は、競技者にとってより難しくなる。
【0024】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、良好な牽引力および改善されたソールの可撓性の両方が可能なように、従来技術の欠点を少なくともある程度克服したスタッド、ソールおよびスパイクシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、第1の実施の形態にしたがい、少なくとも第1のスタッド部分と第2のスタッド部分およびこの第1のスタッド部分と第2のスタッド部分を互いに接続する少なくとも第1の歪み区画を含むソール用スタッドであって、スタッドがソールに取り付けられ、ソールが曲げられたときに、少なくとも1つの第1の歪み区画が歪むものであるスタッドにより、この課題を解決する。
【0026】
従来技術とは反対に、そのようなスタッドの有益な構造により、ソールの屈曲区域、例えば、母指球と指節骨との間のフォアフット区域にも1つ以上のスタッドを備えたソールを提供することができる。これにより、牽引力、それゆえ、足とグラウンドの間の力の伝達を改善することができる。歪み区画により、スタッドが背側方向のソールの屈曲に少なくともある程度適応することが可能になる。それゆえ、大きな力が加えられた状況でさえ、競技者の快適さは低減しない。特に、足の押し離しにより、ソールが曲がる。それによって、スタッドの最も外側の部分が、内側部分よりも強烈に曲がる。歪み区画を含むことにより、そのような歪みが可能になる。そのような歪み区画がないと、スタッドは剛性であり、これは、従来技術の問題の一因となる。特に、競技者は当人の力をより効率的に使用できるであろう。何故ならば、この有益な手法により、スタッドを足の屈曲区域に配置することができ、その結果、グラウンド状況によりよく適応でき、力の伝達が改善される。本発明は、スタッドの全ての形状に、特に細長い形状や非対称の形状に適している。したがって、好ましいスタッドは、様々な課題に最適化された構成部材を備える。スタッドのスタッド部分は、グラウンドとの要求される捉え力を提供し、したがって、剛性材料から製造することができるが、接続する歪み区画は、スタッドの歪みを可能にすることによって足の押し離しを軽減し、これにより、ソールの曲げに適応できる。しかしながら、実施の形態に応じて、歪み区画は、グラウンドに食い込んでもよい。
【0027】
ある実施の形態において、第1のスタッド部分と第2のスタッド部分は、少なくとも1つの第1の歪み区画のみによって互いに接続されている。これらのスタッド部分の間には、歪みを防ぐ非弾性区域がないので、この実施の形態により、最大の歪み可撓性が可能になる。さらに、これらのスタッド部分は、スタッド受入手段および/またはソールを介して、少なくとも間接的に互いに接続されている。しかしながら、これには、ソールを曲げたときのスタッドの歪みに影響はない。
【0028】
別の実施の形態において、第1のスタッド部分と第2のスタッド部分は、リッジ部材を通じて互いに追加に接続されている。第1と第2のスタッド部分を接続すると、屈曲可撓性が低下するが、スタッドをより安定な構造にすることができる。あるスタッド、スタッドの位置またはある目的について、このことは、最大の屈曲可撓性よりも重要であろう。例えば、ソールの先端および/または踵で剛性のより強いスタッドが有益であるかもしれない。さらに、スタッドは一体に形成することができ、数少ない構成部材から製造されるので、リッジ部材により製造が容易になる。その上、使用する場合に応じて、歪みを低下させたり、完全停止を形成することもできる。
【0029】
ある実施の形態において、少なくとも1つの第1の歪み区画は、ソールの表面に対して45度から90度の角度をなす。歪み区画を所定の角度に配置することにより、特定の状況に適応することができる。例えば、あるスタッドは、本発明によるスタッドの有益な性質を十分に利用するために、歪み区画の勾配を必要とする特定の負荷を経験するかもしれない。
【0030】
ある実施の形態によれば、第1の歪み区画は、スタッドがソールに取り付けられているソールの区域の接平面に対して実質的に垂直に延在する。これにより、足が背の方向に曲げられた場合、スタッド、それゆえ、ソールの屈曲が可能になる。これにより、ソールがより可撓性であるので、ソールの屈曲区域における追加のスタッドの改善された牽引力を放棄せずに、足の押し離しがより容易になる。しかしながら、歪み区画の異なる配向性も可能である。配向性は、それぞれのソールの曲げ特性に対して最適化されるであろう。例えば、あるスポーツでは、ソールが横方向における曲がること、およびその区域に1つ以上のスタッドがあることも必要とされるであろう。この場合、歪み区画は、足の横方向のローリングオフ(rolling-off)が、できるだけわずかしか妨げられないようなものであってよい。
【0031】
ある実施の形態において、第1の歪み区画は実質的に細長い小片の形状を有する。この種の歪み区画は、形成が容易であり、スタッドの他の部分との組立ても容易である。
【0032】
別の実施の形態において、第1の歪み区画は楔形である。楔形により、足の押し離しのときに、スタッドのアライメントを改善することができる。横から見たときに、楔は、広い方の端部がグラウンドに向いているように配置されることが好ましい。何故ならば、歪み区画の最も外側の部分が、内側部分、すなわち、ソールにより近い部分よりも大きい歪みを経験するからである。これにより、スタッドの特に良好な適応性が可能になり、歪み区画は過剰な応力を経験しない。さらに、それぞれの使用に応じて、歪み区画の他の形状も可能である。
【0033】
ある実施の形態において、スタッドは、第2の歪み区画および第3のスタッド部分を備え、第2の歪み区画は第2のスタッド部分と第3のスタッド部分を互いに接続し、ソールにスタッドが取り付けられ、ソールが曲げられたときに、第2の歪み区画は歪む。別の歪み区画を追加することによって、ソールの屈曲へのより良好な適応が可能になる。このようにして、足の特に良好な押し離しが、ソールの屈曲区域においても実現することができる。もちろん、スタッドに歪み区域およびスタッド部分をさらに加えることも有益かもしれない。
【0034】
別の実施の形態において、第1の歪み区画と第2の歪み区画は、互いに実質的に平行に延在する。これにより、スタッドの特に円滑な曲げが可能になる。さらに、第1と第2の歪み区画を互いに垂直に配置することも可能である。それによって、第1の歪み区画が縦軸に対して垂直に配置され、第2の歪み区画が縦軸に平行に配置される。これにより、縦方向と横方向で歪みが可能になる。第2の歪み区画は、ソールに対して並行に、すなわち、スタッド内で水平に配置することもでき、軸方向の緩衝(従来技術から公知のような)が可能になる。また、3つの歪み区画の全ての組合せも可能である。
【0035】
少なくとも1つの第1の歪み区画と第2の歪み区画が、伸縮性材料から製造された少なくとも1つのリッジ部材を通じて互いに接続されることが好ましい。そのような実施の形態により、単純な組立て(例えば、成型技法を使用して)が可能になり、スタッドはより伸縮性の弾性材料を含むので、さらに、可撓性に影響が与えられる。
【0036】
少なくとも1つの第1の歪み区画と第2の歪み区画が一体成形されることが好ましい。第1と第2の歪み区画が一工程で組み立てられる。リッジ部材は、第1と第2の歪み区画を互いに接続し得る。例えば、射出成形技法を使用して、スタッドとソールを製造する場合、部材数の少ないほうが有益である。
【0037】
別の実施の形態において、第1のスタッド部分と第2のスタッド部分および少なくとも1つの第1の歪み区画が一体成形される。第1と第2のスタッド部分は一工程で組み立てられる。そのような組立てにより、構成部材の必要数が都合よく減少する。
【0038】
追加の実施の形態によれば、本発明は、上述したスタッドを少なくとも1つ備えたソールに関する。そのようなソールは、剛性スタッドを特徴とする従来のソールと比べて、明らかに改善された曲げ特性を提供する。ソールの屈曲区域に1つ以上のスタッドを配置した場合、このことは特に当てはまる。
【0039】
ソールは少なくとも1つのスタッド受入手段を備え、このスタッド受入手段は少なくとも1つの第3の歪み区画を含むことが好ましい。そのような第3の歪み区画は、ソールの縦方向に対して横切るように延在すれば、ソールの屈曲区域において特に有益である。現代のスタッドは、通常、ソールにボルト留めされておらず、例えば、クリップ機構、ボルト締め、磁気機構または他の機構を使用することにより、またはさらには永久的な接着、成型またはリベット留めによって、特注のスタッド受入手段内に取り付けられる。スタッドは、ソールと一緒に一体成形されてもよい。そのようなスタッド受入手段は、すでにソールに高い剛性をもたらし、したがって、ソールの屈曲を妨げるであろう。したがって、スタッド受入手段に別の歪み区画を追加することによって、ソールの曲げ可撓性をさらに増加させることができる。このことは、スタッド受入手段に取外し可能に取り付けられたスタッド、並びにスタッド受入手段に永久的に取り付けられたスタッドの両方に当てはまる。
【0040】
第3の歪み区画がスタッド受入手段を超えてソールにまで延在することが好ましい。足の屈曲はソールの全幅に亘るので、足の押し離しを最適に支援し、本発明の上述した利点を利用するために、スタッド受入手段を超えた横方向の第3の歪み区画のさらなる延在が好ましい。しかしながら、本発明による第3の歪み区画の異なる取付けも可能である。これは、例えば、足の押し離し挙動に依存し得る。
【0041】
好ましい実施の形態において、少なくとも1つの第1の歪み区画と第3の歪み区画は一体成形される。重ねて、このことにより、ソールの製造と組立てが容易になる。
【0042】
ソールは、スタッドを持たないソールの区域に配置された少なくとも1つの第4の歪み区画を含むことが好ましい。ソールの横方向に1つ以上の第4の歪み区画を取り付けることにより、ソールを背方向に曲げたときに、可撓性をさらに改善することができる。さらに、第4の歪み区画の異なる取付け、例えば、ソールの縦軸の方向の取付けも可能である。縦方向におけるそのような歪み区画も、例えば、第2および第3指節骨の間の、足または前足区域の先端において特に有益である。この歪み区画により、シューズのグラウンドへの適応性が改善され、より大きい安定性が提供される。
【0043】
さらに好ましい実施の形態において、少なくとも1つの第1の歪み区画、第2の歪み区画、第3の歪み区画および/または第4の歪み区画がソールの屈曲区域に配置されている。典型的に、ソールの改善された可撓性は、屈曲区域、例えば、フォアフット区域のみに必要とされる。もちろん、すでに先に述べたように、歪み区画をソールの異なる位置に取り付けることも有益であろう。
【0044】
ある実施の形態において、ソール、および第1、第2および第3のスタッド部分と少なくとも1つの歪み区画を含む少なくとも1つのスタッドが、一体成形される。現代の生産技法(例えば、多成分射出成形)を使用して、ソールを異なる材料から製造することもできる。例えば、一方で、第1の材料を第1、第2、第3および/または第4の歪み区画に使用し、他方で、別の材料をスタッドおよび/またはソールの他のスタッド部分に使用することができる。これにより、ソールの製造の複雑さが明らかに低減する。しかしながら、スタッドを交換できるように互いに取外し可能に取り付けられたソールとスタッド内に上述した特徴を提供することも可能である。
【0045】
最後に、本発明は、上述した実施の形態によるソールを備えたスパイクシューズに関する。本発明によるソールを使用することによって、屈曲区域の可撓性が改善されたスパイクシューズ、特に、サッカーシューズが提供される。さらに、それと同時に、スタッドがよりよい牽引力を提供する。
【0046】
本発明の以下の態様を、添付の図面を参照して、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】足の説明図
【図2】2a〜2dは、いくつかの実施の形態によるソールの底面図
【図3】3a〜3bは、それぞれ、下からと上からの、スタッドと歪み区画を備えたソールの説明図
【図4】4a〜4bは、横から見た歪み区画を有するソールの説明図
【図5】5a〜5bは、スタッドおよび歪み区画を備えたソールの斜視図
【図6】6a〜6bは、それぞれ、スタッドおよびいくつかの歪み区画を備えたソールの側面図と底面図
【図7】7a〜7bは、それぞれ、一体成形された歪み区画を含むソールの斜視図および分解斜視図
【図8】8a〜8dは、スタッドおよび歪み区画を含むいくつかのスパイクシューズの説明図
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、ヒトの足1の説明図を示している。指節骨は、足の様々な屈曲区域を画成する。参照番号3および5により2つの線が強調されている。線3は4つの指節骨により画成される屈曲区域を示しており、線5は2つの指節骨により画成される屈曲区域を示している。足を押し離すとき、つま先が曲げられ、線3および5が屈曲区域を示す。全体として、屈曲区域9は、線3と5両方の全区域に亘り延在する。
【0049】
図2a〜2dは、歪み区域を備えたスタッドおよびソールの設計の可能な実施の形態の選択を示している。例えば、図2aは、多数のスタッド受入手段22およびスタッド24を有するソール20を示している。歪み区画26,53,62が、スタッド24のいくつかを通って、スタッド受入手段22またはソールに延在している。歪み区画26,53,62は、足の背側の動きにおける小さな歪みをもたらし、したがって、足の改善され、より可撓性のある押し離しをもたらす。歪み区画26,53,62は、一般にソール20の縦軸に対して垂直に延在するように配置される。足の構造(図1参照)のために、歪み区画26,53,62は、ソール20の縦軸に対して様々な角度で配置されてもよい。これが例示の図2a〜2dに示されている。図2cには、スタッド24またはスタッド受入手段22のいくつかが歪み区画26,62を含まないことを明らかに示している。これは、特に、ソールの踵区域に配置されたスタッド(図示せず)だけでなく、親指の区域に配置されたスタッドに関する場合である。そのようなスタッドは加速のために使用され、それゆえ、歪み区画26,53,62は必要ないであろう。
【0050】
図3a〜3bは、それぞれ、下からと上から見た本発明によるソール20を示している。このソールは、部分的に歪み区画26,53,62を含むいくつかのスタッド24を備えている。スタッドおよびソールの一部に亘り延在する1つの歪み区画62がこれらの図に明らかに見える。これらの図面において、歪み区画26,53,62はソール20の屈曲区域内に配置されており、この区域は、主に高い可撓性を必要とするソール20の区域である。最適な屈曲、したがって可撓性を達成するために、歪み区画26,53,62は足の構造に適応されている。さらに、図3a〜3bは、ソール20の屈曲区域に第4の歪み区画53を示しており、この歪み区画は、スタッド24もスタッド受入手段22も通って延在していない。それらの歪み区画も足の構造に適応されている。図3aおよび3bは、2つの視点から同じソール20を示している。それゆえ、図示された実施の形態の歪み区画26,53,62が、ソール20を通って、すなわち、上側から下側まで延在するのが明らかになる。この実施の形態において、歪み区画26,53,62は、足の屈曲区域に最適に適合するように、扇状(3本の「細長い小片」)である。内側の曲げ半径が外側の曲げ半径より小さいので、扇は内側から外側まで延在する。言い換えれば、細長い小片間の距離は、内側でより外側でのほうが大きい。さらに、縦方向にソール20を安定化させるための縦溝25がある。さらに歪み区画26,53,62の間の中断部30により、ソール20の安定性が増す。射出成形技法を使用してソール20を製造することが好ましい。ソール20の全幅に亘り延在せず、中断部30を含む歪み区画26,53の有利な配置により、例えば、多成分射出成形を使用して、一工程で単純に製造することができる。中断部30を使用することにより、ソール20の材料の流れを中断する必要がない。さらに、この実施の形態は、踵区域と親指区域に歪み区画26,62を含まないスタッド24を示している。その上、それぞれの要件に応じて、歪み区画26,53,62は様々に延在して差し支えない。
【0051】
スタッド24または歪み区画26,53,62の材料、配置および寸法は可撓性に影響を及ぼす。このことは、それぞれの歪み区画の構造にも当てはまる。例えば、穿孔または他の材料の弱化により、材料を伸縮させ、その結果、歪み区画を形成しても差し支えない。さらに可能性のある構造としては、蛇腹に似た実施の形態が挙げられる。それによって、蛇腹は、力の影響下で伸縮し得る。ソール20、スタッド24および/またはスタッド受入手段22並びに歪み区画は、二成分または多成分射出成形を使用して製造してもよい。ソール20、スタッド受入手段22、歪み区画およびスタッド24に三成分を使用することが好ましい。ソール20とスタッド受入手段22は、通常、同じ材料から製造される。使用可能な成分は、様々な硬度および弾性の熱可塑性エラストマー(TPE、TPU)、ポリアミドまたはポリエーテルブロックアミド(PEBA)であってよい。さらに、不安定感を避けるために、それぞれの成分は軟らかすぎるべきではない。さらに、スタッド24および歪み区画26,53,62は、それぞれ異なる混合物においてTPE、TPUまたはPEBAなどの同じ材料から製造して、異なる材料特性をもたらしてもよい。類似の材料が特に良好な複合材を提供する。歪み区画26,53,62の外側の区域の安定性を増加させるために、繊維強化複合材料を使用しても差し支えない。あるいは、第1、第2、第3または第4の歪み区画の1つ以上を第1の工程で製造し、次いで、成形型内に配置し、ソール20およびスタッド24をこれらの歪み区画26,53,62の周りに射出成形しても差し支えない。さらに、歪み区画、スタッド24およびソール20の全ての部材を第1の工程で別々に製造し、次いで、その後の第2の工程において組み立てても差し支えない。可能性のある方法は、接着、レーザ溶接または超音波溶接または取外しできる機械的接続であってよい。
【0052】
2つの製造方法が特に好ましい。最初に、スタッドをTPUから製造し、成形型内に配置する。歪み区画の材料を第2の工程において製造する。これは、別々に行っても、連続して行っても差し支えない。次いで、歪み区画を挿入するか、または直接射出成形しても差し支えない。スタッド区域および歪み区画は、最終的に、ソールのTPUまたはPAにより射出成形される。さらに別の選択肢は、スタッド区域を最初に形成し、次いで、ソールを形成し、最後に、歪み区画をそれぞれの窪みに挿入することであろう。
【0053】
図4a〜4bは、スタッド受入手段22を含むソール20の実施の形態の側面図を示している。この実施の形態において、歪み区画26は細長い小片状である。さらに、スタッド受入手段を超えて延在する第3の歪み区画62が示されている。スタッド24の可撓性は、予測される動作に対して調節されるであろう。さらに、ソール20に取り付けられたスタッド24の全てが、同じ形状を有する必要はない。
【0054】
図5a〜5bは、本発明によるソール20の詳細を示している。スタッド24自体を超えて延在する第3の歪み区画62が、第1の歪み区画に加えて、明らかに見える。また、この実施の形態において、歪み区画26は細長い小片状である。さらに、このソール20は、ソール20の屈曲区域に歪み区画53を備え、この歪み区画53はスタッド24を通って延在していない。さらに、第1のスタッド部分50、第2のスタッド部分52および図示された両方のスタッド部分50,52を接続する歪み区画26がある。
【0055】
図6a〜6bは、スタッド受入手段22を介してソール20に取り付けられたスタッド24の側面図と底面図を示している。この例において、スタッド24は、3つの第1と第2の歪み区画60,61を備えている。スタッド受入手段22はさらに、3つの第3の歪み区画62を備えている。第3の歪み区画62は、スタッド受入手段22を超えてソール20中に延在している。スタッド24の歪み区画60,61およびスタッド受入手段22の歪み区画62は一体成形することができる。しかしながら、これらの歪み区画を別々に形成することも可能である。全てのスタッドが同じ数の歪み区画を有する必要はない。これは、位置と特別な要件に依存するであろう。
【0056】
図7a〜7bは、第1の歪み区画70および第2の歪み区画72を備えた、スタッド受入手段22およびスタッド24を含むソール20の一部を示している。この実施の形態において、歪み区画70,72は、楔状であり、リッジ部材79を介して接続されている。これにより、一工程で歪み区画70,72をより容易に組み立てることができる。さらに、スタッドは、第1のスタッド部分50、第2のスタッド部分52および第3のスタッド部分54を備えている。これにより、1つの製造工程でのより容易な製造および組立てが可能になる。図示された歪み区画70,72は、別々に製造された(例えば、射出成形技法を使用して)ソール20またはスタッド受入手段22およびスタッド24に挿入し、次いで、そこに固定しても差し支えない。
【0057】
図8a〜8dは、様々に配置された歪み区画26,53を有するスパイクシューズ80を示している。歪み区画26は、スタッド24を超えてソール20中に延在しているが、ソールの全幅には亘っていない。しかしながら、これは制限ではない。それぞれの使用に応じて、ソールの全幅に亘り延在する歪み区画26,53が有益かもしれない。歪み区画26,53は、背方向に動かされたときに、足の押し離し区域に対応するように配置されている。特に図8cおよび8dにおいて、足を押し離しするときの歪み区域がはっきりと見える。足の押し離し中に、スタッドの最も外側の部分は、ソールに近い部分よりも大きな歪みを経験する。この作用が、例えば、図8cおよび8dに示されている。歪み区画26,53は、足の押し離しのために、下端でより強力に曲げられる。これにより、楔形を有する歪み区画がもたらされ得る。しかしながら、図8aおよび8bに示された歪み区画26,53は、既に、緩和状態で細長い小片状または楔形であっても差し支えない。
【0058】
さらに、歪み区画の歪みを剛性の材料片の使用により制限することも可能である。この材料片は、完全停止を形成し、それゆえ、歪みを制限する。この材料片は、棒状であり、スタッドのドリル孔内に取外し可能にまたは後から取り付けられるように配置しても差し支えない。このドリル孔は、シューズの縦方向に向けられることが好ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 足
3 曲げ軸による第1の線
5 曲げ軸による第2の線
9 屈曲区域
20 ソール
22 スタッド受入手段
24 スタッド
25 縦の溝
26,60,70 第1の歪み区画
30 中断部
50 第1のスタッド部分
52 第2のスタッド部分
53 第4の歪み区画
54 第3のスタッド部分
61,72 第2の歪み区画
62 第3の歪み区画
79 リッジ部材
80 スパイクシューズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール(20)のためのスタッド(24)において、
a. 少なくとも第1のスタッド部分(50)と第2のスタッド部分(52)、および
b. 前記第1のスタッド部分(50)と前記第2のスタッド部分(52)を互いに接続する少なくとも1つの第1の歪み区画(26,60,70)であって、前記スタッド(24)がソール(20)に取り付けられ、該ソールを曲げたときに歪む少なくとも1つの第1の歪み区画(26,60,70)、
を有してなるスタッド(24)。
【請求項2】
前記第1のスタッド部分(50)と前記第2のスタッド部分(52)が、前記少なくとも1つの第1の歪み区画(26,60,70)のみによって互いに接続されていることを特徴とする請求項1記載のスタッド(24)。
【請求項3】
前記第1のスタッド部分(50)と前記第2のスタッド部分(52)が、加えて、リッジ部材(79)を通じて互いに接続されていることを特徴とする請求項1記載のスタッド(24)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の歪み区画(26,60,70)が、前記スタッド(24)が前記ソール(20)に取り付けられている、該ソール(20)の区域の接平面に対して実質的に垂直に延在していることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のスタッド(24)。
【請求項5】
第2の歪み区画(61,72)および第3のスタッド部分(54)をさらに含み、前記第2の歪み区画(61,72)が前記第2のスタッド部分(52)と前記第3のスタッド部分(54)を互いに接続し、前記スタッド(24)が前記ソール(20)に取り付けられ、該ソール(20)が曲げられたときに、前記第2の歪み区画(61,72)が歪むことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のスタッド(24)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の歪み区画(26,60,70)と前記第2の歪み区画(61,72)が一体成形されていることを特徴とする請求項5記載のスタッド(24)。
【請求項7】
前記第1のスタッド部分(50)と前記第2のスタッド部分(52)および前記少なくとも1つの第1の歪み区画(26,60,70)が一体成形されていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のスタッド(24)。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項記載のスタッド(24)を少なくとも1つ備えたソール(20)。
【請求項9】
少なくとも1つのスタッド受入手段(22)をさらに備え、該スタッド受入手段(22)が少なくとも1つの第3の歪み区画(62)を含むことを特徴とする請求項8記載のソール(20)。
【請求項10】
前記第3の歪み区画(62)が、前記スタッド受入手段(22)を超えて前記ソール(20)中に延在することを特徴とする請求項9記載のソール(20)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1の歪み区画(26,60,70)および前記第3の歪み区画(62)が一体成形されていることを特徴とする請求項9または10記載のソール(20)。
【請求項12】
スタッド(24)のない前記ソール(20)の区域に配置された少なくとも1つの第4の歪み区画(53)をさらに備えることを特徴とする請求項8から11いずれか1項記載のソール(20)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1の歪み区画(26,60,70)、前記第2の歪み区画(61,72)、前記第3の歪み区画(62)および/または第4の歪み区画(53)が前記ソール(20)の屈曲区域(9)に配置されていることを特徴とする請求項8から12いずれか1項記載のソール(20)。
【請求項14】
前記ソール(20)、少なくとも1つの前記スタッド(24)、前記第1、第2および第3のスタッド部分(50,52,54)および前記少なくとも1つの歪み区画(26,60,61,70,72)が一体成形されていることを特徴とする請求項8から13いずれか1項記載のソール(20)。
【請求項15】
請求項8から14いずれか1項記載のソール(20)を備えたスパイクシューズ(80)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−61308(P2012−61308A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188669(P2011−188669)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(510204998)アディダス アーゲー (30)
【Fターム(参考)】