説明

潤滑油添加剤組成物および潤滑油添加剤組成物の保存安定性を向上させる方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、チオジカルボン酸エステル類が持つ酸化防止性能及び耐摩耗性能を阻害することなく、長期保存安定性の高いチオジカルボン酸エステル類を提供することである。
【解決手段】下記の一般式(1)で表される化合物(A)及び下記の一般式(2)で表される化合物(B)を含有し、且つ酸価が0.01〜0.4mgKOH/gであることを特徴とする潤滑油添加剤組成物。
【化1】


(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【化2】


(式中、Rは炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化防止性能及び摩耗防止性能を有し、長期保存安定性が良好な硫黄系の潤滑油添加剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油はエンジンオイル、駆動系油、加工油、グリース等様々な分野で使用されるものであるが、その基本的な効果は、摩擦を調整し、摩耗を防ぐことにある。また、潤滑油を長期間使用するために、潤滑油の酸化防止性能を向上させることも必要である。こうした基本的な効果に加え、その他様々な効果(例えば、加水分解安定性や腐食防止性等)を付与し、潤滑油は各種用途に使用されているが、一種の添加剤で複数の効果を持つ潤滑油用添加剤も知られている。例えば、ジチオリン酸亜鉛は、酸化防止性能と摩耗防止性能を持つ添加剤として公知であるが、こうした複数の効果を持つ添加剤は、他の添加剤の添加量を少なくできる場合や、他の添加剤を添加する必要がない場合、あるいは潤滑油のコスト削減や多くの添加剤が混在するために生じる問題(例えば、お互いに相手の添加剤の効果を打ち消してしまう問題等)を防ぐことができる等の利点がある。
【0003】
ここで、硫黄系の酸化防止剤としてチオジプロピオン酸エステル等のチオジカルボン酸エステル類が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。この添加剤も酸化防止性能以外に摩耗防止性能を持つことが知られている(例えば、特許文献3を参照)。酸化防止性能及び摩耗防止性能の2つの性能を有するチオジカルボン酸エステル類であるが、保存安定性が悪く、長期間の保存により製品の酸価が上昇してしまうという欠点がある。一般的に酸価の上昇はその添加剤の持つ性能を阻害する場合や、潤滑油に配合したときの潤滑油組成物の性能を阻害する場合があるため好ましいものではない。特に、チオジカルボン酸エステル類は経時で酸価が徐々に上昇するため、使用時期によって酸価が異なってしまう。そのため安定した性能の潤滑油組成物を得ることが難しく、潤滑油用の添加剤としては一般的にあまり使用されることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−062368号公報
【特許文献2】特開2008−095076号公報
【特許文献3】特表2009−519930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チオジカルボン酸エステル類は複数の性能を有する添加剤であり、性能的には非常に魅力的な添加剤である。従って、本発明が解決しようとする課題は、チオジカルボン酸エステル類が持つ酸化防止性能及び耐摩耗性能を阻害することなく、長期保存安定性の高いチオジカルボン酸エステル類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者等は鋭意検討し、チオジカルボン酸エステル系の潤滑油添加剤に新たな機能である摩擦低減機能を付与させ、且つ保存安定性に優れる組成物を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表される化合物(A)及び下記の一般式(2)で表される化合物(B)を含有し、且つ酸価が0.01〜0.4mgKOH/gであることを特徴とする潤滑油添加剤組成物である。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Rは炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は、チオジカルボン酸エステル類が持つ酸化防止性能及び耐摩耗性能を阻害することなく、長期保存安定性の高いチオジカルボン酸エステル類を提供したことにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例における摩耗試験の結果を示す図である。
【図2】実施例における保存安定性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の潤滑油添加剤組成物は、下記の一般式(1)で表される化合物(A)及び下記の一般式(2)で表される化合物(B)を含有する。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、Rは炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【0018】
化合物(A)のR及びRはそれぞれ独立して炭素数6〜18の炭化水素基を表す。こうした炭化水素基としては、例えば、ヘキシル基、イソヘキシル基、2級へキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、2級ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2級オクチル基、ノニル基、イソノニル基、2級ノニル基、デシル基、イソデシル基、2級デシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、2級ウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、2級ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、2級トリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、2級テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、2級ヘキサデシル基、ステアリル基等のアルキル基;ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等のアリール基が挙げられる。これらの中でも、摩擦低減作用及び潤滑油への溶解性が良好なことから、アルキル基が好ましく、炭素数8〜16のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜16の分岐のアルキル基が更に好ましい。また、R及びRは同一でも異なっていてもよいが、製造が容易であることから同一であることが好ましい。
【0019】
化合物(A)のR及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。こうしたアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ターシャリブチレン基等が挙げられる。これらの中でも、原料が入手しやすいことからR及びRはそれぞれエチレン基であることが好ましい。
【0020】
化合物(B)のRは炭素数6〜18の炭化水素基を表す。こうした炭化水素基としては、上記化合物(A)のR及びRで例示した炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、摩擦低減作用及び潤滑油への溶解性が良好なことから、アルキル基が好ましく、炭素数8〜16のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜16の分岐のアルキル基が更に好ましい。また、R及びRは同一でも異なっていてもよいが、製造が容易であることから同一であることが好ましい。
【0021】
化合物(B)のR及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。こうしたアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ターシャリブチレン基等が挙げられる。これらの中でも、原料が入手しやすいことからR及びRはそれぞれエチレン基であることが好ましい。
【0022】
本発明の潤滑油添加剤組成物は、更に酸価が0.01〜0.4mgKOH/gでなければならないが、0.01〜0.3mgKOH/gが好ましく、0.02〜0.15mgKOH/gがより好ましく、0.02〜0.1mgKOH/gが更に好ましい。酸価が0.01mgKOH/g未満になると良好な摩耗防止性能が得られず、0.4mgKOH/gを超えると潤滑油添加剤組成物の長期保存安定性が悪くなる。酸価が低いほど長期保存安定性が良好になるが、磨耗防止性能は悪くなるため、酸価が0.01〜0.4mgKOH/gの範囲でなければ、両性能を共に満足させることはできない。なお、酸価は化合物(B)に含有するカルボン酸に由来するため、具体的な酸価の値は化合物(B)の配合量によって決定するが、化合物(B)の構造の違い(分子量の違い)によって同一の配合量であっても酸価の値が変わる。
【0023】
本発明の潤滑油添加剤組成物を得るためには、化合物(A)と化合物(B)を別々に合成し、組成物の酸価が0.01〜0.4mgKOH/gになるように両化合物を配合すればよいが、製造が簡便なことから、化合物(A)を合成する際に化合物(B)を同時に生成させ、一度の反応で本発明の潤滑油添加剤組成物を得ることが好ましい。製造方法としては、例えば、チオジプロピオン酸等のチオジカルボン酸を炭素数6〜18のアルコールでエステル化する。その際、チオジカルボン酸1モルに対して2モルのアルコールが全量反応すれば化合物(A)が100%生成するが、反応を途中で止めるか、あるいは原料の反応比を調整してエステル化反応が完全に進まないようにすることで、モノエステルである化合物(B)を生成させることができる。このモノエステルの生成量を制御することで、本発明の潤滑油添加剤組成物を得ることができる。なお、得られた組成物の酸価が0.01〜0.4mgKOH/gの範囲に入らない場合は、化合物(A)または化合物(B)を得られた組成物に別途添加して酸価を調整する方法や、酸価が高ければ酸を吸着する吸着剤等を使用して酸価を下げればよい。
【0024】
本発明の潤滑油は、本発明の潤滑油添加剤組成物を0.1〜5質量%含有する潤滑油である。0.1質量%未満では添加剤の効果が十分に得られず、5質量%を超えても配合に見合った効果が得られない。潤滑油の基油としては、鉱物油、動植物油あるいは合成油のいずれも使用することができるが、本発明の潤滑油添加剤組成物の効果が発揮されやすいことから鉱物油や合成油を使用することが好ましい。
【0025】
鉱油は、天然の原油から分離されるものであり、これを蒸留、精製等を行って製造される。鉱油の主成分は炭化水素(多くはパラフィン類である)であるが、その他ナフテン分、芳香族分等を含有している。一般に、パラフィン系鉱油又はナフテン系鉱油とよばれる鉱油は、鉱油を水素化精製、溶剤脱れき、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水添脱ろう、接触脱ろう、水素化分解、アルカリ蒸留、硫酸洗浄、白土処理等の精製を行うことで得られる鉱油のことであり、本発明にはいずれの鉱油も使用することができる。また、合成油は化学的に合成された潤滑油であって、例えば、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン等が挙げられる。これらの合成油の中でも、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコールを好適に使用することができる。
【0026】
本発明の潤滑油添加剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の成分を含有してもよい。他の潤滑油添加剤としては、例えば、油性剤、摩擦緩和剤、極圧剤、酸化防止剤、清浄剤、分散剤、粘度指数向上剤、消泡剤、防錆剤、流動点降下剤、乳化剤、界面活性剤、防腐剤、金属不活性剤等とが挙げられる。
【0027】
本発明の潤滑油添加剤組成物は、潤滑油であればあらゆる分野で使用することができる。使用することができる潤滑油の分野としては、例えば、ギア油、タービン油、摺動面油、エンジン油、作動油、金属加工油、圧縮材油、油圧油、グリース基油、熱媒体油、工作機械油、歯車油、軸受油等が挙げられるが、特にギア油、タービン油、エンジン油、作動油、金属加工油に使用することが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。
<試験サンプルの合成>
(試験サンプル1−A)
温度計、窒素導入管、減圧用の吸入管及び攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、チオジプロピオン酸178g(1モル)及び分岐トリデシルアルコール(商品名:トリデカノール、販売元:協和発酵ケミカル株式会社)430g(2.15モル)を入れ、更に触媒として硫酸を0.6g系内に添加した。窒素置換後、攪拌しながら系内の圧力を1.4×10Paに減圧し、系内の温度を150℃まで昇温して5時間減圧反応を行った。その後更に系内の圧力を3.0×10Paまで減圧して150℃で3時間反応を行ってエステル化反応を完結させた。その後2質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを系内に添加し、30℃で30分間攪拌後、静置して油水分離して触媒を除去した。このアルカリ水洗工程を3回繰り返し、系内に残存する酸成分を全て除去した後、純水300gで同様に水洗した。水洗後、系を100℃に昇温し、3.0×10Paで1時間脱水処理して試験サンプル1−Aを得た。試験サンプル1−Aの酸価は0であった。
【0029】
(試験サンプル1−B)
温度計、窒素導入管、減圧用の吸入管及び攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、チオジプロピオン酸178g(1モル)及び分岐トリデシルアルコール(商品名:トリデカノール、販売元:協和発酵ケミカル株式会社)200g(1モル)を入れ、更に触媒として硫酸を0.5g系内に添加した。窒素置換後、攪拌しながら系内の圧力を1.4×10Paに減圧し、系内の温度を150℃まで昇温して5時間減圧反応を行った。その後更に系内の圧力を3.0×10Paまで減圧して150℃で3時間反応を行ってエステル化反応を完結させた。その後2質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを系内に添加し、30℃で30分間攪拌後、静置して油水分離して触媒を除去し、更に純水を300g加え同様に水洗を行った。水洗後、100℃、3.0×10Paで1時間脱水処理して試験サンプル1−Bを得た。試験サンプル1−Bの酸価は156mgKOH/gであった。
【0030】
(その他のサンプル)
上記の試験サンプル1−A及び試験サンプル1−Bと同様の製造方法で、アルコールの種類を変えて合成を行い、試験サンプル2−A、試験サンプル2−B、試験サンプル3−A及び試験サンプル3−Bを合成した。各試験サンプルの構造は下記に記してある。なお、使用した分岐オクタデシルアルコールはファインオキソコール180(商品名)(販売元:日産化学工業株式会社)であった。
【0031】
試験サンプル1−A:チオジプロピオン酸ジ分岐トリデシルエステル(一般式(1)においてR及びRはいずれも分岐トリデシル基、R及びRはいずれもエチレン基)、酸価0
試験サンプル1−B:チオジプロピオン酸モノ分岐トリデシルエステル(一般式(2)においてRは分岐トリデシル基、R及びRはいずれもエチレン基)、酸価156mgKOH/g
試験サンプル2−A:チオジプロピオン酸ジ分岐オクタデシルエステル(一般式(1)においてR及びRはいずれも分岐オクタデシル基、R及びRはいずれもエチレン基)、酸価0
試験サンプル2−B:チオジプロピオン酸モノ分岐オクタデシルエステル(一般式(2)においてRは分岐オクタデシル基、R及びRはいずれもエチレン基)、酸価124mgKOH/g
試験サンプル3−A:チオジプロピオン酸ジベンジルエステル(一般式(1)においてR及びRはいずれもベンジル基、R及びRはいずれもエチレン基)、酸価0
試験サンプル3−B:チオジプロピオン酸モノベンジルエステル(一般式(2)においてRはベンジル基、R及びRはいずれもエチレン基)、酸価193mgKOH/g
【0032】
(試験サンプル4)
温度計、窒素導入管、減圧用の吸入管及び攪拌機を付した容量1000mlの4つ口フラスコに、チオジプロピオン酸178g(1モル)及び分岐トリデシルアルコール(商品名:トリデカノール、販売元:協和発酵ケミカル株式会社)400g(2モル)を入れ、更に触媒として硫酸を0.6g系内に添加した。窒素置換後、攪拌しながら系内の圧力を1.4×10Paに減圧し、系内の温度を150℃まで昇温して5時間減圧反応を行った。その後2質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを系内に添加し、30℃で30分間攪拌後、静置して油水分離して触媒を除去し、更に100℃、3.0×10Paで1時間脱水処理して試験サンプル4を得た。試験サンプル4の酸価は0.1mgKOH/gであった。
【0033】
<試験油の作成>
上記の試験サンプルを使って、酸価を調整したサンプルを作成した後、基油に溶解させて試験油を作成した。なお、使用した基油の性状は、動粘度4.24mm/秒(100℃)、19.65mm/秒(40℃)、粘度指数=126の鉱物油系潤滑基油である。
試験油1:試験サンプル1−A(酸価0)を0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油2:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.005mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油3:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.01mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油4:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.05mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油5:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.1mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油6:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.2mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油7:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.3mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油8:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.4mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油9:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価0.5mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油10:試験サンプル1−Aと試験サンプル1−Bを配合して、酸価1mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油11:試験サンプル2−Aと試験サンプル2−Bを配合して、酸価0.1mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油12:試験サンプル3−Aと試験サンプル3−Bを配合して、酸価0.1mgKOH/gに調製したものを0.5質量%になるように基油に溶解させた。
試験油13:試験サンプル4(酸価0.1mgKOH/g)を0.5質量%になるように基油に溶解させた。
なお、試験油1、2、9、10および14が比較品である。
【0034】
<摩耗試験>
バウデンレーベン試験機HHS2000(新東科学株式会社製)を用いて摩擦特性試験を行なった。SUJ2製試験球とSUJ2製試験板をバウデンレーベン試験機の所定の位置にセットし、表1に記載した各試験油を2つの試験片の間に50μl流し込んだ。その後荷重1000g、摺動速度20mm/sの条件で試験を開始し、摺動距離40m時のSUJ2製試験球の摩耗痕径(磨耗痕の直径)を測定した。摩擦痕系が小さいもの程、摩耗防止効果が大きいことを示す。結果を表1に示す。
【0035】
<保存安定性試験>
試験油1〜13に使用した試験サンプル(試験油2〜12は試験サンプルの混合品、試験油1は試験サンプル1−A、試験油13は試験サンプル4)100gを150mlの蓋付きのガラス管に入れて密封し、50℃の恒温槽に1ヶ月間放置し、1ヵ月後の試験サンプルの酸価を測定した。結果を表1に示す。なお表1における試験油1〜13は、それぞれの試験油に使用した試験サンプルの意味である。
【0036】
<酸化安定性試験>
JIS K−2514の方法に準拠して行った。具体的には、圧力計を備えた容量100mlの耐圧ボンベの中に、試験油50g、水5g、及び触媒として直径1.6mmの銅線3mをコンパクトに丸めたものを入れ、密封した後ボンベ内の圧力が620kPaになるまで酸素を圧入する。このボンベを150℃の恒温槽内で、30℃の角度を保持したまま毎分100回転で回転させる。最初、ボンベ内の圧力は温度がかかることで増加していくが、酸化劣化が始まると酸素を吸収してボンベ内の圧力は低下する。圧力を経時で測定し、圧力が最高になったときから175kPaに低下するまでの時間を求め、これを酸化劣化の誘導期間とした。誘導期間が長いほど酸化防止性能が良好な試験油である。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
以上の摩耗試験及び保存安定性試験の結果をグラフにした。図1が摩耗試験結果であり、図2が保存安定性試験結果(上昇値)である。
磨耗試験の結果より、酸価0及び酸価0.005mgKOH/gの試験油1及び2は、添加剤未添加の基油(試験油14)より耐摩耗性が悪化しているが、酸価が0.01以上の試験油は、明らかに耐摩耗性能が向上していることがわかる。一方、保存安定性試験においては、酸価が高くなるほど保存安定性が悪くなるが、保存試験前の試験サンプルの酸価が0.4mgKOH/gを超えたところで保存安定性が急激に悪化している。また、酸価安定性については、全ての試験サンプルで変化はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される化合物(A)及び下記の一般式(2)で表される化合物(B)を含有し、且つ酸価が0.01〜0.4mgKOH/gであることを特徴とする潤滑油添加剤組成物。
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【化2】

(式中、Rは炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
、R、R及びRがいずれもエチレン基であり、R、R及びRが同一の基であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油添加剤組成物。
【請求項3】
酸価が0.01〜0.3mgKOH/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑油添加剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油添加剤組成物を0.1〜5質量%含有することを特徴とする潤滑油。
【請求項5】
下記の一般式(1)で表される化合物(A)及び下記の一般式(2)で表される化合物(B)を含有する潤滑油添加剤組成物の酸価を0.01〜0.4mgKOH/gに調整することにより、該潤滑油添加剤組成物の保存安定性を向上させる方法。
【化3】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【化4】

(式中、Rは炭素数6〜18の炭化水素基を表し、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−229292(P2012−229292A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96762(P2011−96762)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】