説明

照明器具およびその製造方法

【課題】絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板のアースを容易かつ確実に得ることができる照明器具およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ネジ下孔を有する、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板10と、ネジ下孔を有する、金属製照明器具反射板10が装着される金属製照明器具本体20と、ネジ下孔を成形する雄ネジ山をもつ軸部とネジ下孔径よりも大きい頭部とを有するネジ立て可能金属製ネジ30とを備え、ネジ立て可能金属製ネジ軸部の雄ネジ山により、ネジ下孔において雌ネジ山を成形しおよび破損させてネジ立て可能金属製ネジ30を空回り状態とし、かつネジ下孔において雌ネジ山を成形してネジ立て可能金属製ネジ30を嵌め合わせ固定して、金属製照明器具反射板10を金属製照明器具本体20に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板とそれを装着した金属製照明器具本体とを備えた照明器具およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の照明器具においては感電保護のため、金属製照明器具本体に具備された電源線接続器を介し電源線にて接地して金属製照明器具本体のアースを得るとともに、金属製照明器具反射板を金属製照明器具本体に固定する金属製ネジを介して金属製照明器具反射板のアースを得る。この場合、金属製照明器具反射板が樹脂塗装膜によって覆われているため、金属製照明器具本体と導通を得るには塗装膜を剥離する必要がある。金属製照明器具反射板の金属製照明器具本体への装着用のネジ孔は貫通孔になっており、汎用の金属製ネジでは塗装膜を剥離することができない。このため、例えば歯付の特殊ネジ(特許文献1)を使用すること、または汎用ネジとの中間に歯付座金(特許文献2)を挿入することなどが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−241707号公報
【特許文献2】特開平11−336738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板のアースを容易かつ確実に得ることができる照明器具およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の照明器具およびその製造方法を提供する。
(1)絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板と、前記金属製照明器具反射板が装着される金属製照明器具本体と、前記金属製照明器具反射板のネジ下孔において雌ネジ山を成形しおよび破損させて空回り状態とされ、かつ前記金属製照明器具本体のネジ下孔において雌ネジ山を成形して嵌め合わせ固定された、前記金属製照明器具反射板を前記金属製照明器具本体に装着するネジ立て可能金属製ネジとを備えたことを特徴とする照明器具。
(2)前記金属製照明器具本体が、絶縁性塗装膜によって覆われていることを特徴とする上記(1)記載の照明器具。
(3)第1のネジ下孔を有する、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板と、第2のネジ下孔を有する、前記金属製照明器具反射板が装着される金属製照明器具本体と、前記第1および第2のネジ下孔を成形する雄ネジ山をもつ軸部と前記ネジ下孔径よりも大きい頭部とを有するネジ立て可能金属製ネジとを用意し、前記ネジ立て可能金属製ネジ軸部の雄ネジ山により、前記第1のネジ下孔において雌ネジ山を成形しおよび破損させて前記ネジ立て可能金属製ネジを空回り状態とし、かつ前記第2のネジ下孔において雌ネジ山を成形して前記ネジ立て可能金属製ネジを嵌め合わせ固定して、前記金属製照明器具反射板を前記金属製照明器具本体に装着することを特徴とする照明器具の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る照明器具によれば、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板のアースを容易かつ確実に得ることができる照明器具を提供することができる。
請求項2に係る照明器具によれば、さらに金属製照明器具本体が絶縁性塗装膜によって覆われている場合も、同様に金属製照明器具反射板のアースを容易かつ確実に得ることができる照明器具を提供することができる。
請求項3に係る照明器具の製造方法によれば、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板のアースを容易かつ確実に得ることができる照明器具の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)〜(c)は本発明に係る金属製照明器具反射板へのネジ立て可能金属製ネジによる成形および破損の一例を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明に係る金属製照明器具本体へのネジ立て可能金属製ネジによる成形および嵌め合わせ固定の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る照明器具の一実施例を示す図である。
【図4】(a)、(b)はネジ立て可能金属製ネジのネジ下孔への嵌め合わせの例をそれぞれ示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る照明器具およびその製造方法の実施例を説明するが、その前にまず本発明に用いるネジ立て可能金属製ネジについて説明する。本発明に用いるネジ立て可能金属製ネジは、板金部品に形成された下孔端面に雌ネジ山を塑性加工しながらネジ自体にて雌ネジ山を成形することが可能な金属製ネジであり、いわゆるタップタイトやタッピンネジを含むものであるが、これに限定されない。
【0009】
図1〜4中に記載する参照符号は以下に説明する各実施例において共通符号とする。各図において、参照符号10は絶縁性塗装膜(例えば樹脂塗装膜)によって覆われている金属製照明器具反射板、11は金属製照明器具反射板のネジ下孔、12は金属製照明器具反射板のネジ下孔端面、13はネジ下孔端面12に成形された雌ネジ山、14はネジ下孔端面12に成形された雌ネジ山が潰れた(破損した)貫通孔、15は金属製照明器具反射板のネジ貫通孔近傍面、20は絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具本体、21は金属製照明器具本体のネジ下孔、22は金属製照明器具本体のネジ下孔端面、23は金属製照明器具本体の下孔端面に成形された雌ネジ山、30はネジ立て可能金属製ネジ、31はネジ立て可能金属製ネジの軸部の雄ネジ山、32はネジ立て可能金属製ネジの頭部、40は電源線接続器、41は電源線接続器に接続された電源線、50は蛍光ランプ、60は天井ボードを示す。
【0010】
図1(a)〜(c)は、本発明に係る金属製照明器具反射板へのネジ立て可能金属製ネジによる成形および破損の一例を示す断面図である。また、図2(a)〜(c)は、本発明に係る金属製照明器具本体へのネジ立て可能金属製ネジによる成形および嵌め合わせ固定の一例を示す断面図である。各々絶縁性塗装膜によって覆われている例えば板厚0.8mmの金属製照明器具反射板10を金属製照明器具本体20に装着する場合、金属製照明器具反射板にはネジ貫通下孔径を「ネジ立て可能金属製ネジ径a>反射板のネジ貫通孔径b>ネジ立て可能金属製ネジが規定する下孔径c」の関係で形成する。この場合、例えばネジ立て可能金属製ネジ径aをΦ4.0mm、ネジ貫通孔径bをΦ3.8mm、ネジ立て可能金属製ネジの規定下孔径cをΦ3.6mmとすることができる。
【0011】
次に、図1(a)〜(c)を用いて、絶縁性塗装膜(例えば樹脂塗装膜)によって覆われている金属製照明器具反射板10とネジ立て可能金属製ネジ30の貫通過程について説明する。金属製照明器具反射板10のネジ下孔11へのネジ立て可能金属製ネジ30の締め付け初期過程ではネジ下孔端面12に雌ネジ山13を塑性加工すると同時にネジ下孔端面12の絶縁性塗装膜を剥離し金属製照明器具反射板10の金属素地部とネジ立て可能金属製ネジの雄ネジ山31とが接することで導通し、締め付け中期過程の規定トルク未満でネジ下孔端面12の雌ネジ山13が破損して貫通孔14に変形しネジ立て可能金属製ネジ30は空回り状態となる。この状態ではネジ締め力は不完全であるが金属製照明器具反射板10とネジ立て可能金属製ネジ30の導通状態は保持している。
【0012】
次に、図2(a)〜(c)を用いて、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具本体20とネジ立て可能金属製ネジ30の螺合(嵌め合わせ固定)過程について説明する。金属製照明器具本体ネジ下孔21へのネジ立て可能金属製ネジ30を締め付け初期過程では、ネジ下孔端面22に雌ネジ山23を成形(塑性加工)すると同時にネジ下孔21表面の絶縁性塗装膜を剥離する。これにより、雌ネジ山23の金属素地部とネジ立て可能金属製ネジ30の雄ネジ山31とが接することで金属製照明器具本体20とネジ立て可能金属製ネジ30とが導通し、ネジ締め後期過程の規定トルクでネジ締めが完結する。
【0013】
以上より、各々絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板10と金属製照明器具本体20はネジ立て可能金属製ネジ30を介して導通し、金属製照明器具本体20に具備された電源線接続器40に接続された電源線41により照明器具全体で対地アースを得ることが可能となる。
【0014】
図3は、本発明に係る照明器具およびその製造方法の一実施例を示す図である。本実施例は、図3に示すように、照明器具の天井取り付け状態の一例を示すものであるが、これに限定されない。本実施例では、金属製照明器具反射板10と金属製照明器具本体20とが一定距離を置いて接しない状態で照明器具が天井ボード60に設置されている。金属製照明器具本体20には、電源線接続器40が設けられており、電源線接続器40には電源線41が接続されている。金属製照明器具反射板10の内側には蛍光ランプ50が備えられている。金属製照明器具反射板10は、ネジ立て可能金属製ネジ30を介して金属製照明器具本体20に装着されている。このネジ立て可能金属製ネジ30は、1箇所または複数箇所に設けることができる。
【0015】
すなわち、本照明器具は、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板10と、金属製照明器具反射板10が装着される金属製照明器具本体20と、金属製照明器具反射板10のネジ下孔11において雌ネジ山を成形しおよび破損させて空回り状態とされ、かつ金属製照明器具本体20のネジ下孔21において雌ネジ山を成形して嵌め合わせ固定された、金属製照明器具反射板を前記金属製照明器具本体に装着するネジ立て可能金属製ネジ30とを備えるものである。また、本照明器具の製造方法は、ネジ下孔11を有する、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板10と、ネジ下孔21を有する、金属製照明器具反射板10が装着される金属製照明器具本体20と、ネジ下孔11,21を成形する雄ネジ山31をもつ軸部とネジ下孔径よりも大きい頭部32とを有するネジ立て可能金属製ネジ30とを備え、ネジ立て可能金属製ネジ軸部の雄ネジ山31により、ネジ下孔11において雌ネジ山13を成形しおよび破損させてネジ立て可能金属製ネジ30を空回り状態とし、かつネジ下孔21において雌ネジ山23を成形してネジ立て可能金属製ネジ30を嵌め合わせ固定して、金属製照明器具反射板10を金属製照明器具本体20に装着するものである。ここで、金属製照明器具本体20は、絶縁性塗装膜によって覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。
【0016】
図4(a)、(b)は、ネジ立て可能金属製ネジのネジ下孔への嵌め合わせの例をそれぞれ示す断面図である。いま、図3および図4において、金属製照明器具反射板10と金属製照明器具本体20との間のネジ締め完結後の設定寸法d、ネジ下孔11のネジ山が破損した場合の実寸法e、ネジ下孔11のネジ山が破損しない場合の実寸法fとする。図4(a)に示すように、金属製照明器具反射板10のネジ下孔11が規定トルクでネジ山が破損せず雌ネジ山13形態を保持した場合には、ネジ立て可能金属製ネジ30のネジ締めが、ネジ下孔11にて完結した設定寸法d<実寸法fとなり、設定寸法までのネジ締め付け力が得られない。これに対して、図4(b)に示すように、規定トルク未満で雌ネジ山13が破損して潰れ貫通孔14に変形した場合には、貫通孔14ではネジ立て可能金属製ネジ30が空回りしネジ締めが完結せずにネジ頭部32が照明器具反射板のネジ貫通孔近傍面15に引っ掛かることで設定寸法d=実寸法eまでの締め付け力が得られる。なお、図3および図4において、設定寸法dと実寸法eはゼロより大きい値を与えているが、設定寸法dと実寸法eをゼロとし金属製照明器具反射板10と金属製照明器具本体20が接するようにしてもよい。
【0017】
このように本発明では、金属製ネジとして汎用ネジであるタップタイトやタッピンネジ等のネジ立て可能金属製ネジを用いることができ、このネジ立て可能金属製ネジにより金属製照明器具反射板の貫通穴径を当該ネジで規定されている取り付け用下穴径より若干大きく雌ネジ山が破損する下穴径を形成する。これにより、ネジ立て可能金属製ネジは金属製照明器具反射板の貫通穴に雌ネジ山を成形(塑性加工)しながら塗装膜を剥離し、さらに金属製照明器具反射板の貫通孔を空回り状態とすることでネジ立て可能金属製ネジが金属製照明器具反射板の貫通孔端面と接した貫通状態で導通する。また、金属製照明器具本体のネジ下孔に雌ネジ山を成形することで金属製照明器具本体の雌ネジ山とネジ立て可能金属製ネジの雄ネジ山とが嵌め合わせ固定され金属製照明器具本体とネジ立て可能金属製ネジとが導通する。これにより、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板の金属製照明器具本体への装着および両者のアース取りを、特殊ネジや歯付座金等を使用することなく汎用ネジで可能とすることができる。
【符号の説明】
【0018】
10 絶縁性塗装膜を形成した金属製照明器具反射板
11 金属製照明器具反射板のネジ下孔
12 金属製照明器具反射板のネジ下孔端面
13 ネジ下孔端面に成形された雌ネジ山
14 ネジ下孔端面に成形された雌ネジ山が潰れた貫通孔
15 金属製照明器具反射板のネジ貫通孔近傍面
20 絶縁性塗装膜を形成した金属製照明器具本体
21 金属製照明器具本体のネジ下孔
22 金属製照明器具本体のネジ下孔端面
23 金属製照明器具本体の下孔端面に成形された雌ネジ山
30 ネジ立て可能金属製ネジ
31 ネジ立て可能金属製ネジの雄ネジ山
32 ネジ立て可能金属製ネジの頭部
40 電源線接続器
41 電源線接続器に接続された電源線
50 蛍光ランプ
60 天井ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板と、
前記金属製照明器具反射板が装着される金属製照明器具本体と、
前記金属製照明器具反射板のネジ下孔において雌ネジ山を成形しおよび破損させて空回り状態とされ、かつ前記金属製照明器具本体のネジ下孔において雌ネジ山を成形して嵌め合わせ固定された、前記金属製照明器具反射板を前記金属製照明器具本体に装着するネジ立て可能金属製ネジと
を備えたことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記金属製照明器具本体が、絶縁性塗装膜によって覆われていることを特徴とする請求項1記載の照明器具。
【請求項3】
第1のネジ下孔を有する、絶縁性塗装膜によって覆われている金属製照明器具反射板と、
第2のネジ下孔を有する、前記金属製照明器具反射板が装着される金属製照明器具本体と、
前記第1および第2のネジ下孔を成形する雄ネジ山をもつ軸部と前記ネジ下孔径よりも大きい頭部とを有するネジ立て可能金属製ネジとを用意し、
前記ネジ立て可能金属製ネジ軸部の雄ネジ山により、前記第1のネジ下孔において雌ネジ山を成形しおよび破損させて前記ネジ立て可能金属製ネジを空回り状態とし、かつ前記第2のネジ下孔において雌ネジ山を成形して前記ネジ立て可能金属製ネジを嵌め合わせ固定して、前記金属製照明器具反射板を前記金属製照明器具本体に装着することを特徴とする照明器具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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