説明

照射装置

【課題】光源に近い位置に照射面を設定して照度を高めつつ当該照射面で高い均斉度を実現できる照射装置を提供すること。
【解決手段】光源ユニット3と、前記光源ユニット3が基端4Aに配置され先端開口4Cに照射面が設定される補助反射ユニット4と、を備え、前記補助反射ユニット4は、多角錐台状の反射面65を有する第1反射鏡60と、前記第1反射鏡60の先端60Aに連続して前記先端開口4Cを形成する円筒状の反射面66を有する第2反射鏡61と、を備える照射装置1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射装置に係り、特に照射面での照度と均斉度の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュランプは、紫外線を瞬時にしかも非常に高い照度で照射できることから、紫外線硬化性樹脂の硬化用の光源に好適に用いられている。紫外線硬化性樹脂は、プラスチック材やガラス材、金属材、或いは異種材の接着に用いられ、例えば、DVDやCD等の光ディスクの製造における円盤ディスクピースの貼り合せや、ICチップが形成された半導体ウエハを所定サイズに切断するダイシング工程で用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
円盤ディスクピースの貼り合せ工程では、少なくとも一方が情報記録層を有する2枚のディスクピースの間に、接着剤である紫外線硬化性樹脂を介在させて両ディスクピースを重ね合わせ、これに紫外線を照射することにより紫外線硬化性樹脂を硬化させて両ディスクピースを貼り合わせ一体化させ光ディスクが製造されている。
また、半導体ウエハのダイシング工程では、半導体ウエハの裏面に紫外線硬化性樹脂のシートが紫外線照射により貼り付けられる。
【0004】
しかしながら、紫外線の照射面における均斉度が低いと、紫外線硬化性樹脂に硬化ムラが生じる。このため、円盤ディスクピースの貼り合せ工程では、ディスクピースに反りが生じて次工程で不良となったり、また同じショット数でも紫外線硬化性樹脂が硬化せず剥がれる部分が生じたりする。これと同様に、半導体ウエハのダイシング工程では、シートの貼り付けにムラが生じたりする。
そこで従来から、円盤ディスクピースの貼り合せ工程や半導体ウエハのダイシング工程には、均斉度が高い照射装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−230828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、照射装置のフラッシュランプに近い位置に照射面を設定することで、照射面での照度をより高くできる。
しかしながら、照射面とフラッシュランプの距離が近付くほど、当該フラッシュランプの発光形状が照射面に反映されてしまい、照射面で高い均斉度を維持することが困難となる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、光源に近い位置に照射面を設定して照度を高めつつ当該照射面で高い均斉度を実現できる照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、光源と、前記光源が基端に配置され先端開口に照射面が設定される反射ユニットと、を備え、前記反射ユニットは、多角錐台状の反射面を有する第1反射鏡と、前記第1反射鏡の先端に連続して前記先端開口を形成する円筒状の反射面を有する第2反射鏡と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記照射装置において、前記光源の発光形状を円環状、螺旋状、或いは面状にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反射ユニットの先端開口に照射面を設定することで、光源と照射面の距離が近くなり照射面での照度が高められる。これに加え、反射ユニットは、多角錐台状の反射面を有する第1反射鏡を備えるため、多角錘台の各平面で反射した光源の発光形状が照射面で幾重にも重なり照度ムラが抑えられ、高い均斉度が実現される。さらに、反射ユニットは、第1反射鏡の先端に連続して先端開口を形成する円筒状の反射面を有する第2反射鏡を備えるため、先端開口の縁部近傍での照度の落ち込みが抑えられ、当該先端開口内の全面で高い均斉度が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る照射装置の構成を示す上方斜視図である。
【図2】照射装置の内部構成を示す断面斜視図である。
【図3】照射装置の分解図である。
【図4】照射装置の使用態様図である。
【図5】光源ユニットの分解図である。
【図6】フラッシュランプの全体構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示すフラッシュランプの上下を逆転させ、これを側面から見た状態を示す模式的外観側面図である。
【図8】図7の側面図の陰極近傍を拡大して示す模式的断面図である。
【図9】フラッシュランプの反射板への取付態様を拡大して示す図である。
【図10】照射装置の電気的構成を概略的に示す図である。
【図11】点灯回路の回路図である。
【図12】始動性能の試験結果を示す図である。
【図13】始動性能の試験の比較構成を示す回路図である。
【図14】照射面の照度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係る照射装置の一態様として、ICチップが形成された半導体ウエハを所定サイズに切断するダイシング工程において用いられる照射装置について説明する。
【0013】
図1は本実施形態に係る照射装置1の構成を示す上方斜視図、図2は照射装置1の内部構成を示す断面斜視図、図3は照射装置1の分解図、図4は照射装置1の使用態様図である。
照射装置1は、これらの図に示すように、照射器本体2と、この照射器本体2に内蔵され紫外光を放射する光源ユニット3と、光源ユニット3の放射光を反射する補助反射ユニット4と、を備えている。
補助反射ユニット4は、照射器本体2側の基端4Aから先端4Bに向かって次第に拡径する略円錐状を成し、ダイシング工程で要求される所定の均斉度が先端開口4C、及び近傍で得られるように光源ユニット3の放射光を反射する。
【0014】
ダイシング工程では、図4に示すように、切断対象の半導体ウエハ70が粘着シートであるバックシート71の表面に載置され、バックシート71の裏面から照射装置1によって紫外光が照射される。バックシート71の表面には紫外線硬化性樹脂の層が設けられており裏面から紫外光が照射されることで、紫外線硬化性樹脂の層が硬化によって収縮し半導体ウエハ70の裏面に接着してバックシート71に保持される。またダイシング工程後には、半導体ウエハ70からバックシート71の剥離を容易にするために、当該半導体ウエハ70の裏面から照射装置1によって紫外光を再照射することで粘着力を低下させる。
上述の通り、照射装置1は、補助反射ユニット4の先端開口4Cでダイシング工程に必要な所定の均斉度が得られるように構成されているため、この先端開口4Cに近接してバックシート71が配置される。なお、より正確には、本実施形態では、1cm程度の厚みの紫外光に対して透明な石英ガラス板(不図示)が補助反射ユニット4の先端開口4Cに半導体ウエハ70の載置ステージとして重ねて配置されており、この石英ガラス板にバックシート71が載置され、石英ガラス板を通じて紫外光が照射される。
【0015】
次いで照射装置1の各部を詳細に説明する。
照射器本体2は、底面開放の上箱5と、当該上箱5の底面開口に係合して閉じる背面カバーとして機能する下箱6とを有する略箱型に構成され、光源ユニット3、及び光源ユニット3を点灯する点灯回路47(図10)を収納する。すなわち、上箱5の天面8には、紫外光に対して透明な石英ガラス10で覆われた照射開口9が設けられ、この照射開口9に面して上記光源ユニット3が取り付けられており、照射器本体2の残余のスペースに、点灯回路47が収められている。上箱5、及び下箱6のそれぞれには、図2に示すように、送排気ダクト7が設けられており、一方の送排気ダクト7から冷却空気が送り込まれて内蔵の光源ユニット3、及び点灯回路が冷却され、他方の送排気ダクト7から排気される。
【0016】
図5は光源ユニット3の分解図であり、図6はフラッシュランプ11の全体構成を示す斜視図である。また、図7は便宜上、図6に示すフラッシュランプ11の上下を逆転させ、これを側面から見た状態を示す模式的外観側面図であり、図8は図7の側面図の陰極近傍を拡大して示す模式的断面図である。
光源ユニット3は、パルス光を放射するフラッシュランプ(閃光放電ランプ)11と、反射板12とを備えている。
フラッシュランプ11は、内部に数10kPaのキセノンガス(希ガス)を封入した概略二重円環形状の発光管20を備えている。発光管20は、より具体的には、二重円環形状の内側の円環を構成する開環状の内管部21と、外側の円環を構成する開環状の外管部22と、それぞれの開いた一端を相互に繋ぐ連結部23と、それぞれの他端に垂直上方に一体に立設された端部26、27と、を有し、これらが断面円形状のオゾンレス石英管から形成されている。本実施形態の発光管20には、図8に示すように、内径Iが8mm、外径Ioが10mm(すなわち、厚みが1mm)のものが用いられている。
【0017】
発光管20の内管部21と外管部22は、若干の寸法的歪みはあるものの、管の断面中心が同一平面P上に位置し(図7、図8参照)、ほぼ精確な二重円環を形成している。発光管20の端部26側には陽極13とこれを同軸上で支持する電極芯棒28が、端部27側には陰極14とこれを同軸上で支持する電極芯棒29が設けられている。
【0018】
また発光管20の端部26、27の外端には、電極芯棒28、29と端部26、27の発光管外端を封止する図示せぬ封止部が設けられており、この封止部の外周にこれを囲繞するようにベース30、31がそれぞれ配置されている。電極芯棒28、29の外端は、図7に示すように、それぞれ端子32、33に電気的に接続されている。なお、図6ではベース30、31の外端部から先の構造の図示を省略している。
【0019】
反射板12は、フラッシュランプ11が発する紫外光を反射し、なおかつ導電性を有する例えば金属材から形成され、図5に示すように、フラッシュランプ11を収める概略皿状を成している。すなわち、反射板12は、底部に設けられた平面視円形の平面部40と、この平面部40の縁部に沿って設けられてフラッシュランプ11を包囲する側面部41とを有し、これら平面部40、及び側面部41の両方で、フラッシュランプ11の紫外光を照射開口9に向けて反射する。このとき、フラッシュランプ11から照射開口9と反対側の平面部40側に向けて放射される光が当該平面部40で反射されるので、フラッシュランプ11の放射光が照射光として効率良く利用される。
【0020】
この平面部40の面内には、表裏に貫通する多数の通気孔45が設けられており、これらの通気孔45を通じて上述の送排気ダクト7から送り込まれた冷却風が反射板12の中に入り込みフラッシュランプ11を冷却する。これらの通気孔45は、フラッシュランプ11の発光管20の直下に対応して設けられており、発光管20に冷却風が直接吹き付けられることで効率良く冷却される。
【0021】
反射板12へのフラッシュランプ11の収納構造について説明すると、反射板12の平面部40の面内には、フラッシュランプ11の発光管20の内管部21が載置される複数の支持台42と、支持台42に載置された発光管20の内管部21を上側から抑え付ける複数の抑え機構43とが設けられている。支持台42は、平面部40に対して発光管20を略平行に配置すべく、全て同じ高さTを有し、これらの支持台42にフラッシュランプ11の発光管20が載置されることで、図8に示すように、発光管20が平面部40に対して平行に、なおかつ、後述する所定距離Tだけ離間して配置される。抑え機構43は、支持台42に載置された発光管20の上側にバネ棒44を横断配置し、当該バネ棒44で発光管20を抑え付けるものであり、かかる抑え機構43によって発光管20が平面部40内の所定の位置に位置決めされ、位置ズレや浮き上がりが防止される。
【0022】
ここで、反射板12の平面部40の径は、フラッシュランプ11の発光管20の外管部22の径よりも僅かに大きい程度(すなわち、概略二重円環形状のフラッシュランプ11の最大径と同程度)に形成されている。フラッシュランプ11の発光時には、発光管20からの発光と平面部40での反射によって平面部40の全体が発光することで、例えばLED等の発光素子を等間隔で配置して構成した平面光源のように機能する。
この平面部40の面内の発光は、側面部41によって当該平面部40の径方向への拡がりを抑えながら、照射器本体2の照射開口9を通じて光源ユニット3の放射光として上記補助反射ユニット4に入射される。そして当該補助反射ユニット4による反射によって先端開口4C近傍で高い均斉度が得られるように紫外光が照射される。なお、かかる補助反射ユニット4の具体的な構成については後述する。
【0023】
ただし、フラッシュランプ11は、点灯時間の経過に伴って電極近くに黒化現象が発生し、均斉度を低下させる要因となる。そこで、本実施形態では、以下のようにして黒化現象に起因した均斉度低下を防止している。
先ず、フラッシュランプ11の構成について更に詳述する。
フラッシュランプ11の陽極13は、例えば外径φ7.5mmの純タングステン製棒状部材から構成される。陰極14は、陽極13と同径の純タングステン製棒状部材から構成される基部50と、円柱状焼結体から構成される先端部51とを結合させて、全体としては陽極13と同じ長さに構成される。このうち先端部51は、その長さを例えば陰極14の全長の1/5程度とし、その外径を基部50と同径または幾分小さくしてもよい。先端部51の焼結体は、ランプの始動性改善のために設けたものであって、純タングステンを主成分としこれに金属複合酸化物BaO・Alを少量含有させた混合物から構成される。
【0024】
陽極13と陰極14との間に点灯回路47から電力が投入されると、陽極13と陰極14との間の放電路全体が発光し発光領域52が形成される。ここで、被照射物である半導体ウエハ70は、発光管20の二重円環が形成する平面Pと実質的に平行に配置される。したがって、発光領域52のうち、陽極13と陰極14近傍を含む端部26、27の放電領域から発せられる光は、端部26、27が平面Pに対して共に垂直上方(図6)に屈曲しているため、被照射物表面に直接届かず有効に寄与しない。そこで、発光領域52から端部26、27の放電領域を除いた領域を有効発光部53と呼ぶことにする。
【0025】
有効発光部53は、発光管20の二重円環を形成する内管部21と外管部22、及び連結部23とから構成される連続した部分を指し、その直上に直射光が照射される。有効発光部53を構成する発光管20の内壁のうち垂直上方に屈曲した端部26、27に近い方の内壁、すなわち図8(上下を逆にして描かれている)の断面図において発光管20の上面側の内壁を含む平面P1を想定すると、端部26、27の平面P1からの突出長は、いずれも例えば60mmである。陽極13及び陰極14(先端部51)の先端面はいずれも、平面P1に対して幾分引っ込んだ位置にあり(図7参照)、この実施形態では平面P1との距離は5.0mmとしてある。
【0026】
なお、本実施形態では、陰極14側の芯棒29の外面には、発光管20内部の不純ガスの吸着のために、ZrAl(ジルコニウムアルミニウム)から成る複合金属を保持したゲッター54が設置されている。
陽極13側、陰極14側共に、端部26、27の発光管20の内径I(図8)は8mmであり、電極中心軸を発光管20の端部26、27の中心軸とほぼ一致させるように配置してあり、陽極13及び陰極14の電極先端面の最大径D(図8)は7.5mmであるから、電極を構成する棒状体(陰極の場合は基部50)の外面と発光管20の内面との距離(隙間)はいずれも、(8.0−7.5)/2=0.25mmとなっている。
【0027】
かかる構成の下、フラッシュランプ11の端子32、33との間に直流電圧を印加すると、フラッシュランプ11がフラッシュ放電を起こし、発光管20に封入されたキセノンの発光による紫外光を含む紫外光、可視光及び近赤外光を放射する。
このフラッシュ放電においては、上述の通り、発光領域52のうちの有効発光部53から放射する光が被照射対象の照射に寄与し、残余の部分、すなわち発光管20の端部26、27の発光は被照射対象の照射への寄与が小さい。この端部26、27に陽極13、陰極14が配置されることで、陽極13、陰極14のスパッタ現象が生じて近傍の管体表面に黒化が発生したとしても、均斉度に与える影響を抑えることができる。
【0028】
ただし、本実施形態の光源ユニット3では、フラッシュランプ11を反射板12で包囲し、フラッシュランプ11の直射光のみならず、反射板12の反射光を含めて均斉度を高めているため、反射板12内で黒化現象が発生すると、例え直射光に影響が無くとも均斉度が低下する。
そこで、本実施形態では、図5に示すように、反射板12の平面部40には、フラッシュランプ11の端部26、27に対応する位置に通し孔55を設ける構成としている。この構成により、フラッシュランプ11が反射板12の支持台42に載置されたときには、図9に示すように、通し孔55から端部26、27が平面部40の裏面側に通されて反射板12の外に位置する。
したがって、陽極13、陰極14が配置された端部26、27で黒化現象が生じたとしても、当該黒化現象によって均斉度が低下することがなく、また黒化現象による照射面での照度低下が抑えられるため、寿命末期における照度維持率の向上が図られることとなる。
【0029】
ここで、フラッシュランプ11では、発光管20の端部26、27を略垂直に曲げて発光領域52の有効発光部53の外に位置させ、さらに、これらの端部26、27を反射板12の外に位置させる構成としているが、この構成においては、発光管20の端部26、27が反射板12の外まで延長されることから、これらの端部26、27に配置された陽極13、及び陰極14の距離が離れ、始動性能の低下を招くことになる。
そこで、本実施形態では、次のようにして始動性能の低下を補うこととしている。
【0030】
図10は照射装置1の電気的構成を概略的に示す図である。
照射装置1は、図10に示すように、交流の商用電源33を直流に変換する直流電源34と、この直流電源34の出力電圧を所定電圧に昇圧する昇圧インバータ35と、この昇圧インバータ35の出力を整流する整流回路36と、この整流回路36の出力電圧によって点灯する点灯回路47と、これらの各部を制御する制御回路37とを備えている。
【0031】
図11は点灯回路47の回路図である。なお、同図では、フラッシュランプ11の発光管20の形状を便宜上、直管で示している。
点灯回路47は、上記整流回路36の出力電圧によって高電位に充電されフラッシュランプ11に印加する充電コンデンサ38と、充電コンデンサ38とフラッシュランプ11の間に介挿されたコイル39(図10では省略)と、始動回路49とを備えている。
始動回路49は、フラッシュランプ11に高電圧パルスPh(約マイナス10〜15kV)を印加してフラッシュランプ11を始動させる回路であり、パルストランス49Aを備えている。始動時にはパルストランス49Aから高電圧パルスPhが印加されることにより充電コンデンサ38を通じて充電電圧Vcがフラッシュランプ11に印加され、これにより、陽極13と陰極14との間に放電路が形成され、当該放電路全体が発光する。
【0032】
さらに、反射板12と、フラッシュランプ11の陰極部の発光管外面に設けられた外部始動補助電極とが並列に接続されており、始動時には、パルストランス49Aから光源ユニット3の反射板12、及び外部始動補助電極にも高電圧パルスPhが印加されるように構成されている。外部始動補助電極は、陰極部の発光管外面にトリガーバンドと呼ばれる帯状金属板82を設けて構成したものであり、上述の通り、反射板12と同電位の高電圧パルスPhが印加されることで始動補助を行う。
反射板12は、上述の通り、導電性を有する材料から形成され、なおかつ、反射板12の平面部40に対して平行にフラッシュランプ11の発光管20が配置されていることから、始動時に平面部40に高電圧パルスPhが印加されることで、当該平面部40が近接導体として機能して始動が補助され、始動性能の向上が図られる。
【0033】
図12は、始動性能の試験結果を示す図である。
この試験では、反射板12とフラッシュランプ11の発光管20の距離T2と、充電電圧Vcとを可変して、100ショットの始動パルスの入力に対して正常に始動した割合を測定している。また反射板12による近接導体効果に基づく始動性能を試験すべく、フラッシュランプ11には、上記帯状金属板82から成る外部始動補助電極に、反射板12と同電位の高電圧パルスPhを印加することにより始動補助を行い、試験を行った。さらに、この試験の比較例の照射装置100には、図13に示すように、発光管20の外面に、両側の端部26、27のそれぞれの陽極13、陰極14の周囲を囲繞するようにトリガーバンドと呼ばれる帯状金属板81、82を設け、これに加えて、発光管20の外面には、金属線83を巻回し、当該金属線83の両端をそれぞれ帯状金属板81、82に接続してトリガー線を形成し、これら一対の帯状金属板81、82と金属線83(トリガー線)とにより外部始動補助電極を構成し、この外部補助電極に高電圧パルスPhを印加してフラッシュランプ11を始動する構成を用いている。なお、図13において、図11と同じ部材については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0034】
この図に示すように、反射板12を近接導体として機能させることで、例えば充電電圧Vcが2.4kVの場合には、比較例と同等な始動性能が得られることが分かる。
ただし、反射板12の平面部40とフラッシュランプ11の発光管20の距離T2とを大きくするほど、平面部40の近接導体効果が弱まり始動性能が低下することが分かる。そこで、距離T2は、平面部40から近接導体効果が得られる距離として最大でも10mm以下であることが望ましい。
【0035】
この始動性能の試験により、トリガー線による始動補助方式と比較しても十分な始動性能が得られることが分かる。したがって、照射装置1の用途において、反射板12による近接導体方式で十分な始動性能が維持できるため、少なくとも外部始動補助電極が含むトリガー線による始動補助を用いる必要はない。
さらに、帯状金属板82から成る外部始動補助電極による始動補助を行わなくとも、反射板12の近接導体効果のみで十分な始動性能が得られている場合には、当該外部始動補助電極を省略することもできる。
【0036】
また反射板12の平面部40が近接導体として機能することで、仮に、有効発光部53の領域に黒化現象が発生したとしても、黒化は、発光管20の外面のうち平面部40に対向する箇所に生じ、照射開口9側での発生が抑えられるため直射光への影響が抑えられる。
【0037】
さらに、反射板12を近接導体として使用することで、発光管20の黄色化による照射面側への早期照度低下を軽減することができる。
詳述すると、一般的に、高電流を瞬間的に流すフラッシュランプにおいては、例えば特開2001−185088号公報に記載のように、フラッシュランプの閃光回数に応じて発光管の黄色化が発生することが知られており、また、この黄色化の現象は、トリガー線に沿って発生することも実験的に判明している。例えば、発光管の外面に金属線から成るトリガー線を螺旋状に旋廻させた場合、閃光回数を重ねるとともにトリガー線に沿って、螺旋状に石英が黄色に変化してくる。このような変化を起こした部分は紫外線の透過率が悪くなり、照度低下をもたらしてしまう。
【0038】
この黄色化現象の詳しい原因は判明していないが、トリガー線に沿ってこの現象が生じることから考えると、発光時のアーク放電により発光管の基材たる石英が変化を起こしているものだと予想される。発光時のアーク放電について概説すると、ランプ始動させる際、トリガー線と電極の間に高電圧パルス(マイナス10kV〜マイナス20kV)が印加され、発光管を介して絶縁破壊が起こり、発光管内部に封入されたキセノンガスが電離し、コンデンサから放電されるエネルギーにより陰極先端部よりアーク放電が生じ、陽極との間のアーク放電に移行する。そこで、発明者等は、この様子を、高速度カメラを用いて観測した結果、発光管に旋廻されたトリガー線に沿って、アーク放電を起こしていることを確認した。つまり、アーク放電の際の急激な温度上昇に伴って石英が反応し、黄色化を引き起こすものだと考えられる。
このように、トリガー線を螺旋状に発光管に配置していると照射面側に石英の黄色化が発生してしまう。そのため、早期に照度維持率の低下を起こしてしまう可能性がある。
【0039】
これに対して、本実施形態の照射装置1にあっては、反射板12を近接導体として用いてトリガー線の代わりに高電圧パルスPhを印加するため、反射板12に沿ってアーク放電が起きる。このため、黄色化は被照射面側に発生し照射面側には発生しないので、早期照度低下を防止することができるのである。
【0040】
次いで、補助反射ユニット4について詳述する。
上述の通り、補助反射ユニット4は、照射器本体2の照射開口9に基端4Aが接続された略円錐台形状を成し、照射開口9を通じて光源ユニット3から放射される紫外光を内周面で反射して、先端開口4Cにおいて、ダイシング工程等で要求される所定の均斉度を実現し、当該先端開口4Cを含む近傍に照射面を設定可能にするユニットである。
このように、照射面が補助反射ユニット4の先端開口4Cを含む近傍に配置可能であるため、照射面が先端開口4Cから遠い場合に比べて、光源ユニット3の放射光を高照度で照射面に照射することができる。
【0041】
ただし、照射面が先端開口4Cに近いほど、光源ユニット3の直射光が拡がらずに照射面に到達することから、当該光源ユニット3の発光形状に応じた照度ムラが照射面に生じ易くなり、高い均斉度を得ることが困難となる。
そこで本実施形態では、次のようにして、先端開口4Cでの照度ムラを抑え高い均斉度を実現している。
【0042】
すなわち、補助反射ユニット4は、図1に示すように、多角錘台形状の反射面65を有する第1反射鏡60と、この第1反射鏡60の先端60Aに接続された円筒状の反射面66を有する第2反射鏡61とを備え、第1反射鏡60の基端4Aには、上記光源ユニット3から円環形状(或いは螺旋形状)に発光する光が入射される。
このように円環形状の発光を基端4Aから入射することで、基端4Aから先端開口4Cまでの距離が比較的短い場合であっても、光源ユニット3の直接光が照射面で略円形で、かつ比較的均一な照度分布を形成することとなる。このとき、光源ユニット3を面光源とすることで、照射面での直射光による照度分布をより均一なものにもできる。
【0043】
上記第1反射鏡60は、周方向に拡がる光を内面で反射して照射面に向けることで、当該照射面での照度を高めるものであり、台形板状の反射板62を円周に沿って連接して多角錐台状の反射面65が構成されている。
このとき、例えば第1反射鏡60の内面を円錐台(すなわち曲面)とした場合、光源ユニット3の放射光をロスを少なくして照射面に照射することができるものの、円環形状の発光が照射面に投影されてしまい照度ムラが取り難くなり、また一枚の板材から円錐台状の反射鏡を作るには複雑な装置が必要となる。
これに対して、本実施形態の第1反射鏡60にあっては、反射板62が連接されることで、内周面の反射面65が複数の反射板62による平面の連接によって構成されることから、照射面では各平面から投影される上記光源ユニット3の発光像が幾重にも重なることとなり、照射面での光源像の照度ムラが打ち消されて高い均斉度が得られることとなる。
【0044】
ただし、第1反射鏡60の先端60Aでは、中央部よりも縁部で照度の低下が生じ易く、当該第1反射鏡60だけで補助反射ユニット4を構成すると、補助反射ユニット4の先端開口4Cの全面で照度を均一にすることはできない。
そこで、本実施形態では、第1反射鏡60の先端60Aに第2反射鏡61を設けている。第2反射鏡61の反射面66は、先端60Aにかけて拡開する第1反射鏡60の反射面65とは異なり、一定の径の円筒状を成している。すなわち、第1反射鏡60の先端60Aに第2反射鏡61を接続することで、当該第1反射鏡60の先端60Aが第2反射鏡61によって略垂直に立ち上がることとなり、当該第2反射鏡61での反射によって、照射面の縁部での照度の落ち込みが補われる。
【0045】
図14は、照射面の照度分布を示す図である。なお、この図において、線Aは本実施形態の補助反射ユニット4を用いた場合を示し、線Bは比較例であって、第1反射鏡60の反射面65が円錐台状(曲面)、なおかつ、第2反射鏡61が無い場合を示す。また線Cは比較例であって、本実施形態の補助反射ユニット4において第2反射鏡61が無い場合を示す。
【0046】
線Bで示されるように、第1反射鏡60の反射面65が円錐台状(曲面)であり、かつ、第2反射鏡61が無い場合、円環状の発光形状が照射面に強く反映されることで、照射面中央部や照射面縁部での照度の落ち込みが顕著に見られ照射面に照度ムラが生じている。
これに対して、線Cで示されるように、第1反射鏡60の反射面65を多角錘台状にすることで照射面での照度ムラが解消している事が分かる。ただし、第1反射鏡60だけで補助反射ユニット4を構成した場合には、照射面縁部(図中Xで示す)で照度の落ち込みが見られる。
これに対し、線Aで示されるように、第2反射鏡61を第1反射鏡60の先端60Aに設けることで、照射面縁部での照度の落ち込みが補われ、中央部から縁部に亘る照射面の全面で均一な照度分布が得られ高い均斉度が得られていることが分かる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、次の効果を奏する。
本実施形態では、フラッシュランプ11の発光管20を両側の端部26、27が反射板12の外側に位置するように形成し、反射板12の外側に位置する箇所に陽極13、陰極14を配置する構成としたため、これら陽極13、陰極14の近くに黒化現象が発生した場合でも、黒化による照度の低下を防止でき、均斉度が低下することがない。また黒化現象に起因した照射面での照度低下が抑えられるため、寿命末期における照度維持率の向上が図られる。
【0048】
また本実施形態では、反射板12を底部に平面部40を有する皿状に形成し、フラッシュランプ11の発光管20の両側の端部26、27を略垂直に屈曲させ平面部40に設けた通し孔55を通して反射板12の外側に配置する構成とした。
これにより、フラッシュランプ11の反射板12に載置するだけで端部26、27を反射板12の外に配置できる。さらに、通し孔55を平面部40に設けることで、側面部41に通し孔55を設ける構成に比べ、照射開口9から取り出される光への影響が抑えられる。
【0049】
また本実施形態では、フラッシュランプ11を始動するときに、導電性の反射板12に電圧を印加する始動回路49を有した点灯回路47を備え、反射板12の平面部40に対してフラッシュランプ11の発光管20を、平面部40から近接導体効果が得られる距離をあけて配置する構成とした。
これにより、フラッシュランプ11の端部26、27を反射板12の外に配置することで端部26、27の距離が離れても、反射板12の平面部40による近接導体効果によって始動が補助されることから、始動性能の低下が防止される。
これに加え、発光管20に金属線83を螺旋状に巻いたトリガー線をフラッシュランプ11の始動補助のために用いる必要が無いことから、照射面側に石英の黄色化が発生することがなく、照度維持率が早期に低下することが無い。
【0050】
また本実施形態では、光源ユニット3が基端4Aに配置され先端開口4Cに照射面が設定される補助反射ユニット4、を備え、補助反射ユニット4は、多角錐台状の反射面65を有する第1反射鏡60と、この第1反射鏡60の先端60Aに連続して先端開口4Cを形成する円筒状の反射面66を有する第2反射鏡61と、を備える構成とした。
これにより、補助反射ユニット4の先端開口4Cに照射面が設定されることで、光源ユニット3と照射面の距離が近くなり照射面での照度が高められる。これに加え、補助反射ユニット4が多角錐台状の反射面65を有する第1反射鏡60を備えるため、多角錘台の各平面で反射した光源ユニット3の発光形状が照射面で幾重にも重なり照度ムラが抑えられ、高い均斉度が実現される。さらに、補助反射ユニット4は、第1反射鏡60の先端60Aに連続して先端開口4Cを形成する円筒状の反射面66を有する第2反射鏡61を備えるため、先端開口4Cの縁部近傍での照度の落ち込みが抑えられ、当該先端開口4C内の全面で高い均斉度が実現できる。
【0051】
また本実施形態では、光源ユニット3の発光形状を円環状にした。
これにより、補助反射ユニット4には円環形状の発光が基端4Aから入射されることから、基端4Aから先端開口4Cまでの距離が比較的短い場合であっても、光源ユニット3の直接光が照射面で略円形で、かつ比較的均一な照度分布を形成することができ、第1反射鏡60及び第2反射鏡61を用いて比較的容易に均斉度を高めることができる。
【0052】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0053】
また上述した実施形態では、有効発光部53の発光管形状が二重円環を基調とした形状であるフラッシュランプ11について説明したが、本発明のフラッシュランプ11はこれに限定されることはなく、有効発光部53の発光管形状が多くの円環が組み合わされた多重円環であってもよく、また渦巻き型形状や螺旋形状であってもよい。要するに、有効発光部53が、補助反射ユニット4の円形の先端開口4Cに対応するように、螺旋形(渦巻き形)、円環またはそれらの組合せから成る形状に形成されていればよい。但し、有効発光部53が実質的に同一平面上にあり管状材料から連続して形成されていることが条件である。
【符号の説明】
【0054】
1 照射装置
2 照射器本体
3 光源ユニット(光源)
4 補助反射ユニット(反射ユニット)
4A 基端
4C 先端開口
11 フラッシュランプ
12 反射板
13 陽極(電極)
14 陰極(電極)
20 発光管
26、37 端部
40 平面部
41 側面部
42 支持台
47 点灯回路
49 始動回路
52 発光領域
53 有効発光部
60 第1反射鏡
60A 先端
61 第2反射鏡
65 多角円錐台状の反射面
66 円筒状の反射面
81、82 帯状金属板
83 金属線(トリガー線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源が基端に配置され先端開口に照射面が設定される反射ユニットと、を備え、
前記反射ユニットは、
多角錐台状の反射面を有する第1反射鏡と、
前記第1反射鏡の先端に連続して前記先端開口を形成する円筒状の反射面を有する第2反射鏡と、を備える、
ことを特徴とする照射装置。
【請求項2】
前記光源の発光形状を円環状、螺旋状、或いは面状にしたことを特徴とする請求項1に記載の照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−77359(P2013−77359A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217701(P2011−217701)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】