説明

熱交換器用コルゲートフィン

【課題】本発明は、金属薄板の片方の表面に有機高分子系収着剤からなる吸湿層を有し、フィンへの加工も容易であり、かつ収着剤の性能を十分発現しうる熱交換器用コルゲートフィンを提供することを目的とする。
【解決手段】熱伝導に優れる帯状の金属薄板7の片面のみに、分子中に親水性の極性基および架橋構造を有する有機高分子よりなる有機高分子系収着剤を必須成分とする吸湿層1が形成され、該金属薄板が、平坦な基底部2と該基底部から立ち上がった側面部3とを有し、該側面部の頂上部4において吸湿層を有する面を外側にして折り曲げてなる波形に形成してなることを特徴とする熱交換器用コルゲートフィン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機高分子系収着剤を用いた熱交換器用のコルゲートフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、吸着剤を利用した省エネルギータイプの熱交換器が多数提案されている。例えば、特許文献1では、特定の吸湿率を有する吸湿層が熱伝導性に優れる金属表面上に形成されてなる収着式熱交換モジュールが提案なされており、そのモジュールとして、有機高分子系収着剤を金属表面に有するコルゲートフィンが例示されている。しかし、かかるフィンの形状は従来のものと同様であり単なるコルゲートフィンに有機高分子系収着剤からなる吸湿層を形成したものであり、収着剤の性能を十分発現できるものではなかった。
【0003】
特許文献2には、波板フィンの波形の振幅方向が伝熱管の軸方向と略平行になると共に、その波形の稜線方向が熱交換器の前面及び背面と略直交している熱交換器が提案され、波形フィンに吸着層が形成されてなるものや、波形フィンの形状として、凸状の台形と凹状の台形とが交互に繰り返される矩形波状になっているものが例示されている。しかしながら、かかる形状も従来のものと大差なく、吸着剤の性能を十分発現できるものではなかった。
【0004】
また、吸放湿性を高めるためには高分子収着剤層としてある程度の厚み(数十μm〜数百μm)が必要となる。このような厚みをもった高分子収着剤担持層があった場合、通常のプレートフィンタイプの熱交換器では、機械による穴開けおよび組み込み加工ができないため製作が困難であった。またスパイラルフィンタイプでも、高分子収着剤層の絞り加工、熱圧着等の点で機械加工が困難であり、機械的に連続加工することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−200850号公報
【特許文献2】特開2006−17316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来の吸着あるいは吸湿などの性能を有する層が形成された熱交換器用のフィンにおいては、かかる層の性能を十分発現しうるものではなく、フィンへの加工にも課題を残すものであった。本発明は、かかる現状に基づきなされたものであり、金属薄板の片方の表面に有機高分子系収着剤からなる吸湿層を有し、フィンへの加工も容易であり、かつ収着剤の性能を十分発現しうる熱交換器用コルゲートフィンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、以下に示す本発明に到達した。
【0008】
(1)熱伝導に優れる帯状の金属薄板7の片面のみに、分子中に親水性の極性基および架橋構造を有する有機高分子よりなる有機高分子系収着剤を必須成分とする吸湿層1が形成され、該金属薄板7が、平坦な基底部2と該基底部から立ち上がった側面部3とを有し、該側面部の頂上部4において吸湿層を有する面を外側にして折り曲げてなる波形に形成してなることを特徴とする熱交換器用コルゲートフィン。
(2)頂上部4と側面部3が形成する三角形の底辺の長さ5が基底部の長さ6よりも短いことを特徴とする(1)記載の熱交換器用コルゲートフィン。
(3)側面部3の相対する面が実質的に密着してなることを特徴とする(1)記載の熱交換器用コルゲートフィン。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱交換器用コルゲートフィンは、熱伝導に優れる帯状の金属薄板の片面のみに吸湿層が形成されており、コンパクトでありながら吸湿層の表面積を大きくすることができるため、収着剤の性能を十分発現でき、熱交換性に優れたものである。また、本発明は片面高分子収着剤層を有した金属板ロールを製作し、これを連続的に折り曲げることでフィンに加工することができ、機械化が容易で、連続的に大量の生産が可能となる。このため、コスト的にも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】片面に吸湿層1が形成された帯状の金属薄板である。
【図2】本発明の熱交換器用のコルゲートフィンを示す概略正面図である。
【図3】頂上部4と側面部3が形成する三角形の底辺の長さ5が基底部の長さ6よりも短い本発明の熱交換器用のコルゲートフィンを示す概略正面図である。
【図4】側面部3の相対する面が実質的に密着した本発明の熱交換器用のコルゲートフィンを示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図4を参照しつつ本発明の熱交換器用コルゲートフィンについて説明する。ここで、図1は熱伝導に優れる金属薄板7の片面のみに吸湿層1が形成されている図であり、図2は本発明の熱交換器用のコルゲートフィンを示す正面図である。
【0012】
本発明の熱交換器用コルゲートフィンは、図1に示されるように熱伝導に優れる帯状の金属薄板7の片面のみに有機高分子系収着剤を必須成分とする吸湿層が形成されてなるものを、図2に示されるよう、平坦な基底部2と該基底部から立ち上がった側面部3とを有し、該側面部の頂上部4において吸湿層を有する面を外側にして折り曲げてなる波形に形成されている。
【0013】
片面高分子収着剤層を有した金属板をコルゲート加工し、山部と谷部が交互に繰り返される単純な波形とし、山部や谷部を伝熱面に固定する方法もとれるが、通常のコルゲートでは伝熱面とは点接触となるため伝熱量が少なく、伝熱ムラが起きやすいといった問題点がある。これに対し本願の熱交換器用のコルゲートフィンは、基底部の吸湿層を有していない面、すなわち金属薄板が直接伝熱管などに密着するように固着する。これにより、点接触に比べて伝熱量が増やせ、温度ムラの発生を防止することができ、フィンと伝熱管との熱伝導効率を高めることができる。
【0014】
一方、吸湿層は空気にのみ接することとなり、その吸放湿能力を有効に発現できる。また、本発明の熱交換器用コルゲートフィンは、基底部から立ち上がった側面部4を有し、その外側にも吸湿層が存在することから、吸湿層の表面積を大きくすることができる。
【0015】
さらに本願発明の熱交換器用のコルゲートフィンは、図3に示されるよう頂上部4と側面部3が形成する三角形の底辺の長さ5が基底部の長さ6よりも短いことが好ましい。これにより、吸湿層の表面積をより一層大きくすることができる。
【0016】
また、本願発明の熱交換器用のコルゲートフィンは、図3に示されるよう側面部3の相対する面が実質的に密着してなることも好ましい形態の一つである。これにより、吸湿層の表面積が大きくできるだけでなく、フィンを通過する空気が吸湿層を有する面だけとなることから、通風抵抗も低減できる。
【0017】
ここで、有機高分子系収着剤よりなる吸湿層が表面上に形成される金属としては、熱交換の効率を上げるためにも熱伝導性に優れる金属である必要がある。例えば、銀、銅、金、アルミニウム、スチール等であり、熱伝導率としては50(W/m・K)以上の場合、効率の高い熱交換を行なうことができるため好ましい。中でも、価格の点から実用的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金がより好ましい。
【0018】
また、吸湿層は、20℃、65%RHおよび90%RHにおける飽和吸湿率がそれぞれ20重量%以上および40重量%以上であり、かかる条件での飽和吸湿率の差が20重量%以上であることが好ましく、吸水倍率としては、10倍以下であることが好ましい。なおここで言う飽和吸湿率とは、試料を絶乾後、一定温湿度下に該材料を飽和状態となるまで放置しておき、その前後の重量変化より吸湿量を求め、もとの試料の絶乾重量で除したものである。また、吸水倍率とは、絶乾状態の試料を水に浸漬し、飽和状態まで吸水させその前後における重量変化により水の吸水量を求め、試料の乾燥状態の重量で除したものである。
【0019】
有機高分子系収着剤は、分子中に親水性の極性基を有する有機高分子主鎖を架橋構造により三次元構造化したものであり、収着現象に基づき水蒸気を多量に収着する材料である。従って、有機高分子系収着剤は、本発明の採用する分子中に親水性の極性基および架橋構造を有する有機高分子よりなるものである限り特に限定されるものではないが、上記吸湿層を形成しうる好適なものとしては、例えば特開2006−200850に記載の有機高分子系収着剤等が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の熱交換器用コルゲートフィンは、コンパクトでありながら吸湿層の表面積を大きくすることができるため、収着剤の性能を十分発現でき、熱交換性に優れたものであることから、冷媒等を空気と熱交換させる熱交換器や、空調装置に適用できる。また、機械化が容易で、連続的に大量の生産が可能であるため、かかる熱交換器や空調装置の低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 吸湿層
2 基底部
3 側面部
4 頂上部
5 頂上部4と側面部3が形成する三角形の底辺の長さ
6 基底部の長さ
7 金属薄板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導に優れる帯状の金属薄板7の片面のみに、分子中に親水性の極性基および架橋構造を有する有機高分子よりなる有機高分子系収着剤を必須成分とする吸湿層1が形成され、該金属薄板が、平坦な基底部2と該基底部から立ち上がった側面部3とを有し、該側面部の頂上部4において吸湿層を有する面を外側にして折り曲げてなる波形に形成してなることを特徴とする熱交換器用コルゲートフィン。
【請求項2】
頂上部4と側面部3が形成する三角形の底辺の長さ5が基底部の長さ6よりも短いことを特徴とする請求項1記載の熱交換器用コルゲートフィン。
【請求項3】
側面部3の相対する面が実質的に密着してなることを特徴とする請求項1記載の熱交換器用コルゲートフィン。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate