説明

焙煎鶏ふん肥料

【課題】現在有機農産物の日本農林規格では作物栽培の全期間にわたって化学的に合成された資材は一切使用できないため、有機栽培米稲用の育苗ではおから堆肥等を配合した培土を使用しているが化学肥料使用の市販培土に比べて養分濃度が一定しない、培土が酸素不足の状態に陥るなどの問題があり、良苗の確保をかなり困難なものにしている。このため有機物を原料とした化学肥料と同等の肥効、速効性を持っ肥料の開発が強く望まれている。
【解決手段】本発明は鶏ふんをふん中窒素の主体を占める尿酸の分解温度400℃以下で焙煎し、ふん中の易分解性物質を難分解性化するとともに窒素、りん酸、加里量各4%程度の化学肥料と同等の速効性を示す含尿酸態窒素複合肥料に変換したものである。なお、培土に易分解性物質が存在すると30℃前後、多水分条件で行われる育苗では、雑菌、黴の繁殖のほか硫化水素、メタンガスなど有害な還元性物質が生成され健全な苗の生産が阻害される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は「有機農産物の日本農林規格」JASの基準に適合する速効性窒素を含む有機質肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機農産物の日本農林規格では化学的に合成された肥料の使用がすべて禁止されている。このため有機栽培米用苗の育苗についても化学肥料が使用できず、やむなくおからなどを原料にしたボカシ堆肥で対応しているが、かび、雑菌が繁殖しやすく、養分(窒素)濃度が低いうえに一定しないこともあり安定した育苗ができず、これが有機栽培米生産上の大きな障害になっている。育苗は15〜20日間程度の短期間であり、このため化学肥料と同等の速効性を持つ有機物由来で高濃度の窒素を含む肥料の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2000−239082
【特許文献2】 特開2002−303409
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】 畜産環境情報第24号2004年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
類似の発明として特許文献1、動物ふんを部分的に炭化して「炭化肥料の製造方法およぴその装置」と特許文献2、「鶏糞の熱分解方式」の2者があるが前者は処理温度が400〜800℃と高く、後者は空気の供給が制限された雰囲気で300℃から800℃で加熱分解するとあり、ふん中尿酸量の保全については配慮がなされていない。
また非特許文献1は鶏ふんペレット堆肥の品質安定化は尿酸態窒素のコントロールにあるとし、密閉形式で堆肥化し、水分含量を15%以下に乾燥するとあるが、温度条件は記載されていない。
したがって本発明は、以上のような従来技術の欠点に鑑み、処理温度が400℃以下で空気の供給を全く制限せず、ふん中尿酸が完全に保全される「焙煎鶏ふん肥料」を提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は[請求項1]〜[請求項3]で「焙煎鶏ふん肥料」、「配合肥料」及び「有機栽培米用培土」の作成、を構成し ている。
【発明の効果】
【0007】
以上の説明から明らかのように、本発明には次に列挙する効果が得られる。
(1)鶏ふんを鶏ふん中窒素の主体を占める尿酸の分解温度400℃以下の条件で焙煎し化学肥料と同等の速効性、効果を示す窒素、りん酸加里の含有量各4%程度の有機物由来肥料に変換するものである。
この肥料に含まれる尿酸は土壌中で微生物により速やかに分解されアンモニアに変化して作物に吸収利用される。
(2)化学肥料の使用が禁止されている「有機農産物の農林規格」JASにかかわる有機農産物栽培のすべてに速効性窒素肥料として使用できる。
(3)不安定であった有機栽培米用の苗の生産を容易化、安定化することにより有機栽培米の栽培面積の大幅な拡大が可能となる。このほかJAS指定有機農作物の栽培全般にわたって化学肥料に代わる速効性窒素肥料としての利用が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】原材料の混合は例えば赤玉土、泥炭、硫黄華及び焙煎鶏ふんをミキサーを使って行う。造粒は造粒機で、乾燥殺菌は回転キルンで行い、粒状の有機栽培米用培土が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図1によって説明する。
【実施例】
【0010】
焙煎鶏ふんは鶏ふんを尿酸の分解温度400℃以下の条件で焙煎し得られる。
【0011】
図1のごとく原材料として焙煎鶏ふんと赤玉土、泥炭及び硫黄華をミキサーを使って混合する。
【0012】
次いで造粒機で造粒し、更に回転キルンで乾燥殺菌して粒状の有機栽培米用培土が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
有機栽培米はじめ有機農産物に対する一般消費者の関心の高まりから、本発明にかかわる焙煎鶏ふん肥料の需要は今後一層増大するものと考えられる。また賠煎処理により、吸湿性、鶏ふん特有の臭気も完全に消去されており、他肥料との配合利用なども可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏ふんを尿酸の分解温度400℃以下で焙煎した焙煎鶏ふん肥料。
【請求項2】
焙煎鶏ふん肥料を利用した配合肥料。
【請求項3】
焙煎鶏ふん肥料を使用し、育苗時の培地のpHを硫黄華で5.0前後に調整した有機栽培米用育苗培土。

【図1】
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