説明

無電解めっき法により金属膜を形成するための下地塗料、めっき下地用塗膜層の製造方法、めっき物の製造方法

【目的】従来のポリマー微粒子が分散された塗料は、溶媒としては有機溶媒が使用されている。そのため、元来水系インクの印刷法として用いられてきた印刷法、例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷などへは適用し難いものであった。また、環境負荷の低減から溶媒として水を用いた該塗料の開発が望まれている。
【構成】基材上に無電解めっき法により金属膜を形成するための下地塗料であって、前記下地塗料は、π−共役二重結合を有する高分子微粒子、バインダー、水溶媒を含んでなることを特徴とする下地塗料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき法により金属膜を形成するための下地塗料、めっき下地用塗膜層の製造方法、めっき物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点から金属膜のパターニング法として、エッチングにより必要な部分を除去するサブトラクティブ方式から、必要な部分にのみ金属膜を形成するフルアディティブ方式が検討されるようになった。そして、フルアディティブ方式として、例えば特許文献1に記載の方法が提案されている。
【特許文献1】特開2007−270180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1におけるポリマー微粒子が分散された塗料は、溶媒としては有機溶媒が使用されている。そのため、元来水系インクの印刷法として用いられてきた印刷法、例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷などへは適用し難いものであった。また、環境負荷の低減から溶媒として水を用いた該塗料の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、具体的には、
(1)基材上に無電解めっき法により金属膜を形成するための下地塗料であって、前記下地塗料は、π−共役二重結合を有する高分子微粒子、バインダー、水溶媒を含んでなることを特徴とする下地塗料、
(2)前記高分子微粒子が、導電性高分子微粒子である前記(1)記載の下地塗料、
(3)前記高分子微粒子が、還元性高分子微粒子である前記(1)記載の下地塗料、
(4)前記還元性高分子微粒子が、導電性高分子微粒子とバインダーとが水溶媒に分散している分散液中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性としたことを特徴とする前記(3)記載の下地塗料、
(5)基材上に、前記(2)記載の下地塗料を塗工し、これにより形成された塗膜層中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性としたことを特徴とするめっき下地用塗膜層の製造方法、
(6)基材上に、前記(3)または(4)記載の下地塗料を塗工し、これにより形成されたことを特徴とするめっき下地用塗膜層の製造方法、
(7)前記(5)または(6)記載のめっき下地用塗膜層上に、無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることを特徴とするめっき物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、元来水系インクの印刷法として用いられてきた印刷法、例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷などへの適用を可能にした塗料を得ることが出来た。また、環境負荷の低減から溶媒として水を用いた塗料を得る事が出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の下地塗料は、π−共役二重結合を有する高分子微粒子、バインダー、水溶媒を含でなるものである。
【0007】
本発明に使用するπ−共役二重結合を有する高分子微粒子としては、導電性高分子微粒子、或いは還元性高分子微粒子が挙げられる。
【0008】
前記導電性高分子微粒子とは、π−共役二重結合を有する高分子であり、かつπ−共役二重結合を有するモノマーを重合させてπ−共役二重結合を有する高分子を得る際、その重合液中にドーパントを添加して得られる高分子、或いは重合後にドーパントを添加して得られる高分子である。つまり、π共役二重結合を有するモノマーの重合液中、或いは重合後にドーパントを添加して得られるπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
導電性高分子微粒子は、π−共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性高分子微粒子を使用することもできる。また、導電性高分子微粒子を製造するための具体的な方法は、例えば特開2004−256686号に記載されている方法で導電性高分子微粒子を製造することが出来る。
【0009】
前記還元性高分子微粒子とは、α)前記導電性高分子微粒子を脱ドープ処理することにより得られるものと、β)π−共役二重結合を有するモノマーを重合させてπ−共役二重結合を有する高分子を得る際、その重合液中にドーパントを添加しないで得られるものとがある。
先ず、α)の還元性高分子微粒子について、例えば、前記導電性高分子微粒子とバインダーとが水溶媒に分散している分散液中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して得ることが出来る。この脱ドープ処理としては、アルカリ性水溶液、或いは還元剤で処理する方法が挙げられる。なお、アルカリ性水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム等が挙げられ、還元剤としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン等のアルキルアミンボラン、及び、ヒドラジン等を含む溶液が挙げられる。
続いて、β)の還元性高分子微粒子について、π共役二重結合を有するモノマーの重合液中にドーパントを添加しないで得られるπ−共役二重結合を有する高分子である。つまり、前記ドーパントを添加しないで得られるπ−共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
なお、還元性高分子微粒子としては、0.01S/cm以下、好ましくは0.005S/cm以下の導電率を有する高分子微粒子が好ましい。
【0010】
本発明に使用するバインダーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリカルボン酸、ポリアニオン等の水溶性ポリマー、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等の水溶性硬化樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂等のエマルジョンが挙げられる。
使用するバインダー量は、π−共役二重結合を有する高分子微粒子1質量部に対して0.1質量部以上使用することができ、具体的には、π−共役二重結合を有する高分子微粒子1質量部に対して0.1質量部ないし60質量部の範囲である。バインダーが60質量部を超えると金属めっきが析出しにくくなる場合があり、バインダーが0.1質量部未満であると、基材と塗膜層間の密着性が劣る傾向にある。
【0011】
本発明の下地塗料は、上記成分に加えて溶媒として水を含んでなる。
【0012】
更に、前記塗料は用途や塗布対象物等の必要に応じて、分散安定剤、増粘剤、インキバインダ等の樹脂を加えることも可能である。
【0013】
本発明はまた、基材上に、π−共役二重結合を有する高分子微粒子を用いた下地塗料を塗工し、これによりめっき下地用塗膜層を製造することができる。具体的には、π−共役二重結合を有する高分子微粒子として導電性高分子微粒子用いた場合、導電性高分子微粒子を含む下地塗料を塗工し、これにより形成された塗膜層中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性とし、めっき下地用塗膜層を製造することができる。また、π−共役二重結合を有する高分子微粒子として還元性高分子微粒子用いた場合、還元性高分子微粒子を含む下地塗料を塗工して、めっき下地用塗膜層を製造することができる。
【0014】
本発明に使用することができる基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ガラス、金属等が挙げられる。
また、基材の形状は特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状が挙げられる。 他にも、基材として、例えば、射出成形などにより樹脂を成形した樹脂成形品が挙げられる。そして、この樹脂成形品に本発明のめっき物を設けることにより、例えば、自動車向けの装飾めっき品を作成することができ、或いは、ポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂からなるフィルム上に本発明のめっき物をパターン状で設けることにより、例えば、電気回路等を作成することができる。
【0015】
本発明のπ−共役二重結合を有する高分子微粒子、バインダー、水溶媒を含んでなる下地塗料の塗工としては、基材の全面に塗工してもよく、或いは基材の一部に塗工、つまりパターン印刷してもよい。そして、パターン印刷としては、例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷に適用することが出来る。その他にもグラビア印刷、スクリーン印刷、ドライオフセット印刷、パッド印刷にも適用できる。印刷方法は、各印刷機を用いる通常の印刷法によって行うことができる。また、該下地塗料を基材の全面に塗工する手段としては、上記印刷方法でもよいし、スプレー塗工、ディップ塗工によって塗工してもよい。
【0016】
また、π−共役二重結合を有する高分子微粒子として導電性高分子微粒子用いた場合、導電性高分子微粒子を含む下地塗料を塗工した後、脱ドープ処理するが、この脱ドープ処理としては、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン等のアルキルアミンボラン、及び、ヒドラジン等を含む溶液で処理して還元する方法、又は、水酸化ナトリウム等のアルカリ性溶液で処理する方法が挙げられる。なお、操作性及び経済性の観点からアルカリ性溶液で処理するのが好ましい。特に、導電性高分子微粒子を含む塗膜層は薄くできるため、緩和な条件下で短時間のアルカリ処理により脱ドープを達成することが可能である。例えば、1M 水酸化ナトリウム水溶液中で、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃の温度で、1ないし30分間、好ましくは3ないし10分間処理される。
【0017】
上記のようにして製造された、めっき下地用塗膜層が形成された基材を無電解めっき法によりめっき物とするが、該無電解めっき法は、通常知られた方法に従って行うことができる。即ち、前記基材を塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することによりめっき物を得ることができる。
【0018】
触媒液は、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む安定性の点からパラジウム化合物が好ましく、その中でも塩化パラジウムが特に好ましい。好ましい、具体的な触媒液としては、0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
【0019】
上記で処理された基材は、金属を析出させるためのめっき液に浸され、これにより無電解めっき膜が形成される。めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル等、全て適用することができるが、銅が好ましい。無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、1ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。得られためっき物は、使用した基材のTgより低い温度範囲において、数時間以上、例えば、2時間以上養生するのが好ましい。
【0020】
尚、上記めっき物は、形成された無電解めっき膜上に、電解めっきにより、同一又は異なる金属を更にめっきすることもできる。また、金属めっき膜は、基材の両面に形成されてもよい。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
製造例1:π−共役二重結合を有する高分子微粒子である導電性ポリピロール微粒子分散液の調製
ポリスチレンスルホン酸30%水溶液(分子量約7万)50部、およびピロールモノマー10部をイオン交換水350部に添加して攪拌した。十分に混合した後、この溶液に、常温かつ空気中で、過硫酸アンモニウム15%水溶液60部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間攪拌を継続して水に分散した導電性能を有する導電性ポリピロール微粒子を得た。尚、得られた水分散液中の導電性ポリピロール微粒子の固形分は、1%であった。
【0022】
実施例1:下地塗料の調製
製造例1で調製した導電性ポリピロール微粒子分散液に、バインダー:ウォーターゾールS695:水系メラミン樹脂:固形分65%:DIC社製を、導電性微粒子:バインダーの固形分比が2:1となるように加え、さらに最終固形分が2%となるように水を混合し、下地塗料を得た。
【0023】
実施例2:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液として、PPy−12:固形分8%:丸菱油化工業社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0024】
実施例3:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液として、SSPy:固形分5%:化研産業社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0025】
実施例4:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液の代わりに、導電性ポリアニリン分散液:ORMECON:固形分2.5%:日産化学工業社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0026】
実施例5:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液の代わりに、導電性ポリアニリン分散液:製品名aqua PASS:固形分3%:化研産業社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0027】
実施例6:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液の代わりに、導電性ポリチオフェン分散液:Clevios P:固形分1.2%:純正化学社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0028】
実施例7:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液の代わりに、導電性ポリチオフェン分散液:デナトロンP−502S(固形分3%):ナガセケムテックス社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0029】
実施例8:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液の代わりに、導電性ポリチオフェン分散液:エノコートBP−105:固形分1%:化研産業社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0030】
実施例9:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液の代わりに、導電性ポリチオフェン分散液:導電コートQ−171:固形分9%:中京油脂社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0031】
実施例10:下地塗料の調製
導電性ポリピロール分散液の代わりに、導電性ポリチオフェン分散液:ELコート:固形分1%:出光テクノファイン社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0032】
実施例11:下地塗料の調製
バインダーとして、プラスコートZ−687:水溶性ポリエステルポリマー:固形分25%:互応化学社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0033】
実施例12:下地塗料の調製
バインダーとして、WE−304:アクリルエマルジョン:固形分45%:DIC社製を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて下地塗料を得た。
【0034】
実施例13:下地塗料の調製
製造例1で調製した導電性ポリピロール微粒子分散液5g対して、10%水酸化ナトリウム水溶液0.2gを添加し、脱ドープ処理をして導電性ポリピロール微粒子を還元性とした。すなわち、還元性ポリピロール微粒子が水溶媒に分散している分散液(固形分1%)を得た。
続いて、得られた還元性ポリピロール微粒子分散液に、バインダー:ウォーターゾールS695:水系メラミン樹脂:固形分65%:DIC社製を、還元性微粒子:バインダーの固形分比が2:1となるように加え、さらに最終固形分が1.4%となるように水を混合し、下地塗料を得た。
【0035】
めっき下地用塗膜層の製造
基材として、厚み50μmの易接着処理ポリエステルフィルム:A4100:東洋紡社製を用い、該基材上に、実施例1ないし12で調製した下地塗料をインクジェット印刷機により、L/S=1.0mm/1.0mmのストレートラインを形成するようにパターン印刷し、120℃で10分間の乾燥を行って、導電性高分子微粒子とバインダーとからなるパターン状の塗膜層を得た。
続いて、上記方法で得られた塗膜層を有する基材を、1M水酸化ナトリウム水溶液中に35℃で5分間浸漬し、脱ドープ処理をして導電性ポリピロール微粒子を還元性とした。その結果、基材上に還元性高分子微粒子とバインダーとからなるパターン状のめっき下地用塗膜層を得た。
【0036】
また、基材として、厚み50μmの易接着処理ポリエステルフィルム:A4100:東洋紡社製を用い、該基材上に実施例13で調整した下地塗料をインクジェット印刷機により、L/S=1.0mm/1.0mmのストレートラインを形成するようにパターン印刷し、120℃で10分間の乾燥を行って、基材上に還元性高分子微粒子とバインダーとからなるパターン状のめっき下地用塗膜層を得た。
【0037】
無電解めっき法によりめっき物の製造
実施例1ないし13で作成されたパターン状のめっき下地用塗膜層を有する基材を0.05%塩化パラジウム−0.005%塩酸水溶液中に35℃で5分間浸漬後、洗浄水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴 ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)製)に35℃で20分間浸漬することにより、印刷膜(めっき下地用塗膜層)が形成された部分にのみ銅めっきが施されたポリエステルフィルムが得られた。
【0038】
結果
実施例1〜13で作成しためっき下地塗料を用いて得られた無電解めっきによるめっき物は、めっき下地用塗膜層が完全に金属めっき膜に被覆された上、JIS H 8504に基づき、無電解めっきが施されたパターン印刷基材にセロハンテープを貼り付け、剥離することによりめっき膜の密着性を評価したところ、テープで剥離するものはなかった。すなわち、実施例1〜13で作成した下地塗料用いて得られた無電解めっきによるめっき物は、めっき析出性及びめっき物の密着性について優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に無電解めっき法により金属膜を形成するための下地塗料であって、
前記下地塗料は、π−共役二重結合を有する高分子微粒子、バインダー、水溶媒を含んでなることを特徴とする下地塗料。
【請求項2】
前記高分子微粒子が、導電性高分子微粒子である請求項1記載の下地塗料。
【請求項3】
前記高分子微粒子が、還元性高分子微粒子である請求項1記載の下地塗料。
【請求項4】
前記還元性高分子微粒子が、導電性高分子微粒子とバインダーとが水溶媒に分散している分散液中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性としたことを特徴とする請求項3に記載の下地塗料。
【請求項5】
基材上に、前記請求項2記載の下地塗料を塗工し、これにより形成された塗膜層中の導電性高分子微粒子を脱ドープ処理して還元性としたことを特徴とするめっき下地用塗膜層の製造方法。
【請求項6】
基材上に、前記請求項3または4記載の下地塗料を塗工し、これにより形成されたことを特徴とするめっき下地用塗膜層の製造方法。
【請求項7】
前記請求項5または6記載のめっき下地用塗膜層上に、無電解めっき液から金属膜を化学めっきすることを特徴とするめっき物の製造方法。

【公開番号】特開2012−36478(P2012−36478A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179623(P2010−179623)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】