説明

無窓畜舎内用噴霧装置及び方法、及びこの無窓畜舎内用噴霧装置及び方法を用いた無窓畜舎内の環境改善方法

【課題】 界面活性剤や撹拌装置等を用いることなく混ざりにくい第1液と第2液とを容易に混ぜ合わせて噴霧すること、噴霧量や噴霧濃度の調整、噴霧の停止が容易であること、無窓畜舎内環境をより衛生的に改善すること等が可能な無窓畜舎内用噴霧装置及び方法、及びこの無窓畜舎内用噴霧装置及び方法を用いた無窓畜舎内の環境改善方法を提供する。
【解決手段】 酸性水溶液及び油性溶液を各個別に吐出した直後に圧縮空気により混合霧化した状態で噴霧間欠するように構成された噴霧装置の2液混合噴霧ノズルを無窓畜舎内に1個乃至複数個配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無窓畜舎内の環境改善に関するものであり、さらに詳しくは、無窓畜舎内用噴霧装置及び方法、及びこの無窓畜舎内用噴霧装置及び方法を用いた無窓畜舎内の環境改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無窓畜舎、特に無窓鶏舎内で発生する揮発性臭気(アンモニア臭)や空中浮遊細菌、微生物等が付着した粉塵は、作業者、畜体(鶏)の呼吸器系等の疾病の原因の1つとされている。また、無窓鶏舎は閉塞空間であり、しかも生産効率を上げるために大規模化が進んでいるため、伝染病発生時には被害が増大するリスクが高く、無窓鶏舎内環境を衛生的に改善する必要があった。
【0003】
そこで、無窓鶏舎の内部環境を改善するために、次の(1)〜(3)に示される方法が従来用いられたり或いは提案されていた。
(1)無窓鶏舎内の粉塵や臭気を換気装置により舎外に排出する。
(2)超音波噴霧器によって重量比2%の植物油(例えば、菜種油)の水溶液を噴霧し、無窓鶏舎内の粉塵濃度を低減する(例えば、非特許文献1参照)。
(3)動力噴霧装置、超音波噴霧器によって1〜2%希酢酸を噴霧し、無窓畜舎内のアンモニア濃度を低減する(例えば、非特許文献2,3参照)。
【0004】
しかしながら、(1)のものにあっては、臭気や粉塵が希釈されることなくそのまま換気装置によって舎外に排出されるため、家畜飼養規模の拡大や混住化の進展等と相俟って、悪臭等の環境問題が発生してしまう。さらには、換気装置は、舎内の除熱を主目的としているため舎内温度に基づいて換気量を制御、つまり複数の換気装置を各個別にオンオフ制御したり、インバータ制御による換気ファンの回転数制御を行うように構成されている。そのため、気温の低い冬季は換気量が低下してしまい、舎内の粉塵、細菌及びアンモニア濃度が増加して舎内環境が悪化してしまう虞がある。
また、(2)のものにあっては、噴霧を開始する前に、混ざりにくい植物油と水とを混合するための界面活性剤や撹拌装置が必要であり、コストがかかるだけでなく構造が複雑になり、また、噴霧植物油濃度の調整や植物油の水溶液噴霧の停止が容易ではないという問題もある。さらには、(2)及び(3)のものにあっては、超音波噴霧器等の噴霧ノズルが、鶏舎内の粉塵によるものとみられる詰まりで噴霧量が低下してしまう虞がある。
【0005】
【非特許文献1】畜産草地研究成果情報,No.14,p.27−28,「超音波噴霧器を用いた無窓鶏舎内粉塵制御」,平成13年3月24日発行
【非特許文献2】2002年度農業施設学会大会講演要旨集,p.110−111,「酢酸噴霧による無窓鶏舎内アンモニア濃度の低減」
【非特許文献3】2003年度農業施設学会大会講演要旨集,p.106−107,「酢酸噴霧による無窓鶏舎内アンモニア濃度の低減(続報)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、界面活性剤や撹拌装置等を用いることなく混ざりにくい第1液と第2液とを容易に混ぜ合わせて噴霧すること、噴霧量や噴霧濃度の調整、噴霧の停止が容易であること、無窓畜舎内環境をより衛生的に改善すること等が可能な無窓畜舎内用噴霧装置及び方法、及びこの無窓畜舎内用噴霧装置及び方法を用いた無窓畜舎内の環境改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、無窓畜舎内に第1液と第2液とを混ぜ合わた状態で噴霧する無窓畜舎内用噴霧装置において、
前記第1液を貯留し、且つ前記貯留した第1液を吸排出する駆動ポンプが連なった第1液タンクと、前記第2液を加圧圧送可能に貯留した第2液加圧タンクと、圧縮空気を発生させる圧縮空気発生手段と、前記圧縮空気発生手段が発生した圧縮空気を調圧して排出する制御手段と、前記駆動ポンプを介して搬送された第1液タンクからの第1液、前記第2液加圧タンクから圧送された第2液、及び前記制御手段から排出された圧縮空気が供給されると共に、前記供給された第1液及び第2液を各個別に吐出した直後に前記供給された圧縮空気により混合霧化した状態で噴霧する2液混合噴霧ノズルとを備えたことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記2液混合噴霧ノズルは、前記駆動ポンプを介して搬送された第1液タンクからの第1液を吐出するようにノズル先端中央に形成された第1のノズルと、前記第1のノズルを取り囲むように形成され、前記制御手段から供給された圧縮空気を排出する環状の第2のノズルと、前記第1のノズルを中心とする径方向に、前記第1のノズルを挟んで対称となるように形成され、前記第2液加圧タンクから圧送された第2液を、前記制御手段から供給された圧縮空気により吐出する第3のノズルとを備えていることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明の構成に加えて、前記2液混合噴霧ノズルは、前記制御手段から供給された圧縮空気により前記第1及び第3のノズルを各個別に開閉制御して、前記第1及び第3のノズルからの噴霧開始及び停止する複数のノズルピストンを備えていることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明の構成に加えて、前記制御手段は、前記複数のノズルピストンの何れかを用いて第3のノズルを閉制御したのち、前記第3のノズルからの圧縮空気の噴出を停止するように設定されていることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明の構成に加えて、前記制御手段は、前記2液混合噴霧ノズルによる噴霧開始時刻、噴霧時間、間欠噴霧時間及び噴霧間隔時間での最適な間欠噴霧が可変設定可能、且つ前記第1液のみの噴霧設定が可能であることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の発明の構成に加えて、前記2液混合噴霧ノズルは、前記第1のノズルのノズル開度調整を可能とする第1のノズル開度調整部と、前記第3のノズルのノズル開度調整を可能とする第3のノズル開度調整部と、前記第1、第3のノズルのノズル開度調整部及び前記制御手段によって調圧された圧縮空気によって、第1液噴霧量と第2液噴霧量、すなわち第2液の混合濃度又は割合、及び噴霧粒径を調整可能とする噴霧量調整部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記第1液タンクは、前記第1液タンク内の第1液の水位を検出して前記制御手段に出力する検出手段と、前記制御手段によって駆動制御される定量ポンプを介して前記第1液の原液を供給する供給タンクと、前記制御手段によって開閉制御される電磁弁を介して前記第1液の溶媒を供給する溶媒供給手段とを備え、前記検出手段が第1液タンク内の水位が下位レベルに達したことを検出すると、前記制御手段により定量ポンプが予め設定された設定時間だけ駆動されて前記供給タンクから第1液の原液が供給されると共に、前記制御手段により電磁弁が開制御されて前記溶媒供給手段から前記第1液の溶媒が供給され、また、前記検出手段が第1液タンク内の水位が高位レベルに達したことを検出すると、前記電磁弁が閉制御されて前記第1液の溶媒の供給が停止されることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明の構成に加えて、前記制御手段は、前記検出手段が第1液タンク内の水位が下位レベルに達したことを検知した後、上位レベルに達したことを検知するまでの間は、前記2液混合噴霧ノズルからの噴霧を停止することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記第1液は酸性水溶液であると共に、前記第2液は油性溶液であることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明の構成に加えて、前記第1液は、アンモニア低減効果及び細菌低減効果を有するものであることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10に記載の無窓畜舎内用噴霧装置を用いた無窓畜舎内の環境改善方法であって、前記第1液としての酸性水溶液及び第2液としての油性溶液を各個別に吐出した直後に前記供給された圧縮空気により混合霧化させた状態で噴霧する2液混合噴霧ノズルを前記無窓畜舎内に1個乃至複数個配置し、前記2液混合噴霧ノズルから混合霧化させた酸性水溶液と油性溶液とを前記無窓畜舎内で間欠噴霧して、前記無窓畜舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気を空中捕獲、落下及び中和させ、且つ前記無窓畜舎内に付着させた前記油性溶液で捕獲して再飛散を防止して、浮遊粉塵濃度、浮遊細菌濃度及び臭気濃度を低減させて前記無窓畜舎内の環境を改善することを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するため請求項12に記載の発明は、無窓畜舎内に第1液と第2液とを混ぜ合わせた状態で噴霧する無窓畜舎内用噴霧方法において、
前記第1液を貯留し、且つ前記貯留した第1液を搬送する第1の行程と、前記第2液を圧送可能に貯留する第2の行程と、圧縮空気を発生させる圧縮空気発生行程と、前記圧縮空気発生行程で発生させた圧縮空気を調圧して排出する制御行程と、前記第1の行程により搬送された第1液、前記第2の行程から圧送された第2液、及び前記制御行程から排出された圧縮空気が供給されると共に、前記供給された第1液及び第2液を吐出直後に前記供給された圧縮空気により混合霧化した状態で噴霧する2液混合噴霧行程とを有することを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するため請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の無窓畜舎内用噴霧方法を用いた無窓畜舎内の環境改善方法であって、前記第1液としての酸性水溶液及び第2液としての油性溶液を各個別に吐出した直後に前記供給された圧縮空気により混合霧化させた状態で前記無窓畜舎内に間欠噴霧する行程と、前記無窓畜舎内に混合噴霧した酸性水溶液と油性溶液とによって無窓畜舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気を空中捕獲、落下及び中和させ、且つ前記無窓畜舎内に付着させた前記油性溶液で捕獲して再飛散を防止することによって浮遊粉塵濃度、浮遊細菌濃度及び臭気濃度を低減させて前記無窓畜舎内の環境を改善する行程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明にあっては、2液混合噴霧ノズルから各個別に吐出される第1液及び第2液は、その吐出直後に、2液混合噴霧ノズルから吐出される圧縮空気によって直ちに混合霧化された状態で噴霧される。これにより、第1液及び第2液が、界面活性剤や撹拌装置等を用いなければ混合できない性状のものであっても、それら界面活性剤や撹拌装置を用いることなく容易に混ぜ合わせて噴霧することができるようになる。また、界面活性剤や撹拌装置が不要になるので、コストの低減化と装置の簡略化とを図ることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明にあっては、2液混合噴霧ノズルに供給された第1液及び第2液は、ノズル先端中央の第1のノズルから第1液が吐出されると共に、この第1のノズルを中心とする径方向に第1のノズルを挟んで対称となるように形成された第3のノズルから第2液が圧縮空気の流速を利用して吐出される。さらに、第1のノズルを取り囲むように形成された環状の第2のノズルからは圧縮空気が噴出される。これにより、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、第1〜第3のノズルから第1液、第2液及び圧縮空気を噴出させるので、第1液及び第2液をより均一に混合霧化することができるようになる。また、第1〜第3のノズルによって目詰まりがし難くなり、そのため、噴霧量の低下を未然に防止することができると共に、例え粉塵により目詰まりしても洗浄が容易である。
【0022】
請求項3に記載の発明にあっては、第1及び第3のノズルからの噴霧開始及び停止は、制御手段にて調圧された圧縮空気が2液混合噴霧ノズルに具備された複数のノズルピストンを動作させて第1及び第3のノズルを開閉制御することによって行われる。これにより、請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、第1及び第3のノズルからの噴霧開始及び停止を確実且つ容易に液垂れすることなく行うことができる。
【0023】
請求項4に記載の発明にあっては、制御手段は、複数のノズルピストンの何れかを用いて第3のノズルを閉制御したのち、第3のノズルからの圧縮空気の噴出を停止する。これにより、第2液の噴霧停止に対し、第3ノズルの圧縮空気の停止のタイミングを遅らせることにより、液垂れや詰まりをなくすことができる。
【0024】
請求項5に記載の発明にあっては、制御手段は、予め設定された2液混合噴霧ノズルによる噴霧開始時刻、噴霧時間、間欠噴霧時間及び噴霧間隔時間での最適な間欠噴霧に従って第1液及び第2液を混合霧化した状態で噴霧する。これにより、請求項4に記載の発明の作用効果に加えて、第1液及び第2液を所望する時間に所望する量だけ混合霧化させて噴霧することができるので、噴霧量の調整を容易化することができる。また、第1液のみの噴霧も可能となり、用途に合わせた噴霧が可能となる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、2液混合噴霧ノズルには、第1のノズルのノズル開度調整を行う第1のノズル開度調整部と、第3のノズルのノズル開度調整を行う第3のノズル開度調整部と、これら第1、第3のノズル開度調整部及び制御手段によって調圧された圧縮空気によって、第1液噴霧量と第2液噴霧量、すなわち第2液の混合濃度又は割合、及び噴霧粒径を調整する噴霧量調整部とが備えられている。これにより、請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、第1液噴霧量と第2液噴霧量、すなわち第2液の混合濃度又は割合、及び噴霧粒径を容易、且つ細かく調整することができるようになる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、第1液タンク内の水位調整は、この第1液タンク内に設けられた水位検出用の検出手段の検出値に基づいた制御手段が、設定時間に応じて駆動する定量ポンプを介して一定量の原液を第1液タンクに供給させると共に、水位に応じて開閉する電磁弁を介して一定量の第1液の溶媒を溶媒供給手段から供給させることによって、第1液タンク内は常に一定濃度の第1液で満たされる。これにより、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、一定濃度の第1液を常に2液混合噴霧ノズルに安定供給することができる。また、定量ポンプを駆動させる設定時間を増減調整することによって、第1液の濃度を所望の濃度に変えることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、第1液タンク内の水位が下位レベルに達すると、水位が上位レベルに達するまでの間は第1液の噴霧は停止される。これにより、請求項7に記載の発明の作用効果に加えて、2液混合噴霧ノズルから噴霧される第1液を常に一定濃度とすることができ、第1液作成途中の高濃度な第1液を噴霧することを防止することができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、第1液は酸性水溶液、第2液は油性溶液である。これにより、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、混合しにくい第1液及び第2液を混合霧化させた状態で噴霧すると、空気中の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気を空中捕獲、落下及び中和させることができ、且つ無窓畜舎内に付着させた油性溶液によって捕獲させることができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、第1液は、アンモニア低減効果及び細菌低減効果を有するものである。これにより、請求項9に記載の発明の作用効果に加えて、畜舎内のアンモニア濃度及び細菌濃度を低減することができる。
【0030】
請求項11に記載の発明にあっては、無窓畜舎内に1個乃至複数個配置された2液混合噴霧ノズルから混合霧化させた酸性水溶液と油性溶液とを間欠噴霧すると、無窓畜舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気が空中捕獲、落下及び中和させられ、且つ無窓畜舎内に付着させた油性溶液によって捕獲される。これにより、酸性水溶液と油性溶液とを界面活性剤や撹拌装置を用いることなく容易に混ぜ合わせた状態で噴霧することができるので、コストの低減化及び装置の簡素化を図ることができる。そのうえ、無窓畜舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気の再飛散を防止することができると共に、浮遊粉塵濃度、浮遊細菌濃度及び臭気濃度を低減させて無窓畜舎内の環境を改善することができる。
【0031】
請求項12に記載の発明にあっては、2液混合噴霧行程では、第1液及び第2液を吐出した直後に圧縮空気によって直ちに混合霧化させて噴霧する。これにより、第1液及び第2液が、界面活性剤や撹拌装置等を用いなければ混合できない性状のものであっても、それら界面活性剤や撹拌装置を用いることなく容易に混ぜ合わせて噴霧することができる。また、界面活性剤や撹拌装置が不要になるので、コストの低減化及び装置の簡素化を図ることができる。
【0032】
請求項13に記載の発明にあっては、無窓畜舎内に混合霧化させた酸性水溶液と油性溶液とを間欠噴霧すると、無窓畜舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気が空中捕獲、落下及び中和させられ、且つ無窓畜舎内に付着させた油性溶液によって捕獲される。これにより、酸性水溶液と油性溶液とを界面活性剤や撹拌装置を用いることなく容易に混ぜ合わせた状態で噴霧することができるので、コストの低減化と装置の簡略化とを図ることができる。そのうえ、無窓畜舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気の再飛散を防止することができると共に、浮遊粉塵濃度、浮遊細菌濃度及び臭気濃度を低減させて無窓畜舎内の環境を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
無窓畜舎内に1個乃至複数個配置した噴霧装置から、第1液としての酸性水溶液及び第2液としての油性溶液を各個別に吐出した直後に圧縮空気により混合霧化した状態で噴霧間欠することによって、界面活性剤や撹拌装置等を用いることなく、混ざりにくい第1液と第2液とを容易に混ぜ合わせて噴霧することができると共に、噴霧濃度の調整や噴霧量の停止が容易な無窓畜舎内用噴霧装置が実現した。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1は、本発明の無窓畜舎内用噴霧装置の構成図、図2は、同例における2液混合噴霧ノズルのノズル先端の内部構造を示した側断面図、図3は、同例における2液混合噴霧ノズルのノズル先端の正面図である。
【0035】
まず、本発明の無窓畜舎内用噴霧装置(以下、噴霧装置という)の構成について図1〜3を用いて説明する。
図1〜3に示されるように、噴霧装置1は、無窓畜舎内に第1液と第2液とを混ぜ合わた状態で噴霧する噴霧装置に適用されるものであって、圧縮空気を発生させる圧縮空気発生手段としてのコンプレッサ2と、コンプレッサ2が発生した圧縮空気がエア管路3を介して供給されると共に、供給された圧縮空気を各種制御スイッチ4のスイッチ操作に応じて調圧して複数のエア管路5〜8毎に排出することが可能な制御手段としての制御盤9と、第1液10を貯留し、且つ貯留した第1液10を吸排出して搬送する駆動ポンプ11が液管路12を介して連なった第1液タンクとしての第1液希釈タンク13と、制御盤9からエア管路5を介して供給される圧縮空気によって内圧を高めることによって、第2液14を加圧圧送可能に貯留した第2液加圧タンク15と、駆動ポンプ11から液管路12を介して搬送された第1液希釈タンク13の第1液10、第2液加圧タンク15から液管路16を介して加圧圧送された第2液14、及び制御盤9からエア管路6〜8を介して圧縮空気がそれぞれ供給され、且つ供給された第1液10及び第2液14を各個別に吐出した直後に、供給された圧縮空気の一部によって混合霧化させた状態で噴霧する1個乃至複数個の2液混合噴霧ノズル17(但し、図1中にあっては1個のみ図示)とを備えて構成されている。
【0036】
第1液希釈タンク13には、この第1液希釈タンク13内の第1液10の水位を検出して制御盤9に出力する検出手段としての水位計18が配設されている。 さらに、この第1希釈タンク13には、第1液10の原液19を貯留する供給タンク20が液管路21を介して連なっていると共に、この液管路21には、水位計18の検出値に基づいた制御盤9からの制御信号が入力されると、予め設定された設定時間だけ駆動する定量ポンプ22が介設されている。
さらには、この第1希釈タンク13には、第1液10の溶媒を供給する溶媒供給手段としての図示しない水道管に連なった液管路23が連なっていると共に、この液配管23には、水位計18の検出値に基づいた制御盤9によって開閉制御される電磁弁24が介設されている。
【0037】
制御盤9が定量ポンプ22に対して制御信号を出力をするのは、水位計18が第1液希釈タンク13内の水位が下位レベルに達したことを検出した場合とされている。そして、制御盤9から制御信号が出力されると、定量ポンプ22は、予め設定された設定時間だけ駆動して供給タンク20から一定量の原液19を第1液希釈タンク13に供給したのち停止する。また、水位計18が第1液希釈タンク13内の水位が下位レベルに達したことを検出した場合、制御盤9は、電磁弁24を開制御するように設定されている。そして、第1液10の溶媒(この実施例にあっては水道水)を第1希釈タンク13に供給した後、水位計18が第1液希釈タンク13内の水位が高位レベルに達したことを検出すると、電磁弁24を閉制御して第1液10の溶媒の供給を停止する。さらに、この制御盤9は、水位計18が第1液希釈タンク13内の水位が下位レベルに達したことを検知した後、上位レベルに達したことを検知するまでの間は、2液混合噴霧ノズル17からの第1液10及び第2液14の噴霧を停止するように予め設定されている。これらにより、第1液希釈タンク13内の第1液10は常に一定濃度が保たれるようになっており、また第1液作成途中の高濃度な第1液10を噴霧することを防止するようになっている。
なお、定量ポンプ11を駆動させる設定時間を、例えば制御盤9のスイッチ操作、或いは定量ポンプ11の設定時間の設定変更によって、第1液希釈タンク13内の第1液10の濃度を所望する濃度とすることができる。
【0038】
2液混合噴霧ノズル17のノズル先端部には、図2、3に示されるように、ノズル先端中央に形成された第1のノズル25と、この第1のノズル25を取り囲むように平面視環状、つまりリング状に形成された第2のノズル26と、第1のノズル25を中心とする径方向、且つ第1及び第2のノズル25,26を挟んで対称となるように、しかも吐出方向がやや内向きに形成された複数の第3のノズル27とがそれぞれ設けられている。
【0039】
第1のノズル25は、2液混合噴霧ノズル17内部で軸心方向に向かって形成された管路28を介して液管路12に連なっており、駆動ポンプ11によって搬送、或いは水頭による圧力によって第1液希釈タンク13からの第1液10を吐出する。
【0040】
また、第2のノズル26は、管路28を取り巻くようにノズル17内部に形成された筒状の管路29を介してエア管路6に連なっており、制御盤9からエア管路6を介して供給された圧縮空気を排出する。
なお、管路28と管路29とを隔てる隔壁28aは、図示しないリブによってノズル先端に支持されている。また、第2のノズル26の形状は、環状に限定されるものではなく、環状とは異なる形状、例えば多角状、楕円状に形成してもよい。
【0041】
さらにまた、第3のノズル27は、管路28と並行するようにノズル17内部に形成され、且つノズル先端側でそれぞれが2つに分岐する複数の管路30を介してエア管路6に連なっていると共に、この管路30の分岐路30a,30bには、制御盤9からエア管路5を介して供給された圧縮空気によって第2液加圧タンク15から圧送させた第2液14を、その圧縮空気によって加圧したままの状態で搬送するように管路28の径方向に延びるように形成された管路31の分岐路31a,31bが、それぞれほぼ直角に交わるように連なっている。これにより、第3のノズル27からは、第2液加圧タンク15から加圧圧送された第2液14が圧縮空気の流速を利用して吐出されるようになっている。
【0042】
なお、分岐路30aと31a、或いは分岐路30bと31bとは、ほぼ直交した状態で接続されるものに限定されるのではなく、例えば、分岐路31a,31bのいずれか一方、或いは両方が傾斜した状態で分岐路30a或いは30bに接続するように構成することもできる。
また、第3のノズル27は、第1及び第2のノズル25,26を挟んで対称となるように形成されるのが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、ノズル先端に少なくとも1つ設けるようにしてもよい。また、第1及び第2のノズル25,26を挟んで非対称となるように形成してもよい。
【0043】
さらに、この2液混合噴霧ノズル17には、制御盤9からエア管路7,8を介して供給される圧縮空気により、第1及び第3のノズル25,27を各個別に開閉制御して、第1及び第3のノズル25,27からの噴霧開始及び停止を行う複数のノズルピストン(図示略)が備えられている。
【0044】
さらに、2液混合噴霧ノズル17には、図1に示されるように、第1のノズル25のノズル開度を調整するダイヤル式の第1のノズル開度調整部32と、第3のノズル27のノズル開度を調整するダイヤル式の第3のノズル開度調整部33とが備えられている。さらに、これら第1及び第3のノズル開度調整部32,33、及び制御盤9によって調圧された圧縮空気、つまりエア管路5によって第2液加圧タンク15に供給される圧縮空気並びにエア管路6を介して2液混合噴霧ノズル17に供給される圧縮空気によって、第1液10及び第2液14の噴霧量、すなわち第2液14の混合濃度又は割合、及び噴霧粒径を調整可能とする噴霧量調整部34が形成されている。
【0045】
また、制御盤9の制御スイッチ4により、2液混合噴霧ノズル17による噴霧開始時刻、噴霧時間、間欠噴霧時間及び噴霧間隔時間での最適な間欠噴霧が、少なくとも無窓畜舎の規模、畜体の数、飼養日数等に応じて可変設定することができるようになっていると共に、第1のノズル25からの第1液10のみの噴霧設定が可能とされている。
【0046】
次に、本噴霧装置1を用いて無窓鶏舎にて行われた[試験1]について説明する。
無窓鶏舎は、幅約5.0m、長さ約8.3m、天井高約2.8m、収容鶏100羽の2段雛壇ゲージ、吸排口は天井2箇所とされ、スクレーパによる除糞は行わずゲージ下に糞を滞留させた状態で試験が行われた。舎内に少なくとも1個配置された2液混合噴霧ノズル17からは、第1液10に水道水、第2液14に酢酸(濃度33.3%)を用いて噴霧を行い、アンモニア濃度を測定した。その結果は、表1に示される通りである。
また、同鶏舎において、第1液10に水、第2液14に植物油を用いて噴霧を行い、浮遊粉塵濃度を測定した。その結果は、図4,5に示される通りである。
図4は、希釈植物油噴霧(1回/日)による粉塵濃度の変化を示した図、図5は、希釈植物油噴霧(2回/日)による粉塵濃度の変化を示した図である。
【0047】
【表1】

【0048】
但し、アンモニア濃度は、希釈酢酸の噴霧前、及び噴霧開始後3〜4時間の間に排気口近傍に設置した検知管(ドジチューブ)にて測定。
噴霧液phは、床上シャーレに落下した噴霧液のphを測定。
推定噴霧酢酸濃度は計算値。
【0049】
表1に示されるように、床上シャーレに落下した噴霧液のphは、4.2〜5.0であった(試験no.02参照)。水のみを噴霧した場合は、畜舎内のアンモニア濃度を低減することはできなかったが(試験no.03参照)、推定噴霧酢酸濃度1.5%の希釈酢酸を4時間、75秒毎に15秒の間欠噴霧した場合は、噴霧前8ppmであった畜舎内のアンモニア濃度を4ppmに低下させた(試験no.01参照)。
【0050】
次に、同舎内に配置された2液混合噴霧ノズル17から重量比2%の植物油を日量14g/羽の割合で1日1回噴霧させた。その結果は、図4に示されるように、粉塵濃度は、噴霧前1ヶ月前の間には日にちを追って増加傾向が見られたものの、酢酸噴霧後には粉塵濃度の増加が停止し、さらに植物油噴霧後には、粉塵濃度は低下して増加傾向に歯止めがかけられた。
また、同舎内に配置された2液混合噴霧ノズル17から1日2回、希釈植物油を噴霧した場合には、図5に示されるように、時間が経過する毎に粉塵濃度が減少した。
さらにまた、同舎内(但し、収容鶏200羽)に配置された2液混合噴霧ノズル17から、希釈植物油を毎日30分間、60秒毎に10秒の間欠噴霧(油噴霧量0.002g/羽/m^3/日 但し、^は、べき乗の演算子)した場合には、表2に示されるように、噴霧期間中と噴霧停止後9日間の浮遊粉塵濃度が低下した。
【0051】
【表2】

【0052】
次に、本噴霧装置1を用いて無窓鶏舎にて行われた[試験2]について説明する。
横断型無窓鶏舎(幅約5.52m、長さ約26.45m、天井高約2.44m、全6区画、1区画当たりの収容鶏104羽)において、本噴霧装置1による試験を行った。舎内に配置された2液混合噴霧ノズル17からは、第1液10に希酢酸、第2液14に植物油を用いて1日30分間を9日間、70秒毎に10秒の間欠噴霧(油噴霧量0.006g/羽/m^3/日、噴霧油濃度の平均2.9%、酢酸濃度1.0%)を行い、浮遊粉塵、粒径別浮遊粉塵(除糞4日目から48時間測定)、アンモニア濃度、浮遊一般細菌数を測定した。その結果は、表3(但し、nは、サンプル数)及び図6に示される通りである。図6は、粒径別浮遊粉塵濃度を示した図である。
【0053】
【表3】

【0054】
表3及び図6に示されるように、横断型無窓鶏舎における実証試験では、水のみの噴霧では低下しなかった浮遊粉塵濃度は、希酢酸と植物油との間欠噴霧により、全粉塵量で噴霧前より36%、人に吸気される可能性の高い7μm以下の粉塵で41%低減し、浮遊一般細菌数は43%低減した。
また、アンモニア濃度は、1.4ppmから、噴霧中と噴霧停止後30分間は0.6ppmに低下した。これにより、第1のノズル25から希酢酸のみを1日複数回噴霧するように設定すると、希酢酸によるアンモニア濃度低下の効果をより持続させることができる。
【0055】
以上述べたように本発明によれば、2液混合噴霧ノズル17から各個別に吐出される第1液10及び第2液14は、その吐出直後に、2液混合噴霧ノズル17から吐出される圧縮空気によって直ちに混合霧化された状態で噴霧される。これにより、第1液10及び第2液14が、界面活性剤や撹拌装置等を用いなければ混合できない性状のものであっても、それら界面活性剤や撹拌装置を用いることなく容易に混ぜ合わせて噴霧することができるようになる。また、界面活性剤や撹拌装置が不要になるので、コストの低減化と装置の簡略化とを図ることができる。例えば、第1液10が酸性水溶液、第2液14が油性溶液であるならば、混合しにくい酸性水溶液及び油性溶液を容易に混合霧化させた状態で噴霧することができて、空気中の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気を空中捕獲、落下及び中和させることができ、且つ無窓鶏舎内に付着させた油性溶液によって捕獲させることができる。さらに、この第1液10が、アンモニア低減効果及び細菌低減効果を有するものであれば、鶏舎内のアンモニア濃度及び細菌濃度を確実に低減することができる。
【0056】
また、本発明にあっては、2液混合噴霧ノズル17に供給された第1液10及び第2液14は、ノズル先端中央の第1のノズル25から第1液10が吐出されると共に、この第1のノズル25を中心とする径方向に第1のノズル25及び第2のノズル26を挟んで対称となるように形成された第3のノズル27から第2液14が圧縮空気の流速を利用して吐出される。さらに、第1のノズル25を取り囲んだ第2のノズル26からは圧縮空気が噴出される。これにより、第1〜第3のノズル25〜27から第1液10、第2液14及び圧縮空気を噴出させるので、第1液10及び第2液14をより均一に混合霧化することができるようになる。また、第1〜第3のノズル25〜27のように多孔化し、且つ第2液14の停止に対し、第3のノズル27の圧縮空気の停止のタイミングを遅らせることによって液垂れや目詰まりがし難くなり、そのため、噴霧量の低下を未然に防止することができると共に、例え粉塵により目詰まりしても洗浄が容易である。
【0057】
さらにまた、本発明にあっては、第1及び第3のノズル25,27からの噴霧開始及び停止は、制御盤9にて調圧された圧縮空気が2液混合噴霧ノズル17に具備された複数のノズルピストンを動作させて第1及び第3のノズル25,27を開閉制御することによって行われる。これにより、第1及び第3のノズル25,27からの噴霧開始及び停止を確実且つ容易に液垂れすることなく行うことができる。
【0058】
さらに、本発明にあっては、制御盤9は、予め設定された2液混合噴霧ノズル17による噴霧開始時刻、噴霧時間、間欠噴霧時間及び噴霧間隔時間での最適な間欠噴霧に従って第1液10及び第2液14を混合霧化した状態で噴霧すると共に、第1液10のみの噴霧設定が可能とされている。これにより、第1液10及び第2液14を所望する時間に所望する量だけ混合霧化させて噴霧することができるので、噴霧量の調整を容易化することができる。また、第1液10のみの噴霧も可能となり、用途に合わせた噴霧、すなわち第1液10(希酢酸)のみを1日複数回噴霧するように設定すると、希酢酸によるアンモニア濃度低下の効果をより持続させることが可能となる。
【0059】
さらに、本発明によれば、2液混合噴霧ノズル17には、第1のノズル25のノズル開度調整を行う第1のノズル開度調整部32と、第3のノズル27のノズル開度調整を行う第3のノズル開度調整部33と、これら第1、第3のノズル開度調整部32,33及び制御盤9によって調圧された圧縮空気によって、第1液噴霧量と第2液噴霧量、すなわち第2液14の混合濃度又は割合、及び噴霧粒径を調整する噴霧量調整部34とが備えられている。これにより、第1液噴霧量と第2液噴霧量、すなわち第2液14の混合濃度又は割合、及び噴霧粒径を容易、且つ細かく調整することができる。
【0060】
さらに、本発明によれば、第1液希釈タンク13内の水位調整は、この第1液希釈タンク13内に設けられた水位計18の検出値に基づいた制御盤9が、設定時間に応じて駆動する定量ポンプ11を介して一定量の原液を第1液希釈タンク13に供給させると共に、水位に応じて開閉する電磁弁24を介して一定量の第1液10の溶媒としての水道水を供給させることによって、第1液希釈タンク13内は常に一定濃度の第1液10で満たされる。これにより、一定濃度の第1液10を常に2液混合噴霧ノズル17に安定供給することができる。また、定量ポンプ11を駆動させる設定時間を増減調整することによって、第1液10の濃度を所望の濃度に変えることができる。
【0061】
さらに、本発明によれば、第1液希釈タンク13内の水位が下位レベルに達すると、水位が上位レベルに達するまでの間は第1液10の噴霧は停止される。これにより、2液混合噴霧ノズル17から噴霧される第1液10を常に一定濃度とすることができ、第1液作成途中の高濃度な第1液10を噴霧することを防止することができる。
【0062】
さらに、本発明にあっては、無窓鶏舎内に1個乃至複数個配置された2液混合噴霧ノズル17から混合霧化させた酸性水溶液と油性溶液とを間欠噴霧すると、無窓鶏舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気が空中捕獲、落下及び中和させられ、且つ無窓鶏舎内に付着させた油性溶液によって捕獲される。これにより、酸性水溶液と油性溶液とを界面活性剤や撹拌装置を用いることなく容易に混ぜ合わせた状態で噴霧することができるので、コストの低減化と装置の簡素化とを図ることができる。そのうえ、無窓鶏舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気の再飛散を防止することができると共に、浮遊粉塵濃度、浮遊細菌濃度及び臭気濃度を低減させて無窓鶏舎内の環境を改善することができる。
【0063】
なお、本発明は、無窓鶏舎のみに適用されるものではなく、例えば、豚舎等の畜舎に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の無窓畜舎内用噴霧装置の構成図である。
【図2】同例における2液混合噴霧ノズルのノズル先端の内部構造を示した側断面図である。
【図3】同例における2液混合噴霧ノズルのノズル先端の正面図である。
【図4】希釈植物油噴霧(1回/日)による粉塵濃度の変化を示した図である。
【図5】希釈植物油噴霧(2回/日)による粉塵濃度の変化を示した図である。
【図6】粒径別浮遊粉塵濃度を示した図である。
【符号の説明】
【0065】
1 噴霧装置(無窓畜舎内用噴霧装置)
2 コンプレッサ(圧縮空気発生手段)
4(34) 制御スイッチ(噴霧量調整部)
10 第1液
13 第1液希釈タンク(第1液タンク)
14 第2液
15 第2液加圧タンク
17 2液混合噴霧ノズル
18 水位計(検出手段)
22 定量ポンプ
24 電磁弁
25 第1のノズル
26 第2のノズル
27 第3のノズル
32(34) 第1のノズル開度調整部(噴霧量調整部)
33(34) 第2のノズル開度調整部(噴霧量調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無窓畜舎内に第1液と第2液とを混ぜ合わた状態で噴霧する無窓畜舎内用噴霧装置において、
前記第1液を貯留し、且つ前記貯留した第1液を吸排出する駆動ポンプが連なった第1液タンクと、
前記第2液を加圧圧送可能に貯留した第2液加圧タンクと、
圧縮空気を発生させる圧縮空気発生手段と、
前記圧縮空気発生手段が発生した圧縮空気を調圧して排出する制御手段と、
前記駆動ポンプを介して搬送された第1液タンクからの第1液、前記第2液加圧タンクから圧送された第2液、及び前記制御手段から排出された圧縮空気が供給されると共に、前記供給された第1液及び第2液を各個別に吐出した直後に前記供給された圧縮空気により混合霧化した状態で噴霧する2液混合噴霧ノズルとを備えたことを特徴とする無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項2】
前記2液混合噴霧ノズルは、
前記駆動ポンプを介して搬送された第1液タンクからの第1液を吐出するようにノズル先端中央に形成された第1のノズルと、
前記第1のノズルを取り囲むように形成され、前記制御手段から供給された圧縮空気を排出する環状の第2のノズルと、
前記第1のノズルを中心とする径方向に、前記第1のノズルを挟んで対称となるように形成され、前記第2液加圧タンクから圧送された第2液を、前記制御手段から供給された圧縮空気により吐出する第3のノズルとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項3】
前記2液混合噴霧ノズルは、前記制御手段から供給された圧縮空気により前記第1及び第3のノズルを各個別に開閉制御して、前記第1及び第3のノズルからの噴霧開始及び停止する複数のノズルピストンを備えていることを特徴とする請求項2に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記複数のノズルピストンの何れかを用いて第3のノズルを閉制御したのち、前記第3のノズルからの圧縮空気の噴出を停止するように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記2液混合噴霧ノズルによる噴霧開始時刻、噴霧時間、間欠噴霧時間及び噴霧間隔時間での最適な間欠噴霧が可変設定可能、且つ前記第1液のみの噴霧設定が可能であることを特徴とする請求項4に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項6】
前記2液混合噴霧ノズルは、
前記第1のノズルのノズル開度調整を可能とする第1のノズル開度調整部と、
前記第3のノズルのノズル開度調整を可能とする第3のノズル開度調整部と、
前記第1、第3のノズルのノズル開度調整部及び前記制御手段によって調圧された圧縮空気によって、第1液噴霧量と第2液噴霧量、すなわち第2液の混合濃度又は割合、及び噴霧粒径を調整可能とする噴霧量調整部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項7】
前記第1液タンクは、
前記第1液タンク内の第1液の水位を検出して前記制御手段に出力する検出手段と、
前記制御手段によって駆動制御される定量ポンプを介して前記第1液の原液を供給する供給タンクと、
前記制御手段によって開閉制御される電磁弁を介して前記第1液の溶媒を供給する溶媒供給手段とを備え、
前記検出手段が第1液タンク内の水位が下位レベルに達したことを検出すると、前記制御手段により定量ポンプが予め設定された設定時間だけ駆動されて前記供給タンクから第1液の原液が供給されると共に、前記制御手段により電磁弁が開制御されて前記溶媒供給手段から前記第1液の溶媒が供給され、また、前記検出手段が第1液タンク内の水位が高位レベルに達したことを検出すると、前記電磁弁が閉制御されて前記第1液の溶媒の供給が停止されることを特徴とする請求項1に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記検出手段が第1液タンク内の水位が下位レベルに達したことを検知した後、上位レベルに達したことを検知するまでの間は、前記2液混合噴霧ノズルからの噴霧を停止することを特徴とする請求項7に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項9】
前記第1液は酸性水溶液であると共に、前記第2液は油性溶液であることを特徴とする請求項1に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項10】
前記第1液は、アンモニア低減効果及び細菌低減効果を有するものであることを特徴とする請求項9に記載の無窓畜舎内用噴霧装置。
【請求項11】
請求項1乃至10に記載の無窓畜舎内用噴霧装置を用いた無窓畜舎内の環境改善方法であって、前記第1液としての酸性水溶液及び第2液としての油性溶液を各個別に吐出した直後に前記供給された圧縮空気により混合霧化させた状態で噴霧する2液混合噴霧ノズルを前記無窓畜舎内に1個乃至複数個配置し、前記2液混合噴霧ノズルから混合霧化させた酸性水溶液と油性溶液とを前記無窓畜舎内で間欠噴霧して、前記無窓畜舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気を空中捕獲、落下及び中和させ、且つ前記無窓畜舎内に付着させた前記油性溶液で捕獲して再飛散を防止して、浮遊粉塵濃度、浮遊細菌濃度及び臭気濃度を低減させて前記無窓畜舎内の環境を改善することを特徴とする無窓畜舎内の環境改善方法。
【請求項12】
無窓畜舎内に第1液と第2液とを混ぜ合わせた状態で噴霧する無窓畜舎内用噴霧方法において、
前記第1液を貯留し、且つ前記貯留した第1液を搬送する第1の行程と、
前記第2液を圧送可能に貯留する第2の行程と、
圧縮空気を発生させる圧縮空気発生行程と、
前記圧縮空気発生行程で発生させた圧縮空気を調圧して排出する制御行程と、
前記第1の行程により搬送された第1液、前記第2の行程から圧送された第2液、及び前記制御行程から排出された圧縮空気が供給されると共に、前記供給された第1液及び第2液を吐出直後に前記供給された圧縮空気により混合霧化した状態で噴霧する2液混合噴霧行程とを有することを特徴とする無窓畜舎内用噴霧方法。
【請求項13】
請求項12に記載の無窓畜舎内用噴霧方法を用いた無窓畜舎内の環境改善方法であって、前記第1液としての酸性水溶液及び第2液としての油性溶液を各個別に吐出した直後に前記供給された圧縮空気により混合霧化させた状態で前記無窓畜舎内に間欠噴霧する行程と、前記無窓畜舎内に混合噴霧した酸性水溶液と油性溶液とによって無窓畜舎内の浮遊粉塵、浮遊細菌及び臭気を空中捕獲、落下及び中和させ、且つ前記無窓畜舎内に付着させた前記油性溶液で捕獲して再飛散を防止することによって浮遊粉塵濃度、浮遊細菌濃度及び臭気濃度を低減させて前記無窓畜舎内の環境を改善する行程とを有することを特徴とする無窓畜舎内の環境改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−246710(P2006−246710A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63624(P2005−63624)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年9月10日 東京農工大学 笹尾 彰発行の「第63回 農業機械学会年次大会 講演要旨」に発表
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】