焦点調整装置、撮影装置および焦点調整方法
【課題】自動的にレンズの焦点を調整する技術において、より精度の高い合焦動作を実現する。
【解決手段】マイクロコンピュータ400は、ビデオカメラ10の工場出荷時において、フォーカスレンズ150を往復動させ、それぞれの移動方向においてAF評価値がピークとなる値を取得し、更に、そのピーク時のフォーカスレンズ150の位置を取得する。又、マイクロコンピュータ400は、ビデオカメラ10の初期化処理時に、フォーカスレンズ150の原点の位置を往動時および復動時に検出し、その位置のずれ量を求める。オートフォーカス処理時には、こうして取得された各パラメータに基づき補正値を算出し、この補正値に基づいて、AF評価値のピーク値とフォーカスレンズ150のピーク位置を補正し、フォーカスレンズ150が合焦したか否かを判断する。
【解決手段】マイクロコンピュータ400は、ビデオカメラ10の工場出荷時において、フォーカスレンズ150を往復動させ、それぞれの移動方向においてAF評価値がピークとなる値を取得し、更に、そのピーク時のフォーカスレンズ150の位置を取得する。又、マイクロコンピュータ400は、ビデオカメラ10の初期化処理時に、フォーカスレンズ150の原点の位置を往動時および復動時に検出し、その位置のずれ量を求める。オートフォーカス処理時には、こうして取得された各パラメータに基づき補正値を算出し、この補正値に基づいて、AF評価値のピーク値とフォーカスレンズ150のピーク位置を補正し、フォーカスレンズ150が合焦したか否かを判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的にレンズの焦点を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスチルカメラやビデオカメラは、自動的に焦点を調整するいわゆるオートフォーカス機能を備えるものが多い。オートフォーカスの制御方法としては、例えば、図12に示すように、撮影した画像の輝度値の高周波成分から算出される評価値が最大の値となるようにフォーカスレンズをレンズユニット内で移動させる方法がある(下記特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−87377号公報
【特許文献2】特開平1−125065号公報
【0004】
一般的に、レンズをレンズユニット内に移動させる移動機構は、リードスクリューを備えるステッピングモータや、レンズを保持するレンズ枠、光軸方向へのレンズ枠の移動をガイドするガイドバー等によって構成されている。レンズ枠には、モータの動力をレンズ枠に伝えるためのラックが設けられており、このラックは、モータのリードスクリューに係合している。従って、モータが駆動すると、リードスクリューが回転し、その回転力が、ラックによってレンズ枠の光軸方向の推進力へと変換される。
【0005】
こうしたレンズユニットでは、リードスクリューとレンズ枠との係合部におけるバックラッシュにより、レンズの移動方向に応じて、その移動量に誤差が生じる場合がある。そのため、下記特許文献3に記載の技術では、レンズの移動方向を反転させる際に、レンズの移動量に付加移動量を加算することで、このような誤差の解消を図っている。
【0006】
【特許文献3】特開平8−265620号公報
【0007】
しかし、レンズの移動方向を反転させる際には、移動量に誤差が生じるだけではなく、レンズの光軸が中心軸からずれる現象やレンズの傾きが変動する現象が発生する場合があり、上述した従来の技術ではこのような変動に対処することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなレンズユニット内の機構的ながたつきに伴う問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、自動的にレンズの焦点を調整する技術において、より精度の高い合焦動作を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を踏まえ、本発明を焦点調整装置として次のように構成した。すなわち、
光軸方向にレンズを移動させて焦点を調整する焦点調整装置であって、
前記レンズを介して撮影した像を解析して、前記レンズの合焦状態を表す評価値を求める評価部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整するのに先立って、所定の被写体を撮影しつつ前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ求められた前記評価値のピーク値の相違に基づき、前記評価値を補正する評価補正値を求める補正値算出部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整する際に、前記レンズの移動方向に応じて、前記評価値を前記評価補正値に基づき補正し、該補正した評価値に基づき前記レンズの合焦する位置を判断する合焦位置判断部と、
前記判断された合焦位置に前記レンズを移動させて該レンズを合焦させる合焦制御部と
を備えることを要旨とする。
【0010】
本発明の焦点調整装置によれば、レンズの移動方向に応じて変化する評価値のピーク値から評価補正値を求め、この補正値に基づきレンズの合焦位置を判断することができる。従って、レンズの移動方向に応じてレンズの光軸が中心からずれたり、レンズが傾いたとしても、評価値を補正しながら正確にレンズを被写体に合焦させることが可能になる。なお、評価部によって求める評価値は、レンズを介して撮影した像の輝度値やRGB値の高周波成分に基づき求めることができる。
【0011】
上記構成の焦点調整装置において、
前記補正値算出部は、更に、前記レンズの往動時において前記評価値がピーク値となる前記レンズの位置と、前記レンズの復動時において前記評価値がピーク値となる前記レンズの位置とのずれに基づき前記合焦位置を補正する合焦位置補正値を求め、
前記合焦位置判断部は、前記レンズの移動方向に応じて前記合焦位置補正値に基づき前記レンズの位置を補正し、該補正したレンズの位置と、前記補正した評価値とに基づき前記レンズが合焦する位置を判断するものとしてもよい。
【0012】
このような構成であれば、レンズの移動方向に応じて、評価値を補正するだけではなく、レンズの位置をも補正しつつレンズの合焦位置を判断することができる。そのため、より正確にレンズを被写体に合焦させることが可能になる。
【0013】
上記構成の焦点調整装置において、
更に、前記レンズが、予め定めた基準の位置である原点に移動したことを検出する原点検出部と、
前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ検出された前記原点の位置のずれに基づき、前記原点の位置を補正する原点位置補正値を求める原点位置補正値算出部と、
当該焦点調整装置の工場出荷時と、工場出荷後の電源投入時とに、それぞれ前記原点位置補正値算出部により前記原点位置補正値を求め、該原点位置補正値の変化分を前記合焦位置補正値に反映させる合焦位置補正値修正部とを備えるものとしてもよい。
【0014】
このような構成であれば、工場出荷時後に発生する経年変化に伴うレンズの原点の位置の変化を合焦位置の判断に反映させることができる。この結果、より正確にレンズを被写体に合焦させることが可能になる。
【0015】
上記構成の焦点調整装置において、
前記合焦位置判断部は、前記評価値のピーク値を一旦検出した後に、該ピーク値を中心として前記レンズを往動および復動させ、該ピーク値が変動しない回数が所定の回数に達した場合に、該変動しないピーク値における前記レンズの位置を前記合焦位置として判断するものとしてもよい。
【0016】
このような構成であれば、ピーク値が変動しない回数が所定の回数に達した場合に合焦位置であると判断するので、被写体の位置や形態が変動して合焦状態が不安定な状態で合焦動作を行うことがない。そのため、より正確にレンズを被写体に合焦させることが可能になる。
【0017】
上記構成の焦点調整装置において、前記合焦位置判断部は、
前回の移動方向への移動時に判断された前記合焦位置における前記評価値のピーク値と前記評価補正値とに基づき、次回の移動方向への移動時において判断される前記合焦位置における前記評価値のピーク値の予測値を該移動方向に応じて算出する予測値算出部と、
前記次回の移動方向への移動時において得られた前記評価値のピーク値が、前記予測値と一致する場合に、前記ピーク値が変動しないと判断する変動判断部とを備えるものとしてもよい。
【0018】
このような構成であれば、次回の移動方向へのレンズの移動時において得られる評価値のピーク値を、前回の移動方向への移動時に得られた評価値のピーク値と評価補正値とに基づき予測し、この予測値に基づきレンズが合焦したかを判断することができる。そのため、正確にレンズが合焦する位置を判断することが可能になる。
【0019】
なお、本発明は、上述した焦点調整装置としての構成のほか、この焦点調整装置を備えるスチルカメラやビデオカメラ等の撮影装置や、自動合焦方法としても構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、上述した本発明の作用・効果を一層明らかにするため、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.ビデオカメラの構成:
B.工場出荷時の補正値算出処理:
C.電源投入時の初期化処理:
D.オートフォーカス処理:
(D−1)山登り動作処理:
(D−2)合焦予測値算出処理:
(D−3)合焦値比較処理:
【0021】
A.ビデオカメラの構成:
図1は、本発明の実施例としてのビデオカメラ10の概略構成を示す説明図である。図示するように、本実施例のビデオカメラ10は、レンズユニット100と、CCD200と、AGC回路310と、画像処理DSP(Digital Signal Processor)320と、AF回路330と、マイクロコンピュータ400と、フラッシュメモリ600とを備えている。
【0022】
レンズユニット100は、被写体側の最前面から順に、ユニット内に固定された第1レンズ110と、光軸方向に移動して変倍動作を行うズームレンズ120と、ユニット内を透過する光量を調整するアイリス機構130と、ユニット内に固定された第3レンズ140と、光軸方向に移動して焦点位置を調整するフォーカスレンズ150とを備えている。以下の説明では、近接した被写体に近づくようにピントが合っていく方向を「近方向」、無限遠に遠ざかる方向を「遠方向」と呼ぶ。本実施例のレンズユニット100では、図1に示すように、フォーカスレンズ150の移動方向が被写体側のときが「近方向」で、CCD200側のときが「遠方向」であるものとする。また、インナーフォーカス式のレンズユニットにおいては、ズームレンズのことをバリエータレンズと、フォーカスレンズのことをコンペンセータレンズと呼ぶ場合がある。
【0023】
ズームレンズ120には、ズームレンズ120を光軸方向に往動あるいは復動させるリードスクリューを備えたズームモータ510が接続されている。ズームモータ510はステッピングモータであり、当該ズームモータ510の駆動を行うズームドライバ550を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。従って、ズームレンズ120は、マイクロコンピュータ400から指定されたステップ数に応じて、レンズユニット100内を光軸方向に移動し、変倍動作を行うことができる。
【0024】
フォーカスレンズ150には、フォーカスレンズ150を光軸方向に往動あるいは復動させるリードスクリューを備えたフォーカスモータ530が接続されている。フォーカスモータ530はステッピングモータであり、当該フォーカスモータ530の駆動を行うフォーカスドライバ570を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。従って、フォーカスレンズ150は、マイクロコンピュータ400から指定されたステップ数に応じて、レンズユニット100内を光軸方向に移動し、焦点位置を調整することができる。
【0025】
アイリス機構130には、当該アイリス機構130の絞りを調整するアイリスモータ520が接続されている。アイリスモータ520はガルバノメータであり、当該アイリスモータ520の駆動を行うアイリスドライバ560を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。従って、アイリス機構130は、マイクロコンピュータ400からの指示に応じて、レンズユニット100を透過する光量を調整することができる。なお、本実施例では、ズームモータ510やフォーカスモータ530はステッピングモータであるとし、アイリスモータ520はガルバノメータであるとしたが、直流モータなど他の形式のモータを採用するものとしてもよい。
【0026】
上述したように、ズームレンズ120とフォーカスレンズ150とは、レンズユニット100内を光軸方向に移動する。そのため、レンズユニット100は、これらのレンズが予め定めた基準位置である原点に移動したかを検出するために、第1原点センサ170と、第2原点センサ180とを備えている。第1原点センサ170と第2原点センサ180とは、フォトインタラプタによって構成されており、マイクロコンピュータ400に接続されている。本実施例では、各レンズが、対応する原点センサ上を近方向から遠方向に向かって通過すると、出力される信号が、「1」から「0」に変化し、遠方向から近方向に向かって通過すると、出力される信号が、「0」から「1」に変化するものとする。従って、マイクロコンピュータ400は、この信号の変化を検出することで、レンズが原点に移動したかを判断することができる。
【0027】
CCD200は、レンズユニット100を透過した光を受光し、この光を電気信号に変換するイメージセンサである。
【0028】
AGC回路310は、CCD200から出力される電気信号を入力し、この電気信号の出力を適切な出力に増幅する回路である。
【0029】
画像処理DSP320は、AGC回路310から電気信号を入力し、この信号に対してA/D変換を施すことで画像データを生成する。画像処理DSP320は、こうして生成された画像データを、コンポジットビデオ信号やSビデオ信号に変換し、これを出力端子800を介して、テレビモニタや録画装置等の外部機器に出力する。更に、画像処理DSP320は、A/D変換によって生成した画像データから、輝度信号を抽出し、これをAF回路330に出力する機能を備えている。画像処理DSP320は、他にも、画像データに対してガンマ補正やアパーチャ補正、ホワイトバランスの調整など、種々の画像処理を施す機能を備えている。
【0030】
AF回路330は、ハイパスフィルタや絶対値回路、ゲート回路、検波回路からなる回路である。AF回路330は、画像処理DSP320から輝度信号を入力すると、この輝度信号からハイパスフィルタで高周波成分を抽出し、絶対値回路によって、この高周波成分を絶対値化する。そして、ゲート回路によって、絶対値化された高周波成分のうち、所定の測距枠内の高周波成分だけを取り出し、この高周波成分から検波回路によってピーク検波することでAF評価値を生成する。AF回路330は、こうして、AF評価値を生成すると、このAF評価値をマイクロコンピュータ400に出力する。AF評価値は、フォーカスレンズ150の合焦状態が良好になるほど高い値を示す。画像処理DSP320およびAF回路330は、本願の「評価部」に対応するものである。
【0031】
マイクロコンピュータ400は、AF回路330からAF評価値を入力し、この評価値に応じて、フォーカスレンズ150の合焦位置を調整する機能を備えている。マイクロコンピュータ400には、フラッシュメモリ600が接続されている。このフラッシュメモリ600には、後述する補正値算出処理においてビデオカメラ10の工場出荷時に算出される種々の補正値が記録される。マイクロコンピュータ400は、本願の「合焦位置判断部」および「合焦制御部」に対応するものである。
【0032】
B.工場出荷時の補正値算出処理:
図2は、ビデオカメラ10の工場出荷時の検査工程においてマイクロコンピュータ400が実行する補正値算出処理のフローチャートである。この処理は、後述するオートフォーカス処理で用いられる種々の補正値をビデオカメラ10の個体毎に予め算出しておくための処理である。なお、この処理は、ビデオカメラ10と所定の被写体とをそれぞれ固定した位置に設置した状況で行われるものとする。
【0033】
当該補正値算出処理が実行されると、まず、マイクロコンピュータ400は、フォーカスドライバ570に指令を出し、フォーカスモータ530を駆動してフォーカスレンズ150を近方向の端部に移動させる(ステップS1000)。そして、このフォーカスレンズ150の移動方向を遠方向に設定する(ステップS1010)。マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150の移動方向を表すフラグを用意し、このフラグに「1」をセットすることで移動方向を遠方向に、「0」をセットすることで移動方向を近方向に設定する。マイクロコンピュータ400は、後述する処理において、このフラグを参照することで、フォーカスレンズ150を移動させるべき方向を容易に判別することができる。
【0034】
フォーカスレンズ150の移動方向を遠方向に設定すると、マイクロコンピュータ400は、このフォーカスレンズ150を遠方向に移動させつつ、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点位置の検出を行う処理を実行する(ステップS1020)。以下、かかる処理を「ピーク及び原点検出処理」という。
【0035】
図3は、ピーク及び原点検出処理の詳細なフローチャートである。この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置において、特開平1−125065号公報等に記載の公知の山登り制御を行い、AF回路330から入力したAF評価値のピークを検出する(ステップS1100)。そして、ピークが検出された場合には(ステップS1100:Yes)、そのピーク時のAF評価値をAF回路330から取得するとともに、その時のフォーカスレンズ150の位置を取得する(ステップS1110)。ピークが検出されない場合には(ステップS1100:No)、このステップS1110の処理をスキップする。フォーカスレンズ150の位置は、マイクロコンピュータ400が、フォーカスモータ530に対して指令する移動量(ステップ数)の累積から求めることができる。
【0036】
次に、マイクロコンピュータ400は、第2原点センサ180を用いて、フォーカスレンズ150が原点に移動したかを検出する(ステップS1120)。原点に移動したことを検出すると(ステップS1120:Yes)、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置を取得する(ステップS1130)。原点に移動したことが検出されなければ、このステップS1130の処理はスキップする。
【0037】
マイクロコンピュータ400は、以上の処理によって、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点への移動が検出されたかどうかを判断し(ステップS1140)、少なくともいずれか一方が検出されていなければ(ステップS1140:No)、フォーカスレンズ150を、1ステップ分、現在の移動方向に移動させる(ステップS1150)。そして、処理を上記ステップS1100に戻し、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点への移動の両者が検出されるまで、ステップS1100からステップS1130までの処理を繰り返す。これに対して、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点への移動を検出したと判断すれば(ステップS1140:Yes)、当該ピーク及び原点検出処理を終了し、処理を補正値算出処理(図2)のステップS1030に進める。
【0038】
ここで、説明を図2に戻す。上述したピーク及び原点検出処理によって、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点への移動を検出すると、マイクロコンピュータ400は、上述した処理によって取得された各パラメータ、具体的には、(1)フォーカスレンズ150を近方向から遠方向に移動させた際に取得されたAF評価値のピーク値Sfと、(2)ピーク時のフォーカスレンズ150の位置PSf、および、(3)フォーカスレンズ150が原点に移動した際のフォーカスレンズ150の位置ORGfを、マイクロコンピュータ400内のRAMに記憶する(ステップS1030)。
【0039】
次に、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150を遠方向の端部に移動させ(ステップS1040)、フォーカスレンズ150の移動方向を近方向に設定する(ステップS1050)。そして、図3に示した処理と同様の処理を実行し(ステップS1060)、かかる処理によって取得した各パラメータ、具体的には、(1)フォーカスレンズ150を遠方向から近方向に移動させた際に取得されたAF評価値のピーク値Snと、(2)ピーク時のフォーカスレンズ150の位置PSn、および、(3)フォーカスレンズ150が原点に移動した際のフォーカスレンズ150の位置ORGnを、マイクロコンピュータ400内のRAMに記憶する(ステップS1070)。
【0040】
以上の処理によって、近方向から遠方向、および、遠方向から近方向にフォーカスレンズ150を移動させてそれぞれの方向についてAF評価値等のパラメータを記憶すると、マイクロコンピュータ400は、これらのパラメータに基づき、フォーカスレンズ150の移動方向の反転時に発生するAF評価値のピーク位置のずれ量BSと、原点位置のずれ量BIとを下記式(1),(2)によって算出する(ステップS1080)。そして、これらの算出された値と、遠方向移動時のAF評価値のピーク値Sfと、近方向移動時のAF評価値のピーク値Snとを補正値としてフラッシュメモリ600に書き込み(ステップS1090)、当該補正値算出処理を終了する。
【0041】
BS=PSn−PSf ・・・(1)
BI=ORGn−ORGf ・・・(2)
【0042】
図4は、AF評価値のピーク位置のずれとピーク値の変化を例示する説明図である。図の横軸はフォーカスレンズ150の位置を示し、縦軸はAF評価値を示す。図示するように、フォーカスレンズ150を遠方向から近方向へ移動させた場合と、近方向から遠方向に移動させた場合とでは、フォーカスレンズ150を移動させる機構部のバックラッシュに起因してAF評価値がピークとなるレンズの位置(PSf,PSn)に若干ずれが生じる場合がある。また、フォーカスレンズ150の移動方向に応じて、フォーカスレンズ150の光軸が中心からずれたり、レンズに傾きが生じたりする場合には、AF評価値のピーク値(Sf,Sn)も変動する。これらのパラメータの変化は、ビデオカメラ10の個体によって異なるものである。上述した補正値算出処理では、この個体毎のパラメータを工場出荷時に予め補正値としてフラッシュメモリ600に予め記録しておき、後述するオートフォーカス処理時に、この補正値を用いることで、正確に合焦位置を調整することが可能になる。
【0043】
C.電源投入時の初期化処理:
図5は、ビデオカメラ10が出荷された後に、ビデオカメラ10の電源をユーザが投入するたびにマイクロコンピュータ400によって実行される初期化処理のフローチャートである。
【0044】
この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置を取得し、取得した位置が、原点に対して遠方向側にあるか近方向側にあるかを判断する(ステップS1200)。上述したように、第2原点センサ180は、「1」か「0」の2つの値をとるに過ぎないため、フォーカスレンズ150は、必ず、遠方向か近方向のいずれかに位置するものとして判断されることになる。
【0045】
上記ステップS1200において、現在のフォーカスレンズ150の位置が原点に対して近方向側にあると判断した場合には、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150の移動方向を遠方向に設定する(ステップS1210)。一方、現在のフォーカスレンズ150の位置が原点に対して遠方向側にあると判断した場合には、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150の移動方向を近方向に設定する(ステップS1220)。
【0046】
次に、マイクロコンピュータ400は、第2原点センサ180を用いて、フォーカスレンズ150が原点に移動したかを検出する(ステップS1230)。この結果、原点への移動を検出できなければ(ステップS1230:No)、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150を、上記ステップS1210もしくはステップS1220で設定した方向に1ステップ分移動させる(ステップS1240)。そして、再度、上記ステップS1230の処理を行い、原点に移動したかを検出する。
【0047】
上記ステップS1230において、フォーカスレンズ150の原点への移動を検出すれば(ステップS1230:Yes)、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置Rn(Rf)を取得する(ステップS1250)。そして、フォーカスレンズを現在の移動方向に所定ステップ数、移動させ、その後、フォーカスレンズの移動方向を反転させる(ステップS1260)。なお、上記ステップS1250で取得されるフォーカスレンズ150の位置は、近方向移動時に検出された場合には「位置Rn」と、遠方向移動時に検出された場合には「位置Rf」と表記するものとする。
【0048】
次に、マイクロコンピュータ400は、再度、フォーカスレンズ150が原点に移動したかを検出する(ステップS1270)。この結果、原点への移動を検出できなければ(ステップS1270:No)、フォーカスレンズ150を、上記ステップS1260で反転させた移動方向に1ステップ分移動させる(ステップS1280)。そして、再度、上記ステップS1270の処理を行い、原点に移動したかを検出する。
【0049】
上記ステップS1270において、原点に移動したことを検出すれば(ステップS1270:Yes)、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置Rf(Rn)を取得する(ステップS1290)。そして、工場出荷時の補正値算出処理によってフラッシュメモリ600に書き込まれたパラメータBS,BIを読み込み、これらのパラメータを用いて、移動方向の反転に伴ってフォーカスレンズ150の位置に生じるずれを補正する値BL(以下、「バックラッシュ補正値BL」という)を、以下の式(3),(4)によって算出する(ステップS1300)。マイクロコンピュータ400は、こうしてバックラッシュ補正値BLを算出すると、この値をマイクロコンピュータ400内のRAMに記憶し(ステップS1310)、当該初期化処理を終了する。
【0050】
BP=Rn−Rf ・・・(3)
BL=BS+(BP−BI) ・・・(4)
【0051】
上記式(3)では、ビデオカメラ10の電源投入時におけるフォーカスレンズ150の原点位置のずれ量BPが算出される。そして、このずれ量BPから、工場出荷時の原点位置のずれ量BIを差し引いたものが、経年変化による原点位置の変化量となる。従って、この経年変化による変化量を、工場出荷時に検出したAF評価値のピーク位置のずれ量BSに加えることで、現在のレンズユニット100の状態に適したバックラッシュ補正値BLが算出されることになる。
【0052】
D.オートフォーカス処理:
図6は、上述した初期化処理が終了した後、マイクロコンピュータ400が被写体を撮影する際に実行するオートフォーカス処理のフローチャートである。
【0053】
この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150をウォブリング動作させて、AF評価値の山登り方向を検出し、検出された方向をフォーカスレンズ150の移動方向に設定する(ステップS1400)。ウォブリング動作とは、フォーカスレンズ150を近方向および遠方向に一定の振幅で微振動させることで、そのAF評価値の増減から、AF評価値の増加する方向(山登り方向)を検出する動作のことをいう。
【0054】
次に、マイクロコンピュータ400は、以下で説明するステップS1420〜S1440の処理で、合焦であると検出した回数(以下、「合焦検出回数」という)、が所定の回数(例えば、5回)に達したかを判断する(ステップS1410)。この判断の結果、合焦検出回数が所定値に達していなければ(ステップS1410:No)、合焦状態が不安定であると判断できるため、後述する合焦予測値算出処理(ステップS1420)、山登り動作処理(ステップS1430)、合焦値比較処理(ステップS1430)を実行し、引き続き合焦か否かの判定を行う。一方、合焦検出回数が所定値に達したと判断すれば(ステップS1410:Yes)、安定して合焦していると判断できるため、マイクロコンピュータ400は、合焦であると判定された位置にフォーカスレンズ150を移動させて(ステップS1450)、当該オートフォーカス処理を終了する。
【0055】
ここで、説明の便宜上、ステップS1420の合焦予測値算出処理の説明の前に、ステップS1430の山登り動作処理について説明する。
【0056】
(D−1)山登り動作処理:
図7は、上述したオートフォーカス処理のステップS1430で実行される山登り動作処理の詳細なフローチャートである。この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置におけるAF評価値を取得し(ステップS1500)、取得したAF評価値が、これまで取得したAF評価値よりも大きければ、その最大値を更新する(ステップS1510)。
【0057】
次に、マイクロコンピュータ400は、ステップS1500で取得したAF評価値が、ピークの値を通過したかを判断する(ステップS1520)。この処理では、ステップS1500で取得したAF評価値が、ステップS1510で更新された最大値を初めて下回った場合に、ピークを通過したと判断することができる。この判断の結果、AF評価値がそのピークを通過したと判断した場合には(ステップS1520:Yes)、現在のフォーカスレンズ150の位置が合焦位置であると判断できるので、合焦検出回数をインクリメントし(ステップS1530)、現在のフォーカスレンズ150の位置とAF評価値とを取得する(ステップS1540)。そして、当該山登り動作処理を終了する。
【0058】
上記ステップS1520において、まだピークを通過していないと判断した場合には(ステップS1520:No)、フォーカスレンズ150を、現在の移動方向に1ステップ分移動させ(ステップS1550)、処理をステップS1500に戻す。こうすることで、フォーカスレンズ150を少しずつ移動させながら、そのピークを検出することができる。
【0059】
(D−2)合焦予測値算出処理:
図8は、オートフォーカス処理のステップS1420で実行される合焦予測値算出処理の詳細なフローチャートである。この処理は、当該合焦予測値算出処理に続いて実行される山登り動作処理において検出がなされるAF評価値のピーク値とピーク時のフォーカスレンズ150のレンズの位置を予測するための処理である。
【0060】
この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在の合焦検出回数が1回以上であるかを判断する(ステップS1600)。合焦検出回数が1回未満、すなわち、ゼロであると判断すれば(ステップS1600:No)、未だ、山登り動作処理を一度も実行していないことになり、予測値を算出する元となるAF評価値等を取得することができないため、当該合焦予測値算出処理を終了して、上述した山登り動作処理に処理を移行する。
【0061】
これに対して、現在の合焦検出回数が1回以上であれば(ステップS1600:Yes)、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150の移動方向を反転させる(ステップS1610)。こうすることで、次回の山登り動作処理では、一旦通過したピークを、再び通過する方向にフォーカスレンズ150が移動されることになる。なお、このステップS1610では、フォーカスレンズ150の移動方向を反転させる前に、反転前の元の方向に所定のステップ数、フォーカスレンズ150を移動させるものとしてもよい。こうすることで、確実にピークの値を通過させてから、フォーカスレンズ150の移動方向を反転させることができる。
【0062】
フォーカスレンズ150の移動方向を反転させると、マイクロコンピュータ400は、反転後のフォーカスレンズの移動方向が近方向であるか遠方向であるかを判断する(ステップS1620)。そして、移動方向が遠方向であれば、後述する遠方向予測値算出処理を実行し(ステップS1630)、近方向であれば、後述する近方向予測値算出処理を実行する(ステップS1640)。マイクロコンピュータ400は、これらのうち、いずれかの処理を完了すると、当該合焦予測値算出処理を終了する。
【0063】
図9は、上述した合焦予測値算出処理のステップS1630で実行される遠方向予測値算出処理の詳細なフローチャートである。この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、オートフォーカス処理のステップS1400においてフォーカスレンズ150をウォブリングさせた結果検出された山登り方向(以下、「ウォブリング判定方向」という)が、近方向か遠方向かを判断する(ステップS1700)。
【0064】
ウォブリング判定方向が近方向であった場合には、これから移動させるフォーカスレンズ150の方向が遠方向であるため、当初の移動方向からフォーカスレンズ150を反転して移動させることになる。この場合、フォーカスレンズ150の移動機構のバックラッシュによって移動誤差が生じたり、レンズの傾き等が変化する場合があるので、マイクロコンピュータ400は、次回の山登り動作処理において検出されるAF評価値のピークの値の予測値(以下、「予測合焦評価値EE」という)と、フォーカスレンズ150のピーク位置の予測値(以下、「予測合焦レンズ位置EP」という)とを、フラッシュメモリ600に書き込まれたパラメータSn,Sf、および、初期化処理において算出したバックラッシュ補正値BLを用いて、下記式(5),(6)によって算出する(ステップS1710,1720)。
【0065】
EE=PEAK*(Sf/Sn) ・・・(5)
EP=POS−BL ・・・(6)
【0066】
上記式において、「PEAK」とは、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値のピーク値であり、「POS」とは、前回の山登り動作処理において検出されたピーク時のフォーカスレンズ150の位置である。上記式(5)では、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値のピーク値(PEAK)に、工場出荷時の補正値算出処理時に求めた近方向移動時のAF評価値のピーク値Snに対する遠方向移動時のAF評価値のピーク値Sfの比を積算して、予測合焦評価値EEを求めている。また、上記式(6)では、前回の山登り動作処理において検出されたピーク時のフォーカスレンズ150の位置から、初期化処理時に求めたバックラッシュ補正値BLを差し引いて、予測合焦レンズ位置EPを求めている。このような演算を行うことで、次回の山登り動作処理において検出されるAF評価値のピーク値とフォーカスレンズ150のピーク位置とを正確に予測することができる。
【0067】
上記ステップS170において、ウォブリング判定方向が遠方向であると判断した場合には、これから移動させるフォーカスレンズ150の方向が遠方向で、当初の山登り方向も遠方向であることになる。つまり、当初の移動方向と同一の方向にフォーカスレンズ150を移動させることになるので、フォーカスレンズ150を移動させる際にバックラッシュによって移動誤差が生じたり、レンズの傾きが変化することはない。そこで、マイクロコンピュータ400は、予測合焦評価値EEと予測合焦レンズ位置EPとを下記式(7),(8)によって算出する(ステップS1730,S1740)。これらの式では、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値とフォーカスレンズの位置がそのまま予測値となる。以上で説明した処理によって、遠方向予測値算出処理は終了する。
【0068】
EE=PEAK ・・・(7)
EP=POS ・・・(8)
【0069】
図10は、上述した合焦予測値算出処理のステップS1640で実行される近方向予測値算出処理の詳細なフローチャートである。この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、まず、ウォブリング判定方向が、近方向か遠方向かを判断する(ステップS1800)。この結果、近方向であると判断した場合には、これから移動させるフォーカスレンズ150の方向と当初の移動方向とが同一の方向となるため、マイクロコンピュータ400は、予測合焦評価値EEと予測合焦レンズ位置EPとを上記式(7),(8)によって算出する(ステップS1810,S1820)。上述したように、これらの式では、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値とフォーカスレンズの位置がそのまま予測値となる。
【0070】
これに対して、ウォブリング判定方向が遠方向であると判断した場合には、当初の移動方向からフォーカスレンズ150を反転して移動させることになる。この場合、フォーカスレンズ150の移動機構のバックラッシュによって移動誤差が生じたり、レンズの傾き等が変化する場合があるので、マイクロコンピュータ400は、下記式(9),(10)によって予測合焦評価値EEと予測合焦レンズ位置EPとを算出する(ステップS1830,1840)。以上で説明した処理によって、近方向予測値算出処理は終了する。
【0071】
EE=PEAK*(Sn/Sf) ・・・(9)
EP=POS+BL ・・・(10)
【0072】
なお、上記式(9)では、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値のピーク値(PEAK)に、工場出荷時の補正値算出処理時に求めた遠方向移動時のAF評価値のピーク値Sfに対する近方向移動時のAF評価値のピーク値Snの比を積算して、予測合焦評価値EEを求めている。また、上記式(6)では、前回の山登り動作処理において検出されたピーク時のフォーカスレンズ150の位置に、初期化処理時に求めたバックラッシュ補正値BLを加えることで予測合焦レンズ位置EPを求めている。このような演算を行うことで、次回の山登り動作処理において検出されるAF評価値のピーク値とフォーカスレンズ150のピーク位置とを正確に予測することができる。
【0073】
(D−3)合焦値比較処理:
図11は、上述したオートフォーカス処理(図6)のステップS1440で実行される合焦値比較処理の詳細なフローチャートである。この処理は、上述した山登り動作処理(図7)によって取得されたAF評価値等を、上述した合焦予測値算出処理(図8〜10)によって算出した予測値と比較するための処理である。
【0074】
この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在の合焦検出回数が、2回以上であるかを判断する(ステップS1900)。当該合焦値比較処理の実行前には、図6に示すように、必ず山登り動作処理が実行されるので、合焦検出回数は最低1回となる。しかし、合焦検出回数が1回の場合には、図6,8を参照すると分かるように、未だ、予測値の算出が行われていない。そのため、合焦検出回数が2回以上ではない場合、すなわち、合焦検出回数が1回の場合には(ステップS1900:No)、当該合焦値比較処理を終了し、処理を図6のオートフォーカス処理に戻す。
【0075】
これに対して、合焦検出回数が2回以上であれば(ステップS1900:Yes)、予測値との比較が可能となるため、マイクロコンピュータ400は、合焦予測値算出処理によって予め算出した予測合焦評価値EEと、山登り動作処理において検出したAF評価値のピーク値とを比較するとともに、合焦予測値算出処理によって予め算出した予測合焦レンズ位置EPと、山登り動作処理において検出したピーク時のフォーカスレンズ150の位置とを比較する(ステップS1910)。これらの比較によって、検出値と予測値との差が所定の範囲に収まらなければ、両者は一致しないと判断し(ステップS1920:No)、合焦検出回数を「1」に再設定する(ステップS1930)。つまり、予測値と検出値(実測値)とが一致しなければ、被写体の位置に変化があったと考えることができるので、山登り動作処理(図7)のステップS1540でインクリメントした合焦検出回数を「1」に戻し、再度、オートフォーカス処理をやり直すのである。
【0076】
一方、上記ステップS1910の比較において、検出値と予測値との差が所定の範囲に収まれば、両者は一致すると判断し(ステップS1920:Yes)、当該合焦値比較処理を終了する。この場合には、合焦検出回数は、山登り動作処理(図7)のステップS1540でインクリメントされたままとなる。この場合には、予測値と検出値とが一致し、被写体の位置に変化が無いと考えられるからである。
【0077】
以上で説明した合焦値比較処理が終了すると、マイクロコンピュータ400は、処理を図6のオートフォーカス処理に戻す。そして、上述したように、合焦検出回数が所定値に達するかを判断する。所定値に達すれば、合焦状態が安定したと判断できるため、山登り動作処理で検出したAF評価値のピーク時のフォーカスレンズ150の位置にフォーカスレンズ150を移動させ、オートフォーカス処理は終了する。
【0078】
以上で説明した本実施例のビデオカメラ10によれば、フォーカスレンズ150とこれを移動させる機構部とのバックラッシュだけではなく、フォーカスレンズ150の移動方向に応じて変化するAF評価値の増減をも補正しつつ自動合焦を行うことが可能になる。そのため、例えば、移動方向に応じてフォーカスレンズ150の中心軸がずれたり、傾きが変化したりしたとしても、これらの機構的ながたつきを十分に考慮し、正確に合焦位置の調整することができる。
【0079】
また、本実施例では、ビデオカメラ10の工場出荷時において、バックラッシュ等を補正するためのパラメータを算出し、これをフラッシュメモリ600に記録するものとした。従って、レンズユニット100内の機構的ながたつきがビデオカメラ10の個体毎に異なっていた場合でも、それぞれ固有のパラメータに基づき、合焦位置の調整を行うことが可能になる。
【0080】
更に、本実施例では、工場出荷時だけではなく、ビデオカメラ10の初期化処理においても補正値を求め、この補正値と工場出荷時に求めた補正値とを合わせて最終的なバックラッシュ補正値を求める。従って、経年変化に伴うがたつきの発生をも考慮して合焦位置を調整することができ、この結果、より精度の高い自動合焦を実現することが可能になる。
【0081】
また、本実施例では、バックラッシュ等を補正するためのパラメータを初期化処理時に予め算出しておくため、オートフォーカス時に補正値を算出する必要がない。そのため、オートフォーカスに要する時間を短縮することが可能になる。
【0082】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、本実施例では、ビデオカメラ10のオートフォーカス動作について説明したが、スチルカメラのオートフォーカス時にも本実施例の制御方法を適用することができる。
【0083】
また、上記実施例では、合焦予測値算出処理において予測値を求める際にAF評価値の補正やバックラッシュの補正を行うものとした。しかし、予測値の算出時に補正を行うのではなく、実際に検出したAF評価値を補正することも可能である。この場合、合焦予測値算出処理では、レンズの移動方向によらず、予測値は前回の山登り動作処理時に取得したAF評価値およびフォーカスレンズ150の位置となり、山登り動作処理時に取得するAF評価値およびフォーカスレンズ150の位置をレンズの移動方向に応じて補正する。このような制御によっても、実施例と同様に正確に合焦位置の調整を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】ビデオカメラ10の概略構成を示す説明図である。
【図2】補正値算出処理のフローチャートである。
【図3】ピーク及び原点検出処理の詳細なフローチャートである。
【図4】AF評価値のピーク位置のずれとピーク値の変化を例示する説明図である。
【図5】初期化処理のフローチャートである。
【図6】オートフォーカス処理のフローチャートである。
【図7】山登り動作処理の詳細なフローチャートである。
【図8】合焦予測値算出処理の詳細なフローチャートである。
【図9】遠方向予測値算出処理の詳細なフローチャートである。
【図10】近方向予測値算出処理の詳細なフローチャートである。
【図11】合焦値比較処理の詳細なフローチャートである。
【図12】オートフォーカスの制御方法の一般例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
10...ビデオカメラ
100...レンズユニット
110...第1レンズ
120...ズームレンズ
130...アイリス機構
140...第3レンズ
150...フォーカスレンズ
170...第1原点センサ
180...第2原点センサ
200...CCD
310...AGC回路
320...画像処理DSP
330...AF回路
400...マイクロコンピュータ
510...ズームモータ
520...アイリスモータ
530...フォーカスモータ
550...ズームドライバ
560...アイリスドライバ
570...フォーカスドライバ
600...フラッシュメモリ
800...出力端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的にレンズの焦点を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスチルカメラやビデオカメラは、自動的に焦点を調整するいわゆるオートフォーカス機能を備えるものが多い。オートフォーカスの制御方法としては、例えば、図12に示すように、撮影した画像の輝度値の高周波成分から算出される評価値が最大の値となるようにフォーカスレンズをレンズユニット内で移動させる方法がある(下記特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−87377号公報
【特許文献2】特開平1−125065号公報
【0004】
一般的に、レンズをレンズユニット内に移動させる移動機構は、リードスクリューを備えるステッピングモータや、レンズを保持するレンズ枠、光軸方向へのレンズ枠の移動をガイドするガイドバー等によって構成されている。レンズ枠には、モータの動力をレンズ枠に伝えるためのラックが設けられており、このラックは、モータのリードスクリューに係合している。従って、モータが駆動すると、リードスクリューが回転し、その回転力が、ラックによってレンズ枠の光軸方向の推進力へと変換される。
【0005】
こうしたレンズユニットでは、リードスクリューとレンズ枠との係合部におけるバックラッシュにより、レンズの移動方向に応じて、その移動量に誤差が生じる場合がある。そのため、下記特許文献3に記載の技術では、レンズの移動方向を反転させる際に、レンズの移動量に付加移動量を加算することで、このような誤差の解消を図っている。
【0006】
【特許文献3】特開平8−265620号公報
【0007】
しかし、レンズの移動方向を反転させる際には、移動量に誤差が生じるだけではなく、レンズの光軸が中心軸からずれる現象やレンズの傾きが変動する現象が発生する場合があり、上述した従来の技術ではこのような変動に対処することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなレンズユニット内の機構的ながたつきに伴う問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、自動的にレンズの焦点を調整する技術において、より精度の高い合焦動作を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を踏まえ、本発明を焦点調整装置として次のように構成した。すなわち、
光軸方向にレンズを移動させて焦点を調整する焦点調整装置であって、
前記レンズを介して撮影した像を解析して、前記レンズの合焦状態を表す評価値を求める評価部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整するのに先立って、所定の被写体を撮影しつつ前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ求められた前記評価値のピーク値の相違に基づき、前記評価値を補正する評価補正値を求める補正値算出部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整する際に、前記レンズの移動方向に応じて、前記評価値を前記評価補正値に基づき補正し、該補正した評価値に基づき前記レンズの合焦する位置を判断する合焦位置判断部と、
前記判断された合焦位置に前記レンズを移動させて該レンズを合焦させる合焦制御部と
を備えることを要旨とする。
【0010】
本発明の焦点調整装置によれば、レンズの移動方向に応じて変化する評価値のピーク値から評価補正値を求め、この補正値に基づきレンズの合焦位置を判断することができる。従って、レンズの移動方向に応じてレンズの光軸が中心からずれたり、レンズが傾いたとしても、評価値を補正しながら正確にレンズを被写体に合焦させることが可能になる。なお、評価部によって求める評価値は、レンズを介して撮影した像の輝度値やRGB値の高周波成分に基づき求めることができる。
【0011】
上記構成の焦点調整装置において、
前記補正値算出部は、更に、前記レンズの往動時において前記評価値がピーク値となる前記レンズの位置と、前記レンズの復動時において前記評価値がピーク値となる前記レンズの位置とのずれに基づき前記合焦位置を補正する合焦位置補正値を求め、
前記合焦位置判断部は、前記レンズの移動方向に応じて前記合焦位置補正値に基づき前記レンズの位置を補正し、該補正したレンズの位置と、前記補正した評価値とに基づき前記レンズが合焦する位置を判断するものとしてもよい。
【0012】
このような構成であれば、レンズの移動方向に応じて、評価値を補正するだけではなく、レンズの位置をも補正しつつレンズの合焦位置を判断することができる。そのため、より正確にレンズを被写体に合焦させることが可能になる。
【0013】
上記構成の焦点調整装置において、
更に、前記レンズが、予め定めた基準の位置である原点に移動したことを検出する原点検出部と、
前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ検出された前記原点の位置のずれに基づき、前記原点の位置を補正する原点位置補正値を求める原点位置補正値算出部と、
当該焦点調整装置の工場出荷時と、工場出荷後の電源投入時とに、それぞれ前記原点位置補正値算出部により前記原点位置補正値を求め、該原点位置補正値の変化分を前記合焦位置補正値に反映させる合焦位置補正値修正部とを備えるものとしてもよい。
【0014】
このような構成であれば、工場出荷時後に発生する経年変化に伴うレンズの原点の位置の変化を合焦位置の判断に反映させることができる。この結果、より正確にレンズを被写体に合焦させることが可能になる。
【0015】
上記構成の焦点調整装置において、
前記合焦位置判断部は、前記評価値のピーク値を一旦検出した後に、該ピーク値を中心として前記レンズを往動および復動させ、該ピーク値が変動しない回数が所定の回数に達した場合に、該変動しないピーク値における前記レンズの位置を前記合焦位置として判断するものとしてもよい。
【0016】
このような構成であれば、ピーク値が変動しない回数が所定の回数に達した場合に合焦位置であると判断するので、被写体の位置や形態が変動して合焦状態が不安定な状態で合焦動作を行うことがない。そのため、より正確にレンズを被写体に合焦させることが可能になる。
【0017】
上記構成の焦点調整装置において、前記合焦位置判断部は、
前回の移動方向への移動時に判断された前記合焦位置における前記評価値のピーク値と前記評価補正値とに基づき、次回の移動方向への移動時において判断される前記合焦位置における前記評価値のピーク値の予測値を該移動方向に応じて算出する予測値算出部と、
前記次回の移動方向への移動時において得られた前記評価値のピーク値が、前記予測値と一致する場合に、前記ピーク値が変動しないと判断する変動判断部とを備えるものとしてもよい。
【0018】
このような構成であれば、次回の移動方向へのレンズの移動時において得られる評価値のピーク値を、前回の移動方向への移動時に得られた評価値のピーク値と評価補正値とに基づき予測し、この予測値に基づきレンズが合焦したかを判断することができる。そのため、正確にレンズが合焦する位置を判断することが可能になる。
【0019】
なお、本発明は、上述した焦点調整装置としての構成のほか、この焦点調整装置を備えるスチルカメラやビデオカメラ等の撮影装置や、自動合焦方法としても構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、上述した本発明の作用・効果を一層明らかにするため、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.ビデオカメラの構成:
B.工場出荷時の補正値算出処理:
C.電源投入時の初期化処理:
D.オートフォーカス処理:
(D−1)山登り動作処理:
(D−2)合焦予測値算出処理:
(D−3)合焦値比較処理:
【0021】
A.ビデオカメラの構成:
図1は、本発明の実施例としてのビデオカメラ10の概略構成を示す説明図である。図示するように、本実施例のビデオカメラ10は、レンズユニット100と、CCD200と、AGC回路310と、画像処理DSP(Digital Signal Processor)320と、AF回路330と、マイクロコンピュータ400と、フラッシュメモリ600とを備えている。
【0022】
レンズユニット100は、被写体側の最前面から順に、ユニット内に固定された第1レンズ110と、光軸方向に移動して変倍動作を行うズームレンズ120と、ユニット内を透過する光量を調整するアイリス機構130と、ユニット内に固定された第3レンズ140と、光軸方向に移動して焦点位置を調整するフォーカスレンズ150とを備えている。以下の説明では、近接した被写体に近づくようにピントが合っていく方向を「近方向」、無限遠に遠ざかる方向を「遠方向」と呼ぶ。本実施例のレンズユニット100では、図1に示すように、フォーカスレンズ150の移動方向が被写体側のときが「近方向」で、CCD200側のときが「遠方向」であるものとする。また、インナーフォーカス式のレンズユニットにおいては、ズームレンズのことをバリエータレンズと、フォーカスレンズのことをコンペンセータレンズと呼ぶ場合がある。
【0023】
ズームレンズ120には、ズームレンズ120を光軸方向に往動あるいは復動させるリードスクリューを備えたズームモータ510が接続されている。ズームモータ510はステッピングモータであり、当該ズームモータ510の駆動を行うズームドライバ550を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。従って、ズームレンズ120は、マイクロコンピュータ400から指定されたステップ数に応じて、レンズユニット100内を光軸方向に移動し、変倍動作を行うことができる。
【0024】
フォーカスレンズ150には、フォーカスレンズ150を光軸方向に往動あるいは復動させるリードスクリューを備えたフォーカスモータ530が接続されている。フォーカスモータ530はステッピングモータであり、当該フォーカスモータ530の駆動を行うフォーカスドライバ570を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。従って、フォーカスレンズ150は、マイクロコンピュータ400から指定されたステップ数に応じて、レンズユニット100内を光軸方向に移動し、焦点位置を調整することができる。
【0025】
アイリス機構130には、当該アイリス機構130の絞りを調整するアイリスモータ520が接続されている。アイリスモータ520はガルバノメータであり、当該アイリスモータ520の駆動を行うアイリスドライバ560を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。従って、アイリス機構130は、マイクロコンピュータ400からの指示に応じて、レンズユニット100を透過する光量を調整することができる。なお、本実施例では、ズームモータ510やフォーカスモータ530はステッピングモータであるとし、アイリスモータ520はガルバノメータであるとしたが、直流モータなど他の形式のモータを採用するものとしてもよい。
【0026】
上述したように、ズームレンズ120とフォーカスレンズ150とは、レンズユニット100内を光軸方向に移動する。そのため、レンズユニット100は、これらのレンズが予め定めた基準位置である原点に移動したかを検出するために、第1原点センサ170と、第2原点センサ180とを備えている。第1原点センサ170と第2原点センサ180とは、フォトインタラプタによって構成されており、マイクロコンピュータ400に接続されている。本実施例では、各レンズが、対応する原点センサ上を近方向から遠方向に向かって通過すると、出力される信号が、「1」から「0」に変化し、遠方向から近方向に向かって通過すると、出力される信号が、「0」から「1」に変化するものとする。従って、マイクロコンピュータ400は、この信号の変化を検出することで、レンズが原点に移動したかを判断することができる。
【0027】
CCD200は、レンズユニット100を透過した光を受光し、この光を電気信号に変換するイメージセンサである。
【0028】
AGC回路310は、CCD200から出力される電気信号を入力し、この電気信号の出力を適切な出力に増幅する回路である。
【0029】
画像処理DSP320は、AGC回路310から電気信号を入力し、この信号に対してA/D変換を施すことで画像データを生成する。画像処理DSP320は、こうして生成された画像データを、コンポジットビデオ信号やSビデオ信号に変換し、これを出力端子800を介して、テレビモニタや録画装置等の外部機器に出力する。更に、画像処理DSP320は、A/D変換によって生成した画像データから、輝度信号を抽出し、これをAF回路330に出力する機能を備えている。画像処理DSP320は、他にも、画像データに対してガンマ補正やアパーチャ補正、ホワイトバランスの調整など、種々の画像処理を施す機能を備えている。
【0030】
AF回路330は、ハイパスフィルタや絶対値回路、ゲート回路、検波回路からなる回路である。AF回路330は、画像処理DSP320から輝度信号を入力すると、この輝度信号からハイパスフィルタで高周波成分を抽出し、絶対値回路によって、この高周波成分を絶対値化する。そして、ゲート回路によって、絶対値化された高周波成分のうち、所定の測距枠内の高周波成分だけを取り出し、この高周波成分から検波回路によってピーク検波することでAF評価値を生成する。AF回路330は、こうして、AF評価値を生成すると、このAF評価値をマイクロコンピュータ400に出力する。AF評価値は、フォーカスレンズ150の合焦状態が良好になるほど高い値を示す。画像処理DSP320およびAF回路330は、本願の「評価部」に対応するものである。
【0031】
マイクロコンピュータ400は、AF回路330からAF評価値を入力し、この評価値に応じて、フォーカスレンズ150の合焦位置を調整する機能を備えている。マイクロコンピュータ400には、フラッシュメモリ600が接続されている。このフラッシュメモリ600には、後述する補正値算出処理においてビデオカメラ10の工場出荷時に算出される種々の補正値が記録される。マイクロコンピュータ400は、本願の「合焦位置判断部」および「合焦制御部」に対応するものである。
【0032】
B.工場出荷時の補正値算出処理:
図2は、ビデオカメラ10の工場出荷時の検査工程においてマイクロコンピュータ400が実行する補正値算出処理のフローチャートである。この処理は、後述するオートフォーカス処理で用いられる種々の補正値をビデオカメラ10の個体毎に予め算出しておくための処理である。なお、この処理は、ビデオカメラ10と所定の被写体とをそれぞれ固定した位置に設置した状況で行われるものとする。
【0033】
当該補正値算出処理が実行されると、まず、マイクロコンピュータ400は、フォーカスドライバ570に指令を出し、フォーカスモータ530を駆動してフォーカスレンズ150を近方向の端部に移動させる(ステップS1000)。そして、このフォーカスレンズ150の移動方向を遠方向に設定する(ステップS1010)。マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150の移動方向を表すフラグを用意し、このフラグに「1」をセットすることで移動方向を遠方向に、「0」をセットすることで移動方向を近方向に設定する。マイクロコンピュータ400は、後述する処理において、このフラグを参照することで、フォーカスレンズ150を移動させるべき方向を容易に判別することができる。
【0034】
フォーカスレンズ150の移動方向を遠方向に設定すると、マイクロコンピュータ400は、このフォーカスレンズ150を遠方向に移動させつつ、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点位置の検出を行う処理を実行する(ステップS1020)。以下、かかる処理を「ピーク及び原点検出処理」という。
【0035】
図3は、ピーク及び原点検出処理の詳細なフローチャートである。この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置において、特開平1−125065号公報等に記載の公知の山登り制御を行い、AF回路330から入力したAF評価値のピークを検出する(ステップS1100)。そして、ピークが検出された場合には(ステップS1100:Yes)、そのピーク時のAF評価値をAF回路330から取得するとともに、その時のフォーカスレンズ150の位置を取得する(ステップS1110)。ピークが検出されない場合には(ステップS1100:No)、このステップS1110の処理をスキップする。フォーカスレンズ150の位置は、マイクロコンピュータ400が、フォーカスモータ530に対して指令する移動量(ステップ数)の累積から求めることができる。
【0036】
次に、マイクロコンピュータ400は、第2原点センサ180を用いて、フォーカスレンズ150が原点に移動したかを検出する(ステップS1120)。原点に移動したことを検出すると(ステップS1120:Yes)、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置を取得する(ステップS1130)。原点に移動したことが検出されなければ、このステップS1130の処理はスキップする。
【0037】
マイクロコンピュータ400は、以上の処理によって、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点への移動が検出されたかどうかを判断し(ステップS1140)、少なくともいずれか一方が検出されていなければ(ステップS1140:No)、フォーカスレンズ150を、1ステップ分、現在の移動方向に移動させる(ステップS1150)。そして、処理を上記ステップS1100に戻し、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点への移動の両者が検出されるまで、ステップS1100からステップS1130までの処理を繰り返す。これに対して、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点への移動を検出したと判断すれば(ステップS1140:Yes)、当該ピーク及び原点検出処理を終了し、処理を補正値算出処理(図2)のステップS1030に進める。
【0038】
ここで、説明を図2に戻す。上述したピーク及び原点検出処理によって、AF評価値のピークとフォーカスレンズ150の原点への移動を検出すると、マイクロコンピュータ400は、上述した処理によって取得された各パラメータ、具体的には、(1)フォーカスレンズ150を近方向から遠方向に移動させた際に取得されたAF評価値のピーク値Sfと、(2)ピーク時のフォーカスレンズ150の位置PSf、および、(3)フォーカスレンズ150が原点に移動した際のフォーカスレンズ150の位置ORGfを、マイクロコンピュータ400内のRAMに記憶する(ステップS1030)。
【0039】
次に、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150を遠方向の端部に移動させ(ステップS1040)、フォーカスレンズ150の移動方向を近方向に設定する(ステップS1050)。そして、図3に示した処理と同様の処理を実行し(ステップS1060)、かかる処理によって取得した各パラメータ、具体的には、(1)フォーカスレンズ150を遠方向から近方向に移動させた際に取得されたAF評価値のピーク値Snと、(2)ピーク時のフォーカスレンズ150の位置PSn、および、(3)フォーカスレンズ150が原点に移動した際のフォーカスレンズ150の位置ORGnを、マイクロコンピュータ400内のRAMに記憶する(ステップS1070)。
【0040】
以上の処理によって、近方向から遠方向、および、遠方向から近方向にフォーカスレンズ150を移動させてそれぞれの方向についてAF評価値等のパラメータを記憶すると、マイクロコンピュータ400は、これらのパラメータに基づき、フォーカスレンズ150の移動方向の反転時に発生するAF評価値のピーク位置のずれ量BSと、原点位置のずれ量BIとを下記式(1),(2)によって算出する(ステップS1080)。そして、これらの算出された値と、遠方向移動時のAF評価値のピーク値Sfと、近方向移動時のAF評価値のピーク値Snとを補正値としてフラッシュメモリ600に書き込み(ステップS1090)、当該補正値算出処理を終了する。
【0041】
BS=PSn−PSf ・・・(1)
BI=ORGn−ORGf ・・・(2)
【0042】
図4は、AF評価値のピーク位置のずれとピーク値の変化を例示する説明図である。図の横軸はフォーカスレンズ150の位置を示し、縦軸はAF評価値を示す。図示するように、フォーカスレンズ150を遠方向から近方向へ移動させた場合と、近方向から遠方向に移動させた場合とでは、フォーカスレンズ150を移動させる機構部のバックラッシュに起因してAF評価値がピークとなるレンズの位置(PSf,PSn)に若干ずれが生じる場合がある。また、フォーカスレンズ150の移動方向に応じて、フォーカスレンズ150の光軸が中心からずれたり、レンズに傾きが生じたりする場合には、AF評価値のピーク値(Sf,Sn)も変動する。これらのパラメータの変化は、ビデオカメラ10の個体によって異なるものである。上述した補正値算出処理では、この個体毎のパラメータを工場出荷時に予め補正値としてフラッシュメモリ600に予め記録しておき、後述するオートフォーカス処理時に、この補正値を用いることで、正確に合焦位置を調整することが可能になる。
【0043】
C.電源投入時の初期化処理:
図5は、ビデオカメラ10が出荷された後に、ビデオカメラ10の電源をユーザが投入するたびにマイクロコンピュータ400によって実行される初期化処理のフローチャートである。
【0044】
この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置を取得し、取得した位置が、原点に対して遠方向側にあるか近方向側にあるかを判断する(ステップS1200)。上述したように、第2原点センサ180は、「1」か「0」の2つの値をとるに過ぎないため、フォーカスレンズ150は、必ず、遠方向か近方向のいずれかに位置するものとして判断されることになる。
【0045】
上記ステップS1200において、現在のフォーカスレンズ150の位置が原点に対して近方向側にあると判断した場合には、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150の移動方向を遠方向に設定する(ステップS1210)。一方、現在のフォーカスレンズ150の位置が原点に対して遠方向側にあると判断した場合には、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150の移動方向を近方向に設定する(ステップS1220)。
【0046】
次に、マイクロコンピュータ400は、第2原点センサ180を用いて、フォーカスレンズ150が原点に移動したかを検出する(ステップS1230)。この結果、原点への移動を検出できなければ(ステップS1230:No)、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150を、上記ステップS1210もしくはステップS1220で設定した方向に1ステップ分移動させる(ステップS1240)。そして、再度、上記ステップS1230の処理を行い、原点に移動したかを検出する。
【0047】
上記ステップS1230において、フォーカスレンズ150の原点への移動を検出すれば(ステップS1230:Yes)、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置Rn(Rf)を取得する(ステップS1250)。そして、フォーカスレンズを現在の移動方向に所定ステップ数、移動させ、その後、フォーカスレンズの移動方向を反転させる(ステップS1260)。なお、上記ステップS1250で取得されるフォーカスレンズ150の位置は、近方向移動時に検出された場合には「位置Rn」と、遠方向移動時に検出された場合には「位置Rf」と表記するものとする。
【0048】
次に、マイクロコンピュータ400は、再度、フォーカスレンズ150が原点に移動したかを検出する(ステップS1270)。この結果、原点への移動を検出できなければ(ステップS1270:No)、フォーカスレンズ150を、上記ステップS1260で反転させた移動方向に1ステップ分移動させる(ステップS1280)。そして、再度、上記ステップS1270の処理を行い、原点に移動したかを検出する。
【0049】
上記ステップS1270において、原点に移動したことを検出すれば(ステップS1270:Yes)、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置Rf(Rn)を取得する(ステップS1290)。そして、工場出荷時の補正値算出処理によってフラッシュメモリ600に書き込まれたパラメータBS,BIを読み込み、これらのパラメータを用いて、移動方向の反転に伴ってフォーカスレンズ150の位置に生じるずれを補正する値BL(以下、「バックラッシュ補正値BL」という)を、以下の式(3),(4)によって算出する(ステップS1300)。マイクロコンピュータ400は、こうしてバックラッシュ補正値BLを算出すると、この値をマイクロコンピュータ400内のRAMに記憶し(ステップS1310)、当該初期化処理を終了する。
【0050】
BP=Rn−Rf ・・・(3)
BL=BS+(BP−BI) ・・・(4)
【0051】
上記式(3)では、ビデオカメラ10の電源投入時におけるフォーカスレンズ150の原点位置のずれ量BPが算出される。そして、このずれ量BPから、工場出荷時の原点位置のずれ量BIを差し引いたものが、経年変化による原点位置の変化量となる。従って、この経年変化による変化量を、工場出荷時に検出したAF評価値のピーク位置のずれ量BSに加えることで、現在のレンズユニット100の状態に適したバックラッシュ補正値BLが算出されることになる。
【0052】
D.オートフォーカス処理:
図6は、上述した初期化処理が終了した後、マイクロコンピュータ400が被写体を撮影する際に実行するオートフォーカス処理のフローチャートである。
【0053】
この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150をウォブリング動作させて、AF評価値の山登り方向を検出し、検出された方向をフォーカスレンズ150の移動方向に設定する(ステップS1400)。ウォブリング動作とは、フォーカスレンズ150を近方向および遠方向に一定の振幅で微振動させることで、そのAF評価値の増減から、AF評価値の増加する方向(山登り方向)を検出する動作のことをいう。
【0054】
次に、マイクロコンピュータ400は、以下で説明するステップS1420〜S1440の処理で、合焦であると検出した回数(以下、「合焦検出回数」という)、が所定の回数(例えば、5回)に達したかを判断する(ステップS1410)。この判断の結果、合焦検出回数が所定値に達していなければ(ステップS1410:No)、合焦状態が不安定であると判断できるため、後述する合焦予測値算出処理(ステップS1420)、山登り動作処理(ステップS1430)、合焦値比較処理(ステップS1430)を実行し、引き続き合焦か否かの判定を行う。一方、合焦検出回数が所定値に達したと判断すれば(ステップS1410:Yes)、安定して合焦していると判断できるため、マイクロコンピュータ400は、合焦であると判定された位置にフォーカスレンズ150を移動させて(ステップS1450)、当該オートフォーカス処理を終了する。
【0055】
ここで、説明の便宜上、ステップS1420の合焦予測値算出処理の説明の前に、ステップS1430の山登り動作処理について説明する。
【0056】
(D−1)山登り動作処理:
図7は、上述したオートフォーカス処理のステップS1430で実行される山登り動作処理の詳細なフローチャートである。この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在のフォーカスレンズ150の位置におけるAF評価値を取得し(ステップS1500)、取得したAF評価値が、これまで取得したAF評価値よりも大きければ、その最大値を更新する(ステップS1510)。
【0057】
次に、マイクロコンピュータ400は、ステップS1500で取得したAF評価値が、ピークの値を通過したかを判断する(ステップS1520)。この処理では、ステップS1500で取得したAF評価値が、ステップS1510で更新された最大値を初めて下回った場合に、ピークを通過したと判断することができる。この判断の結果、AF評価値がそのピークを通過したと判断した場合には(ステップS1520:Yes)、現在のフォーカスレンズ150の位置が合焦位置であると判断できるので、合焦検出回数をインクリメントし(ステップS1530)、現在のフォーカスレンズ150の位置とAF評価値とを取得する(ステップS1540)。そして、当該山登り動作処理を終了する。
【0058】
上記ステップS1520において、まだピークを通過していないと判断した場合には(ステップS1520:No)、フォーカスレンズ150を、現在の移動方向に1ステップ分移動させ(ステップS1550)、処理をステップS1500に戻す。こうすることで、フォーカスレンズ150を少しずつ移動させながら、そのピークを検出することができる。
【0059】
(D−2)合焦予測値算出処理:
図8は、オートフォーカス処理のステップS1420で実行される合焦予測値算出処理の詳細なフローチャートである。この処理は、当該合焦予測値算出処理に続いて実行される山登り動作処理において検出がなされるAF評価値のピーク値とピーク時のフォーカスレンズ150のレンズの位置を予測するための処理である。
【0060】
この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在の合焦検出回数が1回以上であるかを判断する(ステップS1600)。合焦検出回数が1回未満、すなわち、ゼロであると判断すれば(ステップS1600:No)、未だ、山登り動作処理を一度も実行していないことになり、予測値を算出する元となるAF評価値等を取得することができないため、当該合焦予測値算出処理を終了して、上述した山登り動作処理に処理を移行する。
【0061】
これに対して、現在の合焦検出回数が1回以上であれば(ステップS1600:Yes)、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150の移動方向を反転させる(ステップS1610)。こうすることで、次回の山登り動作処理では、一旦通過したピークを、再び通過する方向にフォーカスレンズ150が移動されることになる。なお、このステップS1610では、フォーカスレンズ150の移動方向を反転させる前に、反転前の元の方向に所定のステップ数、フォーカスレンズ150を移動させるものとしてもよい。こうすることで、確実にピークの値を通過させてから、フォーカスレンズ150の移動方向を反転させることができる。
【0062】
フォーカスレンズ150の移動方向を反転させると、マイクロコンピュータ400は、反転後のフォーカスレンズの移動方向が近方向であるか遠方向であるかを判断する(ステップS1620)。そして、移動方向が遠方向であれば、後述する遠方向予測値算出処理を実行し(ステップS1630)、近方向であれば、後述する近方向予測値算出処理を実行する(ステップS1640)。マイクロコンピュータ400は、これらのうち、いずれかの処理を完了すると、当該合焦予測値算出処理を終了する。
【0063】
図9は、上述した合焦予測値算出処理のステップS1630で実行される遠方向予測値算出処理の詳細なフローチャートである。この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、オートフォーカス処理のステップS1400においてフォーカスレンズ150をウォブリングさせた結果検出された山登り方向(以下、「ウォブリング判定方向」という)が、近方向か遠方向かを判断する(ステップS1700)。
【0064】
ウォブリング判定方向が近方向であった場合には、これから移動させるフォーカスレンズ150の方向が遠方向であるため、当初の移動方向からフォーカスレンズ150を反転して移動させることになる。この場合、フォーカスレンズ150の移動機構のバックラッシュによって移動誤差が生じたり、レンズの傾き等が変化する場合があるので、マイクロコンピュータ400は、次回の山登り動作処理において検出されるAF評価値のピークの値の予測値(以下、「予測合焦評価値EE」という)と、フォーカスレンズ150のピーク位置の予測値(以下、「予測合焦レンズ位置EP」という)とを、フラッシュメモリ600に書き込まれたパラメータSn,Sf、および、初期化処理において算出したバックラッシュ補正値BLを用いて、下記式(5),(6)によって算出する(ステップS1710,1720)。
【0065】
EE=PEAK*(Sf/Sn) ・・・(5)
EP=POS−BL ・・・(6)
【0066】
上記式において、「PEAK」とは、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値のピーク値であり、「POS」とは、前回の山登り動作処理において検出されたピーク時のフォーカスレンズ150の位置である。上記式(5)では、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値のピーク値(PEAK)に、工場出荷時の補正値算出処理時に求めた近方向移動時のAF評価値のピーク値Snに対する遠方向移動時のAF評価値のピーク値Sfの比を積算して、予測合焦評価値EEを求めている。また、上記式(6)では、前回の山登り動作処理において検出されたピーク時のフォーカスレンズ150の位置から、初期化処理時に求めたバックラッシュ補正値BLを差し引いて、予測合焦レンズ位置EPを求めている。このような演算を行うことで、次回の山登り動作処理において検出されるAF評価値のピーク値とフォーカスレンズ150のピーク位置とを正確に予測することができる。
【0067】
上記ステップS170において、ウォブリング判定方向が遠方向であると判断した場合には、これから移動させるフォーカスレンズ150の方向が遠方向で、当初の山登り方向も遠方向であることになる。つまり、当初の移動方向と同一の方向にフォーカスレンズ150を移動させることになるので、フォーカスレンズ150を移動させる際にバックラッシュによって移動誤差が生じたり、レンズの傾きが変化することはない。そこで、マイクロコンピュータ400は、予測合焦評価値EEと予測合焦レンズ位置EPとを下記式(7),(8)によって算出する(ステップS1730,S1740)。これらの式では、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値とフォーカスレンズの位置がそのまま予測値となる。以上で説明した処理によって、遠方向予測値算出処理は終了する。
【0068】
EE=PEAK ・・・(7)
EP=POS ・・・(8)
【0069】
図10は、上述した合焦予測値算出処理のステップS1640で実行される近方向予測値算出処理の詳細なフローチャートである。この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、まず、ウォブリング判定方向が、近方向か遠方向かを判断する(ステップS1800)。この結果、近方向であると判断した場合には、これから移動させるフォーカスレンズ150の方向と当初の移動方向とが同一の方向となるため、マイクロコンピュータ400は、予測合焦評価値EEと予測合焦レンズ位置EPとを上記式(7),(8)によって算出する(ステップS1810,S1820)。上述したように、これらの式では、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値とフォーカスレンズの位置がそのまま予測値となる。
【0070】
これに対して、ウォブリング判定方向が遠方向であると判断した場合には、当初の移動方向からフォーカスレンズ150を反転して移動させることになる。この場合、フォーカスレンズ150の移動機構のバックラッシュによって移動誤差が生じたり、レンズの傾き等が変化する場合があるので、マイクロコンピュータ400は、下記式(9),(10)によって予測合焦評価値EEと予測合焦レンズ位置EPとを算出する(ステップS1830,1840)。以上で説明した処理によって、近方向予測値算出処理は終了する。
【0071】
EE=PEAK*(Sn/Sf) ・・・(9)
EP=POS+BL ・・・(10)
【0072】
なお、上記式(9)では、前回の山登り動作処理において検出されたAF評価値のピーク値(PEAK)に、工場出荷時の補正値算出処理時に求めた遠方向移動時のAF評価値のピーク値Sfに対する近方向移動時のAF評価値のピーク値Snの比を積算して、予測合焦評価値EEを求めている。また、上記式(6)では、前回の山登り動作処理において検出されたピーク時のフォーカスレンズ150の位置に、初期化処理時に求めたバックラッシュ補正値BLを加えることで予測合焦レンズ位置EPを求めている。このような演算を行うことで、次回の山登り動作処理において検出されるAF評価値のピーク値とフォーカスレンズ150のピーク位置とを正確に予測することができる。
【0073】
(D−3)合焦値比較処理:
図11は、上述したオートフォーカス処理(図6)のステップS1440で実行される合焦値比較処理の詳細なフローチャートである。この処理は、上述した山登り動作処理(図7)によって取得されたAF評価値等を、上述した合焦予測値算出処理(図8〜10)によって算出した予測値と比較するための処理である。
【0074】
この処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、現在の合焦検出回数が、2回以上であるかを判断する(ステップS1900)。当該合焦値比較処理の実行前には、図6に示すように、必ず山登り動作処理が実行されるので、合焦検出回数は最低1回となる。しかし、合焦検出回数が1回の場合には、図6,8を参照すると分かるように、未だ、予測値の算出が行われていない。そのため、合焦検出回数が2回以上ではない場合、すなわち、合焦検出回数が1回の場合には(ステップS1900:No)、当該合焦値比較処理を終了し、処理を図6のオートフォーカス処理に戻す。
【0075】
これに対して、合焦検出回数が2回以上であれば(ステップS1900:Yes)、予測値との比較が可能となるため、マイクロコンピュータ400は、合焦予測値算出処理によって予め算出した予測合焦評価値EEと、山登り動作処理において検出したAF評価値のピーク値とを比較するとともに、合焦予測値算出処理によって予め算出した予測合焦レンズ位置EPと、山登り動作処理において検出したピーク時のフォーカスレンズ150の位置とを比較する(ステップS1910)。これらの比較によって、検出値と予測値との差が所定の範囲に収まらなければ、両者は一致しないと判断し(ステップS1920:No)、合焦検出回数を「1」に再設定する(ステップS1930)。つまり、予測値と検出値(実測値)とが一致しなければ、被写体の位置に変化があったと考えることができるので、山登り動作処理(図7)のステップS1540でインクリメントした合焦検出回数を「1」に戻し、再度、オートフォーカス処理をやり直すのである。
【0076】
一方、上記ステップS1910の比較において、検出値と予測値との差が所定の範囲に収まれば、両者は一致すると判断し(ステップS1920:Yes)、当該合焦値比較処理を終了する。この場合には、合焦検出回数は、山登り動作処理(図7)のステップS1540でインクリメントされたままとなる。この場合には、予測値と検出値とが一致し、被写体の位置に変化が無いと考えられるからである。
【0077】
以上で説明した合焦値比較処理が終了すると、マイクロコンピュータ400は、処理を図6のオートフォーカス処理に戻す。そして、上述したように、合焦検出回数が所定値に達するかを判断する。所定値に達すれば、合焦状態が安定したと判断できるため、山登り動作処理で検出したAF評価値のピーク時のフォーカスレンズ150の位置にフォーカスレンズ150を移動させ、オートフォーカス処理は終了する。
【0078】
以上で説明した本実施例のビデオカメラ10によれば、フォーカスレンズ150とこれを移動させる機構部とのバックラッシュだけではなく、フォーカスレンズ150の移動方向に応じて変化するAF評価値の増減をも補正しつつ自動合焦を行うことが可能になる。そのため、例えば、移動方向に応じてフォーカスレンズ150の中心軸がずれたり、傾きが変化したりしたとしても、これらの機構的ながたつきを十分に考慮し、正確に合焦位置の調整することができる。
【0079】
また、本実施例では、ビデオカメラ10の工場出荷時において、バックラッシュ等を補正するためのパラメータを算出し、これをフラッシュメモリ600に記録するものとした。従って、レンズユニット100内の機構的ながたつきがビデオカメラ10の個体毎に異なっていた場合でも、それぞれ固有のパラメータに基づき、合焦位置の調整を行うことが可能になる。
【0080】
更に、本実施例では、工場出荷時だけではなく、ビデオカメラ10の初期化処理においても補正値を求め、この補正値と工場出荷時に求めた補正値とを合わせて最終的なバックラッシュ補正値を求める。従って、経年変化に伴うがたつきの発生をも考慮して合焦位置を調整することができ、この結果、より精度の高い自動合焦を実現することが可能になる。
【0081】
また、本実施例では、バックラッシュ等を補正するためのパラメータを初期化処理時に予め算出しておくため、オートフォーカス時に補正値を算出する必要がない。そのため、オートフォーカスに要する時間を短縮することが可能になる。
【0082】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、本実施例では、ビデオカメラ10のオートフォーカス動作について説明したが、スチルカメラのオートフォーカス時にも本実施例の制御方法を適用することができる。
【0083】
また、上記実施例では、合焦予測値算出処理において予測値を求める際にAF評価値の補正やバックラッシュの補正を行うものとした。しかし、予測値の算出時に補正を行うのではなく、実際に検出したAF評価値を補正することも可能である。この場合、合焦予測値算出処理では、レンズの移動方向によらず、予測値は前回の山登り動作処理時に取得したAF評価値およびフォーカスレンズ150の位置となり、山登り動作処理時に取得するAF評価値およびフォーカスレンズ150の位置をレンズの移動方向に応じて補正する。このような制御によっても、実施例と同様に正確に合焦位置の調整を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】ビデオカメラ10の概略構成を示す説明図である。
【図2】補正値算出処理のフローチャートである。
【図3】ピーク及び原点検出処理の詳細なフローチャートである。
【図4】AF評価値のピーク位置のずれとピーク値の変化を例示する説明図である。
【図5】初期化処理のフローチャートである。
【図6】オートフォーカス処理のフローチャートである。
【図7】山登り動作処理の詳細なフローチャートである。
【図8】合焦予測値算出処理の詳細なフローチャートである。
【図9】遠方向予測値算出処理の詳細なフローチャートである。
【図10】近方向予測値算出処理の詳細なフローチャートである。
【図11】合焦値比較処理の詳細なフローチャートである。
【図12】オートフォーカスの制御方法の一般例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
10...ビデオカメラ
100...レンズユニット
110...第1レンズ
120...ズームレンズ
130...アイリス機構
140...第3レンズ
150...フォーカスレンズ
170...第1原点センサ
180...第2原点センサ
200...CCD
310...AGC回路
320...画像処理DSP
330...AF回路
400...マイクロコンピュータ
510...ズームモータ
520...アイリスモータ
530...フォーカスモータ
550...ズームドライバ
560...アイリスドライバ
570...フォーカスドライバ
600...フラッシュメモリ
800...出力端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向にレンズを移動させて焦点を調整する焦点調整装置であって、
前記レンズを介して撮影した像を解析して、前記レンズの合焦状態を表す評価値を求める評価部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整するのに先立って、所定の被写体を撮影しつつ前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ求められた前記評価値のピーク値の相違に基づき、前記評価値を補正する評価補正値を求める補正値算出部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整する際に、前記レンズの移動方向に応じて、前記評価値を前記評価補正値に基づき補正し、該補正した評価値に基づき前記レンズの合焦する位置を判断する合焦位置判断部と、
前記判断された合焦位置に前記レンズを移動させて該レンズを合焦させる合焦制御部と
を備える焦点調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点調整装置であって、
前記補正値算出部は、更に、前記レンズの往動時において前記評価値がピーク値となる前記レンズの位置と、前記レンズの復動時において前記評価値がピーク値となる前記レンズの位置とのずれに基づき前記合焦位置を補正する合焦位置補正値を求め、
前記合焦位置判断部は、前記レンズの移動方向に応じて前記合焦位置補正値に基づき前記レンズの位置を補正し、該補正したレンズの位置と、前記補正した評価値とに基づき前記レンズが合焦する位置を判断する
焦点調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の焦点調整装置であって、
更に、前記レンズが、予め定めた基準の位置である原点に移動したことを検出する原点検出部と、
前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ検出された前記原点の位置のずれに基づき、前記原点の位置を補正する原点位置補正値を求める原点位置補正値算出部と、
当該焦点調整装置の工場出荷時と、工場出荷後の電源投入時とに、それぞれ前記原点位置補正値算出部により前記原点位置補正値を求め、該原点位置補正値の変化分を前記合焦位置補正値に反映させる合焦位置補正値修正部と
を備える焦点調整装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の焦点調整装置であって、
前記合焦位置判断部は、前記評価値のピーク値を一旦検出した後に、該ピーク値を中心として前記レンズを往動および復動させ、該ピーク値が変動しない回数が所定の回数に達した場合に、該変動しないピーク値における前記レンズの位置を前記合焦位置として判断する
焦点調整装置。
【請求項5】
請求項4に記載の焦点調整装置であって、
前記合焦位置判断部は、
前回の移動方向への移動時に判断された前記合焦位置における前記評価値のピーク値と前記評価補正値とに基づき、次回の移動方向への移動時において判断される前記合焦位置における前記評価値のピーク値の予測値を該移動方向に応じて算出する予測値算出部と、
前記次回の移動方向への移動時において得られた前記評価値のピーク値が、前記予測値と一致する場合に、前記ピーク値が変動しないと判断する変動判断部と
を備える焦点調整装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の焦点調整装置であって、
前記評価部は、前記撮影した像の高周波成分に基づき前記評価値を求める
焦点調整装置。
【請求項7】
光軸方向にレンズを移動させて焦点を調整する撮影装置であって、
前記レンズを介して撮影した像を解析して、前記レンズの合焦状態を表す評価値を求める評価部と、
所定の被写体を撮影しつつ前記レンズを往動および復動させて、それぞれの移動方向における前記評価値のピーク値の相違に基づき前記評価値を補正する評価補正値を求める補正値算出部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整する際に、前記レンズの移動方向に応じて、前記評価値を前記評価補正値に基づき補正し、該補正した評価値に基づき前記レンズが合焦する位置を検出する合焦位置判断部と、
前記検出された合焦位置に前記レンズを移動させて該レンズを合焦させる合焦制御部と、
前記合焦させたレンズを介して得られた像を撮影する撮像部と
を備える撮影装置。
【請求項8】
光軸方向にレンズを移動させて焦点を調整する焦点調整方法であって、
前記レンズを介して撮影した像を解析して、前記レンズの合焦状態を表す評価値を求め、
前記レンズを移動させて焦点を調整するのに先立って、所定の被写体を撮影しつつ前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ求められた前記評価値のピーク値の相違に基づき、前記評価値を補正する評価補正値を求め、
前記レンズを移動させて焦点を調整する際に、前記レンズの移動方向に応じて、前記評価値を前記評価補正値に基づき補正し、該補正した評価値に基づき前記レンズの合焦する位置を判断し、
前記判断された合焦位置に前記レンズを移動させて該レンズを合焦させる
焦点調整方法。
【請求項1】
光軸方向にレンズを移動させて焦点を調整する焦点調整装置であって、
前記レンズを介して撮影した像を解析して、前記レンズの合焦状態を表す評価値を求める評価部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整するのに先立って、所定の被写体を撮影しつつ前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ求められた前記評価値のピーク値の相違に基づき、前記評価値を補正する評価補正値を求める補正値算出部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整する際に、前記レンズの移動方向に応じて、前記評価値を前記評価補正値に基づき補正し、該補正した評価値に基づき前記レンズの合焦する位置を判断する合焦位置判断部と、
前記判断された合焦位置に前記レンズを移動させて該レンズを合焦させる合焦制御部と
を備える焦点調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点調整装置であって、
前記補正値算出部は、更に、前記レンズの往動時において前記評価値がピーク値となる前記レンズの位置と、前記レンズの復動時において前記評価値がピーク値となる前記レンズの位置とのずれに基づき前記合焦位置を補正する合焦位置補正値を求め、
前記合焦位置判断部は、前記レンズの移動方向に応じて前記合焦位置補正値に基づき前記レンズの位置を補正し、該補正したレンズの位置と、前記補正した評価値とに基づき前記レンズが合焦する位置を判断する
焦点調整装置。
【請求項3】
請求項2に記載の焦点調整装置であって、
更に、前記レンズが、予め定めた基準の位置である原点に移動したことを検出する原点検出部と、
前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ検出された前記原点の位置のずれに基づき、前記原点の位置を補正する原点位置補正値を求める原点位置補正値算出部と、
当該焦点調整装置の工場出荷時と、工場出荷後の電源投入時とに、それぞれ前記原点位置補正値算出部により前記原点位置補正値を求め、該原点位置補正値の変化分を前記合焦位置補正値に反映させる合焦位置補正値修正部と
を備える焦点調整装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の焦点調整装置であって、
前記合焦位置判断部は、前記評価値のピーク値を一旦検出した後に、該ピーク値を中心として前記レンズを往動および復動させ、該ピーク値が変動しない回数が所定の回数に達した場合に、該変動しないピーク値における前記レンズの位置を前記合焦位置として判断する
焦点調整装置。
【請求項5】
請求項4に記載の焦点調整装置であって、
前記合焦位置判断部は、
前回の移動方向への移動時に判断された前記合焦位置における前記評価値のピーク値と前記評価補正値とに基づき、次回の移動方向への移動時において判断される前記合焦位置における前記評価値のピーク値の予測値を該移動方向に応じて算出する予測値算出部と、
前記次回の移動方向への移動時において得られた前記評価値のピーク値が、前記予測値と一致する場合に、前記ピーク値が変動しないと判断する変動判断部と
を備える焦点調整装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の焦点調整装置であって、
前記評価部は、前記撮影した像の高周波成分に基づき前記評価値を求める
焦点調整装置。
【請求項7】
光軸方向にレンズを移動させて焦点を調整する撮影装置であって、
前記レンズを介して撮影した像を解析して、前記レンズの合焦状態を表す評価値を求める評価部と、
所定の被写体を撮影しつつ前記レンズを往動および復動させて、それぞれの移動方向における前記評価値のピーク値の相違に基づき前記評価値を補正する評価補正値を求める補正値算出部と、
前記レンズを移動させて焦点を調整する際に、前記レンズの移動方向に応じて、前記評価値を前記評価補正値に基づき補正し、該補正した評価値に基づき前記レンズが合焦する位置を検出する合焦位置判断部と、
前記検出された合焦位置に前記レンズを移動させて該レンズを合焦させる合焦制御部と、
前記合焦させたレンズを介して得られた像を撮影する撮像部と
を備える撮影装置。
【請求項8】
光軸方向にレンズを移動させて焦点を調整する焦点調整方法であって、
前記レンズを介して撮影した像を解析して、前記レンズの合焦状態を表す評価値を求め、
前記レンズを移動させて焦点を調整するのに先立って、所定の被写体を撮影しつつ前記レンズを往動および復動させて、該往動および復動の過程においてそれぞれ求められた前記評価値のピーク値の相違に基づき、前記評価値を補正する評価補正値を求め、
前記レンズを移動させて焦点を調整する際に、前記レンズの移動方向に応じて、前記評価値を前記評価補正値に基づき補正し、該補正した評価値に基づき前記レンズの合焦する位置を判断し、
前記判断された合焦位置に前記レンズを移動させて該レンズを合焦させる
焦点調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−165141(P2008−165141A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−457(P2007−457)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】
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