説明

点火装置

【課題】ケーシング1に出力金具3を取り付け、更に点火コイル4をケーシング内に挿入し、点火コイル4の出力端子41を出力金具3に電気的に連結する場合、従来は出力金具3と点火コイル4をそれぞれケーシング1にセットした後、ケーシング1の奥まった位置で出力金具3と出力端子41とを半田付けしていたが、きわめて作業性が悪く生産性を上げることができない
【解決手段】出力金具3に腕部34を延設し、その腕部34に十字状の開口を形成し、まず出力金具3をケーシング1に取り付けた状態で点火コイル4を図において上方から挿入すると、出力端子41が十字状の開口に突き刺さり、電気的に接続されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材からなる放電電極に高電圧の電力を供給する点火装置であって、特に高圧コードを用いることなく、放電電極に直接電力を供給する点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
点火装置に内蔵されている点火コイルの出力端子は針状である。一方、放電電極は線材で形成されており、高圧コードを用いずに両者を電気的に接続するためには両者を連結するための金具が必要である。
【0003】
このような金具として、例えばスリーブ状の金具を用いて放電電極の端部と点火コイルの出力端子とを接続するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、このような金具を点火装置のケーシングに固定し、同じくケーシング内に格納される点火コイルの出力端子と金具とを電気的に接続するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このように金具をケーシングに固定したものでは、ケーシング内に点火コイルを格納した後に、金具と点火コイルの出力端子とを、半田付け、溶接、カシメ等の作業を行って相互に接続している。
【特許文献1】特公平6−89886号公報(第2欄第10行から同第12行)
【特許文献2】特開2001−248838号公報(段落0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載のものでは、金具(出力金具に相当)と点火コイルの出力端子との接続個所がケーシングの奥まった場所に位置することになる(特許文献2の図1(B)参照)。そのため、半田付けや溶接、あるいはカシメといった接続作業がきわめてしづらいという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、出力金具と点火コイルの出力端子とを容易に接続することのできる点火装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明による点火装置は、針状の出力端子を有する点火コイルを収納するケーシングを備え、線材からなる放電電極の端部に弾性的に係合する出力金具を、このケーシングに形成した筒状部内に挿入し、点火コイルの出力端子を出力金具に電気的に接続した点火装置において、出力金具をケーシングの筒状部内に挿入した状態で点火コイルをケーシングに挿入することにより、点火コイルの出力端子が出力金具に電気的に接続される接続部を出力金具に設けたことを特徴とする。
【0009】
従来であればケーシングに出力金具と点火コイルとをセットした後で両者を接続する作業を更に行う必要があったが、上記構成では、出力端子をケーシングに取り付けた状態で点火コイルをケーシングに挿入するだけで、同時に出力金具と点火コイルの出力端子とを接続するすることができる。
【0010】
なお、上記接続部は、点火コイルの出力端子が出力金具に電気的に接続された状態で、出力金具の抜け止めとして機能させれば、別途の抜け止め構造を採用しなくても出力端子の脱落を防止することができる。
【0011】
例えば、上記接続部は、出力金具に形成した開口であって、この開口に内側に向かって突出する複数の突出部を設け、出力端子がこの開口に挿入されることにより突出部が変形して出力端子に密着するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、点火コイルをケーシングに挿入するだけで点火コイルの出力端子と出力金具とを電気的に接続することができるので、従来の点火装置の欠点であった煩雑な接続作業を行わなくてもよく、これにより生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明による点火装置のケーシングの一例である。このケーシング1には1対の筒状部11が形成されており、この筒状部11内には各々出力金具3が取り付けられている。
【0014】
一方、2は1対の放電電極であり、各放電電極2の端部には偏平な接続部21が形成されている。そしてこれら接続部21が筒状部11に挿入され、出力金具3と電気的に接続される。
【0015】
この出力金具3は、図2に示すように、接続部21の下面に広く接触するように1段盛り上げた接触部31が形成され、この接触部31に対向するように合計6個の爪32が設けられている。接続部21が接触部31と爪32との間に挿入されると、爪32が弾性的に上方に移動するように変形して、爪32が接続部21の上面を押し下げて接続21の下面が接触部31に押接する。これにより、接続部21と出力金具3とが確実に電気的に接続される。
【0016】
また、出力金具3の後方には1対の腕部34が形成されており、各腕部34の先端には十字形状の開口35が形成されている。
【0017】
図3を参照して、本図に示すケーシング1は図1で示したケーシング1を上下反転させたものである。最初にケーシング1の筒状部11に各々出力金具3を挿入する。その次に点火コイル4をケーシング1内に挿入する。点火コイル4の出力端子41は両端に各々1個ずつ設けられており、図示のように、出力端子41が下方に向く姿勢で点火コイルをケーシング1内に挿入する。
【0018】
図4に示すように、出力端子41の下方には腕部34の開口35が位置している。そのため、点火コイル4を図3及び図4に示す姿勢で下方に向かって挿入すると、開口35に出力端子41が突き刺さることになる。
【0019】
ケーシング1には腕部34が撓まないように2列の支え部13が形成されており、出力端子41は両支え部13の間の空間14に差し込まれる。このため、出力端子41は開口35に完全に突き刺さることができる。
【0020】
ところで、開口35には4個の突起35aが設けられており、開口35に出力端子41が突き刺さると、これら突起35aが出力端子41に食い込みながら変形して、図5に示すように出力端子41の側面に突起35aが一部食い込んで密着する。このように突起35aが出力端子41に密着することにより出力端子41と出力金具3とが確実に電気的に接続されることになる。なお、図5は図4に対して上下反転させた状態を示している。
【0021】
なお、このように開口35に出力端子41が突き刺さると出力金具3は筒状部11から抜け出ることはないが、仮に出力金具3に対して抜き方向の強い力が作用しても、出力端子41が空間14に差し込まれているので、出力端子41が変形することはない。
【0022】
ところで、1個の出力金具3に対して腕部34を1対設けたが、図4に示すとおり、出力端子41が差し込まれるのは一方の腕部34に形成した開口35のみである。このように1対の腕部34を設けたのは、左右の筒状部11に差し込む出力金具3を各々専用部品化せず、共通部品化して同一の出力金具3を両筒状部11に挿入すればよいようにするためである。
【0023】
図3に戻り、点火コイル4をケーシング1に挿入し、出力端子41と出力金具3との接続が完了すると、プリント配線板13でケーシング1の開口を蓋し、半田付け等をした後プリント配線板13の上面に樹脂を流し込んでケーシング1を密閉した。なお、12は外部からの電力供給を受けるための端子が内蔵された入力部である。
【0024】
ところで、上記実施の形態では、図4に示すように腕部34はケーシング1の内部に位置し、そのため出力端子41と腕部34とはケーシング1の内部で接合されるようにした。これに対して、図6に示すように、腕部34をケーシング1の外側に位置させておき、出力端子41がケーシング1を突き破って、ケーシング1の外側で出力端子41と腕部34とが接続されるようにしてもよい。
【0025】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】出力金具の詳細を示す図
【図3】出力金具と点火コイルとの取付状態を示す図
【図4】IV部分での出力金具と出力端子との接続直前を示す図
【図5】出力金具と出力端子との接続完了後を示す図
【図6】他の実施の形態におけるIV部分での出力金具と出力端子との接続直前を示す図
【符号の説明】
【0027】
1 (点火装置の)ケーシング
2 放電電極
3 出力金具
4 点火コイル
41 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状の出力端子を有する点火コイルを収納するケーシングを備え、線材からなる放電電極の端部に弾性的に係合する出力金具を、このケーシングに形成した筒状部内に挿入し、点火コイルの出力端子を出力金具に電気的に接続した点火装置において、出力金具をケーシングの筒状部内に挿入した状態で点火コイルをケーシングに挿入することにより、点火コイルの出力端子が出力金具に電気的に接続される接続部を出力金具に設けたことを特徴とする点火装置。
【請求項2】
上記接続部は、点火コイルの出力端子が出力金具に電気的に接続された状態で、出力金具の抜け止めとして機能することを特徴とする請求項1に記載の点火装置。
【請求項3】
上記接続部は、出力金具に形成した開口であって、この開口に内側に向かって突出する複数の突出部を設け、出力端子がこの開口に挿入されることにより突出部が変形して出力端子に密着することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−275388(P2006−275388A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94209(P2005−94209)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)
【Fターム(参考)】