説明

無線通信装置、レピータ、及び無線通信システム

【課題】無線通信装置の使用者が、レピータの使用の可否を判断することができるようにする。
【解決手段】レピータ2A〜2Cは、自身のレピータの使用が許可された無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報を1以上記憶している。例えば、レピータ2Aは、ネットワークNを介して接続された他のレピータ2Bから、レピータ2Bと通信を行っている無線通信装置1Jが属するグループG4を識別するグループ識別情報、及び、他のレピータ2Bと無線通信装置1Jとの間の通信状態を表す通信状態情報を受信し、レピータ2Aが記憶しているグループG1〜G3にグループG4が含まれていないことを判別すると、レピータ2Aが受信した通信状態情報が表す通信状態に基づいた通信情報を無線で送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、レピータ、及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信には、いわゆるレピータを経由して無線通信装置同士の通信を行う方法がある。無線通信装置からレピータへの送信のアップリンクと、レピータから無線通信装置への送信のダウンリンクとの周波数又はタイムスロットを変えて、同時に通信することにより、無線通信装置同士で通信を行うことができる。
【0003】
ネットワークを介して複数のレピータを接続して1つの無線通信システムとし、複数のレピータの通信範囲により無線通信システムの通信エリアが構成される。通常はレピータごとに通信チャネル(アップリンクとダウンリンクの周波数)が決まっている。無線通信装置は、自身が滞在しているレピータの通信範囲のレピータのチャネルを選択してレピータとの間で通信を行う。すなわち、そのレピータのダウンリンクの周波数で呼び出しを待ち受け、また、そのレピータのアップリンクの周波数で他の無線通信装置の呼び出しを行う。
【0004】
この種の技術として、例えば、特許文献1には、無線通信装置が任意のレピータを指定して、指定したレピータの通信範囲の他の無線通信装置を一斉に呼び出す無線通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−295135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした無線通信システムにおいて、ネットワーク接続された複数のレピータのうち、何れかのレピータが無線通信装置から通信フレームを受信した場合には、各レピータがそれぞれ通信中の状態になる。つまり、ネットワークを介して接続された複数のレピータは、あたかも「1台のレピータ」であるかのように動作する。
【0007】
しかしながら、無線通信装置の使用者は、各レピータの使用状態を知ることができないという問題があった。そのため、無線通信装置の使用者は、ネットワーク接続された複数のレピータのうち、何れかのレピータが使用中であるにもかかわらず、何度も通信を試みる操作を行うことがあった。
【0008】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、無線通信装置の使用者が、ネットワーク上のレピータの使用の可否を判断することができる、レピータ、無線通信装置、及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係るレピータは、
通信回線を介して相互に接続された複数のレピータを備えた中継システムと、該中継システムを介して通信を行う複数の無線通信装置と、から構成される無線通信システムで用いられるレピータであって、
前記無線通信装置が属し、自身のレピータの使用が許可されたグループを識別するグループ識別情報を1以上記憶したグループ識別情報記憶手段と、
前記通信回線を介して接続された他のレピータから、前記他のレピータと通信を行っている無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報、及び、前記他のレピータと前記無線通信装置との間の通信状態を表す通信状態情報を受信する通信状態情報受信手段と、
前記通信状態情報受信手段が受信した前記グループ識別情報により識別されるグループが、前記グループ識別情報記憶手段が記憶した前記1以上のグループ識別情報のいずれかと一致しない場合に、前記通信状態情報受信手段が受信した前記通信状態情報が表す通信状態に基づく通信情報を無線で送信する制御を行う制御手段と、
を備える。
【0010】
また、前記制御手段は、前記通信状態情報受信手段が受信した前記グループ識別情報により識別されるグループが、前記グループ識別情報記憶手段が記憶した前記1以上のグループ識別情報のいずれかと一致する場合に中継処理を行うように構成しても良い。
【0011】
また、前記通信状態情報受信手段は、通信範囲に滞在する前記無線通信装置から、前記無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報を受信し、前記制御手段は、前記通信状態情報受信手段が受信した前記グループ識別情報により識別されるグループが、前記グループ識別情報記憶手段が記憶した前記1以上のグループ識別情報のいずれかと一致する場合に中継処理を行うように構成しても良い。
【0012】
本発明の第2の観点に係る無線通信装置は、
通信回線を介して相互に接続された複数のレピータを備えた中継システムと、該中継システムを介して通信を行う複数の無線通信装置と、から構成される無線通信システムで用いられる無線通信装置であって、
前記レピータから無線で送信される、前記通信回線を介して接続された他のレピータの通信状態を表す他レピータ通信状態情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した他レピータ通信状態情報に基づいて前記他のレピータの通信状態を通知する通知手段と、
を備える。
【0013】
また、使用が許可されたレピータを識別するレピータ識別情報を1以上記憶したレピータ識別情報記憶手段と、前記通知手段を制御する制御手段と、をさらに備え、前記制御手段は、前記他レピータ通信状態情報を送信した前記レピータ以外の前記レピータ識別情報が前記レピータ識別情報記憶手段に記憶されている場合に、前記通知手段に前記他のレピータの通信状態を通知させるように構成しても良い。
【0014】
また、前記制御手段は、前記他レピータ通信状態情報を送信した前記レピータ以外の前記レピータ識別情報が前記レピータ識別情報記憶手段に記憶されていない場合に、前記通知手段に前記他のレピータの通信状態を通知させないように構成しても良い。
【0015】
また、自身が属するグループを識別するグループ識別情報を記憶したグループ識別情報記憶手段をさらに備え、前記受信手段は、前記レピータから送信される、前記レピータ又は前記他のレピータを介して通信を行っている無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報を受信し、前記制御手段は、前記受信手段が受信した前記グループ識別情報が、前記グループ識別情報記憶手段が記憶したグループ識別情報と一致する場合に、前記無線通信装置との間で通信を行う制御を行い、一方、一致しない場合に、前記無線通信装置との間で通信を行う代わりに、通信状態を前記通知手段に通知させるように構成しても良い。
【0016】
本発明の第3の観点に係る無線通信システムは、
通信回線を介して相互に接続された複数のレピータを備えた中継システムと、該中継システムを介して通信を行う複数の無線通信装置と、から構成される無線通信システムであって、
前記レピータは、
前記無線通信装置が属し、自身のレピータの使用が許可されたグループを識別するグループ識別情報を1以上記憶したグループ識別情報記憶手段と、
前記通信回線を介して接続された他のレピータから、前記他のレピータと通信を行っている無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報、及び、前記他のレピータと前記無線通信装置との間の通信状態を表す通信状態情報を受信する通信状態情報受信手段と、
前記通信状態情報受信手段が受信した前記グループ識別情報により識別されるグループが、前記グループ識別情報記憶手段が記憶した前記1以上のグループ識別情報のいずれかと一致しない場合に、前記通信状態情報受信手段が受信した前記通信状態情報が表す通信状態に基づく通信情報を無線で送信する制御を行う制御手段と、
を備え、
前記無線通信装置は、
前記レピータから無線で送信される、前記通信回線を介して接続された他のレピータの通信状態を表す他レピータ通信状態情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した他レピータ通信状態情報に基づいて前記他のレピータの通信状態を通知する通知手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線通信装置の使用者は、ネットワーク上のレピータの使用の可否を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線通信システムの構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る無線通信装置のブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るレピータのブロック図である。
【図4】無線通信装置が記憶しているグループ情報のデータ構造の一例を示す図である。
【図5】レピータが記憶しているマルチテーブルの構成例を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるレピータ通信中情報及びレピータ通信終了情報の通知手順を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る無線通信システムの一実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態に係る無線通信システム100は、図1に示すように、ネットワークNに接続されている複数のレピータ2A〜2Cを備える。また、無線通信システム100は、複数の無線通信装置1A〜1Lを備える。また、ネットワークNにはサーバSが接続されている。無線通信システム100は、複数のレピータ2A〜2Cを、それぞれ地理的に分散し、これらを、ネットワークNを介して接続することにより、通信エリアの広域化を図る。
【0020】
無線通信システム100において、無線通信装置1同士の通信は、レピータ2を介して行われる。また、無線通信システム100において、異なるレピータ2の通信範囲に滞在している無線通信装置1同士の通信は、ネットワークNを経由して行う。無線通信システム100は、ネットワークNにより接続された複数のレピータ2A〜2Cにより、あたかも「1台のレピータ」であるかのように動作する。
【0021】
特に、無線通信システム100において、各無線通信装置1は、それぞれ、同じグループに属する無線通信装置1との間で通信を行う。ここで、グループとは、例えば、団体や会社等の単位を表す。つまり、無線通信装置1は、互いに同じ団体や会社等のグループに属する無線通信装置1との間でのみ通信を行い、互いに異なる団体や会社等のグループに属する無線通信装置1との間では通信を行わない。
【0022】
また、各無線通信装置1は、グループ毎に使用可能な1又は複数のレピータ2が予め設定されている。つまり、本実施の形態に係る無線通信システム100は、互いに異なるグループに属する各無線通信装置1が、同じレピータ2を使用可能であると設定されることもあり、各レピータ2は公共性を有している。
【0023】
図1において、無線通信装置1A〜1Cは、グループG1に属し、使用可能なレピータ2として、レピータ2A〜2Cが設定されている。また、無線通信装置1D,1Eは、グループG2に属し、使用可能なレピータ2として、レピータ2Aが設定されている。また、無線通信装置1F〜1Iは、グループG3に属し、使用可能なレピータ2として、レピータ2Aが設定されている。また、無線通信装置1J〜1Lは、グループG4に属し、使用可能なレピータ2として、レピータ2B,2Cが設定されている。
【0024】
各無線通信装置1は、自身の無線通信装置1が属するグループを識別するグループIDと、使用可能なレピータ2を識別するレピータIDとを対応付けて記憶している。例えば、無線通信装置1Aは、図4に示すように、無線通信装置1Aが属するグループG1を識別するグループID(G1)と、使用可能なレピータ2A〜2Cを識別するレピータID(rA,rB,rC)とを対応付けて記憶している。
【0025】
また、各無線通信装置1は、それぞれ、使用可能なレピータ2により割り当てられた各チャネルを選択して通信を行う。例えば、グループG1に属する無線通信装置1Aは、レピータ2Aの通信範囲ではレピータ2Aのチャネルを選択し、また、レピータ2Bの通信範囲ではレピータ2Bのチャネルを選択して通信を行う。
【0026】
各レピータ2は、自身のレピータ2を使用可能な無線通信装置1のグループを識別するグループIDをグループ毎に表すテーブル(以下、マルチテーブルという)に記憶している。これにより、レピータ2のマルチテーブルに記憶されているグループIDと同じグループIDを持つ無線通信装置1は、そのレピータ2を介して、同じグループに属する無線通信装置1との間で通信を行うことができる。
【0027】
レピータ2Aは、図5(a)に示すように、グループG1,G2,G3のそれぞれを識別する各グループID(G1,G2,G3)をマルチテーブルに記憶している。レピータ2Bは、図5(b)に示すように、グループG1,G4のそれぞれを識別する各グループID(G1,G4)をマルチテーブルに記憶している。レピータ2Cは、図5(c)に示すように、グループG1,G4のそれぞれを識別する各グループID(G1,G4)をマルチテーブルに記憶している。
【0028】
また、図1に示すように、レピータ2A〜2Cのアップリンク(無線通信装置1からレピータ2へ行う通信)の周波数は、それぞれF〜Fとする。また、レピータ2A〜2Cのダウンリンク(レピータ2から無線通信装置1へ行う通信)の周波数は、それぞれf〜fとする。例えば、無線通信装置1Aは、レピータ2Aのダウンリンクの周波数fによりレピータ2Aから取得した呼び出しを待ち受け、レピータ2Aのアップリンクの周波数Fによりレピータ2Aへ呼び出しを行う。
【0029】
1つのレピータ2において、アップリンクとダウンリンクを1組にして同時に通信できるチャネル数(同時通信チャネル数)は、レピータ2の構成による。以下、本実施の形態の各レピータ2の同時通信チャネル数は、1組であるものとして説明する。レピータ2の同時通信チャネル数が1組である場合、例えば、レピータ2Aが、その通信範囲に滞在している無線通信装置1と通信を行っている場合や、ネットワークNを介して他のレピータ2Bまたはレピータ2Cの通信範囲に滞在している無線通信装置1と通信を行っている場合、そのレピータ2Aは、他の無線通信装置1との間で通信を行うことができなくなる。また、この場合、レピータ2A以外のレピータ2B,2Cも使用中の状態になる。
【0030】
なお、各無線通信装置1の通信形態には、無線通信装置1と同じグループに属する全ての無線通信装置1と通話を行うグループ通話、グループを所定の範囲(例えば、部、課、班等)に細分化し、細分化された範囲毎に通話を行う範囲指定通話、及びグループ内の無線通信装置1を個別に指定して通話を行う個別指定通話等があるが、本実施の形態では、説明の便宜上、グループ通話の形態のみを説明する。
【0031】
また、ネットワークNは、例えば、LAN(Local Area Network)を用いる。ネットワークNは、その他、回線交換網、パケット交換網、インターネット、専用線網を用いても良い。また、ネットワークNは、このような有線通信網に限らず、例えば無線LANなどの無線通信網を用いても良い。
【0032】
また、サーバSは、ネットワークNを介して接続されているレピータ2A〜2Cのネットワークアドレス等を記憶している。サーバSは、例えば、DNS(Domain Name System)サーバ又はDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ等を用いる。
【0033】
このように構成された無線通信システム100において、各レピータ2は、自身のレピータ2の通信状態又はネットワークNを介して接続された他のレピータ2の通信状態を、それぞれの通信範囲に滞在し、レピータ2A〜2Cを使用していない無線通信装置1に通知し、各無線通信装置1の使用者が、レピータ2の使用の可否を判断できるようにすることを実現する。
【0034】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る無線通信装置1の構成を説明する。無線通信装置1は、図2に示すように、信号系のブロックとして、アンテナ10、送受信切換部11、送信部12、ベースバンド処理部13、A/D変換部14、マイク15、受信部16、ベースバンド処理部17、D/A変換部18、スピーカ19を備えている。また、無線通信装置1は、制御系のブロックとして、コントローラ20、計時部25、表示部26、操作部27を備えている。さらに、コントローラ20は、CPU(中央演算ユニット)21、I/O(入出力部)22、RAM(読み書き可能メモリ)23、ROM(読み出し専用メモリ)24、及びこれらを互いに接続する内部バス28を備えている。
【0035】
無線通信装置1の信号系の各ブロックは、CPU21によって制御される。CPU21は、ROM24に記憶されている制御プログラムを実行して無線通信装置1の全体を制御し、I/O22を介して操作部27から入力されるコマンドやデータ、及びベースバンド処理部17から得られるデータを処理してRAM23に一時的に記憶する。また、CPU21は、必要に応じて記憶したコマンドやデータをLCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示部26に表示する。また、CPU21は、計時部25から得られる現在時刻を表示部26に表示する。なお、コントローラ20は、無線通信装置1の固有の識別情報を記録したフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリカードが着脱可能に装着される構成であっても良い。
【0036】
次に、信号系の各ブロックに関して、送受信切換部11は、入力端がアンテナ10に接続され、出力端がCPU21の制御に応じて、送信部12と受信部16に択一的に接続される。操作部27により発信操作がされないときには、この無線通信装置1は受信(待受)モードになっており、送受信切換部11の出力端は受信部16に接続されている。一方、操作部27により送信操作がされたときは、この無線通信装置は送信モードになり、送受信切換部11の出力端は送信部12に接続される。操作部27は、例えば、PTT(Push to talk)スイッチを構成する。
【0037】
無線通信装置1が送信モードのときには、マイク15はユーザの音声入力に応じて、アナログの音声信号をA/D変換部14に出力する。
【0038】
A/D変換部14は、マイク15から取得したアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換してベースバンド処理部13に出力する。
【0039】
ベースバンド処理部13は、A/D変換部14から取得したデジタル音声信号に基づいて、あるいはコントローラ20のRAM23に記憶されているデータに基づいて、所定のフォーマットの通信フレーム(ベースバンド信号)を生成して送信部12に出力する。
【0040】
送信部12は、ベースバンド処理部13から取得した通信フレームを用いて搬送波を変調し、送受信切換部11及びアンテナ10を介してレピータ2に送信する。送信部12の変調方式には、GMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、又はFSK(Frequency Shift Keying)などが用いられる。
【0041】
無線通信装置1が受信モードのときには、送受信切換部11はアンテナ10と受信部16とを接続する。受信部16は、無線通信装置1との間で無線通信を行うレピータ2から取得した無線信号を、アンテナ10を介して受信する。受信部16は、受信信号を増幅すると共に復調処理などの信号処理を施して、その復調信号をベースバンド処理部17に出力する。
【0042】
ベースバンド処理部17は、受信部16から出力された復調信号から通信フレームを抽出する。さらに、抽出した通信フレームのヘッダ部の情報をCPU21に出力する。CPU21は、ヘッダ部の情報を分析して、その受信信号の送信先が自身の場合には、データ部に含まれている音声信号のデータをD/A変換部18に出力させる。また、CPU21は、データ部に含まれている音声信号以外のデータをRAM23に一時的にストアすると共に必要に応じて表示部26に表示する。D/A変換部18は、ベースバンド処理部17から取得した音声信号をデジタルからアナログに変換してスピーカ19から発音させる。
【0043】
次に、図3を参照して、本実施の形態に係るレピータ2の構成を説明する。レピータ2は、図3に示すように、信号系のブロックとして、送信専用のアンテナ30S、送信部32、ベースバンド処理部33、受信専用のアンテナ30R、受信部36、ベースバンド処理部37、入力部34、出力部38、ネットワークI/F(インターフェース)35を備えている。また、レピータ2は、制御系のブロックとして、コントローラ40、計時部45、表示部46、操作部47を備えている。さらに、コントローラ40は、CPU(中央演算ユニット)41、I/O(入出力部)42、RAM(読み書き可能メモリ)43、ROM(読み出し専用メモリ)44、及びこれらを互いに接続する内部バス48を備えている。
【0044】
レピータ2(例えば、レピータ2A)は、送信元の無線通信装置1(例えば、無線通信装置1A)から受信した無線信号を増幅処理や波形処理などの信号処理を行って、送信先の無線通信装置1(例えば、無線通信装置1B)又はネットワークNを介して他のレピータ2に送信するので、基本的には図2に示した無線通信装置1と同様の構成を備えている。したがって、図2に示した無線通信装置1の構成要素と基本的に同じものについては、説明を省略する。
【0045】
レピータ2を経由して無線通信装置1同士が行う通信において、無線通信装置1からレピータ2への送信のアップリンクと、レピータ2から無線通信装置1への送信のダウンリンクとは、周波数又はタイムスロットを変えて実質的に同時に通信を行う。したがって、レピータ2は送信専用のアンテナ30S及び受信専用のアンテナ30Rを備えている。入力部34は、ネットワークN、ネットワークI/F35を介して、他のレピータ2から受信した通信フレームを入力し、これをベースバンド処理部33に出力する。出力部38は、ベースバンド処理部37から出力された通信フレームを入力し、ネットワークI/F35、ネットワークNを介して、他のレピータ2に送信する。
【0046】
次に、図1及び図6を参照して、無線通信システム100における各無線通信装置1及び各レピータ2の動作を説明する。ここでは、使用者が無線通信装置1Jを用いて、無線通信装置1Jと同じグループG4に属する無線通信装置1とグループ通話を行う場合の、各無線通信装置1及び各レピータ2の動作を説明する。
【0047】
使用者は、無線通信装置1Jの操作部27を用いて、無線通信装置1Jと同じグループに属する無線通信装置1との間でグループ通話を開始する操作を行う。具体的には、無線通信装置1Jの使用者がグループ通話を開始する際、使用者が操作部27(例えば、PTTスイッチ)を数秒間、押し続けると、通信フレームには、「操作部27が押されたこと(PTTスイッチが押されたこと)」を示すコードが書き込まれる。また、通信フレームには、無線通信装置1Jが属するグループG4を識別するグループID(G4)が発グループID、無線通信装置1Jの装置を識別する装置ID(1J)が発装置ID、送信先(通話相手)のグループG4を識別するグループID(G4)が着グループIDに設定される。この通信フレームがグループ通話開始を要求する最初の通信フレームとなる。
【0048】
無線通信装置1Jは、生成した通信フレームに変調処理等を施し、グループ通話の開始を要求する信号(以下、通話開始要求信号という)として、レピータ2Bのアップリンクの周波数Fにより、レピータ2Bに無線で送信する(図6のステップS1)。なお、各種ID及びコード等は、予め無線通信装置1Jに記憶されており、通信フレームは、自動的に生成される。
【0049】
レピータ2Bは、無線通信装置1Jから送信された通話開始要求信号を受信し、通話開始要求信号から通信フレームを抽出する。レピータ2Bは、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、レピータ2Bにおいて記憶されている図4(b)に示すマルチテーブル(G1,G4)に含まれているか否かを判定する。発グループID(G4)がマルチテーブルに含まれている場合に、レピータ2Bは、抽出した通信フレームに含まれる「操作部27が押されたこと(PTTスイッチが押されたこと)」を示すコードに基づいて、使用を許可する旨の応答を行う通信フレームを生成する。具体的には、この通信フレームには、無線通信装置1Jが着装置IDに設定され、「使用許可」を示すコードが書き込まれる。レピータ2Bは、使用を許可する旨の応答を行う通信フレームに変調処理等を施し、これを応答信号として、レピータ2Bのダウンリンクの周波数fにより、レピータ2Bの通信範囲に無線で送信する(図6のステップS2)。
【0050】
無線通信装置1Jは、レピータ2Bから送信された応答信号を受信し、応答信号から通信フレームを抽出する。無線通信装置1Jは、抽出した通信フレームに含まれる着装置ID及び「使用許可」を示すコード等から、レピータ2Bの使用が許可されたことを判定し、スピーカ19や表示部26等を介して(例えば、緑色に発光するLED等を点灯して)、無線通信装置1Jの使用者に通話を開始して良い状態であることを通知する。これに応じて、使用者は、通話を開始する。なお、グループ通話を行っている間は、前述した操作部27が使用者により押し続けられるものとし、この間、無線通信装置1Jは、グループ通話を行うための通信フレームを所定の時間毎に生成し、送信する。
【0051】
無線通信装置1Jは、マイク15を介して入力された音声に各種処理を施して通信フレームを生成する。通信フレームには、前述の通話開始要求信号の生成時と同様に、グループID(G4)が発グループID、装置ID(1J)が発装置ID、グループID(G4)が着グループIDに設定される。また、通信フレームには、「グループ呼び出し」を示すコードが書き込まれる。
【0052】
無線通信装置1Jは、前述と同じようにして、生成した通信フレームに変調処理等を施し、グループG4を呼び出すグループ呼び出し信号として、レピータ2Bのアップリンクの周波数Fにより、レピータ2Bに無線で送信する(図6のステップS3)。
【0053】
レピータ2Bは、無線通信装置1Jから送信されたグループ呼び出し信号を受信して通信フレームを抽出する。レピータ2Bは、前述と同じようにして、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、マルチテーブル(G1,G4)に含まれていることを判定した後、「グループ呼び出し」を示すコードに基づいて中継処理を行う。なお、レピータ2BのマルチテーブルにグループID(G4)が含まれていない場合、レピータ2Bは、通信フレームを破棄し、その後の通信は行わないものとする。
【0054】
レピータ2Bは、この通信フレームを含んだグループ呼び出し信号を、レピータ2Bのダウンリンクの周波数fにより、レピータ2Bの通信範囲に無線で送信する(図6のステップS4)。
【0055】
レピータ2Bの通信範囲において、グループG4に属する無線通信装置1(図示しない)は、レピータ2Bから送信されたグループ呼び出し信号を受信して通信フレームを抽出する。無線通信装置1は、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、自身の無線通信装置1において記憶されているグループIDと一致しているか否かを判定し、一致している場合に、「グループ呼び出し」を示すコードに基づいて、無線通信装置1Jとの間でグループ通話を行う。
【0056】
なお、レピータ2Bの通信範囲において、グループG1に属する無線通信装置1Bも、レピータ2Bから送信されたグループ呼び出し信号をダウンリンクの周波数fにより受信する。しかし、無線通信装置1Bは、そのグループ呼び出し信号から抽出される通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、無線通信装置1Bにおいて記憶されているグループID(G1)と一致していないので、無線通信装置1Jとの間でグループ通話を行わない。
【0057】
また、レピータ2Bは、無線通信装置1Jから通信フレームを取得した時点で通信中の状態になる。この時、レピータ2Bの通信範囲に滞在し、レピータ2Bを使用可能なグループG1に属する無線通信装置1Bは、レピータ2Bとの間で通信を行うことができない状態になる。
【0058】
そこで、無線通信装置1Bは、通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、無線通信装置1Bにおいて記憶されているグループID(G1)と一致していない場合、「グループ呼び出し」を示すコードに基づいて、通信フレームを破棄するとともに、スピーカ19や表示部26等を介して(赤色に発光するLED等を点灯して)、無線通信装置1Bの使用者に、レピータ2Bが使用中になったことを通知する。例えば、無線通信装置1Bは、LED等を点灯することでレピータ2Bが使用中であることを使用者に通知する。これにより、無線通信装置1Bの使用者は、レピータ2Bが現在使用中であることを知ることができ、レピータ2Bとの間で通信を試みる無駄な操作を行わなくてすむ。なお、この通知は、前述のレピータ2Bから送信された、使用を許可する旨の応答を行う通信フレームを含む応答信号を、無線通信装置1Bが受信した時に行っても良い。
【0059】
さらに、レピータ2Bは、ステップS4で送信したグループ呼び出し信号と同じ構成のグループ呼び出し信号を、ネットワークNを介して、レピータ2A及びレピータ2Cに送信する(図6のステップS5)。この時、レピータ2Bは、グループ呼び出し信号をブロードキャストにより送信しても良いし、レピータ2A及びレピータ2Cのネットワークアドレスを指定して送信しても良い。
【0060】
レピータ2Bが、ネットワーク上のレピータ2A及びレピータ2Cのネットワークアドレスを保有していない場合、レピータ2Bは、これらのネットワークアドレスを、図1に示すサーバSに問い合わせても良い。この場合、レピータ2A及びレピータ2Cのネットワークアドレスは、サーバSにより与えられる。
【0061】
レピータ2Cは、レピータ2BからネットワークNを介して送信されたグループ呼び出し信号を受信して通信フレームを抽出する。レピータ2Cは、前述と同じようにして、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、レピータ2Cにおいて記憶されている図4(c)に示すマルチテーブル(G1,G4)に含まれているか否かを判定する。
【0062】
発グループID(G4)がマルチテーブルに含まれている場合に、レピータ2Cは、抽出した通信フレームに含まれる「グループ呼び出し」を示すコードに基づいて中継処理を行い、この通信フレームを含んだグループ呼び出し信号を、レピータ2Cのダウンリンクの周波数fにより、レピータ2Cの通信範囲に無線で送信する(図6のステップS5)。
【0063】
レピータ2Cの通信範囲において、グループG4に属する無線通信装置1K,1Lは、レピータ2Cから送信されたグループ呼び出し信号を受信して通信フレームを抽出する。無線通信装置1K,1Lは、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、自身の無線通信装置1において記憶されているグループIDと一致しているか否かを判定し、一致している場合に、「グループ呼び出し」を示すコードに基づいて、無線通信装置1Jとの間でグループ通話を行う。
【0064】
なお、レピータ2Cの通信範囲において、グループG1に属する無線通信装置1Cも、前述と同じようにして、レピータ2Cから送信されたグループ呼び出し信号をダウンリンクの周波数fにより受信する。しかし、無線通信装置1Cは、そのグループ呼び出し信号から抽出される通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、無線通信装置1Cにおいて記憶されているグループID(G1)と一致していないので、無線通信装置1Jとの間でグループ通話を行わない。
【0065】
また、レピータ2Cは、レピータ2Bから通信フレームを取得した時点で通信中の状態になる。この時、レピータ2Cの通信範囲に滞在し、レピータ2Cを使用可能なグループG1に属する無線通信装置1Cは、レピータ2Cとの間で通信を行うことができない状態になる。
【0066】
そこで、無線通信装置1Cは、前述と同じようにして、「グループ呼び出し」を示すコードに基づいて、通信フレームを破棄するとともに、スピーカ19や表示部26等を介して(例えば、赤色に発光するLED等を点灯して)、無線通信装置1Cの使用者に、レピータ2Cが使用中になったことを通知する。これにより、無線通信装置1Cの使用者は、レピータ2Cが現在使用中であることを知ることができ、レピータ2Cとの間で通信を試みる無駄な操作を行わなくてすむ。
【0067】
一方、レピータ2Aは、レピータ2BからネットワークNを介してグループG4の呼び出し信号を受信し、その通信フレームを抽出する。レピータ2Aは、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、レピータ2Aにおいて記憶している図4(a)に示すマルチテーブル(G1,G2,G3)に含まれているか否かを判定する。レピータ2Aは、発グループID(G4)が、マルチテーブルに含まれていない場合に、通信フレームを破棄する。
【0068】
また、この場合、レピータ2Aは、抽出した通信フレームに含まれる「グループ呼び出し」を示すコードに基づいて、ネットワークN上の他のレピータ2が使用されていることを判定し、他のレピータ2が使用中であることを表す通信フレームを生成する。通信フレームには、レピータ2Aを識別するレピータID(rA)が発レピータID、マルチテーブルにより表される各グループID(G1,G2,G3)が着グループIDに設定される。また、通信フレームには「他レピータ使用中」を示すコードが書き込まれる。
【0069】
レピータ2Aは、それぞれ設定した各ID、コード等を含んだ通信フレームを生成し、生成した通信フレームに変調処理等を施し、これを他レピータ通信中信号として、レピータ2Aのダウンリンクの周波数fにより、レピータ2Aの通信範囲に無線で送信する(図6のステップS7)。なお、レピータ2Aは、通信フレームに着グループID等を設定する代わりに、全グループを指定する全グループID、無線通信装置1同士の通話時の通信フレームと区別するコード等を設定することにより、他のレピータ2が通信中であることを表す通信フレームを生成し、これに基づいて前述の他レピータ通信中信号をレピータ2Aのダウンリンクの周波数fにより、レピータ2Aの通信範囲に無線で送信するようにしても良い。
【0070】
また、レピータ2Aが他のレピータ2が通信中であることを表す通信フレームを送信する間隔は、1つの通信フレームが約80ミリ秒である場合、送信に用いられる通信フレームは、400ミリ秒(80ミリ秒×4=320ミリ秒+送信の開始、終了時間)程度が望ましい。なお、通信フレームの送信間隔を長くし(例えば2秒間隔)、これを取得した無線通信装置1が、他のレピータ2が使用中である情報を所定時間(例えば5秒間)保持するようにしても良い。
【0071】
ここで、レピータ2Aは、レピータ2BからネットワークNを介して通信フレームを取得した時点で通信中の扱いになるが、レピータ2Aは実際には使用されていない。
【0072】
レピータ2A以外にネットワークN上のレピータ(2B,2C)を使用可能なグループG1に属している無線通信装置1Aにとっては、ネットワーク上のレピータ2B,2Cが実際に使用されている間は、これらが空き状態になるのを待たなければ通信を行うことができない。
【0073】
そこで、グループG1に属している無線通信装置1Aは、他レピータ通信中信号の受信に応じて、他のレピータ2が通信中であることを、スピーカ19や表示部26等を介して使用者に通知する。
【0074】
具体的には、レピータ2Aの通信範囲において、グループG1に属する無線通信装置1Aは、レピータ2Aから送信された他レピータ通信中信号を受信し、その通信フレームを抽出する。
【0075】
無線通信装置1Aは、抽出した通信フレームに含まれる「他レピータ使用中」を示すコードから、他レピータ2(レピータ2A以外のレピータ2B,2Cの何れか)が使用中であることを判定し、スピーカ19や表示部26等を介して(例えば、赤色に発光するLED等を点灯して)、無線通信装置1Aの使用者に他レピータ2が使用中であることを通知する。これにより、無線通信装置1Aの使用者は、他のレピータ2(レピータ2A以外のレピータ2B,2Cの何れか)が現在使用中であることを知ることができ、レピータ2Aとの間で通信を試みる無駄な操作を行わなくてすむ。
【0076】
一方、グループG2に属している無線通信装置1D,1E、及びグループG3に属している無線通信装置1F〜1Iにとっては、レピータ2Aのみを使用可能であるので、ネットワーク上のレピータ2B,2Cが実際に使用されている間でも、レピータ2Aのみを用いて通信を行うことができ、レピータ2B,2Cが空き状態になるのを待つ必要はない。
【0077】
そこで、グループG2に属する無線通信装置1D,1E、及びグループG3に属する無線通信装置1F〜1Iは、受信した他レピータ通信中信号の通信フレームに「他レピータ使用中」を示すコードが含まれていても、自身の無線通信装置1D〜1Iが、レピータ2A以外の他のレピータ2を使用しない場合は、他のレピータ2が通信中であることを通知しないようにする。
【0078】
具体的には、グループG2に属する無線通信装置1D,1Eは、無線通信装置1Aと同様にして通信フレームを取得後、通信フレームに「他レピータ使用中」を示すコードが含まれている場合、レピータ2A以外のレピータ2が通信中であることを判定するが、スピーカ19や表示部26等を介して(例えば、赤色に発光するLED等を点灯して)、無線通信装置1D,1Eの使用者に他レピータ2が使用中であることを通知しない。なお、グループG3に属する無線通信装置1F〜1Iも、上記と同様にして、使用者に通知しない。
【0079】
これにより、実際には使用されていないレピータ2Aのみを使用可能なグループG2に属する無線通信装置1D,1E、及びグループG3に属する無線通信装置1F〜1Iは、ネットワークNを介して接続された他のレピータ2(レピータ2Bやレピータ2C)が使用中である時に、レピータ2Aを使用することができる。この時、レピータ2Aは、ネットワークNから一時的に切り離され、「単独で稼働するレピータ」であるかのように動作する。つまり、レピータ2Aは、他のレピータ2(レピータ2B及びレピータ2C)が使用中である時には、他のレピータ2に、グループ呼び出し信号等を送信しても通信を行うことができない。したがって、レピータ2Aは、他のレピータ2が使用中である時には、レピータ2Aのみを使用可能な各無線通信装置1D〜1I(グループG2又はグループG3に属する無線通信装置1)から送信されるグループ呼び出し信号等の各種信号を、レピータ2Aの通信範囲にのみ無線で送信し、ネットワークN側には送信しないものとする。
【0080】
その後、使用者は、無線通信装置1Jの操作部27を用いて、グループ通話を終了する操作を行う。具体的には、無線通信装置1Jの使用者がグループ通話を終了する際、使用者により押し続けられていた操作部27(例えば、PTTスイッチ)から手が離れると、通信フレームには、「通話終了」を示すコードが書き込まれる。なお、通信フレームには、無線通信装置1Jが属するグループG4を識別するグループID(G4)が発グループID、無線通信装置1Jの装置を識別する装置ID(1J)が発装置ID、送信先(通話相手)のグループG4を識別するグループID(G4)が着グループIDに設定される。この通信フレームがグループ通話終了を表す最後の通信フレームとなる。無線通信装置1Jは、生成した通信フレームに変調処理等を施し、これをグループ通話終了信号として、レピータ2Bのアップリンクの周波数Fにより、レピータ2Bに無線で送信する(図6のステップS8)。
【0081】
レピータ2Bは、上記ステップS4と同様にして、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、自身の無線通信装置1において記憶されているグループIDと一致している場合に、「通話終了」を示すコードに基づいて、グループ通話を終了するグループ通話終了信号を生成し、これをレピータ2Bのダウンリンクの周波数fにより、レピータ2Bの通信範囲に無線で送信する(図6のステップS9)。
【0082】
レピータ2Bの通信範囲において、グループG4に属する無線通信装置1(図示しない)は、レピータ2Bから送信されたグループ通話終了信号の通信フレームを抽出し、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、自身の無線通信装置1において記憶されているグループIDと一致している場合に、「通話終了」を示すコードに基づいて、無線通信装置1Jとの間で行っていたグループ通話を終了する。
【0083】
また、レピータ2Bは、無線通信装置1Jからグループ通話終了信号の通信フレームを取得した時点で使用可能な状態になる。この時、レピータ2Bの通信範囲に滞在し、レピータ2Bを使用可能なグループG1に属する無線通信装置1Bは、レピータ2Bとの間で通信を行うことができる状態になる。
【0084】
そこで、無線通信装置1Bは、通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、無線通信装置1Bにおいて記憶されているグループID(G1)と一致していない場合、「通話終了」を示すコードに基づいて、通信フレームを破棄するとともに、スピーカ19や表示部26等を介して(LED等を消灯して)、無線通信装置1Bの使用者に、レピータ2Bが使用可能になったことを通知する。例えば、無線通信装置1Bは、LED等を消灯することでレピータ2Bが使用可能になったことを使用者に通知する。これにより、無線通信装置1Bの使用者は、レピータ2Bが使用できるようになったことを知ることができる。
【0085】
さらに、レピータ2Bは、上記ステップS5と同様にして、ステップS9で送信したグループ通話終了信号と同じ構成のグループ通話終了信号を、ネットワークNを介して、レピータ2A及びレピータ2Cに送信する(図6のステップS10)。
【0086】
レピータ2Cは、上記ステップS6と同様にして、レピータ2BからネットワークNを介して送信されたグループ通話終了信号を受信して通信フレームを抽出する。発グループID(G4)がマルチテーブルに含まれている場合に、レピータ2Cは、抽出した通信フレームに含まれる「通話終了」を示すコードに基づいて中継処理を行い、この通信フレームを含んだグループ通話終了信号を、レピータ2Cのダウンリンクの周波数fにより、レピータ2Cの通信範囲に無線で送信する(図6のステップS11)。
【0087】
レピータ2Cの通信範囲において、グループG4に属する無線通信装置1K,1Lは、レピータ2Cから送信されたグループ通話終了信号を受信して通信フレームを抽出し、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、自身の無線通信装置1において記憶されているグループIDと一致している場合に、抽出した通信フレームに含まれる「通話終了」を示すコードに基づいて、無線通信装置1Jとの間で行っていたグループ通話を終了する。
【0088】
また、レピータ2Cは、レピータ2BからネットワークNを介してグループ通話終了信号の通信フレームを取得した時点で使用可能な状態になる。この時、レピータ2Cの通信範囲に滞在し、レピータ2Cを使用可能なグループG1に属する無線通信装置1Cは、レピータ2Cとの間で通信を行うことができる状態になる。
【0089】
そこで、前述と同じようにして、無線通信装置1Cは、通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、無線通信装置1Cにおいて記憶されているグループID(G1)と一致していない場合、「通話終了」を示すコードに基づいて、通信フレームを破棄するとともに、スピーカ19や表示部26等を介して(LED等を消灯して)、無線通信装置1Cの使用者に、レピータ2Cが使用可能になったことを通知する。これにより、無線通信装置1Cの使用者は、レピータ2Cが使用できるようになったことを知ることができる。
【0090】
一方、レピータ2Aは、上記ステップS7と同様にして、レピータ2BからネットワークNを介して送信されたグループ通話終了信号を受信して通信フレームを抽出し、抽出した通信フレームに含まれる発グループID(G4)が、レピータ2Aにおいて記憶している図4(a)に示すマルチテーブル(G1,G2,G3)に含まれていない場合に、通信フレームを破棄する。
【0091】
また、この場合、レピータ2Aは、抽出した通信フレームに含まれる「通話終了」を示すコードに基づいて、ネットワークN上の他のレピータ2が使用可能になったことを判定し、他のレピータ2が使用可能になったことを表す通信フレームを生成する。通信フレームには、レピータ2Aを識別するレピータID(rA)が発レピータID、マルチテーブルにより表される各グループID(G1,G2,G3)が着グループIDに設定される。また、通信フレームには、「他レピータ使用可能」を示すコードが書き込まれる。
【0092】
レピータ2Aは、それぞれ設定した各ID、コード等を含んだ通信フレームを生成し、生成した通信フレームに変調処理等を施し、これを他レピータ通信終了信号として、レピータ2Aのダウンリンクの周波数fにより、レピータ2Aの通信範囲に無線で送信する(図6のステップS12)。
【0093】
グループG1に属している無線通信装置1Aは、他レピータ通信終了信号の受信に応じて、スピーカ19や表示部26等を介して(LED等を消灯して)、無線通信装置1Aの使用者に、他のレピータ2が使用可能になったことを通知する。これにより、無線通信装置1Aの使用者は、他のレピータ2(レピータ2A以外のレピータ2B,2Cの何れか)が使用できるようになったことを知ることができる。
【0094】
一方、グループG2に属している無線通信装置1D,1E、及びグループG3に属している無線通信装置1F〜1Iは、他のレピータ2が使用可能になっても、これらの無線通信装置1の使用者にとっては、他のレピータ2(レピータ2A以外のレピータ2B,2Cの何れか)が使用できるようになったことを特に知る必要もなく、また、前述の他レピータ通信中信号の受信に応じて、スピーカ19や表示部26等を介して、無線通信装置1の使用者に通知していないので、この旨の通知はされなくても良い。
【0095】
以上、本実施の形態に係る無線通信システム100によれば、ネットワークNを介して接続された複数のレピータ2A〜2Cの何れかが通信を行うことにより、ネットワーク上のレピータ2が通信中の状態になった場合に、通信を行っていない他の無線通信装置1の使用者にレピータ2A〜2Cが使用できない状態にあることを通知することができる。一方、ネットワーク上のレピータ2が通信を行える状態になった場合にも、同様に、通信を行っていない他の無線通信装置1の使用者にレピータ2A〜2Cが使用できる状態になったことを通知することができる。これにより、無線通信装置の使用者は、無線通信装置とその通信範囲で通信を行うレピータ又はネットワークを介して接続されたその他のレピータの使用状態を知ることができ、レピータの使用の可否を判断することができる。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態の説明及び図面によって限定されるものではなく、上記実施形態及び図面に適宜変更等を加えることは可能である。
【0097】
その他、上記実施形態のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更及び修正が可能である。
【0098】
CPU、I/O、RAM、ROMなどから構成される無線通信装置1やレピータ2のコントローラは、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読みとり可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する無線通信装置1又はレピータ2を構成しても良い。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで無線通信装置1又はレピータ2を構成しても良い。
【0099】
また、無線通信装置1又はレピータ2の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納しても良い。
【0100】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信しても良い。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0101】
1,1A〜1I 無線通信装置
2,2A〜2C レピータ
100 無線通信システム
N ネットワーク
S サーバ
10 アンテナ
30S 送信専用のアンテナ
30R 受信専用のアンテナ
11 送受信切換部
12、32 送信部
13、17、33、37 ベースバンド処理部
14 A/D変換部
15 マイク
16、36 受信部
18 D/A変換部
19 スピーカ
20、40 コントローラ
21、41 CPU(中央演算ユニット)
22、42 I/O(入出力部)
23、43 RAM(読み書き可能メモリ)
24、44 ROM(読み出し専用メモリ)
25、45 計時部
26、46 表示部
27、47 操作部
28、48 内部バス
34 入力部
35 ネットワークI/F(インターフェース)
38 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して相互に接続された複数のレピータを備えた中継システムと、該中継システムを介して通信を行う複数の無線通信装置と、から構成される無線通信システムで用いられるレピータであって、
前記無線通信装置が属し、自身のレピータの使用が許可されたグループを識別するグループ識別情報を1以上記憶したグループ識別情報記憶手段と、
前記通信回線を介して接続された他のレピータから、前記他のレピータと通信を行っている無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報、及び、前記他のレピータと前記無線通信装置との間の通信状態を表す通信状態情報を受信する通信状態情報受信手段と、
前記通信状態情報受信手段が受信した前記グループ識別情報により識別されるグループが、前記グループ識別情報記憶手段が記憶した前記1以上のグループ識別情報のいずれかと一致しない場合に、前記通信状態情報受信手段が受信した前記通信状態情報が表す通信状態に基づく通信情報を無線で送信する制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とするレピータ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記通信状態情報受信手段が受信した前記グループ識別情報により識別されるグループが、前記グループ識別情報記憶手段が記憶した前記1以上のグループ識別情報のいずれかと一致する場合に中継処理を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のレピータ。
【請求項3】
前記通信状態情報受信手段は、通信範囲に滞在する前記無線通信装置から、前記無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報を受信し、
前記制御手段は、前記通信状態情報受信手段が受信した前記グループ識別情報により識別されるグループが、前記グループ識別情報記憶手段が記憶した前記1以上のグループ識別情報のいずれかと一致する場合に中継処理を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレピータ。
【請求項4】
通信回線を介して相互に接続された複数のレピータを備えた中継システムと、該中継システムを介して通信を行う複数の無線通信装置と、から構成される無線通信システムで用いられる無線通信装置であって、
前記レピータから無線で送信される、前記通信回線を介して接続された他のレピータの通信状態を表す他レピータ通信状態情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した他レピータ通信状態情報に基づいて前記他のレピータの通信状態を通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
使用が許可されたレピータを識別するレピータ識別情報を1以上記憶したレピータ識別情報記憶手段と、
前記通知手段を制御する制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記他レピータ通信状態情報を送信した前記レピータ以外の前記レピータ識別情報が前記レピータ識別情報記憶手段に記憶されている場合に、前記通知手段に前記他のレピータの通信状態を通知させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記他レピータ通信状態情報を送信した前記レピータ以外の前記レピータ識別情報が前記レピータ識別情報記憶手段に記憶されていない場合に、前記通知手段に前記他のレピータの通信状態を通知させない、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
自身が属するグループを識別するグループ識別情報を記憶したグループ識別情報記憶手段をさらに備え、
前記受信手段は、前記レピータから送信される、前記レピータ又は前記他のレピータを介して通信を行っている無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報を受信し、
前記制御手段は、前記受信手段が受信した前記グループ識別情報が、前記グループ識別情報記憶手段が記憶したグループ識別情報と一致する場合に、前記無線通信装置との間で通信を行う制御を行い、一方、一致しない場合に、前記無線通信装置との間で通信を行う代わりに、通信状態を前記通知手段に通知させる、
ことを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
通信回線を介して相互に接続された複数のレピータを備えた中継システムと、該中継システムを介して通信を行う複数の無線通信装置と、から構成される無線通信システムであって、
前記レピータは、
前記無線通信装置が属し、自身のレピータの使用が許可されたグループを識別するグループ識別情報を1以上記憶したグループ識別情報記憶手段と、
前記通信回線を介して接続された他のレピータから、前記他のレピータと通信を行っている無線通信装置が属するグループを識別するグループ識別情報、及び、前記他のレピータと前記無線通信装置との間の通信状態を表す通信状態情報を受信する通信状態情報受信手段と、
前記通信状態情報受信手段が受信した前記グループ識別情報により識別されるグループが、前記グループ識別情報記憶手段が記憶した前記1以上のグループ識別情報のいずれかと一致しない場合に、前記通信状態情報受信手段が受信した前記通信状態情報が表す通信状態に基づく通信情報を無線で送信する制御を行う制御手段と、を備え、
前記無線通信装置は、
前記レピータから無線で送信される、前記通信回線を介して接続された他のレピータの通信状態を表す他レピータ通信状態情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した他レピータ通信状態情報に基づいて前記他のレピータの通信状態を通知する通知手段と、を備える、
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−234251(P2011−234251A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104542(P2010−104542)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】