説明

照明器具の傾き補正装置

【課題】照明器具の傾きのバランス調整を細かなピッチで行う。
【解決手段】傾き補正装置10は、カップリング部20およびキャップ部30を備え、カップリング部20は照明器具本体に対してコード8を中心軸として回動可能に取り付けられるとともに、キャップ部30はカップリング部20の上端側に対してコード8と直交する水平面内の所定方向にスライド可能に取り付けられる。カップリング部20の一対の矩形孔22と、キャップ部30の一対の矩形孔22に挿入係止される一対の係止片32との所定方向に沿った面には、キャップ部30のカップリング部20に対するスライド停止位置を決定するスライド位置決定手段を構成する凹部24および凸部34が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井からコードによって吊り下げられるタイプの照明器具の傾きを補正する照明器具の傾き補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、天井からコードによって吊り下げられるタイプの照明器具(例えば、特許文献1(第2−7頁、第1−5図)参照)が知られている。この照明器具は、天井より垂下される線状部材と、この線状部材によって吊り下げられランプが取り付けられる本体と、ランプを覆い本体に取り付けられるセード(笠部)とを備えて構成される。
【0003】
また、照明器具は、本体の天板部に形成されたこの照明器具を吊り下げたときの重量中心部分を通過する長孔と、本体の内側に長孔に沿って複数設けられた当接部と、長孔を貫通する線状部材の下端部分に設けられた保持部とを有する。そして、この保持部が、複数の当接部の一つに当接して本体を吊り下げることで、本体のバランス(セードの傾き)を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−200085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている照明器具では、本体に形成された長孔に沿って設けられた当接部と、線状部材の下端部分に取り付けられた保持部とが当接することで本体を吊り下げ、この保持部の位置を適宜変更してそのバランスを調整する構成である。このため、当接部と保持部との大きさごとのピッチでしかバランスの調整を行うことができず、さらに細かなピッチでのバランス調整を行うことができないという問題がある。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、照明器具の傾きのバランス調整を細かなピッチで行うことができる照明器具の傾き補正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる照明器具の傾き補正装置は、天井からのコードによって吊り下げられる照明器具本体に対して、前記コードを挿通した状態でそのコードを中心軸として回動可能に取り付けられるカップリング部と、前記カップリング部の上端側に対して、前記コードと直交する水平面内の所定方向にスライド可能に嵌合されるキャップ部と、前記キャップ部の前記カップリング部に対する前記所定方向へのスライド停止位置を決定するスライド停止位置決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記カップリング部は、例えば中心部に前記コードが挿通される取付孔と、この取付孔を水平方向に挟んだ位置に設けられた一対の矩形孔とを有し、前記キャップ部は、例えば中心部から偏心した位置に前記コードが挿通されるコード挿通孔と、前記一対の矩形孔にスライド移動可能な状態で挿入係止される一対の係止片とを有し、前記スライド停止位置決定手段は、例えば前記一対の矩形孔および一対の係止片の前記所定方向に沿った面に設けられた、前記所定方向に所定間隔で凹部と凸部とが係合するラチェット構造からなる構成とされていてもよい。
【0009】
なお、前記凸部は、例えば前記係止片にU字状に切欠形成されてなる可撓性を有する舌片部に設けられている構成とされていてもよい。
【0010】
この発明にかかる照明器具の傾き補正装置においては、例えば前記照明器具本体と前記取付孔との間に配置され、前記取付孔の前記照明器具本体側における周縁部と接する環状の波座金をさらに備えた構成とされていてもよい。
【0011】
また、前記カップリング部は、例えば前記取付孔の内周面に形成されたネジ部を有し、前記ネジ部が前記照明器具本体に突設された管状部材の外周面に形成されたネジ部に螺合するとともに、前記波座金の弾性力によって前記軸方向上方に付勢されることにより、前記照明器具本体に回動可能に取り付けられている構成とされていてもよい。
【0012】
前記カップリング部およびキャップ部は、例えば樹脂成形部材からなる構成とされていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、照明器具の傾きのバランス調整を細かなピッチで行うことができる照明器具の傾き補正装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態にかかる照明器具の傾き補正装置を説明するための分解斜視図である。
【図2】同傾き補正装置のカップリング部を説明するための説明図である。
【図3】同傾き補正装置のキャップ部を説明するための説明図である。
【図4】同傾き補正装置の要部構造を説明するための一部断面図である。
【図5】同傾き補正装置の動作状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付の図面を参照して、この発明にかかる照明器具の傾き補正装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、この発明の一実施形態にかかる照明器具の傾き補正装置を説明するための分解斜視図、図2はこの傾き補正装置のカップリング部を説明するための説明図、図3はこの傾き補正装置のキャップ部を説明するための説明図である。また、図4は、この傾き補正装置の要部構造を説明するための一部断面図、図5はこの傾き補正装置の動作状態を説明するための説明図である。
【0017】
この実施形態にかかる照明器具の傾き補正装置10は、図1に示すように、図示しないランプを覆うように照明ユニット1(図4参照、以下同じ。)に取り付けられたセード9を有する照明器具本体4に対して取り付けられるカップリング部20と、このカップリング部20の上端側に取り付けられるキャップ部30とを備えて構成されている。
【0018】
なお、この傾き補正装置10が適用される照明器具本体4は、天井(図示せず)からの電気配線のコード8によって天井に吊り下げられるタイプのものである。したがって、従来技術のもののように、別途天井に照明器具本体を吊り下げるための線状部材等は不要な構造となっている。また、この傾き補正装置10は、カップリング部20およびキャップ部30ともに、例えば樹脂成形部材からなる。このため、別途照明器具本体4に孔開け加工等を施す必要がなく、非常に安価に製造することができるものである。
【0019】
カップリング部20は、照明器具本体4に対して、コード8を挿通した状態でそのコード8を中心軸として回動可能に取り付けられている。一方、キャップ部30は、照明器具本体4に取り付けられたカップリング部20の上端側に対して、コード8と直交する水平面内の所定方向にスライド可能に嵌合される。カップリング部20は、図1および図2に示すように、例えば円筒状の周壁部26と、この周壁部26の上方を、キャップ部30が収容される凹部を形成した状態で塞ぐ上壁部23とを有する。
【0020】
このカップリング部20は、例えば種々の照明器具本体4に対して取り付け可能となるように、汎用性の高い大きさや寸法をもって、所定規格にて形成されている。また、カップリング部20は、テーパ状に形成されている。なお、周壁部26の外周面には、例えば所定のシボパターンが形成されている。
【0021】
また、カップリング部20の上壁部23の中心部には、コード8が挿通される取付孔21を有する。図2に示すように、取付孔21の周縁部21aは、上壁部23の下面から下方に突出し、その内面にネジ部25が形成されている。照明器具本体4の上端には、コード8が挿通されるパイプ7が突設されている。このパイプ7の外周面にもネジ部7aが形成されている。
【0022】
カップリング部20は、ネジ部25が、パイプ7のネジ部7aと螺合することによって、セード9が取り付けられた照明ユニット1に直接取り付けられる構造となっている。なお、カップリング部20の取付孔21の周縁部21a(図2(b)参照、以下同じ。)は、取付時には図4に示すように、その下端が波座金(ウェーブワッシャー)5を介してセード9の取付ナット6に接している。
【0023】
したがって、カップリング部20は、上述したようにネジ部25および7aによってパイプ7と螺合するのみならず、この波座金5の弾性力によってさらに軸方向上方に向かって付勢された状態で照明ユニット1に取り付けられている。これにより、波座金5がない場合と比べて、より一層バランスの非調整時においてカップリング部20が不用意に回動することなく、反対に調整時には回転方向へ任意に回動させて容易に停止させることが可能な構造となっている。
【0024】
カップリング部20の上壁部23には、さらに、図2(a)に示すように、取付孔21を水平方向に挟んだ位置に一対の矩形孔22が設けられている。これら一対の矩形孔22は、上記水平面内の所定方向がその開口の長手方向となるように形成されている。また、一対の矩形孔22には、取付孔21を挟んだ矩形孔22同士の対向方向外側内壁面22aにおける長手方向中心近傍位置に、後述するスライド停止位置決定手段の一部を構成する溝状の凹部24が、それぞれ複数(ここでは、4つずつ)長手方向に沿った蛇腹状に形成されている。
【0025】
一方、キャップ部30は、図1および図3に示すように、カップリング部20の上壁部23側(すなわち、上端側)に嵌るスライド移動可能な円板状の樹脂成形部材からなる。キャップ部30は、図3(b)に示すように、円板状に成形されたキャップ本体部33を有し、このキャップ本体部33には、コード8が摺接しながら挿通されるコード挿通孔31が、その中心部から偏心した位置に軸方向に貫通して設けられている。
【0026】
コード挿通孔31は、図3(c)に示すように、キャップ本体部33から上方に立設した円筒状の周壁部36の内側にて、その内周面によってコード8の外周面と摺接するような大きさの内径を備えて構成されている。また、キャップ本体部33の下面には、カップリング部20に設けられた一対の矩形孔22と嵌合時に対応する位置の下方に延出形成された一対の係止片32が設けられている。これら一対の係止片32は、一対の矩形孔22に対して、カップリング部20に嵌合されたときにスライド移動可能な状態で挿入係止される。
【0027】
具体的には、キャップ部30は、カップリング部20に対して、一対の係止片32の先端側における係止片32の対向方向外側に突出形成された係止突起部35(図3(c)等参照、以下同じ。)が、一対の矩形孔22の同じく対向方向外側の下方の周縁部にそれぞれ係合することでスライド可能に嵌合される。なお、キャップ本体部33の上面には、図3(b)に示すように、スライド方向を表す三角形のマーク37が形成され、これによりスライド方向を視認可能な構造となっている。また、キャップ本体部33は、カップリング部20への嵌合後にスライド移動を可能とするために、上方から見て円形ではなく、カップリング部20の凹部の領域よりも小さな外径を有する楕円形に形成されている。
【0028】
一対の係止片32には、図3(a)および図3(c)に示すように、スライド停止位置決定手段の他の一部を構成する係止片32同士の対向方向外側の外壁面に形成された凸部34がそれぞれ設けられている。この凸部34は、一対の矩形孔22に形成された各凹部24に嵌る形状で形成されている。
【0029】
なお、各凸部34は、一対の係止片32が対向方向内側に可撓性を有する構造である場合には、上述したように係止片32の対向方向外側の外壁面に直接形成されればよいが、ここではキャップ部30のスライド移動をより容易にするために、具体的には次のように形成されている。すなわち、凸部34は、図3(a)に示すように、一対の係止片32にU字状に切欠形成されてなる可撓性を有する舌片部32aの外壁面にそれぞれ形成されている。
【0030】
これにより、キャップ部30をスライド移動する際に、一対の矩形孔22および一対の係止片32の係止状態は維持したまま、一対の矩形孔22の凹部24と係合状態にある凸部34が、舌片部32aの弾性で上述した対向方向内側に適度に変位する。また、再度凹部24と係合するときは、舌片部32aの復元力で元の位置に戻るので確実に凹部24と係合する。
【0031】
このため、バランスの調整時にキャップ部30の操作に必要な力を少なくすることができるとともに、適度なクリック感をもたせて確実にキャップ部30のカップリング部20に対するスライド停止位置を定めることができる。このように、これら凹部24および凸部34によって、これらが所定方向に所定間隔で係合するラチェット構造からなる傾き補正装置10のスライド停止位置決定手段が構成されている。本例においては、凹部24および凸部34が細かいピッチで形成されているので、キャップ部30のカップリング部20に対するスライド停止位置は、例えば0.5mm刻みやそれ以下の細かいピッチで段階的に(例えば、4段階に)調整することができる構成となっている。
【0032】
このように構成された傾き補正装置10を用いた照明器具のバランスの調整は、次のように行われる。まず、図5(a)に示すように、傾き補正装置10が取り付けられた照明器具本体を天井に吊り下げたときに、この照明器具本体のセード9が、例えばA点側が下方に下がった状態となっていることとする。
【0033】
この場合、傾き補正装置10のカップリング部20を、矢印方向に回動させてマーク37がA点方向を向くように調整する。次に、図5(b)に示すように、キャップ部30をカップリング部20に対して矢印方向にスライドさせ、セード9の傾きがなくなる状態となる停止位置まで移動させる。
【0034】
このときのキャップ部30のカップリング部20に対するスライド停止位置は、スライド停止位置決定手段を構成する凹部24および凸部34の係合状態により適宜決定されるので、これらの設定寸法等が細かければ細かい程、調整ピッチを細かくして微調整を行うことができる。
【0035】
また、キャップ部30のコード挿通孔31の内周面が例えばコード8の外周面と摺接しているため、コード8を損傷しない程度にコード8の照明器具本体4に対する軸中心をずらした状態とすることができ、この状態でキャップ部30のスライド停止位置を維持したままバランス調整された照明器具本体4を天井から吊り下げられた状態とすることができる。
【0036】
以上述べたように、この実施形態にかかる照明器具の傾き補正装置10は、樹脂成形部材からなるカップリング部20およびキャップ部30により所定規格の寸法等をもって構成されているため、安価に製造可能で汎用性が高い。また、カップリング部20を回動させ、キャップ部30をスライドさせるだけで傾きを補正することができるため、容易に照明器具のバランスの調整作業を行うことができる。さらに、調整ピッチが細かいスライド停止位置決定手段によってキャップ部30のカップリング部20に対するスライド停止位置を決定することができるので、照明器具のバランス調整の微調整で行うことができる。
【0037】
なお、本発明にかかる照明器具の傾き補正装置10は、上述した実施形態に記載されたものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良、変更等が可能である。例えば、傾き補正装置10の各部の寸法や材料、形状等を適宜変更して構成することもできる。
【0038】
具体的には、例えばスライド停止位置決定手段を一対の矩形孔22および一対の係止片32の少なくとも一組の対向面に形成された凹部24および凸部34によって構成したり、矩形孔22に形成された凸部34と係止片32に形成された凹部24とによって構成したりすることも可能である。また、カップリング部20に上壁部23から上方に延出する一対の係止片32を形成し、キャップ部30に一対の矩形孔22を形成して、これらに凹部24および凸部34を設けてスライド停止位置決定手段を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 照明ユニット
4 照明器具本体
5 波座金(ウェーブワッシャー)
6 取付ナット
7 パイプ
7a ネジ山
8 コード
9 セード(笠部)
10 傾き補正装置
20 カップリング部
21 取付孔
22 矩形孔
23 上壁部
24 凹部
25,27 ネジ部
26,36 周壁部
30 キャップ部
31 コード挿通孔
32 係止片
32a 舌片部
33 キャップ本体部
34 凸部
35 係止突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井からのコードによって吊り下げられる照明器具本体に対して、前記コードを挿通した状態でそのコードを中心軸として回動可能に取り付けられるカップリング部と、
前記カップリング部の上端側に対して、前記コードと直交する水平面内の所定方向にスライド可能に嵌合されるキャップ部と、
前記キャップ部の前記カップリング部に対する前記所定方向へのスライド停止位置を決定するスライド停止位置決定手段とを備えた
ことを特徴とする照明器具の傾き補正装置。
【請求項2】
前記カップリング部は、中心部に前記コードが挿通される取付孔と、この取付孔を水平方向に挟んだ位置に設けられた一対の矩形孔とを有し、
前記キャップ部は、中心部から偏心した位置に前記コードが挿通されるコード挿通孔と、前記一対の矩形孔にスライド移動可能な状態で挿入係止される一対の係止片とを有し、
前記スライド停止位置決定手段は、前記一対の矩形孔および一対の係止片の前記所定方向に沿った面に設けられた、前記所定方向に所定間隔で凹部と凸部とが係合するラチェット構造からなる
ことを特徴とする請求項1記載の照明器具の傾き補正装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記係止片にU字状に切欠形成されてなる可撓性を有する舌片部に設けられている
ことを特徴とする請求項2記載の照明器具の傾き補正装置。
【請求項4】
前記照明器具本体と前記取付孔との間に配置され、前記取付孔の前記照明器具本体側における周縁部と接する環状の波座金をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の照明器具の傾き補正装置。
【請求項5】
前記カップリング部は、前記取付孔の内周面に形成されたネジ部を有し、
前記ネジ部が前記照明器具本体に突設された管状部材の外周面に形成されたネジ部に螺合するとともに、前記波座金の弾性力によって前記軸方向上方に付勢されることにより、前記照明器具本体に回動可能に取り付けられている
ことを特徴とする請求項4記載の照明器具の傾き補正装置。
【請求項6】
前記カップリング部およびキャップ部は、樹脂成形部材からなる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の照明器具の傾き補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−108410(P2011−108410A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260057(P2009−260057)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000103633)オーデリック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】