説明

炭酸リチウムの製造方法

【課題】 塩化リチウムを含む水溶液、好ましくは塩湖から得られる鹹水から、炭酸リチウム及び高純度炭酸リチウムを低コストで製造する方法を提供するものである。
特にリチウム電池材料として使用可能な純度を持つ高純度の炭酸リチウムを製造する方法を提供するものである。
【解決手段】 その高純度の炭酸リチウムの製造方法は、塩化リチウムを含む水溶液にアンモニアと、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)とを混合して炭酸化反応を行った後、生成した固体を固液分離して回収し、回収した炭酸リチウムを高濃度の炭酸リチウム水溶液で洗浄することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、電子材料、光工業材料の原料として有用な炭酸リチウム、及び高純度炭酸リチウムの製造方法に関するものである。
より詳しくは、本発明は、塩化リチウムを含有する鹹水から、特にリチウム電池材料として使用可能な純度を持つ高純度の炭酸リチウムを製造するのに適した炭酸リチウムの製造方法、及びそれを精製回収する高純度炭酸リチウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸リチウムは、耐熱ガラス、光学ガラス等の配合剤、セラミック材料、携帯電話やノートパソコンのバッテリーに使用されているリチウム2次電池の原料、電解質の材料、半導体レーザー等に使用されるニオブ酸リチウム単結晶やタンタル酸リチウム単結晶等の原料等様々な用途に用いられている。
【0003】
その炭酸リチウムに求められている特性は多様であり、用途により異なる。例えば、炭酸リチウムが上記の電子材料や光工業材料として用いられる場合は、不純物が多いと電気特性や光特性が低下するため、不純物の少ない高純度なものであることが求められている。 また、リチウム2次電池の原料としては、純度97%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは純度99%、さらにより好ましくは99.5%以上のものが求められている。 加えて、用途によっては異種金属やその他の不純物含有量が数ppmレベル、更には1ppm以下の高純度な炭酸リチウムが求められこともある。
【0004】
その炭酸リチウムは、天然に存在するリチウム資源から製造されており、かかるリチウムが高濃度で大量に存在する資源としては、リチウム鉱床と大陸内塩湖における鹹水とがあるが、現状で大陸内塩湖の鹹水を用いて製造するのが大きな割合を占めている(非特許文献1及び2参照)。
また、その鹹水からの製造については、電気自動車の開発の進展と共に駆動力源としてリチウム電池が脚光を浴びており、その大量消費の供給源として改めてリチウム資源としての鹹水が注目されている(非特許文献1及び2参照)。
【0005】
その鹹水が得られる塩湖は、中国、アメリカ、チリ、アルゼンチン、ボリビア等の限定された地域であり、偏在している。
特に、チリ(アタカマ塩湖)、アルゼンチン(オンブレムエルト塩湖)、ボリビア(ウユニ塩湖)等のアンデス山脈地域の塩湖におけるリチウム埋蔵量は抜きん出ており(非特許文献1)、実際この地域における鹹水をリチウム原料として大量の炭酸リチウムが製造されている(非特許文献2参照)。
【0006】
それらアンデス山脈中の塩湖の鹹水中におけるリチウム(Li)濃度は0.05〜0.3%程度であり、これを6%程度まで天日で濃縮した後に前記した炭酸リチウム等の製造に利用している。その際には塩化リチウムの形態のものが炭酸リチウム等の製造に利用されている。
この鹹水中には、リチウム以外に、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等が高濃度で含有されており、高純度の炭酸リチウムを製造するには、これら成分を分離除去する必要があるが、従前の技術においても炭酸化反応前あるいは反応後に分離されている。
【0007】
その炭酸リチウムについては、前記したとおり高純度のものが求められており、時には不純物が1ppm以下のものが求められていることも前記したとおりである。
このような高純度の炭酸リチウムの製造方法としては、例えば、粗製炭酸リチウムと二酸化炭素とを反応させて得られる重炭酸リチウムを含有する水溶液を精密濾過した後、該重炭酸リチウムを含有する水溶液を加熱処理して炭酸リチウムを析出させる方法(特許文献1参照)、粗製炭酸リチウムと二酸化炭素とを反応させて得られる重炭酸リチウムを含有する水溶液をイオン交換モジュールで処理した後、該重炭酸リチウムを含有する水溶液を加熱処理して炭酸リチウムを析出させる方法(特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−252315号公報
【特許文献2】特表2002−505248号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】地質ニュース第670号 第22−26頁 「リチウム資源」
【非特許文献2】地質ニュース第670号 第49−52頁 「アタカマ塩湖におけるリチウムの採取と利用」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記したとおり塩湖周辺で炭酸リチウムを製造する際には、リチウム資源としての鹹水中の塩化リチウムと、炭酸化反応原料としての炭酸ナトリウムとが使用されている。
そのため、炭酸リチウムを製造するには、リチウム原料である塩化リチウムの使用量に見合う炭酸ナトリウムが必要となる。
【0011】
そのため、その製造を行うには、標高3000mを超える高地のアンデス山中に炭酸ナトリウムを搬送するか、逆に炭酸ナトリウム等の反応原料が入手し易い場所に濃縮鹹水を搬送することが必要となり、いずれにしても、それらの輸送コストが炭酸リチウムの製造コストに大きく影響することになる。
なお、逆に濃縮鹹水を搬送する場合には、炭酸ナトリウムを搬送する場合よりも、遙かに輸送量が多くなり、より一層高コスト化する。
【0012】
そこで、本発明者等は、前記問題を解消すべく、高純度炭酸リチウムの製造コスト低減の視点から製造工程を鋭意検討し、その結果開発に成功したのが本発明である。
すなわち、炭酸ナトリウムをアンデス山中の塩湖周辺に搬送することなく、可能な限り現地にある資源を利用し、かつ炭酸化工程で副製した物質を再利用することで、輸送コストを低減する製造方法の開発に努め、その結果、従来方法とは異なり、炭酸ガスと、アンモニアとを用いて炭酸化反応を行うことにより炭酸リチウムが製造できることを見出した。また、それに加えて、輸送費が低減でき、かつ簡単な洗浄操作で高純度化することができることをも見出し、前記問題を解消することができた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その炭酸リチウムの製造方法、及び高純度炭酸リチウムの製造方法は以下のとおりである。
すなわち、炭酸リチウムの製造方法は、塩化リチウムを含む水溶液にアンモニアと、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)とを混合して炭酸化反応を行った後、生成した固体を固液分離して回収することを特徴とするものである。
また、高純度炭酸リチウムの製造方法は、回収した炭酸リチウムを高濃度の炭酸リチウム水溶液で洗浄することを特徴とするものである。
【0014】
その炭酸化反応で使用する炭酸ガスは、世界中の各地に存在し、ありふれた資源である石灰石を焼成することにより製造でき、アンデス山中にも存在するので、それを焼成して製造し、これを利用するのが好ましい。
また、アンモニアについては、炭酸リチウム製造当初は、メーカーから購入したものを現地に搬送して使用することになるが、その後は副製反応により生成する塩化アンモニウムを石灰石焼成時に副製した生石灰又はそれを水和して得た消石灰と反応させることにより製造できるので、これを利用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、アンモニアと炭酸ガスと塩化リチウムとを反応させることにより、炭酸リチウムが生成し、これを固液分離するだけで炭酸リチウムを回収することができる。
また、回収した炭酸リチウムを高濃度の炭酸リチウム水溶液で洗浄することにより高純度の炭酸リチウムを回収することができる。すなわち、前記特許文献1又は2に記載するように粗製炭酸リチウムを更に重炭酸化反応を用いて高純度化することなく、リチウム2次電池の原料として使用可能な高純度の炭酸リチウムを製造することができる。
したがって、本発明は、簡便で優れた炭酸リチウムの製造方法及び高純度の炭酸リチウムの製造方法を提供することができる。
【0016】
そして、炭酸ガスは現地で産出する石灰石を焼成することにより製造できるので、高地への炭酸リチウム反応原料の搬送を回避できる。また、その焼成時に副製した生石灰又はそれを水和して得た消石灰を用いて炭酸化反応時に副製した塩化アンモニウムを分解することによりアンモニアを生成させることができ、これを再利用することによりアンモニアを現地に搬送することも回避することができるものである。
したがって、本発明は優れた作用効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明の炭酸リチウムの製造方法及び高純度炭酸リチウムの製造方法について更に詳細に説明する。
本発明の炭酸リチウムの製造方法は、前記したとおり塩化リチウムを含む水溶液にアンモニアと、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)とを混合して炭酸化反応を行った後、生成した固体を固液分離して回収することを特徴とするものであり、高純度炭酸リチウムの製造方法は前記回収した炭酸リチウムを高濃度の炭酸リチウム水溶液で洗浄することを特徴とするものである。
【0018】
本発明においては、炭酸リチウムの製造原料となる塩化リチウムを含む水溶液については、リチウムの濃度で2.0wt%〜飽和水溶液であるのがよく、好ましくは4.5wt%〜飽和水溶液、更に好ましくは5.5wt%〜飽和水溶液であるのがよい。かかる高濃度の塩化リチウムを含む水溶液は塩化リチウムを含有する塩湖の鹹水を濃縮することにより製造できる。このような鹹水が存在する塩湖として、アンデス山脈中に存在するアタカマ塩湖(チリ)、オンブレムエルト塩湖(アルゼンチン)、ウユニ塩湖(ボリビア)が例示できる。
【0019】
また、ここにおけるリチウムの濃度とは、いうまでもないことだが、リチウム元素としての濃度であって決して塩化リチウムとしての濃度ではない。
なお、塩化リチウムの飽和水溶液に関し、以下において若干言及する。
塩化リチウムの0℃における溶解度は、67g/100g(リチウムの濃度としては約6.3wt%)であるが、リチウムの飽和濃度は共存するイオンにより影響を受けるので、前記鹹水における塩化リチウム飽和水溶液の濃度について具体的数値により特定することは難しい。
【0020】
これらアンデス山脈中の塩湖の鹹水には、0.05〜0.3%のリチウムが含有されており、これを天日で濃縮することによりリチウム濃度で約6wt%の濃縮鹹水が得られるので、高濃度塩化リチウムを製造する鹹水として好ましいものであり、事実これらの鹹水は、前記したとおり高純度炭酸リチウム製造原料として、既に利用されている。
高濃度塩化リチウム水溶液を製造する鹹水としては、前記したアンデス山脈中の塩湖の鹹水に限定されるわけではなく、濃縮することにより前記した範囲の高濃度塩化リチウム水溶液が製造できるものであれば特に制限されることなく使用可能である。
【0021】
これら塩湖の鹹水中には、前記したとおり塩化リチウム以外に各種不純物が含まれており、ナトリウム、カリウム等はリチウムより遙かに高濃度で含有されている。
これらナトリウム及びカリウムは、濃縮過程で一部結晶化して析出し、リチウムに対する相対濃度は濃縮後は低下する。
この濃縮後に残留したナトリウム及びカリウムは、本発明では、炭酸化反応後の炭酸リチウム回収時の固液分離において分離され、更にそれに続く洗浄工程においてほぼ完全に分離除去できるので、純度99wt%以上の高純度炭酸リチウムを製造できる。
【0022】
なお、前記した塩湖の鹹水中には前記したナトリウム等のアルカリ金属以外にマグネシウム及びホウ素等も含有されているが、それらについては、前記固液分離工程及び洗浄工程において完全に分離することは困難であり、それらは従前の方法にしたがって炭酸化反応前に除去することができる。
したがって、それらは炭酸化反応前に分離除去するのが好ましいが、それに制限されることはなく、可能であれば炭酸化反応後でもよい。
これら成分の分離除去については、前記非特許文献2に詳細に記載されているので、本願明細書ではこれ以上言及することは省略する。
【0023】
炭酸化反応を行う際における、塩化リチウムを含む水溶液と、アンモニアと、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)との混合については、特に制限されるところはなく、それらを同時に混ぜ合わせてもよいが、塩化リチウムを含む水溶液中に、まずアンモニアを添加(導入)し、次いで炭酸ガスを添加するのが好ましい。
以上のとおりではあるものの、塩化リチウムを含む水溶液中へのアンモニアと、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)との添加は同時であってもよく、その際には炭酸化反応は塩基性下で行うのがよい。
【0024】
炭酸化反応に使用する炭酸ガスについては、前記したとおり石灰石を焼成することにより下記反応式(1)にしたがって製造することができる。その際には現地に焼成炉を設置し、焼成は常法にしたがい800℃〜1500℃で焼成するのがよい。焼成炉としては、ベッケンバッハ炉、メルツ炉あるいはロータリーキルン炉等が例示できるが、現地の周囲環境や製造規模によって選択される。なお、現地で炭酸ガスを製造するとは、炭酸化反応炉と焼成炉とが隣接するほど接近している必要はなく、焼成炉で発生した炭酸ガスを容器に充填することなく、炭酸化反応装置に管路で供給できる範囲内に両者とも存在する程度のことでよい。
CaCO3 → CaO + CO2 (1)
【0025】
そして、炭酸化反応に使用するアンモニアについては、その形態はアンモニアガス及びアンモニア水のいずれであっても良いが、炭酸リチウムを製造する炭酸化反応開始当初は、メーカーから購入したものを現地に搬送して使用することになる。
しかしながら、その後は、下記反応式(2)で示すように炭酸化反応において塩化アンモニウムが副製し、析出した炭酸リチウムは、液中に溶解している塩化アンモニウムとは濾過等の固液分離により分離できるので、これを用いてアンモニアを回収してリサイクル利用するのが好ましい。
2LiCl+2NH4OH+CO2 → Li2CO3+2NH4Cl+H2O (2)
【0026】
すなわち、石灰石焼成時に副製した生石灰、又は下記反応式(3)に示すようにこれを水和した消石灰を、副製した塩化アンモニウムと反応させることにより、アンモニアが下記反応式(4)に示すように製造でき、これをリサイクル利用するのが好ましい。
CaO + H2O → Ca(OH)2 (3)
2NH4Cl+Ca(OH)2 → CaCl2+2NH3+2H2O (4)
【0027】
本発明においては、このようにすることで、製造開始当初はともかく、定常製造工程に入った後は、アンデス山中から遠く離れた地に存在するメーカーから炭酸リチウムを製造する際の反応原料である、炭酸ガスと、アンモニアとを調達して、標高3000mを越える高地のアンデス山中に輸送することなく、炭酸リチウムを製造することができる。
その結果、本発明では、従前の炭酸リチウムの製造方法に比し、製造コストを大幅に低減することができる。
【0028】
すなわち、本発明では、現地に存在する石灰石を用いて炭酸化原料の炭酸ガスを製造でき、またその炭酸化反応時に副原料として必要となるアンモニアについては、炭酸化反応で副製する塩化アンモニウムと、炭酸ガス製造時に副製する生石灰又はそれを水和して得た消石灰とを用いて製造することができ、これをリサイクル利用することで、定常製造工程に入った後は、アンデス山中から遠く離れた地に存在するメーカーから反応原料を購入することなく、炭酸リチウムを製造することができる。
【0029】
そして、このようにして製造した炭酸リチウムは、高濃度の炭酸リチウム水溶液を用いて洗浄することにより高純度の炭酸リチウムを製造することができる。
この高濃度の炭酸リチウム水溶液は、高純度の炭酸リチウムを水に溶解したものが好ましいが、低純度の炭酸リチウムを用いてもよい。さらに、その高濃度炭酸リチウム水溶液の濃度は0.5%〜飽和溶液がよい。なお、炭酸リチウムの溶解度は、0℃において1.54g/100g(炭酸リチウム濃度として1.5wt%)である。
また、水については、河川水等の天然水を浄化したものが好ましいが、極端に純度が低くなければ、そのまま利用してもよい。
【0030】
本発明においては、製造開始当初の高濃度の炭酸リチウム水溶液は、メーカーで製造した炭酸リチウムを水に溶解したものを使用するが、その後は回収した炭酸リチウムを洗浄することにより高純度炭酸リチウムを得ることができる。
したがって、定常の製造段階になった際には、現地に存在する自然水等を用いて回収した精製炭酸リチウムを溶解することにより高濃度の炭酸リチウム水溶液を製造することができるので、それを使用するのが好ましい。
すなわち、このようにして製造した高濃度の炭酸リチウム水溶液を用いることで、メーカーで製造した炭酸リチウムを用いることなく、高純度炭酸リチウムが製造できるので、この点でも本発明は製造コストを低減させることができる。
【実施例1】
【0031】
以下において、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明はこの実施例によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
なお、この実施例では、塩化リチウム中に、塩化カリウム、塩化ナトリウムを含有せしめた模擬鹹水を調製し、それを用いて炭酸リチウム及び高純度炭酸リチウムを製造した。
【0032】
その模擬鹹水は、いずれも試薬1級の塩化リチウム、塩化カリウム及び塩化ナトリウムを用いて、リチウム(Li)0.1tw%、カリウム(K)1.5wt%、ナトリウム(Na)8.1wt%がそれぞれ含有されるように調製した。
この模擬鹹水を蒸発濃縮し、濃縮後濾過して、析出した固体を分離して、Liを6.0wt%含有する濃縮鹹水を得た。
なお、前記濃縮時には塩化カリウム及び塩化ナトリウムの一部が析出し、それが前記濾過により固液分離されるので、濃縮鹹水中のLiに対するそれら成分の相対濃度は低下しているが、それらの濃度の測定は省略した。
【0033】
得られた濃縮鹹水250mLに、Li:NH3のモル比が1:1となる量のアンモニアガスを溶解させ、その後管状炉で石灰石を焼成して得た炭酸ガスを1.0L/minの速度で75分(min)間導入した。
この導入操作終了後得られた析出物を減圧濾過にて回収し、X線回折装置にて分析したところ、沈殿物は炭酸リチウムであることが同定できた。
【0034】
この回収した炭酸リチウムに炭酸リチウム試薬1級品を溶解して作製した飽和水溶液250mLを通水させて洗浄し、洗浄後の炭酸リチウムのリチウム含有量をプラズマ発光分光分析装置を用いて測定した。その測定結果について、リチウムが全て炭酸リチウムとして含有されているとして炭酸リチウムの純度を算出したところ、純度は99.5wt%であった。その際における模擬鹹水中からのリチウムの回収率は78%であった。
【0035】
なお、炭酸リチウム回収後の反応濾液200mLを三角フラスコに入れ、そこに攪拌子及び前記生石灰を水和させて作製した消石灰60gを加えてホットスターラーで攪拌しながら60℃に加熱し観察した。
その結果、気体が発生し、その発生した気体をフェノールフタレン指示薬を添加したイオン交換水に導入したところ、すぐさま赤色を呈した。また、気体発生が収まった後、回収したイオン交換水をイオンクロマトグラフィーにて分析した結果、その気体がアンモニアであることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化リチウムを含む水溶液にアンモニアと、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)とを混合して炭酸化反応を行った後、生成した固体を固液分離して回収することを特徴とする炭酸リチウムの製造方法。
【請求項2】
塩化リチウムを含む水溶液が塩湖から得られる鹹水を濃縮したものである請求項1に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項3】
濃縮後の鹹水中のリチウム濃度は、2.0wt%から飽和水溶液である請求項2に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項4】
二酸化炭素ガスは、炭酸化反応を行う現地において石灰石を加熱分解して製造したものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項5】
アンモニアは、炭酸リチウム製造時に副製した塩化アンモニウムと、炭酸ガス製造時に副製した生石灰又はそれを水和して得られる消石灰とを反応させることにより製造したものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、回収した炭酸リチウムを高濃度の炭酸リチウム水溶液で洗浄することを特徴とする高純度炭酸リチウムの製造方法。

【公開番号】特開2012−116681(P2012−116681A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266077(P2010−266077)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【出願人】(000002129)住友商事株式会社 (42)