説明

潤滑グリース組成物

【課題】腐食性ガスによる金属材の腐食を抑制させ、さらに耐熱性をも有する潤滑グリース組成物を提供する。
【解決手段】RfO〔CF(CF3)CF2O〕p(CF2CF2O)qRf(Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、p+q=2〜200、q/p=0〜2でqは0である)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(A)およびF(CF2CF2CF2O)sC2F5(s=2〜100である)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(B)の少くとも一種100重量部に対して、RfO(CF2CF2O)m(CF2O)nRf(m+n=3〜200、m:n=10〜90:90〜10である)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(C)およびRfO〔CF(CF3)CF2O〕a(CF2CF2O)b(CF2O)cRf(a+b+c=3〜200、bは0または1以上の整数、cは1以上の整数である)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(D)の少くとも一種を0〜100重量部を混合してなる基油から構成された潤滑グリース組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑グリース組成物に関する。さらに詳しくは、硫化ガス等の腐食性ガスに対して金属表面保護作用を有する潤滑グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリースは、自動車、電気・電子機器、建設機械、産業機械、工作機械、情報機器等の各種機器や機械およびそれらを構成する各部品の潤滑に広く用いられている。近年、これらの機械の高速化、小型化、高性能化、軽量化などに伴ない、これら周辺機器の温度はますます上昇する傾向にある。また、軽量化や低コスト化、密封性などの要求から、樹脂やゴムの成形品が多く使用されるようになり、静粛性向上という要望からより密封性も求められている。
【0003】
高温、密封という使用条件により、樹脂やゴムに添加されている成分等から発生する腐食性ガス、例えば硫化ガス、塩化水素ガス、亜硫酸ガス、アンモニア、酸素等の雰囲気に金属部分が曝されることが多くなり、また過酷な使用条件によって、外部から侵入したこのような腐食性ガスに曝されることも多い。
【0004】
このような問題を解決するために、フルオロシリコーン油とフッ素樹脂よりなるグリースにより、硫化水素の浸透を抑え、接点材の腐食を防ぐことが提案されている。フルオロシリコーン油の他にも、フルオロカーボンやフロロエステル、フッ素変性パラフィン油、フッ素変性エステル油等の含フッ素化合物についても、同様の効果があるとされている。しかしながら、これらの含フッ素化合物のすべてに硫化水素の浸透を抑える効果が同程度ある訳ではなく、フルオロシリコーン油についても、硫化水素の浸透は抑えられるものの耐摩耗性が悪く、接点材を摩耗させてしまうという結果を招いている。また、フロロエステルやフッ素変性パラフィン油、フッ素変性エステル油では耐熱性が悪く、高温度雰囲気下では使用できないという問題がみられる。
【特許文献1】特開昭59−189511号公報
【0005】
フッ素系グリースについては、(CF2CF2CF2O)で示されるくり返し単位を有するパーフルオロポリエーテル油を基油としたフッ素系グリースを用いて、耐熱性や耐薬品性を向上させることが提案されているが、腐食性ガスに対する耐浸透性については何ら触れられていない。
【特許文献2】特公平2−32314号公報
【0006】
また、洗浄性、耐摩耗性、耐漏洩性などにすぐれたフッ素系グリースについての提案もみられるが、この場合にも腐食性ガスに対する耐腐食性についての言及はない。
【特許文献3】特開2001−354986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、腐食性ガスによる金属材の腐食を抑制させ、さらに耐熱性をも有する潤滑グリース組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる本発明の目的は、一般式
RfO〔CF(CF3)CF2O〕p(CF2CF2O)qRf
(ここで、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、p+q=2〜200、q/p=0〜2でqは0であり得、CF(CF3)CF2O基およびCF2CF2O基は主鎖中にランダムに結合されている)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(A)および一般式
F(CF2CF2CF2O)sC2F5
(ここで、s=2〜100である)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(B)の少くとも一種100重量部に対して、一般式
RfO(CF2CF2O)m(CF2O)nRf
(ここで、Rfは前記定義と同じであり、m+n=3〜200、m:n=10〜90:90〜10であり、CF2CF2O基およびCF2O基は主鎖中にランダムに結合されている)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(C)および一般式
RfO〔CF(CF3)CF2O〕a(CF2CF2O)b(CF2O)cRf
(ここで、Rfは前記定義と同じであり、a+b+c=3〜200、bは0または1以上の整数、cは1以上の整数であり、CF(CF3)CF2O基、CF2CF2O基およびCF2O基は主鎖中にランダムに結合されている)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(D)の少くとも一種を0〜100重量部を混合してなる基油から構成された潤滑グリース組成物によって達成される。このような潤滑グリース組成物は、一般に組成物合計量中0.1〜50重量%を占める割合の増稠剤が添加されて用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る潤滑グリース組成物は、従来からパーフルオロポリエーテル油が用いられていた用途に用いられたとき、硫化ガス(硫化水素ガス等の硫黄を含むガス)、塩化水素ガス、亜硫酸ガス、アンモニア等の腐食性ガス雰囲気に曝される金属材の金属表面保護剤として有効に用いられ、また耐熱性の点でも満足される。
【0010】
具体的には、転がり軸受、すべり軸受、焼結軸受、ギャ、バブル、コック、オイルシール、電気接点等の摺動部個体間接触部の潤滑および保護を目的として使用される。例えば、自動車のハブユニット、トラクションモータ、燃料噴射装置、オルタネータ等の耐熱性、低温性、耐荷重性などが要求される軸受、自動車の動力伝達装置、パワーウィンドゥモータ、ワイパ等の耐摩耗性、低摩擦特性、高トルク効率が要求されるギャ部、情報機器に使用されるハードディスク、フレキシブルディスク記憶装置、コンパクトディスクドライブ、光磁気ディスクドライブ等の低トルク、低アウトガス性が要求される軸受、真空ポンプ、樹脂製造装置、コンベア、木材産業機器、クロムコーティング機器等に使用される軸受やギャ等の摺動部、ブレーカ、遮断器、リレー、スイッチ等に使用されている電気機器の電気接点部に使用されている金属表面を有効に保護する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
パーフルオロポリエーテル油(A)、(B)は、次のようにして得られる。ここで、パーフルオロアルキル基Rfとしては、一般にパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等が用いられる。
【0012】
パーフルオロポリエーテル油(A):ヘキサフルオロプロピレンまたはこれとテトラフルオロエチレンとの光酸化重合で生成した先駆体を完全にフッ素化することにより、あるいはフッ化セシウム触媒存在下にヘキサフルオロプロピレンオキサイドまたはこれとテトラフルオロエチレンオキサイドとをアニオン重合させ、得られた末端CF(CF3)COF基を有する酸フロライド化合物をフッ素ガスで処理することによって得られる。これは、40℃における動粘度が5〜2000mm2/秒の範囲にあるものを使用することができ、このようなものはパーフルオロポリエーテル油(A)の一般式でp+q=2〜200、q/p=0〜2:1という条件を満足させる。
【0013】
パーフルオロポリエーテル油(B):フッ化セシウム触媒存在下に2,2,3,3-テトラフルオロオキセタンをアニオン重合させ、得られた含フッ素ポリエーテル(CH2CF2CF2O)nを160〜300℃の紫外線照射下でフッ素ガス処理することにより得られる。これは、40℃における動粘度が5〜2000mm2/秒の範囲にあるものを使用することができ、このようなものはパーフルオロポリエーテル油(B)の一般式でs=2〜100という条件を満足させる。
【0014】
パーフルオロポリエーテル油(C):テトラフルオロエチレンの光酸化重合により得られる。これは、40℃における動粘度が5〜2000mm2/秒の範囲にあるものを使用することができ、このようなものはパーフルオロポリエーテル油(C)の一般式でm+n=3〜200、m:n=10〜90:90〜10という条件を満足させる。
【0015】
パーフルオロポリエーテル油(D):ヘキサフルオロプロペンおよびテトラフルオロエチレンの光酸化重合により得られる。これは、40℃における動粘度が5〜2000mm2/秒の範囲にあるものを使用することができ、このようなものはパーフルオロポリエーテル油(D)の一般式でa+b+c=3〜200という条件を満足させる。
【0016】
これらのパーフルオロポリエーテル油(A)および(B)は、他の構造のパーフルオロポリエーテル油と比べ、腐食性ガス(硫化ガス、塩化水素ガス、亜硫酸ガス、アンモニア等)の浸透を抑制する。この腐食性ガスの浸透抑制効果は、分子中のC-F結合によるものである。CF2O基のランダム結合を含む他の構造のパーフルオロポリエーテル油(C)は、パーフルオロポリエーテル油の中で、最も高粘度指数、低揮発性、低摩擦係数を有するが、分子中にCF2O基があるためC-F結合による腐食性ガスの浸透効果を弱めてしまい、金属片を腐食させる。同様に、CF2O基を含むパーフルオロポリエーテル油(D)も優れた耐摩耗性を有するものの、耐腐食が浸透し、金属が腐食するという結果を招いている。
【0017】
パーフルオロポリエーテル油(A)および(B)から選ばれる少なくとも一種と、CF2O基のランダム結合を含む他の構造のパーフルオロポリエーテル油を混合して基油とすることにより、両者の長所を兼ね備えた性質を持たせることができる。例えば、パーフルオロポリエーテル油(A)および(B)から選ばれる少なくとも一種を100重量部に対してCF2O基のランダム結合を含む他の構造のパーフルオロポリエーテル油(C)および(D)から選ばれる少なくとも一種を0〜100重量部、好ましくは0〜75重量部の添加は、腐食性ガスの浸透を抑え、かつ低摩擦性能が得られる。より過酷な条件では、CF2O基のランダム結合を含む他の構造のパーフルオロポリエーテル油(C)、(D)の割合を減らすこともできる。
【0018】
エーテル結合のないフッ素油では、粘度指数、耐摩耗性、耐摩擦性が悪くなり、接点材の摩耗、低温での摩擦係数上昇などによる導通不良を招いてしまう。よって分子中に適度にエーテル結合が含まれているCF(CF3)CF2O基、CF2CF2O基が主鎖中にランダムに結合しているパーフルオロポリエーテル油(A)および(B)は、腐食性ガスの浸透抑制効果を維持しつつ、粘度指数、耐摩耗性、耐摩擦性の特性を併せ持つことにより、接点部の腐食や摩耗を低減させる効果を奏する。さらに、これら両者のパーフルオロポリエーテル油(A)および(B)を任意に混合して基油として用いることもできる。
【0019】
これらパーフルオロポリエーテル油(A)、(B)、(C)、(D)よりなるパーフルオロポリエーテル油基油は、40℃における動粘度(JIS K2283準拠により測定)が5〜2000mm2/秒、好ましくは5〜1500mm2/秒の範囲にあるものが使用される。動粘度が5mm2/秒以下の場合は、蒸発損失の増加や油膜強度の低下など、寿命の低下や摩耗、焼き付きの原因となる可能性がある。一方、2000mm2/秒以上の場合は粘性抵抗の増加など、消費動力やトルクが大きくなる不具合が生じる可能性がある。また、パーフルオロポリエーテル油(A)、(B)の一部を、このような動粘度を有するポリ(α-オレフィン)油等で置換して用いることもできる。
【0020】
このような基油は、増稠剤が添加されて用いられ、好ましくはフッ素樹脂が用いられる。フッ素樹脂としては、従来から潤滑剤として用いられているポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペン共重合体、パーフルオロアルキレン樹脂等が用いられる。ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレンの乳化重合、けん濁重合、溶液重合などの方法によって、数平均分子量Mnを約1000〜1000000程度としたポリテトラフルオロエチレンを製造し、それを熱分解、電子線照射分解、物理的粉砕などの方法によって処理し、数平均分子量Mnを約1000〜500000程度としたものが用いられる。また、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとの共重合反応および低分子量化処理も、ポリテトラフルオロエチレンの場合と同様にして行われ、数平均分子量Mnを約1000〜600000程度としたものが用いられる。なお、分子量の制御は、共重合反応時に連鎖移動剤を用いて行うことができる。得られた粉末状のフッ素樹脂は、一般に約500μm以下、好ましくは約0.1〜30μmの平均一次粒径を有する。
【0021】
また、フッ素樹脂以外の増稠剤として、Li石けん等の金属石けん、ウレア樹脂、ベントナイト等の鉱物、有機顔料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等も使用できるが、耐熱性、潤滑性の面から考えると、脂肪族ジカルボン酸金属塩、モノアミドモノカルボン酸金属塩、モノエステルカルボン酸金属塩、ジウレア、トリウレア、テトラウレア等が好んで用いられる。
【0022】
これらのフッ素樹脂粉末、金属石けん、ウレア、その他の増稠剤は、組成物全体の0.1〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の割合で添加混合される。これ以上の添加割合では、組成物が硬くなりすぎてしまい、一方これ以下の添加割合では、フッ素樹脂の増稠能力が発揮されず、離油の悪化を招き、耐飛散・漏洩性の向上が十分期待されない。
【0023】
組成物中にはさらに、酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、極圧剤、油性剤、固体潤滑剤等の従来潤滑剤に添加されている添加剤を必要に応じて添加することができる。酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ第3ブチル-4-メチルフェノール、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ第3ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、アルキルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェノチアジン、アルキル化-α-ナフチルアミン、フェニチアジン、アルキル化フェニチアジン等のアミン系酸化防止剤が挙げられる。
【0024】
防錆剤としては、例えば脂肪酸、脂肪酸アミン、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸アミン塩、酸化パラフィン、ポリオキシアルキルエーテル等が挙げられ、腐食防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
【0025】
極圧剤としては、例えばリン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物、スルフィド類、ジスルフィド類等の硫黄系化合物、ジアルキルジチオリン酸金属塩、ジアルキルジチオカルバミン酸金属塩等が挙げられる。
【0026】
油性剤としては、例えば脂肪酸またはそのエステル、高級アルコール、多価アルコールまたはこれらのエステル、脂肪族アミン、脂肪酸モノグリセライド等が挙げられる。
【0027】
また、固体潤滑剤としては、例えば二硫化モリブデン、グラファイト、窒素ホウ素、窒素シラン等が挙げられる。
【0028】
組成物の調製は、例えば次のような調製方法がとられる。
(a)パーフルオロポリエーテル基油に増稠剤をそれぞれ所定量配合し、3本ロールもしくは高圧ホモジナイザで十分に混練する方法、(b)加熱攪拌が可能な反応釜に、パーフルオロポリエーテル油と脂肪族カルボン酸とを加えて加熱溶融させ、そこに金属水酸化物(およびアミド化合物またはアルコール化合物)を所定量添加して金属塩化反応(およびアミド化反応またはエステル化反応)させて冷却した後、3本ロールもしくは高圧ホモジナイザで十分に混練する方法、あるいは(c)加熱攪拌が可能な反応釜に、パーフルオロポリエーテル油とイソシアンネートを加えて加熱し、そこにアミンを所定量添加して反応させ冷却した後、3本ロールもしくは高圧ホモジナイザで十分に混練する方法などによって行われる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例中の「部」および「%」は、特に記載がない限り重量基準である。
【0030】
実施例1〜10、比較例1〜4
〔基油〕
A-1:RfO〔CF(CF3)CF2O〕pRf (A成分) 動粘度(40℃)100mm2/秒
A-2:RfO〔CF(CF3)CF2O〕pRf (A成分) 動粘度(40℃)400mm2/秒
A-3:RfO〔CF(CF3)CF2O〕a(CF2O)cRf (D成分) 動粘度(40℃)400mm2/秒
A-4:RfO〔CF2CF2O)m(CF2O)nRf (C成分) 動粘度(40℃) 85mm2/秒
A-5:F(CF2CF2CF2O)sC2F5 (B成分) 動粘度(40℃) 65mm2/秒
A-6:ポリ(α-オレフィン)油 動粘度(40℃) 30mm2/秒
A-7:フロロシリコーン油 動粘度(40℃)300mm2/秒
〔増稠剤〕
B-1:乳化重合法ポリテトラフルオロエチレン(Mn約10〜20万、平均一次粒径0.2μm)
B-2:けん濁重合法ポリテトラフルオロエチレン(Mn約1〜10万、平均一次粒径5μm)
B-3:溶液重合法テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペン共重合体(Mn約5〜 15万、平均一次粒径0.2μm)
B-4:アゼライン酸リチウム
B-5:ヘキサメチレンジイソシアネートとオクチルアミンとの反応生成物
【0031】
上記基油、増稠剤の組合せにて潤滑グリース組成物を調製し、この組成物の性能を以下の各種試験方法によって評価した。
<硫化ガス試験>
試験機器:定流量フロー型ガス腐食試験装置
H2S濃度:3%
温度:40℃
湿度:90%
時間:96時間
試験片:40×40×5mmの銅板および銀板
評価方法:試験後にグリースを拭き取った銀メッキ銅板表面をEDS(エネルギー分散型 X線分光)分析を行い、硫黄が検出されるかどうかで評価する
<摩耗試験>
試験機器:シェル四球試験機
試験片:SUJ2 (1/2インチ)、20等級
回転数:20回/秒
荷重:392.3N (40kgf)
温度:室温
時間:60分
【0032】
得られた結果は、次の表に示される。

硫化ガス試験 摩耗試験
基油 増稠剤 銅板 銀板 摩耗痕径
実施例1 (A-1) 70% (B-1) 30% 検出なし 検出なし 1.0mm
〃 2 (A-2) 60% (B-2) 40% 検出なし 検出なし 0.9mm
〃 3 (A-5) 70% (B-1) 30% 検出なし 検出なし 1.2mm
〃 4 (A-1) 42% (A-3) 28% (B-3) 30% 検出なし 検出なし 1.1mm
〃 5 (A-1) 35% (A-4) 35% (B-1) 30% 検出なし 検出なし 0.9mm
〃 6 (A-1) 64% (A-6) 18% (B-5) 16% (B-1) 2% 検出なし 検出なし 0.7mm
〃 7 (A-1) 64% (A-6) 18% (B-5) 8% (B-1) 10% 検出なし 検出なし 0.9mm
〃 8 (A-2) 42% (A-3) 28% (B-1) 30% 検出なし 検出なし 0.9mm
〃 9 (A-5) 35% (A-3) 35% (B-1) 30% 検出なし 検出なし 1.1mm
〃 10 (A-5) 42% (A-4) 28% (B-1) 30% 検出なし 検出なし 1.0mm
比較例1 (A-3) 70% (B-1) 30% 検出あり 検出あり 1.1mm
〃 2 (A-4) 70% (B-1) 30% 検出あり 検出あり 1.0mm
〃 3 (A-6) 70% (B-4) 30% 検出あり 検出あり 0.5mm
〃 4 (A-6) 91% (B-5) 9% 検出あり 検出あり 0.7mm
〃 5 (A-6) 70% (B-1) 30% 検出なし 検出なし 2.4mm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
RfO〔CF(CF3)CF2O〕p(CF2CF2O)qRf
(ここで、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、p+q=2〜200、q/p=0〜2でqは0であり得、CF(CF3)CF2O基およびCF2CF2O基は主鎖中にランダムに結合されている)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(A)および一般式
F(CF2CF2CF2O)sC2F5
(ここで、s=2〜100である)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(B)の少くとも一種100重量部に対して、一般式
RfO(CF2CF2O)m(CF2O)nRf
(ここで、Rfは前記定義と同じであり、m+n=3〜200、m:n=10〜90:90〜10であり、CF2CF2O基およびCF2O基は主鎖中にランダムに結合されている)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(C)および一般式
RfO〔CF(CF3)CF2O〕a(CF2CF2O)b(CF2O)cRf
(ここで、Rfは前記定義と同じであり、a+b+c=3〜200、bは0または1以上の整数、cは1以上の整数であり、CF(CF3)CF2O基、CF2CF2O基およびCF2O基は主鎖中にランダムに結合されている)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(D)の少くとも一種を0〜100重量部を混合してなる基油から構成された潤滑グリース組成物。
【請求項2】
パーフルオロポリエーテル油(A)、(B)、(C)、(D)の基油粘度(40℃での動粘度)がそれぞれ5〜2000mm2/秒である請求項1記載の潤滑グリース組成物。
【請求項3】
さらに、酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、極圧剤、油性剤および固体潤滑剤の少くとも一種が添加された請求項1または2記載の潤滑グリース組成物。
【請求項4】
増稠剤が組成物合計量中0.1〜50重量%を占める割合で添加された請求項1、2または3記載の潤滑グリース組成物。
【請求項5】
腐食性ガスに対する金属表面保護剤として用いられる請求項1、2、3または4記載の潤滑グリース組成物。
【請求項6】
硫化ガスに対する金属表面保護剤として用いられる請求項5記載の潤滑グリース組成物。

【公開番号】特開2006−8818(P2006−8818A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187354(P2004−187354)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000102670)NOKクリューバー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】