説明

無線受信装置

【課題】 不要電波によって影響を受けることのないスケルチ回路を備えた無線受信装置を実現する。
【解決手段】 検波出力に含まれるノイズ成分によりスケルチの動作を制御する無線受信装置であって、検波出力に含まれるオーディオ信号中の中高域ノイズ成分を抽出する中高域ノイズ抽出手段30と、検波出力に含まれるオーディオ信号中の低域ノイズ成分を抽出する低域ノイズ抽出手段40と、前記中高域ノイズ抽出手段で抽出された中高域ノイズ成分と、前記低域ノイズ抽出手段で抽出された低域ノイズ成分との少なくとも一方が所定のレベルに達したときにオーディオ信号の出力を遮断する制御手段21と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は無線受信装置に関し、特に、スケルチ回路を備えた無線受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】無線受信装置では、所望の周波数の電波を受信して得たRF(ラジオ周波数)信号を検波器で検波してAF(オーディオ周波数)信号を得ているが、所望の電波が入感していない場合(無信号時)にAF信号として雑音のみが出力される。この状態を防止するため、スケルチ回路によってAF信号の出力を停止させるようにしている。
【0003】従来のスケルチ回路では、無線受信機等において受信したRF信号を検波器で検波してAF信号を得た後、7kHz〜30kHz程度のバンドパスフィルタでAF信号中の中高域ノイズ成分を抽出し、アンプを通して中高域ノイズ成分のみを得てノイズ検波回路に入力し、ノイズ検波回路からノイズ量に比例した直流電圧を取り出す。
【0004】そして、このノイズ量に比例した直流電圧をマイクロコンピュータ(以下マイコンという)のアナログポートに入力し、そのレベルによってスケルチのオン/オフを制御している。
【0005】それにより、RF信号が入感しない場合のスケルチ・オンの状態では、AFパワーアンプ入力側でAF信号を遮断するように制御し、スピーカからの音声出力をオフする。また、RF信号が入感している場合のスケルチ・オフの状態では、AFパワーアンプ入力においてAF信号を通過させるように制御し、検波により得られたAF信号をスピーカから出力させている。
【0006】なお、このようなスケルチ回路は、FM検波を行う無線受信装置において一般的に用いられている。これは、FM検波回路において、使用する音声周波数帯域に影響を与えないからである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】近年、各種コンピュータ機器のクロック周波数が高くなってきており、不要輻射も多くなってきている。また、ページャなどの強い電波も存在している。これらの電波やその高調波成分(以下、まとめて不要電波と呼ぶ)は、無線通信に用いられる周波数に近接している。そして、コンピュータ機器からの不要輻射やページャの電波は、ディジタルデータ(パルス)で変調されたものである。
【0008】無線受信装置が上記の不要電波を受信して検波した場合には、比較的低いディジタルパルスに起因した低周波ノイズが出力されることを本件出願の発明者は見いだした。
【0009】そして、このような不要電波を検波すると、低い周波数のディジタルパルスに起因した低周波ノイズが得られるため、RF信号が無信号であるときのような比較的高い周波数のAF信号は検波出力に含まれない状態になる。この結果、所望のAF信号ではないのにも拘わらずスケルチ回路が開くようになり(スケルチ・オフの状態)、不要電波を検波した結果のディジタルパルスに起因した低周波ノイズがスピーカから大音量で出力されることになる。したがって、本発明は、不要電波によって影響を受けることのないスケルチ回路を備えた無線受信装置を実現することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】(1)請求項1記載の発明は、検波出力に含まれるノイズ成分によりスケルチの動作を制御する無線受信装置であって、検波出力に含まれるオーディオ信号中の中高域ノイズ成分を抽出する中高域ノイズ抽出手段と、検波出力に含まれるオーディオ信号中の低域ノイズ成分を抽出する低域ノイズ抽出手段と、前記中高域ノイズ抽出手段で抽出された中高域ノイズ成分と、前記低域ノイズ抽出手段で抽出された低域ノイズ成分との少なくとも一方が所定のレベルに達したときにオーディオ信号の出力を遮断する制御手段と、を備えたことを特徴とする無線受信装置である。
【0011】この発明では、検波出力に含まれるノイズ成分によりスケルチの動作を制御する際に、検波出力に含まれるオーディオ信号中の中高域ノイズ成分と、低域ノイズ成分とを抽出するようにして、抽出された中高域ノイズ成分と低域ノイズ成分との少なくとも一方が所定のレベルに達したときにオーディオ信号の出力を遮断するように制御している。
【0012】これにより、所望の電波が受信できない場合には中高域ノイズ成分によりスケルチをオンさせる。また、不要電波を受信した場合には低域ノイズ成分によりスケルチをオンさせる。
【0013】この結果、不要電波によって影響を受けることのないスケルチ回路を備えた無線受信装置を実現できる。なお、前記低域ノイズ抽出手段は、音声周波数以下の低域ノイズ成分を抽出する、ことが望ましい。
【0014】このように音声周波数以下の低域ノイズ成分を抽出することで、不要電波を検波した結果のディジタルパルスに起因した低周波ノイズがスピーカから大音量で出力されるといった事態を確実に回避することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態例の無線受信装置を詳細に説明する。なお、本実施の形態例の無線受信装置は単体の無線受信装置であってもよいし、無線送信装置と無線受信装置とが一体となった送受信装置(トランシーバ)であってもよい。以下の説明では、周波数変調されたRF信号を受信する無線受信装置について本発明を適用したものを実施の形態例の具体例として用いる。
【0016】<無線受信装置の構成>この図1において、10は電波の受信を行うアンテナ、11は受信したRF信号を増幅するRFアンプ、12は周波数変換を行うための局部発振信号を生成する局部発振部(OSC)、13は受信信号と局部発振信号とを混合して中間周波数信号(IF信号)を生成する周波数変換部、14はIF信号を増幅するIFアンプ、15はIF信号をFM検波してAF(オーディオ周波数)信号を復調するFM検波器、16は送信時にプリエンファシスによって強調されているAF信号の高域成分を減衰させるディエンファシス回路、17はAF信号を一定レベルまで増幅するAFプリアンプ、18は後述するスケルチ制御信号によりAF信号を遮断または通過させるAFスイッチ、19はスピーカ20を駆動するレベルまでAF信号を増幅するAFパワーアンプである。
【0017】なお、ここではシングルスーパヘテロダインの無線受信装置を示したが、これに限定されるものではなく、ダブルスーパヘテロダインやトリプルスーパヘテロダイン、または、さらに他の形式であってもよい。
【0018】21は後述する中高域ノイズ抽出手段30で抽出された中高域ノイズ成分と、後述する低域ノイズ抽出手段40で抽出された低域ノイズ成分との少なくとも一方が所定のレベルに達したときに、AFスイッチ18を遮断状態にする制御手段としてのマイコンである。
【0019】30は検波出力に含まれるAF信号中の中高域ノイズ成分を抽出する中高域ノイズ抽出手段であり、以下の31〜33を備える。31は7kHz〜30kHz程度の中高域ノイズ成分を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)、32はBPF31を通過した中高域ノイズ成分を増幅するアンプ、33は増幅された中高域ノイズ成分を整流して中高域ノイズ成分の振幅に応じた電圧を生成してマイコン21に印加する検波器である。
【0020】40は検波出力に含まれるAF信号中の低域ノイズ成分を抽出する低域ノイズ抽出手段であり、以下の41〜43を備える。41は100Hz程度以下の低域ノイズ成分を通過させるローパスフィルタ(LPF)、42はLPF41を通過した低域ノイズ成分を増幅するアンプ、43は増幅された低域ノイズ成分を整流して低域ノイズ成分の振幅に応じた電圧を生成してマイコン21に印加する検波器である。なお、LPF41の通過周波数の上限は100Hzに限定されず、音声周波数(300Hz〜)より低い周波数であれば、150Hzや200Hzであってもよい。
【0021】<無線受信装置の動作>(1)十分なレベルの目的の電波を受信した場合:アンテナ10で受信された電波はRF信号としてRFアンプ11で増幅される。そして、増幅されたRF信号は、局部発振部12からの局部発振信号と混合されて、RF信号の周波数と局部発振信号の周波数との差の周波数に相当する中間周波数のIF信号に変換される。
【0022】ここで、受信した電波は十分なレベルであって目的の電波であるから、このIF信号はIFアンプ14で振幅制限されつつ増幅される。そして、IF信号はFM検波器15でFM検波されてAF信号が復調される。
【0023】この状態では一定レベルのAF信号が出力されている。ここで、AF信号は音声信号が主な成分であり、300Hz〜3kHz程度に信号が分布している。このため、中高域ノイズ抽出手段30及び低域ノイズ抽出手段40で検出される信号成分はほとんどない。このため、マイコン21はAFスイッチ18を通過状態(スケルチ・オフの状態)に制御する。
【0024】また、FM検波器15からのAF信号はディエンファシス回路16によって、送信時のプリエンファシスによって強調されているAF信号の高域成分が減衰されてフラットな周波数特性に戻される。さらに、AF信号はAFプリアンプ17で一定レベルまで増幅され、AFスイッチ18を通過し、AFパワーアンプによりスピーカ20を駆動するレベルまで増幅される。そして、スピーカ20からAF信号に応じた音声が出力される。
【0025】(2)目的の電波が受信できない場合、または、微弱な電波を受信した場合:目的の電波が受信できない場合、または、微弱な電波を受信した場合には、RFアンプ11とIFアンプ14では自動利得調整(図示せず)の機能が働かず、各アンプは最大利得で動作する。
【0026】このため、FM検波器15でFM検波されて復調されたAF信号は、中高域のノイズ成分が主成分を占めている。よって、BPF31を通過した7kHz〜30kHz程度の中高域ノイズ成分はアンプ32で増幅され、検波器33で整流されて中高域ノイズ成分電圧となってマイコン21に印加される。
【0027】マイコン21は、上記の中高域ノイズ成分が所定のレベルに達したことを受けて、AFスイッチ18を遮断状態(スケルチ・オンの状態)に制御する。これにより、AFパワーアンプ入力側でAF信号を遮断され、スピーカからの音声出力が停止される。
【0028】(3)目的の電波が受信できておらず、かつ、不要電波を受信した場合:ここで、「不要電波」とは、各種コンピュータ機器からの不要輻射、ページャのための電波、あるいは、これらの高調波成分であって、パルス信号で変調された成分を含んだものを意味している。
【0029】このように、目的の電波が受信されておらず、かつ、不要電波を受信した場合には、アンテナ10で受信された不要電波はRF信号としてRFアンプ11で増幅される。そして、増幅されたRF信号は、局部発振部12からの局部発振信号と混合されて、RF信号の周波数と局部発振信号の周波数との差の周波数に相当する中間周波数のIF信号に変換される。このIF信号はIFアンプ14で振幅制限されつつ増幅される。そして、IF信号はFM検波器15でFM検波されてAF信号が復調される。
【0030】この状態では、不要電波が検波されたことによるパルス状の低域成分を主成分とするAF信号が得られる。このパルス状の低域成分(低域ノイズ成分)は、音声周波数(300Hz〜3kHz)以下に主な成分を有している。このため、LPF41を通過した100Hz以下の低域ノイズ成分はアンプ42で増幅され、検波器43で整流されて低域ノイズ成分電圧となってマイコン21に印加される。
【0031】マイコン21は、上記の低域ノイズ成分が所定のレベルに達した旨を受けて、AFスイッチ18を遮断状態(スケルチ・オンの状態)に制御する。この制御により、マイコン21は、AFパワーアンプ入力側でAF信号を遮断し、スピーカからの音声出力を停止させる。
【0032】すなわち、このような不要電波を受信しているときは、RF信号が無信号であるときのような中高域ノイズ成分は検波出力に含まれていないために従来のスケルチ回路では対処できない状態(スケルチ・オフの状態)に陥るが、本実施の形態例によればスケルチ・オンの状態に制御することができ、不快な低域ノイズをスピーカから出力させないようにすることができる。
【0033】図2は本実施の形態例の無線受信装置のスケルチ特性を示す特性図であり、AF信号の周波数とスケルチ動作感度の様子を示している。この図2から明らかなように、本実施の形態例によれば、不要電波に含まれる低域ノイズ成分が検出された場合にはスケルチをオンしてAF信号の出力を有効に遮断できるようになる。
【0034】<その他の実施の形態例>■以上の実施の形態例では、中高域ノイズ抽出手段30の抽出出力と低域ノイズ抽出手段40の抽出出力とを混合してマイコン21のポートに入力するようにしていたが、マイコン21のポートに余裕がある場合には、独立してマイコン21に入力する構成であってもよい。このようにすることで、中高域ノイズ成分と低域ノイズ成分とで独立してマイコン21が制御することが可能になる。
【0035】■また、以上の実施の形態例では、中高域ノイズ抽出手段30の抽出出力と低域ノイズ抽出手段40の抽出出力とを混合してマイコン21のポートに入力するようにしていたが、それぞれを独立してレベル調整してからマイコン21のポートに入力する構成であってもよい。このようにすることで、中高域ノイズ成分と低域ノイズ成分とで独立して制御することが可能になる。
【0036】■80Hz〜90Hz程度の低域信号をトーンスケルチ用の信号として音声信号に重畳して使用することがある。このようなトーンスケルチ用の信号を低域ノイズ抽出手段40が抽出すると、目的の電波を受信しているにも拘わらずスケルチがオンしてAF信号が遮断されてしまうこともある。
【0037】そこで、LPF41では、トーンスケルチに使用される周波数のみを通過させないようにするか、別途トーンスケルチの周波数を検知してマイコン21に通知する回路を設けるようにすればよい。これにより、不要電波による低域ノイズ成分とトーンスケルチの信号とを区別して、所望の制御をすることが可能になる。
【0038】
【発明の効果】以上実施の形態例と共に詳細に説明したように、検波出力に含まれるノイズ成分によりスケルチの動作を制御する際に、検波出力に含まれるオーディオ信号中の中高域ノイズ成分と、低域ノイズ成分とを抽出するようにして、抽出された中高域ノイズ成分と低域ノイズ成分との少なくとも一方が所定のレベルに達したときにオーディオ信号の出力を遮断するように制御しているので、所望の電波が受信できない場合には中高域ノイズ成分によりスケルチをオンさせ、不要電波を受信した場合には低域ノイズ成分によりスケルチをオンさせる。これにより、不要電波を検波した結果のディジタルパルスに起因した低周波ノイズがスピーカから大音量で出力されるといった事態を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例の無線受信装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態例の無線受信装置のスケルチ特性を示す特性図である。
【符号の説明】
10 アンテナ
11 RFアンプ
12 局部発振部
13 周波数変換部
14 IFアンプ
15 FM検波器
16 ディエンファシス回路
17 AFプリアンプ
18 AFスイッチ
19 AFパワーアンプ
20 スピーカ
21 マイコン
31 BPF
32 アンプ
33 検波器
41 LPF
42 アンプ
43 検波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 検波出力に含まれるノイズ成分によりスケルチの動作を制御する無線受信装置であって、検波出力に含まれるオーディオ信号中の中高域ノイズ成分を抽出する中高域ノイズ抽出手段と、検波出力に含まれるオーディオ信号中の低域ノイズ成分を抽出する低域ノイズ抽出手段と、前記中高域ノイズ抽出手段で抽出された中高域ノイズ成分と、前記低域ノイズ抽出手段で抽出された低域ノイズ成分との少なくとも一方が所定のレベルに達したときにオーディオ信号の出力を遮断する制御手段と、を備えたことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】 前記低域ノイズ抽出手段は、音声周波数以下の低域ノイズ成分を抽出する、ことを特徴とする請求項1記載の無線受信装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−69018(P2001−69018A)
【公開日】平成13年3月16日(2001.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−240819
【出願日】平成11年8月27日(1999.8.27)
【出願人】(000004754)日本マランツ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】