説明

熱供給システム

【課題】複数の燃料電池システムの夫々における貯湯タンクの容量を小さくしても、その燃料電池装置の排熱を有効に活用して、更なる省エネルギー化を図ること。
【解決手段】複数の燃料電池システム1の夫々には、温度成層を形成する状態で湯水を貯湯する貯湯タンク3と、その貯湯タンク3の湯水と共用熱媒体とを熱交換させる熱交換部14が備えられ、共用熱媒体を共用熱媒体循環路9にて循環させる共用熱媒体循環手段10,22と、複数の熱交換部14の夫々に対応して備えられ、共用熱媒体循環路9の共用熱媒体を熱交換部14に供給して共用熱媒体循環路9に戻す熱交換部供給路15とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置と、その燃料電池装置と貯湯タンクとの間で湯水を循環させて前記燃料電池装置の排熱にて加熱された湯水を前記貯湯タンクに貯湯する排熱回収手段と、その排熱回収手段にて前記貯湯タンクから前記燃料電池装置に供給する湯水が有する熱を放熱させる放熱器とを備えた燃料電池システムが複数備えられている熱供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の熱供給システムでは、例えば、マンション等の複数の住戸が集合している集合住宅に適応して、複数の住戸の夫々に燃料電池システムを備えることが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。各住戸では、排熱回収手段が燃料電池装置の排ガスと貯湯タンクの湯水とを熱交換させて燃料電池装置の排熱にて加熱された湯水を貯湯タンクに貯湯している。このようにして、燃料電池装置にて発電される電力を電力消費機器に用いるとともに、貯湯タンクの湯水を給湯や暖房等に用いて、燃料電池装置にて発生される電力及び排熱を有効に活用して省エネルギー化を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−12906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムは、燃料電池装置の排熱を貯湯タンクに蓄熱する一方で、貯湯タンクから燃料電池装置に供給する湯水が有する熱を放熱させる放熱器(本願に係る図1に示す例ではラジエータ5がこの放熱器に相当する)を備えており、その放熱器にて放熱することで、貯湯タンクから燃料電池装置に供給する湯水の温度が上限設定温度(例えば、40℃)未満となるようにしている。
【0005】
この点について説明する。
燃料電池装置では、例えば、天然ガス等の炭化水素を原燃料として用いる場合、原燃料に水蒸気を混合させて、COとH2に改質させてから燃料電池にて反応されている。このときのH2Oは、改質反応に必要なことから改質水と呼ばれている。そして、水道水等を改質水として用いると、不純物が多く含まれていることから、水浄化装置が必要になるので、主として、燃料電池装置の排ガスを貯湯タンクから供給される湯水にて冷却して凝縮水を生成し、その凝縮水を改質水として用いている。そこで、燃料電池装置の排ガスを凝縮させるまで冷却させるには、貯湯タンクから燃料電池装置に供給する湯水の温度を排ガスの凝縮温度よりも低温にすることが必要となる。したがって、貯湯タンクから燃料電池装置に供給する湯水の温度が上限設定温度(例えば、40℃)以上である場合には、放熱器にて湯水が有する熱を放熱させて、湯水の温度を上限設定温度(例えば、40℃)未満に低下させるようにしている。
【0006】
ここで、例えば、熱供給システムを集合住宅に適応させて、各住戸に燃料電池システムを備える場合に、貯湯タンクの容量が大きくなれば設置スペースの確保が難しくなる等の理由から、貯湯タンクの容量を小さくすることが望まれている。しかしながら、貯湯タンクの容量を小さくすれば、貯湯タンク全体の湯水の温度が高温になり易くなるので、貯湯タンクの湯水が上限設定温度(例えば、40℃)以上となり、上述の如く、その湯水が有する熱を放熱器にて放熱してしまい、燃料電池装置の排熱を有効に活用できない場合がある。
【0007】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、複数の燃料電池システムの夫々における貯湯タンクの容量を小さくしても、その燃料電池装置の排熱を有効に活用して、更なる省エネルギー化を図ることができる熱供給システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る熱供給システムの特徴構成は、燃料電池装置と、その燃料電池装置と貯湯タンクとの間で湯水を循環させて前記燃料電池装置の排熱にて加熱された湯水を前記貯湯タンクに貯湯する排熱回収手段と、その排熱回収手段にて前記貯湯タンクから前記燃料電池装置に供給する湯水が有する熱を放熱させる放熱器とを備えた燃料電池システムが複数備えられている熱供給システムにおいて、
複数の前記燃料電池システムの夫々には、温度成層を形成する状態で湯水を貯湯する前記貯湯タンクと、その貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体とを熱交換させる熱交換部が備えられ、共用熱媒体を共用熱媒体循環路にて循環させる共用熱媒体循環手段と、複数の前記熱交換部の夫々に対応して備えられ、前記共用熱媒体循環路の共用熱媒体を前記熱交換部に供給して前記共用熱媒体循環路に戻す熱交換部供給路とが備えられている点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、貯湯タンクでは、温度成層を形成して湯水を貯湯するので、温度が高い湯水(温水)は上方側に且つ温度が低い湯水は下方側に存在することになる。よって、貯湯タンクの下部の湯水の温度は、基本的に低温となっており、貯湯タンクの蓄熱量が一杯となった場合等に、貯湯タンクの下部の湯水の温度も上昇することになる。そして、複数の燃料電池システムの夫々において、熱交換部供給路によって熱交換部に共用熱媒体が供給され、熱交換部における共用熱媒体と貯湯タンクの下部の湯水との熱交換を行うことができる。
【0010】
貯湯タンクの蓄熱量が一杯となった場合等、貯湯タンクの下部の湯水の温度が上昇した場合には、貯湯タンクの下部の湯水の方が共用熱媒体よりも高温となって、熱交換部において貯湯タンクの下部の湯水にて共用熱媒体を加熱して、貯湯タンクの湯水が有する熱を共用熱媒体に供給することができる。
逆に、貯湯タンクの下部の湯水の温度が低温である場合には、貯湯タンクの下部の湯水の温度が共用熱媒体よりも低温となって、熱交換部において共用熱媒体にて貯湯タンクの下部の湯水を加熱することができる。そして、加熱された貯湯タンクの湯水は、温度成層を形成するように上方側に移動するので、貯湯タンクの下部の湯水の温度は低温に維持され、熱交換部において共用熱媒体にて貯湯タンクの下部の湯水を加熱することを継続して行うことができる。
【0011】
これにより、貯湯タンクに形成される温度成層を活用して、熱交換部に共用熱媒体を供給するという簡易な構成を備えるだけで、複数の燃料電池システムの夫々において、熱交換部において貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体との間で熱の授受を行い、燃料電池システムから共用熱媒体への熱の供給及び共用熱媒体から燃料電池システムへの熱の取り込みを行うことができる。したがって、複数の燃料電池システムの夫々において、燃料電池装置の排熱を無駄に放熱器にて放熱することなく、給湯や暖房等に用いることができる。また、例えば、ある燃料電池システムにて放熱器にて放熱されていた熱を、共用熱媒体を介して、他の燃料電池システムにて用いることができ、システム全体として熱の有効活用を図ることができる。
【0012】
以上のことから、複数の燃料電池システムの夫々における貯湯タンクの容量を小さくしても、複数の燃料電池システムの夫々における燃料電池装置の排熱を有効活用して、更なる省エネルギー化を図るとともに、システム全体としても熱の有効活用を図ることができる。しかも、熱交換部において貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体との間で熱の授受を行うに当たり、貯湯タンクに形成される温度成層を活用して、構成の簡素化を図りながら、更なる省エネルギー化を図ることができる。
【0013】
本発明に係る熱供給システムの更なる特徴構成は、共用熱媒体を共用熱媒体加熱部にて加熱する共用熱媒体加熱手段が備えられている点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、共用熱媒体加熱手段は、共用熱媒体を共用熱媒体加熱部にて加熱することができるので、共用熱媒体加熱部から取得した熱をも共用熱媒体に供給することができる。したがって、共用熱媒体が有する熱を複数の燃料電池システムにて有効に活用することができ、システム全体での省エネルギー化を適切に図ることができる。
【0015】
本発明に係る熱供給システムの更なる特徴構成は、前記排熱回収手段は、前記貯湯タンクの下部から取り出した湯水を前記燃料電池装置の排熱にて加熱させ、その加熱された湯水を前記貯湯タンクの上部に戻すように構成されている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、排熱回収手段は、温度成層を形成して湯水を貯湯する貯湯タンクの下部から湯水を取り出すので、貯湯タンクにおいてより低温の湯水を取り出すことができる。排熱回収手段は、その取り出した湯水を燃料電池装置の排熱にて加熱するので、燃料電池装置の排熱を効率よく回収して高温の湯水とし、その高温の湯水を元々高温の湯水が存在する貯湯タンクの上部に戻している。このように、貯湯タンクに形成される温度成層を乱さないようにしながら、燃料電池装置の排熱を効率よく回収して貯湯タンクに蓄熱することができる。そして、上述の如く、熱交換部は、貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体を熱交換させるので、貯湯タンクの下部の湯水の温度が上昇している場合には、熱交換部における熱交換によって貯湯タンクの下部の温度が低下される。これにより、排熱回収手段が、貯湯タンクから取り出す湯水の温度を低温とすることができ、貯湯タンクから取り出す湯水の温度が上限設定温度以上となって放熱器にて放熱されるのを適切に防止しながら、燃料電池装置の排熱を効率よく回収することができる。
【0017】
本発明に係る熱供給システムの更なる特徴構成は、前記熱交換部は、前記貯湯タンクの内部の下部位置に配置され、前記熱交換部供給路にて供給される共用熱媒体を通流させる内部熱交換器にて構成されている点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、貯湯タンクの内部の下部位置に配置された内部熱交換器に共用熱媒体を通流させることで、その通流される共用熱媒体と貯湯タンクの下部の湯水を熱交換させることができる。これにより、貯湯タンクの内部に内部熱交換器を配置するという簡素な構成により、貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体との間での熱の授受を的確に行うことができる。
【0019】
本発明に係る熱供給システムの更なる特徴構成は、前記貯湯タンクの下部から湯水を前記貯湯タンクの外部に取り出して前記貯湯タンクの下部に戻す取り出し循環路が備えられ、前記熱交換部は、その取り出し循環路の湯水と前記熱交換部供給路にて供給される共用熱媒体とを熱交換させる外部熱交換器にて構成されている点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、取り出し循環路にて貯湯タンクの下部の湯水を取り出すことができ、外部熱交換器においてその取り出した湯水と共用熱媒体を熱交換させることができる。そして、外部熱交換器にて熱交換された湯水は、取り出し循環路により貯湯タンクの下部に戻される。これにより、貯湯タンクに形成される温度成層に影響を与えることなく、貯湯タンクの外部において貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体との間での熱の授受を的確に行うことができる。
【0021】
本発明に係る熱供給システムの更なる特徴構成は、前記熱交換部は、前記貯湯タンクの内部の下部位置に前記熱交換部供給路にて供給される共用熱媒体を導入する導入部と、前記貯湯タンクの下部位置から前記貯湯タンクの外部に共用熱媒体又は共用熱媒体と湯水の混合流体を排出する排出部とを備えている点にある。
【0022】
本特徴構成によれば、導入部にて貯湯タンクの内部の下部位置に共用熱媒体が導入されるので、貯湯タンクの内部において導入された共用熱媒体と湯水を混合させて、貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体との間での熱の授受を行うことができる。そして、熱交換された共用熱媒体又は共用熱媒体と湯水の混合流体は、排出部にて貯湯タンクの外部に排出される。このようにして、単に、導入部と排出部を備えるという簡易な構成により、貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体との間での熱の授受を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】熱供給システムの概略構成を示す図
【図2】貯湯タンクの温度成層及び熱交換部を示す図
【図3】別実施形態における熱交換部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る熱供給システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この熱供給システム100は、図1に示すように、複数の燃料電池システム1を備えており、例えば、マンション等の複数の住戸が集合している集合住宅に適応して、複数の住戸の夫々に燃料電池システム1を備えさせている。
【0025】
(燃料電池システムの構成)
複数の燃料電池システム1の夫々は、燃料電池装置2と、その燃料電池装置2と貯湯タンク3との間で湯水を循環させて燃料電池装置2の排熱にて加熱された湯水を貯湯タンク3に貯湯する排熱回収手段4と、その排熱回収手段4にて貯湯タンク3から燃料電池装置2に供給する湯水が有する熱を放熱させるラジエータ(放熱器に相当する)5とを備えている。
【0026】
燃料電池装置2は、水素を含む水素含有ガスと酸素を含む酸素含有ガスとを反応させて発電しており、例えば、固体酸化物型にて構成されている。貯湯タンク3は、例えば、密閉型のタンクにて構成されており、温度が高い湯水(温水)は上方側に且つ温度が低い湯水は下方側に温度成層を形成する状態で湯水を貯留自在に構成されている。図示は省略するが、貯湯タンク3に貯湯されている湯水は、給湯栓等の給湯利用箇所に供給自在であるとともに、暖房や風呂の追焚の熱源としても利用可能に構成されている。貯湯タンク3には、その貯湯タンク3の蓄熱量を検出する等のために、複数の温度センサT1〜T4が上下方向に間隔を隔てて設けられている。第1温度センサT1は、貯湯タンク3の上部部位の湯水の温度を検出し、第2温度センサT2は、貯湯タンク3の中間上部部位の湯水の温度を検出し、第3温度センサT3は、貯湯タンク3の中間下部部位の湯水の温度を検出し、第4温度センサT4は、貯湯タンク3の下部部位の湯水の温度を検出している。
【0027】
排熱回収手段4は、貯湯タンク3の下部から取り出した湯水を燃料電池装置2に供給して貯湯タンク3の上部に戻す湯水循環路6と、その湯水循環路6にて湯水を循環させる湯水循環ポンプ7とを備えている。そして、排熱回収手段4は、燃料電池装置2の排ガスと湯水循環路6の湯水とを熱交換させて燃料電池装置2の排熱にて湯水循環路6の湯水を加熱し、その加熱された湯水を貯湯タンク3に戻して貯湯するように構成されている。ラジエータ5は、湯水循環路6において貯湯タンク3と燃料電池装置2との間の部位に備えられており、貯湯タンク3から燃料電池装置2に供給する湯水が有する熱を放熱自在に構成されている。
【0028】
(共用熱媒体を循環する構成)
熱供給システム100は、燃料電池システム1とは別に、共用熱媒体(例えば、湯水)を貯留する共用タンク8と、その共用タンク8の共用熱媒体を循環させる共用熱媒体循環路9と、共用タンク8から取り出した共用熱媒体を共用熱媒体循環路9にて循環させて共用タンク8に戻す共用熱媒体循環ポンプ10(共用熱媒体循環手段に相当する)とを備えている。共用タンク8は、例えば、密閉型のタンクにて構成されており、温度が高い共用熱媒体(温水)は上方側に且つ温度が低い共用熱媒体は下方側に温度成層を形成する状態で共用熱媒体を貯留自在に構成されている。共用熱媒体循環路9は、共用タンク8の上部から共用熱媒体を取り出して通流させる取り出し側部位9aと、その取り出し側部位9aを通流した共用熱媒体を共用タンク8の下部に戻す戻し側部位9bとから構成されている。
【0029】
共用熱媒体と貯湯タンク3の下部の湯水との間での熱の授受を行うために、共用タンク8の共用熱媒体と貯湯タンク3の下部の湯水とを熱交換させる熱交換部14が備えられている。この熱交換部14は、図2に示すように、貯湯タンク3の内部の下部位置に配置され、熱交換部供給路15にて供給される共用熱媒体を通流させる内部熱交換器(例えば、伝熱コイル型の熱交換器)にて構成されている。そして、図1に戻り、熱交換部14に共用熱媒体を供給するために、複数の熱交換部14の夫々に対応して、共用熱媒体循環路9の共用熱媒体を熱交換部14に供給して共用熱媒体循環路9に戻す熱交換部供給路15が備えられている。この熱交換部供給路15は、その上流側端部が共用熱媒体循環路9の取り出し側部位9aに接続され、その途中部位に熱交換部14を備え、その下流側端部が共用熱媒体循環路9の戻し側部位9bに接続されている。この熱交換部供給路15には、特に共用熱媒体の通流を断続する弁等を設けておらず、熱交換部供給路15によって、常時、熱交換部14に共用熱媒体が供給されている。
【0030】
このようにして、燃料電池システム1は、燃料電池装置2、排熱回収手段4及びラジエータ5に加えて、熱交換部14及び熱交換部供給路15を備えている。これにより、熱交換部14において貯湯タンク3の下部の湯水と共用熱媒体との熱交換を行うようにしている。そして、熱交換部14において貯湯タンク3の下部の湯水にて共用熱媒体を加熱することで、貯湯タンク3に蓄熱されている熱を燃料電池システム1から共用熱媒体に供給することができる。逆に、熱交換部14において共用熱媒体にて貯湯タンク3の下部の湯水を加熱することで、共用熱媒体が有する熱を燃料電池システム1に取り込んで貯湯タンク3に蓄熱することができる。
【0031】
共用熱媒体循環路9において、取り出し側部位9aの上流側部位と戻し側部位9bの下流側部位とを接続するバイパス路12が備えられ、取り出し側部位9aとバイパス路12との接続箇所には第1三方弁13が備えられている。取り出し側部位9aとバイパス路12との接続箇所は、取り出し側部位9aと熱交換部供給路15との接続箇所よりも上流側となっている。そして、共用熱媒体循環路9において、取り出し側部位9aとバイパス路12との接続箇所と取り出し側部位9aと熱交換部供給路15との接続箇所の間に共用熱媒体循環ポンプ10が備えられている。また、共用熱媒体循環路9において、取り出し側部位9aと戻し側部位9bとの間に第1制御弁11が備えられている。
【0032】
共用タンク8の共用熱媒体を加熱するために、共用タンク8から取り出した共用熱媒体を共用熱媒体加熱部17にて加熱して共用タンク8に戻す共用熱媒体加熱手段18が備えられている。この例では、共用熱媒体加熱部17は、太陽熱を集熱して共用熱媒体を加熱する太陽熱集熱器にて構成されている。共用熱媒体加熱手段18は、共用タンク8の下部から取り出した共用熱媒体を共用熱媒体加熱部17に供給して共用熱媒体加熱部17にて加熱された共用熱媒体を共用タンク8の上部に戻す加熱用循環路19と、その加熱用循環路19にて共用熱媒体を循環させる加熱用循環ポンプ20とを備えている。
【0033】
複数の燃料電池システム1の夫々には、その運転を制御する燃料電池側制御部21が備えられている。この燃料電池側制御部21は、燃料電池装置2や排熱回収手段4の作動を制御するように構成されている。つまり、燃料電池側制御部21は、例えば、電力需要に応じて燃料電池装置2の出力等を制御している。燃料電池側制御部21は、燃料電池装置2を作動させる場合に、湯水循環ポンプ7を作動させて、貯湯タンク3の下部から取り出した湯水を湯水循環路6にて燃料電池装置2に供給して燃料電池装置2の排ガスにてその湯水を加熱し、その加熱された湯水を湯水循環路6にて貯湯タンク3に戻して貯湯している。燃料電池装置2は、例えば、天然ガス等の炭化水素を原燃料としており、その原燃料に水蒸気を混合させてCOとH2に改質させてから燃料電池にて反応させている。燃料電池装置2の排ガスにて湯水循環路6の湯水を加熱することで、燃料電池装置2の排ガスを凝縮させて凝縮水を得ており、その凝縮水を上述の改質反応に必要な改質水として用いている。そこで、改質水としての凝縮水を得るために、貯湯タンク3から燃料電池装置2に供給する湯水の温度に上限設定温度(例えば、40℃)が設定されている。燃料電池側制御部21は、第4温度センサT4の検出温度が上限設定温度以上であると、ラジエータ5を作動させて、湯水循環路6にて貯湯タンク3から燃料電池装置2に供給する湯水の温度を上限設定温度未満となるようにしている。
【0034】
また、共用熱媒体循環路9における共用熱媒体の循環状態を制御する共用側制御部22が備えられており、燃料電池側制御部21と共用側制御部22との間では各種の情報が通信自在に構成されている。この共用側制御部22(共用熱媒体循環手段に相当する)は、共用熱媒体循環ポンプ10及び第1三方弁13の作動を制御することで、共用熱媒体循環路9における共用熱媒体の循環状態を制御するとともに、共用熱媒体加熱手段18の作動をも制御するように構成されている。つまり、共用側制御部22は、例えば、複数の燃料電池システム1の全てが運転停止している場合等には、燃料電池側制御部21との間での通信によりその運転停止の情報を取得すると、共用熱媒体循環ポンプ10を作動停止させ、それ以外の場合には、共用熱媒体循環ポンプ10を作動させている。また、共用側制御部22は、例えば、昼間等の太陽熱を取得できる時間帯等に、加熱用循環ポンプ20を作動させて、加熱用循環路19によって、共用タンク8の下部から取り出した共用熱媒体を共用熱媒体加熱部17に供給し、共用熱媒体加熱部17にて加熱された共用熱媒体を共用タンク8の上部に戻すようにしている。
【0035】
(熱交換部における熱交換)
図2に示すように、貯湯タンク3では、温度成層を形成して湯水を貯湯するので、温度が高い湯水(温水)(図2中黒色の濃い領域)は上方側に且つ温度が低い湯水(図2中黒色の薄い領域)は下方側に存在することになる。よって、貯湯タンク3の下部の湯水の温度は、基本的に低温となっており、貯湯タンク3の蓄熱量が一杯となった場合等に、貯湯タンク3の下部の湯水の温度も上昇することになる。
【0036】
複数の燃料電池システム1の夫々において、熱交換部14は、貯湯タンク3の内部の下部位置に配置され、熱交換部供給路15にて供給される共用熱媒体を通流させる内部熱交換器として構成されており、その熱交換部14に熱交換部供給路15によって共用熱媒体を供給している。これにより、貯湯タンク3の下部の湯水の温度が上昇した場合には、貯湯タンク3の下部の湯水の方が共用熱媒体よりも高温となって、熱交換部14において貯湯タンク3の下部の湯水にて共用熱媒体を加熱し、貯湯タンク3の湯水が有する熱を共用熱媒体に供給することができる。したがって、貯湯タンク3の蓄熱量が一杯となった場合等、貯湯タンク3の下部の湯水の温度が上昇する場合であっても、その貯湯タンク3の下部の湯水の温度を低下させることができる。その結果、貯湯タンク3の下部から湯水循環路6に取り出される湯水の温度を低温とすることができ、その湯水の温度が上限設定温度以上となって、ラジエータ5にて放熱されるのを防止することができる。
【0037】
逆に、貯湯タンク3の下部の湯水の温度が低温である場合には、貯湯タンク3の下部の湯水の温度が共用熱媒体よりも低温となって、熱交換部14において共用熱媒体にて貯湯タンク3の下部の湯水を加熱することができる。そして、加熱された貯湯タンク3の湯水は、温度成層を形成するように上方側に移動するので、貯湯タンク3の下部の湯水の温度は低温に維持され、熱交換部14において共用熱媒体にて貯湯タンク3の下部の湯水を加熱することを継続して行うことができる。
そして、熱交換部供給路15には、共用熱媒体の通流を断続する弁等が設けられていないので、共用熱媒体循環ポンプ10を作動させている状態では、熱交換部供給路15によって、常時、熱交換部14に共用熱媒体が供給されて、上述のような、貯湯タンク3の下部の湯水から共用熱媒体への熱の供給、及び、共用熱媒体から貯湯タンク3への熱の取り込みを自動的に行うことができる。したがって、このような熱の授受の管理は、実質的に、共用熱媒体循環ポンプ10を作動させるか否かの共用熱媒体の循環管理のみによって実現できる。
【0038】
このようにして、本実施形態の熱供給システム100では、複数の燃料電池システム1の夫々において、貯湯タンク3に蓄熱されている熱を、ラジエータ5にて無駄に放熱することなく、共用熱媒体に供給して共用タンク8に蓄熱させておくことができる。そして、共用熱媒体が有する熱を貯湯タンク3に取り込んで、その取り込んだ熱を給湯や暖房等に利用することができる。これにより、複数の燃料電池システム1の夫々において、貯湯タンク3の容量を小さくすることができながら、貯湯タンク3の下部の湯水と共用熱媒体との間で熱の授受を行い、燃料電池装置2の排熱を無駄に放熱することなく、給湯や暖房等に有効に活用することができる。しかも、共用熱媒体は、複数の燃料電池システム1の夫々に備えられた熱交換部14にて貯湯タンク3の下部の湯水と熱交換できるので、ある住戸にて余剰な燃料電池装置2の排熱を他の住戸にて給湯や暖房等に用いることができ、集合住宅の全体としてエネルギーの有効活用を図ることができる。更に、熱交換部14に共用熱媒体を供給するという簡易な構成を備えるだけで、貯湯タンク3に形成される温度成層を活用して、熱交換部14における熱の授受を適切に行うことができる。
【0039】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、熱交換部14として、図2に示すように、貯湯タンク3の内部の下部位置に配置された内部熱交換器にて構成されている例を示している。これに代えて、図3(a)に示すように、貯湯タンク3の下部から湯水を貯湯タンク3の外部に取り出して貯湯タンク3の下部に戻す取り出し循環路23が備えられ、熱交換部14を、その取り出し循環路23の湯水と熱交換部供給路15にて供給される共用熱媒体とを熱交換させる外部熱交換器にて構成することもできる。取り出し循環路23には、取り出し用循環ポンプ24が備えられ、その取り出し用循環ポンプ24を作動させることで、外部熱交換器としての熱交換部14における貯湯タンク3の下部の湯水と共用熱媒体の熱交換を行うようにしている。
【0040】
また、図3(b)に示すように、熱交換部14は、貯湯タンク3の内部の下部位置(下端部位)に熱交換部供給路15にて供給される共用熱媒体を導入する導入部25と、貯湯タンク3の下部位置(下端部位)から貯湯タンク3の外部に共用熱媒体又は共用熱媒体と湯水の混合流体を排出する排出部26とを備えて構成することもできる。この場合には、導入部25にて貯湯タンク3の内部の下部位置に共用熱媒体が導入されるので、貯湯タンク3の内部において導入された共用熱媒体と湯水を混合させて、貯湯タンク3の下部の湯水と共用熱媒体との間での熱の授受を行うことができる。そして、熱交換された共用熱媒体又は共用熱媒体と湯水の混合流体は、排出部26にて貯湯タンク3の外部に排出される。そして、貯湯タンク3の下部位置には、導入部25から導入される共用熱媒体の貯湯タンク3の上方側への移動を規制する規制体27が備えられている。この規制体27は、貯湯タンク3の上下方向において導入部25に対向する位置に配置されており、共用熱媒体の貯湯タンク3の上方側への移動を規制しつつ、共用熱媒体を貯湯タンク3の横幅方向に案内するコ字状に形成されている。これにより、貯湯タンク3の内部において導入された共用熱媒体と貯湯タンク3の下部の湯水を混合させて、貯湯タンク3の下部の湯水と共用熱媒体との間での熱の授受を適切に行えるようにしている。
【0041】
(2)上記実施形態では、共用熱媒体加熱部17として、太陽熱集熱器を採用した場合を例示したが、例えば、集合住宅における共用部の電灯等の消費電力だけを賄うことができる小型のコージェネレーションシステムを備え、その小型のコージェネレーションシステムを共用熱媒体加熱部として採用して、小型のコージェネレーションシステムから発生する排熱にて共用熱媒体を加熱することも可能である。
【0042】
(3)上記実施形態では、熱交換部供給路15に共用熱媒体の通流を断続する弁等を設けていないが、熱交換部供給路15に共用熱媒体の通流を断続する弁等を設けることもできる。このような弁等があれば、各住戸個別で、燃料電池システムから共用熱媒体への熱の供給及び共用熱媒体から燃料電池システムへの熱の取り込みを行うことが可能になるので、給湯による熱の払出後、給湯需要が見込めない場合等には、弁を閉じて熱の取り込みを禁止し、他の住戸で熱の取込量を大きくする等の効果を大きくすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、燃料電池装置と、その燃料電池装置と貯湯タンクとの間で湯水を循環させて前記燃料電池装置の排熱にて加熱された湯水を前記貯湯タンクに貯湯する排熱回収手段と、その排熱回収手段にて前記貯湯タンクから前記燃料電池装置に供給する湯水が有する熱を放熱させる放熱器とを備えた燃料電池システムが複数備えられ、複数の燃料電池システムの夫々における貯湯タンクの容量を小さくしても、その燃料電池装置の排熱を有効に活用して、更なる省エネルギー化を図ることができる各種の熱供給システムに適応可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 燃料電池システム
2 燃料電池装置
3 貯湯タンク
4 排熱回収手段
5 ラジエータ(放熱器)
9 共用熱媒体循環路
10 共用熱媒体循環ポンプ(共用熱媒体循環手段)
14 熱交換部
15 熱交換部供給路
17 共用熱媒体加熱部
18 共用熱媒体加熱手段
22 共用側制御部(共用熱媒体循環手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池装置と、その燃料電池装置と貯湯タンクとの間で湯水を循環させて前記燃料電池装置の排熱にて加熱された湯水を前記貯湯タンクに貯湯する排熱回収手段と、その排熱回収手段にて前記貯湯タンクから前記燃料電池装置に供給する湯水が有する熱を放熱させる放熱器とを備えた燃料電池システムが複数備えられている熱供給システムであって、
複数の前記燃料電池システムの夫々には、温度成層を形成する状態で湯水を貯湯する前記貯湯タンクと、その貯湯タンクの下部の湯水と共用熱媒体とを熱交換させる熱交換部が備えられ、共用熱媒体を共用熱媒体循環路にて循環させる共用熱媒体循環手段と、複数の前記熱交換部の夫々に対応して備えられ、前記共用熱媒体循環路の共用熱媒体を前記熱交換部に供給して前記共用熱媒体循環路に戻す熱交換部供給路とが備えられている熱供給システム。
【請求項2】
共用熱媒体を共用熱媒体加熱部にて加熱する共用熱媒体加熱手段が備えられている請求項1に記載の熱供給システム。
【請求項3】
前記排熱回収手段は、前記貯湯タンクの下部から取り出した湯水を前記燃料電池装置の排熱にて加熱させ、その加熱された湯水を前記貯湯タンクの上部に戻すように構成されている請求項1又は2に記載の熱供給システム。
【請求項4】
前記熱交換部は、前記貯湯タンクの内部の下部位置に配置され、前記熱交換部供給路にて供給される共用熱媒体を通流させる内部熱交換器にて構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の熱供給システム。
【請求項5】
前記貯湯タンクの下部から湯水を前記貯湯タンクの外部に取り出して前記貯湯タンクの下部に戻す取り出し循環路が備えられ、前記熱交換部は、その取り出し循環路の湯水と前記熱交換部供給路にて供給される共用熱媒体とを熱交換させる外部熱交換器にて構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の熱供給システム。
【請求項6】
前記熱交換部は、前記貯湯タンクの内部の下部位置に前記熱交換部供給路にて供給される共用熱媒体を導入する導入部と、前記貯湯タンクの下部位置から前記貯湯タンクの外部に共用熱媒体又は共用熱媒体と湯水の混合流体を排出する排出部とを備えている請求項1〜3の何れか1項に記載の熱供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57436(P2013−57436A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195326(P2011−195326)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】