説明

無線通信システム、並びに、無線通信装置及びプログラム

【課題】 複数のアンテナを有する無線通信装置が無線信号を送信する際の送信強度を効率的な値に制御する。
【解決手段】 本発明は、複数のアンテナを有する第1の無線通信装置と、第2の無線通信装置を備える無線通信システムに関する。そして、第1の無線通信装置は、第2の無線通信装置における受信品質に係る受信品質情報を保持する手段と、保持した受信品質情報に基づいて、第2の無線通信装置へ無線信号を送信する際に用いるアンテナ及び無線信号の送信強度を決定し、決定に従った条件で第2の無線通信装置へ無線信号を送信する手段とを有することを特徴とする。そして、第2の無線通信装置は、第1の無線通信装置から受信した無線信号の受信品質に関する測定を行い、その測定結果に基づいて受信品質情報を生成して第1の無線通信装置に提供する手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信システム、並びに、無線通信装置及びプログラムに関し、例えば、ダイバシティアンテナを備える無線通信装置に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアンテナを有するダイバシティアンテナを備える無線通信装置では、通常データ受信時に選択したアンテナを使用して、折り返しのデータ送信を実施していた。
【0003】
従来のダイバシティアンテナを備える無線通信装置としては、例えば、特許文献1の記載技術がある。
【0004】
特許文献1の記載技術では、円偏波を送受信する複数のアンテナの受信レベルをレベル比較器により比較し、最も受信レベルが大きなアンテナ、すなわち最も受信状態が良好なアンテナをアンテナ切替器により選択している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−148196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等の従来技術では、では、データ受信時に選択したアンテナを使用して、データ送信を実施する構成となっているが、この際の無線送信電力は、通信距離等に関係なく固定であった。
【0007】
したがって、従来のダイバシティアンテナを用いた無線通信装置では、データ送信時には制御がなく環境変化への対応が満足できていなかった。また、アンテナ選択するが通信距離に関係なく無線送信電力が固定で、近距離でも高出力無線送信をしているケースもあり、余分に消費電力を消費する問題があった。
【0008】
そのため、複数のアンテナを有する無線通信装置が無線信号を送信する際の送信強度を効率的な値に制御することができる無線通信システム、並びに、無線通信装置及びプログラムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、複数のアンテナを有する第1の無線通信装置と、上記第1の無線通信装置と無線通信を行うことが可能な第2の無線通信装置とを備える無線通信システムにおいて、(1)上記第1の無線通信装置は、(1−1)それぞれの上記アンテナを用いて上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信した場合の受信品質に係る受信品質情報を保持する受信品質情報保持手段と、(1−2)上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報に基づいて、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する際に用いる上記アンテナ及び無線信号の送信強度を決定する送信条件決定手段と、(1−3)上記送信条件決定手段が決定した上記アンテナを用いて、上記送信条件決定手段が決定した送信強度で、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する無線信号送信手段とを有し、(2)上記第2の無線通信装置は、(2−1)上記第1の無線通信装置から受信した無線信号の受信品質に関する測定を行う受信品質測定手段と、(2−2)上記受信品質測定手段による測定結果に基づいて受信品質情報を生成して、その受信品質情報を、上記第1の無線通信装置に提供する受信品質情報提供手段とを有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明は、複数のアンテナを有し、第2の無線通信装置と通信することが可能な第1の無線通信装置において、(1)それぞれの上記アンテナを用いて上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信した場合の受信品質に係る受信品質情報を保持する受信品質情報保持手段と、(2)上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報に基づいて、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する際に用いる上記アンテナ及び無線信号の送信強度を決定する送信条件決定手段と、(3)上記送信条件決定手段が決定した上記アンテナを用いて、上記送信条件決定手段が決定した送信強度で、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する無線信号送信手段とを有することを特徴とす。
【0011】
第3の本発明は、複数のアンテナを有する第1の無線通信装置と無線通信することが可能な第2の無線通信装置において、(1)上記第1の無線通信装置から受信した無線信号の受信品質に関する測定を行う受信品質測定手段と、(2)上記受信品質測定手段による測定結果に基づいて受信品質情報を生成して、その受信品質情報を、上記第1の無線通信装置に提供する受信品質情報提供手段とを有することを特徴とする。
【0012】
第4の本発明の無線通信プログラムは、(1)複数のアンテナを有し、第2の無線通信装置と通信することが可能な第1の無線通信装置に搭載されたコンピュータを、(2)それぞれの上記アンテナを用いて上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信した場合の受信品質に係る受信品質情報を保持する受信品質情報保持手段と、(3)上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報に基づいて、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する際に用いる上記アンテナ及び無線信号の送信強度を決定する送信条件決定手段と、(4)上記送信条件決定手段が決定した上記アンテナを用いて、上記送信条件決定手段が決定した送信強度で、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する無線信号送信手段として機能させることを特徴とする。
【0013】
第5の本発明の無線通信プログラムは、(1)複数のアンテナを有する第1の無線通信装置と無線通信することが可能な第2の無線通信装置に搭載されたコンピュータを、(2)上記第1の無線通信装置から受信した無線信号の受信品質に関する測定を行う受信品質測定手段と、(3)上記受信品質測定手段による測定結果に基づいて受信品質情報を生成して、その受信品質情報を、上記第1の無線通信装置に提供する受信品質情報提供手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のアンテナを有する無線通信装置が無線信号を送信する際の送信強度を効率的な値に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信装置の機能的構成について示したブロック図であるである。
【図2】第1の実施形態に係る無線通信システムの全体構成について示した説明図である。
【図3】第1の実施形態に係る無線通信装置で管理される通信管理テーブルの内容例について示した説明図である。
【図4】第1の実施形態に係る無線通信システムの動作について示したシーケンス図である、
【図5】第2の実施形態に係る無線通信システムの全体構成について示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による無線通信システム、並びに、無線通信装置及びプログラムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0017】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、この実施形態の無線通信システム1の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
無線通信システム1には、2台の無線通信装置10(10−1、10−2)配置されている。なお、無線通信システム1において配置される無線通信装置10の数は限定されないものであるが、説明を簡易にするため図2では、2台の無線通信装置10のみを図示している。
【0019】
無線通信装置10−1と無線通信装置10−2とは、相互に無線通信可能なノードとして配置されている。それぞれの無線通信装置10の具体的な種類は限定されないものであり、例えば、携帯電話端末、モバイルPC、無線ルータ(無線アクセスポイント)等の種々の無線通信装置を適用することができる。
【0020】
無線通信装置10間で用いられる無線通信方式や信号の様式は限定されないものであるが、この実施形態では、無線通信装置10の間を流れる信号の形式として、IEEE 802.11フレームフォーマット(イーサネット(登録商標)フレーム)を適用するものとして説明する。また、この実施形態では、無線通信装置10の間を流れるフレームの種類は、802.11ヘッダのタイプ値を用いて識別されるものとするが、その他のフィールドを用いる(例えば、データのフィールドに所定の情報を付加する)ようにしても良い。例えば、当該フレームがユーザデータを伝送するためのデータフレームであるのか、制御情報を伝送するための制御フレームであるのか等を、送信側の無線通信装置10でヘッダ(タイプ値)に設定するようにしても良い。また、無線通信装置10では、制御フレームであってもその制御の種類に応じて、異なるタイプ値を設定するようにしても良い。なお、無線通信装置10が上述のフレームを送受信するための構成としては、既存の無線LAN端末等で、イーサネットフレームを送受信する構成を適用することができる。
【0021】
また、各無線通信装置10には、相互に通信するための識別子(イーサネットアドレス)が付与されており、無線通信装置10−1のイーサネットアドレスをX1、無線通信装置10−2のイーサネットアドレスをX2と表すものとする。なお、無線通信装置10間で用いる識別子(アドレス)の種類は、イーサネットアドレス(MACアドレス)に限定されずIPアドレス(IPv4、IPv6等)等の他の識別子を適用するようにしても良い。
【0022】
図1は、それぞれの無線通信装置10の機能的構成について示したブロック図である。なお、この実施形態では、それぞれの無線通信装置10の内部構成はすべて同じものとして説明するが、一部異なる構成としてもよい。なお、以下では、説明を簡易にするため、無線通信装置10−1は主としてデータの送信側として動作するものとして説明し、無線通信装置10−2は主としてデータの受信側として動作するものとして説明するが、実際には上述の通り無線通信装置10−1と無線通信装置10−2とは相互にデータ送受信可能な構成を備えているものとする。
【0023】
無線通信装置10は、通信制御部11及び送受信処理部12を有している。
【0024】
無線通信装置10は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、ハードディスクなどのプログラムの実行構成、及び、他の通信装置と無線通信をするためのインタフェースを有する装置に、実施形態の無線通信プログラム等をインストールすることにより構築するようにしても良い。その場合でも、無線通信装置10の機能的構成は、図1のように表わすことができる。
【0025】
送受信部12は、通信制御部11の制御に基づいて、無線通信信号の送受信を行うものであり、受信処理部121、送信処理部122、及び2つのアンテナ131(131−1、131−2)を備えるダイバシティアンテナ130を有している。なお、無線通信装置10上では、ダイバシティアンテナ130を構成する各アンテナ131に識別子が付与されており、アンテナ131−1の識別子を「A1」、アンテナ131−2の識別子を「A2」であるものとして以下の説明を行う。
【0026】
送信処理部122は、通信制御部11よりデータあるいは指示を受け、該当するフレームを生成し、さらに所定の方式で変調した信号の電波を、通信制御部11の指示に従ったアンテナ131を用いて空中放出するものである。また、送信処理部122は、電波を空中放出する際に、通信制御部11の指示に従った送信レベル(送信強度)で電波の空中放出を行う。
【0027】
受信処理部121は、空中からいずれかのアンテナ131を介して電波を受信して、所定の方式で復調した信号から、フレームを復元し、通信制御部11に復元したデータ(フレーム)を渡すものである。
【0028】
また、受信処理部121は、無線通信信号を受信する際に当該無線通信信号の受信レベル(受信強度)の測定も行い、通信制御部11へ復元したデータと共に、測定した受信レベルの値も報告することが可能である。受信処理部121が無線信号の受信レベルを測定する場合には、フレームの復元に用いた信号の強度を測定することが望ましい。例えば、受信処理部121が、最も受信レベルの高い1つのアンテナ131が受信した無線信号からフレームを復元した場合には、当該アンテナ131の受信レベルを測定することが望ましい。また、受信処理部121が、複数のアンテナ131の受信した無線信号を合成した信号を用いてフレームを復元した場合には、その合成した信号の強度を受信レベルとして測定することが望ましい。
【0029】
通信制御部11は、送受信部12に対する通信制御を行う機能を担っており、通信管理テーブル111を有している。
【0030】
通信制御部11は、当該無線通信装置10から他のノードへ送信する送信データが発生した場合には、そのデータを保持して送信処理部122に引き渡す。当該無線通信装置10から他のノードへ送信するデータが発生する契機や内容は限定されないものであるが、例えば、当該無線通信装置10における図示しない上位層の処理構成(例えば、アプリケーション等)で、発生した場合等が挙げられる。そして、通信制御部11は、当該無線通信装置10において他のノードに送信するデータが発生すると、例えば、そのデータが発生したアプリケーション等から、所定のインタフェース(ソフトウェア的なインタフェースとしても良いし、物理的なインタフェースとしても良い)を介して送信データを保持するようにしても良い。通信制御部11は、送信データを送信処理部122にデータ送信させる際に、いずれのアンテナ131を使用して送信するかを通信管理テーブル111の内容にしたがって指示する。
【0031】
また、通信制御部11は、受信処理部121で受信したフレームが、他のノードから当該無線通信装置10へ送信されたデータが挿入されたフレームであった場合には、そのフレームに挿入されたデータを保持し、例えば、上述の送信データの場合と逆に、図示しない上位層の処理構成へ所定のインタフェースを介して引き渡すようにしても良い。また、通信制御部11は、受信処理部121から、受信したフレームの受信レベルの報告も受付けて、受付けた受信レベルに基づいて、通信管理テーブル111の内容を更新する処理も行う。
【0032】
次に、通信制御部11で管理される通信管理テーブル111の内容について説明する。
【0033】
図3は、通信管理テーブル111の内容例について示した説明図である。
【0034】
通信管理テーブル111では、対向する通信先(他の無線通信装置10)ごとに通信先管理情報が登録されており、各通信先管理情報には、図3に示すように、通信先識別子、通信先受信レベル、データ送信アンテナ、自装置受信レベル、設定送信レベルの項目の情報を有している。なお、図3では、無線通信装置10−1に登録された通信管理テーブル111の内容例について示している。そして、図3に示す通信管理テーブル111では、無線通信装置10−2(識別子:X2)に対する通信先情報が登録されている。
【0035】
「通信先アドレス」の項目は、当該通信先情報に係る無線通信装置10にアクセスするための識別子(イーサネットアドレス)を示している。したがって、図3に示す、無線通信装置10−2に係る通信先情報の通信先アドレスの項目は「X2」となっている。
【0036】
「通信先受信レベル」の項目は、それぞれのアンテナ131を用いて、当該通信先(無線通信装置10−2)へデータ送信を行った場合に、当該通信先(無線通信装置10−2)で測定された受信レベルを示している。無線通信装置10−1は、2つのアンテナ131−1、131−2を備えているので、通信先受信レベルの項目は、アンテナ131ごとに受信レベルを記録するフィールドが配置されている。通信先受信レベルを構成するA1、A2の項目は、それぞれ、アンテナ131−1、131−2を用いた場合の通信先での受信レベルを示している。図3では、無線通信装置10−2に係る通信先情報の通信先受信レベルの項目において、A1に対応する受信レベルをSL1−1、A2に対応する受信レベルをSL1−2と表わしている。
【0037】
「データ送信アンテナ」の項目は、当該通信先(無線通信装置10−2)へのデータ送信に用いるアンテナ131の識別子を示している。図3では、無線通信装置10−2に係る通信先情報のデータ送信アンテナの項目に、アンテナ131−1の識別子「A1」が入力されている。
【0038】
「自装置受信レベル」の項目は、自装置(無線通信装置10−1)で、当該通信先(無線通信装置10−2)から送出された信号を受信した場合の受信レベルを示している。図3では、無線通信装置10−2に係る通信先情報の自装置受信レベルをSL2と表わしている。
【0039】
「設定送信レベル」の項目は、自装置(無線通信装置10−1)から、当該通信先(無線通信装置10−2)へデータ送信する際の無線信号の送信レベルを示している。図3では、無線通信装置10−2に係る通信先情報の設定送信レベルをTLと表わしている。
【0040】
なお、図3では説明を簡易にするため、各レベルの表記をSL1−1、SL1−2、SL2、TLという符号であらわしているが、実際には、それぞれの符号に対応するレベル値が入力されることになる。
【0041】
次に、無線通信装置10−1の通信制御部11が、通信管理テーブル111を構成する通信先受信レベルの情報を保持する構成について説明する。
【0042】
無線通信装置10−1の通信制御部11が、アンテナ131ごとの通信先受信レベルを測定した結果を保持する方法については限定されないものであるが、この実施形態では、例として、以下のような処理で保持されるものとする。
【0043】
まず、無線通信装置10−1の通信制御部11が送信処理部122を介して、通信先(無線通信装置10−2)へ、それぞれのアンテナ131を介して受信レベルの測定を要求する信号(以下、「受信レベル要求信号」と呼ぶ)を送信するものとする。なお、受信レベル要求信号には、少なくとも、当該受信レベル要求信号の送信元(無線通信装置10−1)にアクセスするための識別子(X1)と、当該受信レベル要求信号に用いられたアンテナ131の識別子(A1又はA2)が含まれているものとする。
【0044】
そして、通信先(無線通信装置10−2)の受信処理部121では、受信レベル要求信号を受信した際に、その受信レベルが測定され、さらに、測定された受信レベルの情報を含む信号(以下、「受信レベル情報信号」と呼ぶ)が生成されて、受信レベル要求信号の送信元に返答される。なお、受信レベル情報信号には、少なくとも、当該受信レベル情報信号の送信元(無線通信装置10−2)にアクセスするための識別子(X2)と、対応する受信レベル要求信号に含まれていたアンテナ131の識別子(A1又はA2)が含まれているものとする。
【0045】
そして、無線通信装置10−1の通信制御部11は、無線通信装置10−2から受信した受信レベル情報信号の内容に基づいて、通信管理テーブル111を構成するアンテナ131ごとの通信先受信レベルを保持して入力する。この実施形態の通信制御部11では、1回の測定で、通信先受信レベルの項目に入力する値を求めるものとするが、複数回測定を行った結果に基づいて求める(例えば、平均値を求める)ようにしても良い。
【0046】
そして、無線通信装置10−1の通信制御部11は、通信管理テーブル111のアンテナ131ごとの通信先受信レベル等に基づいて、いずれのアンテナ131を用いて、無線通信装置10−2へのデータ送信を行うか決定し、決定したアンテナ131の識別子を、データ送信アンテナの項目に入力する。無線通信装置10−1の通信制御部11は、例えば、最も通信先受信レベルの高いアンテナ131を、データ送信アンテナとして選択するようにしても良い。
【0047】
そして、無線通信装置10−1の通信制御部11は、データ送信アンテナとなるアンテナ131を選択すると、無線通信装置10−2へデータ送信する際の無線信号の送信レベルを決定し、決定した内容を、設定送信レベルの項目に入力する。
【0048】
無線通信装置10−1の通信制御部11が、設定送信レベルを決定する方式については限定されないものであるが、この実施形態では、データ送信アンテナとして決定したアンテナ131に対応する通信先受信レベルの値に応じて決定するものとする。図3では、無線通信装置10−2(X2)に対するデータ送信アンテナとして、A1(アンテナ131−1)が決定されているので、無線通信装置10−1の通信制御部11は、A1(アンテナ131−1)に対応する通信先受信レベルSL1を用いて設定送信レベルTLを決定することになる。
【0049】
無線通信装置10−1の通信制御部11が、データ送信アンテナに係る通信先受信レベルを用いて設定送信レベルTLを決定する方法については限定されないものである。この実施形態では、例として、データ送信アンテナに係る通信先受信レベルと、所定の閾値(以下、「TH」と呼ぶ)との比較結果に応じて決定されるものとする。ここでは例として、データ送信アンテナに係る通信先受信レベルをSL1とした場合を想定する。そして、SL1<THの場合には、無線通信装置10−1の通信制御部11は、設定送信レベルを、任意の定数値であるTL1と決定し、SL1≧THの場合には、無線通信装置10−1の通信制御部11は、設定送信レベルをTL1よりも低い定数値であるTL2と決定するものとする。
【0050】
無線通信装置10−1の通信制御部11が、設定送信レベルTLを決定する具体的な方法は限定されないものであり、データ送信アンテナに係る通信先受信レベルが高くなるほど、設定送信レベルTLが低くなるように決定する方法であれば良い。例えば、無線通信装置10−1の通信制御部11は、データ送信アンテナに係る通信先受信レベルに反比例した値(たとえば、通信先受信レベルに所定の計数値を乗じて算出した値)を設定送信レベルTLとして適用(上限値は設けるようにしても良い)するようにしても良い。
【0051】
そして、無線通信装置10−1の通信制御部11は、一度データ送信アンテナ及び設定送信レベルを決定した後に、無線通信装置10−2との通信状況(例えば、自装置受信レベルの値)に応じて、設定送信レベル及び自装置受信レベルを再決定するようにしても良い。その際、無線通信装置10−1の通信制御部11は、再度全てのアンテナ131について、通信先受信レベルの再測定の処理(受信レベル要求信号の送信及び受信レベル情報信号の受信)を行うようにしても良い。
【0052】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態の無線通信システム1の動作を説明する。
【0053】
ここでは、無線通信装置10−1の通信制御部11で、無線通信装置10−2へデータ送信すると決定された場合のシーケンスについて、図4を用いて説明する。また、初期状態では、無線通信装置10−1の通信管理テーブル111には、無線通信装置10−2(X2)に係る通信先管理情報は未だ登録されていないものとして説明する。
【0054】
無線通信装置10−1の通信制御部11で、無線通信装置10−2へデータ送信すると決定された場合、まず、通信制御部11は、通信管理テーブル111に無線通信装置10−2(通信先アドレス:X2)の通信先管理情報を追加登録する(通信先アドレスをX2とする行を追加する)。
【0055】
そして、無線通信装置10−1の通信制御部11は、通信先受信レベル(SL1−1、SL1−2)の情報を保持する処理を開始する。
【0056】
まず、無線通信装置10−1の通信制御部11は、アンテナ131−1(A1)を選択する(S101)。そして、無線通信装置10−1の通信制御部11は、選択したアンテナ131−1(A1)を用いて、受信レベル要求信号を、無線通信装置10−2に送信するように、送信処理部122を制御する(S102)。
【0057】
そして、無線通信装置10−2の受信処理部121で、無線通信装置10−1から送信された受信レベル要求信号が受信されると、その受信レベルが測定される。そして、無線通信装置10−2では、受信処理部121から通信制御部11へ、受信レベル要求信号と共に、測定された受信レベルの情報が通知される(S103)。
【0058】
そして、無線通信装置10−2の通信制御部11では、通知された受信レベル要求信号と受信レベルの情報に基づいて、当該受信レベル要求信号に対応する受信レベル情報信号が生成される。そして、無線通信装置10−2の通信制御部11から、送信処理部122を介して、無線通信装置10−1に送信される(S104)。なお、無線通信装置10−2で、受信レベル情報信号を送信する際に用いるアンテナ131は、特に限定されないものであり任意の1又は複数のアンテナ131を用いるようにしても良い。
【0059】
そして、無線通信装置10−1では、無線通信装置10−2からアンテナ131−1(A1)に係る受信レベル情報信号が、受信処理部121を介して通信制御部11に通知されたものとする。そうすると、無線通信装置10−1の通信制御部11は、通知された受信レベル情報信号の情報に基づいて、通信管理テーブル111のうち、アンテナ131−1(A1)に対応する通信先受信レベルSL1−1を更新する(S105)。
【0060】
そして、次に、無線通信装置10−1の通信制御部11は、アンテナ131−2(A2)を選択して同様の処理を行い、アンテナ131−2(A2)に対応する通信先受信レベルSL2を更新する処理を行う(S106〜S110)。
【0061】
そして、次に、無線通信装置10−1の通信制御部11は、通信先受信レベルSL1−1、SL1−2に基づいて、無線通信装置10−2へのデータ送信に用いるデータ送信アンテナ、及び、設定送信レベルを決定する処理を行い、決定した内容を、通信管理テーブル111に登録する処理を行う(S111)。
【0062】
そして、その後、無線通信装置10−1の通信制御部11は、無線通信装置10−2へデータ送信する場合には、通信管理テーブル111のデータ送信アンテナの項目に従ったアンテナ131を用いて、設定送信レベルに従った送信レベルで無線信号を出力するように、送信処理部122を制御することになる(S112)。
【0063】
そして、その後、無線通信装置10−1の通信制御部11は、無線通信装置10−2から送信された信号を受信した際に、無線通信装置10−2に係る通信管理情報の自装置受信レベルの値を更新し、自装置受信レベルの値が所定以下となったことを検知すると、データ送信条件の再決定処理を開始(S113、S114)し、上述のステップS101の処理から再度動作することになる。
【0064】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0065】
無線通信装置10では、他のノードへのデータ送信時に、伝搬特性の良い(通信先受信レベルが高い)アンテナ131を選択して、環境の変化に柔軟に対応可能で安定化の効果が期待でき、無線通信装置10間の遠近に応じて送信レベル(無線送信電力)を制御することにより省電力化を可能とし、効率的な送信レベルの制御を行うことができる。
【0066】
(B)第2の実施形態
以下、本発明による無線通信システム、並びに、無線通信装置及びプログラムの第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0067】
図5は、第2の実施形態の無線通信装置10Aの全体構成について示した説明図である。
【0068】
第1の実施形態では、無線通信システム1上に、2台の無線通信装置10−1、10−2のみが配置され、無線通信装置10−1と無線通信装置10−2との間で1対1の通信が行われる場合の例について示した。これに対して、第2の実施形態では、図5に示すように、無線通信装置10Aは、3台の無線通信装置10−1〜10−3を備え、マルチホップ通信行う構成となっている点で、第1の実施形態と異なっている。
【0069】
無線通信システム1Aにおいて、それぞれの無線通信装置10としては第1の実施形態と同様のものを適用することができるが、上述の通り、マルチホップ通信により通信を行う点で第1の実施形態と異なっている。例えば、無線通信装置10−1と無線通信装置10−2との間、及び、無線通信装置10−2と無線通信装置10−3との間は直接無線通信を行うが、無線通信装置10−1と無線通信装置10−3との間では直接無線通信が行われず、無線通信装置10−2を介した無線通信となる。
【0070】
そして、無線通信システム1Aにおいて、各無線通信装置10の間で、データ送信が行われる場合には、第1の実施形態に示したように、通信先ごとに通信先受信レベルを保持して、データ送信アンテナ及び設定送信レベルを決定して通信管理テーブル111を更新し、通信管理テーブル111の内容に従ったデータ送信を行うものとする。
【0071】
これにより、マルチホップ通信の環境であっても、各無線通信装置10は、常に最適なアンテナ131及び送信レベルを決定して、安定的な無線通信を行いつつ、省電力化を図り、効率的な送信レベルの制御を行うことが可能となる。従来の無線通信システムでマルチホップ通信を行う場合には、各無線通信装置において、データの受信元と送信先が異なるため、データ送信に最適なアンテナ及び送信レベルを適用しておらず通信が不安定となったり、通信を安定化するために過大な送信レベルでデータ送信を行う場合等あったが、この実施形態では上述のような問題を解消することができる。
【0072】
(C)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0073】
(C−1)第1の実施形態では、無線通信装置10−1と無線通信装置10−2とで同じ構成であるものとして説明したが、無線通信装置10−2側は、ダイバシティアンテナ130を備える必要はなく、通常のアンテナ(単数でも良い)を備えるようにしても良い。
【0074】
また、無線通信装置10−2側は、通信管理テーブル111や、通信管理テーブル111を管理する構成を備える必要はなく、受信レベル要求信号を受信して受信レベルを測定し、受信レベル情報信号を応答する等、少なくとも。無線通信装置10−1から無線通信によりデータ受信を行うことが可能な構成を備えていれば良い。
【0075】
(C−2)上記の各実施形態において、無線通信装置10−2では、無線通信装置10−1から受信した無線信号の受信レベルのみに基づいて、無線通信装置10−1から無線通信装置10−2への通信品質(無線通信装置10−2での受信品質)に関する測定を行っているが、その他のパラメータも利用して通信品質に関する測定を行うようにしても良い。
【0076】
例えば、無線通信装置10−2では、受信レベル要求信号を受信した際のパリティチェック等により、エラーが発生したビット数(以下、「エラービット数」と呼ぶ)を把握し、受信レベルとエラービット数を受信レベル信号に含めて、無線通信装置10−1に返答するようにしても良い。そして、無線通信装置10−1側では、無線通信装置10−2の通信先受信レベルに加えて上述のエラービット数(以下、「通信先エラービット数」と呼ぶ)も通信管理テーブル111で管理し、通信先受信レベル及び通信先エラービット数を考慮して、アンテナ131の選択及び設定送信レベルを決定するようにしても良い。無線通信装置10−1側では、例えば、受信レベルが閾値TH以上であっても、通信先エラービットが所定数以上の場合には、設定送信レベルを低下させないような設定送信レベルを決定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…無線通信システム、10、10−1、10−2…無線通信装置、11…通信制御部、111…通信管理テーブル、12…送受信部、121…受信処理部、122…送信処理部、130…ダイバシティアンテナ、131、131−1、131−2…アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを有する第1の無線通信装置と、上記第1の無線通信装置と無線通信を行うことが可能な第2の無線通信装置とを備える無線通信システムにおいて、
上記第1の無線通信装置は、
それぞれの上記アンテナを用いて上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信した場合の受信品質に係る受信品質情報を保持する受信品質情報保持手段と、
上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報に基づいて、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する際に用いる上記アンテナ及び無線信号の送信強度を決定する送信条件決定手段と、
上記送信条件決定手段が決定した上記アンテナを用いて、上記送信条件決定手段が決定した送信強度で、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する無線信号送信手段とを有し、
上記第2の無線通信装置は、
上記第1の無線通信装置から受信した無線信号の受信品質に関する測定を行う受信品質測定手段と、
上記受信品質測定手段による測定結果に基づいて受信品質情報を生成して、その受信品質情報を、上記第1の無線通信装置に提供する受信品質情報提供手段とを有する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
上記送信条件決定手段は、上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報が示す受信品質が高いほど、低い送信強度を決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
上記受信品質情報には、少なくとも上記第2の無線通信装置が上記第1の無線通信装置から無線信号を受信した際の受信強度の値が含まれており、
上記送信条件決定手段は、上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報に含まれる受信強度の値が閾値未満の場合、送信強度を第1の値に設定し、上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報に含まれる受信強度の値が上記閾値以上の場合、送信強度を上記第1の値よりも低い第2の値に決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
上記受信品質情報保持手段は、上記第2の無線通信装置に受信品質情報の送信を要求する受信品質情報要求信号を送信し、
上記受信品質測定手段は、上記第1の無線通信装置から送信された受信品質情報要求信号を受信した場合に、受信品質に関する測定を行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
上記受信品質情報保持手段が送信する受信品質情報要求信号には、当該受信品質情報要求信号の送信に用いる上記アンテナを識別するアンテナ識別情報が含まれており、
上記受信品質情報提供手段が上記第1の無線通信装置に提供する受信品質情報には、対応する受信品質情報要求信号に係るアンテナ識別情報が含まれている
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
複数のアンテナを有し、第2の無線通信装置と通信することが可能な第1の無線通信装置において、
それぞれの上記アンテナを用いて上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信した場合の受信品質に係る受信品質情報を保持する受信品質情報保持手段と、
上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報に基づいて、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する際に用いる上記アンテナ及び無線信号の送信強度を決定する送信条件決定手段と、
上記送信条件決定手段が決定した上記アンテナを用いて、上記送信条件決定手段が決定した送信強度で、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する無線信号送信手段と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
複数のアンテナを有する第1の無線通信装置と無線通信することが可能な第2の無線通信装置において、
上記第1の無線通信装置から受信した無線信号の受信品質に関する測定を行う受信品質測定手段と、
上記受信品質測定手段による測定結果に基づいて受信品質情報を生成して、その受信品質情報を、上記第1の無線通信装置に提供する受信品質情報提供手段と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
複数のアンテナを有し、第2の無線通信装置と通信することが可能な第1の無線通信装置に搭載されたコンピュータを、
それぞれの上記アンテナを用いて上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信した場合の受信品質に係る受信品質情報を保持する受信品質情報保持手段と、
上記受信品質情報保持手段が保持した受信品質情報に基づいて、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する際に用いる上記アンテナ及び無線信号の送信強度を決定する送信条件決定手段と、
上記送信条件決定手段が決定した上記アンテナを用いて、上記送信条件決定手段が決定した送信強度で、上記第2の無線通信装置へ無線信号を送信する無線信号送信手段と
して機能させることを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項9】
複数のアンテナを有する第1の無線通信装置と無線通信することが可能な第2の無線通信装置に搭載されたコンピュータを、
上記第1の無線通信装置から受信した無線信号の受信品質に関する測定を行う受信品質測定手段と、
上記受信品質測定手段による測定結果に基づいて受信品質情報を生成して、その受信品質情報を、上記第1の無線通信装置に提供する受信品質情報提供手段と
して機能させることを特徴とする無線通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78006(P2013−78006A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217086(P2011−217086)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】