説明

炭化水素吸着剤及び炭化水素吸着体

【課題】多量の炭化水素を十分に吸着保持することができる炭化水素吸着剤及び炭化水素吸着体を提供すること。
【解決手段】アルミノケイ酸塩のゼオライト結晶骨格を有する炭化水素吸着剤、及びこれを多孔質担体に担持してなる炭化水素吸着体である。炭化水素吸着剤において、ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの少なくとも一部はホウ素で置換されている。さらに、ゼオライト結晶骨格におけるイオン交換サイトの少なくとも一部にはアルカリ金属イオンが存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト結晶骨格を有する炭化水素吸着剤及び該炭化水素吸着剤を用いた炭化水素吸着体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)等が含まれる。この炭化水素等を浄化するために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)等の三元触媒からなる排ガス浄化触媒が用いられている。ところが、内燃機関の始動直後においては、排ガス中のHC濃度が高く、また、排ガス浄化触媒が浄化活性を示すのに十分な温度に達していないため、炭化水素が浄化されずに排出されてしまう。そこで、内燃機関の始動直後の低温時においては、ゼオライトからなる炭化水素吸着剤にHCを吸着保持し、始動直後のHCを低減させる技術が開発されている。
【0003】
このような炭化水素吸着剤としては、アルミノケイ酸塩のAlの一部又は全部をFeで置換した、SiO2/Al23のモル比がSiO2/Fe23のモル比の2倍以上であるとともにSiO2/Al23のモル比が80以上かつSiO2/Fe23のモル比が40以上である炭化水素吸着材が開発されている(特許文献1参照)。
また、Sandersonの電気陰性度平均か原理から求めた酸素の電荷の絶対値が0.210以上で、かつSiO2/Al23のモル比が30以上のゼオライトからなる炭化水素用吸着剤が開発されている(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−99207号公報
【特許文献2】特開2003−126689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の炭化水素吸着剤は、炭化水素に対する吸着力が不十分であり、炭化水素を十分に吸着保持することができない。そのため、低温において炭化水素が炭化水素吸着材を通過して排出されてしまうおそれがある。
そこで、より多量の炭化水素を十分に吸着保持することができる炭化水素吸着剤の開発が望まれている。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであって、多量の炭化水素を十分に吸着保持することができる炭化水素吸着剤及び炭化水素吸着体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、アルミノケイ酸塩のゼオライト結晶骨格を有する炭化水素吸着剤であって、
上記ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの少なくとも一部がホウ素で置換されており、かつ、上記ゼオライト結晶骨格におけるイオン交換サイトの少なくとも一部に、アルカリ金属イオンが存在していることを特徴とする炭化水素吸着剤にある(請求項1)。
【0008】
本発明の他の態様は、上記炭化水素吸着剤を多孔質担体に担持してなる炭化水素吸着体にある(請求項4)。
【発明の効果】
【0009】
上記炭化水素吸着剤においては、上記ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの少なくとも一部がホウ素で置換されている。さらに、上記ゼオライト結晶骨格におけるイオン交換サイトの少なくとも一部に、アルカリ金属イオンが存在している。そのため、上記炭化水素吸着剤は、炭化水素に対して優れた吸着力を示し、多量の炭化水素を十分に吸着保持することができる。
【0010】
具体的には、上記ゼオライト結晶骨格中において、アルミニウム(Al)サイトの少なくとも一部をホウ素(B)に置換すると、AlをFe等に置換した場合に比べて、より塩基性を高めることができる。そのため、炭化水素に対する吸着力を高めることができる。さらに、アルミニウム(Al)サイトの少なくとも一部をホウ素(B)に置換したゼオライト結晶骨格に対して、そのイオン交換サイトの少なくとも一部にアルカリ金属イオンを存在させることにより、相乗効果的に塩基性をより一層高めることができる。その結果、炭化水素に対する吸着力をより一層高めることができる。
【0011】
次に、上記炭化水素吸着体は、上記炭化水素吸着剤を多孔質担体に担持してなる。そのため、上記炭化水素吸着体は、上記炭化水素吸着剤の優れた吸着力を生かして、多量の炭化水素を十分に吸着保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における、一般的なゼオライト結晶骨格における構成元素の配列を示す説明図(a)、炭化水素吸着剤(試料E1)のゼオライト結晶骨格における構成元素の配列を示す説明図(b)
【図2】実施例1における、炭化水素吸着剤(試料E1、試料C1、及び試料C2)のトルエン脱離ピーク温度を示す説明図。
【図3】実施例1における、炭化水素吸着剤(試料E1、試料C1、及び試料C2)の単位表面積あたりのトルエン吸着量を示す説明図。
【図4】実施例2における、炭化水素吸着体の全体を示す説明図。
【図5】実施例2における、炭化水素吸着体の断面構成を示す説明図。
【図6】実施例2における、炭化水素吸着体と排ガス浄化触媒体との排ガス流路における配置例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
上記炭化水素吸着剤は、アルミノケイ酸塩のゼオライト結晶骨格中のAlの少なくとも一部がBで置換されている。上記炭化水素吸着剤においては、ゼオライト結晶骨格中におけるAlの一部がBにより置換されていてもよいが、Alの全部がBにより置換されていてもよい。
【0014】
上記炭化水素吸着剤において、上記ゼオライト結晶骨格中におけるSi/Bのモル比が10以上かつ50以下であることが好ましい(請求項2)。
Si/Bのモル比が10未満の場合には、ゼオライトの結晶構造が崩れやすくなり、上記炭化水素吸着剤の水熱安定性が損なわれるおそれがある。一方、50を超える場合には、上述のB置換による炭化水素に対する吸着力向上効果が小さくなるおそれがある。
【0015】
また、上記ゼオライト結晶骨格においては、イオン交換サイトの少なくとも一部に、アルカリ金属イオンが存在している。
SiO2及びAl23を含有する一般的なゼオライトは、Si−O−Alという結合を有し、この結合におけるOはマイナス電荷を帯びている。そのため、Oには水素イオンなどのカチオンが結合し、このカチオンが結合するサイトはイオン交換サイトと呼ばれている。上記炭化水素吸着剤においては、アルミニウム少なくとも一部がホウ素で置換されているが、この場合にも、Si−O−Bという結合におけるOがマイナス電荷を帯びるため、イオン交換サイトが存在する。
一般的なゼオライトにおいては、カチオンは水素イオンであるが、上記炭化水素吸着剤においては、イオン交換サイトに上述のようにアルカリ金属イオンが存在している。
【0016】
アルカリ金属イオンとしては、Liイオン、Naイオン、Kイオン、Rbイオン、及びCsイオンのうちの少なくとも1種が好ましい。より好ましくは、Kイオン、Rbイオン、及びCsイオンの少なくとも1種がよい。
この場合には、上記炭化水素吸着剤の炭化水素に対する吸着力をより向上させることができる。
【0017】
また、上記ゼオライト結晶骨格は、MFI型又はBEA型であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記炭化水素吸着剤は、比較的小さな炭化水素に対しても、優れた吸着保持性能を発揮することができる。
【0018】
また、上記炭化水素吸着剤は、例えば排ガス流路に配置して、排ガス中に含まれる炭化水素を吸着するために用いることができる。この場合には、多量の炭化水素を十分に吸着保持できるという上記炭化水素吸着剤が示す作用効果を十分に生かすことができる。
また、上記炭化水素吸着剤は、排ガス流路において、三元触媒等からなる排ガス浄化触媒の上流側に配置して用いることができる。
【0019】
次に、上記炭化水素吸着体は、上記炭化水素吸着剤を多孔質担体に担持してなる。
上記多孔質担体としては、例えばコーディエライト、チタン酸アルミ、SiC、又はチタニア等からなる多孔質のハニカム構造体を用いることができる。
上記炭化水素吸着体は、排ガス流路において、例えば三元触媒を多孔質担体に担持した排ガス浄化触媒体の上流側に配置して用いることができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
次に、炭化水素吸着剤の実施例について説明する。
本例の炭化水素吸着剤(試料E1)は、アルミノケイ酸塩のゼオライト結晶骨格を有する。
一般的なゼオライト結晶骨格は、Si原子とAl原子とO原子との網目構造により構成されているが(図1(a)参照)、本例の炭化水素吸着剤(試料E1)においては、ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの少なくとも一部がホウ素で置換されている(図1(b)参照)。なお、図1(a)及び(b)はゼオライト結晶骨格の一部を示すものである。また、ゼオライト結晶骨格におけるイオン交換サイトにはカチオンが存在している。一般的なゼオライト結晶骨格においては、カチオン(X+)として、H+が存在している(図1(a)参照)、本例の炭化水素吸着剤(試料E1)においては、カチオン(X+)として、アルカリ金属イオンが存在している(図1(b)参照)。
【0021】
本例においては、MFI型のゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの全部がホウ素で置換され、イオン交換サイトにCs+が存在する炭化水素吸着剤(試料E1)を作製する。
具体的には、まず、シリカ(SiO2)、ホウ酸(B(OH)3)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)、及び超純水(H2O)をモル比で、SiO2:B(OH)3 :TPAOH:H2O=1:0.084:0.1:34となるように混合し、室温で1時間攪拌した。得られた混合水溶液を内容積100mLのテフロン(登録商標)製の耐圧容器に入れて温度155℃にて120時間静置し、水熱法によりゼオライトを合成した。
【0022】
次いで、得られた固体をろ過し、超純水で十分に洗浄した。その後、温度100℃で12時間乾燥し、更に大気中で、温度500℃で6時間焼成した。この焼成により、MFI型のゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの全部がホウ素で置換され、イオン交換サイトにH+イオンが存在するゼオライトを得た。これを試料C2とする。試料C2について、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES装置、パーキンエルマー社製の「Optima 4300DV」)によるICP−AES分析を行ったところ、Si/B比(モル比)は、Si/B=12であった。
【0023】
次に、1gの試料C2を1M塩化セシウム水溶液に添加し、温度70℃で6時間撹拌することにより、イオン交換を行った。得られた固体をろ過し、超純水で十分に洗浄した。その後、温度100℃で12時間乾燥し、更に大気中で、温度500℃で6時間焼成した。このようにして、炭化水素吸着剤(試料E1)を得た。
【0024】
また、本例においては、上記試料E1の比較用のサンプル(試料C1)を準備した。試料C1は、Si/Al=18.5(モル比)のH+型MFIゼオライト(東ソー(株)製の「HSZ−840HOA」)を大気中で温度500℃で6時間焼成することにより作製した。
【0025】
以上のようにして、試料E1、試料C1、及び試料C2という3種類のゼオライト骨格を有する炭化水素吸着剤を得た。
試料E1は、MFI型のゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの全部がホウ素で置換され、イオン交換サイトにCsイオンが存在する炭化水素吸着剤である。試料E1は、図1(b)におけるX+がCs+である骨格構造を有する。
また、試料C1は、MFI型のゼオライト結晶骨格を有する炭化水素吸着剤である。試料C1は、図1(a)におけるX+がH+である骨格構造を有する。
また、試料C2は、MFI型のゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの全部がホウ素で置換され、イオン交換サイトにHイオンが存在する炭化水素吸着剤である。試料C2は、図1(b)におけるX+がH+である骨格構造を有する。
【0026】
次に、上記試料E1、試料C1、及び試料C2に、炭化水素(トルエン)を吸着させたときの、脱離ピーク温度及び吸着量を測定した。測定は、温度プログラム昇温触媒分析装置(日本ベル(株)製の「BEL−CAT」)を用いて行った。
具体的には、まず、流速50mL/minのHeガス流通下において、0.1gの各粉末試料(試料E1、試料C1、及び試料C2)を昇温速度20℃/minで温度400℃まで昇温させ、温度400℃にて20分間保持した後、温度50℃まで降温させる前処理を行った。次に、温度50℃に保持したまま、各試料に、トルエン混合ガス(トルエン:5体積%、He:バランス)を流速50mL/minで15分間流通させ、トルエンを吸着させた。次いで、質量分析計にトルエンが観測されなくなるまで、流速50mL/minのHeガスを各試料に流通させた。その後、流速30mL/minのHeガス流通下において、各試料を昇温速度10℃/minで温度400℃まで昇温させ、温度400℃にて15分間保持することにより、吸着したトルエンを脱離させた。昇温に伴って各試料から脱離する成分を質量分析計(日本ベル(株)製の「BEL−Mass)にて定性・定量した。そして、トルエンの脱離量が最大となるときの温度(トルエン脱離ピーク温度(℃))を測定した。その結果を図2に示す。
また、質量分析によりトルエンの脱離量を測定することにより、各試料に吸着していたトルエン吸着量を求めた。
【0027】
また、自動比表面積分析装置(日本ベル(株)製の「BELSORP−miniII」)を用いて各試料の比表面積を測定した。
具体的には、まず、排気前処理装置(日本ベル(株)製の「BELPREP−vacII」)を用いて排気しながら、各試料0.2gを昇温速度10℃/minで温度300℃まで昇温させ、この温度300℃にて1時間保持する前処理を行った。前処理後の各試料について、液体窒素沸点(77K)付近における窒素吸着測定を行い、多点BET法により各試料の比表面積を算出した。そして、上述の質量分析により測定したトルエン吸着量をここで得られた比表面積の値で除すことにより、各試料の単位比表面積あたりのトルエン吸着量(μmol/m2)を算出した。その結果を図3に示す。
【0028】
図2より知られるごとく、ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムがホウ素で置換されており、かつイオン交換サイトにアルカリ金属イオン(Cs+)が存在している試料E1の炭化水素吸着剤は、SiO2及びAl23からなる通常のゼオライト結晶骨格を有する試料C1に比べてトルエン脱離ピーク温度が高くなっている。また、試料E1は、ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムがホウ素で置換され、かつイオン交換サイトに水素イオン(H+)が存在している試料C2に比べても、トルエン脱離ピーク温度がさらに高くなっている。したがって、試料E1は、炭化水素を十分に優れた吸着力で吸着保持できることがわかる。
また、図3より知られるごとく、試料E1は、試料C1及び試料C2に比べて、多量のトルエンを吸着できることがわかる。
【0029】
このように、本例によれば、ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムがホウ素で置換され、かつイオン交換サイトにアルカリ金属イオンが存在している炭化水素吸着剤は、多量の炭化水素を十分に吸着保持できることがわかる。
【0030】
(実施例2)
本例は、炭化水素吸着剤を多孔質担体に担持してなる炭化水素吸着体の例である。
図4及び図5に示すごとく、本例の炭化水素吸着体1は、多孔質担体2として、外皮20と、その内側において多角形格子状に配設されたセル壁21と、該セル壁21に区画された多数のセル22とを有する多孔質のハニカム構造体を有する。
【0031】
多孔質担体2は、図4及び図5に示すごとく、略円柱形状を有している。多孔質担体2は、円筒形状の外皮20とこの外皮20内において略四角形格子状に配設されたセル壁21とを備える。セル壁21に区画されて形成された多数のセル22は円柱形状の多孔質担体2の一方の端面28から他方の端面29まで軸方向に伸びるように形成されている。
多孔質担体2は、コージェライトからなる多孔体であり、セル壁21には細孔(図示略)が形成されている。
【0032】
本例の炭化水素吸着体1においては、図4及び図5に示すごとく、多孔質担体2のセル壁21に、炭化水素吸着剤を含有する炭化水素吸着層3が形成されている。
炭化水素吸着層3は、アルミナ粒子が凝集してなる担持層(図示略)と、該担持層に担持された炭化水素吸着剤(図示略)とからなる。また、多孔質吸着層3は、セル壁21上に形成されていると共に、セル壁21の細孔内にも充填されている。炭化水素吸着剤としては、実施例1の試料E1が担持されている。
【0033】
次に、本例の炭化水素吸着体の製造方法について説明する。
まず、多孔質担体として、コージェライトからなるハニカム構造体を準備する。
具体的には、まず、タルク、シリカ、カオリン、アルミナ、及び水酸化アルミニウム等をコージェライト組成となるように混合した。そして、混合粉末に対してバインダ及び水を加えて混練し、可塑性を調整した。その後、押出機により混練物を成形し、全体形状が円柱形状で、セル形状が四角形のハニカム成形体を得た。
次に、水分が十分に除去されるまでハニカム成形体を乾燥した後、焼成した。これにより、ハニカム構造の多孔質担体を得た。
【0034】
次に、多孔質担体のセル壁に炭化水素吸着層を形成した。
具体的には、まず、実施例1で作製した試料E1と、アルミナゾルを水に混合し、スラリーを得た。次いで、このスラリーにハニカム構造の多孔質担体を浸漬し、引き上げた後、多孔質担体のセル内の余剰スラリーを空気流にて取り除いた。そして、多孔質担体を乾燥させた後、温度400℃で1時間焼成した。
このようにして、多孔質担体のセル壁の表面に、炭化水素吸着剤を含有する炭化水素吸着層が形成された炭化水素吸着体を得た。なお、本例においては、無機バインダとしてアルミナゾルを用いたが、アルミナゾルの代わりに、シリカゾル又はイットリアゾル等を用いることもできる。
【0035】
本例の炭化水素吸着体1においては、炭化水素吸着剤(試料E1)を含有する炭化水素吸着層3が多孔質担体2に担持されている(図4及び図5参照)。そして、炭化水素吸着剤としては、ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの少なくとも一部がホウ素で置換され、かつイオン交換サイトの少なくとも一部にアルカリ金属イオンが存在する実施例1の上記試料E1が採用されている。
そのため、上記試料E1が示す炭化水素に対する優れた吸着力を生かして、上記炭化水素吸着体は、多量の炭化水素を十分に吸着保持することができる。
【0036】
また、図6に示すごとく、炭化水素吸着体1は、排ガス流路6において、貴金属等の三元触媒を多孔質担体に担持した排ガス浄化触媒体5の上流側に配置して用いることができる。これにより、例えば三元触媒の活性温度未満の低温時においては、上流側に配置された炭化水素吸着体1が炭化水素を吸着することができ、活性温度以上になると下流側に配置された排ガス浄化触媒体5により排ガスの浄化を行うことができる。そのため、排ガス中に含まれる炭化水素の排出をより確実に防止することが可能になる。
なお、排ガス浄化触媒体5は、炭化水素吸着剤の代わりに三元触媒を用いる点を除いては、例えば上記炭化水素吸着体1と同様の構成にすることができる。また、図6においては、炭化水素吸着体1と排ガス浄化触媒体5とを並べて配設し、両者の間隔をほとんどあけずに配置した例を示しているが、両者の間隔を十分に大きくすることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 炭化水素吸着体
2 多孔質担体
21 セル壁
22 セル
3 炭化水素吸着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノケイ酸塩のゼオライト結晶骨格を有する炭化水素吸着剤であって、
上記ゼオライト結晶骨格中のアルミニウムの少なくとも一部がホウ素で置換されており、かつ、上記ゼオライト結晶骨格におけるイオン交換サイトの少なくとも一部に、アルカリ金属イオンが存在していることを特徴とする炭化水素吸着剤。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素吸着剤において、上記ゼオライト結晶骨格中におけるSi/Bのモル比が10以上かつ50以下であることを特徴とする炭化水素吸着剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炭化水素吸着剤において、上記ゼオライト結晶骨格は、MFI型又はBEA型であることを特徴とする炭化水素吸着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭化水素吸着剤を多孔質担体に担持してなる炭化水素吸着体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111535(P2013−111535A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260426(P2011−260426)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】