説明

漂白剤及び漂白洗浄剤組成物

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カチオン基を有する漂白活性化剤を含有する漂白剤及び漂白洗浄剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】塩素系漂白剤は使用できる繊維に制限があり、また色、柄物には使用できず、更に独自のにおいを有していることなどから、これらの欠点のない酸素系漂白剤が最近著しく普及しはじめている。
【0003】この酸素系漂白剤としては、過炭酸ナトリウム、過硼酸ナトリウムが漂白性能及び安定性などの面から特に利用されている。
【0004】しかしながら、この酸素系漂白剤は塩素系漂白剤にくらべ漂白力が弱く、各種漂白活性化剤が併用されている。
【0005】テトラアセチルエチレンジアミン、アセトキシベンゼンスルホン酸塩、テトラアセチルグリコリルウリル、グルコースペンタアセテートなどが代表的な漂白活性化剤として使用されているが、その漂白活性化効果はまだ不充分であった。
【0006】そこで、本発明者らは過酸化水素と反応してカチオン基を有する有機過酸を生成する化合物が漂白活性化剤として優れていることを先に見出した(特開昭63−315666号、特開平2−147698号、特願平1−150758号)。
【0007】しかしながら、これらのカチオン基を有する有機過酸を生成する化合物は、漂白活性化性能においては優れているものの、色、柄物の繊維製品に使用した場合、繊維が有する色の褪色を抑制するという点では未だ充分であるとは言いがたかった。
【0008】そこで本発明が解決しようとする課題は漂白活性化性能において優れ、かつ色、柄物の繊維が有する色の褪色を抑制し得る漂白剤及び漂白洗浄剤組成物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、過酸化水素又は水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物と、下記一般式(I) 及び(II)
【0010】
【化3】


【0011】にて表される化合物を含有してなる組成物が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】すなわち本発明は、下記の成分(a) 〜(c) を含有してなり、(b) 成分と(c) 成分の重量比が (b)/(c) = 100/0.01〜 100/5であることを特徴とする漂白剤及び漂白洗浄剤組成物を提供するものである。
成分(a) ;過酸化水素又は水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物成分(b) ;下記一般式(I) にて表される化合物
【0013】
【化4】


【0014】成分(c) ;下記一般式(II)にて表される化合物
【0015】
【化5】


【0016】本発明において、成分(a) は、過酸化水素又は水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物であり、後者の例としては、過炭酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物、ピロリン酸ナトリウム・過酸化水素付加物、尿素・過酸化水素付加物、又は 4Na2SO4・2H2O2 ・NaCl、過ホウ酸ナトリウム一水化物、過ホウ酸ナトリウム四水化物、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム等が例示される。この中でも特に過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム一水化物、過ホウ酸ナトリウム四水化物が好ましい。
【0017】本発明において、成分(b) は一般式(I) にて表される化合物であり、例えば次の化合物が例示される。
【0018】
【化6】


【0019】これらの化合物は通常ハロゲン化アルカリ金属塩、ハロゲン化アンモニウム塩等の無機塩又はハロゲン化第4級アンモニウム塩等の有機塩を副生して得るられるが、これらの無機塩もしくは有機塩は本発明の目的を阻害しない量において存在していてもよい。
【0020】成分(a) と成分(b) の配合割合は通常 (a)/(b) (モル比)=99.9/0.1 〜20/80が好ましく、更に好ましくは99/1〜50/50である。
【0021】本発明において、成分(c) は一般式(II)にて表される化合物であり、例えば次の化合物が例示される。
【0022】
【化7】


【0023】本発明においては一般式(I)にて表される化合物100重量部に対して一般式(II)で表される化合物を0.01〜5重量部配合することが必要である。この数値は臨界的な意義を有し、一般式(I) にて表される化合物 100重量部に対する一般式(II)で表される化合物の配合量が0.01未満の場合には漂白時における色、柄物の繊維の褪色を抑制する効果が劣り、一方5重量部を越えると漂白化性能を阻害する。
【0024】本発明の漂白剤及び漂白洗浄剤組成物には、上記必須成分の他に漂白剤及び漂白洗浄剤組成物に通常添加される、例えば、下記のような成分を添加する事ができる。
【0025】〔1〕界面活性剤(1) 平均炭素数10〜16のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩。
【0026】(2) 平均炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有し、1分子内に平均 0.5〜8モルのエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド或いはブチレンオキサイド或いはエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=0.1/9.9〜9.9/0.1 の比で或いはエチレンオキサイド/ブチレンオキサイド= 0.1/9.9 〜9.9 /0.1 の比で付加したアルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩。
【0027】(3) 平均炭素数10乃至20のアルキル又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸塩。
【0028】(4) 平均10〜20の炭素原子を1分子中に有するオレフィンスルホン酸塩。
【0029】(5) 平均10〜20の炭素原子を1分子中に有するアルカンスルホン酸塩。
【0030】(6) 平均10〜24の炭素原子を1分子中に有する飽和又は不飽和脂肪酸塩。
【0031】(7) 平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し、1分子中に平均0.5 〜8モルのエチレンオキサイド或いはプロピレンオキサイド或いはブチレンオキサイド或いはエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド= 0.1/9.9 〜9.9/0.1 の比で或いはエチレンオキサイド/ブチレンオキサイド= 0.1/9.9 〜9.9 /0.1 の比で付加したアルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩。
【0032】(8) 下記の式で表わされるα−スルホ脂肪酸塩又はエステル
【0033】
【化8】


【0034】〔式中 Yは炭素数1〜3のアルキル基又は対イオン、 Zは対イオンである。 R10は炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を表す。〕ここで陰イオン性界面活性剤の対イオンとしてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンを挙げることができる。
【0035】(9) 平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し、1〜30モルのエチレンオキサイドを付加したポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル。
【0036】(10)平均炭素数6〜12のアルキル基を有し、1〜25モルのエチレンオキサイドを付加したポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル。
【0037】(11)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し、1〜20モルのプロピレンオキサイドを付加したポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルエーテル。
【0038】(12)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し1〜20モルのブチレンオキサイドを付加したポリオキシブチレンアルキル又はアルケニルエーテル。
【0039】(13)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し、総和で1〜30モルのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド或いはエチレンオキサイドとブチレンオキサイドを付加した非イオン性活性剤(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドとの比は 0.1/9.9 〜9.9 /0.1 )。
【0040】(14)下記の一般式で表わされる高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物
【0041】
【化9】


【0042】〔式中R11 は炭素数10〜20のアルキル基、又はアルケニル基であり、R12 はH 又はCH3 であり、n は1〜3の整数、m は0〜3の整数である。〕
(15)平均炭素数10〜20の脂肪酸と蔗糖から成る蔗糖脂肪酸エステル。
【0043】(16)平均炭素数10〜20の脂肪酸とグリセリンから成る脂肪酸グリセリンモノエステル。
【0044】(17)下記の一般式で表わされるアルキルアミンオキサイド
【0045】
【化10】


【0046】〔式中R13 は炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、R14 、R15 は炭素数1〜3のアルキル基である。〕
(18)酸化エチレンを縮合して得られる「プルロニック」の商品名の非イオン界面活性剤。
【0047】(19)下記一般式で示されるカチオン界面活性剤。
【0048】
【化11】


【0049】(ここでR16 、R17 、R18 、R19 のうち少なくとも1つは炭素数8〜24のアルキル又はアルケニル基、他は炭素数1〜5のアル キル基を示す。X'はハロゲン又はメトサルフェートを示す。)
【0050】
【化12】


【0051】(ここでR16 、R17 、R18及びX'は前述の通り。)
【0052】
【化13】


【0053】(ここでR16 、R17 およびX'は前述の通り。R20 は炭素数2〜3のアルキレン基、p は1〜20の整数を示す。)
〔2〕二価金属イオン捕捉剤下記の各種アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩の一種又は二種以上のビルダー成分を0〜50重量%含有することもできる。
【0054】(1) オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、メタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、フィチン酸塩等のリン酸塩。
【0055】(2) エタン−1・1−ジホスホン酸、エタン−1・1・2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1・1−ジホスホン酸およびその誘導体、エタンヒドロキシ−1・1・2−トリホスホン酸、エタン−1・2−ジカルボキシ−1・2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸の塩。
【0056】(3) 2−ホスホノブタン−1・2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2・3・4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸の塩。
【0057】(4) アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸の塩。
【0058】(5) ニトリロ三酢酸塩、イミノ二酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩、トリエチレンテトラミン六酢酸塩、ジエンコル酸塩等のアミノポリ酢酸塩。
【0059】(6) ポリアクリル酸、ポリフマル酸、ポリマレイン酸、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸、ポリアセタールカルボン酸又はこれらの塩などの高分子電解質。
【0060】(7) ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸などの有機酸塩。塩としてはアルカリ金属塩が好適である。
【0061】(8) ゼオライトAに代表されるアルミノケイ酸塩。
【0062】〔3〕アルカリ剤あるいは無機電解質ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩。塩としてはアルカリ金属が好適である。
【0063】〔4〕再汚染防止剤ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース。
【0064】〔5〕酵 素プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ。
【0065】〔6〕蛍光染料4,4'−ビス−(2−スルホスチリル)−ビフェニル塩、4,4'−ビス−(4−クロロ−3−スルホスチリル)−ビフェニル塩、2− (スチルフェニル)ナフトチアゾール誘導体、 4,4'−ビス(トリアゾール−2−イル)スチルベン誘導体、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体。
【0066】〔7〕過酸化物の安定化剤硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ケイフッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムの様なマグネシウム塩及びケイ酸ソーダの様なケイ酸塩類。
【0067】〔8〕香料、色素
【0068】
【発明の効果】本発明の漂白(洗浄)剤は、優れた漂白効果を示すばかりでなく皮脂汚れ、泥汚れに対しても優れた洗浄効果を付与する。また、色、柄物の繊維製品に使用しても繊維が有する色の褪色を起こさない。更に本発明の漂白剤及び漂白洗浄剤組成物に用いられる漂白活性化剤は生分解性であり、人体に対する安全性も高い。
【0069】
【実施例】以下実施例にて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】実施例1表1に示す各種漂白剤組成物を調製し、以下の方法で漂白試験及び脱色試験を行った。
■漂白試験* 紅茶汚染布:日東紅茶(黄色パッケージ)80gを3リットルのイオン交換水にて約15分間煮沸後、糊抜きしたサラシ木綿でこし、この液に木綿金布#2003 布を浸し、約15分間煮沸する。そのまま火よりおろし、2時間程度放置後自然乾燥させ、洗液に色のつかなくなるまで水洗し、脱水、プレス後、10cm×10cmの試験片とし、実験に供した。
漂白率の測定;20℃の水 300mlに有効酸素が0.04%となるように表1の漂白剤組成物を加えた。その溶液に上記で調製された紅茶汚染布を30分間浸漬漂白し、水洗、乾燥後、下式により漂白率を求めた。
【0071】
【数1】


【0072】反射率は日本電色工業 (株) 製 NDR-101DPで460 nmのフィルターを使用して測定した。その結果を表1に示す。
【0073】■脱色試験表1に示す漂白剤組成物を有効酸素が0.04%となるように40℃の水道水に溶解後、直接染料(Sumilight Supra Blue FBGL) で染めた木綿布を2時間浸漬後、JIS L 0804の変褪色用グレースケールを用いてその等級を求め、その値が 4.5以上を◎、4以上4.5 未満を○、3以上4未満を△、3未満を×として評価した。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】


【0075】注)
*Bはバランス量の略である。また、漂白活性化剤は過炭酸ソーダ(有効酸素13.5%)の1/16当量を添加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の成分(a) 〜(c) を含有してなり、(b) 成分と(c) 成分の重量比が (b)/(c) = 100/0.01〜 100/5であることを特徴とする漂白剤及び漂白洗浄剤組成物。成分(a) ;過酸化水素又は水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物成分(b) ;下記一般式(I) にて表される化合物
【化1】


成分(c) ;下記一般式(II)にて表される化合物
【化2】


【特許番号】第2908589号
【登録日】平成11年(1999)4月2日
【発行日】平成11年(1999)6月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−104216
【出願日】平成3年(1991)5月9日
【公開番号】特開平4−332796
【公開日】平成4年(1992)11月19日
【審査請求日】平成9年(1997)9月17日
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)