説明

点火装置

【課題】プリント配線板2上に重量物である高圧コイル4を固定した点火装置1では、プリント配線板3をケーシング2内に収納する際、プリント配線板3をケーシング2に固定する。ところが、この構成では高圧コイル4が振動した際に、プリント配線板3と高圧コイル4とのハンダ付け部分に大きな応力が集中して作用するため、ハンダが割れたり、プリント配線板3の銅箔パターンが剥がれたりするおそれがある。
【解決手段】重量のある高圧コイル4を弾性爪片22によってケーシング2に直接固定することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナの点火に用いられる点火装置であって、火花放電に必要な高圧を発生させる高圧コイルを備えた点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記従来の点火装置は、低圧の電力を昇圧回路で高電圧の電力に変換して、点火プラグに供給するように構成されている。この昇圧回路は各種の電子部品と高圧コイルとから構成されており、これら電子部品と高圧コイルとはプリント配線板上に載置され、かつプリント配線板に対してハンダ付けされている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平6−89886号公報(図2,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記公報に記載のものではプリント配線板上に電子部品および高圧コイルが載置された構成のみが示されているが、ガス機器に組み込む際には樹脂製のケーシング内にこのプリント配線板を収納する場合がある。
【0004】
電子部品および高圧コイルがハンダ付けされたプリント配線板をケーシングに固定する場合には、プリント配線板にねじ止め用の貫通穴を設け、この貫通穴にねじを挿通してケーシングにねじを螺合させている。
【0005】
したがって、ケーシングに対してプリント配線板が固定され、その固定されたプリント配線板に対して電子部品および高圧コイルがハンダ付けされている構成になる。この構成で、ケーシングに振動が作用すると、電子部品および高圧コイルはその振動によって揺れることになる。
【0006】
電子部品は比較的小型で、かつ軽量であるため、例え振動してもプリント配線板に対してハンダ付けされており、特に問題は生じない。ところが、高圧コイルは他の電子部品取り大型で、かつ比較的重量が重いため、高圧コイルが揺れると、プリント配線板と高圧コイルの端子とのハンダ付け部分に大きな応力が集中して作用することになる。
【0007】
すると、高圧コイルの端子のハンダ付け部分に亀裂が生じ、あるいはそのハンダ付け部分の銅箔パターンがプリント配線板から剥離するという不具合が生じる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、高圧コイルのハンダ付け部分に不具合の生じない点火装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による点火装置は、高圧コイルがプリント配線板上に載置された状態で、このプリント配線板に対してハンダ付けされ、更にこのプリント配線板がケーシング内に収納された点火装置において、高圧コイルをケーシングに直接固定したことを特徴とする。
【0010】
本発明では、プリント配線板を介して高圧コイルをケーシングに固定するのではなく、高圧コイルをケーシングに直接固定するので、ケーシングに振動が作用し、高圧コイルが揺れても、高圧コイルとプリント配線板とのハンダ付け部分に大きな応力が集中して作用することがない。
【0011】
なお、プリント配線板を、高圧コイルを介してケーシングに固定してもよいが、上記プリント配線板は、高圧コイルとケーシングとの間に挟まれて、高圧コイルと共にケーシングに対して固定されるように構成してもよい。
【0012】
なお、プリント配線板の一旦近傍に高圧コイルをハンダ付けし、ケーシングの一端側に高圧コイルに係合する弾性爪片を形成すると共に、ケーシングの他端にプリント配線板の他端が挿入される係合部を形成し、プリント配線板の他端を係合部に挿入した状態で、その挿入部分を中心にプリント配線板を揺動させることにより、弾性爪片に高圧コイルを係合させて高圧コイルをケーシングに固定するように構成することにより、固定用のねじを用いることなくケーシングに高圧コイルを固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、高圧コイルとプリント配線板とのハンダ付け部分に大きな応力が集中して作用しないので、そのハンダ付け部分に亀裂が生じたり、銅箔パターンがプリント配線板から剥離するといった不具合の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照して、1は本発明による点火装置である。この点火装置1は樹脂を射出成型したケーシング2を備えている。そして、このケーシング2内にプリント配線板3が収納されている。このプリント配線板3上には高圧コイル4が固定されている。なお、プリント配線板3上には高圧コイル4の他にコンデンサや抵抗といった他の比較的軽量な電子部品もハンダ付けにより固定されているが、理解を容易にするため図示を省略した。
【0015】
図2を参照して、プリント配線板3に予め他の電子部品と共に高圧コイル4をハンダ付けする。高圧コイル4は樹脂製のカバー41が設けられており、このカバー41の内部にボビンに電線が巻回されたコイル部(図示せず)が収納されている。そしてコイル部をカバー41内に収納した状態で樹脂を充填して、コイル部がカバー41から脱落しないように構成されている。
【0016】
ボビンからは複数の針状の端子が突出しており、それら端子がプリント配線板に形成した貫通穴に挿通され、プリント配線板の裏面側でハンダ付けされる。このカバー41の両側部には1対の腕部42aと、両腕部42aの先端を連結する係合片42bとが設けられている。そして、両腕部42aと係合片42bとで囲まれた空間42cが形成されている。
【0017】
高圧コイル4はプリント配線板2の中央から一端側に偏位して固定されている。そして、プリント配線板3の他端3aが挿入されるスリット状の係合部21がケーシング2の他端側に設けられている。
【0018】
高圧コイル4および他の電子部品が固定されたプリント配線板3を斜めにして、他端3aをこのスリット状の係合部21に挿入する。次に、プリント配線板3の他端3aと係合部21との係合部分を中心にして、傾いているプリント配線板3の姿勢を元に戻す。すなわち、プリント配線板3の一端側を下げる操作をする。このプリント配線板3の一端側には高圧コイル4が固定されており、プリント配線板3の他端を下げることによって高圧コイル4をケーシング2に対して下ろしていく。
【0019】
ケーシング2には一端側に左右1対の弾性爪片22が立設されており、高圧コイル4が下ろされると、各弾性爪片22の先端がカバー41の空間42c内に挿入される。図3を合わせて参照して、弾性爪片22の上端部の各外側には突起部22aが形成されており、高圧コイル4が下りてきて弾性爪片22の上端が空間42c内に挿入された状態から、更に高圧コイル4を押し下げると、弾性爪片22は一旦内側へ弾性変形した後に、突起部22aが係合片42bの上面に係合する。なお、弾性爪片22の内側にはプリント配線板3を下方から押し上げるバネ部23を各々形成した。
【0020】
このように構成したので、高圧コイル4のカバー41はケーシング2の一部である弾性爪片22に直接係合して固定される。このため、例えばケーシング2に振動が作用し、高圧コイル4が揺れることがあっても、揺れによって生じた応力はほとんど弾性爪片22に作用し、プリント配線板3とのハンダ付け部分には作用しない。なお、本実施の形態では、高圧コイル4をケーシング2に直接保持させると共に、プリント配線板3をケーシング2と高圧コイル4との間に挟んで固定したので、ケーシング2に対してプリント配線板3が同時に保持されることになり、高圧コイル4とプリント配線板3とのハンダ付け部分に作用する応力が更に低減される。
【0021】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】点火装置の分解斜視図
【図3】高圧コイルとケーシングの形状状態を示す断面図
【符号の説明】
【0023】
1 点火装置
2 ケーシング
3 プリント配線板
4 高圧コイル
22 弾性爪片
41 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧コイルがプリント配線板上に載置された状態で、このプリント配線板に対してハンダ付けされ、更にこのプリント配線板がケーシング内に収納された点火装置において、高圧コイルをケーシングに直接固定したことを特徴とする点火装置。
【請求項2】
上記プリント配線板は、高圧コイルとケーシングとの間に挟まれて、高圧コイルと共にケーシングに対して固定されたことを特徴とする請求項1に記載の点火装置。
【請求項3】
プリント配線板の一旦近傍に高圧コイルをハンダ付けし、ケーシングの一端側に高圧コイルに係合する弾性爪片を形成すると共に、ケーシングの他端にプリント配線板の他端が挿入される係合部を形成し、プリント配線板の他端を係合部に挿入した状態で、その挿入部分を中心にプリント配線板を揺動させることにより、弾性爪片に高圧コイルを係合させて高圧コイルをケーシングに固定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−17007(P2007−17007A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195659(P2005−195659)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)