無線機、無線通信方法
【課題】専用の中継局を省略して、移動型無線機間の中継無線通信を行う。
【解決手段】中継局探索用電波送信手段31は、第1の順番に従い、各移動型無線機(第1及び第2の移動型無線機40,41並びに第3の移動型無線機42)に中継局探索用電波を送信させる。測定手段32は、各移動型無線機に、他の各移動型無線機から中継局探索用電波の電界強度を測定させる。収集手段33は、各移動型無線機における電界強度についての測定結果に係る情報を収集情報として収集する。決定手段34は、第1及び第2の移動型無線機40,41間の無線通信について中継局となる第3の移動型無線機42を、収集情報に基づき決定する。中継作動手段35は、中継局に決定された第3の移動型無線機42を、第1及び第2の移動型無線機40,41間の無線通信の際に、中継局として作動させる。
【解決手段】中継局探索用電波送信手段31は、第1の順番に従い、各移動型無線機(第1及び第2の移動型無線機40,41並びに第3の移動型無線機42)に中継局探索用電波を送信させる。測定手段32は、各移動型無線機に、他の各移動型無線機から中継局探索用電波の電界強度を測定させる。収集手段33は、各移動型無線機における電界強度についての測定結果に係る情報を収集情報として収集する。決定手段34は、第1及び第2の移動型無線機40,41間の無線通信について中継局となる第3の移動型無線機42を、収集情報に基づき決定する。中継作動手段35は、中継局に決定された第3の移動型無線機42を、第1及び第2の移動型無線機40,41間の無線通信の際に、中継局として作動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば特定小電力無線機等の無線通信システム、移動型無線機、無線通信方法及びプログラムに関し、詳しくは中継局を利用して無線通信を行うことのできる無線通信システム、移動型無線機、無線通信方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の無線通信システムでは、所定地点に中継局を設置し、該中継局が、相互に電波の届かない2個の特定小電力無線機間の無線通信に対して、半複信通信方式により中継することにより、両特定小電力無線機間の無線通信を可能にしている。なお、特定小電力無線機とは、電波法並びにその関係省令により規定された無線電話用無線設備に準拠した無線機をいうものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−102983号公報(図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の無線通信システムでは、専用の中継局が必要になる。また、中継は1段に限定されており、2個の特定小電力無線機が、中継により無線通信が可能になる領域は、固定されているとともに、小さい。
【0005】
本発明の目的は、2個の移動型無線機が、相手からの電波を受信できない状況にある場合に、専用の中継局を省略して、無線通信を可能にする無線通信システム、移動型無線機、無線通信方法及びプログラムを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、中継地点を柔軟に変更することにより、広範な移動に対処して、無線通信を行うことができる無線通信システム、移動型無線機、無線通信方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信システムは、相互に相手側からの電波を受信不能となっている地点に存在する各1個の第1及び第2の移動型無線機、及び第1及び第2の移動型無線機とは別の移動型無線機であってかつ第1及び第2の移動型無線機のユーザとは別のユーザにより携帯される少なくとも1個の第3の移動型無線機を有している。該無線通信システムは次の各手段を有している。
第1の順番に従い、各移動型無線機に中継局探索用電波を送信させる中継局探索用電波送信手段、
各移動型無線機に、他の各移動型無線機から中継局探索用電波の電界強度を測定させる測定手段、
各移動型無線機における電界強度についての測定結果に係る情報を収集情報として収集する収集手段、
第1及び第2の移動型無線機間の無線通信について中継局となる第3の移動型無線機を、収集情報に基づき決定する決定手段、及び
中継局に決定された第3の移動型無線機を、第1及び第2の移動型無線機間の無線通信の際に、中継局として作動させる中継作動手段。
【0008】
本発明の移動型無線機は次の各手段を有している。
中継局探索用電波を送信する中継局探索用電波送信手段、
他の各移動型無線機からの中継局探索用電波についての電界強度を測定する測定手段、
各移動型無線機における電界強度についての測定結果情報を収集情報として収集する収集手段、
通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機を、蓄積した収集情報に基づき決定する決定手段、及び
決定した中継局用移動型無線機へ、自機と通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知する通知手段。
【0009】
本発明の無線通信方法は次の各ステップを有している。
中継局探索用電波の送信に係る順番に従い自己の順番が来ると、中継局探索用電波を送信するステップ、
他の移動型無線機から中継局探索用電波を受信した場合は、該中継局探索用電波の電界強度を測定し測定値を該他の移動型無線機に対応付けて収集情報として記憶するステップ、
収集情報の送信に係る順番に従い自己の順番が来ると、収集情報を送信するステップ、
他の移動型無線機から該他の移動型無線機の収集情報を受信した場合は、該他の移動型無線機の収集情報を自己の収集情報に追加して、自己の収集情報を更新するステップ、
通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機を、蓄積した収集情報に基づき決定するステップ、及び
決定した中継局用移動型無線機へ、自機と通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知するステップ。
【0010】
本発明のプログラムは、コンピュータを本発明の無線通信システム又は移動型無線機の各手段として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、他のユーザに携帯される移動型無線機を中継局として使用するので、専用の中継局を省略できる。また、中継局の地点を柔軟に変更できるので、広範囲の無線通信に対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一段中継について特定小電力無線機用無線システムにおける各特定小電力無線機の現在地及び電波到達圏を示したものである。
【図2】各特定小電力無線機が図1の状態にある場合の中継局探索の前期部分における中継局探索用電波の電界強度の測定結果を示す図である。
【図3】Re終了時の所定の無線機が保有する測定結果情報を示す図である。
【図4】Rc終了時の所定の無線機が保有する測定結果情報を示す図である。
【図5】一段中継において使用される周波数の説明図である。
【図6】複数段中継において使用される周波数の説明図である。
【0013】
【図7】特定小電力無線機用無線システムの複数段中継が適用される各特定小電力無線機の現在地を示したものである。
【図8】各無線機が図7に示す現在地に存在する状況下、中継局探索が終了した時点での所定の特定小電力無線機の蓄積された収集情報を示す図である。
【図9】無線通信システムのブロック図である。
【図10】収集手段の詳細なブロック図である。
【図11】移動型無線機のブロック図である。
【図12】無線通信方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は一段中継について特定小電力無線機用無線システム10における各特定小電力無線機の現在地及び電波到達圏を示したものである。特定小電力無線機用無線システム10は、複数の特定小電力無線機15a〜15eを装備する。特定小電力無線機15a〜15eの各ユーザは所定のグループのメンバーとなっている。各ユーザは、作業や娯楽の最中、特定の場所に静止せず、自分の特定小電力無線機を携帯して、任意に移動している。特定小電力無線機用無線システム10では、各特定小電力無線機は、その電波の到達圏内に、通信相手の特定小電力無線機が存在するときは、該通信相手の特定小電力無線機と直接、通信が可能となっているが、圏外となっているときは、該通信相手の特定小電力無線機と通信するためには、中継局の中継を必要とする。
【0015】
図1において、Pa〜Peはそれぞれ特定小電力無線機15a〜15eの現在の地点を示している。電波到達圏16a〜16eはそれぞれ特定小電力無線機15a〜15eのものに対応している。各特定小電力無線機15a〜15eの電波は、電波到達圏16a〜16eの外では、圏外となって受信不能である。図1によると、特定小電力無線機15aと特定小電力無線機15eとは、相互に相手の電波を受信できない。また、特定小電力無線機15bは、特定小電力無線機15a,15eの両方の電波を受信可能であり、かつ自分の電波を特定小電力無線機15a,15eの両方へ送信可能な地点に存在している。
【0016】
特定小電力無線機15a−15e間の無線通信を可能にするために、従来の無線通信システムでは、特定小電力無線機15a,15eの両方から電波を受信できる地点、例えば電波到達圏16aと電波到達圏16eとの重複領域内の地点に、専用の中継局を設置し、該中継局が特定小電力無線機15a−15e間の無線通信を中継するようにしている。このような専用中継局は、設置場所が固定的となっているため、その後、特定小電力無線機15a,15eのいずれかが専用中継局の圏外へ移動すると、それに伴い、中継が困難になってしまう。
【0017】
これに対して、特定小電力無線機用無線システム10では、専用の中継局が省略され、他機の中から中継局が探索される。すなわち、特定小電力無線機15a,15eの両方と無線通信可能になる他機がないかを探索し、見つかれば、該他機を、特定小電力無線機15a−15e間の無線通信の中継局として機能させることにしている。図1の例では、地点Pbに存在する特定小電力無線機15bが特定小電力無線機15a−15e間の無線通信について中継局として機能することになる。
【0018】
中継局探索は、各特定小電力無線機が中継局探索用電波を順番に送信する一方、他の特定小電力無線機が受信した中継局探索用電波の電界強度を測定する前期部分と、各特定小電力無線機が、前期部分で測定した電界強度の測定結果を順番に送信する後期部分とに分けられる。
【0019】
図2は特定小電力無線機15a〜15eが図1の状態にある場合の中継局探索の前期部分における中継局探索用電波の電界強度の測定結果を示している。図2並びに後述の図3及び図4において、特定小電力無線機15a〜15eは、それぞれ無線機a〜eで簡略的に記載されている。
【0020】
所定のグループに属する無線機a〜eには、中継局探索の前期部分及び探索後期部分において所定の順番があらかじめ設定されている。該順番は、例えば、前期部分では、無線機a,b,c,d,eとされ、後期部分では、無線機e,d,c,b,aとされている。
これに従い、探索の前期部分の期間は、無線機a,b,c,d,eにそれぞれ割り当てられて、部分期間Ta,Tb,Tc,Td,Teが、その順番で設定されている。Ta,b,Tc,Td,Teは、典型的には、等しい値Tである。探索の後期部分の期間は、無線機e,d,c,b,aにそれぞれ割り当てられて、部分期間Re,Rd,Rc,Rb,Raが、その順番で設定されている。Re,Rd,Rc,Rb,Raは、典型的には、等しい値R である。Ta,Tb,Tc,Td,Te,Re,Rd,Rc,Rb,Raの各部分期間の間には、通常、切替わりのための準備時間が挿入される。
【0021】
中継局を必要とする無線通信における呼局としての特定小電力無線機15aが、中継局の決定を行う場合には、Raは省略できる。また、呼局としての特定小電力無線機15aが中継局を決定する場合は、特定小電力無線機15aが、中継局を決定できる電界強度の測定結果情報を入手次第、後期部分を途中終了してもよい。例えば、後期部分のRdの終了時に、中継局とすべき特定小電力無線機を決めることができる測定結果情報を入手できたならば、その時点で、中継局探索の後期部分は終了し、Rc以降は中止できる。
【0022】
無線機aが無線機eへの無線通信を実行しようとする場合、無線機aは、所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へTaにおいて送信する。該中継局探索用電波には、少なくとも、中継局探索用電波を送信している無線機のID、中継局探索する無線通信の呼局のID、及び被呼局のIDに係る情報が含まれる。図1の実施例では、呼局は無線機aであり、被呼局は無線機eである。また、該Taでは、無線機aが中継局探索用電波を送信するのであるから、中継局探索用電波を送信している無線機のIDは無線機aのIDとなる。
【0023】
該実施例では、中継局探索の前期部分及び後期部分の送信順番は、あらかじめ設定されているが、それら順番をあらかじめ設定せず、中継局探索ごとに、呼局の無線機が適宜、設定することにして、呼局の無線機が決めた順番に係る情報を中継局探索用電波に含めることもできる。
【0024】
図1の実施例では、電界強度のレベルには、2,1,0の3段階があるものとする。2,1,0は、それぞれ電界強度が強い、弱い、受信不能に対応するものとする。図2の表に示されている中継局探索用電波は、この3段階により示したものである。
【0025】
なお、受信電波の電界強度のレベルを2,1,0の3段階にすることはあくまでも一例であり、3,2,1,0の4段階にしたり、4,3,2,1,0の5段階にすることも適宜可能である。
【0026】
図1 の実施例では、無線機a から送信された中継局探索用電波は、無線機b,cのみに受信される。無線機b,cは、無線機aからの中継局探索用電波により、無線機a,e間無線通信についての中継局探索が開始されたことを認知するとともに、該認知に伴い、今回の中継局探索における以降のTb〜Te,Re〜Raのタイミングを割り出す。
【0027】
無線機b,cは、また、Taにおいて、無線機aからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。その測定結果は、電界強度のレベルが無線機b,cにおいてそれぞれ1,2であったとする。また、無線機d,eは、無線機aから送信された中継局探索用電波を受信しないので、無線機aからの中継局探索用電波の電界強度を測定できず、後に中継局探索を知った時点で、Taに遡って、電界強度の測定レベルを0とすることになる。無線機aから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の1列目に示されている。
【0028】
Tbでは、無線機bが所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へ送信する。図1の例では、無線機bから送信された中継局探索用電波は、無線機a,eのみに受信される。無線機eは、無線機b からの中継局探索用電波により、無線機a,e間の無線通信についての中継局探索が開始されたことを初めて認知するとともに、該中継局探索における以降のTc〜Te,Re〜Raのタイミングを割り出す。
【0029】
無線機cは、Tbにおいて、無線機bからの中継局探索用電波を受信しないものの、Tbのタイミングは割り出し済みであるので、結局、無線機a,c,eが、Tbにおいて、無線機bからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。Tbにおける測定結果は、電界強度のレベルが無線機a,c,eにおいてそれぞれ1,0,1であったとする。無線機dは、無線機bから送信された中継局探索用電波を受信しないので、無線機bからの中継局探索用電波の電界強度を測定できず、後に中継局探索を知った時点で、Tbに遡って、電界強度の測定レベルを0とすることになる。無線機bから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の2列目に示されている。
【0030】
Tcでは、無線機cが所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へ送信する。図1の例では、無線機cから送信された中継局探索用電波は、無線機a,dのみに受信される。無線機dは、無線機cからの中継局探索用電波により、無線機a,e間の無線通信についての中継局探索が開始されたことを初めて認知するとともに、該中継局探索におけるTd〜Teのタイミングを割り出す。
【0031】
無線機b,eは、Tcにおいて、無線機cからの中継局探索用電波を受信しないものの、Tcのタイミングは割り出し済みであるので、結局、無線機a,b,d,eが、Tcにおいて、無線機bからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。無線機cから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の3列目に示されている。
【0032】
Tdでは、無線機dが所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へ送信する。図1の例では、無線機dから送信された中継局探索用電波は、無線機c のみに受信される。無線機a,b,c,eは、無線機dからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。その測定結果は、電界強度のレベルが無線機a,b,d,eにおいてそれぞれ0,0,1,0であったとする。無線機dから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の4列目に示されている。
【0033】
Teでは、無線機e が所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へ送信する。図1の例では、無線機eから送信された中継局探索用電波は、無線機b のみに受信される。無線機a,b,c,dは、Teにおいて、無線機eからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。その測定結果は、電界強度のレベルが無線機a,b,c,dにおいてそれぞれ0,1,0,0であったとする。無線機eから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の5列目に示されている。
【0034】
Teの終了後、中継局探索の後期部分が開始される。Reでは、無線機eが、その時点で、自機及び他機に関して保有している各無線機の電界強度測定結果情報(図2の表の5行目の測定値に係る情報) を収集情報として送信する。無線機eは、中継局探索後期部分に送信を実施する最初のものであるので、他機の電界強度測定結果情報は保有していない。各無線機は、他機から該他機の収集情報を受信しだい、それらを追加することにより自機の収集情報を更新する。なお、他機から該他機の収集情報を受信しても、更新前の収集情報の部分と重複する部分については、原則的には更新しないが、上書きしてもよい。
【0035】
図3はRe終了時の無線機a,bが保有する測定結果情報を示している。Reにおける無線機eの電波は、無線機bは受信するものの、無線機aは受信できないので、Re終了時では、無線機bは、自機及び無線機eの測定結果情報を自機の記憶装置に収集情報として記憶し、無線機aは、自機の記憶装置には、なお、自機の測定結果情報のみしか収集情報として記憶していない。
【0036】
この後、Rdにおいて、無線機dが、その収集情報(図2の表の4行目の測定値に係る情報)を送信し、Rcでは、無線機cが、その収集情報(図2の表の3行目及び4行目の測定値に係る情報)を送信する。図4はRc終了時の無線機aが保有する測定結果情報を示している。無線機eの電波は、無線機bしか届かないので、無線機aの保有する収集個情報は、Rd終了時では、無線機eのものを含まず、図3(a)のままである。Rcの終了時では、無線機aは、無線機cから、無線機cの収集情報(図2の表の3行目及び4行目の測定値に係る情報)を受信するので、自機の他に、無線機c,dの測定結果情報を加えた収集情報を保有することになる。
【0037】
こうして、無線機aは、Rb終了時では、図2の全情報を収集することができる。無線機aは、収集した図2の全情報に基づき、無線機a−eの無線通信に関して、中継局となることができる無線機がないかを探索する。図2の測定情報によれば、図2の2行目(該2行目は無線機bに対応する。)の測定情報より、無線機bが無線機a,eの両方と交信可能になっていることを知るので、無線機bが無線機a−eの無線通信についての中継局として選択される。
【0038】
図2の表の例では、無線機a,eの両方と交信できる無線機は無線機bのみであるが、複数、存在した場合には、それら複数の無線機の候補の中から、(a)無線機a,eからの電波の電界強度の最低レベルが高い方を中継局に決定したり、(b)無線機a,eのレベルの和の大きい方を中継局に決定したりする。(a)の具体例として、無線機bが、無線機a,eからの電波の電界強度を1,1としているのに対して、無線機f(無線機fは図1には示されていない架空のもの)が無線機a,eからの電波の電界強度を2,2としている場合を挙げると、無線機fの最低値2は無線機bの最低値1より高いので、無線機fが無線機a−e間の無線通信の中継局に決められる。(b)の具体例として、無線機bが、無線機a,eからの電波の電界強度を1,1としているのに対して、無線機f(図示せず)が無線機a,eからの電波の電界強度を1,2としている場合を挙げると、無線機fの和3(=1+2)は無線機b の和2(=1+1)より高いので、無線機fが無線機a−e間の無線通信の中継局に決められる。
【0039】
図5は一段中継において使用される周波数の説明図である。中継では、半複信通信方式が利用される。前述の例では、特定小電力無線機15a−15e間の無線通信では、特定小電力無線機15bが中継局となっている。特定小電力無線機15aから特定小電力無線機15eへの送信では、特定小電力無線機15aは送信電波の周波数としてfaを使用する。特定小電力無線機15bは、特定小電力無線機15aからの周波数faの電波を受信して、周波数fb(fb≠fa)の電波を送信する。特定小電力無線機15eは、特定小電力無線機15bから周波数fbの電波を受信する。
【0040】
専用中継局を使用しないで、移動型の特定小電力無線機を中継局として使用する中継は、通話チャンネルに限定されず、周波数制御チャンネルにも適用できる。
【0041】
図6は複数段中継において使用される周波数の説明図である。図6では、特定小電力無線機15aから特定小電力無線機15eへの無線通信において、特定小電力無線機15b,c,dがそれぞれ1段目、2 段目及び3 段目の中継局となることを想定している。特定小電力無線機15aから特定小電力無線機15eまでの通信路における使用周波数は、最初はfaが使用され、その後、各中継局に中継されるごとに、送信周波数はfbとfaとを交互に切替えるようになっている。
【0042】
図7は複数段中継について特定小電力無線機用無線システム10における各特定小電力無線機の現在地及び電波到達圏を示したものである。図7によると、特定小電力無線機15aと特定小電力無線機15eとは、相互に相手の電波を受信できない。特定小電力無線機15aからの電波の電波到達圏16aには、特定小電力無線機15b,cのみが存在し、特定小電力無線機15bからの電波の電波到達圏16bには、特定小電力無線機15a,dのみが存在し、特定小電力無線機15dからの電波の電波到達圏16dには、特定小電力無線機15b,eのみ存在し、特定小電力無線機15eからの電波の電波到達圏16eには、特定小電力無線機15dのみが存在している。図7の状況では、特定小電力無線機15aから特定小電力無線機15eへ無線通信しようとする場合、特定小電力無線機15bが第1段の中継局となり、特定小電力無線機15dが第2段の中継局となって、電波を中継する必要がある。
【0043】
図8は各無線機が図7に示す現在地に存在する状況下、中継局探索(各無線機からの中継局探索用電波の送信、及び各無線機からの収集情報の受信)が終了した時点での特定小電力無線機15aにおける蓄積された収集情報を示している。図8の表では、上から下へ1行ずつ調べても、無線機a,eの両方と交信可能になっている無線機は存在しないことが分かる。すなわち、一段のみの中継によっては、無線機a−e間の無線通信は困難となっている。そこで、例えば、複数段中継が可能か否かをツリー構造における総当たり法(呼機をルート、相互に通信可能な無線機をそれぞれ親ノード及び子ノードとするツリーを考え、ルートからリーフまでの全部の経路を調べ、無線機eが含まれている経路を探す。)で探索することになる。この探索は呼局の無線機aで実行される。
【0044】
無線機aから通信可能である無線機は無線機b,cであることが判明する。無線機b,cの2個であるので、それらに適当な順番をつけ、1番のものを選択する。1番目の無線機を一段の中継局として、ツリーをリーフの方へ進み、結局、リーフに達しても、無線機eが見つからなかった場合には、次の番号の無線機へ戻り、再度同じことを繰り返す。ここでは、無線機b,cをそれぞれ1番目及び2番目の無線機として選択する。
【0045】
無線機bの選択に対し、図8の表の無線機bの行において、無線機bが、無線機a以外に通信可能な無線機として何があるかを調べ、無線機dがあることを知る。無線機dの1個のみであるので、無線機dを選択する。もし、無線機bの行において、通信可能な無線機が複数、存在する場合には、先の無線機aの場合と同様に、適当な順番を付けて、順番に従って選択する。
【0046】
無線機dの選択に対し、図8の表の無線機dの行において該無線機dが無線機eと通信可能であることが判明する。こうして、無線機aから無線機eへの通信では、無線機bを第1段の無線機とし、無線機dを第2段の無線機とすればよいことが判明する。
【0047】
3段、4段、・・・の場合も、同様に探索して、各段の中継局を決定する。
【0048】
図9は無線通信システム30のブロック図である。無線通信システム30は、各1個の第1及び第2の移動型無線機40,41、及び少なくとも1個の第3 の移動型無線機42を有している。第1及び第2の移動型無線機40,41は、相互に相手側からの電波を受信不能となっている地点に存在する。第3の移動型無線機42は、第1及び第2の移動型無線機40,41とは別の移動型無線機であって、かつ第1及び第2の移動型無線機40,41のユーザとは別のユーザにより携帯される。
【0049】
無線通信システム30の一例は前述の特定小電力無線機用無線システム10であるが、無線通信システム30における移動型無線機は、特定小電力無線機に限定されず、その他の携帯型の移動型無線機であってもよいとする。前述の図1〜図8の説明では、第1及び第2の移動型無線機40,41は特定小電力無線機15a,15eに対応し、第3の移動型無線機42は特定小電力無線機15b,15c,15dに対応する。無線通信システム30は中継局探索用電波送信手段31、測定手段32、収集手段33、決定手段34及び中継作動手段35を有している。無線通信システム30、中継局探索用電波送信手段31、測定手段32、収集手段33、決定手段34及び中継作動手段35は、それら全部が1個の移動型無線機、例えば第1の移動型無線機40に実装されることに限定されず、各移動型無線機に分散されて、実装されてもよいとする。ただし、分散実装の場合には、手段同士の通信が確保されなければならない。
【0050】
中継局探索用電波送信手段31は、第1の順番に従い、各移動型無線機(第1及び第2の移動型無線機40,41並びに第3の移動型無線機42)に中継局探索用電波を送信させる。測定手段32は、各移動型無線機に、他の各移動型無線機から中継局探索用電波の電界強度を測定させる。収集手段33は、各移動型無線機における電界強度についての測定結果に係る情報を収集情報として収集する。決定手段34は、第1及び第2 の移動型無線機40,41間の無線通信について中継局となる第3の移動型無線機42を、収集情報に基づき決定する。中継作動手段35は、中継局に決定された第3の移動型無線機42を、第1及び第2の移動型無線機40,41間の無線通信の際に、中継局として作動させる。
【0051】
第1の順番とは、特定小電力無線機用無線システム10の例では、Ta,Tb,Tc,Td,Teに対応する無線機a,b,c,d,eとする順番であった。収集手段33が収集する収集情報とは、例えば、図2や図8に示したものである。
【0052】
こうして、無線通信システム30では、専用の中継局を省略して、第1 の移動型無線機40−第2の移動型無線機41間の無線通信を行うことができる。また、専用の中継局が所定の地点に固定的に配置されて、該地点で中継する場合には、第1及び第2の移動型無線機40,41が中継局の中継により通信可能である地域は固定されたものとなるが、無線通信システム30では、第1及び第2の移動型無線機40,41の一方又は両方が、最初に中継局となった第3の移動型無線機42の電波圏外へ出ても、別の第3の移動型無線機42が中継可能な地点に存在すれば、該別の第3の移動型無線機42の中継により第1の移動型無線機40−第2の移動型無線機41間の通信が可能になるので、通信可能な地域範囲を広げることができる。
【0053】
以下、無線通信システム30の好ましい態様又は実施態様について説明する。
【0054】
図10は収集手段33の詳細なブロック図である。収集手段33は、情報送信手段45及び情報更新手段46を有している。情報送信手段45は、第2の順番に従い、各移動型無線機に、各移動型無線機における収集情報を送信させる。情報更新手段46は、各移動型無線機に、他機から受信した収集情報に基づき自機の収集情報を更新させる。
【0055】
第2の順番とは、特定小電力無線機用無線システム10の例では、Re,Rd,Rc,Rb,Raの順番に対応する無線機e,d,c,b,aの順番であった。該例では、第2の順番は、第1の順番とは逆の順番となっている。逆の順番にした方が、中継局を決定できる収集情報が所定の移動型無線機に早期に集まり易い。
【0056】
第1の順番における1番は第1の移動型無線機40であり、決定手段34は第1の移動型無線機に装備されている。特定小電力無線機用無線システム10の例では、第1の順番における1番は第1の移動型無線機40であり、決定手段34は第1の移動型無線機40に装備されている。
【0057】
図11は移動型無線機50のブロック図である。移動型無線機50は、典型的には、無線通信の呼機(図1及び図8では、特定小電力無線機15a)であるが、無線通信の被呼機(図1及び図8では、特定小電力無線機15e)や、呼機及び被呼機以外の移動型無線機(図1及び図 の例では、特定小電力無線機15b,15c,15d)であつてもよい。移動型無線機50は、中継局探索用電波送信手段51、測定手段52、収集手段53、決定手段54及び通知手段55を有している。
【0058】
図11では、移動型無線機50が呼機である場合には、移動型無線機59には、被呼機及びその他の移動型無線機が含まれる。移動型無線機50が被呼機である場合には、移動型無線機59には、呼機及びその他の移動型無線機が含まれる。
【0059】
中継局探索用電波送信手段51は、中継局探索用電波を送信する。測定手段52は、他の各移動型無線機59からの中継局探索用電波についての電界強度を測定する。収集手段53は、各移動型無線機59における電界強度についての測定結果情報を収集情報として収集する。決定手段54は、通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機59を、蓄積した収集情報に基づき決定する。通知手段55は、決定した中継局用移動型無線機59へ、自機と通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知する。
【0060】
移動型無線機50,59は、典型的には、同一構成となっている。すなわち、移動型無線機50が中継局や被呼機となったり、移動型無線機59が呼機又は被呼機となったりできるようになっている。その場合に対処して、移動型無線機59も、移動型無線機50と同様に、中継局探索用電波送信手段51、測定手段52、収集手段53、決定手段54及び通知手段55を装備することができる。
【0061】
収集手段53が収集する測定結果情報は、例えば、図2に示されているものである。
【0062】
以下、移動型無線機50の好ましい又は具体的な構成について説明する。
【0063】
移動型無線機50は、さらに、中継手段65を有している。中継手段65は、他の移動型無線機59から自機が所定の無線通信における中継局になる旨を通知されたときには、該所定の無線通信について中継を行う。
【0064】
移動型無線機50及び前述の無線通信システム30(図10)における中継局探索用電波には、中継を必要とする無線通信の呼機及び被呼機に係る情報が含まれる。
【0065】
収集手段53は、図10の収集手段33と同様に、情報送信手段45及び情報更新手段46を含むことができる。収集手段53の情報送信手段45は自機の収集情報を送信させる。収集手段53の情報更新手段46は、他の移動型無線機から受信した収集情報に基づき自機の収集情報を更新させる。
【0066】
図12は無線通信方法70のフローチャートである。無線通信方法70は、中継局探索用電波の送信ルーチン71、測定ルーチン72、収集情報の送信ルーチン73、収集情報の更新ルーチン74及び中継局用移動型無線機の決定ルーチン75を含む。無線通信方法70は、移動型無線機50に適用される。なお、収集情報の更新ルーチン74は、収集情報の送信ルーチン73より後の実行とは、決まっておらず、収集情報の送信ルーチン73より前に実行されたり、収集情報の送信ルーチン73より前及び後ろの両方で実行されたりする。
【0067】
中継局探索用電波の送信ルーチン71は、中継局探索用電波の送信に係る順番における自己の順番が来ると、実行される(S80の判定が「正」)。S81では、中継局探索用電波を送信する。
【0068】
測定ルーチン72は、他の移動型無線機59から中継局探索用電波を受信すると実行される(S84の判定が「正」)。S85では、該中継局探索用電波の電界強度を測定し、測定値を該他の移動型無線機59に対応付けて収集情報として記憶する。
【0069】
収集情報の送信ルーチン73は、収集情報の送信に係る順番における自己の順番が来ると、実行される(S88の判定が「正」)。S89では、収集情報を送信する。
【0070】
収集情報の更新ルーチン74は、他の移動型無線機59から該他の移動型無線機59の収集情報を受信すると、実行される(S92の判定が「正」)。S93では、該他の移動型無線機59の収集情報を自己の収集情報に追加して、自己の収集情報を更新する。
【0071】
中継局用移動型無線機の決定ルーチン75は、少なくとも、中継局用移動型無線機59を決定できる収集情報が蓄積されると、実行される(S95の判定が「正」)。S96では、通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機59を、蓄積した収集情報に基づき決定する。S97では、決定した中継局用移動型無線機59へ、自機と通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知する。
【0072】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを無線通信システム30又は移動型無線機50の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、無線通信方法70の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0073】
本発明を最良の形態について説明したが、本発明は、これに限定されず、要旨の範囲内で種々の形態により実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
30:無線通信システム、31:中継局探索用電波送信手段、32:測定手段、33:収集手段、34:決定手段、35:中継作動手段、40:第1の移動型無線機、41:第2の移動型無線機、42:第3 の移動型無線機、45:情報送信手段、46:情報更新手段、50:移動型無線機、51:中継局探索用電波送信手段、52:測定手段、53:収集手段、54:決定手段、55:通知手段、59:移動型無線機、65:中継手段、70:無線通信方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば特定小電力無線機等の無線通信システム、移動型無線機、無線通信方法及びプログラムに関し、詳しくは中継局を利用して無線通信を行うことのできる無線通信システム、移動型無線機、無線通信方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の無線通信システムでは、所定地点に中継局を設置し、該中継局が、相互に電波の届かない2個の特定小電力無線機間の無線通信に対して、半複信通信方式により中継することにより、両特定小電力無線機間の無線通信を可能にしている。なお、特定小電力無線機とは、電波法並びにその関係省令により規定された無線電話用無線設備に準拠した無線機をいうものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−102983号公報(図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の無線通信システムでは、専用の中継局が必要になる。また、中継は1段に限定されており、2個の特定小電力無線機が、中継により無線通信が可能になる領域は、固定されているとともに、小さい。
【0005】
本発明の目的は、2個の移動型無線機が、相手からの電波を受信できない状況にある場合に、専用の中継局を省略して、無線通信を可能にする無線通信システム、移動型無線機、無線通信方法及びプログラムを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、中継地点を柔軟に変更することにより、広範な移動に対処して、無線通信を行うことができる無線通信システム、移動型無線機、無線通信方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信システムは、相互に相手側からの電波を受信不能となっている地点に存在する各1個の第1及び第2の移動型無線機、及び第1及び第2の移動型無線機とは別の移動型無線機であってかつ第1及び第2の移動型無線機のユーザとは別のユーザにより携帯される少なくとも1個の第3の移動型無線機を有している。該無線通信システムは次の各手段を有している。
第1の順番に従い、各移動型無線機に中継局探索用電波を送信させる中継局探索用電波送信手段、
各移動型無線機に、他の各移動型無線機から中継局探索用電波の電界強度を測定させる測定手段、
各移動型無線機における電界強度についての測定結果に係る情報を収集情報として収集する収集手段、
第1及び第2の移動型無線機間の無線通信について中継局となる第3の移動型無線機を、収集情報に基づき決定する決定手段、及び
中継局に決定された第3の移動型無線機を、第1及び第2の移動型無線機間の無線通信の際に、中継局として作動させる中継作動手段。
【0008】
本発明の移動型無線機は次の各手段を有している。
中継局探索用電波を送信する中継局探索用電波送信手段、
他の各移動型無線機からの中継局探索用電波についての電界強度を測定する測定手段、
各移動型無線機における電界強度についての測定結果情報を収集情報として収集する収集手段、
通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機を、蓄積した収集情報に基づき決定する決定手段、及び
決定した中継局用移動型無線機へ、自機と通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知する通知手段。
【0009】
本発明の無線通信方法は次の各ステップを有している。
中継局探索用電波の送信に係る順番に従い自己の順番が来ると、中継局探索用電波を送信するステップ、
他の移動型無線機から中継局探索用電波を受信した場合は、該中継局探索用電波の電界強度を測定し測定値を該他の移動型無線機に対応付けて収集情報として記憶するステップ、
収集情報の送信に係る順番に従い自己の順番が来ると、収集情報を送信するステップ、
他の移動型無線機から該他の移動型無線機の収集情報を受信した場合は、該他の移動型無線機の収集情報を自己の収集情報に追加して、自己の収集情報を更新するステップ、
通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機を、蓄積した収集情報に基づき決定するステップ、及び
決定した中継局用移動型無線機へ、自機と通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知するステップ。
【0010】
本発明のプログラムは、コンピュータを本発明の無線通信システム又は移動型無線機の各手段として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、他のユーザに携帯される移動型無線機を中継局として使用するので、専用の中継局を省略できる。また、中継局の地点を柔軟に変更できるので、広範囲の無線通信に対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一段中継について特定小電力無線機用無線システムにおける各特定小電力無線機の現在地及び電波到達圏を示したものである。
【図2】各特定小電力無線機が図1の状態にある場合の中継局探索の前期部分における中継局探索用電波の電界強度の測定結果を示す図である。
【図3】Re終了時の所定の無線機が保有する測定結果情報を示す図である。
【図4】Rc終了時の所定の無線機が保有する測定結果情報を示す図である。
【図5】一段中継において使用される周波数の説明図である。
【図6】複数段中継において使用される周波数の説明図である。
【0013】
【図7】特定小電力無線機用無線システムの複数段中継が適用される各特定小電力無線機の現在地を示したものである。
【図8】各無線機が図7に示す現在地に存在する状況下、中継局探索が終了した時点での所定の特定小電力無線機の蓄積された収集情報を示す図である。
【図9】無線通信システムのブロック図である。
【図10】収集手段の詳細なブロック図である。
【図11】移動型無線機のブロック図である。
【図12】無線通信方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は一段中継について特定小電力無線機用無線システム10における各特定小電力無線機の現在地及び電波到達圏を示したものである。特定小電力無線機用無線システム10は、複数の特定小電力無線機15a〜15eを装備する。特定小電力無線機15a〜15eの各ユーザは所定のグループのメンバーとなっている。各ユーザは、作業や娯楽の最中、特定の場所に静止せず、自分の特定小電力無線機を携帯して、任意に移動している。特定小電力無線機用無線システム10では、各特定小電力無線機は、その電波の到達圏内に、通信相手の特定小電力無線機が存在するときは、該通信相手の特定小電力無線機と直接、通信が可能となっているが、圏外となっているときは、該通信相手の特定小電力無線機と通信するためには、中継局の中継を必要とする。
【0015】
図1において、Pa〜Peはそれぞれ特定小電力無線機15a〜15eの現在の地点を示している。電波到達圏16a〜16eはそれぞれ特定小電力無線機15a〜15eのものに対応している。各特定小電力無線機15a〜15eの電波は、電波到達圏16a〜16eの外では、圏外となって受信不能である。図1によると、特定小電力無線機15aと特定小電力無線機15eとは、相互に相手の電波を受信できない。また、特定小電力無線機15bは、特定小電力無線機15a,15eの両方の電波を受信可能であり、かつ自分の電波を特定小電力無線機15a,15eの両方へ送信可能な地点に存在している。
【0016】
特定小電力無線機15a−15e間の無線通信を可能にするために、従来の無線通信システムでは、特定小電力無線機15a,15eの両方から電波を受信できる地点、例えば電波到達圏16aと電波到達圏16eとの重複領域内の地点に、専用の中継局を設置し、該中継局が特定小電力無線機15a−15e間の無線通信を中継するようにしている。このような専用中継局は、設置場所が固定的となっているため、その後、特定小電力無線機15a,15eのいずれかが専用中継局の圏外へ移動すると、それに伴い、中継が困難になってしまう。
【0017】
これに対して、特定小電力無線機用無線システム10では、専用の中継局が省略され、他機の中から中継局が探索される。すなわち、特定小電力無線機15a,15eの両方と無線通信可能になる他機がないかを探索し、見つかれば、該他機を、特定小電力無線機15a−15e間の無線通信の中継局として機能させることにしている。図1の例では、地点Pbに存在する特定小電力無線機15bが特定小電力無線機15a−15e間の無線通信について中継局として機能することになる。
【0018】
中継局探索は、各特定小電力無線機が中継局探索用電波を順番に送信する一方、他の特定小電力無線機が受信した中継局探索用電波の電界強度を測定する前期部分と、各特定小電力無線機が、前期部分で測定した電界強度の測定結果を順番に送信する後期部分とに分けられる。
【0019】
図2は特定小電力無線機15a〜15eが図1の状態にある場合の中継局探索の前期部分における中継局探索用電波の電界強度の測定結果を示している。図2並びに後述の図3及び図4において、特定小電力無線機15a〜15eは、それぞれ無線機a〜eで簡略的に記載されている。
【0020】
所定のグループに属する無線機a〜eには、中継局探索の前期部分及び探索後期部分において所定の順番があらかじめ設定されている。該順番は、例えば、前期部分では、無線機a,b,c,d,eとされ、後期部分では、無線機e,d,c,b,aとされている。
これに従い、探索の前期部分の期間は、無線機a,b,c,d,eにそれぞれ割り当てられて、部分期間Ta,Tb,Tc,Td,Teが、その順番で設定されている。Ta,b,Tc,Td,Teは、典型的には、等しい値Tである。探索の後期部分の期間は、無線機e,d,c,b,aにそれぞれ割り当てられて、部分期間Re,Rd,Rc,Rb,Raが、その順番で設定されている。Re,Rd,Rc,Rb,Raは、典型的には、等しい値R である。Ta,Tb,Tc,Td,Te,Re,Rd,Rc,Rb,Raの各部分期間の間には、通常、切替わりのための準備時間が挿入される。
【0021】
中継局を必要とする無線通信における呼局としての特定小電力無線機15aが、中継局の決定を行う場合には、Raは省略できる。また、呼局としての特定小電力無線機15aが中継局を決定する場合は、特定小電力無線機15aが、中継局を決定できる電界強度の測定結果情報を入手次第、後期部分を途中終了してもよい。例えば、後期部分のRdの終了時に、中継局とすべき特定小電力無線機を決めることができる測定結果情報を入手できたならば、その時点で、中継局探索の後期部分は終了し、Rc以降は中止できる。
【0022】
無線機aが無線機eへの無線通信を実行しようとする場合、無線機aは、所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へTaにおいて送信する。該中継局探索用電波には、少なくとも、中継局探索用電波を送信している無線機のID、中継局探索する無線通信の呼局のID、及び被呼局のIDに係る情報が含まれる。図1の実施例では、呼局は無線機aであり、被呼局は無線機eである。また、該Taでは、無線機aが中継局探索用電波を送信するのであるから、中継局探索用電波を送信している無線機のIDは無線機aのIDとなる。
【0023】
該実施例では、中継局探索の前期部分及び後期部分の送信順番は、あらかじめ設定されているが、それら順番をあらかじめ設定せず、中継局探索ごとに、呼局の無線機が適宜、設定することにして、呼局の無線機が決めた順番に係る情報を中継局探索用電波に含めることもできる。
【0024】
図1の実施例では、電界強度のレベルには、2,1,0の3段階があるものとする。2,1,0は、それぞれ電界強度が強い、弱い、受信不能に対応するものとする。図2の表に示されている中継局探索用電波は、この3段階により示したものである。
【0025】
なお、受信電波の電界強度のレベルを2,1,0の3段階にすることはあくまでも一例であり、3,2,1,0の4段階にしたり、4,3,2,1,0の5段階にすることも適宜可能である。
【0026】
図1 の実施例では、無線機a から送信された中継局探索用電波は、無線機b,cのみに受信される。無線機b,cは、無線機aからの中継局探索用電波により、無線機a,e間無線通信についての中継局探索が開始されたことを認知するとともに、該認知に伴い、今回の中継局探索における以降のTb〜Te,Re〜Raのタイミングを割り出す。
【0027】
無線機b,cは、また、Taにおいて、無線機aからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。その測定結果は、電界強度のレベルが無線機b,cにおいてそれぞれ1,2であったとする。また、無線機d,eは、無線機aから送信された中継局探索用電波を受信しないので、無線機aからの中継局探索用電波の電界強度を測定できず、後に中継局探索を知った時点で、Taに遡って、電界強度の測定レベルを0とすることになる。無線機aから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の1列目に示されている。
【0028】
Tbでは、無線機bが所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へ送信する。図1の例では、無線機bから送信された中継局探索用電波は、無線機a,eのみに受信される。無線機eは、無線機b からの中継局探索用電波により、無線機a,e間の無線通信についての中継局探索が開始されたことを初めて認知するとともに、該中継局探索における以降のTc〜Te,Re〜Raのタイミングを割り出す。
【0029】
無線機cは、Tbにおいて、無線機bからの中継局探索用電波を受信しないものの、Tbのタイミングは割り出し済みであるので、結局、無線機a,c,eが、Tbにおいて、無線機bからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。Tbにおける測定結果は、電界強度のレベルが無線機a,c,eにおいてそれぞれ1,0,1であったとする。無線機dは、無線機bから送信された中継局探索用電波を受信しないので、無線機bからの中継局探索用電波の電界強度を測定できず、後に中継局探索を知った時点で、Tbに遡って、電界強度の測定レベルを0とすることになる。無線機bから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の2列目に示されている。
【0030】
Tcでは、無線機cが所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へ送信する。図1の例では、無線機cから送信された中継局探索用電波は、無線機a,dのみに受信される。無線機dは、無線機cからの中継局探索用電波により、無線機a,e間の無線通信についての中継局探索が開始されたことを初めて認知するとともに、該中継局探索におけるTd〜Teのタイミングを割り出す。
【0031】
無線機b,eは、Tcにおいて、無線機cからの中継局探索用電波を受信しないものの、Tcのタイミングは割り出し済みであるので、結局、無線機a,b,d,eが、Tcにおいて、無線機bからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。無線機cから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の3列目に示されている。
【0032】
Tdでは、無線機dが所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へ送信する。図1の例では、無線機dから送信された中継局探索用電波は、無線機c のみに受信される。無線機a,b,c,eは、無線機dからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。その測定結果は、電界強度のレベルが無線機a,b,d,eにおいてそれぞれ0,0,1,0であったとする。無線機dから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の4列目に示されている。
【0033】
Teでは、無線機e が所定の電界強度の中継局探索用電波を周囲へ送信する。図1の例では、無線機eから送信された中継局探索用電波は、無線機b のみに受信される。無線機a,b,c,dは、Teにおいて、無線機eからの中継局探索用電波の電界強度を測定する。その測定結果は、電界強度のレベルが無線機a,b,c,dにおいてそれぞれ0,1,0,0であったとする。無線機eから送信された中継局探索用電波に対して、各無線機における電界強度の数値は、図2の表の5列目に示されている。
【0034】
Teの終了後、中継局探索の後期部分が開始される。Reでは、無線機eが、その時点で、自機及び他機に関して保有している各無線機の電界強度測定結果情報(図2の表の5行目の測定値に係る情報) を収集情報として送信する。無線機eは、中継局探索後期部分に送信を実施する最初のものであるので、他機の電界強度測定結果情報は保有していない。各無線機は、他機から該他機の収集情報を受信しだい、それらを追加することにより自機の収集情報を更新する。なお、他機から該他機の収集情報を受信しても、更新前の収集情報の部分と重複する部分については、原則的には更新しないが、上書きしてもよい。
【0035】
図3はRe終了時の無線機a,bが保有する測定結果情報を示している。Reにおける無線機eの電波は、無線機bは受信するものの、無線機aは受信できないので、Re終了時では、無線機bは、自機及び無線機eの測定結果情報を自機の記憶装置に収集情報として記憶し、無線機aは、自機の記憶装置には、なお、自機の測定結果情報のみしか収集情報として記憶していない。
【0036】
この後、Rdにおいて、無線機dが、その収集情報(図2の表の4行目の測定値に係る情報)を送信し、Rcでは、無線機cが、その収集情報(図2の表の3行目及び4行目の測定値に係る情報)を送信する。図4はRc終了時の無線機aが保有する測定結果情報を示している。無線機eの電波は、無線機bしか届かないので、無線機aの保有する収集個情報は、Rd終了時では、無線機eのものを含まず、図3(a)のままである。Rcの終了時では、無線機aは、無線機cから、無線機cの収集情報(図2の表の3行目及び4行目の測定値に係る情報)を受信するので、自機の他に、無線機c,dの測定結果情報を加えた収集情報を保有することになる。
【0037】
こうして、無線機aは、Rb終了時では、図2の全情報を収集することができる。無線機aは、収集した図2の全情報に基づき、無線機a−eの無線通信に関して、中継局となることができる無線機がないかを探索する。図2の測定情報によれば、図2の2行目(該2行目は無線機bに対応する。)の測定情報より、無線機bが無線機a,eの両方と交信可能になっていることを知るので、無線機bが無線機a−eの無線通信についての中継局として選択される。
【0038】
図2の表の例では、無線機a,eの両方と交信できる無線機は無線機bのみであるが、複数、存在した場合には、それら複数の無線機の候補の中から、(a)無線機a,eからの電波の電界強度の最低レベルが高い方を中継局に決定したり、(b)無線機a,eのレベルの和の大きい方を中継局に決定したりする。(a)の具体例として、無線機bが、無線機a,eからの電波の電界強度を1,1としているのに対して、無線機f(無線機fは図1には示されていない架空のもの)が無線機a,eからの電波の電界強度を2,2としている場合を挙げると、無線機fの最低値2は無線機bの最低値1より高いので、無線機fが無線機a−e間の無線通信の中継局に決められる。(b)の具体例として、無線機bが、無線機a,eからの電波の電界強度を1,1としているのに対して、無線機f(図示せず)が無線機a,eからの電波の電界強度を1,2としている場合を挙げると、無線機fの和3(=1+2)は無線機b の和2(=1+1)より高いので、無線機fが無線機a−e間の無線通信の中継局に決められる。
【0039】
図5は一段中継において使用される周波数の説明図である。中継では、半複信通信方式が利用される。前述の例では、特定小電力無線機15a−15e間の無線通信では、特定小電力無線機15bが中継局となっている。特定小電力無線機15aから特定小電力無線機15eへの送信では、特定小電力無線機15aは送信電波の周波数としてfaを使用する。特定小電力無線機15bは、特定小電力無線機15aからの周波数faの電波を受信して、周波数fb(fb≠fa)の電波を送信する。特定小電力無線機15eは、特定小電力無線機15bから周波数fbの電波を受信する。
【0040】
専用中継局を使用しないで、移動型の特定小電力無線機を中継局として使用する中継は、通話チャンネルに限定されず、周波数制御チャンネルにも適用できる。
【0041】
図6は複数段中継において使用される周波数の説明図である。図6では、特定小電力無線機15aから特定小電力無線機15eへの無線通信において、特定小電力無線機15b,c,dがそれぞれ1段目、2 段目及び3 段目の中継局となることを想定している。特定小電力無線機15aから特定小電力無線機15eまでの通信路における使用周波数は、最初はfaが使用され、その後、各中継局に中継されるごとに、送信周波数はfbとfaとを交互に切替えるようになっている。
【0042】
図7は複数段中継について特定小電力無線機用無線システム10における各特定小電力無線機の現在地及び電波到達圏を示したものである。図7によると、特定小電力無線機15aと特定小電力無線機15eとは、相互に相手の電波を受信できない。特定小電力無線機15aからの電波の電波到達圏16aには、特定小電力無線機15b,cのみが存在し、特定小電力無線機15bからの電波の電波到達圏16bには、特定小電力無線機15a,dのみが存在し、特定小電力無線機15dからの電波の電波到達圏16dには、特定小電力無線機15b,eのみ存在し、特定小電力無線機15eからの電波の電波到達圏16eには、特定小電力無線機15dのみが存在している。図7の状況では、特定小電力無線機15aから特定小電力無線機15eへ無線通信しようとする場合、特定小電力無線機15bが第1段の中継局となり、特定小電力無線機15dが第2段の中継局となって、電波を中継する必要がある。
【0043】
図8は各無線機が図7に示す現在地に存在する状況下、中継局探索(各無線機からの中継局探索用電波の送信、及び各無線機からの収集情報の受信)が終了した時点での特定小電力無線機15aにおける蓄積された収集情報を示している。図8の表では、上から下へ1行ずつ調べても、無線機a,eの両方と交信可能になっている無線機は存在しないことが分かる。すなわち、一段のみの中継によっては、無線機a−e間の無線通信は困難となっている。そこで、例えば、複数段中継が可能か否かをツリー構造における総当たり法(呼機をルート、相互に通信可能な無線機をそれぞれ親ノード及び子ノードとするツリーを考え、ルートからリーフまでの全部の経路を調べ、無線機eが含まれている経路を探す。)で探索することになる。この探索は呼局の無線機aで実行される。
【0044】
無線機aから通信可能である無線機は無線機b,cであることが判明する。無線機b,cの2個であるので、それらに適当な順番をつけ、1番のものを選択する。1番目の無線機を一段の中継局として、ツリーをリーフの方へ進み、結局、リーフに達しても、無線機eが見つからなかった場合には、次の番号の無線機へ戻り、再度同じことを繰り返す。ここでは、無線機b,cをそれぞれ1番目及び2番目の無線機として選択する。
【0045】
無線機bの選択に対し、図8の表の無線機bの行において、無線機bが、無線機a以外に通信可能な無線機として何があるかを調べ、無線機dがあることを知る。無線機dの1個のみであるので、無線機dを選択する。もし、無線機bの行において、通信可能な無線機が複数、存在する場合には、先の無線機aの場合と同様に、適当な順番を付けて、順番に従って選択する。
【0046】
無線機dの選択に対し、図8の表の無線機dの行において該無線機dが無線機eと通信可能であることが判明する。こうして、無線機aから無線機eへの通信では、無線機bを第1段の無線機とし、無線機dを第2段の無線機とすればよいことが判明する。
【0047】
3段、4段、・・・の場合も、同様に探索して、各段の中継局を決定する。
【0048】
図9は無線通信システム30のブロック図である。無線通信システム30は、各1個の第1及び第2の移動型無線機40,41、及び少なくとも1個の第3 の移動型無線機42を有している。第1及び第2の移動型無線機40,41は、相互に相手側からの電波を受信不能となっている地点に存在する。第3の移動型無線機42は、第1及び第2の移動型無線機40,41とは別の移動型無線機であって、かつ第1及び第2の移動型無線機40,41のユーザとは別のユーザにより携帯される。
【0049】
無線通信システム30の一例は前述の特定小電力無線機用無線システム10であるが、無線通信システム30における移動型無線機は、特定小電力無線機に限定されず、その他の携帯型の移動型無線機であってもよいとする。前述の図1〜図8の説明では、第1及び第2の移動型無線機40,41は特定小電力無線機15a,15eに対応し、第3の移動型無線機42は特定小電力無線機15b,15c,15dに対応する。無線通信システム30は中継局探索用電波送信手段31、測定手段32、収集手段33、決定手段34及び中継作動手段35を有している。無線通信システム30、中継局探索用電波送信手段31、測定手段32、収集手段33、決定手段34及び中継作動手段35は、それら全部が1個の移動型無線機、例えば第1の移動型無線機40に実装されることに限定されず、各移動型無線機に分散されて、実装されてもよいとする。ただし、分散実装の場合には、手段同士の通信が確保されなければならない。
【0050】
中継局探索用電波送信手段31は、第1の順番に従い、各移動型無線機(第1及び第2の移動型無線機40,41並びに第3の移動型無線機42)に中継局探索用電波を送信させる。測定手段32は、各移動型無線機に、他の各移動型無線機から中継局探索用電波の電界強度を測定させる。収集手段33は、各移動型無線機における電界強度についての測定結果に係る情報を収集情報として収集する。決定手段34は、第1及び第2 の移動型無線機40,41間の無線通信について中継局となる第3の移動型無線機42を、収集情報に基づき決定する。中継作動手段35は、中継局に決定された第3の移動型無線機42を、第1及び第2の移動型無線機40,41間の無線通信の際に、中継局として作動させる。
【0051】
第1の順番とは、特定小電力無線機用無線システム10の例では、Ta,Tb,Tc,Td,Teに対応する無線機a,b,c,d,eとする順番であった。収集手段33が収集する収集情報とは、例えば、図2や図8に示したものである。
【0052】
こうして、無線通信システム30では、専用の中継局を省略して、第1 の移動型無線機40−第2の移動型無線機41間の無線通信を行うことができる。また、専用の中継局が所定の地点に固定的に配置されて、該地点で中継する場合には、第1及び第2の移動型無線機40,41が中継局の中継により通信可能である地域は固定されたものとなるが、無線通信システム30では、第1及び第2の移動型無線機40,41の一方又は両方が、最初に中継局となった第3の移動型無線機42の電波圏外へ出ても、別の第3の移動型無線機42が中継可能な地点に存在すれば、該別の第3の移動型無線機42の中継により第1の移動型無線機40−第2の移動型無線機41間の通信が可能になるので、通信可能な地域範囲を広げることができる。
【0053】
以下、無線通信システム30の好ましい態様又は実施態様について説明する。
【0054】
図10は収集手段33の詳細なブロック図である。収集手段33は、情報送信手段45及び情報更新手段46を有している。情報送信手段45は、第2の順番に従い、各移動型無線機に、各移動型無線機における収集情報を送信させる。情報更新手段46は、各移動型無線機に、他機から受信した収集情報に基づき自機の収集情報を更新させる。
【0055】
第2の順番とは、特定小電力無線機用無線システム10の例では、Re,Rd,Rc,Rb,Raの順番に対応する無線機e,d,c,b,aの順番であった。該例では、第2の順番は、第1の順番とは逆の順番となっている。逆の順番にした方が、中継局を決定できる収集情報が所定の移動型無線機に早期に集まり易い。
【0056】
第1の順番における1番は第1の移動型無線機40であり、決定手段34は第1の移動型無線機に装備されている。特定小電力無線機用無線システム10の例では、第1の順番における1番は第1の移動型無線機40であり、決定手段34は第1の移動型無線機40に装備されている。
【0057】
図11は移動型無線機50のブロック図である。移動型無線機50は、典型的には、無線通信の呼機(図1及び図8では、特定小電力無線機15a)であるが、無線通信の被呼機(図1及び図8では、特定小電力無線機15e)や、呼機及び被呼機以外の移動型無線機(図1及び図 の例では、特定小電力無線機15b,15c,15d)であつてもよい。移動型無線機50は、中継局探索用電波送信手段51、測定手段52、収集手段53、決定手段54及び通知手段55を有している。
【0058】
図11では、移動型無線機50が呼機である場合には、移動型無線機59には、被呼機及びその他の移動型無線機が含まれる。移動型無線機50が被呼機である場合には、移動型無線機59には、呼機及びその他の移動型無線機が含まれる。
【0059】
中継局探索用電波送信手段51は、中継局探索用電波を送信する。測定手段52は、他の各移動型無線機59からの中継局探索用電波についての電界強度を測定する。収集手段53は、各移動型無線機59における電界強度についての測定結果情報を収集情報として収集する。決定手段54は、通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機59を、蓄積した収集情報に基づき決定する。通知手段55は、決定した中継局用移動型無線機59へ、自機と通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知する。
【0060】
移動型無線機50,59は、典型的には、同一構成となっている。すなわち、移動型無線機50が中継局や被呼機となったり、移動型無線機59が呼機又は被呼機となったりできるようになっている。その場合に対処して、移動型無線機59も、移動型無線機50と同様に、中継局探索用電波送信手段51、測定手段52、収集手段53、決定手段54及び通知手段55を装備することができる。
【0061】
収集手段53が収集する測定結果情報は、例えば、図2に示されているものである。
【0062】
以下、移動型無線機50の好ましい又は具体的な構成について説明する。
【0063】
移動型無線機50は、さらに、中継手段65を有している。中継手段65は、他の移動型無線機59から自機が所定の無線通信における中継局になる旨を通知されたときには、該所定の無線通信について中継を行う。
【0064】
移動型無線機50及び前述の無線通信システム30(図10)における中継局探索用電波には、中継を必要とする無線通信の呼機及び被呼機に係る情報が含まれる。
【0065】
収集手段53は、図10の収集手段33と同様に、情報送信手段45及び情報更新手段46を含むことができる。収集手段53の情報送信手段45は自機の収集情報を送信させる。収集手段53の情報更新手段46は、他の移動型無線機から受信した収集情報に基づき自機の収集情報を更新させる。
【0066】
図12は無線通信方法70のフローチャートである。無線通信方法70は、中継局探索用電波の送信ルーチン71、測定ルーチン72、収集情報の送信ルーチン73、収集情報の更新ルーチン74及び中継局用移動型無線機の決定ルーチン75を含む。無線通信方法70は、移動型無線機50に適用される。なお、収集情報の更新ルーチン74は、収集情報の送信ルーチン73より後の実行とは、決まっておらず、収集情報の送信ルーチン73より前に実行されたり、収集情報の送信ルーチン73より前及び後ろの両方で実行されたりする。
【0067】
中継局探索用電波の送信ルーチン71は、中継局探索用電波の送信に係る順番における自己の順番が来ると、実行される(S80の判定が「正」)。S81では、中継局探索用電波を送信する。
【0068】
測定ルーチン72は、他の移動型無線機59から中継局探索用電波を受信すると実行される(S84の判定が「正」)。S85では、該中継局探索用電波の電界強度を測定し、測定値を該他の移動型無線機59に対応付けて収集情報として記憶する。
【0069】
収集情報の送信ルーチン73は、収集情報の送信に係る順番における自己の順番が来ると、実行される(S88の判定が「正」)。S89では、収集情報を送信する。
【0070】
収集情報の更新ルーチン74は、他の移動型無線機59から該他の移動型無線機59の収集情報を受信すると、実行される(S92の判定が「正」)。S93では、該他の移動型無線機59の収集情報を自己の収集情報に追加して、自己の収集情報を更新する。
【0071】
中継局用移動型無線機の決定ルーチン75は、少なくとも、中継局用移動型無線機59を決定できる収集情報が蓄積されると、実行される(S95の判定が「正」)。S96では、通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機59を、蓄積した収集情報に基づき決定する。S97では、決定した中継局用移動型無線機59へ、自機と通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知する。
【0072】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを無線通信システム30又は移動型無線機50の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、無線通信方法70の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0073】
本発明を最良の形態について説明したが、本発明は、これに限定されず、要旨の範囲内で種々の形態により実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
30:無線通信システム、31:中継局探索用電波送信手段、32:測定手段、33:収集手段、34:決定手段、35:中継作動手段、40:第1の移動型無線機、41:第2の移動型無線機、42:第3 の移動型無線機、45:情報送信手段、46:情報更新手段、50:移動型無線機、51:中継局探索用電波送信手段、52:測定手段、53:収集手段、54:決定手段、55:通知手段、59:移動型無線機、65:中継手段、70:無線通信方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に相手側からの電波を受信不能となっている地点に存在する各1個の第1及び第2の移動型無線機、及び
前記第1及び前記第2の移動型無線機とは別の移動型無線機であってかつ前記第1及び前記第2の移動型無線機のユーザとは別のユーザにより携帯される少なくとも1個の第3の移動型無線機、
を有している無線通信システムにおいて、
第1の順番に従い、各移動型無線機に中継局探索用電波を送信させる中継局探索用電波送信手段、
各移動型無線機に、他の各移動型無線機から中継局探索用電波の電界強度を測定させる測定手段、
各移動型無線機における前記電界強度についての測定結果に係る情報を収集情報として収集する収集手段、
前記第1及び前記第2の移動型無線機間の無線通信について中継局となる第3の移動型無線機を、前記収集情報に基づき決定する決定手段、及び
中継局に決定された第3の移動型無線機を、前記第1及び前記第2の移動型無線機間の無線通信の際に、中継局として作動させる中継作動手段、
を有していることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記収集手段は、
第2の順番に従い、各移動型無線機に、各移動型無線機における収集情報を送信させる情報送信手段、及び
各移動型無線機に、他機から受信した収集情報に基づき自機の収集情報を更新させる情報更新手段、
を含むことを特徴とする請求項記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第2の順番は、前記第1の順番とは逆の順番であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の順番における1番は前記第1の移動型無線機であり、
前記決定手段は前記第1の移動型無線機に装備されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
中継局探索用電波を送信する中継局探索用電波送信手段、
他の各移動型無線機からの中継局探索用電波についての電界強度を測定する測定手段、
前記各移動型無線機における前記電界強度についての測定結果情報を収集情報として収集する収集手段、
通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機を、蓄積した収集情報に基づき決定する決定手段、及び
決定した中継局用移動型無線機へ、自機と前記通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知する通知手段、
を有していることを特徴とする移動型無線機。
【請求項6】
他の移動型無線機から自機が所定の無線通信における中継局になる旨を通知されたときには、該所定の無線通信について中継を行う中継手段、
を有していることを特徴とする請求項5記載の移動型無線機。
【請求項7】
前記収集手段は、
自機の収集情報を送信させる情報送信手段、及び
他の移動型無線機から受信した収集情報に基づき自機の収集情報を更新させる情報更新手段、
を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記中継局探索用電波には、中継を必要とする無線通信の呼機及び被呼機に係る情報が含まれることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の移動型無線機。
【請求項9】
中継局探索用電波の送信に係る順番に従い自己の順番が来ると、中継局探索用電波を送信するステップ、
他の移動型無線機から中継局探索用電波を受信した場合は、該中継局探索用電波の電界強度を測定し測定値を該他の移動型無線機に対応付けて収集情報として記憶するステップ、
収集情報の送信に係る順番に従い自己の順番が来ると、収集情報を送信するステップ、
他の移動型無線機から該他の移動型無線機の収集情報を受信した場合は、該他の移動型無線機の収集情報を自己の収集情報に追加して、自己の収集情報を更新するステップ、
通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機を、蓄積した収集情報に基づき決定するステップ、及び
決定した中継局用移動型無線機へ、自機と前記通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知するステップ、
を有していることを特徴とする無線通信方法。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれかに記載の移動型無線機の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項1】
相互に相手側からの電波を受信不能となっている地点に存在する各1個の第1及び第2の移動型無線機、及び
前記第1及び前記第2の移動型無線機とは別の移動型無線機であってかつ前記第1及び前記第2の移動型無線機のユーザとは別のユーザにより携帯される少なくとも1個の第3の移動型無線機、
を有している無線通信システムにおいて、
第1の順番に従い、各移動型無線機に中継局探索用電波を送信させる中継局探索用電波送信手段、
各移動型無線機に、他の各移動型無線機から中継局探索用電波の電界強度を測定させる測定手段、
各移動型無線機における前記電界強度についての測定結果に係る情報を収集情報として収集する収集手段、
前記第1及び前記第2の移動型無線機間の無線通信について中継局となる第3の移動型無線機を、前記収集情報に基づき決定する決定手段、及び
中継局に決定された第3の移動型無線機を、前記第1及び前記第2の移動型無線機間の無線通信の際に、中継局として作動させる中継作動手段、
を有していることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記収集手段は、
第2の順番に従い、各移動型無線機に、各移動型無線機における収集情報を送信させる情報送信手段、及び
各移動型無線機に、他機から受信した収集情報に基づき自機の収集情報を更新させる情報更新手段、
を含むことを特徴とする請求項記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第2の順番は、前記第1の順番とは逆の順番であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の順番における1番は前記第1の移動型無線機であり、
前記決定手段は前記第1の移動型無線機に装備されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
中継局探索用電波を送信する中継局探索用電波送信手段、
他の各移動型無線機からの中継局探索用電波についての電界強度を測定する測定手段、
前記各移動型無線機における前記電界強度についての測定結果情報を収集情報として収集する収集手段、
通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機を、蓄積した収集情報に基づき決定する決定手段、及び
決定した中継局用移動型無線機へ、自機と前記通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知する通知手段、
を有していることを特徴とする移動型無線機。
【請求項6】
他の移動型無線機から自機が所定の無線通信における中継局になる旨を通知されたときには、該所定の無線通信について中継を行う中継手段、
を有していることを特徴とする請求項5記載の移動型無線機。
【請求項7】
前記収集手段は、
自機の収集情報を送信させる情報送信手段、及び
他の移動型無線機から受信した収集情報に基づき自機の収集情報を更新させる情報更新手段、
を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記中継局探索用電波には、中継を必要とする無線通信の呼機及び被呼機に係る情報が含まれることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の移動型無線機。
【請求項9】
中継局探索用電波の送信に係る順番に従い自己の順番が来ると、中継局探索用電波を送信するステップ、
他の移動型無線機から中継局探索用電波を受信した場合は、該中継局探索用電波の電界強度を測定し測定値を該他の移動型無線機に対応付けて収集情報として記憶するステップ、
収集情報の送信に係る順番に従い自己の順番が来ると、収集情報を送信するステップ、
他の移動型無線機から該他の移動型無線機の収集情報を受信した場合は、該他の移動型無線機の収集情報を自己の収集情報に追加して、自己の収集情報を更新するステップ、
通信相手の移動型無線機との無線通信についての中継局用移動型無線機を、蓄積した収集情報に基づき決定するステップ、及び
決定した中継局用移動型無線機へ、自機と前記通信相手の移動型無線機との無線通信に対して中継局になる旨を通知するステップ、
を有していることを特徴とする無線通信方法。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれかに記載の移動型無線機の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−199908(P2011−199908A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142235(P2011−142235)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2005−322903(P2005−322903)の分割
【原出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2005−322903(P2005−322903)の分割
【原出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
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