説明

照明装置

【課題】
発光体からの放射光の光損失が低減されるとともに、小型化が図れる照明装置を提供する。
【解決手段】
照明装置1は、複数個の半導体発光素子16が凸面状に設けられた発光体2と、半導体発光素子16が焦点F1よりも出射方向側に位置することができるように発光体2に対して設けられたレンズ3と、投光開口6から発光体2の放射光が出射するように発光体2およびレンズ3を配設している筐体4と、レンズ3の光軸方向で発光体2およびレンズ3の相対的位置を調整する調整手段5とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光源である発光体からの放射光をレンズで制御して出射する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スタジオや劇場などの演出照明で使用される照明装置としてのスポットライトは、光源、この光源の放射光を集光して光軸方向へ照射するレンズ、光源とレンズとの距離を変えて放射光の照射範囲を調整する調整手段および光源やレンズを収納する筐体を備えている。そして、近年、光源は、発光ダイオード(LED)が使用されている。
【0003】
光源としてのLEDは、長寿命であり、発熱量が小さいとともに、多種類の色光に対応可能であるという利点を有する。しかし、LEDは、従来使用されているハロゲン電球や放電ランプに比べて、個々の光量が比較的小さい。このため、スポットライトは、多数のLEDを使用して、所定の光量を得るようにしている。
【0004】
従来、スポットライトには、例えば球面板の内側曲面(凹面)に多数のLEDを配置し、各LEDの照射ビームを一点に集光させて仮想の単一点光源ユニットを構成し、この光源ユニットとレンズとの位置関係を可変にして被照射面の照度および照度分布を変化させるものがある(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
また、擬似光源部となるアパーチャに光ビームが向くように複数個のLEDを配置して構成されたスポットライトが提供されている(例えば特許文献2参照。)。このスポットライトは、複数個のLEDが凹面状に配置されており、LEDからの光の集光点がアパーチャの位置となり、アパーチャで擬似光源を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−307502号公報(第4頁、第3図)
【特許文献2】特開2010−192394号公報(第2頁、第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LEDを凹面状に配置する従来の構成は、スポットライトから出射される全光束を大きくするためにLEDの数量を多くするほど、凹面状の形状が大きくなって、LEDから集光点までの距離が大きくなるとともに、LEDからレンズまでの距離も大きくなる。このため、筐体の長手寸法および高さ寸法がそれぞれ大きくなってスポットライトの小型化が図れにくくなるとともに、LEDおよびレンズ間の光損失が大きくなるという問題があった。
【0008】
本実施形態は、発光体からの放射光の光損失が低減されるとともに、小型化が図れる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の照明装置は、発光体、レンズ、筐体および調整手段を有して構成される。
【0010】
発光体は、複数個の半導体発光素子が凸面状に設けられている。
【0011】
レンズは、半導体発光素子が焦点よりも発光体の放射光の出射方向側に位置することができるように発光体に対して設けられている。
【0012】
筐体は、投光開口を有している。そして、筐体は、投光開口から発光体の放射光が出射するように発光体およびレンズを配設している。
【0013】
調整手段は、レンズの光軸方向で発光体およびレンズの相対的位置を調整する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、発光体は、複数個の半導体発光素子が凸面状に設けられ、レンズの焦点よりもレンズ側に設けられるので、半導体発光素子とレンズとの距離を小さくすることができて、半導体発光素子からの放射光の光損失を低減でき、筐体の小型化を図ることができることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を示す照明装置の概略断面図である。
【図2】同じく、発光体の概略断面図である。
【図3】同じく、図1のA部分の拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の照明装置1は、例えばスタジオや舞台などで使用されるスポットライトであり、図1に示すように、発光体2、レンズ3、筐体4および調整手段としての調整部材5を有して構成されている。照明装置1は、筐体4が前面4a側に投光開口6を有する略直方体に形成されており、投光開口6から発光体2の放射光を出射する。
【0018】
発光体2は、筐体4内の中央部に配設された取付け箱7に設けられている。この取付け箱7は、L形の支持部材8、リベット9およびねじ10により筐体4内に取り付けられた取付部材11に固定されている。取付け箱7は、四角形状に形成され、その側面側に放熱器12,13が設けられている。また、取付部材11には、放熱器14が取り付けられている。放熱器14は、取付部材11に取り付けられた固定板11a,11aに挟持されるようにして設けられている。放熱器12,13,14は、放熱フィンを有する既存の構成により形成されている。
【0019】
発光体2は、図2に示すように、基板15および半導体発光素子としての発光ダイオード16を有して形成されている。基板15は、金属板例えばアルミニウム(Al)板からなり、周回に亘る円形のフランジ部17およびこのフランジ部17から外方に略椀状に突出する突出部18に形成されている。そして、突出部18の頂部側外面18aには、四角形状の平面部19が連設するように形成されている。この平面部19は、発光ダイオード16の実装面となっており、少なくとも発光ダイオード16の数量分設けられている。また、各平面部19は、フランジ部17に対してそれぞれ所定の傾斜角度となるように形成されている。突出部18は、少なくとも平面部19に図示しない絶縁層が形成されている。
【0020】
そして、基板15は、そのフランジ部17が取付け箱7の取付け板部20に複数個のねじ21およびナット22により取り付けられている。取付け板部20は、開口されている。基板15は、その突出部15が取付け板部20の開口23に正対するように設けられている。
【0021】
発光ダイオード16は、例えば両側に一対の電極16a,16bを有するSMD(Surface Mount Device)形であり、可視光例えば白色光を放射するように形成され、突出部18の平面部19において、図示しない接着材により絶縁層上に固定されている。そして、発光ダイオード16は、突出部18の頂部側外面18aにマトリックス状に設けられている。例えば5個の発光ダイオード16が5列に設けられている。
【0022】
発光ダイオード16が実装されている各平面部19は、突出部18の頂部側外面18aに連設するように形成されているとともに、フランジ部17に対してそれぞれ所定の傾斜角度となるように形成されている。したがって、複数個の発光ダイオード16は、突出部18の頂部側外面18aに集合して設けられているとともに、フランジ部17に対して凸面状に設けられている。
【0023】
そして、列状の隣り合う発光ダイオード16,16は、それらの電極16a,16bにジャンパー線24がはんだ付けされている。発光ダイオード16は、列毎に直列接続されて、各列が並列接続されている。すなわち、発光ダイオード16は、ジャンパー線24により直並列接続されている。
【0024】
そして、列状の最端側の発光ダイオード16,16の電極16a,16bにリード線25,25がはんだ付けされている。リード線25,25は、基板15の突出部18に設けられた挿通孔26,26を通って、取付け板部20の開口23から取付け箱7内に導入され、後述する点灯装置39に接続されている。
【0025】
なお、発光ダイオード16は、基板15に複数個のLEDベアチップを実装して透光性樹脂で封止したCOB(Chip On Board)形のものであってもよい。
【0026】
図1において、レンズ3は、例えばフレネルレンズであり、その平面3aが発光体2側となり、その屈曲面3bが筐体4の投光開口6側となるように、発光体2に正対して設けられている。レンズ3は、発光体2の発光ダイオード16から放射された放射光を光軸方向側に出射するように配設されている。
【0027】
また、レンズ3は、発光体2の複数個の発光ダイオード16がレンズ3の焦点F1よりもレンズ3側に位置することができるように発光体2に対して設けられている。すなわち、レンズ3は、複数個の発光ダイオード16がレンズ3の焦点F1よりも放射光の出射方向側に位置することができるように発光体2に対して設けられている。
【0028】
発光体2は、当初、発光ダイオード16がレンズ3の焦点F1よりもレンズ3側に位置するように設けられる。このとき、発光ダイオード16は、レンズ3の焦点F1に配設される仮想点光源から放射される放射光の放射経路上に位置するとともに、自身の放射光が仮想点光源の放射光と同一方向を向くように設けられている。すなわち、図2において、発光ダイオード16が実装される平面部19は、前述となるように、その位置および傾斜角度が設定されている。
【0029】
レンズ3は、図1に示すように、底板部26に開口27を有し、高さが低い円筒体28にねじ29により取り付けられている。レンズ3は、底板部26に開口27を塞ぐように取り付けられている。そして、円筒体28の下端側には、円筒体28を筐体4内に保持するとともに、筐体4内で移動させるための継手30が設けられている。継手30は、ねじ29aにより円筒体28に固定されている。
【0030】
継手30は、図3に示すように、円筒状の管体31およびこの管体31に固定されたねじ32を有して形成されている。ねじ32は、管体31に形成された図示しない孔に挿入され、その先端側32aが管体31内に位置するようにして、ナット33により管体31に固定されている。
【0031】
図1において、筐体4は、前面4a側に投光開口6を有し、後面4b側に突片34を有する長方形の箱状に金属板により形成されている。筐体4は、前面4aから後面4b方向が長手方向となっている。後面4bには、図示しない操作スイッチなどが配設されている。また、下面4c側には、電源収納箱35、端子収納箱36および支持脚37が設けられている。
【0032】
電源収納箱35には、電源装置38が収納されている。端子収納箱36には、図示しない端子台が収納されている。支持脚37は、電源収納箱35とともに筐体4全体を支持する。端子台には、外部の交流電源からの図示しない電源線が接続される。電源装置38は、交流電源を直流電源に変換するものであり、既存の構成により形成されている。
【0033】
そして、筐体4は、放熱器14の配設領域の短手方向両側に、図1中、2点鎖線で示すように、点灯装置39を収納している。点灯装置39は、電源装置38から出力された直流電源を調整して、所定の直流電圧を一対のリード線25,25(図2に示す。)間に出力するように、既存の構成により形成されている。これにより、発光体2の発光ダイオード16は、所定の電流が流れて点灯する。
【0034】
筐体4は、発光体2を取付部材11および取付け箱7などを介して配設し、レンズ3を調整部材5、継手30および円筒体28を介して配設している。すなわち、筐体4は、投光開口6から発光体2の放射光が出射するように発光体2およびレンズ3を配設している。そして、発光体2とレンズ3との距離は、調整手段としての調整部材5により変化される。
【0035】
調整部材5は、筐体4の下面4c側の内側に設けられており、回転軸40、支持管41,42、軸受43および操作ハンドル44を有して構成されている。回転軸40は、真鍮などの金属棒からなり、長手方向に螺旋状の溝45が形成されている。回転軸40は、筐体4の後面4bから外方に突出するように設けられている。
【0036】
支持管41,42は、回転軸40を筐体4内に支持するものであり、図示しない支持部材などにより筐体4の内面に取り付けられている。支持管41,42は、それぞれ略円筒状に形成され、回転軸40を挿通させている。軸受43は、筐体4の前面4aの背面側に取り付けられており、回転軸40を支えて回転させる。
【0037】
そして、操作ハンドル44は、筐体4の後面4の外方において、回転軸40に取り付けられている。操作ハンドル44の回転が回転軸40の回転となるものである。
【0038】
そして、回転軸40には、支持管41および支持間42の間において、継手30の管体31が挿通されている。そして、図3に示すように、管体31に固定されたねじ32の先端側32aが回転軸40の溝45内に挿入されている。
【0039】
ねじ32は、回転軸40の回転により溝45に沿って移動する。これにより、継手30、円筒体28およびレンズ3が回転軸40の長手方向に沿って移動する。すなわち、操作ハンドル44を、図1中、右回りに回転させると、レンズ3は、筐体4の投光開口6側に移動し、発光体2から遠ざかる。また、操作ハンドル44を、図1中、左回りに回転させると、レンズ3は、発光体2側に移動し、発光体2に近づく。このように、調整部材5は、操作ハンドル44を回転操作することにより、レンズ3の光軸方向で発光体2およびレンズ3の相対的位置を調整する。
【0040】
なお、調整手段としての調整部材5は、筐体4の短手方向の両側に設けられている。このとき、一方の調整部材5は、上述のように形成されているが、他方の調整部材5は、軸受43および操作ハンドル44が設けられず、回転軸40が溝45を有しなく回転しない挿通棒となっているものである。
【0041】
次に、本実施形態の作用について述べる。
【0042】
点灯装置39から発光体2の発光ダイオード16に所定の電流が供給されると、発光ダイオード16は、点灯して、可視光を放射する。この放射光は、レンズ3の屈曲面3b側で主として屈曲されて、筐体4の投光開口6から外方に出射される。
【0043】
そして、調整部材5の操作ハンドル44を左回り又は右回りに回転させることにより、レンズ3が発光体2に近づき又は遠ざかり、投光開口6から出射される出射光の照射範囲および照射分布が変化される。
【0044】
複数個の発光ダイオード16は、基板15に凸面状となるように設けられているとともに、レンズ3の焦点F1よりもレンズ3側となることができるように設けられている。したがって、発光体2とレンズ3との距離が比較的短くなっており、前記距離が短くなる分、発光体2およびレンズ3間における発光ダイオード16からの放射光の光損失が低減される。
【0045】
また、基板15で発光ダイオード16が集合されて実装されているので、基板15における発光ダイオード16の実装面積(占有領域)が小さくなり、発光体2が小型化される。これにより、レンズ3も小型化されて、発光体2およびレンズ3を配設する筐体4が小型化される。
【0046】
そして、複数個の発光ダイオード16は、その放射光の放射方向がレンズ3の焦点F1に設けられる仮想点光源の放射方向となるように基板15に設けられているので、レンズ3から均一な出射光が出射されるようになり、これにより、筐体4の投光開口6から均一な出射光が出射される。
【0047】
本実施形態の照明装置1によれば、発光体2は、複数個の発光ダイオード16が基板15に凸面状に設けられて、レンズ3の焦点F1よりも放射光の出射方向(レンズ3)側に設けられるので、発光ダイオード16とレンズ3との距離を小さくすることができ、発光体2およびレンズ3をそれぞれ小型化することができて、発光ダイオード16からの放射光の光損失を低減できるとともに、筐体4の小型化を図ることができるという効果を有する。
【0048】
また、複数個の発光ダイオード16は、基板15に集合して設けられ、それぞれの放射方向がレンズ3の焦点F1に設けられる仮想点光源の放射方向となるように設定されているので、筐体4の投光開口6から均一な放射光を出射することができるという効果を有する。
【符号の説明】
【0049】
1…照明装置、 2…発光体、 3…レンズ、 4…筐体、 5…調整手段としての調整部材、 6…投光開口、 16…半導体発光素子としての発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の半導体発光素子が凸面状に設けられた発光体と;
前記半導体発光素子が焦点よりも出射方向側に位置することができるように前記発光体に対して設けられたレンズと;
投光開口を有し、この投光開口から前記発光体の放射光が出射するように前記発光体および前記レンズを配設している筐体と;
前記レンズの光軸方向で前記発光体および前記レンズの相対的位置を調整する調整手段と;
を具備していることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記複数個の半導体発光素子は、集合して設けられ、前記投光開口から均一な放射光が出射するようにそれぞれの放射方向が設定されていることを特徴とする請求項1記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−114976(P2013−114976A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261872(P2011−261872)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】