説明

無電解めっき装置及び無電解めっき方法

【課題】生産性の高いバッチ処理方式を採用し、しかも前の処理等で使用した水分の持込みを極力低減させて、一連の連続した各処理を、より均一に安定して行うことができるようにする。
【解決手段】複数枚の基板を鉛直方向に平行に保持して搬送し、搬送の前後で異なる処理槽内の処理液中に複数枚の基板を同時に浸漬させる基板ホルダを有する無電解めっき装置において、基板ホルダは、基板の外周部を位置させて基板を支持する複数の支持溝130を有する支持棒94aと、支持溝130の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去する水分除去機構136aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき装置及び無電解めっき方法に係り、特に生産性の高いバッチ処理方式を採用しながら、半導体ウェーハ等の基板の表面により均一な処理を安定して行うことができるようにした無電解めっき装置及び無電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ間の電気的な接続を行う3次元実装として、例えば、図1に示すように、CPU10の所定位置に設けたマイクロバンプ12と、メモリ14の所定位置に設けたマイクロバンプ16を共に電極として用い、マイクロバンプ(電極)12,16を互いに接合することが提案されている。
【0003】
メモリ14に設けたマイクロバンプ16は、例えばCu−Snからなる。CPU10に設けたマイクロバンプ12は、例えばAlまたはCuからなるバンプパッド18の表面に、例えば2〜10μmのNiめっき膜20を成膜し、このNiめっき膜20の表面に、例えば50〜200nmのAuめっき膜22を成膜して形成される。Auめっき膜22は、マイクロバンプ12,16の接合時に、例えばCu−Snからなるマイクロバンプ16へ拡散する。そのため、Auめっき膜22自身は、接合に影響しないが、Niめっき膜20の表面の酸化を防止して接合強度を保つ役割を持つ。
【0004】
ここに、メモリ14に設けたマイクロバンプ16と、例えばCuからなるバンプパッド18とを直接接続しない理由としては、Cuだけでは、下地のLow-K材等へダメージを与えることが挙げられる。そのためNiめっき膜20とAuめっき膜22が緩衝材として採用されている。
【0005】
また、TSV(Through Silicon Via)配線接続においても、図2に示すように、TSV30の表面側にNiめっき膜32とAuめっき膜34とを順次積層して形成した表面バンプ36と、TSV30の裏面側に形成した裏面バンプ38とを互いに接合することが提案されている。
【0006】
上記のような、Niめっき膜20,32やAuめっき膜22,34を成膜する手法として、電解めっきに代わって、無電解めっきの採用が検討されている。また、NiやAuの他に、無電解めっき可能なCo,Pd,Pt,Cu,Sn,Ag,Rh,Ru等の単体材料および複合材料からなるめっき膜にあっても、電解めっきに代わって、無電解めっきの採用が検討されている。
【0007】
図1に示す、マイクロバンプ12の下地金属(バンプパッド18)には、AlやCu等が多く使われている。AlやCuは、Fe,Co,Ni,Pd,Pt等のような触媒金属ではない。このため、めっき前処理として、下地金属がAlの場合はジンケート処理が、下地金属がCuの場合はPd触媒付与処理(または初期通電)が一般に行われる。Al表面のジンケート処理では、一般に、置換めっきによってAl表面に亜鉛を付与する。亜鉛そのものは触媒毒となり触媒作用を妨害するため、ジンケート処理を行う時には、亜鉛の置換めっき量を適正にする必要がある。無電解めっきに際して、亜鉛は、無電解めっき可能な触媒金属に置換される。
【0008】
前述のように、Al表面やCu表面のめっき前処理(活性化処理)は、触媒金属または亜鉛等の置換めっきであり、例えばPd触媒付与処理は、基板を硫酸ベースの硫酸パラジウム含有液に浸漬させて行われ、ジンケート処理は、基板を水酸化ナトリウムベースの酸化亜鉛含有液に浸漬させて行われる。このため、めっき前処理(活性化処理)は、一般に、基板表面を硝酸やクエンで前洗浄して基板表面の酸化膜や汚染物を除去し、基板表面を水洗した後、基板表面を乾燥させることなく、連続して行われる。そして、無電解めっきは、めっき前処理後の基板表面を水洗した後、基板表面を乾燥させることなく、連続して行われる。つまり、一連の無電解めっき処理は、基板表面を乾燥させることなく、連続して行われる。これは、前洗浄やめっき前処理後に基板表面が乾燥すると、基板表面に酸化膜が形成されてめっき処理に不良が生じるからである。
【0009】
ここに、めっき前処理方法によっては、例えばパターンウェーハでは、下地にダメージを与えたり、置換めっき膜の下地金属との緻密性が悪化したり、めっき膜の粗さが大きくなるといった問題が生じる。また、ベタウェーハでは、基板の表面モホロジーの均一性が悪化して外観が悪くなるといった問題が生じる。
【0010】
無電解めっきのめっき前処理(活性化処理)では、ZnやPd等の置換めっきを緻密かつ均一に行うことが重要になる。ここに、置換めっき時の置換めっき量および表面エッチング量は、処理液に含まれるエッチング剤の濃度、例えばAlの表面を水酸化ナトリウムベースの酸化亜鉛含有液でめっき前処理(ジンケート処理)する場合はNaOHの濃度、Cuの表面を硫酸ベースの硫酸パラジウム含有液でめっき前処理(Pd触媒付与処理)する場合は硫酸の濃度に強く影響を受け、数秒で決まってしまう場合がある。
【0011】
無電解めっき装置は、一般に、基板を一枚ずつ処理する枚葉処理方式を採用した無電解めっき装置と、複数枚の基板を同時に保持して処理するバッチ処理方式を採用した無電解めっき装置に大別される。無電解めっきのめっきレートは、一般に1〜20μm/sで、電解めっきのめっきレートと比較して格段に遅い。このため、無電解めっきをバンプ形成等の多大な時間を要する処理に適用する場合には、枚葉処理方式よりバッチ処理方式を検討するのが一般的である。
【0012】
バッチ処理方式の無電解めっき装置は、同一フットプリントでのスループットが枚葉処理方式のものに比べて非常に高いという利点がある。しかし、バッチ処理方式の無電解めっき装置は、鉛直方向に並べて保持した複数枚の基板を、めっき前処理液やめっき液等の処理液中に同時に浸漬させて処理するようにしており、このため、基板下端から上端までを処理液中に完全に浸漬させるのに要する時間、処理液の流れの方向性、処理液の温度分布の均一性等に起因するプロセス性能(膜厚、膜質の均一性)が枚様処理方式に比べ劣ってしまう。
【0013】
バッチ処理方式を採用した基板処理装置として、出願人は、複数枚の基板を保持して処理槽内の処理液に浸漬させる基板ホルダを、複数枚の基板を保持したまま処理槽内の処理液中で回転させるようにしたものを提案している(特許文献1参照)。また、バッチ処理方式を採用した基板処理装置として、キャリア載置部、水平移載ロボット、姿勢変換機構、プッシャ、搬送機構及び基板処理部を備え、複数枚の基板を同時に搬送しながら処理するようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−57593号公報
【特許文献2】特許第3974985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
バッチ処理方式を採用した無電解めっき装置においては、複数枚の半導体ウェーハ等の基板を鉛直方向に保持した基板ホルダを移動させながら、移動の前後で複数枚の基板を各処理槽内の処理液に同時に浸漬させて処理を行うのが一般的である。その場合、例えば、基板ホルダで保持した基板を水洗槽からジンケート処理槽へ移動する際、基板は基板ホルダで鉛直方向に保持されているため、基板の下部に水分が溜まり易くなる。また、前ロットの処理で付着した水分が基板ホルダに残ったままになりやすい。
【0016】
このように、水分が基板表面に不均一に残った状態でジンケート処理を行うと、水分とジンケート液とが混ざるときにジンケート液の濃度ムラが生じ、このジンケート液の濃度ムラの影響で、ベタウェーハにおいては外観不良が生じ、パターンウェーハにおいては、基板面内のめっき膜厚ばらつきが大きくなる。
【0017】
図3は、Al表面にジンケート処理を行った時の、表面に水分残りが有る場合(A)と水分残りがない場合(B)における亜鉛置換量と処理時間(秒)との関係を示し、図4は、Al表面にジンケート処理を行った時の、表面に水分残りが有る場合(A)と水分残りがない場合(B)おけるAlエッチング量と処理時間(秒)との関係を示す。
【0018】
図3及び図4に示すように、特に、Alエッチング及び亜鉛の置換めっき速度の早いAl表面のジンケート処理において、Alエッチング量及び亜鉛置換量は、初期の数秒(2〜5秒)で決まり、しかも、水分が多い箇所ではエッチング量及び置換めっき量が大きくなる。このため、亜鉛がAl表面に不均一に置換されて粗いめっき膜が形成され、また下地へダメージを与えてしまう。
【0019】
しかも、亜鉛の付着量が多い箇所では無電解めっき液へ溶解する亜鉛の量が増え、これによって、局所的に亜鉛濃度が高くなる箇所が生じ、亜鉛は溶解して触媒毒になることから、亜鉛濃度の高低によって、めっき膜厚に差が生じてしまう。また、複数枚の基板を鉛直方向に平行に設置して処理液中に浸漬させる場合には、基板の上下方向での処理時間に差が生じるため、基板の上下でめっき膜の膜厚分布に差が出きやすい。特に、ジンケート処理等の処理時間が短い工程ではその差は顕著となる。
【0020】
なお、基板を大気中に長時間放置して水分を除去しようとすると基板表面が乾燥し、金属表面に酸化膜が生じて置換めっき不良の原因となる。また、処理液から基板を引き上げる時に基板や基板ホルダに多量の水分が残ると、エッチング量や水洗の度合いに差が生じてしまう。
【0021】
また、ジンケート処理液は一般に粘性が高く、処理液から基板を引き上げる時に基板や基板ホルダに付着して持ち出される量が多くなりやすい。また、Auめっき液は一般に高価であり、同様に処理液の持ち出し量を少なくすることが望まれる。
【0022】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、生産性の高いバッチ処理方式を採用し、しかも前の処理等で使用した水分の持込みを極力低減させて、一連の連続した各処理を、より均一に安定して行うことができるようにした無電解めっき装置及び無電解めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1に記載の発明は、複数枚の基板を鉛直方向に平行に保持して搬送し、搬送の前後で異なる処理槽内の処理液中に複数枚の基板を同時に浸漬させる基板ホルダを有する無電解めっき装置において、前記基板ホルダは、基板の外周部を位置させて基板を支持する複数の支持溝を有する支持棒と、前記支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去する水分除去機構を有することを特徴とする無電解めっき装置である。
【0024】
例えば、基板ホルダで保持した基板を処理液から引き上げた後、基板の外周部を位置させて基板を支持する支持溝の内部乃至その周辺に溜まった水分(処理液)を水分除去機構で除去することで、連続した次の処理への水分の持込みを極力低減させて、この連続した次の処理を、より均一に安定して行うことができる。
【0025】
請求項2に記載の発明は、前記水分除去機構は、前記支持棒の内部に設けた一端が閉塞された中央孔の開口端に択一的に接続される加圧気体供給ライン及び液浸入防止ラインを有し、前記中央孔と前記支持溝の内部は連通孔を介して互いに連通していることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき装置である。
【0026】
これにより、加圧気体供給ラインを通して、支持棒の中央孔及び連通孔に加圧空気等の加圧気体を供給し、支持溝の内部に向けて噴出させることで、支持溝の内部乃至その周辺に溜まった水分(処理液)を加圧気体で吹き飛ばして除去することができる。液浸入防止ラインにより、処理中に支持棒の中央孔及び連通孔に内部に処理液が浸入することが防止される。
【0027】
請求項3に記載の発明は、前記水分除去機構は、前記支持棒の内部に設けた一端が閉塞された中央孔の開口端に択一的に接続される水分吸引ライン及び液浸入防止ラインを有し、前記中央孔と前記支持溝の内部は連通孔を介して互いに連通していることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき装置である。
【0028】
これにより、水分吸引ラインを通して、支持棒の中央孔及び連通孔から支持溝の内部を真空等で吸引することで、支持溝の内部乃至その周辺に溜まった水分(処理液)を吸引除去することができる。しかも、吸引除去した水分(処理液)を回収することで、水分(処理液)の持ち出し量を削減することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明は、前記基板ホルダで保持した基板を浸漬させる前記処理槽内の処理液を循環させる液循環ラインを更に有することを特徴とする請求項1記載の無電解めっき装置である。
【0030】
請求項5に記載の発明は、前記液浸入防止ラインは、前記中央孔内に加圧流体を供給する加圧流体供給ラインからなることを特徴とする請求項2または3記載の無電解めっき装置である。
【0031】
請求項6に記載の発明は、前記連通孔は、基板ホルダで保持される基板の被めっき面に向けて開口していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の無電解めっき装置である。
これにより、支持溝内の基板の被めっき面側に残る水分を主に除去することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明は、前記基板ホルダで保持した基板を前記処理槽内の処理液に浸漬させる浸漬速度と、前記処理槽内の処理液から引き上げる引き上げ速度を調整する制御部を更に有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の無電解めっき装置である。
【0033】
このように、基板の処理液内への浸漬速度及び処理液からの引き上げ速度を制御部で制御することで、基板下端から上端までを処理液中に完全に浸漬させるのに要する時間を少なくしたり、処理液から引き上げられた基板に多量の水分が残ることを防止したりすることができる。
【0034】
請求項8に記載の発明は、前記浸漬速度は100mm/s以上で、前記引き上げ速度は50mm/s以下であること特徴とする請求項7記載の無電解めっき装置である。
【0035】
請求項9に記載の発明は、前記基板ホルダで保持した基板を前記処理槽内の処理液に浸漬させる際に、前記基板ホルダを、振動、上下揺動または左右揺動させる移動機構を更に有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の無電解めっき装置である。
基板ホルダを、振動、上下揺動または左右揺動させながら、基板ホルダで保持した基板を処理液中に浸漬させることで、基板表面の処理液の拡散を促進することができる。
【0036】
請求項10に記載の発明は、前記基板ホルダで保持した基板を前記処理槽内の処理液に浸漬させて該処理液から引き上げた後、基板に向けて純水を噴射する純水噴射機構を更に有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載に無電解めっき装置である。
これにより、基板に付着して外部に持ち出される処理液の持ち出し量を更に減少させることができる。
【0037】
請求項11に記載の発明は、支持棒に設けた複数の支持溝内に基板の外周部を位置させて複数枚の基板を基板ホルダで鉛直方向に平行に保持し、基板ホルダで保持した基板を第1の処理槽内の第1処理液に浸漬させて該第1処理液から引き上げ、基板を保持した基板ホルダを第2の処理槽の直上方に搬送し、基板ホルダで保持した基板を第2の処理槽内の第2処理液に浸漬させて該第2処理液から引き上げる無電解めっき方法であって、前記支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を、処理の前後、または処理の途中で除去することを特徴とする無電解めっき方法である。
【0038】
請求項12に記載の発明は、複数枚の基板を基板ホルダで鉛直方向に平行に保持する前に、前記支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去することを特徴とする請求項11記載の無電解めっき方法である。
【0039】
請求項13に記載の発明は、前記第1処理液または前記第2処理液から基板を引き上げた後、前記支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去することを特徴とする請求項11または12記載の無電解めっき方法である。
【0040】
請求項14に記載の発明は、前記第1処理液または前記第2処理液に基板を浸漬させる浸漬速度は100mm/秒以上で、前記第1処理液または前記第2処理液から基板を引き上げる引き上げ速度は50mm/秒以下であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の無電解めっき方法である。
【0041】
請求項15に記載の発明は、前記基板ホルダを振動、上下揺動または左右揺動させながら、前記第1処理液または前記第2処理液に該基板ホルダで保持した基板を浸漬させることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の無電解めっき方法である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、生産性の高いバッチ処理方式を採用し、しかも前の処理等で使用した水分の持込みを極力低減させて、一連の連続した各処理を、より均一に安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】マイクロバンプの接合例を示す断面図である。
【図2】TSV配線の接続例を示す断面図である。
【図3】Al表面にジンケート処理を行った時の亜鉛置換量と処理時間(秒)との関係を示すグラフである。
【図4】Al表面にジンケート処理を行った時のアルミエッチング量と処理時間(秒)との関係を示すグラフである。
【図5】バンプパッドの表面にNiめっき膜及びAuめっき膜を無電解めっきで形成する例を工程順に示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態の無電解めっき装置の基板を前洗浄槽の処理液(硝酸)に浸漬させる時の状態の概要を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の実施形態の無電解めっき装置の基板を前洗浄モジュールで処理する時の状態の概要を示す縦断正面図である。
【図8】本発明の実施形態の無電解めっき装置の基板を前洗浄モジュールの基板ホルダをジンケート処理モジュールの基板ホルダに受け渡す時の状態の概要を示す縦断正面図である。
【図9】本発明の実施形態の無電解めっき装置の基板をジンケート処理槽のジンケート液に浸漬させる時の状態の概要を示す縦断正面図である。
【図10】本発明の実施形態の無電解めっき装置の基板をジンケート処理槽のジンケート液に浸漬させた後、ジンケート液から引き上げる時の状態の概要を示す縦断正面図である。
【図11】本発明の実施形態の無電解めっき装置の基板をAuめっき槽のめっき液に浸漬させる時の概要を示す縦断正面図である。
【図12】本発明の実施形態の無電解めっき装置の基板をAuめっき槽のめっき液から引き上げた時の概要を示す縦断正面図である。
【図13】前洗浄モジュールの前洗浄槽と基板ホルダを示す概略縦断正面図である。
【図14】前洗浄モジュールの前洗浄槽と基板ホルダを示す概略側断面図である。
【図15】前洗浄モジュールの水洗槽と基板ホルダを示す概略縦断正面図である。
【図16】前洗浄モジュールの基板ホルダに備えられている支持棒の一部を拡大した断面を、水分除去機構と共に示す概要図である。
【図17】(a)は図16のA−A線断面図で、(b)はその変形例である。
【図18】ジンケート処理モジュールの基板ホルダに備えられている支持棒の一部を拡大した断面を、水分除去機構と共に示す概要図である。
【図19】無電解めっき装置による一連の処理を示すブロック図である。
【図20】基板ホルダの支持棒の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図21】基板ホルダの支持棒の更に他の例を示す要部拡大断面図である。
【図22】基板ホルダの支持棒の更に他の例を示す要部拡大断面図である。
【図23】(a)は、本発明の一連の無電解めっきを行ってNiめっき膜とAuめっき膜を順次形成した時の外観図で、(b)〜(d)は、参考例を示す外観図である。
【図24】(a)は、Alを下地金属としたパターンウェーハの表面に、本発明の一連の無電解めっきを行って、Niめっき膜とAuめっき膜を順次形成した時の膜厚面内分布図を示し、(b)は、ジンケート処理後及びめっき処理後の外観図、及び断面図を示す。
【図25】(a)は、Alを下地金属としたパターンウェーハの表面に、従来の一般的な無電解めっきを行って、Niめっき膜とAuめっき膜を順次形成した時の膜厚面内分布図を示し、(b)は、ジンケート処理後及びめっき処理後の外観図、及び断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例において、同一または相当部材には、同一符号を付して、重複した説明を省略する。
【0045】
以下の例では、図5(a)に示すように、例えば直径Dが数μmのAlからなるバンプパッド40を設けた半導体ウェーハ等の基板Wを用意する。そして、図5(b)に示すように、この基板Wの表面に、めっき前処理としてのジンケート処理を行って、バンプパッド40の表面に置換めっきにより亜鉛めっき膜42を形成し、この亜鉛めっき膜42の表面に、無電解めっきによって、例えば1.6μmのNiめっき膜44を形成し、このNiめっき膜44の表面に、無電解めっき(置換めっき)によって、例えば0.1μmのAuめっき膜46を形成するようにしている。
【0046】
図6乃至図12は、本発明の実施形態の無電解めっき装置全体の概要を工程順に示す縦断正面図である。図6乃至図12に示すように、この無電解めっき装置は、前洗浄槽50と水洗槽52を有する前洗浄モジュール54、ジンケート処理槽56と水洗槽58を有するジンケート処理モジュール60、Niめっき槽62と水洗槽64を有するNiめっきモジュール66、Auめっき槽68と水洗槽70を有するAuめっきモジュール72、及び乾燥ユニット74を有する乾燥モジュール76を備えている。
【0047】
前洗浄モジュール54には、上下及び左右に移動自在で、前洗浄槽50と水洗槽52との間で複数枚の基板を搬送する基板ホルダ80aが備えられている。同様に、ジンケート処理モジュール60には基板ホルダ80bが、Niめっきモジュール66には基板ホルダ80cが、Auめっきモジュール72に基板ホルダ80dが、乾燥モジュール76には基板ホルダ80eがそれぞれ備えられている。
【0048】
更に、これらの基板ホルダ80a〜80eと平行に、ガイド86に沿って走行自在な基板保持具88を有し、複数枚の基板を搬送して各モジュール内基板搬送装置84a〜84eとの間で複数枚の基板の受け渡しを行うモジュール間基板搬送装置90が配置されている。
【0049】
基板ホルダ80aは、基板ホルダ80aで保持した複数枚の基板Wを処理槽内の処理液に浸漬させる浸漬速度を、例えば100mm/s以上に、処理槽内の処理液から引き上げる引き上げ速度を、例えば50mm/s以下に、それぞれ調整する制御部を有している。更に、基板ホルダ80aは、基板ホルダ80aで保持した基板Wを処理槽内の処理液に浸漬させる際に、基板ホルダ80aを、振動、上下揺動または左右揺動させる移動機構を更に有している。このように、制御部及び移動機構を有することは、他の基板ホルダ80b,80c,80dにあっても同様である。
【0050】
基板ホルダ80aは、所定間隔離間した位置に対向して配置される一対の側板92aと該側板92a間に跨って延び基板Wの外周部を支持する複数の支持棒94aを有している。同様に、基板ホルダ80bは、一対の側板92bと複数の支持棒94bを、基板ホルダ80cは、一対の側板92cと複数の支持棒94cを、基板ホルダ80dは、一対の側板92dと複数の支持棒94dを、基板ホルダ80eは、一対の側板92eと複数の支持棒94eをそれぞれ有している。
【0051】
この例では、Auめっき槽68の上方に位置して、モジュール内基板搬送装置84dの基板ホルダ80dで保持してAuめっき槽68の処理液(Auめっき液)から引き上げた基板Wに向けて純水を噴射する純水噴射ノズル(図示せず)が配置されている。
【0052】
図13は、前洗浄モジュール54の前洗浄槽50と基板ホルダ80aを示す概略縦断正面図で、図14は、同じく概略側断面図である。この例の前洗浄槽50は、基板Wの表面の酸化膜を除去し、更にダブルジンケート処理の時に、バンプパッド40(図4参照)の表面に置換めっきで形成される亜鉛めっき膜の表面を除去するため、処理液として硝酸を使用している。前洗浄槽50は、内槽100と外槽102とを有しており、内槽100と外槽102との間にオーバフロー槽104が形成されている。前洗浄槽50のオーバフロー槽104の底部には、ポンプ106、温度調整器108及びフィルタ110を介装した処理液循環ライン112の一端が接続され、この処理液循環ライン112の他端は、内槽100の底部に接続されている。更に、内槽100の底部には、処理液の流れを整える整流板114が配置されている。
【0053】
これによって、前洗浄槽50内の処理液(硝酸)は、ポンプ106の駆動に伴って、フィルタ110でフィルタリングされ、必要に応じて、温度調整器108で温度が調整されながら、内槽100の内部とオーバフロー槽104との間を循環するようになっている。なお、前洗浄槽50内の処理液(硝酸)は、一般に温度を調整する必要がない(常温で使用される)ので、温度調整器108を省略してもよい。
【0054】
ジンケート処理槽56、Niめっき槽62及びAuめっき槽68は、処理液が異なるだけで、前洗浄槽50と同様な構成を有している。つまり、ジンケート処理槽56にあっては、処理液として、例えば液温を50℃としたジンケート液、例えば水酸化ナトリウムベースの酸化亜鉛含有液が使用される。Niめっき槽62にあっては、処理液として、例えば液温を80℃としたNiめっき液が使用される。Auめっき槽68にあっては、処理液として、例えば液温を75℃としたAuめっき液が使用される。
【0055】
図15は、前洗浄モジュール54の水洗槽52と基板ホルダ80aを示す概略縦断正面図である。水洗槽52は、処理液として純水を使用している。水洗槽52は、内槽120と外槽122とを有しており、内槽120と外槽122との間にオーバフロー槽124が形成されている。そして、内槽120の底部に純水供給ライン126が接続され、オーバフロー槽124の底部に排水ライン128が接続されている。これによって、純水供給ライン126を通して内槽120に供給された純水は、内槽120の内部を満し、しかる後、オーバフロー槽124内にオーバフローして、排水ライン128から排水されるようになっている。なお、他の水洗槽58,64,70も、水洗槽52と同様な構成を有している。
【0056】
図16は、前洗浄モジュール54の基板ホルダ80aに備えられている支持棒94aの一部を拡大した断面を、水分除去機構と共に示す概要図であり、図17(a)は、図16のA−A線断面図である。
【0057】
図16及び図17(a)に示すように、支持棒94aには、基板Wの外周部を位置させて基板Wを鉛直方向に支持する複数の支持溝130が、支持棒94aの長さ方向に沿った所定のピッチ、例えば5mmピッチで設けられている。更に、支持棒94aの内部には、一端が閉塞された中央孔132が設けられ、この中央孔132と各支持溝130は、複数の穴からなる連通孔134aで互いに連通している。中央孔132の開口端には、支持溝130の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去する水分除去機構136aが接続されている。
【0058】
水分除去機構136aは、支持棒94aの中央孔132の開口端に択一的に選択される加圧気体供給ライン138と、この例では、中央孔132を通して処理液を循環させる液循環ライン140aとを有している。加圧気体供給ライン138は、例えば高圧のエアを供給する加圧気体供給源142に接続され、液循環ライン140aと合流する手前に開閉バルブ144aが介装されている。液循環ライン140aは、ポンプ146を有し、模式的に示すように、例えば水洗槽52等の処理槽の内部に開口するようになっており、加圧気体供給ライン138と合流する手前に開閉バルブ144bが介装されている。
【0059】
これにより、液循環ライン140aの開閉弁144bを閉じ、加圧気体供給ライン138の開閉弁144aを開くことで、エア等の高圧気体を支持棒94aの中央孔132の内部に導き、連通孔134aを通して、支持溝130から外部に噴出させることで、支持溝130乃至その周辺に溜まる水分を高圧気体で吹き飛ばして除去する。なお、この水分の除去は、支持溝130内に基板Wの外周部を位置させて基板Wを支持している状態でも、また基板Wを支持していない状態でも行うことができる。
【0060】
そして、例えば基板ホルダ80aで保持した基板Wを水洗槽52内の処理液(純水)に浸漬させて基板Wの水洗処理を行っている時には、液循環ライン140aの開閉弁144bを開き、加圧気体供給ライン138の開閉弁144aを閉じる。これにより、水洗槽52内の処理液(純水)を支持棒94aの中央孔132を通して水洗槽52内に戻して循環させる。これにより、水洗槽52内の処理液(純水)が、連通孔134aから中央孔132内を通って循環し、連通孔134aや中央孔132内を洗浄することができる。
【0061】
上記の例では、図17(a)に示すように、基板ホルダ80aの支持棒94aの中央孔132と支持溝130とを、複数の穴から成る連通孔134aで互いに連通させるようにしているが、図17(b)に示すように、支持棒94aの中央孔132と支持溝130とを、扇状に拡がるスリット状の連通孔134bで互いに連通させるようにしてもよい。このことは、他の基板ホルダ80b〜80dの支持棒94b〜94dにあっても同様である。なお、支持溝130が直接中央孔132と連通するようにして、連通孔134aを省略しても良い。
【0062】
図18は、ジンケート処理モジュール60の基板ホルダ80bに備えられている支持棒94bの一部を拡大した断面を、水分除去機構と共に示す概要図である。図18に示すように、支持棒94bには、前述の支持棒94aと同様に、基板Wの外周部を位置させて基板Wを鉛直方向に支持する複数の支持溝130が設けられ、この各支持溝130は、支持棒94bの内部に設けた、一端が閉塞された中央孔132と複数の穴からなる連通孔134aで互いに連通している。中央孔132の開口端には、支持溝130の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去する水分除去機構136bが接続されている。
【0063】
水分除去機構136bは、支持棒94bの中央孔132の開口端に択一的に選択される水分吸引ライン150と、この例では、加圧流体供給ラインからなる液浸入防止ライン140bとを有している。水分吸引ライン150は、例えば真空ポンプ等の水分吸引源152に接続され、液浸入防止ライン(加圧流体供給ライン)140bと合流する手前に開閉バルブ144cが介装されている。液浸入防止ライン140bは、例えばNガスやエア等の気体、或いは純水等の液体を加圧して供給する流体供給源154に接続され、水分吸引ライン150と合流する手前に開閉バルブ144dが介装されている。
【0064】
これにより、液浸入防止ライン140bの開閉弁144dを閉じ、水分吸引ライン150の開閉弁144cを開くことで、支持棒94bの中央孔132及び連通孔134aを通して、支持溝130の内部乃至その周辺に溜まる水分を吸引除去する。なお、この水分の吸引除去は、前述と同様に、支持溝130内に基板Wの外周部を位置させて基板Wを支持している状態でも、また基板Wを支持していない状態でも行うことができる。水分吸引ライン150を通して吸引した水分(ジンケート処理液)は、ジンケート処理槽56に戻るように構成されている。
【0065】
そして、例えば基板ホルダ80bで保持した基板Wをジンケート処理槽56内の処理液(ジンケート液)に浸漬させて基板Wのジンケート処理を行っている時には、液浸入防止ライン140bの開閉弁144dを開き、水分吸引ライン150の開閉弁144bを閉じる。これにより、支持棒94bの中央孔132及び連通孔134aを通して、支持溝130に向けてNガスやエア等の気体を噴出させる。これにより、ジンケート処理槽56内の処理液(ジンケート液)が、連通孔134aから中央孔132内に浸入することを防止することができる。連通孔134aや中央孔132は、径の細い管であるので、管の内部での処理液の析出等を防止するため、少しでも処理液の進入を防ぐことが望ましい。
【0066】
なお、Niめっきモジュール66の基板ホルダ80cの支持棒94c、Auめっきモジュール72の基板ホルダ80dの支持棒94dにあっても、支持棒94aと同様に、複数の支持溝130が設けられ、この各支持溝130は、支持棒94aの内部に設けた、一端が閉塞された中央孔132と複数の穴からなる連通孔134aで互いに連通している。そして、中央孔132の開口端には、水分吸引ライン150と加圧流体供給ラインからなる液浸入防止ライン140bとを有する、前述の同様な構成の水分除去機構136bが接続されている。
【0067】
次に、この例の無電解めっき装置による、一連の処理を、図6〜図12、並びに図19を参照して説明する。
【0068】
先ず、図6に示すように、前洗浄モジュール54の基板ホルダ80aで、モジュール間基板搬送装置90の基板保持部88から複数枚の基板Wを同時に受け取って鉛直方向に保持する。この時、基板ホルダ80aは、前洗浄槽50の直上方に位置し、各基板Wの外周部は、支持棒94aの支持溝130の内部に位置し、これによって、基板Wは所定のピッチで整列されて基板ホルダ80aで保持される。
【0069】
そして、基板ホルダ80aを下降させて、基板ホルダ80aで保持した複数枚の基板Wを、前洗浄槽50内の処理液(硝酸)に、例えば1分間浸漬させ、これによって、基板Wの表面の酸化膜を除去する。このように、基板Wを処理液(硝酸)に浸漬させているときに、液循環ライン140aの開閉弁144bを開き、加圧気体供給ライン138の開閉弁144aを閉じることによって、液循環ライン140aを通して、処理液(硝酸)を連通孔134aから吸込み、前洗浄槽50に戻すようにしても良い。このことは、以下同様である。
【0070】
次に、図7に示すように、基板ホルダ80aで保持した複数枚の基板Wを、前洗浄槽50内の処理液(硝酸)から引き上げ、水洗槽52の直上方に移動させる。そして、基板ホルダ80aを下降させて、基板ホルダ80aで保持した複数枚の基板Wを、水洗槽52内の処理液(純水)に、例えば5分間浸漬させ、これによって、基板Wの表面を水洗する。前述したように、基板Wの表面を水洗している間、水洗槽52内の処理液(純水)を、連通孔134aから中央孔132内を通って循環させ、連通孔134aや中央孔132内を洗浄しても良い。しかる後、基板ホルダ80aで保持した複数枚の基板Wを、例えば50mm/s以下に調整された引き上げ速度で、水洗槽52内の処理液(純水)から引き上げる。このように、引き上げ速度を、例えば50mm/s以下に調整することで、基板Wの表面に多量の処理液(純水)が残るのを防止することができる。
【0071】
このように、基板Wを処理液(純水)から引き上げた後、液循環ライン140aの開閉弁144bを閉じ、加圧気体供給ライン138の開閉弁144aを開くことで、エア等の高圧気体を支持棒94aの中央孔132の内部に導き、連通孔134aを通して、支持溝130に向けて噴出させ、これによって、支持溝130乃至その周辺に溜まる水分を高圧気体で吹き飛ばして除去する。吹き飛ばされた水分は、主に水洗槽52内に戻るため、結果的に水分の持ち出し量の低減となる。また基板の下端に溜まった水分も適度に除去できるので、次のジンケート処理において水分とジンケート液とが混ざることによる悪影響を減らすことができる。
【0072】
次に、図8に示すように、前洗浄モジュール54の基板ホルダ80aで鉛直方向に保持した複数枚の基板Wを、モジュール間基板搬送装置90の基板保持具88を経由して、ジンケート処理モジュール60の基板ホルダ80bに受け渡す。この基板ホルダ80bは、ジンケート処理槽56の直上方に位置している。また、複数枚の基板Wを保持する前に、液浸入防止ライン140bの開閉弁144dを閉じ、水分吸引ライン150の開閉弁144cを開くことで、支持棒94bの中央孔132及び連通孔134aを通して、支持溝130の内部乃至その周辺に溜まる水分を予め吸引除去している。
【0073】
次に、図9に示すように、基板ホルダ80bを下降させて、基板ホルダ80bで保持した複数枚の基板Wを、ジンケート処理槽56内の処理液(ジンケート液)に、例えば30秒浸漬させ、これによって、Alからなるバンプパッド40(図5参照)の表面の1回目のジンケート処理を行う。このように、基板Wを処理液(ジンケート液)に浸漬させているときは、液浸入防止ライン140bの開閉弁144dを開き、水分吸引ライン150の開閉弁144cを閉じる。これによって、ジンケート処理槽56の処理液が、連通孔134aから中央孔132内に浸入することを防止する。このことは、以下同様である。
【0074】
この基板ホルダ80bで保持した基板Wをジンケート処理槽56内の処理液(ジンケート液)に浸漬させる時の浸漬速度は、例えば100mm/s以上に調整される。このように、浸漬速度を、例えば100mm/s以上に調整することで、基板Wの下端から上端までを処理液(ジンケート処理液)中に完全に浸漬させるのに要する時間を少なくすることができる。この基板Wを処理液(ジンケート液)に浸漬させる時に、移動機構を介して、基板ホルダ80bを振動、上下揺動または左右揺動させることが好ましい。これらにより、基板表面の処理液の拡散を促進することができる。
【0075】
次に、図10に示すように、基板ホルダ80bで保持した複数枚の基板Wを、例えば50mm/s以下に調整された引き上げ速度で、ジンケート処理槽56内の処理液(ジンケート液)から引き上げる。このように、引き上げ速度を、例えば50mm/s以下に調整することで、基板Wの表面に多量の処理液(ジンケート液)が残って処理が不均一になったり、処理液の外部への持ち出し量が増えてしまうことを防止することができる。
【0076】
このように、基板Wを処理液(ジンケート液)から引き上げた後、液浸入防止ライン140bの開閉弁144cを閉じ、水分吸引ライン150の開閉弁144cを開くことで、支持棒94bの中央孔132及び連通孔134aを通して、支持溝130の内部乃至その周辺に溜まる水分(ジンケート液)を吸引除去する。このように、水分(ジンケート液)を吸引除去して、再使用することで、水分(ジンケート液)の外部への持ち出し量を最低限に抑えることができる。
【0077】
次に、前述とほぼ同様に、基板ホルダ80bで保持した複数枚の基板Wを、水洗槽58の直上方に移動させる。そして、基板ホルダ80bを下降させて、基板ホルダ80bで保持した複数枚の基板Wを、水洗槽58内の処理液(純水)に、例えば1分間浸漬させ、これによって、基板Wの表面を水洗する。この時、液浸入防止ライン140bを通じて処理液(純水)を噴出させて管内を洗浄しても良い。しかる後、基板ホルダ80bで保持した複数枚の基板Wを水洗槽56内の処理液(純水)から引き上げる。
【0078】
上記基板の硝酸中への浸漬及びその後の水洗、ジンケート液中への浸漬及びその後の水洗を1サイクルとして、このサイクルを2回繰返し、これによって、いわゆるダブルジンケート処理を行う。このように、ダブルジンケート処理を行うことで、Alからなるバンプパッド40(図5参照)の表面に、1回目のジンケート処理で粗く付与された亜鉛(亜鉛めっき膜)を硝酸で除去し、しかる後、バンプパッド40の表面を、2回目のジンケート処理で細かく亜鉛に置換することができる。これによって、図5(b)に示す亜鉛めっき膜42を形成する。
【0079】
次に、ダブルジンケート処置後の基板を、モジュール間基板搬送装置90の基板保持具88を経由して、Niめっきモジュール66の基板ホルダ80cに受け渡す。そして、前述のジンケート処理とほぼ同様にして、基板ホルダ80cで鉛直方向に保持した複数枚の基板を、Niめっき槽62内の、例えば液温が80℃の処理液(Niめっき液)に、例えば50分間浸漬させ、しかる後、Niめっき後の基板を、水洗槽64内の処理液(純水)に、例えば5分間浸漬させて水洗する。これによって、図5(b)に示すNiめっき膜44を形成する。
【0080】
次に、Niめっき後の基板を、モジュール間基板搬送装置90の基板保持具88を経由して、Auめっきモジュール72の基板ホルダ80dに受け渡す。そして、前述のジンケート処理とほぼ同様に、図11に示すように、基板ホルダ80dを下降させて、基板ホルダ80dで鉛直方向に保持した複数枚の基板を、Auめっき槽68内の、例えば液温が75℃の処理液(Auめっき液)に、例えば10分間浸漬させる。これによって、図5(b)に示すAuめっき膜46を形成する。
【0081】
そして、前述のジンケート処理とほぼ同様に、図12に示すように、基板ホルダ80dで保持した複数枚の基板Wを、例えば50mm/s以下に調整された引き上げ速度で、Auめっき槽68内の処理液(Auめっき液)から引き上げた後、支持溝130の内部乃至その周辺に溜まる水分((Auめっき液)を吸引除去する。しかる後、基板ホルダ80dで保持した複数枚の基板Wに向けて、純水噴射ノズルから純水を噴射する。これによって、基板W等の付着した水分(Auめっき液)を純水で洗い流して、Auめっき槽68に戻す。この時に噴射する純水の量は、例えば基板を処理することによって減少した純水の量に見合った量である。これによって、一般に高価なAuめっき液の外部への持ち出し量を更に削減することができる。
【0082】
なお、Niめっき槽62の上方に純水噴射ノズルを配置し、Niめっき後に基板等に付着したNiめっき液を、純水噴射ノズルから噴射される純水で洗い流してNiめっき槽62に戻すようにしても良い。
【0083】
そして、Auめっき後の基板を、前述のジンケート処理とほぼ同様に、水洗槽80内の処理液(純水)に、例えば5分間浸漬させて水洗する。
【0084】
次に、Auめっき後の基板を、モジュール間基板搬送装置90の基板保持具88を経由して、乾燥モジュール76の基板ホルダ80eに受け渡す。そして、基板ホルダ80eで鉛直方向に保持した複数枚の基板Wを、乾燥モジュール84で、例えばエアブローまたはIPA(イソプロピルアルコール)蒸気を使用した乾燥方法で乾燥させる。
【0085】
そして、モジュール間基板搬送装置90の基板保持具88は、乾燥後の基板Wを基板ホルダ80eから受け取って、次工程に搬送する。これにより、一連の無電解めっき処理を終了する。
【0086】
なお、図20に示すように、基板ホルダ80aの支持棒94aで、複数枚の基板Wを、被めっき面Waが一定の方向を向くように、同一方向で支持する場合には、基板Wの被めっき面Waを向くように一方向に開口させた連通孔134cを介して、中央孔132と支持溝130とが互いに連通するようにしてもよい。
【0087】
また、図21に示すように、基板ホルダ80aの支持棒94aで、複数枚の基板Wを、被めっき面Waが互いに対向するように、互い違いの方向で支持する場合には、基板Wの被めっき面Waを向くようにY字状に開口させた連通孔134dを介して、中央孔132と支持溝130とが互いに連通するようにしてもよい。この場合、図22に示すように、基板Wの裏面を向くようにY字状に開口させた他の連通孔134eを設けるようにしてもよい。
【0088】
このことは、他の基板ホルダ80b〜80eの支持棒94b〜94eにあっても同様である。
【0089】
次に、1μmのAlを下地金属としたベタウェーハの表面に、上記無電解めっき装置を使用した、上記一連の無電解めっきを行って、6μmのNiめっき膜と0.1μmのAuめっき膜を順次形成した時の外観図を図23(a)に示す。
【0090】
なお、図23(b)は、従来の一般的な無電解めっきによって、1μmのAlを下地金属としたベタウェーハの表面に、6μmのNiめっき膜と0.1μmのAuめっき膜を順次形成した時の外観図を参考として示している。また、図23(c)は、純水で水洗した基板を純水から50mm/s以下の速度で引き上げた後、ジンケート液に100mm/s以上の浸漬速度で浸漬させてジンケート処理を行い、図23(d)は、基板をジンケート液に浸漬させるときに、更に基板を振動または揺動させ、それ以外は、従来の一般的な無電解めっきによって、前述と同様に、6μmのNiめっき膜と0.1μmのAuめっき膜を順次形成した時の外観図を示している。
【0091】
図23から、純水で水洗した基板を純水から50mm/s以下の速度で引き上げた後、ジンケート液に100mm/s以上の浸漬速度で浸漬させてジンケート処理を行うことで、斑な外観が改善され、更に、基板を振動または揺動させつつジンケート液に浸漬させ、更には、外周部を位置させて基板を支持する支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去することで、基板の外観が良好になることが判る。
【0092】
図24(a)は、1μmのAlを下地金属(バンプパッド)としたパターンウェーハの表面に、上記無電解めっき装置を使用した、上記一連の無電解めっきを行って、6μmのNiめっき膜と0.1μmのAuめっき膜を順次形成した時の膜厚面内分布図を、図24(b)は、ジンケート処理後及びめっき処理後の外観図、及び断面図を示す。
【0093】
なお、図25(a)は、1μmのAlを下地金属(バンプパッド)としたパターンウェーハの表面に、従来の一般的な無電解めっきを行って、6μmのNiめっき膜と0.1μmのAuめっき膜を順次形成した時の膜厚面内分布図を、図25(b)は、ジンケート処理後及びめっき処理後の外観図、及び断面図を示す。
【0094】
図24及び図25から、パターンウェーハでは、膜厚の面内分布のばらつきが小さくなることが判る。これは、亜鉛置換量の適正化、均一化によるものであると考えられる。また、同時に、バンプパッド上の粗さ低減し、バンプパッド自身のダメージが低減していることが判る。
【0095】
上記の例では、水分除去機構136aとして、加圧気体供給ライン138と、中央孔132を通して処理液を循環させる液循環ライン140aとを有するものを、水分除去機構136bとして、水分吸引ライン150と、加圧流体供給ラインからなる液浸入防止ライン140bとを有するものを使用した例を示しているが、加圧気体供給ラインと水分吸引ラインの一方と、液循環ラインと加圧流体供給ラインの一方を任意に組合せて、水分除去機構を構成するようにしても良い。
【0096】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
40 バンプパッド
42 亜鉛めっき膜
44 Niめっき膜
46 Auめっき膜
50 前洗浄槽
52,58,64,70 水洗槽
54 前洗浄モジュール
56 ジンケート処理槽
60 ジンケート処理モジュール
62 Niめっき槽
66 Niめっきモジュール
68 Auめっき槽
72 Auめっきモジュール
74 乾燥ユニット
76 乾燥モジュール
80a〜80e 基板ホルダ
88 基板保持具
90 モジュール間基板搬送装置
92a〜92e 側板
94a〜94e 支持棒
108 温度調整器
110 フィルタ
112 処理液循環ライン
130 支持溝
132 中央孔
134a〜134e 連通孔
136a,136b 水分除去機構
138 加圧気体供給ライン
140a 液循環ライン
140b 液浸入防止ライン
142 加圧気体供給源
144a〜144d 開閉バルブ
150 水分吸引ライン
152 水分吸引源
154 流体供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を鉛直方向に平行に保持して搬送し、搬送の前後で異なる処理槽内の処理液中に複数枚の基板を同時に浸漬させる基板ホルダを有する無電解めっき装置において、
前記基板ホルダは、基板の外周部を位置させて基板を支持する複数の支持溝を有する支持棒と、前記支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去する水分除去機構を有することを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項2】
前記水分除去機構は、前記支持棒の内部に設けた一端が閉塞された中央孔の開口端に択一的に接続される加圧気体供給ライン及び液浸入防止ラインを有し、前記中央孔と前記支持溝の内部は連通孔を介して互いに連通していることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき装置。
【請求項3】
前記水分除去機構は、前記支持棒の内部に設けた一端が閉塞された中央孔の開口端に択一的に接続される水分吸引ライン及び液浸入防止ラインを有し、前記中央孔と前記支持溝の内部は連通孔を介して互いに連通していることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき装置。
【請求項4】
前記基板ホルダで保持した基板を浸漬させる前記処理槽内の処理液を循環させる液循環ラインを更に有することを特徴とする請求項1記載の無電解めっき装置。
【請求項5】
前記液浸入防止ラインは、前記中央孔内に加圧流体を供給する加圧流体供給ラインからなることを特徴とする請求項2または3記載の無電解めっき装置。
【請求項6】
前記連通孔は、基板ホルダで保持される基板の被めっき面に向けて開口していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の無電解めっき装置。
【請求項7】
前記基板ホルダで保持した基板を前記処理槽内の処理液に浸漬させる浸漬速度と、前記処理槽内の処理液から引き上げる引き上げ速度を調整する制御部を更に有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の無電解めっき装置。
【請求項8】
前記浸漬速度は100mm/s以上で、前記引き上げ速度は50mm/s以下であること特徴とする請求項7記載の無電解めっき装置。
【請求項9】
前記基板ホルダで保持した基板を前記処理槽内の処理液に浸漬させる際に、前記基板ホルダを、振動、上下揺動または左右揺動させる移動機構を更に有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の無電解めっき装置。
【請求項10】
前記基板ホルダで保持した基板を前記処理槽内の処理液に浸漬させて該処理液から引き上げた後、基板に向けて純水を噴射する純水噴射機構を更に有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載に無電解めっき装置。
【請求項11】
支持棒に設けた複数の支持溝内に基板の外周部を位置させて複数枚の基板を基板ホルダで鉛直方向に平行に保持し、
基板ホルダで保持した基板を第1の処理槽内の第1処理液に浸漬させて該第1処理液から引き上げ、
基板を保持した基板ホルダを第2の処理槽の直上方に搬送し、
基板ホルダで保持した基板を第2の処理槽内の第2処理液に浸漬させて該第2処理液から引き上げる無電解めっき方法であって、
前記支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を、処理の前後、または処理の途中で除去することを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項12】
複数枚の基板を基板ホルダで鉛直方向に平行に保持する前に、前記支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去することを特徴とする請求項11記載の無電解めっき方法。
【請求項13】
前記第1処理液または前記第2処理液から基板を引き上げた後、前記支持溝の内部乃至その周辺に溜まる水分を除去することを特徴とする請求項11または12記載の無電解めっき方法。
【請求項14】
前記第1処理液または前記第2処理液に基板を浸漬させる浸漬速度は100mm/秒以上で、前記第1処理液または前記第2処理液から基板を引き上げる引き上げ速度は50mm/秒以下であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の無電解めっき方法。
【請求項15】
前記基板ホルダを振動、上下揺動または左右揺動させながら、前記第1処理液または前記第2処理液に該基板ホルダで保持した基板を浸漬させることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の無電解めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−104119(P2013−104119A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250434(P2011−250434)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】