説明

熱交換器付設型貯湯装置

【課題】簡素な構成でありながらも、熱効率に優れた熱交換器付設型貯湯装置を提供する。
【解決手段】加熱手段1により加熱された湯水を貯留するための貯湯タンク2と、該貯湯タンク2の外表面を覆う断熱材22と、貯湯タンク2の一側面側に付設された内外二重管式の液−液熱交換部63aとを設け、該熱交換部63aの内管部には貯湯タンク2の上部から高温水が導入され、外管部には前記高温水との熱交換により加熱される低温水が導入されるように配管し、内管部の上流端に外管部が設けられていない単管部63bを接続し、該単管部63bを貯湯タンク2の出湯部6aに向けて延設させ、断熱材22の前面には熱交換部63aが嵌合する管嵌合溝23を形成し、該溝23に熱交換部63aが嵌合することにより、単管部63bの管路長が短くなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内湯水の追焚用液−液熱交換器などの熱交換器が側面に付設された熱交換器付設型貯湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプ給湯装置を構成する貯湯タンクの側面に追焚用熱交換器を付設した貯湯装置が、例えば下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1の貯湯装置(貯湯タンクユニット)は、貯湯タンクの外郭を囲うタンク断熱材に、いわゆるプレート式熱交換器からなる追い焚き用熱交換器を埋設するための取付け用凹部を設けて、該熱交換器を前記凹部内に埋設させることによって、プレート式熱交換器の断熱機能を貯湯タンク用断熱材によって発揮させ、これにより部品点数の削減と装置の小型化を達成しようとするものである。
【0004】
プレート式熱交換器は、複数の金属板を重合させ、交互に被加熱媒体と加熱媒体との流す流路を形成したものであり、比較的小型でありながら十分な熱交換容量が得られるため、特許文献1にも示されるように、貯湯タンクに比してプレート式熱交換器は小型のものが採用され、それ故に貯湯タンク用断熱材の一部位に埋設用凹部を設けて熱交換器を埋設させるという解決手段を採用し得たものである。
【0005】
また、上記特許文献1記載の貯湯装置においては、貯湯タンク(10)の頂部側から湯水管(31)を介して高温水からなる加熱媒体を熱交換器(17)に供給し、熱交換した後の比較的低温となった加熱媒体を湯水管(33)を介して貯湯タンク(10)の頂部に戻すように配管構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−94925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、貯湯タンク内の湯水は、その比重によって頂部側に高温の湯水が貯留され、底部側に比較的低温の湯水が貯留されるが、上記従来の貯湯装置のように熱交換後の比較的低温の湯水をタンク頂部に戻すと、タンク内の頂部側の高温水と混合されて該高温水の温度が下がってしまうために好ましくない。したがって、タンクの頂部側から高温水を出湯し、該高温水を加熱媒体として熱交換器に供給した後、熱交換後の加熱媒体をタンクの底部付近からタンク内に戻すことが望ましい。
【0008】
その一方、プレート式熱交換器は貯湯タンクに比して小型であるために、タンクの高さ方向のいずれかの位置に設置せざるを得ないが、タンクの頂部から底部に至る加熱媒体の配管流路の途中にプレート式熱交換器を配設すると、タンク頂部から熱交換器までの管路長及び熱交換器からタンク底部までの管路長が長くなってしまい、かかる配管における熱の発散により熱効率が低下してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、簡素な構成でありながらも、熱効率に優れた熱交換器付設型貯湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、次の技術的手段を講じた。
【0011】
すなわち、本発明の熱交換器付設型貯湯装置は、加熱手段により加熱された湯水を貯留するための貯湯タンクと、該貯湯タンクの外表面を覆う断熱材と、貯湯タンクの一側面側に付設された内外二重管式の液−液熱交換部とを備え、該熱交換部の内管部と外管部のいずれか一方には貯湯タンクの上部から高温水が導入され、他方には前記高温水との熱交換により加熱される低温水が導入されるように配管されており、前記一方の上流端には他方が設けられていない単管部が接続され、該単管部が貯湯タンクの出湯部に向けて延設されており、前記断熱材の外表面には前記熱交換部が嵌合する管嵌合溝が形成されており、該溝に前記熱交換部が嵌合することにより、前記単管部の管路長が、前記溝が設けられていない前記断熱材の外表面に前記熱交換部を設置した場合に比して短くなされていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0012】
かかる本発明の熱交換器付設型貯湯装置によれば、熱交換器を、内外二重管式の液−液熱交換部によって主構成しているため、この熱交換部を構成する二重管を貯湯タンクの頂部近傍から底部側へ向けて配管することによって、熱交換部の高さ方向の寸法を大きくすることができ、これにより、タンク頂部から熱交換部の上端部への高温水の単管部の管路長及び熱交換部の下端部からタンク下部への中温水の単管部の管路長を短くすることができるため、これら管路における放射熱を低減させて、熱効率の向上が図られる。さらに、貯湯タンク用の断熱材の外表面に形成した管嵌合溝に二重管からなる熱交換部を嵌合させることで、この嵌合部分においては貯湯タンク用断熱材によって熱交換部の断熱性が向上し、より一層の熱効率の向上が図られる。
【0013】
また、二重管式の熱交換部は、直管を所定位置で曲げ加工することにより形成することが好ましく、さらに、かかる曲げ加工性、加工後の保管性や輸送性を確保するには、熱交換部を平面的に曲げ加工することが好ましい。このように平面的に曲げ加工された熱交換部を断熱材で覆われた貯湯タンクの一側面側に付設すると、熱交換部が貯湯タンクから断熱材の厚み分だけ離反して、特に熱交換部の上端部の貯湯タンクからの離反は、貯湯タンクから熱交換部の上端部に至る高温水の単管部の管路長の増大を招くが、上記本発明によれば、断熱材の外表面に形成した管嵌合溝に熱交換部を嵌合させることによって、前記貯湯タンクの一側面側における前記貯湯タンクと前記熱交換部との相対距離が短くなり、これにより前記単管部の管路長が、前記溝が設けられていない前記断熱材の外表面に前記熱交換部を設置した場合に比して短くなされているので、上述したような平面的に曲げ加工された熱交換部を用いる場合でも、熱交換部に導入される前の最も高温で放熱し易い上記単管部の管路長を可及的に短くして、さらなる熱効率の向上を図ることができる。
【0014】
なお、上記本発明において、熱交換部は二重の銅管により構成することができ、該熱交換部の外周に断熱材を巻回したものを採用することができる。また、熱交換部は、その管長のすべてが管嵌合溝に嵌合している必要はなく、一部が嵌合していれば良い。好ましくは、熱交換部は、直管部と屈曲部とが交互に連続する構成とすることができ、管嵌合溝は、貯湯タンクの一側面における断熱材の外表面を左右方向に貫通状に形成され、熱交換部の直管部が管嵌合溝に嵌合され、屈曲部は、管嵌合溝の左右外方に位置して該溝に嵌合されていない構成とすることができる。これによれば、熱交換部の形状を前記管嵌合溝によって保持することで、直管部と屈曲部からなる熱交換部の姿勢保持をすることができるとともに、熱交換部の設置作業性も良好なものとなる。
【0015】
上記本発明の熱交換器付設型貯湯装置において、前記熱交換部は、実質的に一平面内で蛇行状に屈曲成形されており、前記単管部は、前記一平面と交差する方向に向けて延設されている構成とすることができる(請求項2)。これによれば、二次元の曲げ加工で済むことから熱交換部の曲げ加工の作業性が良く、また、全体として平坦となるために保管性や輸送性が良好なものとなる。その一方、単管部は、前記一平面と交差する方向に向けて延設されることで、貯湯タンクに向けて単管部を延ばすことができる。なお、本発明において、単管部は、熱交換部の前記一方の上端部(上流端)に溶接乃至ろう付け等によって一体的に形成されていてもよく、熱交換部の前記一方を構成する管部材自体を他方から突出させて、この突出部の曲げ加工によって構成してもよく、或いは、貯湯タンク側に単管部を一体に取付けておくこともできる。
【0016】
好ましくは、前記単管部は熱交換部と一体的に設けられ、該単管部の上流端が、貯湯タンクに設けられた出湯部に直接接続されている構成とするのが良い(請求項3)。これによれば、加熱媒体となる貯湯タンクからの高温水を熱交換部に導入するための単管部を熱交換部に一体に設けておくことで、部品点数の削減、組付け工数の削減、組み立て作業性の向上を図ることができる。
【0017】
また、前記熱交換部の一方における前記高温水の循環を行う循環ポンプが前記貯湯タンクの一側面側の下部近傍に設けられ、前記熱交換部の一方の下流端には、循環ポンプに直接接続される接続管部が一体的に設けられた構成とすることができる(請求項4)。これによれば、部品点数の削減を図り、循環ポンプと熱交換部との組付けを容易かつ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の請求項1に係る熱交換器付設型貯湯装置によれば、熱交換器を、内外二重管式の液−液熱交換部によって主構成しているため、この熱交換部を構成する二重管を貯湯タンクの頂部近傍から底部側へ向けて配管することによって、熱交換部の高さ方向の寸法を大きくすることができ、これにより、タンク頂部から熱交換部の上端部への高温水の単管部の管路長及び熱交換部の下端部からタンク下部への中温水の単管部の管路長を短くすることができるため、これら管路における放射熱を低減させて、熱効率の向上が図られる。さらに、貯湯タンク用の断熱材の外表面に形成した管嵌合溝に二重管からなる熱交換部を嵌合させることで、この嵌合部分においては貯湯タンク用断熱材によって熱交換部の断熱性が向上し、より一層の熱効率の向上が図られる。
【0019】
また、本発明の請求項2に係る熱交換器付設型貯湯装置によれば、二次元の曲げ加工で済むことから熱交換部の曲げ加工の作業性が良く、また、全体として平坦となるために保管性や輸送性が良好なものとなる。その一方、単管部は、前記一平面と交差する方向に向けて延設されることで、貯湯タンクに向けて単管部を延ばすことができる。
【0020】
また、本発明の請求項3に係る熱交換器付設型貯湯装置によれば、加熱媒体となる貯湯タンクからの高温水を熱交換部に導入するための単管部を熱交換部に一体に設けておくことで、部品点数の削減、組付け工数の削減、組み立て作業性の向上を図ることができる。
【0021】
また、本発明の請求項4に係る熱交換器付設型貯湯装置によれば、部品点数の削減を図り、循環ポンプと熱交換部との組付けを容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱交換器付設型貯湯装置の全体斜視図である。
【図2】同貯湯装置の熱交換器の配管構成を示す正面図である。
【図3】同貯湯装置を具備する給湯システムの概略全体構成図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る熱交換器付設型貯湯装置の熱交換器の配管構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1及び図2は本発明の一実施形態に係る熱交換器付設型貯湯装置を示し、図3は、この貯湯装置を具備する貯湯式給湯システムの一例を示している。
【0025】
まず給湯システムの全体構成について説明すると、ヒートポンプやガスエンジンなどにより構成される外部熱源1(加熱手段)と、貯湯装置とから主構成され、該貯湯装置は、該外部熱源1によって加熱された湯を貯湯する貯湯タンク2と、貯湯タンク2内の湯水を底部から取り出して頂部に戻す間に外部熱源1によって加熱するための蓄熱循環回路3と、外部から水道水等を給水する給水回路4と、貯湯タンク2から供給される湯を用いて給湯栓(図示せず)に給湯する給湯回路5と、貯湯タンク2から供給される湯を追い焚き熱源とする風呂追い焚き回路6と、給湯回路5から分岐して浴槽に給湯するための風呂落とし込み給湯回路7と、貯湯式給湯システムの作動制御を行うマイコン等からなるコントローラ(図示せず)とを備えている。
【0026】
外部熱源1としては、種々のものを採用することができる。例えば、冷凍サイクルを利用したヒートポンプ装置、燃料電池の排熱回収熱交換器、あるいは、太陽熱の集熱パネル等を貯湯タンク内の貯留湯水を加熱するための外部熱源1として採用することができる。
【0027】
貯湯タンク2は密閉式に構成され、その側部には少なくとも頂部位置を含む高さ方向の複数箇所に配設された複数の温度センサ21からなる残湯水量センサが設けられ、各高さ位置における貯湯の湯温を検出できるように構成されており、これにより、貯湯タンク2内の上部側に貯湯される高温湯の湯量を検出できるようになっている。
【0028】
蓄熱循環回路3は、この貯湯タンク2の底部から貯湯タンク2内部の比較的低温の湯水を取り出し、外部熱源1を通過して貯湯タンク2の頂部に戻すように配設されている。貯湯タンク2の底部と外部熱源1との間の蓄熱循環回路3には循環ポンプ31が介装されている。なお、外部熱源1の作動開始直後は外部熱源1から比較的低温の湯が供給されるが、かかる低温湯を貯湯タンク2の頂部に供給すると貯湯タンク2の上部側の高温湯が温度低下してしまうため、外部熱源1からの湯温が所定温度以上となるまでは循環回路3の下流側に三方切換弁32を介して接続したバイパス路33を通って貯湯タンク2の底部に外部熱源1からの湯を供給するように構成している。
【0029】
給水回路4は、その上流端が外部の水道管等に接続され、主給水路41と混水用給水路42とに分岐されている。主給水路41は、下流端が貯湯タンク2の底部に接続されており、貯湯タンク2内の湯が頂部から出湯されるに伴って貯湯タンク2の底部に対し水道水が給水されるように構成されている。混水用給水路42は、給湯回路5の後述の給湯混合弁52に対し給水可能に接続されている。なお、主給水路41と混水用給水路42との分岐部よりも上流側で給水回路4には減圧弁43、逆止弁44及び給水回路4により給水される水の温度を検出する給水温度センサ45が設けられている。
【0030】
給湯回路5は、上流端が貯湯タンク2の頂部に接続されて下流端側が給湯栓まで延びるように接続された給湯路51と、この給湯路51の中途部に設けられた給湯混合弁52と、給湯混合弁52の下流側位置に配設された給湯水量センサ53、給湯温度センサ54及び給湯水量調整弁55と、給湯混合弁52の上流側位置に配設されて貯湯タンク2から出湯された直後の湯温を検出する出湯温度センサ58とを備えている。給湯混合弁52は、給湯路51の上流側から供給される湯と、混水用給水路42から供給される給水とを制御された混合比率で混合(混水)させることにより、ユーザーによってリモコン等で設定された給湯設定温度に温調した上で、給湯栓に給湯するものである。上記の給湯温度センサ54は、温調後に最終的に給湯される湯の温度を検出してコントローラに出力するようになっており、この給湯温度センサ54からの出力に基づいて給湯混合弁52がコントローラによりフィードバック制御されるようになっている。
【0031】
また、混水用給水路42と、給湯混合弁52の下流側の給湯路51とを接続するバイパス流路56と、該バイパス流路56を開閉する電磁開閉弁からなる高温回避弁57とが設けられており、該高温回避弁57が開かれることによって給湯混合弁52からの給湯に十分な量の水を供給混合することができるようになっている。該高温回避弁57もコントローラによって制御されるようになっており、該コントローラが高温回避弁制御手段として機能する。なお、高温回避弁57は、通電により閉成制御され、非通電時に開成制御されるように構成されており、これにより停電時に自動的に開成されることで、停電時に高温の湯が給湯栓に給湯されることを防止している。
【0032】
風呂追い焚き回路6は、追い焚きポンプ61を作動させることにより浴槽(図示せず)内の湯水を追い焚き循環路62を通して熱交換器63との間で循環させ、この熱交換器63での液−液熱交換により追い焚き加熱するようになっている。熱交換器63の熱源側には、給湯混合弁52の上流側で給湯路51から分岐した熱源供給路64を通して貯湯タンク2の頂部から出湯される高温湯が風呂追い焚き加熱用媒体として追い焚き熱源用循環ポンプ66によって供給され、液−液熱交換により温度低下した湯が逆止弁65を経て貯湯タンク2の底部に循環供給するようになっている。なお、追い焚き循環路62には、水位センサ62a、水流スイッチ62b、風呂戻り温度センサ62c及び追い焚き温度センサ62dが設けられている。
【0033】
風呂落とし込み給湯回路7は、上記した給湯混合弁52の下流側の給湯路51と追い焚き循環路62とを接続して給湯混合弁52からの給湯を追い焚き循環路62に注湯する落とし込み給湯路71と、水量センサ72と、注湯電磁弁73と、落とし込み温度センサ74と、水量調整弁75とを備えている。
【0034】
以上の各回路3〜7の運転作動は、リモコンからの入力設定信号や操作信号の出力や、種々の温度センサや水量センサ等からの検出信号の出力を受けて、コントローラにより作動制御されるようになっている。
【0035】
図1及び図2に示す実施形態に係る貯湯装置1では、貯湯タンク2はその底部を除く外表面全面が断熱材22で覆われている。この断熱材22全体の外周の平面視形状は、略円形乃至多角形状とされており、好ましくは8角形状とすることができる。断熱材22としては、適宜の発砲プラスチックなどを採用できる。また、貯湯タンク2の全面を覆うためにどのように構成されていても良いが、例えば、半円筒状に分割構成された前後の断熱材22a,22bで貯湯タンク3を前後から挟み込むように覆うとともに、キャップ状に形成された頂部断熱材22cを貯湯タンク3の頂部に嵌め込み覆うことができる。この頂部断熱材22cの中央部には配管用の空洞部を設けておくことが好ましく、配管接続後に空洞部に蓋断熱材22dを嵌め込むことで空洞部を埋めることができる。
【0036】
この貯湯タンク2の頂部には、蓄熱循環回路3の下流側端部が接続されているとともに、給湯回路5及び風呂追い焚き回路6への出湯口5a,6a(出湯部)が設けられており、該出湯口5a,6aはその先端部を除き上記断熱材22c,22dによって覆われている。
【0037】
本実施形態では、上記追い焚き用熱交換器63は、貯湯タンク2の前面側(一側面側)に付設された内外二重管式の液−液熱交換部63aによって主構成されている。該熱交換部63aは、貯湯タンク2の頂部から出湯される高温水が導入される内管部と、浴槽内の湯水(低温水)が追い焚き循環路62を介して導入される外管部とを備え、内管部内を流通する高温水を加熱媒体として、内管部と外管部との間の通路を流通する低温水を液−液熱交換加熱するものである。
【0038】
より詳細には、熱交換部63aは、その上端部が上記出湯口6aと同じ高さ位置にあり、該上端部を始点として実質的に鉛直平面内で左右に蛇行するように屈曲成形されている。加工性、量産性を確保するために、二重管からなる直管を所定位置で屈曲加工することによって、左右に延びる直管部と屈曲部とを交互に備えて一平面内で左右に蛇行状に屈曲成形された構成とするのが好ましい。また、この蛇行状の熱交換部63aの最大左右幅は、断熱材22の左右幅よりも小さくなされている。また、熱交換部63aの上下幅は、貯湯タンク2の上下幅の50%以上と比較的大きなものとなされている。
【0039】
上記熱交換部63aの内管部の上端部(上流端)には、単管部63bが一体的に設けられており、この頂部側の単管部63bの外周には上記外管部が設けられておらず、単管部63bは熱交換部63aの上端部から貯湯タンク2の上記出湯口6aに向けて後方に延設されて該出湯口6aに直接接続されている。なお、図示例では、クイックファスナー等の適宜の取付け具によって取付け固定されている。
【0040】
また、熱交換部63aの内管部の下端部(下流端)にも単管部63cが一体的に設けられており、この底部側の単管部63cの外周にも上記外管部は設けられておらず、単管部63cは熱交換部63aの下端部から左右に屈曲しつつ下方に延設されている。この単管部63cの下流端は、接続配管63dを介して追い焚き熱源用循環ポンプ66に接続されており、接続配管63dは、単管部63c及び循環ポンプ66のそれぞれにクイックファスナー等の適宜の取付け具によって取付け固定されている。
【0041】
熱交換部63aの外管部の下端部(上流端)には、浴槽内の湯水を熱交換器63へ供給するための追い焚き循環路62の上流側配管が接続されている。また、熱交換部63aの外管部の上端部(下流端)には、タンク2内の高温水によって加熱された浴槽水を浴槽へ供給するための追い焚き循環路62の下流側配管が接続されている。これら熱交換部63aの上下端部における内管部と外管部との分岐部の構造はどのようなものであってもよいが、好ましくは、水平方向に延びる内管部に対して外管部が下方に分岐する構造とするのが良い。
【0042】
断熱材22が全体として平面視略八角形状としていることから、熱交換器63が配設される断熱材22の前面は、その中央部が平坦面に形成されることとなるとともに、該平坦面の左右コーナー部に、平坦面の左右端から左右外方に至るに従って後方へ後退する傾斜面乃至円弧面が形成されるようになり、この平坦面の左右コーナー部に空いた空間を、配管や弁などの配設空間として利用できるようになっている。
【0043】
また、断熱材22の前面の平坦面には、上記熱交換部63aの直管部が嵌合する管嵌合溝23が形成されている。この管嵌合溝23は、断熱材22の前面の平坦面を左右方向に貫通しており、熱交換部63aの屈曲部は、上記平坦面の左右コーナー部に位置されている。なお、管嵌合溝23は、熱交換部63aを構成する二重管を完全に埋設するものでなくてもよく、該二重管の片面のみが嵌合するものであってもよい。また、管嵌合溝23は、前面側断熱材22aを左右に横切る熱交換部63aの直管部に対応して上下方向に複数設けられており、各溝23は直管部の上下方向の傾斜に合わせて僅かに上下方向に傾斜されている。
【0044】
本実施形態の貯湯タンク2には、上記給湯システムの全体構成で示した各種回路を構成する管路や弁ユニットなども取付けられているが、本発明は、追い焚き用熱交換器63以外の配管構成によって限定解釈されるものではなく、適宜の配管構成とすることができるものであるから、他の配管構成のうち図1及び図2に表れる部品については図3で示した符号を参照して詳細説明を省略する。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る熱交換器付設型貯湯装置によれば、熱交換部63aを構成する二重管を貯湯タンク2の頂部近傍から底部側へ向けて配管することによって、熱交換部の高さ方向の寸法を大きくすることができ、これにより、タンク2頂部から熱交換部63aの上端部への高温水の単管部63bの管路長及び熱交換部63aの下端部からタンク下部への中温水の単管部63cの管路長を短くすることができ、これら管路における放射熱を低減させて、熱効率の向上を図ることができる。さらに、貯湯タンク2用の断熱材22の前面に形成した管嵌合溝23に二重管からなる熱交換部63aを嵌合させることで、この嵌合部分においては貯湯タンク用断熱材22によって熱交換部63aの断熱性が向上し、より一層の熱効率の向上が図られる。また、平面的に曲げ加工された熱交換部63aを用いる場合でも、該熱交換部63aを管嵌合溝23に嵌合させることによって熱交換部63aと貯湯タンク2との相対距離を可及的に短くし、これにより熱交換部に導入される前の最も高温で放熱し易い上記単管部63bの管路長を可及的に短くして、さらなる熱効率の向上を図ることができる。
【0046】
また、貯湯タンク2の出湯口6aに直接接続される上端側の単管部63bを熱交換部63aと一体的なパーツとしているため、該熱交換器63を貯湯タンクに組み付けるにあたり、頂部出湯口6aとの間の別部材からなる接続配管は不要となり、これにより部品点数の削減、コスト低減、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0047】
図4は本発明の他の実施形態を示しており、上記実施形態と異なるところは、熱交換部63aの内管部の下流端に、循環ポンプ66に直接接続される下端側の単管部63c(接続管部)が一体的に設けられている点であり、その他の構成については同様であるので同符号を付して詳細説明を省略する。かかる他の実施形態によれば、循環ポンプ66に直接接続される下端側の単管部63cを熱交換部63aと一体的なパーツとしているため、該熱交換器63を貯湯タンクに組み付けるにあたり、循環ポンプ66との間の別部材からなる接続配管は不要となり、これにより部品点数の削減、コスト低減、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0048】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更することができる。例えば、熱交換部は、その外管部に高温水が導入され、内管部に低温水が導入されるように構成されていてもよい。また、上端側の単管部63bは、貯湯タンクの出湯口6aに一体的に設けられていてもよく、また、下端側の単管部63cは、循環ポンプ66に一体的に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 加熱手段
2 貯湯タンク
22 断熱材
23 管嵌合溝
63 熱交換器
63a 二重管からなる熱交換部
63b 上端側の単管部
63c 下端側の単管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段により加熱された湯水を貯留するための貯湯タンクと、該貯湯タンクの外表面を覆う断熱材と、貯湯タンクの一側面側に付設された内外二重管式の液−液熱交換部とを備え、
該熱交換部の内管部と外管部のいずれか一方には貯湯タンクの上部から高温水が導入され、他方には前記高温水との熱交換により加熱される低温水が導入されるように配管されており、
前記一方の上流端には他方が設けられていない単管部が接続され、該単管部が貯湯タンクの出湯部に向けて延設されており、
前記断熱材の外表面には前記熱交換部が嵌合する管嵌合溝が形成されており、該溝に前記熱交換部が嵌合することにより、前記単管部の管路長が、前記溝が設けられていない前記断熱材の外表面に前記熱交換部を設置した場合に比して短くなされていることを特徴とする熱交換器付設型貯湯装置。
【請求項2】
前記熱交換部は、実質的に一平面内で蛇行状に屈曲成形されており、前記単管部は、前記一平面と交差する方向に向けて延設されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器付設型貯湯装置。
【請求項3】
前記単管部は熱交換部と一体的に設けられ、該単管部の上流端が、貯湯タンクに設けられた出湯部に直接接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器付設型貯湯装置。
【請求項4】
前記熱交換部の一方における前記高温水の循環を行う循環ポンプが前記貯湯タンクの一側面側の下部近傍に設けられ、前記熱交換部の一方の下流端には、循環ポンプに直接接続される接続管部が一体的に設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の熱交換器付設型貯湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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