説明

焙煎豆の搬送装置とこれを備えた焙煎豆貯槽サイロ

【課題】焙煎豆を効果的に冷却しつつ、焙煎豆貯槽サイロ内を落下する際にも割れを顕著に減少させ、次の工程に円滑に送給可能な焙煎豆の搬送装置とこれを備えた焙煎豆貯槽サイロを提供する。
【解決手段】焙煎豆12を受け入れる受入口7aと、この受入口7aに投入された焙煎豆12を落下させるシュートとを有する。このシュートがらせん状をしたスパイラルシュート7bを備えていて、その傾斜角度が40°を超え、45°未満である焙煎豆の搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焙煎豆の搬送装置とこれを備えた焙煎豆貯槽サイロに関し、詳しくは、焙煎豆を受け入れる受入口と、この受入口に投入された焙煎豆を落下させるシュートとを有する焙煎豆の搬送装置とこれを備えた焙煎豆貯槽サイロに関する。
【背景技術】
【0002】
焙煎豆、例えばコーヒーの焙煎豆は、コーヒー生豆を200℃前後の温度にて所定時間、加熱保持され、その後、冷却されて粉砕工程に移送される。そして、粉砕された焙煎コーヒー豆は、更にコーヒー抽出工程に移送されて、コーヒー抽出液はコーヒー飲料として利用されたりする。
【0003】
焙煎は、コーヒー生豆貯槽から所定量の生豆を焙煎機に投入して行われる。焙煎機では回転しながら熱風を送り込んで、コーヒー生豆を所定温度で所定時間焙煎する。焙煎が終了すると、焙煎機から焙煎豆を取り出して冷却し、冷却された焙煎豆の所定量を順次、粉砕工程に移送されることになるが、移送されるまでの間、一旦貯槽される(例えば、特許文献1)。
【0004】
粉砕工程に移送される間、焙煎豆は移送途中において、焙煎豆を貯槽する焙煎豆貯槽サイロに送られるが、焙煎豆貯槽サイロはかなりの量のコーヒー焙煎豆を冷却しつつ貯槽して、所定量の焙煎豆を次工程に排出するようになっているため、通常、焙煎豆は、高所に位置する焙煎豆貯槽サイロ内にコンベアなどによって搬送され、高所より落下される間に冷却されることになる。
【0005】
【特許文献1】特公平5−5463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の方法は、焙煎コーヒー豆が焙煎豆貯槽サイロ内を落下して下方から排出される際に、少なくない量の焙煎コーヒー豆が割れるという問題がある。焙煎豆の性状によっては、約20%近くに損傷が発生する場合があり、著しく商品価値が低下すると共に、香りが散逸したりするなど、品質上も大きな損失となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、焙煎豆を効果的に冷却しつつ、焙煎豆貯槽サイロ内を落下する際にも割れを顕著に減少させ、次の工程に円滑に送給可能な焙煎豆の搬送装置とこれを備えた焙煎豆貯槽サイロを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係る焙煎豆の搬送装置の特徴構成は、焙煎豆を受け入れる受入口と、この受入口に投入された焙煎豆を落下させるシュートとを有しており、前記シュートがらせん状をしたスパイラルシュートを備えていて、その傾斜角度が40°を超え、45°未満であることにある。
【0009】
この構成によれば、比較的割れやすい焙煎豆であっても、落下途中で詰まることなく、割れの発生を極力抑制して円滑に落下されることができる。スパイラルシュートの傾斜角度が40°以下であると、傾斜が緩すぎて、焙煎コーヒー豆の炒り方(特に深炒りの場合)によっては焙煎コーヒー豆が円滑に落下し難くなる場合があり、スパイラルシュートの途中で焙煎コーヒー豆どうしの詰まりを生じるおそれがある。逆に、スパイラルシュートの傾斜角度が45°以上であると、落下速度が早くなりすぎて、焙煎コーヒー豆どうしの衝突により、割れが生じるおそれがあり好ましくない。
【0010】
その結果、焙煎豆を効果的に冷却しつつ、焙煎豆貯槽サイロ内を落下する際にも割れを顕著に減少させ、次の工程に円滑に送給可能な焙煎豆の搬送装置を提供することができた。
【0011】
前記スパイラルシュートの上流側に、焙煎豆を投入される投入口と、この投入口に投入された焙煎豆を落下させるラダーシュートとを有していて、前記投入口に投入された焙煎豆を弾性的に受け止め可能な投入口当たり手段が設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、焙煎機から排出された焙煎豆の落下時間を遅延させて、その間、より低い温度に冷却させることができる。
【0013】
前記ラダーシュートの投入口当たり手段の下流側に、上方より下方に向けて複数の当たり手段を設けていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、投入された焙煎豆の衝撃を緩和して、焙煎豆の損傷を極力少なくしつつ下方に落下させることができる。
【0015】
また、本発明に係る焙煎豆貯槽サイロの特徴構成は、請求項1〜3のいずれか1項記載の焙煎豆の搬送装置を備えると共に、出口側に計量器を有することにある。
【0016】
この構成によれば、焙煎豆を効果的に冷却しつつ、焙煎豆貯槽サイロ内を落下する際にも割れを顕著に減少させ、次の工程に円滑に送給可能な焙煎豆の搬送装置を備えた焙煎豆貯槽サイロを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を、以下に詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る焙煎豆の搬送装置を備えた焙煎設備の概略要部構成を示し、図2は、焙煎豆の搬送装置の拡大した概略構成を示す。以下では、焙煎豆として、コーヒー豆を例に挙げて説明する。
【0018】
コーヒー生豆は、焙煎機1により所定条件にて焙煎された後、一旦焙煎豆貯槽2に貯留される。貯留された焙煎豆は、順次コンベアに移され、第1搬送ライン3を経由して上方に持ち上げられた後、ホッパー(焙煎豆の受入口に相当)4とその下部に配置された計量器4により、所定量ずつ比重選別機5に投入されて、コーヒー豆以外の異物が除去される。この場合、ホッパー内には、衝撃吸収能を備えた当たり板4aが弾性変形可能に取り付けられていると共に、計量器4から比重選別機5へは、後述する構成を有するスパイラルシュート13によりコーヒー豆が送られるようになっている。従って、この個所で、コーヒー豆に割れが生じるような衝撃が与えられることはない。
【0019】
異物を除去された焙煎コーヒー豆12はバケット10に積載され、バケット10は、前段および後段の2段の搬送ライン6a,6bにより構成されている第2搬送ライン6を移送されて、下流側に配置されている粉砕機(図示略)により焙煎コーヒー豆12が粉砕されるまでの間、十分に冷却すべく焙煎豆貯槽サイロ7にて一旦貯槽される。第2搬送ラインの前段6aを搬送するバケットは、その頂部で、第2搬送ラインの後段6bの受け口に形成されているホッパー14へコーヒー豆を移し替えるようになっているが、ホッパー14の内部に衝撃吸収能を備えた当たり板14aが弾性変形可能に取り付けられているため、コーヒー豆に割れが生じることはない。このホッパー14は、落差が大きくないため、第1搬送ライン3のホッパー4のようなスパイラルシュートは設けられていない。もとより、第2搬送ライン6は1段で構成されていてもよく、更に多段に構成されていてもよい。
【0020】
バケット10に積載された焙煎コーヒー豆は、焙煎豆貯槽サイロ7に投入される前に、効果的に冷却しつつ円滑に焙煎豆貯槽サイロ7に送り込むためのラダーシュート8を経由して、その後焙煎豆貯槽サイロ7に投入される。
【0021】
ラダーシュート8および焙煎豆貯槽サイロ7について、図2を参照しつつ説明する。ラダーシュート8はステンレス鋼などの鋼製であり、投入口8aの内側に、投入口当たり板(投入口当たり手段に相当)9が弾性変形可能に取り付けられていて、バケット10を転回して投入された焙煎コーヒー豆が、直接ラダーシュート8に壁面に接当して飛び出さないようになっている。当たり板9は、一方の端部(上端)のみ固定されていて、他端が自由端になっており、衝撃吸収性のよいゴムあるいは樹脂などで作製されていることが好ましいが、他で材料で作製されていてもよい。
【0022】
更に、ラダーシュート8は、当たり板9に当接した焙煎コーヒー豆が方向を転換して下方に落下するように、くびれ部8bを有していると共に、焙煎豆貯槽サイロ7の受入口7aに至る垂下部8cを有する。垂下部8cの内周側には、左右から交互に延設する傾斜板8dが複数段取り付けられていて、垂下部8c内を落下する焙煎コーヒー豆に大きな衝撃が作用するのを抑制している。
【0023】
焙煎豆貯槽サイロ7は、ラダーシュート8から焙煎コーヒー豆を受け入れる受入口7aと、この受入口7aに投入された焙煎コーヒー豆12を下流側の粉砕機(図示略)に移送するまでの間、焙煎コーヒー豆を効果的に冷却するため、軸7c周りを多段に旋回させつつ落下させる、らせん状をしたスパイラルシュート7bが軸7cに取り付けられている。このスパイラルシュート7bはステンレス鋼などの鋼製からなり、その傾斜角度が40°を超え、45°未満であるように調整されている。
【0024】
すなわち、スパイラルシュート7bは、その傾斜角度が40°以下であると、傾斜が緩すぎて、焙煎コーヒー豆の炒り方(特に深炒りの場合)によっては焙煎コーヒー豆が円滑に落下し難くなる場合があり、スパイラルシュート7bの途中で焙煎コーヒー豆どうしの詰まりを生じるおそれがある。逆に、スパイラルシュート7bの傾斜角度が45°以上であると、落下速度が早くなりすぎて、焙煎コーヒー豆どうしの衝突により、割れが生じるおそれがある。
【0025】
スパイラルシュート7bの傾斜角度がこのようになっていることから、焙煎コーヒー豆12は、焙煎豆貯槽サイロ7のスパイラルシュート7bを円滑に滑り落ち、割れの発生を極力防止される。そして、焙煎コーヒー豆12は、焙煎豆貯槽サイロ7に貯槽されると共に、焙煎豆貯槽サイロ7の下方の出口側に定量器9が装着されていて、所定量の冷却された焙煎コーヒー豆が次工程へと移される。
【実施例】
【0026】
約230℃にて、14〜15分加熱して深炒りした焙煎コーヒー豆約80kgを図1,2に示す搬送装置で搬送し、焙煎豆貯槽サイロの出口側の定量器における焙煎コーヒー豆の割れの状況を調べたところ、割れの発生した焙煎コーヒー豆は全体の2〜3%であり、97〜98%の焙煎コーヒー豆に割れは生じていなかった。この場合、焙煎豆貯槽サイロの出口側の定量器での焙煎コーヒー豆は、30℃以下程度であった。これは、従来、焙煎コーヒー豆の割れが20%近く生じていたことに比べて、大幅に割れの発生を減少させることができたことになる。
【0027】
〔別実施の形態〕
上記実施形態では、焙煎豆として焙煎コーヒー豆を例に挙げて説明したが、本発明は割れ易い他の焙煎豆にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る焙煎豆の搬送装置を備えた焙煎設備の概略構成図
【図2】図1の搬送装置を示す概略要部構成図
【符号の説明】
【0029】
4 受入口
7 焙煎豆貯槽サイロ
7a 受入口
7b スパイラルシュート
8 ラダーシュート
8a 投入口
8d 当たり手段
9 投入口当たり手段
11 計量器
12 焙煎豆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎豆を受け入れる受入口と、この受入口に投入された焙煎豆を落下させるシュートとを有する焙煎豆の搬送装置において、前記シュートがらせん状をしたスパイラルシュートを備えていて、その傾斜角度が40°を超え、45°未満であることを特徴とする焙煎豆の搬送装置。
【請求項2】
前記スパイラルシュートの上流側に、焙煎豆を投入される投入口と、この投入口に投入された焙煎豆を落下させるラダーシュートとを有していて、前記投入口に投入された焙煎豆を弾性的に受け止め可能な投入口当たり手段が設けられている請求項1記載の焙煎豆の搬送装置。
【請求項3】
前記ラダーシュートの投入口当たり手段の下流側に、上方より下方に向けて複数の当たり手段を設けている請求項1又は2記載の焙煎豆の搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の焙煎豆の搬送装置を備えると共に、出口側に計量器を有する焙煎豆貯槽サイロ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−48663(P2008−48663A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228006(P2006−228006)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(390006600)ユーシーシー上島珈琲株式会社 (28)
【Fターム(参考)】