説明

炉の天井構造体及び炉の天井構造体の組み立て方法

【課題】 簡素な構造で組み立てが簡単でありながら防塵可能な炉の天井構造体及び炉の天井構造体の組み立て方法を提供すること。
【解決手段】 保持部は、発熱体の端部を係止する溝を有する一対の絶縁体を備える。発熱体を一対の絶縁体の溝間でこの発熱体が長手方向に対し円弧状になるように保持してある。天井部材6は複数の第一薄板部材20a〜eを積層し、発熱体に沿って円弧状に形成してある。各天井部材6が少なくとも炉内外を貫く貫通部材14を挿入可能な間隙をおいて並ぶように複数のヒーターユニットを配置してある。この間隙11を第二薄板部材12a,bによって塞ぐことで天井を形成する。この第二薄板部材12a,bは、貫通部材14がクリアランス15をもって貫通する第一貫通孔13を備え、貫通部材14を密接状態で貫通させる第二貫通孔を有する閉塞部材16及びこの閉塞部材16を固定する固定部材17,18によって複数の第一薄板部材20a〜eの間で先のクリアランス15を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉の天井構造体及び炉の天井構造体の組み立て方法に関する。さらに詳しくは、発熱体と、この発熱体を保持する保持部と、前記発熱体を覆う天井部材と、保持部及び天井部材を取り付けるフレームとからなるヒーターユニットを複数備えた炉の天井構造体及び炉の天井構造体の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き炉の天井構造体として、例えば特許文献1,2に記載の如きものが知られている。特許文献1には、突起を有する複数のシートをその突起により隙間をおいて積層した炉の断熱構造が開示されている。しかし、炉内への防塵について十分な対策が施されておらず、断熱構造に起因する塵を十分に防ぐことが困難となっていた。
【0003】
また、特許文献2に記載の加熱炉は、天井を構成する炉壁を耐熱板で被覆してあり、その下方に複数の天井ヒーターを配置してある。しかし、ステンレス製の耐熱板では、発熱体の加熱により表面に酸化クロムが生じ、その酸化クロムが塵の一因となっていた。そのため、天井ヒーター間の隙間からその塵が落下することが考えられ、さらに防塵する必要が生じていた。また、この支持フレームには通電部材が貫通してあるが、支持フレームと通電部材との隙間においても同様に更なる防塵を確保する必要があった。
【特許文献1】実開昭60−177927号公報
【特許文献2】特開2002−81870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、簡素な構造で組み立てが簡単でありながら防塵可能な炉の天井構造体及び炉の天井構造体の組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る炉の天井構造体は、発熱体と、この発熱体を保持する保持部と、前記発熱体を覆う天井部材と、保持部及び天井部材を取り付けるフレームとを有するヒーターユニットを複数備えた炉の天井構造体であって、前記保持部は、前記発熱体の端部を係止する溝を有する一対の絶縁体を備え、前記発熱体を前記一対の絶縁体の溝間でこの発熱体が長手方向に対し円弧状に保持してあり、前記天井部材は複数の第一薄板部材を積層して前記発熱体に沿って円弧状になるように形成してあり、前記各天井部材が少なくとも炉内外を貫く貫通部材を挿入可能な間隙をおいて並ぶように前記複数のヒーターユニットを配置してあり、この間隙を第二薄板部材によって塞ぐことで天井を形成し、この第二薄板部材は、前記貫通部材がクリアランスをもって貫通可能となる第一貫通孔を備え、前記貫通部材を密接状態で貫通させる第二貫通孔を有する閉塞部材及びこの閉塞部材を固定する固定部材によって前記複数の第一薄板部材の間で前記第一貫通孔におけるクリアランスを閉塞する構造を備える。
【0006】
上記特徴構成によれば、ヒーターユニットの各天井部材間に形成される「間隙」を第二薄板部材により塞ぐことで、ヒーターユニットの組み付け誤差を吸収することができる。また、その第二薄板部材の第一貫通孔を貫通部材に対し「クリアランス」をもって形成してあるので、貫通部材の組付精度が低くても配置可能である。そして、まず第1段階として天井部材間の「間隙」を第二薄板部材により閉塞し、第2段階としてこの第二薄板部材と貫通部材との「クリアランス」に閉塞部材を配置して貫通部材と密接状態として該「クリアランス」を塞ぐことにより、天井の防塵施工を順を追って合理的に行うことが可能となる。すなわち、「間隙」とは、隣り合うヒーターユニットの天井部材間の空間をいい、貫通部材の直径を超えて管を組み付け易い寸法を有していればよい。これに対し、「クリアランス」とは主として貫通部材と第二薄板部材の第一貫通孔との間の空間をいい、貫通部材を第二薄板部材の第一貫通孔に貫通させる便宜のために設けられる。通常、クリアランスは間隙よりも小さいものである。
【0007】
前記固定部材は前記貫通部材を貫通させる孔を有すると共に、この孔を解放させる切込を有するとよい。これにより、円弧状に形成される第一薄板部材と貫通部材との間のクリアランスを簡単に塞ぐことができ、しかも、固定部材により閉塞部材を固定することができる。
【0008】
前記固定部材は一対設けられており、各固定部材の前記切込が前記複数の第一薄板部材の間において前記貫通部材の貫通方向視で異なる位置となるように挿入しても構わない。これにより、閉塞部材を固定しながら防塵することが可能となる。
【0009】
前記複数の第一薄板部材の端部に大きさの異なる切欠を形成するとよい。これにより、炉内に設置した後のヒーターユニットにおいて、そのヒーターユニット間に端部から容易に第二薄板部材を挿入することができ、作業性を向上させることができる。
【0010】
前記複数の第一薄板部材はFe−Cr−Al系の合金より形成するとよい。このFe−Cr−Al系の合金は、ヒーターの加熱による酸化クロムの発生が少なく、塵の発生を抑制することができる。しかも、炉壁を覆う塵よけ板としての断熱材を設ける必要がなく、炉の構成部品を削減することができる。前記貫通部材は炉内部に気体を導入する管状体であってもよい。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る炉の天井構造体は、上記特徴構成のいずれかに記載の炉の天井構造体の組み立て方法において、前記各天井部材が少なくとも炉内外を貫く貫通部材を挿入可能な間隙をおいて並ぶように前記複数のヒーターユニットを配置し、積層された前記第一薄板部材の層間に前記間隙を塞ぐように前記第二薄板部材を挿入して複数の前記ヒーターユニットを連結し、その下層における前記間隙に前記閉塞部材を挿入し、さらにその下層に前記固定部材を回転させて挿入するものである。
【0012】
上記構成において、前記第二薄板部材は前記第一薄板部材の切欠から挿入するとよい。組み立て後のヒーターユニットに対し容易にヒーターユニット間の間隙を塞ぐことができ、作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明に係る炉の天井構造体及び炉の天井構造体の組み立て方法の特徴によれば、簡素な構造で組み立てが簡単でありながら防塵が可能となった。
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
図1〜3に示すように、本発明に係る天井構造体1は、大略、複数のヒーターユニット2と、これらヒーターユニット2の各間に位置する第二薄板部材12とを備えている。炉の100の天井壁101に対向する天井9は、各ヒーターユニット2の天井部材6と、各天井部材6の間の間隙11を塞ぐ先の第二薄板部材12とを備えている。
【0015】
図1,3及び4に示すように、第二薄板部材12には、炉100内部へ気体を導入する貫通部材としてのガス管14を貫通させてある。すなわち、各天井部材6の間の間隙11は第二薄板部材12により塞がれ、この間隙11を利用してガス管14を配置し、第二薄板部材12の第一貫通孔13にガス管14を貫通させてある。また、間隙11は第二薄板部材12と共に天井部材6の幅方向Yへの熱膨張を吸収する。そして、第二薄板部材12は後述の閉塞部材等と連携して、天井壁101から生じる塵等が炉100の中心部側へ侵入することを防いでいる。
【0016】
ヒーターユニット2は、図1,2に示すように、大略、発熱体3と、発熱体3を保持する保持部4と、発熱体3の上面を覆う天井部材6と、これらを取り付けるフレーム7よりなる。保持部4は一対の絶縁体40a,40bよりなり、発熱体3をこの絶縁体40a,40bの間で長手方向Xに円弧状に掛け渡してある。また、ガイド部5はガイド体50及び絶縁体60よりなり、フレーム7の長手方向Xの略中央に設けられている。
【0017】
フレーム7は、幅方向Y視で円弧状に形成した薄板の横フレーム7aとL型アングルの縦フレーム7bとを格子状に形成してあり、横フレーム7aの両端に一対のサイドフレーム7cを有している。天井部材6は、複数枚の第一薄板部材20を積層させて横フレーム7a及び縦フレーム7bに載置し、長手方向Xに湾曲させてサイドフレーム7cに取り付けてある。このヒーターユニット2は、炉100に設置する前に予め組み立ててある。
【0018】
ここで、天井構造体1の天井9について説明する。図5,7に示すように、天井部材6は、Fe−Cr−Al系の合金からなる厚さ約0.1mmの5枚の第一薄板部材20a〜eを積層して形成してある。このFe−Cr−Al系の合金は、発熱体3の加熱による酸化クロムの発生が少ない。よって、塵の原因自体を低減すると共に、天井壁101に塵よけとなる断熱板等を不要とし、炉の部品点数を削減することができる。また、第一薄板部材20及び格子状のフレーム7により、天井構造体1全体の熱容量を小さくでき、炉の加熱速度を速めることができる。各第一薄板部材20a〜eの間には、第二薄板部材12、閉塞部材16及び第一、第二固定部材17,18が挿入される。
【0019】
図5に示すように、炉の天井壁101に対向する第一薄板部材20aを除き、第一薄板部材20b〜eの同位置の角部には、略方形の切欠21a〜dを設けてある。この切欠21a〜dは、同図(b)に示すように、段違いとなるように大きさを異ならせてある。天井構造体1は、予め組み立てたヒーターユニット2を炉100内に複数配置してそれらの間に第二薄板部材12を配置する。そのため、各ヒーターユニット2間の間隙11を塞ぐ第二薄板部材12は炉100の内部側(発熱体3側)から挿入することとなる。各切欠21a〜dは、垂直方向Z下方ほど大きく形成してあるので、炉100の内部側においてヒーターユニット2端部となるサイドフレーム7c側から第二薄板部材12を第一薄板部材20a,20b間へ容易に挿入することができる。なお、切欠21a〜dは、第二薄板部材12が挿入時に通電部材8と接触しないように通電部材8に対向するサイドフレーム7c側に位置させるとよい。
【0020】
図4,5,7に示すように、第二薄板部材12は、厚さ0.1mm、幅を間隙11より幅広に形成した一対の薄板部材12a,12bよりなり、ガス管14を貫通させる第一貫通孔13を設けてある。厚さが極めて薄いので簡単に曲げられ、挿入作業を容易に行うことができる。この第一貫通孔13の直径は、ガス管14の外径より大きく、ガス管14との間でクリアランス15を形成する。また、第二薄板部材12は第一薄板部材20に対し固定されていない。そのため、第二薄板部材12は移動自在となり、ガス管14の組付精度が低くてもガス管14を配置させることができる。
【0021】
しかし、クリアランス15を設けることで、そのクリアランス15から塵が内部へ侵入する恐れがある。そこで、このクリアランス15を塞ぐ閉塞部材16及びこの閉塞部材16を固定する一対の第一、第二固定部材17,18とを第一薄板部材20間に挿入する。
【0022】
図6(a)に示すように、閉塞部材16は、略円形を呈する薄板の部材であり、その直径は間隙11の幅と略同一となるように形成されている。その中央にはガス管14を密接状態で貫通させる楕円形の第二貫通孔16aを設けてある。すなわち、この第二貫通孔16aは、ガス管14が貫通方向に対し同径である場合、先の第一貫通孔13と比べて小径に形成して、先のクリアランスを実質的に閉塞する。そして、この第二貫通孔16aは、真円ではなく、楕円形に形成することにより、図7に示す如く、閉塞部材16をガス管14に対して傾斜させることが可能となり、湾曲した第一薄板部材20cの曲面に沿わせることができ、塵の侵入を防ぐことができる。もちろん、閉塞部材16がガス管14に直交する場合は、第二貫通孔16aは真円に形成すればよい。なお、ガス管14はテーパー状に形成することもできる。
【0023】
図6(b)に示すように、第一固定部材17は、略円形を呈する薄板の部材よりなり、中央にガス管14を貫通させる円形の孔17aを設けてある。第一固定部材17は、閉塞部材16の脱落を防止するものであるから、この孔17aの径は閉塞部材16の外径より小さければ足りるが、本実施形態では、ガス管14を概ね密接状態で貫通させている。また、第一固定部材17には、その半径方向に切込17bを形成してある。この切込17bの一端を第一薄板部材20の層間に差し込んで回転させ、炉100の内部側から第一固定部材17を第一薄板部材20の層間に簡単に挿入する。なお、第二固定部材18は、第一固定部材17と同様に構成される。
【0024】
発熱体3は、図1,2に示すように、直線状部31と端部33よりなる蛇行状の電流路30を形成してある。この直線状部31は、薄板の長尺部材をその長手方向Xに直交する幅方向Yに対して略V字状に屈曲させて頂部32を形成し、長手方向Xに対して円弧状に形成してある。直線状部31の中央には、後述のガイド体50を挿入する貫通孔36を設けてある。電流路30の両端部には発熱体3を通電させる通電部材8が接続される。
【0025】
図8に示すように、絶縁体40aには、発熱体3の端部33を係止する溝41を設けてあり、端部33の断面形状に合わせて山型に形成してある。また、溝41の一端には、発熱体3に接続する通電部材8を取り付ける接続部42を設けてある。なお、絶縁体40bは、絶縁体40aと同様に形成してあり、接続部42を有していない点が異なる。
【0026】
一対の絶縁体40a,40bは、図1,2に示すように、発熱体3の直線状部31の長手方向Xにおいて溝41が対向するように、取付部材43及び取付孔44を介してサイドフレーム7cに対し傾斜させて取り付けてある。なお、本実施形態において、絶縁体40a,40bを二組用いて発熱体3を保持してある。
【0027】
図9に示すように、ガイド体50は薄板よりなり、一端に折曲部51と、他端に棒状のピン53を取り付ける孔52を設けてある。このガイド体50は、直線状部31の貫通孔36に挿入され、直線状部31の幅方向Yへの熱変形を抑制し、直線状部31同士の接触による短絡を防止する。また、ピン53は、垂直方向Zへの発熱体3の垂れや脱落を防止する。
【0028】
絶縁体60は、ガイド体50の折曲部51を係止させる溝61と、ボルト等の取付具63を貫通させる取付孔62とが複数形成されてある。溝61の上部は開口してあり、その開口からガイド体50を溝61の貫通孔61aに貫通させて折曲部51を溝61に係止させて固定する。なお、本実施形態において、絶縁体60を幅方向Yに4体配列させて縦フレーム7bに固定してある。
【0029】
次に、図10に示す模式図を参照しながら、天井構造体1の組み立て手順について説明する。
まず、予め組み立てたヒーターユニット2を炉100内にガス管14が挿入できる間隙11をおいて複数幅方向Yへ設置する。次に、図10(a)に示すように、天井部材6の第一薄板部材20a,20b間へ炉100内部側から第二薄板部材12aを挿入する。この挿入は、第一薄板部材20b〜eの各角部に設けた切欠21a〜dから行い、第一薄板部材20a,20bに沿わせて挿入していく。同様に、第二薄板部材12bを第一薄板部材20b,20c間に挿入する。そして、第二薄板部材12a,12bの第一貫通孔13にガス管14を挿入する。
【0030】
次に、ガス管14の下端部14aから閉塞部材16を挿入し、図10(b)に示すように、対向する第一薄板部材20c,20c間に位置させる。この時、閉塞部材16をガス管14に対して傾斜させて第一薄板部材20cの湾曲面に沿わせる。
【0031】
そして、第一固定部材17を第一薄板部材20c,20d間に挿入する。この挿入は、図10(c)に示すように、固定部材17を切込17bで開放し、その一端を第一薄板部材20c,20d間に挿入する。最後に、同図(d)に示すように、第一固定部材17をガス管14を軸に回転させることで第一薄板部材20c,20d間に挿入する。同様に、第二固定部材18を第一薄板部材20d,20e間に挿入する。ここで、第一、第二固定部材17,18は、切込17b,18bの位置が前記貫通部材の貫通方向視で異なる位置となるようにする。これにより、隙間の発生を防止する。このようにして、炉100内部側から天井構造体1を組み立てる。
【0032】
最後に、本発明の他の実施形態の可能性について言及する。なお、上述の実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
上記実施形態において、天井部材を5層構造としたが適宜積層しても構わない。係る場合、適宜閉塞部材及び固定部材を増やしても構わないが、作業効率を考慮して決定するとよい。
【0033】
上記実施形態において、第一、第二薄板部材及び固定部材には、表面が平坦に形成した薄板部材と表面にエンボス加工を施した薄板部材とを組み合わせて用いた。しかし、これらは適宜組み合わせて用いてもよく、例えば表面が平坦な薄板部材のみ用いても構わない。
【0034】
上記実施形態において、切欠21a〜dは略方形に形成した。しかし、切欠21a〜dの形状は略方形に限定されず、第二薄板部材12を炉100内部側から挿入可能な大きさ、形状であればよい。
【0035】
上記実施形態において、発熱体3は、蛇行状の電流路30を形成し、直線状部31は、薄板長尺部材をその長手方向Xに直交する幅方向Yに対して略V字型に屈曲して頂部32を形成し、且つその長手方向Xに対し円弧状に形成した。しかし、屈曲はV字型に限らず、湾曲(R曲げ)させても構わない。また、頂部32は天井壁101側又は炉100内部側のどちらに位置させても構わず、発熱体の強度や輻射効率等を考慮して適宜選択すればよい。さらに、発熱体の電流路は蛇行状に限られるものではなく、例えば方形の板状発熱体を複数用いても構わない。
【0036】
上記実施形態における絶縁体40a,40b,60を構成する絶縁材料としては、アルミナ質、アルミナシリカ質、ムライト質、ジルコン質又はコージライトを主体とするセラミックスや炭化けい素、窒化けい素等の他、様々なものを用いることができる。また、これら絶縁材料を構成する材料の種類や配合は、発熱体の使用温度等に応じて適宜変更することができる。
【0037】
また、上記実施形態において、絶縁体40a,40bを二組、絶縁体60を4体用いたが、これらはヒーターユニット2の大きさに応じて長さや数量を適宜設定すればよい。
【0038】
上記実施形態において、貫通部材として炉100内部へ気体を導入するガス管14を用いたが、ガス管14に限らず例えば温度センサであっても構わない。また、第一、第二薄板部材及び第一、第二固定部材は、表面が平坦であってもエンボス加工を施されていてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記実施形態において、閉塞部材16の第二貫通孔16aを楕円形に形成し、第一薄板部材20の湾曲面に沿わせて取り付けた。しかし、第二貫通孔16aは、貫通部材14が貫通可能で且つ貫通部材14に対し傾斜可能な形状であれば特に限定されない。但し、塵の侵入を防止するために、閉塞部材16を傾斜させ第一薄板部材20の湾曲面に沿わせた際に当該第二貫通孔16aと貫通部材14とが密着状態となり、先のクリアランスが塞がる形状とするとよい。また、固定部材17,18の孔17a,18aの形状は円形に限らず、貫通部材14の形状に合わせて適宜形成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るヒーターユニットは、ガラス、セラミック、サーメット、金属等の熱処理用ヒーターとして使用することができる。また、陶芸炉、反応炉、拡散炉等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る天井構造体の正面図である。
【図2】図1の背面図である。
【図3】天井構造体を炉に設置した状態を模式的に示す炉の縦断面図である。
【図4】貫通部材近傍の管軸方向視の部分拡大平面図である。
【図5】(a)は、天井部材の間隙近傍を示す部分拡大平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図6】(a)は、閉塞部材の拡大平面図であり、(b)は固定部材の拡大平面図である。
【図7】図4のB−B線断面を模式的に示す図である。
【図8】(a)は絶縁体の側面図、(b)は(a)の正面図、(c)は(b)の背面図である。
【図9】ガイド体を絶縁体に取り付けた状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図10】天井構造体の組み立て手順を示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1:天井構造体、2:ヒーターユニット、3:発熱体、4:保持部、5:ガイド部、6:天井部材、7:フレーム、7a:横フレーム、7b:縦フレーム、7c:サイドフレーム、8:通電部材、9:天井、11:間隙、12,12a,12b:第二薄板部材、13:第一貫通孔、14:貫通部材(ガス管)、15:クリアランス、16:閉塞部材、16a:第二貫通孔、17:第一固定部材、17a:孔、17b:切込、18:第二固定部材、18a:孔、18b:切込、20a〜e:第一薄板部材、21a〜e:切欠、30:電流路、31:直線状部(薄板長尺部材)、32:頂部、33:端部、34:接続部、36:貫通孔、40:絶縁体、41:溝、42:接続部、43:取付部材、44:孔、45:空隙、50:ガイド体、51:折曲部、52:孔、53:ピン、60:絶縁体、61:溝、61a:貫通孔、62:取付孔、63:取付具(ボルト)、100:炉、101:天井壁、X:長手方向、Y:幅方向、Z:垂直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、この発熱体を保持する保持部と、前記発熱体を覆う天井部材と、保持部及び天井部材を取り付けるフレームとを有するヒーターユニットを複数備えた炉の天井構造体であって、
前記保持部は、前記発熱体の端部を係止する溝を有する一対の絶縁体を備え、
前記発熱体を前記一対の絶縁体の溝間でこの発熱体が長手方向に対し円弧状に保持してあり、
前記天井部材は複数の第一薄板部材を積層して前記発熱体に沿って円弧状になるように形成してあり、
前記各天井部材が少なくとも炉内外を貫く貫通部材を挿入可能な間隙をおいて並ぶように前記複数のヒーターユニットを配置してあり、
この間隙を第二薄板部材によって塞ぐことで天井を形成し、
この第二薄板部材は、前記貫通部材がクリアランスをもって貫通可能となる第一貫通孔を備え、
前記貫通部材を密接状態で貫通させる第二貫通孔を有する閉塞部材及びこの閉塞部材を固定する固定部材によって前記複数の第一薄板部材の間で前記第一貫通孔におけるクリアランスを閉塞する炉の天井構造体。
【請求項2】
前記固定部材は前記貫通部材を貫通させる孔を有すると共に、この孔を解放させる切込を有する請求項1記載の炉の天井構造体。
【請求項3】
前記固定部材は一対設けられており、各固定部材の前記切込が前記複数の第一薄板部材の間において前記貫通部材の貫通方向視で異なる位置となるように挿入してある請求項2記載の炉の天井構造体。
【請求項4】
前記複数の第一薄板部材の端部に大きさの異なる切欠が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の炉の天井構造体。
【請求項5】
前記複数の第一薄板部材はFe−Cr−Al系の合金よりなる請求項1〜4のいずれかに記載の炉の天井構造体。
【請求項6】
前記貫通部材は炉内部に気体を導入する管状体である請求項1〜5のいずれかに記載の炉の天井構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の炉の天井構造体の組み立て方法であって、
前記各天井部材が少なくとも炉内外を貫く貫通部材を挿入可能な間隙をおいて並ぶように前記複数のヒーターユニットを配置し、
積層された前記第一薄板部材の層間に前記間隙を塞ぐように前記第二薄板部材を挿入して複数の前記ヒーターユニットを連結し、その下層における前記間隙に前記閉塞部材を挿入し、
さらにその下層に前記固定部材を回転させて挿入する炉の天井構造体の組み立て方法。
【請求項8】
前記第二薄板部材は前記第一薄板部材の切欠から挿入する請求項7記載の炉の天井構造体の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−156505(P2010−156505A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335006(P2008−335006)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(393000571)貞徳舎株式会社 (18)
【Fターム(参考)】