説明

熱交換器

【課題】所謂ウェーブフィンの熱伝達率を向上させる。
【解決手段】冷却水が流通する冷却水通路12と、排気ガスが流通するガス通路15と、ガス通路15内に設けられ、ガス通路15の幅方向に波形状に屈曲しながらガス通路15の長手方向に延びる多数のフィン部21を有するインナーフィン20とを備え、温度境界層の成長を抑制するために、フィン部21に、ガス流れ方向の下流に向かうに従いガス通路15におけるフィン部21間の通路中心CLに近接するように傾斜する傾斜面24を有する出っ張り25を形成すると共に、出っ張り25の形成に伴うガス通路15におけるフィン部21間の通路幅Wg減少を補うために、出っ張り25を設けたフィン部21と通路中心CLを挟んで対向するフィン部21に、ガス流れ方向の下流に向かうに従い通路中心CLから離間するように傾斜する傾斜面26を有する凹み27を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスと冷却水との間で熱交換を行い、排気ガスを冷却水によって冷却する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、排気ガス中のNOxを低減させるため、EGR(排気ガス再循環)装置が用いられるが、排気ガス中のNOxをさらに低減させるため、EGRクーラー(熱交換器)も用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
EGRクーラーは、内燃機関の排気系(排気マニフォールド又は排気管)と吸気系(吸気マニフォールド又は吸気管)とを連通するEGR通路(EGR管)の途中に配設され、内燃機関の排気ガスと冷却水との間で熱交換を行うことで排気ガスを冷却水によって冷却するものである。
【0004】
EGRクーラーは、例えば、ケースと、ケース内に設けられ、冷却水が流通する冷却水通路と、ケースに設けられた水入口及び水出口と、ケース内に設けられ、排気ガスが流通するガス通路と、ケースに設けられたガス入口及びガス出口とから主に構成されるものである。ガス通路内には、EGRガスとの接触表面積を大きくして冷却性能を高めるためにインナーフィンが配設される。
【0005】
インナーフィンには、例えば、図5に示すウェーブフィンと称されるものや、オフセットフィンと称されるものがある。
【0006】
図5に示すウェーブフィン50は、ガス通路の幅方向に波形状に屈曲しながらガス通路の長手方向に延びる多数のフィン部51と、ガス通路の幅方向に隣接するフィン部51の上端同士を繋ぐ上面部52と、ガス通路の幅方向に隣接するフィン部51の下端同士を繋ぐ下面部53とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−299968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的には、オフセットフィンの方がウェーブフィンよりも放熱性が良い。そのため、冷却性能を高めるためには、ウェーブフィンよりもオフセットフィンを用いるのが好ましい。しかし、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガス中の煤(Soot)がオフセットフィンに付着し易いため、放熱性が劣るウェーブフィンが用いられる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、所謂ウェーブフィンの熱伝達率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、内燃機関の排気ガスと冷却水とで熱交換を行い、排気ガスを冷却水によって冷却する熱交換器であって、冷却水が流通する冷却水通路と、排気ガスが流通するガス通路と、前記ガス通路内に設けられ、前記ガス通路の幅方向に波形状に屈曲しながら前記ガス通路の長手方向に延びる多数のフィン部を有するインナーフィンとを備え、温度境界層の成長を抑制するために、前記フィン部に、ガス流れ方向の下流に向かうに従い前記ガス通路における前記フィン部間の通路中心に近接するように傾斜する傾斜面を有する出っ張りを形成すると共に、前記出っ張りの形成に伴う前記ガス通路における前記フィン部間の通路幅減少を補うために、前記出っ張りを設けた前記フィン部と前記通路中心を挟んで対向する前記フィン部に、ガス流れ方向の下流に向かうに従い前記通路中心から離間するように傾斜する傾斜面を有する凹みを形成したものである。
【0011】
前記出っ張りを前記フィン部における波形状の凹部分に設け、前記凹みを前記フィン部における波形状の凸部分に設けても良い。
【0012】
前記出っ張り及び前記凹みのガス流れ方向に対する長さは、前記ガス通路における前記フィン部間の通路幅の0.5倍から1倍とされても良い。
【0013】
前記出っ張り及び前記凹みのガス流れ方向と交差する方向に対する幅は、前記ガス通路における前記フィン部間の通路幅の0.25倍から0.5倍とされても良い。
【0014】
前記内燃機関は、ディーゼルエンジンであっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所謂ウェーブフィンの熱伝達率を向上させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱交換器の断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本実施形態のインナーフィンを示し、(a)は平断面図であり、(b)は斜視図である。
【図4】他の実施形態のインナーフィンを示し、(a)は平断面図であり、(b)は斜視図である。
【図5】従来例に係るインナーフィンを示し、(a)は平断面図であり、(b)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る熱交換器10は、内燃機関(本実施形態では、ディーゼルエンジン)のEGR装置におけるEGRクーラーに適用したものである。
【0019】
EGRクーラー10は、内燃機関の排気系(排気マニフォールド又は排気管)と吸気系(吸気マニフォールド又は吸気管)とを連通するEGR通路(EGR管)の途中に配設される略筒状(本実施形態では、角筒状)のケース11と、ケース11内に設けられ、内燃機関の冷却水が流通する冷却水通路12と、ケース11に設けられた水入口13及び水出口14と、ケース11内に設けられ、排気ガスが流通するガス通路15と、ケース11に設けられたガス入口16及びガス出口17とから主に構成されている。
【0020】
本実施形態では、ケース11の一端部(図1中の左側)に水出口14及びガス入口16が設けられており、ケース11の他端部(図1中の右側)に水入口13及びガス出口17が設けられている。即ち、本実施形態に係るEGRクーラー10は対向流式のものである。
【0021】
本実施形態では、冷却水通路12は、ケース11と後述するエンドプレート18とによりケース11内に区画形成されている。水入口13からケース11内に流入した冷却水は、ケース11とエンドプレート18とによりケース11内に区画形成された冷却水通路12を流れた後に、水出口14からケース11外に流出する。
【0022】
本実施形態では、ケース11内に長手方向に間隔を隔てて一対のエンドプレート18が配設されており、これら一対のエンドプレート18間にガス通路15を区画形成する扁平チューブ19が複数架け渡されている。扁平チューブ19は、例えば、一対のプレート19a、19bを上下に積層してなる。
【0023】
ガス入口16からケース11内に流入した排気ガスは、扁平チューブ19内を流れる間に扁平チューブ19の周囲を流れる冷却水との熱交換により冷却された後に、ガス出口17からケース11外に流出する。
【0024】
また、本実施形態では、扁平チューブ19(ガス通路15)内には、EGRガスとの接触表面積を大きくして冷却性能を高めるために、図3に示すインナーフィン20が配設されている。
【0025】
本実施形態のインナーフィン20は、所謂ウェーブフィンの熱伝達率を向上させたものである。
【0026】
図3に示すように、インナーフィン20は、ガス通路15の幅方向に波形状に屈曲しながらガス通路15の長手方向に延びる多数のフィン部21と、ガス通路15の幅方向に隣接するフィン部21の上端同士を繋ぐ上面部22と、ガス通路15の幅方向に隣接するフィン部21の下端同士を繋ぐ下面部23とを有する。また、インナーフィン20は、例えば、金属板をプレス成形してなる。
【0027】
図3に示す本実施形態のインナーフィン20では、フィン部21に、ガス流れ方向の下流に向かうに従いガス通路15におけるフィン部21間の通路中心CLに近接するように傾斜する傾斜面24を有する出っ張り25を形成すると共に、出っ張り25を設けたフィン部21と通路中心CLを挟んで対向するフィン部21に、ガス流れ方向の下流に向かうに従いガス通路15におけるフィン部21間の通路中心CLから離間するように傾斜する傾斜面26を有する凹み27を形成している。
【0028】
より詳細には、出っ張り25をフィン部21における波形状の凹部分(図3(a)の範囲〔1〕)に設けると共に、凹み27をフィン部21における波形状の凸部分(図3(a)の範囲〔2〕)に設けている。なお、図3(a)中に、破線により波形状のベースラインBL(出っ張り25及び凹み27を設けない場合のフィン部21の形状)を図示している。
【0029】
出っ張り25及び凹み27のガス流れ方向に対する長さLNは、ガス通路15におけるフィン部21間の通路幅Wg(例えば、2mm)の0.5倍から1倍(つまり、1mmから2mm)とすると共に、出っ張り25及び凹み27のガス流れ方向と交差する方向に対する幅Wfは、ガス通路15におけるフィン部21間の通路幅Wg(例えば、2mm)の0.25倍から0.5倍(つまり、0.5mmから1.0mm)とする。図3に示す本実施形態では、例えば、出っ張り25及び凹み27の長さLNを、ガス通路15の通路幅Wg(2mm)の約0.5倍(例えば、約1mm)とすると共に、出っ張り25及び凹み27の幅Wfを、ガス通路15の通路幅Wg(2mm)の約0.25倍(つまり、約0.5mm)とする。
【0030】
本実施形態の作用を説明する。
【0031】
そもそも、図5に示すウェーブフィン(インナーフィン50)の熱伝達率が劣るのは、図5(a)に示すように、温度境界層がガス流れ方向の下流に行くに従って成長(発達)し、フィン部51での熱伝達が減るためである。つまり、図5(a)の(A)、(B)、(C)、(D)箇所の温度勾配から分かるように、温度境界層がガス流れ方向の下流に行くほど厚くなる(フィン部51から温度境界層までの距離が大きくなる)ため、温度勾配がガス流れ方向の下流に行くほど緩くなり、フィン部51での熱伝達が減る。
【0032】
一方、図3に示す本実施形態のウェーブフィン(インナーフィン20)では、新たに追加した、傾斜面24を有する出っ張り25により、温度境界層をはがす方向にガス流れが偏向する。つまり、本実施形態のインナーフィン20では、フィン部21に、ガス流れ方向の下流に向かうに従いガス通路15の通路中心CLに近接するように傾斜する傾斜面24を有する出っ張り25を設けているので、フィン部21近傍のガス流れが出っ張り25によって乱される。これにより温度境界層が成長(発達)して厚くならないため、温度勾配が全長に亘って緩くならず、熱伝達が減らない。よって、本実施形態によれば、所謂ウェーブフィンの熱伝達率を向上させることが可能になる。
【0033】
また、本実施形態のウェーブフィン(インナーフィン20)では、出っ張り25を設けたフィン部21とガス通路15の通路中心CLを挟んで対向するフィン部21に、ガス流れ方向の下流に向かうに従いガス通路15の通路中心CLから離間するように傾斜する傾斜面26を有する凹み27を設けているので、出っ張り25の形成に伴うガス通路15の通路幅Wg減少を補うことができる。つまり、フィン部21に出っ張り25を設けたのみでは、ガス通路15が絞られてしまうので、出っ張り25を設けたフィン部21とガス通路15の通路中心CLを挟んで対向するフィン部21に凹み27を設けることで、ガス通路15の通路幅Wgを充分に確保できる。
【0034】
以上要するに、本実施形態によれば、所謂ウェーブフィンの熱伝達率を向上させることが可能になる。そのため、ディーゼルエンジンにおいても、煤が付着せず、且つ放熱性の良いインナーフィン20を用いることができる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0036】
例えば、上述の実施形態では、熱交換器(EGRクーラー)10が対向流式のものであるとしたが、これには限定はされず、熱交換器(EGRクーラー)10が順流式のものであっても良い。
【0037】
また、上述の実施形態では、出っ張り25及び凹み27をガス流れ方向に対して断続的に設けているが、図4に示す他の実施形態のように、出っ張り25及び凹み27をガス流れ方向に対して連続的に設けても良い。図4に示す他の実施形態では、例えば、出っ張り25及び凹み27の長さLNを、ガス通路15の通路幅Wg(2mm)の約1倍(つまり、約2mm)とすると共に、出っ張り25及び凹み27の幅Wfを、ガス通路15の通路幅Wg(2mm)の約0.375倍(つまり、約0.75mm)とする。
【0038】
さらに、上述の実施形態とは逆に、出っ張り25をフィン部21における波形状の凸部分(図3(a)の範囲〔2〕)に設けると共に、凹み27をフィン部21における波形状の凹部分(図3(a)の範囲〔1〕)に設けても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 熱交換器(EGRクーラー)
12 冷却水通路
15 ガス通路
20 インナーフィン
24 傾斜面
25 出っ張り
26 傾斜面
27 凹み
CL 通路中心
LN 出っ張り及び凹みの長さ
Wg ガス通路の通路幅
Wf 出っ張り及び凹みの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスと冷却水とで熱交換を行い、排気ガスを冷却水によって冷却する熱交換器であって、
冷却水が流通する冷却水通路と、排気ガスが流通するガス通路と、前記ガス通路内に設けられ、前記ガス通路の幅方向に波形状に屈曲しながら前記ガス通路の長手方向に延びる多数のフィン部を有するインナーフィンとを備え、
温度境界層の成長を抑制するために、前記フィン部に、ガス流れ方向の下流に向かうに従い前記ガス通路における前記フィン部間の通路中心に近接するように傾斜する傾斜面を有する出っ張りを形成すると共に、
前記出っ張りの形成に伴う前記ガス通路における前記フィン部間の通路幅減少を補うために、前記出っ張りを設けた前記フィン部と前記通路中心を挟んで対向する前記フィン部に、ガス流れ方向の下流に向かうに従い前記通路中心から離間するように傾斜する傾斜面を有する凹みを形成したことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記出っ張りを前記フィン部における波形状の凹部分に設け、前記凹みを前記フィン部における波形状の凸部分に設けた請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記出っ張り及び前記凹みのガス流れ方向に対する長さは、前記ガス通路における前記フィン部間の通路幅の0.5倍から1倍とされる請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記出っ張り及び前記凹みのガス流れ方向と交差する方向に対する幅は、前記ガス通路における前記フィン部間の通路幅の0.25倍から0.5倍とされる請求項1から3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記内燃機関は、ディーゼルエンジンである請求項1から4のいずれかに記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−88078(P2013−88078A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230649(P2011−230649)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】