説明

焙煎ゴマ加工品、その製造方法、ゴマ含有液状調味料

【課題】ゴマドレッシングやゴマだれ等のゴマ含有液状調味料へ配合した場合に、ゴマ含有液状調味料の保存中に焙煎ゴマ風味の散逸が大きく抑制され、しかもゴマ含有液状調味料に滑らかな口当たりを付与できる焙煎ゴマ加工品を提供する。
【解決手段】焙煎ゴマ細片化処理物を含有する焙煎ゴマ加工品の当該焙煎ゴマ細片化処理物の20〜100質量%は、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級されるものであり、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級された焙煎ゴマ細片化処理物の30〜100質量%は、長径/短径の比が1〜1.2の範囲のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴマドレッシングやゴマだれ等のゴマ含有液状調味料への配合に適した焙煎ゴマ加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴマドレッシングやゴマだれ等のゴマ含有乳化型あるいはセパレート型液状調味料を調製する場合、ゴマの風味を際立たせるために、ゴマ種子(以下、単にゴマと称する)を焙煎し、得られた焙煎ゴマをすり鉢、石臼、フードプロセッサ等により粉末状もしくはペースト状に加工したもの(スリゴマ、ゴマペースト)を、残りのゴマドレッシング材料やゴマだれ材料と混合することが広く行われている。
【0003】
ところが、焙煎ゴマペーストを使用した場合、焙煎ゴマをペースト状に加工する際、ゴマの細胞組織を著しく破壊するため、ペースト化処理中に焙煎ゴマの風味成分が失われ易く、最終製品のゴマ含有液状調味料の焙煎ゴマ風味が際立たないという問題があった。また、焙煎スリゴマを使用した場合、固いゴマを破砕するため焙煎ゴマの破砕面に固く鋭い突起が形成され易く、最終製品のゴマ含有液状調味料を喫食したときに、滑らかな口当たり感が得難いという問題があった。
【0004】
ところで、良好な焙煎ゴマ風味と乳化安定性とを有するゴマ含有液状調味料の製造方法として、ホールの焙煎ゴマと油相成分と水相成分とを同時に混合して乳化する際、乳化と同時に焙煎ゴマも目開き1000μm(約16タイラーメッシュ)パス〜200μm(約65タイラーメッシュ)オンの大きさに粉砕化するという方法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば、焙煎ゴマの親油性の風味成分が油相に溶解するので、最終製品のゴマ含有液状調味料に焙煎ゴマの好ましい風味付けが可能となり、しかも、所定の大きさに微粉砕しているので、ゴマ含有液状調味料の口当たりの滑らかさの改善も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−304828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、最終製品のゴマ含有液状調味料に対し、好ましい焙煎ゴマ風味をある程度付与できたものの、口当たりの滑らかさの改善については十分とは言えず、更なる改善が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、ゴマドレッシングやゴマだれ等のゴマ含有液状調味料へ配合した場合に、ゴマ含有液状調味料に焙煎ゴマの優れた風味を付与することができ、しかもゴマ含有液状調味料に滑らかな口当たりを付与できる焙煎ゴマ加工品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ゴマ含有液状調味料の焙煎ゴマ風味と口当たりとが焙煎ゴマ粉砕物あるいは細片化処理物の大きさと形状とに大きく依存しているのではないかとの仮定の下、焙煎ゴマ粉砕物あるいは細片化処理物のタイラーメッシュによる分級サイズと、焙煎ゴマ細片化処理物の長径と短径との比に着目したところ、特定範囲のタイラーメッシュ分級サイズのものを一定量以上含むと焙煎ゴマ風味が感じられ易くなるということ、また、その特定粒度の焙煎ゴマ細片化処理物の形状が球体に近くなるような比(即ち、長径/短径→1)に近づくに連れ、口当たりが滑らかになる傾向があることを見出した。
【0009】
また、本発明者らは、そのような大きさ、形状の焙煎ゴマ細片化処理物を調製するには、焙煎ゴマの種皮、胚乳が固い状態で細片化するよりも、焙煎ゴマを水性媒体に浸漬して十分に膨潤させ、種皮、胚乳とも浸漬前よりも比較的柔軟な状態とした後に細片化処理を施すことにより可能になることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、焙煎ゴマ細片化処理物を含有する焙煎ゴマ加工品であって、
焙煎ゴマ細片化処理物の20〜100質量%は、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級されるものであり、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級された焙煎ゴマ細片化処理物の30〜100質量%は、長径/短径の比が1〜1.2の範囲のものであることを特徴とする焙煎ゴマ加工品を提供する。ここで、“20タイラーメッシュパス”とは、Tyler規格の20メッシュの篩(目開き0.8mm)にかけたときに通過するという意味であり、“32タイラーメッシュオン”とは、Tyler規格の32メッシュの篩(目開き0.5mm)にかけたときに通過しないで捕集されるという意味である。
【0011】
また、本発明は、上述の焙煎ゴマ加工品の製造方法であって、焙煎ゴマを水性媒体中に浸漬して膨潤させ、膨潤した焙煎ゴマを細片化処理する製造方法を提供する。
【0012】
更に、本発明は、上述の焙煎ゴマ加工品を含有する液状食品を提供する。
【0013】
加えて、本発明は、ゴマを含有するゴマ含有液状調味料であって、
ゴマが、上述の焙煎ゴマ加工品であり、
ゴマ含有液状調味料は、該焙煎ゴマ加工品を、焙煎ゴマ細片化処理物のゴマ含有液状調味料中の含有量が1〜40質量%となるような量で含有し、
20℃でBH形粘度計で測定した粘度が0.1〜5Pa.sであるゴマ含有液状調味料を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の焙煎ゴマ加工品は、焙煎ゴマ細片化処理物を含有するものであるが、その焙煎ゴマ細片化処理物の20〜100質量%は20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級されるものであり、しかもそのように分級された焙煎ゴマ細片化処理物の30〜100質量%は長径/短径の比が1〜1.2の範囲のものである。このため、本発明の焙煎ゴマ加工品を、ゴマドレッシングやゴマだれ等のゴマ含有液状調味料へ配合した場合には、ゴマ含有液状調味料に焙煎ゴマの優れた風味を付与することができ、しかもゴマ含有液状調味料に滑らかな口当たりを付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の焙煎ゴマ加工品について説明する。
【0016】
本発明の焙煎ゴマ加工品は、主原料である焙煎ゴマを細片化した焙煎ゴマ細片化処理物を含有する。焙煎ゴマ細片化処理物の焙煎ゴマ加工品中の含有量は、少なすぎると焙煎ゴマ風味立ちが十分に得られ難い傾向があるので、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは70質量%以上である。
【0017】
なお、本発明の焙煎ゴマ加工品は、焙煎ゴマ細片化処理物の外に、発明の効果を損なわない範囲で、食塩、砂糖等を含有することができる。
【0018】
本発明の焙煎ゴマ加工品を主として構成する焙煎ゴマ細片化処理物とは、焙煎したゴマを、公知の細片化処理法により細片化処理したものである。ここで、焙煎の対象となるゴマとしては、通常の焙煎ゴマに使用される白ゴマ、金ゴマ、黒ゴマ、茶ゴマ等が挙げられ、これらは、焙煎により好ましい風味を醸し出す外種皮付きのままのものが好ましく、中でも外種皮付きの白ゴマ、金ゴマが好ましい。
【0019】
このようなゴマの焙煎手法としては、従来のゴマの焙煎手法を採用することができ、直火焙煎装置、遠赤外線焙煎装置、熱風焙煎装置等を使用することができる。焙煎の条件は、焙煎対象のゴマの種類や状態、所期の焙煎香や色等に応じて、焙煎温度や焙煎時間を選択することができる。
【0020】
細片化処理方法としては、包丁による切断、すり鉢、フードカッター、石臼、コロイドミル、マイルダー等の公知の装置を採用することができる。細片化処理条件は、細片化処理対象のゴマの種類や状態、細片化処理物の所期の大きさや形状等に応じて、決定することができる。
【0021】
本発明の焙煎ゴマ加工品を主として構成する焙煎ゴマ細片化処理物は、その20〜100質量%が20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級される大きさのものである。ここで、20タイラーメッシュパス”は、焙煎ゴマ風味立ちが劣る比較的大きな焙煎ゴマ細片化処理物を排除する意義を有するものであるが、大きさの上方(大きさの大きい方)のボーダーとして20タイラーメッシュを採用した理由は、その焙煎ゴマの風味立ちが劣る比較的大きな焙煎ゴマ細片化処理物の中で略ホール状の焙煎ゴマ細片化処理物を排除することができるからである。また、“32タイラーメッシュオン”は、焙煎ゴマ風味が散逸し易い比較的小さな焙煎ゴマ細片化処理物を排除する意義を有するが、大きさの下方(大きさの小さい方)のボーダーとして32タイラーメッシュを採用した理由は、焙煎ゴマ風味が散逸し易い比較的小さな焙煎ゴマ細片化処理物を排除することができるからである。
【0022】
また、本発明の焙煎ゴマ加工品に使用される焙煎ゴマ細片化処理物は、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級される大きさのものを20〜100質量%、好ましくは25〜100質量%、より好ましくは25〜90質量%の割合で含有する。これは、20質量%未満であると焙煎ゴマの風味立ちに優れ、しかも滑らかな口当たりの焙煎ゴマ加工品が得られ難くなるからである。一方、90質量%を超えると、細片化された焙煎ゴマ細片化処理物の正確な選別に製造上工数が困難である場合があるからである。
【0023】
更に、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級される大きさの焙煎ゴマ細片化処理物の30〜100質量%、好ましくは35〜100質量%、より好ましくは40〜100質量%は、長径/短径の比が1〜1.2の範囲のものである。この比を1〜1.2とした理由は、この範囲を外れると焙煎ゴマ含有液状食品や調味料に滑らかな口当たりを付与することが困難になるからである。
【0024】
焙煎ゴマ細片化処理物を、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級することに関し、焙煎ゴマの細片化がドライの状態で行われた場合、あるいは細片化が水性媒体中で行われた後、水性媒体中から分離して遠心分離で脱水し、その後減圧加熱乾燥法(「食品衛生検査指針」厚生労働省監修、社団法人
日本食品衛生協会、2005年3月31日発行)により乾燥した場合、市販の振動粉末ふるい機を使用して分級することができる。分級して得られた焙煎ゴマ細片化処理物の質量を、分級前の焙煎ゴマ細片化処理物の全質量で除すれば、本発明の焙煎ゴマ加工品に使用される焙煎ゴマ細片化処理物中の20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級された焙煎ゴマ細片化処理物の割合(質量%)を算出することができる。
【0025】
あるいは、細片化がドライ又はウェットの状態で行われたか否かに関わらず、焙煎ゴマ細片化処理物を水性媒体中(好ましくは清水)に1〜30質量%となる割合で分散させ、得られた分散液を20テイラーメッシュの篩にかけ、20テイラーメッシュの篩を通過した分散液を捕集し、捕集した分散液を32テイラーメッシュの篩にかけることにより分級することができる。32テイラーメッシュの篩上に濾し取られた採収物は、必要に応じて遠心分離方で脱水し、更に前記減圧加熱乾燥することにより紛状にすることができる。このようにして得られた粉状の焙煎ゴマ細片化処理物の質量を、分級前の焙煎ゴマ細片化処理物の全質量で除すれば、本発明の焙煎ゴマ加工品に使用される焙煎ゴマ細片化処理物中の20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級された焙煎ゴマ細片化処理物の割合(質量%)を算出することができる。
【0026】
また、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級された大きさの焙煎ゴマ細片化処理物の“長径/短径の比”は、分級されたものの中から、光学顕微鏡観察下でランダムに100個の細片を採取し、それぞれの長径と短径とを測定して比を算出することができる。そして、計測した100個の合計質量に対する、長径/短径の比が1〜1.2の細片の合計質量の割合(質量%)を算出することができる。
【0027】
以上説明した本発明の焙煎ゴマ加工品を構成する焙煎ゴマ細片化処理物は、20〜100質量%が20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級され且つ20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級されたものの30〜100質量%が1〜1.2の長径/短径の比を有するものが得られる限り、様々な手法で調製することができる。例えば、任意の手法により細片化され、様々な大きさ、形状のものを含有する焙煎ゴマ細片化処理物の中から、本発明が規定する大きさ・形状・含有量の条件を満たすように選別してもよい。また、好ましい手法として、少なくとも焙煎ゴマを水性媒体中に浸漬して膨潤させ、膨潤した焙煎ゴマを細片化処理することにより、具体的には、膨潤した焙煎ゴマを水性媒体中で又は水性媒体中から引き上げて細片化処理することが挙げられる。ここで、好ましい水性媒体としては清水を挙げることができる。この清水は、食塩、食酢、醤油、アルコール等を含有していてもよい。焙煎ゴマに対する水性媒体の量としては、少なすぎると十分に水を吸収させ難く、多すぎてもスペースをとるので、焙煎ゴマ100質量部に対し、水性媒体(好ましくは清水)を好ましくは30〜100000質量部、より好ましくは50〜50000質量部である。
【0028】
焙煎ゴマの膨潤の程度は、小さすぎると細片化処理により特定形状に調整し難い傾向があり、一方、一定量以上は膨潤が進まないので、増加率が好ましくは110〜300質量%、より好ましくは110〜200質量%となる程度である。
【0029】
細片化処理の方法としては、前述したように、公知の細片化処理法を採用することができ、例えば、包丁による切断、すり鉢、フードカッター、石臼、コロイドミル、マイルダー等の公知の装置を用いて、ゴマの種類や状態、細片化処理物の初期の大きさや形状等に応じて、細片化処理条件を適宜決定して行うことができる。具体的には、水性媒体中に浸漬されて膨潤した焙煎ゴマが、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級される大きさであって、長径/短径の比が1〜1.2となる形状のものが得られる程度に、細片化条件を調整する。特に、長径/短径の比を1〜1.2に調整する観点から、包丁による切断、すり鉢による破砕等のように手作業に近い条件で大きさ・形状を確認しながら細片化処理することが好ましい。
【0030】
本発明の焙煎ゴマ加工品は、中華スープなどのスープ類、クリームソース、ウスターソースなどのソース類、ドレッシングなどの酸性液状食品、調味酢、だし液、漬け液などの調味液等の液状食品に焙煎ゴマ風味を付与するために好ましく配合することができ、必要に応じ、野菜、畜肉等の他の具材を同時に配合してもよい。
【0031】
焙煎ゴマ加工品の液状食品中の配合量は、液状食品の種類等により異なるが、少なすぎると焙煎ゴマの風味立ちが弱くなる傾向があり、多すぎると液状食品全体の食味のバランスを損なう傾向があるので、焙煎ゴマ加工品を構成する焙煎ゴマ細片化処理物の液状食品中の含有量が好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%となる量である。
【0032】
また、本発明の液状食品の粘度は、焙煎ゴマ細片化処理物の滑らかな口当たりを損なわないようにするために、品温20℃でBH形粘度計での測定で10Pa・s以下であることが好ましい。粘度の調整は、増粘材の種類や配合量を変化させることで行うことができる。
【0033】
なお、粘度の測定のタイミングとしては、回転数10rpmで測定開始後2回完了した時点で測定することが好ましい。ここで、使用するローターは、BH形粘度計推奨のものを使用すればよく、具体的には、粘度が0.8Pa・s未満である場合にはローターNo.1、粘度が0.8Pa・s以上3.2Pa・s未満の場合にはローターNo.2、粘度が3.2Pa・s以上の場合にはローターNo.3を使用する。
【0034】
本発明の液状食品の好ましい態様として、ゴマを含有するゴマ含有液状調味料あって、ゴマが、前述の本発明の焙煎ゴマ加工品であるゴマ含有液状調味料(ゴマドレッシング、焼き肉用ゴマだれ等)が挙げられる。このゴマ含有液状調味料は、焙煎ゴマ加工品を、焙煎ゴマ細片化処理物のゴマ含有液状調味料中の含有量が1〜40質量%、好ましくは1〜30質量%となるような量で含有し、しかも20℃でBH形粘度計で測定した粘度が0.1〜5Pa.sであることが好ましい。また、このゴマ含有液状調味料は、大変滑らかな口当たりを実現するために、乳化型酸性調味料であることが好ましい。なお、このようなゴマ含有液状調味料は、増粘材、油脂、酸材等を含有することができる。
【0035】
増粘材としては、公知の食用増粘材、例えば、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、サイリュームシードガム、澱粉、ペクチン等の中から一種以上を適宜選択して使用することができる。中でも、焙煎ゴマ風味を損ない難いグアーガム、キサンタンガム、タマリンリンゴシードガム等を好ましく使用することができる。
【0036】
これらの増粘材のゴマ含有液状調味料中の配合量は、通常0.01〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。
【0037】
油脂としては、公知の食用油脂、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油、綿実油、米油、パーム油、オリーブ油、落花生油、牛脂、豚脂、魚油等の動植物油、これらの精製油、中鎖脂肪酸トリグリセライド、エステル交換油等を挙げることができる。
【0038】
これらの油脂のゴマ含有液状調味料中の配合量は、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
【0039】
乳化材としては、卵黄、乳蛋白、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニル酸化澱粉等が挙げられる。中でも、風味の点から卵黄を好ましく使用することができる。ここで、卵黄としては、生卵黄、殺菌処理卵黄、冷凍卵黄、乾燥卵黄、ホスホリパーゼ処理卵黄、プロテアーゼ処理卵黄、酵母脱糖卵黄、グルコースオキシダーゼ脱糖卵黄、脱コレステロール処理(超臨界二酸化炭素処理、亜臨界二酸化炭素処理)卵黄等が挙げられる。なお、卵黄には、卵白が混入していてもよい。
【0040】
このような卵黄のゴマ含有液状調味料中の含有量は、少なすぎると安定な乳化系が得られにくく、多過ぎると焙煎ゴマ風味が損なわれるので、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜3質量%である。
【0041】
酸材としては、食酢、クエン酸等の有機酸、レモンやゆずなどの柑橘果汁等が挙げられる。
【0042】
本発明の液状食品、ゴマ含有液状調味料には、一般の液状調味料に配合されている添加剤を適宜含有することができる。例えば、澱粉分解物、デキストリン、エタノール、オリゴ糖、糖アルコール等の糖類、グルタミン酸ナトリウム、食塩、醤油、砂糖、各種植物エキス等の調味料、芥子、胡椒などの香辛料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤、のり、ナッツなどを必要に応じて含有させることができる。
【0043】
なお、本発明の液状食品、ゴマ含有液状調味料は、本発明の焙煎ゴマ細片化処理物を他の液状成分と混合することにより調製することができる。また、他の液状成分の内、水相成分に焙煎ゴマを混合し、得られた混合物中で水相成分で膨潤させた後、細片化処理し、更に油相成分を混合することでも調製することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0045】
実施例1
焙煎ゴマ(外種皮付の焙煎金ゴマ)を2質量倍の清水に浸漬し、24時間吸水させた後、吸水させた焙煎ゴマを清水から取り出し、焙煎ゴマ粒子をすり鉢で細片化することにより焙煎ゴマ加工品(焙煎ゴマ細片化処理物の含有量=100質量%)を得た。
【0046】
実施例2
焙煎ゴマ(外種皮付の焙煎金ゴマ)をミルで粉砕することにより荒すりゴマを得た。実施例1で得られた焙煎ゴマ細片化処理物95質量部とこの荒すりゴマ5質量部とを混合することにより焙煎ゴマ加工品(焙煎ゴマ細片化処理物の含有量=100質量%)を得た。
【0047】
実施例3
実施例1で得られた焙煎ゴマ細片化処理物と荒すりゴマの使用量をそれぞれ90質量部と10質量部に変えた以外は、実施例2を繰り返すことにより焙煎ゴマ加工品(焙煎ゴマ細片化処理物の含有量=100質量%)を得た。
【0048】
実施例4
実施例1で得られた焙煎ゴマ細片化処理物と荒すりゴマの使用量をそれぞれ80質量部と20質量部に変えた以外は、実施例2を繰り返すことにより焙煎ゴマ加工品(焙煎ゴマ細片化処理物の含有量=100質量%)を得た。
【0049】
実施例5
実施例1で得られた焙煎ゴマ細片化処理物と荒すりゴマの使用量をそれぞれ70質量部と30質量部に変えた以外は、実施例2を繰り返すことにより焙煎ゴマ加工品(焙煎ゴマ細片化処理物の含有量=100質量%)を得た。
【0050】
実施例6
焙煎ゴマ(外種皮付の焙煎金ゴマの粉砕物)を5質量倍の清水に浸漬し、20時間吸水させた後、家庭用ミキサーに得られた焙煎ゴマ分散液を投入し、1分間強撹拌しながら焙煎ゴマを細片化した。得られた焙煎ゴマ細片化処理物を減圧乾燥した後、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級した。更に、焙煎ゴマの粒子のうち長径/短径の比が1〜1.2の範囲のもの選別して焙煎ゴマ加工品(焙煎ゴマ細片化処理物の含有量=100質量%)を得た。
【0051】
実施例7
実施例6と同様にして、焙煎ゴマ(外種皮付の焙煎金ゴマの粉砕物)を5質量倍の清水に浸漬し、20時間吸水させた後、家庭用ミキサーに得られた焙煎ゴマ分散液を投入し、1分間強撹拌しながら焙煎ゴマを細片化した。得られた焙煎ゴマ細片化処理物を減圧乾燥した後、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級した。続いて、焙煎ゴマの粒子のうち長径/短径の比が1〜1.2の範囲のもの選別した。更に、選別した20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンの細片化処理物80質量%に、分級時の20タイラーメッシュオンの細片化処理物20質量%を加えて混合することにより、焙煎ゴマ加工品(焙煎ゴマ細片化処理物の含有量=100質量%)を得た。
【0052】
比較例1
実施例2と同様にして荒すりゴマを得、この荒すりゴマを焙煎ゴマ加工品とした。この荒すりゴマの調製に使用した焙煎ゴマは全く吸水処理されていないものであった。
【0053】
比較例2
実施例7と同様にして、焙煎ゴマ(外種皮付の焙煎金ゴマの粉砕物)を5質量倍の清水に浸漬し、20時間吸水させた後、家庭用ミキサーに得られた焙煎ゴマ分散液を投入し、1分間強撹拌しながら焙煎ゴマを細片化処理して焙煎ゴマ加工品を得た。
【0054】
試験例1
実施例1〜7、比較例1〜2の焙煎ゴマ加工品を用い、以下に説明するように容器入りゴマだれを調整した。得られた9種類の容器入りゴマだれについて、20℃で1週間保存した後、開封し、内容物であるゴマだれの“焙煎ゴマ風味”と“口当たり”とを、専門パネラーにより以下に説明するように評価した。得られた結果を表1に示す。
【0055】
<ゴマだれの調製>
焙煎ゴマ加工品10質量部、砂糖5質量部、醤油1質量部、マヨネーズ3質量部、澱粉1質量部及び清水80質量部とをボールに投入し、スプーンで混合することによりゴマだれを調製した。このゴマだれを、蓋付きポリエチレンテレフタレート製容器に250mL容量ずつ充填して密栓し、容器入りゴマだれを製造した。粘度はいずれも0.1〜5Pa.sであった。
【0056】
ゴマだれの“焙煎ゴマ風味”については、A(大変良好)、B(良好)及びC(悪い)の三段階で評価した。また、ゴマだれの“口当たり”については、A(大変滑らか)、B(普通に滑らか)、及びC(ざらつく)の三段階で評価した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1からわかるように、実施例1〜7の焙煎ゴマ加工品を使用したゴマだれの“焙煎ゴマ風味”評価及び“口当たり”評価の結果は、実施例5の焙煎ゴマ加工品を使用したゴマだれの口当たり評価が、実用上問題のないものの、B評価であったことを除き、いずれもA評価であった。なお、実施例5の焙煎ゴマ加工品を使用したゴマだれの口当たり評価がB評価であった理由は、長径/短径の比が1-1.2である焙煎ゴマ細片化処理物の割合が下限の30質量%に近かったためであると考えられる。
【0059】
それに対し、20テイラーメッシュパス32テイラーメッシュオンの焙煎ゴマ細片化処理物中の長径/短径の比が1〜1.2である焙煎ゴマ細片化処理物の割合が30質量%を大きく下回った比較例1及び2の場合、 “口当たり”評価の結果はいずれもC評価であった。
【0060】
実施例8
表2の配合割合に従って、撹拌タンクに、醤油、食酢、砂糖、生卵黄、グアーガム、キサンタンガム及び清水を投入して均一に混合することにより水相を調製した。続いて、ミキサーに、得られた水相を投入し、撹拌しながら油相であるサラダ油を注加して乳化処理した後、焙煎ゴマ加工品を2回に分けて更に混合することにより、ゴマ含有酸性乳化液状調味料を調製した。得られたゴマ含有酸性乳化液状調味料を、蓋付きポリエチレンテレフタレート製容器に250mL容量ずつ充填して密栓し、容器入りゴマ含有酸性乳化液状調味料(粘度0.6Pa・s)を製造した。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例9
表3の配合割合に従って、撹拌タンクに醤油、食酢、砂糖、卵黄、グアーガム、キサンタンガム、焙煎ゴマ加工品及び清水を投入して均一に混合することにより水相を調製した。続いて、得られた水相をミキサーに投入し、撹拌しながら油相であるサラダ油を注加して乳化処理することにより、ゴマ含有酸性乳化液状調味料を調製した。得られたゴマ含有酸性乳化液状調味料を蓋付きポリエチレンテレフタレート容器に250mL容量ずつ充填して密栓し、容器入りゴマ含有酸性乳化液状調味料(粘度0.8Pa・s)を製造した。
【0063】
【表3】

【0064】
実施例10
実施例8において、焙煎ゴマ加工品として実施例3の焙煎ゴマ加工品を用いた以外は、実施例8と同様に容器詰めゴマ含有酸性乳化液状調味料を製造した。
【0065】
実施例11
実施例8において、焙煎ゴマ加工品として実施例4の焙煎ゴマ加工品を用いた以外は、実施例8と同様に容器詰めゴマ含有酸性乳化液状調味料を製造した。
【0066】
実施例12
実施例8において、焙煎ゴマ加工品として実施例6の焙煎ゴマ加工品を用いた以外は、実施例8と同様に容器詰めゴマ含有酸性乳化液状調味料を製造した。
【0067】
試験例2
実施例8〜12で得られた容器詰めゴマ含有酸性乳化液状調味料を室温で2週間保存した後、開封し、内容物である調味料の焙煎ゴマ風味を評価したところ、いずれのゴマ含有酸性乳化液状調味料も焙煎ゴマ風味を強く感じられるものであり、また、いずれも口当たりはなめらかであった。即ち、“焙煎ゴマ風味”評価がA評価であり、“口当たり”評価もA評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の焙煎ゴマ加工品を、ゴマドレッシングやゴマだれ等のゴマ含有液状調味料へ配合した場合には、ゴマ含有液状調味料に焙煎ゴマの優れた風味を付与することができ、しかもゴマ含有液状調味料に滑らかな口当たりを付与できる。従って、本発明の焙煎ゴマ加工品は、ゴマドレッシングやゴマだれ等のゴマ含有液状調味料の製造原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎ゴマ細片化処理物を含有する焙煎ゴマ加工品であって、
焙煎ゴマ細片化処理物の20〜100質量%は、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級されるものであり、
20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級された焙煎ゴマ細片化処理物の30〜100質量%は、長径/短径の比が1〜1.2の範囲のものであることを特徴とする焙煎ゴマ加工品。
【請求項2】
焙煎ゴマ細片化処理物を含有する焙煎ゴマ加工品であって、
焙煎ゴマ細片化処理物の25〜100質量%が、20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級されるものであり、
20タイラーメッシュパス且つ32タイラーメッシュオンに分級された焙煎ゴマ細片化処理物の35〜100質量%が、長径/短径の比が1〜1.2となるものである請求項1記載の焙煎ゴマ加工品。
【請求項3】
請求項1記載の焙煎ゴマ加工品の製造方法であって、焙煎ゴマを水性媒体中に浸漬して膨潤させ、膨潤した焙煎ゴマを細片化処理する製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の焙煎ゴマ加工品を含有する液状食品。
【請求項5】
該焙煎ゴマ加工品を、焙煎ゴマ細片化処理物の液状食品中の含有量が1〜50質量%となるような量で含有する請求項4記載の液状食品。
【請求項6】
ゴマを含有するゴマ含有液状調味料であって、
ゴマが、請求項1又は2記載の焙煎ゴマ加工品であり、
ゴマ含有液状調味料は、該焙煎ゴマ加工品を、焙煎ゴマ細片化処理物のゴマ含有液状調味料中の含有量が1〜40質量%となるような量で含有し、
20℃でBH形粘度計で測定した粘度が0.1〜5Pa.sであるゴマ含有液状調味料。

【公開番号】特開2013−111061(P2013−111061A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263021(P2011−263021)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】