説明

無線端末組み込みプログラム書き換え方法

【課題】無線端末のユーザに通常使用上の影響を与えることなく、また、保守者に多くの時間を要求するこなとく、無線端末に組み込まれたプログラムを書き換えることを可能にすること。
【解決手段】PC3と無線端末4間にデータ通信を確立し、PC3からプログラムデータを送信して無線端末4のプログラムを書き換える。プログラムデータの送受信途中で無線端末4が通常通信を要求した場合、プログラムデータの送受信を一時的に待機させ、通常通信の終了後に未送受信のプログラムデータから送受信を再開させる。また、無線端末4の通常通信中にプログラムデータの送受信が要求された場合、プログラムデータの送受信を待機させ、無線端末4の通常通信の終了後にプログラムデータの送受信を開始させる。プログラムの書き換えは無線端末ごとに可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末組み込みプログラム書き換え方法に関し、特に、ユーザの使用を妨げずに無線端末組み込みプログラムの書き換え作業を効率的に行うことができる無線端末組み込みプログラム書き換え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの無線端末に組み込まれたプログラムをバージョンアップするため、その書き換えが必要になる。無線端末に組み込まれたプログラムの書換えは、有線通信あるいは無線通信を使用して行われる。有線通信を使用する書き換えの場合、無線端末を回収してプログラム書き換え用パソコン(PC)にケーブルで接続し、PCから新たなプログラムデータを転送することにより書き換えを行う。また、無線通信を使用する書き換えの場合には、同様に無線端末を回収するかもしくは回収せずに、該無線端末にプログラムデータを無線送信して書き換えを行う。
【特許文献1】特開2001−274721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、有線通信を使用する書き換えの場合には、保守者が各ユーザ宅を回って無線端末を回収しなくてはならない。そのため、保守者は書き換え作業に多くの時間を取らなくてはならず、また、ユーザは書き換えの間、無線端末を使用できなくなるという課題がある。
【0004】
無線通信を使用する書き換えにおいて、無線端末を回収して書き換えを行う場合には、上記と同様の課題がある。また、無線端末を回収せずに書き換えを行う場合、保守者はユーザ全員にその旨を連絡しなくてはならない。さらに、書き換えの連絡を受けたユーザは、書き換え作業の間、無線端末を通常使用状態と異なる状態に設定しておかなければならず、その間、無線端末を全く使用することができなくなるという課題がある。ここで、通常使用状態とは、通常通信を行っている状態と通常通信を行うことができる待ちの状態を含んでいる。
【0005】
本発明の目的は、無線端末のユーザに通常使用上の影響を与えることなく、また、保守者に多くの時間を要求するこなとく、無線端末に組み込まれたプログラムを書き換えることができる無線端末組み込みプログラム書き換え方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、プログラムデータを送受信して無線端末に組み込まれたプログラムを書き換える無線端末組み込みプログラム書き換え方法において、プログラムデータの送受信より無線端末の通常通信を優先させることを第1の特徴としている。
【0007】
また、本発明は、プログラムデータの送受信中に無線端末の通常通信が要求された場合、プログラムデータの送受信を待機させて無線端末の通常通信を行わせ、無線端末の通常通信の終了後に未送受信のプログラムデータから送受信を再開させること第2の特徴としている。
【0008】
また、本発明は、無線端末の通常通信中にプログラムデータの送受信が要求された場合、プログラムデータの送受信を待機させ、無線端末の通常通信の終了後にプログラムデータの送受信を開始させることを第3の特徴としている。
【0009】
ここで、プログラムデータの送受信は、無線端末ごとに指定して行うことが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線端末のユーザに通常使用上の影響を与えることなく、また、保守者に多くの時間を要求するこなとく、無線端末に組み込まれたプログラムを書き換えることができる。
【0011】
また、プログラムデータの送受信を行うデータ通信中に、無線端末の通常通信が要求された場合にはデータ通信を中断し、通常通信の終了後に未送受信のプログラムデータから送受信を再開させ、既に送信済みのプログラムデータは再送しないので、効率的にプログラムを書き換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を説明する。本明細書では、無線通信システムでの無線端末の本来の機能としての通信(例えば通話)を通常通信と定義し、プログラムデータ送受信のための通信をデータ通信と定義することとする。
【0013】
図1は、本発明が適用される無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。本例の無線通信システムは、主装置1、無線基地局2、プログラム書き換え用パソコン(以下、単にPCと記す。)3、および無線端末(以下、単に端末と記す)4を備える。図1では1つの無線基地局2と1つの端末4を示しているが、それらは複数あるのが普通である。主装置1は、任意のコマンドを送受信でき、通常通信またはデータ通信を制御または仲介する。
【0014】
図2は、主装置1の一例を示す機能ブロック図であり、制御部1−1、保守部1−2、および端末I/F部1−3を備える。制御部1−1は、通常通信またはデータ通信(交換制御を含む)を制御する。保守部1−2は、PC3に接続されてデータ通信を行う。端末I/F部1−3は、無線基地局2を収容し、該無線基地局2を介して端末4と通常通信あるいはデータ通信を行う。無線基地局2は、主装置1と端末4の通信を仲介する。PC3は、主装置1の保守部1−2に接続されてデータ通信を行い、端末4に組み込まれたプログラムの書き換え指示や管理用データやプログラムデータなどを送受信する。端末4は、通常通信やデータ通信を制御し、終端する。
【0015】
図3は、端末4の一例を示す機能ブロック図であり、制御部4−1、保守部4−2、主装置I/F部4−3、RAM4−4、およびROM4−5を備える。制御部4−1は、通常通信またはデータ通信(交換制御を含む)を制御する。保守部4−2は、制御部4−1からプログラム書き換え指示を受けると、RAM4−4とROM4−5にアクセスして書き換えを行う。主装置I/F部4−3は、無線基地局2を介して主装置1に接続されて通信を行う。RAM4−4は、端末4が受信したプログラムデータを一時保存し、ROM4−5は不揮発性メモリであり、端末4が受信したプログラムデータを記憶する。端末4は、ROM4−5に記憶されたプログラムに従って動作する。
【0016】
次に、上記実施形態における各部が持つ状態とデータ、データ通信におけるメッセージについて説明する。まず、システムの各部は、以下の状態とデータを保持する。
(1)主装置1は、端末ごとに次の状態を持っている。
(sts1-1)通常状態(初期状態)
(sts1-2)プログラム書き換え待ち状態
(2)端末は、次のデータを保持している。
(dat2-1)プログラムデータの受信済みシーケンス番号
また、端末は、次の状態を持っている。
(sts2-1)プログラム書き換え待ち状態(初期状態)
(sts2-2)プログラム受信中状態
(sts2-3)プログラム書き換え中状態
(3)PC3は、次のデータを保持している。
(dat3-1)端末の端末番号
(dat3-2)端末のプログラムデータ
【0017】
データ通信では以下のメッセージ((m2)データ着信を除く)が送受信される。なお、(m2)データ着信は、通常通信として送受信される。以下の「:」に続く記載は、各メッセージに含まれるデータ要素を示す。
(m1)プログラム書換準備要求:(elm1-1)端末番号
(m2)データ着信:・・・(elm2-1)端末書換
(m3)データ書き込み要求:(elm3-1)シーケンス番号および(elm3-2)プログラムデータ
(m4)データ書き込み応答:(elm4-1)受信済みシーケンス番号
(m5)プログラム送信終了要求:データ要素無し
(m6)プログラム送信終了応答:データ要素無し
(m7)プログラム送信中断通知:(elm7-1)端末番号
(m8)プログラム送信再開通知:(elm8-1)端末番号
【0018】
図4は、プログラム書き換え動作全体を示すフローチャートである。主装置1とPC3との間でデータ通信確立後、PC3から主装置1に対してプログラム書換準備要求(m1)を送信する(S3-1)。この際、端末の端末番号(dat3-1)をプログラム書換準備要求(m1)の端末番号(elm1-1)に設定する。ここでは、端末4の端末番号が端末番号(elm1-1)に設定されたとする。
【0019】
主装置1は、PC3からプログラム書換準備要求(m1)を受信すると、端末4の通信状態を確認し、これが通常通信状態でない場合には、端末4に対して通常通信の一つであるデータ着信(m2)に端末書換(elm2-1)を付加して送信する(S1-1)。
【0020】
端末4は、データ着信(m2)を受信し、それに端末書換(elm2-1)が付加されている場合、主装置1との間でデータ通信を確立し、書き換えデータの受信済みシーケンス番号(dat2-1)をデータ書き込み応答(m4)の受信済みシーケンス番号(elm4-1)に設定してPC3へ送信する(S2-1)。
【0021】
PC3は、端末4からデータ書き込み応答(m4)を受信すると、受信済みシーケンス番号(elm4-1)と端末4のプログラムデータ(dat3-2)を元に、データ書き込み要求(m3)のシーケンス番号(elm3-1)とプログラムデータ(elm3-2)を設定し、端末4へ送信する(S3-2)。
【0022】
端末4は、データ書き込み要求(m3)を受信すると、プログラムデータ(elm3-2)をRAM4−4に保存し、シーケンス番号(elm3-1)をデータ書き込み応答(m4)の受信済みシーケンス番号(elm4-1)へ設定し、PC3へ送信する(S2-2)。また、プログラム書き換え待ち状態(sts2-1)をプログラム受信中状態(sts2-2)へ遷移させる。
上記データ書き込み要求(m3)およびデータ書き込み応答(m4)の送受信((S2-2),(S3-2))が繰り返されて組み込みプログラム全体が端末4へ送信されると、PC3は、受信済みシーケンス番号(elm4-1)とプログラムデータ(dat3-2)を元にその旨を認識し、端末4へプログラム送信終了要求(m5)を送信する(S3-3)。
【0023】
端末4は、プログラム送信終了要求(m5)を受信すると、PC3へプログラム送信終了応答(m6)を送信し、プログラム受信中状態(sts2-2)をプログラム書き換え中状態(sts2-3)へ遷移させる(S2-3)。
【0024】
主装置1は、端末4からプログラム送信終了応答(m6)を受信してPC3へ送信した後、端末4との間のデータ通信を切断する(S1-2)。
【0025】
端末4は、データ通信が切断されたときにプログラム書き換え中状態(sts2-3)である場合、RAM4−4に保存していたプログラムデータをROM4−5へを転送し、ROM4−5のプログラムを書き換える。プログラムの書き換えが終了すれば、
プログラム書き換え中状態(sts2-3)をプログラム書き換え待ち状態(sts2-1)へ遷移させる。
【0026】
また、直ちに端末4の再起動を行い、端末4を新たなプログラムで動作させる。なお、RAM4−4からROM4−5へのプログラムデータの転送は、プログラムデータ全体が受信された時点で即座に行ったり、ユーザに問いかけてその判断を仰いで行ったり、端末の使用可能性の少ないタイミング(例えば、夜間)に行ったりすることができる。
【0027】
図5は、データ書き込み要求(m3)およびデータ書き込み応答(m4)の送受信((S2-2),(S3-2))が繰り返されている途中に、端末4で通常通信が要求された場合の動作を示すフローチャートである。
【0028】
データ書き込み要求(m3)およびデータ書き込み応答(m4)の送受信((S2-2),(S3-2))が繰り返されている途中に、端末4で通常通信確立の操作が行われると(S2-5)、主装置1は、通常通信確立の要求を認識し、データ通信を切断するとともに通常状態(sts1-1)をプログラム書き換え待ち状態(sts1-2)へ遷移させる。また、データ通信を切断した後、一定時間内に端末4から通常通信確立の要求がきた場合にも同様に状態を遷移させ、一定時間内にその要求がこない場合にはデータ通信を再確立する。続いて、PC3へプログラム送信中断通知(m7)を送信した後、通常通信を確立する(S1-3)。
【0029】
PC3は、プログラム送信中断通知(m7)を受信すると、それに含まれる端末番号(elm7-1)の端末4に対してはプログラム送信再開通知(m8)を受信するまで待機する(S3-4)。
【0030】
その後、通常通信が切断されると、主装置1はその旨を認識し、PC3へプログラム送信再開通知(m8)を送信するとともにプログラム書き換え待ち状態(sts1-2)を 通常状態(sts1-1)へ遷移させる(S1-4)。
PC3は、主装置1からプログラム送信再開通知(m8)を受信すると、それに含まれる(elm8-1)端末番号をプログラム書換準備要求(m1)の端末番号(elm1-1)に設定して端末4へ送信する(S3-5)。
【0031】
主装置1は、PC3からプログラム書換準備要求(m1)を受信すると、図4と同様に、端末4へデータ着信(m2)を送信し(S1-1)、端末4は、主装置1との間にデータ通信を確立する(S2-1)。その後、図4の(S2-2)と同様に、端末4は、書き換えデータの受信済みシーケンス番号(dat2-1)をデータ書き込み応答(m4)の受信済みシーケンス番号(elm4-1)に設定してPC3へ送信する。その後の動作は、図4の(S3-3)以下と同様であるので説明を省略する。
【0032】
図6は、端末4の通常通信中に、プログラム書き換えのためのデータ通信が確立された場合の動作を示すフローチャートである。
【0033】
主装置1とPC3との間でデータ通信確立後、PC3から主装置1に対してプログラム書換準備要求(m1)が送信されると(S3-1)、主装置1は、それに含まれる端末番号(elm1-1)の端末4が通常通信中であることを認識し、通常使用状態(sts1-1)をプログラム書き換え待ち状態(sts1-2)へ遷移させるとともにPC3へプログラム送信中断通知(m7)を送信する(S1-5)。
【0034】
PC3は、プログラム送信中断通知(m7)を受信すると、それに含まれる端末番号(elm7-1)の端末4に対してはプログラム送信再開通知(m8)を受信するまで待機する(S3-4)。
【0035】
その後、通常通信が切断されると、主装置1はその旨を認識し、PC3へプログラム送信再開通知(m8)を送信するとともにプログラム書き換え待ち状態(sts1-2)を通常使用状態(sts1-1)へ遷移させる(S1-4)。
PC3は、主装置1からプログラム送信再開通知(m8)を受信すると、それに含まれる(elm8-1)端末番号をプログラム書換準備要求(m1)の端末番号(elm1-1)に設定して端末4へ送信する(S3-5)。
【0036】
主装置1は、PC3からプログラム書換準備要求(m1)を受信すると、図4と同様に、端末4へデータ着信(m2)を送信し(S1-1)、端末4は、主装置1との間でデータ通信を確立する(S2-1)。その後の動作は、図4の(S2-2)以下と同様であるので説明を省略する。
【0037】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、これに限られず種々の変形が可能である。例えば、PCあるいは無線端末においてプログラムの書き換え開始や完了の日時、プログラムのバージョン情報などを記憶しておけば無線端末ごとの管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明が適用される無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】主装置の一例を示す機能ブロック図である。
【図3】無線端末の一例を示す機能ブロック図である。
【図4】プログラム書き換え動作全体を示すフローチャートである。
【図5】プログラム書き換え途中で通常通信が要求された場合の動作を示すフローチャートである。
【図6】通常通信中にプログラム書き換えのためのデータ通信が確立された場合の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1・・・主装置、1−1、4−1・・・制御部、1−2、4−2・・・保守部、1−3・・・端末I/F部、2・・・無線基地局、3・・・PC、4・・・無線端末、4−3・・・主装置I/F部、4−4・・・RAM、4−5・・・ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムデータを送受信して無線端末に組み込まれたプログラムを書き換える無線端末組み込みプログラム書き換え方法において、
プログラムデータの送受信より無線端末の通常通信を優先させることを特徴とする無線端末組み込みプログラム書き換え方法。
【請求項2】
プログラムデータの送受信中に無線端末の通常通信が要求された場合、プログラムデータの送受信を待機させて無線端末の通常通信を行わせ、無線端末の通常通信の終了後に未送受信のプログラムデータから送受信を再開させることを特徴とする請求項1に記載の無線端末組み込みプログラム書き換え方法。
【請求項3】
無線端末の通常通信中にプログラムデータの送受信が要求された場合、プログラムデータの送受信を待機させ、無線端末の通常通信の終了後にプログラムデータの送受信を開始させることを特徴とする請求項1に記載の無線端末組み込みプログラム書き換え方法。
【請求項4】
プログラムデータの送受信は、無線端末ごとに指定して行うことが可能であることを特徴とする請求項1に記載の無線端末組み込みプログラム書き換え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−180399(P2006−180399A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373909(P2004−373909)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】