説明

熱交換器、及び、伝熱管

【課題】熱伝導性能に優れ、小型化、軽量化、省資源化を図ることができ、効率よく製造することができる伝熱管及びこのような伝熱管を備えた熱交換器の提供を目的とする。
【解決手段】管内面11に複数の溝13が形成され、管内に単相流体を流通させる内面溝付きの伝熱管10であって、管軸に対する前記溝13の捩れ角(β)、前記溝同士の間に形成されるフィン12の高さ(H)と最大内径(d)との比(H/d)、及び、前記フィン12の高さ(H)と前記溝13の底幅(W)との比(W/H)のうち少なくとも1つが、管内面11に前記溝13を形成したことによる伝達率の増加率が、前記溝13を形成したことによる圧力損失の増加率より大きくなるよう形成した伝熱管10、及び、該伝熱管10を備えた熱交換器43。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷凍機器、家庭用空調機(エアコン)、業務用空調機(パッケージエアコン)、給湯機等の空調機器に備えられる熱交換器、及び、熱交換器に備えられる管内溝付の伝熱管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍機器、家庭用空調機、業務用空調機、給湯機には、フロン系冷媒が使用され、該フロン系冷媒を熱交換器と蒸発器との間を循環させるヒートポンプ式の熱サイクル機器が多く用いられてきた。
【0003】
しかし、フロン系冷媒は、オゾン層破壊や地球温暖化の要因となるため、最近ではフロン系以外の冷媒についても研究開発が進められ、実用化が進んでいる状況にある。
【0004】
しかし、このようなヒートポンプ給湯器用の熱交換器に備える伝熱管は、管内の流速が低く、レイノルズ数(Re数)が低い状態(層流)になっており、伝熱性能が向上し難いことが課題となっていた。
【0005】
伝熱管の内部に流れる流体は、管内面の摩擦抵抗(接触抵抗)により、管内面付近に流れの緩やかな層(層流)が形成され、管中心を流れる層と分けられる。この内面付近に形成される層により熱交換が阻害されるため、伝熱性能の低下が起こる。
【0006】
近年ではヒートポンプにより沸かしたお湯を床暖房などに使用する製品の開発も進んでおり、管内に水を流通させた伝熱管の高性能化が求められ、伝熱性能の向上を目的として内面溝付管やコルゲート管といった伝熱管の通水を目的とした使用が検討されている。
【0007】
例えば、特許文献1では、伝熱管として内面溝付管を用いた熱交換システムが提案され、特許文献2では、コルゲート管を用いた熱交換器が提案されている。
【0008】
特許文献1によれば、水の流速が小さい状態で使用する場合においても熱交換器の伝熱性能が低下しないような条件として内面溝付きの伝熱管の内面形状と下限レイノルズ数との所定の関係を満たすよう内面形状を加工した伝熱管を用いるとともに、該伝熱管内への水の流れを設定して用いる熱交換システムが記載されている。
【0009】
しかし、特許文献1の熱交換システムは、このような所定の関係を満たした上で、水の流速が小さく、低レイノルズ数の状態での使用を実現するためには、事実上、伝熱管の外径をある程度大きくする必要がある。
【0010】
ところが、熱交換器の小型化、低コスト化のためには伝熱管の外径を小さくする必要があるが、特許文献1に記載の熱交換システムでは、伝熱管の外径を小さくすると低レイノルズ数の状態において伝熱性能の低下が起きてしまうという難点を有する。
【0011】
また、特許文献2に記載のコルゲート管には、内面に螺旋状の溝が形成されている。このような特許文献2に記載の伝熱管を得るには、コルゲート加工と内面溝加工の両方の加工を行う必要があり、いずれか一方の加工を施した伝熱管と比較して、加工が複雑になるとともに加工コストが増加してしまうという難点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−174832号公報
【特許文献2】特開2009−174833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明は、熱伝導性能に優れ、小型化、軽量化、省資源化を図ることができ、効率よく製造することができる伝熱管及びこのような伝熱管を備えた熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、管内面に複数の溝が形成された内面溝付きの伝熱管であって、管軸に対する前記溝の捩れ角(β)、前記溝同士の間に形成されるフィンの高さ(H)と最大内径(d)との比(H/d)、及び、前記フィン高さ(H)と前記溝の底幅(W)との比(W/H)のうち少なくとも1つが、管内面に前記溝を形成したことによる伝達率の増加率が、前記溝を形成したことによる圧力損失の増加率より大きくなるよう形成したことを特徴とする。
【0015】
この発明の態様として、前記伝熱管は、前記捩れ角(β)を35°〜60°の範囲内で形成することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記伝熱管は、前記溝同士の間で形成されるフィンの高さ(H)と最大内径(d)との前記比(H/d)を、0.04〜0.09の範囲内で形成することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記伝熱管は、前記フィン高さ(H)と前記溝の底幅(W)の比(W/H)を、内面溝のフィン高さ(H)と最大内径(d)との前記比(H/d)が1.4〜2.0の範囲内で形成することができる。
【0018】
また本発明は、管内面に複数の溝が形成され、管内に単相流体を流通させる伝熱管であって、管軸に対する前記溝の捩れ角(β)を35°〜60°の範囲内で形成し、前記溝同士の間に形成されるフィンの高さ(H)と最大内径(d)との前記比(H/d)を、0.04〜0.09の範囲内で形成し、前記溝同士の間で形成されるフィンの高さ(H)と前記溝の底幅(W)の前記比(H/W)を、1.4〜2.0の範囲内で形成した伝熱管であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記伝熱管を備えた熱交換器であることを特徴とする。
【0020】
ここで、上述した前記溝を形成したことによる伝達率の増加率とは、溝付管の熱伝達率から平滑管の熱伝達率を除した値を示し、上述した前記溝を形成したことによる圧力損失の増加率とは、溝付管の圧力損失から平滑管の圧力損失を除した値を示すものとする。
【0021】
前記伝熱管は、管内に例えば、水などの単相流体を流通させる熱交換器用伝熱管であることが好ましい。
【0022】
なお、本発明の特許請求の範囲及び明細書にて「〜」の記号を使って記載される範囲は、記号の前に記載される数値と、記号の後に記載される数値とを含むものとする。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、熱伝導性能に優れ、小型化、軽量化、省資源化を図ることができ、効率よく製造することができる伝熱管及びこのような伝熱管を備えた熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の伝熱管の構成説明図。
【図2】ヒートポンプ給湯器を示す概略図。
【図3】本実施形態の伝熱管の作用説明図。
【図4】本実施形態の伝熱管の性能評価実験に用いた実験装置の概略図。
【図5】本実施形態の熱交換器の説明図。
【図6】本実施形態の熱交換器の説明図。
【図7】本実施形態の熱交換器の説明図。
【図8】従来の伝熱管の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
本実施形態の伝熱管10は、図1(a),(b)に示すように、管内面11に複数の溝13が形成され、管内に単相流体を流通させる管である。
なお、図1(a)は、伝熱管10を管軸に対して直角に切断した一部を示す断面図であり、図1(b)は、伝熱管10の管軸を通る面における一部断面図である。
【0026】
さらに、前記伝熱管10は、管軸に対する前記溝13の捩れ角(β)(リード角)、前記溝13同士の間に形成されるフィン12の高さ(H)と最大内径(d)との比(H/d)、及び、前記フィン12の高さ(H)と前記溝13の底幅(W)の比(W/H)のうち少なくとも1つが、管内面11に前記溝13を形成したことによる伝達率の増加率が、前記溝13を形成したことによる圧力損失の増加率より大きくなるよう形成している。
【0027】
詳しくは、前記伝熱管10は、前記捩れ角(β)を35°〜60°の範囲内で形成することができる。
【0028】
前記伝熱管10は、前記溝13同士の間に形成されるフィン12の高さ(H)と最大内径(d)の前記比(H/d)を、0.04〜0.09の関係を満たす範囲内で形成することができる。
【0029】
前記伝熱管10は、前記フィン12の高さ(H)と前記溝13の底幅(W)との前記比(W/H)を、1.4〜2.0の関係を満たす範囲内で形成することができる。
【0030】
また、前記構成の伝熱管10は、ヒートポンプ給湯器37の熱交換器43に備えることができる。
ヒートポンプ給湯器37は、一般的に図2に示すようなシステムで構成されている。
なお、図2は、ヒートポンプ給湯器37のシステムフロー図である。
【0031】
ヒートポンプ給湯器37では、圧縮機41で高温高圧化された例えば、高温水を、ガスクーラーと呼ばれる熱交換器43に送り、該熱交換器43で伝熱管10内に流れる高温水と別の伝熱管10内に流れる水道水と熱交換することにより給湯に用いる温水を得ることがきる。ガスクーラー43で低温化された冷媒は、膨張弁45で低圧化されて、室外に設置される蒸発器46で外気により気化されて再び圧縮機41で高温高圧化される。
【0032】
このようなヒートポンプ給湯器37には、電力の使用量を平準化させるために安価に設定されている深夜間電力を使用して沸かした湯を、貯湯タンク47に貯めておき、翌日の日中にその貯湯タンク47内の湯を使用するものがある。
【0033】
具体的には、貯湯タンク47には、約6時間かけて、65〜90℃の湯が300〜500L貯められるため、ガスクーラー43には大体0.8〜1.4L/min.程度で水道水が供給される。
【0034】
上述した熱交換器、及び、伝熱管10により、以下のような様々な作用、効果を得ることができる。
通常、伝熱管の内部に流れる流体は、管内面11の摩擦抵抗により、管内面11付近に流れの緩やかな層LFが形成され、緩やかな層LFと、該緩やかな層LFよりも管中央を流れる層TFとに分けられる。従来の伝熱管100は、管内面11付近に形成される層LFにより熱交換が阻害されるため、伝熱性能の低下が起こっていた。
【0035】
これに対して本実施形態の伝熱管10は、捩れ角(β)を、35°以上で形成することにより、管内の流れを旋回させて流体の攪拌を促進することができるため、管内流速が低い場合でも、管内面11付近に流れる流体層LFと管の中央を流れる流体層TFとの境界層BL(境界面)の影響を抑制し、伝熱性能を向上させることができる。
一方、本実施形態の伝熱管10は、捩れ角(β)を、60°以下で形成することにより、圧力損失の影響が大きくなりすぎず、優れた伝熱性能を確保することができる。
【0036】
また、本実施形態の伝熱管10は、上述したように、前記溝13,13同士の間で形成されるフィン12の高さ(H)と最大内径(d)との前記比(H/d)を、0.04以上で形成することにより、管内流速が低い場合でも、管内面11付近に流れる流体層LFと管の中央を流れる流体層TFとの境界層BLの影響を抑制し、伝熱性能を向上させることができる。
【0037】
詳しくは、図8に示すように、従来の伝熱管10における管内面110に形成されたフィン12は、管内面110付近に流れる流体層LFにおいてのみ管内面110から突出し、境界層BLを越えて管の中央を流れる流体層TFの側へ突き出すことがない高さである。
【0038】
このような従来のフィン120は、管内面110付近を流れる流体層LFのみを攪拌できても、境界層BLの影響を受け、管の中央を流れる流体層TFを積極的に攪拌できず、伝熱性能を向上させることができない。
なお、図8は、従来の伝熱管100の管内に流体を流したときに奏する作用を、管軸に対して直角に切断した一部を示す断面で示した作用説明図である。
【0039】
これに対して、図3に示すように、本発明の伝熱管10における管内面11に形成されたフィン12は、境界層BLを越えて管の中央を流れる流体層TFの側へ管内面11から突き出すため、このようなフィン12により、管内面11付近を流れる流体のみならず、管の中央を流れる流体も含めて管内の流れを旋回させることができる。
【0040】
よって、管内流速が低い場合でも、管内面11付近に流れる流体層LFと管の中央を流れる流体層TFとの境界層BLの影響を抑制し、伝熱性能を向上させることができる。
【0041】
一方、伝熱管10は、上述したとおり前記溝13同士の間で形成されるフィン12の高さ(H)と最大内径(d)の前記比(H/d)を、0.09以下で形成することで、フィン12の高さが高くなりすぎることにより流体の流れを過度に妨げることがないため、圧力損失の影響が大きくなりすぎることを防ぐことができる。さらにまた、拡管時にフィン12倒れが発生することのない高品質な伝熱管10を得ることができる。
【0042】
また、伝熱管10は、上述したように、前記フィン12の高さ(H)と前記溝13の底幅(W)との比(W/H)を、1.4以上で形成することで、溝13の容積を大きくし、該溝13に流体がながれ易くなるため、伝熱性能を向上させることができる。
【0043】
一方、前記フィン12の高さ(H)と前記溝13の底幅(W)との比(W/H)を、2.0以下で形成することで、管軸方向において隣り合うフィン12の間隔(ピッチ)が広がりすぎないため、フィン12による優れた流体の旋回作用を確保することができる。
なお、図3は、本実施形態の伝熱管10の管内に流体を流したときに奏する作用を、管軸に対して直角に切断した一部を示す断面で示した作用説明図である。
【0044】
また、本実施形態の伝熱管10は、管内面11に対して溝加工を行うだけでよく、管外面に例えばコルゲート加工を施す必要がなく、複雑な加工を要さず、加工コストが増加することなく、優れた伝熱性能を得ることができる。
【0045】
続いて、本実施形態の伝熱管10の性能検証のために行った伝熱性能評価実験について説明する。
本実験では、外径(φD)がφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmのそれぞれについて発明例1乃至13の伝熱管10(以下、「発明例1乃至13」という。)、及び、比較例1,2の伝熱管100(以下、「比較例1,2」という。)を製作した。
【0046】
発明例1乃至13、及び、比較例1,2は、表1(a)から(c)に示すような形状、すなわち、肉厚、内径、溝数、フィン高さ(H)(溝深さ)、溝底幅(W)、捩れ角(β)、フィン高さ(H)と最大内径(d)との比(H/d)、フィン高さ(H)と溝底幅(W)との比(W/H)で形成している。
【0047】
【表1】

表1(a),(b),(c)は、外径(D)がそれぞれφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmである場合の発明例1乃至13、及び、比較例1,2の形状を示している。
【0048】
なお、発明例1乃至13、及び、比較例1,2は、表1(a)に示すとおり、外径(D)がφ7.94mmである場合は、発明例、及び、比較例の番号の末尾にAを付して示している。同様に、表1(b)に示すとおり、外径(D)がφ7.20mmである場合は、発明例、及び、比較例の番号の末尾にBを付して示し、表1(c)に示すとおり、外径(D)がφ6.35mmである場合は、発明例、及び、比較例の番号の末尾にCを付して示している。
【0049】
表1(a),(b),(c)に示すように、比較例1,2は、外径(D)がφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmのいずれにおいても捩れ角(β)が35°より小さく、前記比(H/d)が0.04よりも小さく、且つ、前記比(W/H)が1.4よりも小さく形成している。
【0050】
これに対して発明例1乃至3,7,11,13は、表1(a),(b),(c)中に「※1」を付して示したとおり、外径(D)がφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmのいずれにおいても捩れ角(β)を35°〜60°の範囲内で形成している。
発明例4乃至7,12,13は、表1(a),(b),(c)中に「※2」を付して示したとおり、外径(D)がφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmのいずれにおいても前記比(H/d)を、0.04〜0.09の範囲内で形成している。
【0051】
発明例8乃至13は、表1(a),(b),(c)中に「※3」を付して示したとおり、外径(D)がφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmのいずれにおいても前記比(W/H)を、1.4〜2.0の範囲内で形成している。
【0052】
本実験は、図4に示すような伝熱性能評価装置を用いて行った。
なお、図4は、伝熱性能評価装置の概略図を示している。

【0053】
評価装置の構成については、二重管式熱交換器となっており、供試管内に冷水を流通させ、供試管の外側に配置した外管に冷媒として温水を流通させて熱交換を行う。
【0054】
また、図4に示すように、二重管式熱交換器の各所定部位には、圧力計P、温度計T、流量計Gを配置している。
【0055】
本実験は、外径(D)がφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmのそれぞれについて発明例1乃至13、及び、比較例1,2のそれぞれを、図4に示す二重管式熱交換器に供試管として組み込んだ場合における伝熱性能を評価した。
【0056】
供試管の伝熱性能については、熱伝達率比、圧力損失比を測定し、この測定値をもとに(溝付管の熱伝達率/平滑管の熱伝達率)/(溝付管の圧力損失/平滑管の圧力損失)から導出した。
【0057】
供試管の管内での圧力損失比、及び、熱伝達率比αiは、以下のようにして求めている。
先ず管内での圧力損失比は、供試管の入口、出口の圧力差として圧力計Pにより求めている。
また、管内での熱伝達率比αiは、本実験での測定値をもとに式(1)から式(4)を用いて算出する。
【0058】
【数1】

【0059】
【数2】

【0060】
【数3】

【0061】
【数4】

ここで、数式(1)中のGは、低温流量(kg/sec.)、Cpは、低温水比熱(kJ/(kg・K))を示す。
数式(1),(2)中のTL1は、低温水側入口温度(K)、TL2は、低温水側出口温度(K)を示す。
数式(2)中のTH1は、高温水側入口温度(K)、TH2は、高温水側出口温度(K)を示す。
数式(3)中のDeは、環状部相当直径(m)、Diは、外管内径(m)、Reは、高温水側レイノルズ数(−)、Prは、高温水側プラントル数(−)、kは、高温水側熱伝導率(kW/(m・K))、vは、高温水流速(m/sec.)、ρは、高温水密度(kg/m)、μは、高温水動粘性係数(m/sec.)、Nuは、高温水側ヌセルト数(−)を示す。
【0062】
数式(4)中のdoは、供試管外径(m)、diは、供試管内径(m)、Aは、供試管外表面積(m)を示す。
【0063】
すなわち、式(1)は、交換熱量:Q(kW)、式(2)は、対数平均温度差:ΔT(K)、式(3)は、管外熱伝達率:αo(kW/(m・K))を算出する式であり、式(1)から式(3)により算出した値を式(4)に代入することにより管内熱伝達率:αi(kW/(m・K))を算出することができる。
【0064】
かくして得られた評価結果を示す伝熱性能比は、表1に示すとおりである。
なお、この性能比は、Re数が2000におけるものである。
【0065】
表1(a),(b),(c)に示すように、外径(D)がそれぞれφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmのいずれにおいても、比較例1,2は、伝熱性能比が1.0未満であった。
【0066】
これに対して、発明例1乃至13は、外径(D)がそれぞれφ7.94mm、φ7.20mm、φ6.35mmのいずれにおいても、全て伝熱性能比が1.0より大きく、熱伝達率の増加率が圧力損失の増加率を上回ることが実証できた。
【0067】
従って、このような発明例1乃至13を熱交換器43に使用することで、熱交換器43の高性能化や、小型化を図ることができることを実証できた。
【0068】
特に、発明例1乃至13の中でも前記捩れ角(β)が35°〜60°の範囲内、前記比(H/d)が0.04〜0.09の範囲内、及び、前記比(W/H)が1.4〜2.0の範囲内との3つの条件のうち、いずれか2つ以上の条件を満たす場合には、1つの条件のみを満たす場合よりも性能比が高くなった。
【0069】
例えば、発明例7は、前記捩れ角(β)が35°〜60°の範囲内であり、前記比(H/d)が0.04〜0.09の範囲内であるとの2つの条件を満たす。発明例11は、前記捩れ角(β)が35°〜60°の範囲内であり、前記比(W/H)が1.4〜2.0の範囲内であるとの2つの条件を満たす。発明例12は、前記比(H/d)が0.04〜0.09の範囲内を満たし、前記比(W/H)が1.4〜2.0の範囲内であるとの2つの条件を満たす。
【0070】
これら発明例7,11,12は、1つの条件しか満たしていない発明例1及至6,8及至10よりも性能比が高くなっていた(表1(a),(b),(c)中の「※4」を付した値参照)。
【0071】
特筆すべきは発明例13は、前記捩れ角(β)が35°〜60°の範囲内であり、(H/d)比が0.04〜0.09の範囲内を満たし、(W/H)が1.4〜2.0の範囲内であるとの3つの条件を全て満たした伝熱管10である。
【0072】
発明例13は、比較例1,2は勿論、他の発明例1乃至12と比較しても性能比が格段に高い値となっており、このように3つ条件を満たすことで特に高性能な伝熱管10を得ることができることが明らかになった(表1(a),(b),(c)中の「※5」を付した値参照)。
【0073】
また、本実施形態の熱交換器43は、上述した実験に用いた二重管式熱交換器43Aとして構成するに限らず、他の実施形態で構成することができる。
(熱交換器の他の実施形態B)
例えば、熱交換器43は、図5に示すような熱交換器43Bで構成することができる。
【0074】
本実施形態の熱交換器43Bは、直線状の内面溝付の伝熱管10の外面に冷媒流通用伝熱管10Xが螺旋状に巻き付けられて構成している。
【0075】
前記熱交換器43Bは、伝熱管10の内部を流れる水と、冷媒流通用伝熱管10Xを流れる冷媒との間で熱交換を行うことができる。
【0076】
(熱交換器の他の実施形態C)
また、熱交換器43は、図6に示すような熱交換器43Cで構成することができる。
【0077】
本実施形態の熱交換器43Cは、内部に冷媒が流れる2本の伝熱管10を互いの外面同士を接触させた状態で平行に並べた一組の伝熱管10,10と、管内に水が流れる断面長孔形状の伝熱管10Yとをそれぞれ複数本ずつ備えている。
【0078】
前記熱交換器43Cは、一組の伝熱管10,10と、断面長孔形状の伝熱管10Yとを交互に配置している。伝熱管10Yの長軸方向に対して少なくとも一方の側方の外面において一組の伝熱管10,10のそれぞれを接触させた状態としている。
【0079】
前記熱交換器43Cは、伝熱管10の内部を流れる冷媒と、伝熱管10Yを流れる水との間で熱交換を行うことができる。
【0080】
(熱交換器の他の実施形態D)
また、熱交換器43は、図7に示すような熱交換器43Dで構成することができる。
【0081】
本実施形態の熱交換器43Dは、内部に水が流れる直線状の伝熱管10と放熱フィン12とで形成している。
【0082】
前記熱交換器43Dは、複数の放熱フィン70のそれぞれが所定のピッチを隔てて積層されるよう配置され、各放熱フィン70には、該放熱フィン70の配置方向に貫通する貫通孔70Hが形成されている。貫通孔70Hには伝熱管10が挿通され、伝熱管10の拡管により伝熱管10の外面と貫通孔70Hの内面とを熱溶着して一体に構成している。
【0083】
前記熱交換器43Dは、伝熱管10の内部を流れる水と、放熱フィン70との間で熱交換を行うことができる。
【0084】
この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、単相流体は、水に対応するものとする。
【符号の説明】
【0085】
10…伝熱管
11…管内面
12…フィン
13…溝
43A,43B,43C,43D…熱交換器
β…管軸に対する前記溝の捩れ角
H…フィンの高さ
φd…最大内径
W…溝の底幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内面に複数の溝が形成された内面溝付きの伝熱管であって、
管軸に対する前記溝の捩れ角(β)、前記溝同士の間に形成されるフィンの高さ(H)と最大内径(d)との比(H/d)、及び、前記フィン高さ(H)と前記溝の底幅(W)との比(W/H)のうち少なくとも1つが、管内面に前記溝を形成したことによる伝達率の増加率が、前記溝を形成したことによる圧力損失の増加率より大きくなるよう形成した
伝熱管。
【請求項2】
前記捩れ角(β)を35°〜60°の範囲内で形成した
請求項1に記載の伝熱管。
【請求項3】
前記溝同士の間で形成されるフィンの高さ(H)と最大内径(d)との前記比(H/d)を、0.04〜0.09の範囲内で形成した
請求項1、又は、2に記載の伝熱管。
【請求項4】
前記フィン高さ(H)と前記溝の底幅(W)の比(W/H)を、内面溝のフィン高さ(H)と最大内径(d)との前記比(H/d)が1.4〜2.0の範囲内で形成した
請求項1〜3のいずれかに記載の伝熱管。
【請求項5】
管内面に複数の溝が形成され、管内に単相流体を流通させる伝熱管であって、
管軸に対する前記溝の捩れ角(β)を35°〜60°の範囲内で形成し、
前記溝同士の間に形成されるフィンの高さ(H)と最大内径(d)との前記比(H/d)を、0.04〜0.09の範囲内で形成し、
前記溝同士の間で形成されるフィンの高さ(H)と前記溝の底幅(W)の前記比(H/W)を、1.4〜2.0の範囲内で形成した
伝熱管。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の伝熱管を備えた熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−208824(P2011−208824A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74485(P2010−74485)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)