説明

熱交換器の製造方法

【課題】伝熱管とフィンとの結合部に生じる隙間に充填剤が過不足なく充填でき、これにより熱交換効率を向上できる熱交換器の製造方法を提案する。
【解決手段】伝熱管20と、伝熱管20の長手方向に沿って並設される複数のフィン30とで熱交換器10が構成される。各フィン30は、それらの面に形成された孔31に伝熱管20を貫通させ、孔31の周縁において伝熱管20の長手方向に沿って延在する延在部32および屈曲部33によって隣接する他のフィン30と間隙Lを有して並設される。フィン30の屈曲部33および第2R部と、隣接するフィン30の本体部および第1R部32Aと、伝熱管20の外表面との間に生じる略三角形状の隙間GPに充填剤60が充填されている。充填剤60は、熱交換器10を所定の真空度としたペルジャー内に配置させ、所定の真空度において充填剤60に浸漬させた後に、大気圧に戻すことによって充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機あるいは冷凍装置に具備される熱交換器は、冷媒が流通される伝熱管にその長手方向に沿って配設される複数の板状のフィンを備えて構成される。
【0003】
そして、このような熱交換器として、例えば、ヘアピン状に形成された銅管からなる複数の伝熱管が、空気の流れに直交する仮想の平面内において並設されるように構成され、アルミニウム材で板状に形成された複数のフィンは、それらの面に形成された複数の孔に各伝熱管を貫通させるように並設させることによって、各フィンの面が空気の流れにほぼ平行になるように配置されるように構成されたものが知られている。
【0004】
そして、各フィンの伝熱管に対する接合は、たとえば、各フィンに形成する孔の径を伝熱管の径よりも若干大きく形成した状態で、フィンの孔に伝熱管を挿入し、その後、伝熱管の径を拡大(以下、拡管と称する)させるようにして行っている。
【0005】
フィンに設けられた複数の孔には、その周縁部を立設させてなるカラー部が備えられており、カラー部の先端部は更に孔の外側に向かって折り曲げられた屈曲部とされている。この屈曲部が隣り合うフィンに接触することでフィンが位置決めされる(フィンピッチが決まる)。そして、カラー部や屈曲部を形成する際は、各々の折り曲げ部に曲げRが付けられる。従って、伝熱管をフィンの孔に通して拡管すれば、フィンの屈曲部の曲げRと、これに隣り合うフィンのカラー部の曲げRと、伝熱管との間に略三角形状の隙間(以下、伝熱管とフィンとの隙間と記載)が生じる。この隙間では伝熱管とフィンとが接触していないため、伝熱管とフィンとの相互の熱伝導効率が低下する。
【0006】
上述した問題を解決する様々な熱交換器の製造方法が提案されている。例えば、伝熱管の外表面に予め樹脂層あるいは有機無機ハイブリッドセラミック層を形成しておき、フィンの孔に伝熱管を挿入した後に、拡管を行うことによって、伝熱管とフィンとの隙間を樹脂層あるいは有機無機ハイブリッドセラミック層によって埋める熱交換器の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、フィンの孔に予め充填剤を塗布しておき、フィンの孔に伝熱管を挿入した後に、拡管を行うことによって、伝熱管とフィンとの隙間を充填剤によって埋める熱交換器の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
また、フィンの孔に伝熱管を挿入して拡管を行った後、フィン上部に設けた凹部にろう材を配置し、このろう材を溶融させることで、伝熱管とフィンとの隙間にろう材を流し込むことで隙間を埋める熱交換器の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−125235号公報
【特許文献2】特開2010−169344号公報
【特許文献3】特開2003−302184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1あるいは特許文献2に記載の熱交換器の製造方法では、伝熱管の拡管によって伝熱管とフィンとの隙間に充填剤等を充填させるようにしているため、拡管作業のばらつき、樹脂層の厚さのばらつき、充填剤の量のばらつき等によって、伝熱管とフィンとの隙間に充填剤等を充分に埋まらせることができず、伝熱管とフィンとの相互の熱伝導効率が改善されない虞があった。
【0011】
また、特許文献3の熱交換器の製造方法では、伝熱管を拡管してフィンと接合した後にろう材を溶融させて隙間に流し込むため、特許文献1あるいは特許文献2に記載の熱交換器のように、拡管作業のばらつきや充填剤の量のばらつき等による伝熱管とフィンとの隙間への充填不足は防ぐことができる。しかし、伝熱管とフィンとの隙間には空気が存在しており、溶融したろう材がこの空気を排除して伝熱管とフィンとの隙間に侵入することができない場合があり、伝熱管とフィンとの隙間にろう材が充分に充填されず伝熱管とフィンとの相互の熱伝導効率が改善されない虞があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、伝熱管とフィンとの隙間に充填剤が過不足なく充填でき、これにより伝熱管とフィンとの相互の熱伝導効率を改善できる熱交換器の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の熱交換器の製造方法は、伝熱管と、伝熱管の長手方向に沿って所定のピッチで配置される複数のフィンとを備え、複数のフィンには、伝熱管を貫通させるための複数の孔が設けられ、この複数の孔には、孔の周縁部を伝熱管の長手方向に沿うように立設させてなる筒状延在部と、筒状延在部の先端部を孔の外側に向かって折り曲げてなる屈曲部とが備えられた熱交換器における製造方法に関するものであって、製造工程は、複数のフィンの孔に伝熱管を挿通して前記フィンの屈曲部が隣り合うフィンに接触することによってフィンが所定のピッチで配置されるフィン組み付け工程と、伝熱管を拡管することで伝熱管と複数のフィンとを一体化する一体化工程と、伝熱管と複数のフィンとを一体化したものを容器内に配置し容器内を所定の真空度とする真空引き工程と、所定の真空度とした容器内で伝熱管と複数の前記フィンとを一体化したものを充填剤に浸漬させる含浸工程と、含浸工程後に容器内を加圧する加圧工程と、伝熱管と複数のフィンとを一体化したものに付着している充填剤を洗浄する洗浄工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した熱交換器の製造方法によれば、伝熱管とフィンとの結合部に生じる隙間に充填剤が確実に充填できる。これにより、伝熱管とフィンとの相互の熱伝導効率を向上させることができ、熱交換効率を向上させた熱交換器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の熱交換器の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の熱交換器の全体を示す斜視図である。
【図3】本発明の熱交換器において伝熱管と複数のフィンとが接合された状態を示した断面図である。
【図4】本発明の熱交換器において各フィンの間の隙間に充填剤を充填させる際に用いる装置を示す断面図である。
【図5】本発明の熱交換器において各フィンの間の隙間が真空状態になることを示す断面図である。
【図6】図4に示す装置において熱交換器を収納した収納器に充填剤を蓄積した状態を示す断面図である。
【図7】本発明の熱交換器において表面に充填剤が付着した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の熱交換器において各フィンの間の隙間に充填剤が侵入し充填されている状態を示した断面図である。
【図9】本発明の熱交換器における充填剤の充填の効果を示す試験結果のグラフである。
【図10】本発明の熱交換器における充填剤の充填の効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図2は、本発明の熱交換器10の全体を示す斜視図である。図中矢印αは空気が流れる方向(図中x方向)を示している。熱交換器10は、比較的大きな面積を有する表裏面を有し、この表裏面が空気の流れ方向αに直交するように配置されている。この熱交換器10は、複数の伝熱管20と複数の板状のフィン30とから構成されている。
【0018】
伝熱管20は円筒形状の銅管を略ヘアピン状に形成してなり、空気の流れに直交する平面内(図2中yz面)において、上下方向(図2中z方向)に平行に複数本(図2では5本)配置されている。伝熱管20は、折り曲げ部20Bとこれに連続する2本の直管部20aと20bとを有しており、直管部20bの端部とその下方に隣接する伝熱管20の直管部20aの端部とがU字管20Aで接続されることで、1本の管路20nが形成される。管路20nの両端部、つまり、最上部に位置する伝熱管20の直管部20aの端部である端部21と、最下部に位置する伝熱管20の直管部20bの端部である端部22とは、図示しない冷媒回路に接続されており、例えば、一方の端部21から冷媒が流入し、流入した冷媒が管路20nを流れて他方の端部22から流出する。
【0019】
フィン30は、上下方向(図2中z方向)に延在する板状のアルミニウム合金材からなり、左右方向(図中y方向)に平行に複数枚(図2では27枚)配置されている。フィン30の幅方向(図2中x方向)のほぼ中央に上下方向(図2中z方向)に沿って、伝熱管20の直管部20a、20bの外径寸法より若干大きな径寸法である複数の孔31が設けられている。図3に示すように、孔31は、その周縁から孔31の中心軸と同軸方向(図3中y方向)に長さLで延在するように形成された円筒状の延在部32と、延在部32の先端部を孔31の外部方向(図3中z方向)に折り曲げて形成される屈曲部33とを備えている。また、延在部32の基端部には、延在部32を形成する際に生じる第1R部32Aが形成され、延在部32と屈曲部33との接続部には、屈曲部33を形成する際に生じる第2R部33Aが形成されている。
【0020】
熱交換器20の組み立ては以下の手順で行われる。まず、複数の伝熱管20を等間隔(フィン30に設けられた孔31のピッチに応じた間隔)となるよう、冶具等を使用して固定する。次に、複数の伝熱管20の各直管部20a、20bを、フィン30の孔31に挿通させることによって、伝熱管20に複数のフィン30を順次装着していく(フィン組み付け工程)。このとき、図3に示すように、フィン30の屈曲部33が隣接するフィン30に接触することで、フィン30の位置決めがなされ、互いに隣接するフィン30の間隙が、延在部32の長さ寸法であるLとなる。
【0021】
全てのフィン30の装着が完了すれば、直管部20a、20bの端部からマンドレルを挿入することで直管部20a、20bを拡管する。これにより、各フィン30の孔31(の延在部32)と伝熱管20の外表面とが密着して、伝熱管20と複数のフィン30とが接合される(一体化工程)。
【0022】
そして、図2に示すように、直管部20a、20bの端部をU字管20Aで接合することによって、熱交換器10の組み立てが完了する。組み立てられた熱交換器10は、端部21と段部22とが冷媒回路に接続され、前述したように、一方の端部21から流入し、管路20nを流れて他方の端部22から流出する冷媒と、α方向から熱交換器10に流入する空気との熱交換が行われる。
【0023】
上記のように熱交換器10を組み立てると、図3に示すように、フィン30の屈曲部33および第2R部と、隣接するフィン30の本体部および第1R部32Aと、伝熱管20の外表面との間に、断面が略三角形状の隙間GPが形成される。この隙間GPでは、伝熱管20とフィン30とが接触していないので、隙間GPによって伝熱管20とフィン30との間の熱伝導効率が低下し、熱交換器10の熱交換効率を低下させるという問題がある。
【0024】
このため、本実施例の熱交換器10では、隙間GPに空気より熱伝導率の高い充填剤を確実に充填することで、隙間GPによる伝熱管20とフィン30との間の熱伝導効率の低下を防ぐ、つまり、熱交換器10の熱交換効率の低下を防ぐ。以下、図4乃至図8を用いて、隙間GPへの充填剤の充填方法について詳細に説明する。
【0025】
図4は、熱交換器10に充填剤を充填するための装置の模式図である。図4に示すように、内部を所定の真空度とする真空ベルジャー40は、容器40Aと、この容器40Aの開口部を密閉し得る蓋40Bとを有し、容器40Aを蓋40Bで密閉した後に、真空ベルジャー40内を真空に引くためのポンプ40Cが具備されて構成されている。また、蓋40Bの中央部には、たとえば液状の充填剤を真空ベルジャー40内に導入させるためチューブ40Dが取り付けられている。そして、真空ベルジャー40内には、熱交換器10を収納できるとともに前記チューブ40Dから導入される充填剤(図6にて符号60で示す)を貯留させることができる収納器50が配置されている。
【0026】
熱交換器10に充填剤を充填する場合、まずは、蓋40Bを開けて、熱交換器10を収納器50内に配置する。ここで、熱交換器10は、前述したような手順で伝熱管20とフィン30とを拡管により密着させた後に直管部20a、20bの端部をU字管20Aで接合したもので、図3に示した状態のものとなっている。
【0027】
そして、蓋40Bを閉め、真空ベルジャー40内を、ポンプ40Cを駆動させることによって所定の真空度、例えば、真空ベルジャー40内の気圧を5mmHgとしこの状態を所定時間、例えば、15分間維持する(真空引き工程)。真空ベルジャー40内を上述したような所定の真空度とすることによって、各隙間GPの気圧は真空ベルジャー40内の気圧と比べて高い状態となるので、図5に示すように、各隙間GPからは気圧差によって図中矢印Qに示すように空気が抜ける。
【0028】
真空ベルジャー40内の気圧が5mmHgに到達して15分が経過すれば、図6に示すように、液状の充填剤60をチューブ40Cを通して真空ベルジャー40内に導入し、充填剤60を収納器50内に所定量(熱交換器10全体が浸漬できる程度の量)注入して、熱交換器10を充填剤60に浸漬させる(含浸工程)。充填剤60としては、空気より熱伝導率の高い樹脂材(例えば、熱可塑性接着剤:Product Resinol 90C ヘンケルジャパン(株))を用いる。
【0029】
熱交換器10の充填剤60への浸漬(含浸工程)は所定時間、例えば、5分間行う。これにより、熱交換器10の表面は、図7に示すように、充填剤60が付着するが、熱交換器10を充填剤60へ浸漬する前に、熱交換器10を5mmHgの雰囲気中に15分放置したことによって、各隙間GPの気圧はその他の部分の気圧と略同じとなっている。従って、この状態では各隙間GPに充填剤60は進入しない(図7に示すように、充填剤60によって各隙間GPは塞がれた状態となっている)。
【0030】
上述した状態で、真空ベルジャー40内をポンプ40Cを駆動することによって大気圧に戻し(加圧工程)、蓋40Bを開けて熱交換器10を収納器50から取り出す。真空ベルジャー40内を大気圧に戻すことによって、真空ベルジャー40内を所定の真空度としたときとは逆に、各隙間GPの気圧はその他の部分の気圧より低くなる。従って、図8に示すように、各隙間GPを塞いでいた充填剤60が各隙間GPへ流入して各隙間GPに充填される。
【0031】
その後は、熱交換器10の表面に付着した余分な充填剤60を水洗い等により除去する(洗浄工程)。そして、熱交換器10を所定の雰囲気温度、例えば、100℃雰囲気に所定時間、例えば、1時間放置することによって、水洗いによって熱交換器10に付着している水分を蒸発させて除去するとともに、各隙間GP内に充填された充填剤60を硬化させる。以上で各隙間GPへの充填剤60の充填が完了し、図1に示すように、各隙間GPに充填剤60が過不足なく充填された状態となる。従って、伝熱管20とフィン30との熱交換効率が向上し、熱交換器10での熱交換効率が向上する。
【0032】
以上説明した実施例では、熱交換器10を充填剤に5分含浸させた後に真空ベルジャー40内を大気圧に戻して隙間GPに充填剤60を充填しているが、真空ベルジャー40内を大気圧に戻した後に、大気圧以上の圧力、例えば、大気圧+0.2MPaの圧力で所定時間、例えば、5分間の加圧をする(以下、加圧押し込みと称する場合がある)ようにして、より確実に充填剤60が隙間GPへの充填されるようにしてもよい。
【0033】
また、充填剤60として熱硬化性接着剤を用いた場合を説明したが、この熱硬化性接着剤に熱伝導性の良好なフィラーを混在させて、隙間GPにおける熱伝導率をさらに向上させるようにしてもよい。また、充填剤として、熱硬化性接着剤の代わりに嫌気性接着剤を用いるようにすれば、充填後の加熱を行わなくても隙間GPに充填された充填剤を固化させることができる(隙間GPでは充填剤が充填されることにより空気が排除されるため)。また、隙間GPに充填された充填剤以外の、熱交換器10に付着している余分な充填剤は固化しないため、熱交換器10を水洗い等により洗浄して熱交換器10に付着した余分な充填剤を容易に除去することができる。
【0034】
次に、上述した実施例における充填剤60の充填方法の効果を検証した結果を、図9および図10を用いて説明する。図9は、隙間GPに充填剤60を充填する際に真空ベルジャー40内を真空にする場合に、横軸に真空度(mmHg)およびその際に加圧押し込みを行ったか否かをとり、縦軸に充填剤60の含浸率(隙間GPにどれだけ充填剤60が充填されたかを示すもの)を示したグラフである。また、このグラフでは、比較のため、真空ベルジャー40内を真空にせずに大気圧の状態として、隙間GPに充填剤60を充填した場合の、充填剤60の含浸率も示している。
【0035】
図9に示すように、真空ベルジャー40内を大気圧の状態にした場合では、充填剤60の含浸率は0に近く、隙間GPに充填剤60はほとんど充填されない。また、真空度を50mmHgとして真空ベルジャー40内を大気圧に戻した後に加圧を行わなかった場合の充填剤60の含浸率は約0.3%であり、真空度を5mmHgとして真空ベルジャー40内を大気圧に戻した後に加圧を行わなかった場合(本実施例の方法)の充填剤60の含浸率は約0.45%であり、さらに、真空度を5mmHgとて真空ベルジャー40内を大気圧に戻した後に加圧を行なった場合の充填剤の含浸率は約0.55%である。
【0036】
なお、ここで、充填剤の含浸率は、次式(1)によって定めた値としている。
【0037】
充填剤の含浸率 =
(含有後のサンプル重量−含有前のサンプル重量)/(含有前のサンプル重量)
×100 …………(1)
【0038】
図9の結果より、隙間GPに充填剤60を充填するときは、大気圧中で熱交換器10を充填剤60に浸漬するよりも、熱交換器10を所定の真空度中に置いて充填剤60に浸漬しその後大気圧に戻す方が含浸率が高く、さらには、真空度が高いほど含浸率が高くなり、本実施例における隙間GPに充填剤60を充填する方法の有効性が判る。また、大気圧に戻した後に加圧を行った方が、さらに含浸率を高くすることができ、より確実に隙間GPに充填剤60を充填できることがわかる。
【0039】
尚、図10は、本実施例で説明した方法(真空度:5mmHg、大気圧に戻した後の加圧なし)による隙間GPへの充填剤60の充填を行った熱交換器10において、フィン30のみを除去した状態の伝熱管20(の直管部20aおよび20b)を写真で示したものである。図10に示すように、伝熱管20の外表面には、その周方向に沿って隆起された山状の充填剤60(図10における矢印M)が、伝熱管20の長手方向に並設されて形成されていることが確認でき、各隙間GPに充填剤60が確実に充填されていることを確認することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明の熱交換器の製造方法によれば、伝熱管20とフィンと30とを結合させた際に生じる隙間GPに充填剤60を確実に充填できる。これにより、隙間GPによる熱伝導率の低下を防ぐことができ、熱交換器10の熱交換効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 熱交換器
20 伝熱管
20A U字管
20B 折り曲げ部
20a、20b 直管部
20n 管路
21 端部
22 端部
30 フィン
31 孔
32 延在部
32A 第1R部
33 屈曲部
33A 第2R部
40 真空ベルジャー
50 収納器
60 充填剤
GP 隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管と、同伝熱管の長手方向に沿って所定のピッチで配置される複数のフィンとを備え、
複数の前記フィンには、伝熱管を貫通させるための複数の孔が設けられ、
複数の前記孔には、同孔の周縁部を前記伝熱管の長手方向に沿うように立設させてなる筒状延在部と、同筒状延在部の先端部を前記孔の外側に向かって折り曲げてなる屈曲部とが備えられた熱交換器の製造方法であって、
複数の前記フィンの孔に前記伝熱管を挿通して前記フィンの屈曲部が隣り合う前記フィンに接触することによって同フィンが所定のピッチで配置されるフィン組み付け工程と、前記伝熱管を拡管することで同伝熱管と複数の前記フィンとを一体化する一体化工程と、前記伝熱管と複数の前記フィンとを一体化したものを容器内に配置し同容器内を所定の真空度とする真空引き工程と、前記所定の真空度とした前記容器内で前記伝熱管と複数の前記フィンとを一体化したものを充填剤に浸漬させる含浸工程と、同含浸工程後に前記容器内を加圧する加圧工程と、前記伝熱管と複数の前記フィンとを一体化したものに付着している前記充填剤を洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器の製造方法であって、
前記加圧工程において、前記所定の真空度から大気圧以上まで加圧することを特徴とする熱交換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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