説明

熱変色性組成物及び熱変色性マイクロカプセル

【課題】所望の変色温度ヒステリシスに制御された熱変色性組成物を提供する。
【解決手段】電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び減感剤を含む熱変色性組成物であって、 前記減感剤として、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【化1】


(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を含むことを特徴とする熱変色性組成物に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性組成物及び熱変色性マイクロカプセルに関する。さらに、本発明は、熱変色性組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱変色性組成物は、温度により可逆的に発色−消色するものであり、例えば印刷物、インキ、塗料、包装材料、記録材料等に用いられる。このような組成物の代表例として、電子供与性呈色性有機化合物(電子供与体)と電子受容性化合物(電子受容体)との電子授受反応を利用したものがある(特許文献1、特許文献2等)。
【0003】
一般に、熱変色性組成物は、加熱−冷却のサイクルにおいて、発色−消色あるいは消色−発色を可逆的に繰り返すことができるが、通常は発色温度と消色温度との温度差(いわゆる変色温度ヒステリシス:ΔH)が生じる。例えば、図1に示すように、ΔH=0℃の場合が図1(b)であり、図1(a)及び図1(c)ではそれぞれΔHが生じる。図1(a)では消色温度のほうが高くなる場合を示し、図1(c)では発色温度のほうが高くなる場合を示している。
【0004】
これに対し、変色温度ヒステリシス:ΔHを大きくするための技術として、炭素数が奇数の脂肪族一価アルコールと脂肪族カルボン酸から得られる、特定の脂肪酸エステル化合物を反応媒体とし、該反応媒体と呈色反応成分からなる均質相溶体を微小カプセルに内包させることにより、8℃乃至30℃のヒステリシス幅(線分HG)の熱変色特性を発現させるマイクロカプセル顔料が知られている(特許文献3)。このマイクロカプセル顔料によれば、色濃度−温度曲線に関して、8℃〜30℃のヒステリシス幅(ΔH)を示して発色−消色の可逆的変色を生起させ、変色温度より低温側の色と高温側の色の両方を常温域で互変的に記憶保持でき、必要に応じて熱又は冷熱を適用することにより、いずれかの色を可逆的に再現させて記憶保持できる特性を効果的に発現させることができる、とされている。
【0005】
また例えば、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、及び、(ニ)変色温度調整剤を必須四成分として含み、前記(ニ)変色温度調整剤が、融点をY℃とするとき、(ハ)成分の融点(X℃)に対し、(X+16)≦Y≦(X+100)℃の関係を満たす、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸アミド類、脂肪酸類より選ばれる一種又は二種以上の化合物から選ばれてなり、前記必須四成分をマイクロカプセルに内包させた、温度−色濃度曲線に関して5℃〜80℃のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色し、低温側トリガー以下及び高温側トリガー以上の各温度域で呈する色彩を前記低温側トリガーと高温側トリガーとの間の温度域で互変的に記憶保持させる感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料が提案されている(特許文献4)。
【0006】
さらに、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)と(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、及び、(ニ)変色温度調整剤を必須四成分として含み、前記(ニ)変色温度調整剤が、融点をY℃とするとき、(ハ)成分の融点(X℃)に対してX+30≦Y≦200の関係を満たすエステル類、アルコール類、ケトン類、酸アミド類、炭化水素類、脂肪酸類から選ばれる一種又は二種以上の化合物であり、前記必須四成分をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料も提案されている(特許文献5)。
【特許文献1】特開平6−65568号公報
【特許文献2】特公平4−17154号公報
【特許文献3】特開平7−33997号公報
【特許文献4】特開2001−152041号公報
【特許文献5】特開2002−12787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの従来技術では、変色温度ヒステリシスの微妙な調整が難しいという問題がある。例えば、特許文献3等のマイクロカプセル顔料においても、連続的又は段階的な変色温度ヒステリシスの調節が困難ないしは不可能である。それゆえに、これらの技術では、所望の変色温度ヒステリシスを有する熱変色性組成物を製造することはきわめて困難である。
【0008】
従って、本発明の主な目的は、所望の変色温度ヒステリシスに制御された熱変色性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の成分を組み合わせをインキ組成として採用することによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の熱変色性組成物及び熱変色性マイクロカプセルに係る。
1. 電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び減感剤を含む熱変色性組成物であって、
前記減感剤として、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【0011】
【化3】

【0012】
(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を含むことを特徴とする熱変色性組成物。
2. 前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の重量比が1:0.4〜2.5である、前記項1に記載の熱変色性組成物。
3. 前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の合計含有量が、熱変色性組成物中60〜90重量%である、前記項1又は2に記載の熱変色性組成物。
4. 変色温度ヒステリシスが5℃未満である、前記項1〜3のいずれかに記載の熱変色性組成物。
5. 前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の融点の差が30℃未満である、前記項1〜4のいずれかに記載の熱変色性組成物。
6. 前記2種の化合物として、(1)ラウリン酸ステアリル及びステアリン酸ラウリルの組み合わせ又は(2)パルミチン酸ステアリル及びステアリン酸パルミチルの組み合わせを含む、前記項1〜5のいずれかに記載の熱変色性組成物。
7. 前記項1〜6のいずれかに記載の組成物をマイクロカプセルに内包してなる熱変色性マイクロカプセル。
8. 電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び減感剤を含む熱変色性組成物を製造する方法であって、
前記減感剤として、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【0013】
【化4】

【0014】
(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を配合するに際して、両者の配合割合を変えることによりヒステリシスを変化させて所望の変色温度ヒステリシスを有する熱変色性組成物を得ることを特徴とする製造方法。
9. 前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の重量比が1:0.4〜2.5である、前記項8に記載の製造方法。
10. 前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の合計含有量が、熱変色性組成物中50〜90重量%である、前記項8又は9に記載の製造方法。
11. 変色温度ヒステリシスが5℃未満である、前記項8〜10のいずれかに記載の製造方法。
12. 前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の融点の差が30℃未満である、前記項8〜11のいずれかに記載の製造方法。
13. 前記2種の化合物として、(1)ラウリン酸ステアリル及びステアリン酸ラウリルの組み合わせ又は(2)パルミチン酸ステアリル及びステアリン酸パルミチルの組み合わせを含む、前記項8〜12のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱変色性組成物の製造方法によれば、互いの化学構造が特定の関係を有する減感剤(エステル化合物)の組み合わせを採用しているので、それらの配合割合に応じた変色温度ヒステリシスΔHを自由に設定することができる。すなわち、前記ΔHを0℃から所望の値(好ましくは20℃以下、より好ましくは5℃未満、最も好ましくは4.5℃以下)までの範囲内で連続的又は段階的にΔHを任意に設定することが可能である。特に、後記の実施例でも示すように、本発明では、減感剤の添加量と変色温度ヒステリシスΔHとを直線的な関係を与えることもできるので、より計画的かつ精密に変色温度ヒステリシスΔHの設計を行うことができる。
【0016】
本発明の熱変色性組成物は、上記のように、連続的又は段階的にΔHが制御されているので、さまざまな用途において最適な熱変色性組成物を提供することができる。また、本発明の熱変色性組成物において、上記エステル化合物は、減感剤として作用するものであるため、熱変色性組成物の発色・消色が阻害されることなく、所望の発色性及び消色性を確保することができる。
【0017】
本発明の熱変色性組成物は、さまざまな用途に用いることができる。例えば、インキ、印刷物、プラスチック成形体、包装材料、記録材料、繊維等の種々の材料・製品に熱変色性を付与するのに好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
1.熱変色性組成物
本発明の熱変色性組成物は、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び減感剤を含む熱変色性組成物であって、
前記減感剤として、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【0019】
【化5】

【0020】
(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を含むことを特徴とする。
【0021】
電子供与性呈色性有機化合物
電子供与性呈色性有機化合物(発色剤)としては、電子受容性化合物(顕色剤)と反応して呈色するものであれば限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、下記の化合物を好適に用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0022】
(a)フルオラン類…2’−[(2−クロロフェニル)アミノ]−6’−(ジブチルアミノ)−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジメチルアミノベンゾ(a)−フルオラン、3−アミノ−5−メチルフルオラン、2−メチル−3−アミノ−6,7−ジメチルフルオラン、2−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、6’−(エチル(4−メチルフェニル)アミノ−2’−(N−メチルフェニルアミノ)−スピロ(イソベンゾフラン1(3H),9’−(9H)キサンテン)−3−オン等;
(b)フルオレン類…3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレンスピロ(9.3’)−4’−アザフタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレンスピロ(9.3’)−4’,7‘−ジアザフタリド等;
(c)ジフェニルメタンフタリド類…3,3−ビス−(p−エトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)フタリド等;
(d)ジフェニルメタンアザフタリド類…3,3−ビス−(1−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド等;
(f)インドリルフタリド類…3,3−ビス(n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等;
(g)フェニルインドリルフタリド類…3−(1−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等;
(h)フェニルインドリルアザフタリド類…3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−[2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル]−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド等;
(i)スチリルキノリン類…2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン等;
(j)ピリジン類…2,6−ジフェニル−4−(6−ジメチルアミノフェニル)ビリジン、2,6−ジエトキシ−4−(4−ジエチルアミノフェニル)ピリジン等;
(k)キナゾリン類…2−(4−N−メチルアニリノフェニル)−1−フェノキシキナゾリン、2−(4−ジメチルアミノフェニル)−4−(1−メトキシフェニルオキシ)キナゾリン等;
(l)ビスキナゾリン類…4,4’−(エチレンジオキシ)−ビス[2−(1−ジエチルアミノフェニル)キナゾリン]、4,4’−(エチレンジオキシ)−ビス[2−(1−ジ−n−ブチルアミノフェニル)キナゾリン]等;
(m)エチレノフタリド類…3,3−ビス[1,1−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)エチレノ−3]フタリド等;
(n)エチレノアザフタリド類…3,3−ビス[1,1−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)エチレノ−2]−4−アザフタリド、3,3−ビス[1,1−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)エチレノ−2]−4,7−ジアザフタリド等;
(o)トリフェニルメタンフタリド類…クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン等;
(p)ポリアリールカルビノール類…ミヒラーヒドロール、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール等;
(q)ロイコオーラミン類…N−(2,3−ジクロロフェニニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオーラミン、N−アセチルオーラミン等;
(r)ローダミンラクタム類…ローダミンβラクタム等;
(s)インドリン類…2−(フェニルイミノエチリデン)−3,3−ジメチルインドリン等;
(t)スピロピラン類…N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8−メトキシ−N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン等;
また、本発明では、これらのほか、ジアザローダミンラクトン類、キサンテン類等も使用することができる。
【0023】
本発明では、これら電子供与性呈色性有機化合物のうちフルオラン類の少なくとも1種を好適に用いることができる。特に、2’−[(2−クロロフェニル)アミノ]−6’−(ジブチルアミノ)−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オンがより好ましい。
【0024】
電子供与性呈色性有機化合物の含有量は、その化合物の種類等に応じて適宜設定できるが、一般的には本発明の熱変色性組成物中0.1〜50重量%程度、特に0.8〜15重量%とすることが望ましい。前記含有量が0.1重量%未満の場合は発色濃度が低くなるおそれがある。また、上記含有量が50重量%を超える場合は地発色が大きくなるおそれがある。
【0025】
電子受容性化合物
電子受容性化合物としては、限定的でなく、公知又は市販のものを適宜使用することができる。例えば、下記の化合物を好適に用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0026】
(a)フェノール類…ビスフェノールA又はその誘導体、ビスフェノールS又はその誘導体、p−フェニルフェノール、ドデシルフェノール、o−ブロモフェノール、p−オキシ安息香酸エチル、没食子酸メチル、フェノール樹脂等
(b)フェノール類の金属塩…フェノール類のNa、K、Li、Ca、Zn、Al、Mg、Ni、Co、Sn、Cu、Fe、Ti、Pb、Mo等の金属塩等
(c)芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸類…フタル酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸等
(d)カルボン酸類の金属塩…オレイン酸ナトリウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸ニッケル等
(e)酸性リン酸エステル類…ブチルアシッドフォスフェート、2−エチルヘキシル−アシッドフォスフェート、ドデシルアシッドフォスファイト
(f)酸性リン酸エステル類の金属塩…酸性リン酸エステル類のNa、K、Li、Ca、Zn、Al、Mg、Ni、Co、Sn、Fe、Ti、Pb、Mo等の金属塩等
(g)トリアゾール化合物…1,2,3−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール等
(h)チオ尿素及びその誘導体…ジフェニルチオ尿素、ジ−o−トルイル尿素等
(i)ハロヒドリン類…2,2,2−トリクロロエタノール、1,1,1−トリブロモ−2−メチル−2−プロパノール、N−3−ピリジル−N’−(1−ヒドロキシ−2,2,2−トリクロロエチル)尿素等
(j)ベンゾチアゾール類…2−メルカプトベンゼンチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾールのZn塩等
本発明では、これら電子受容性化合物のうちフェノール類及びその金属塩の少なくとも1種を好適に用いることができる。特に、1)ビスフェノールA及びその誘導体ならびに2)ビスフェノールS及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、最も好ましくは2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン)である。
【0027】
電子受容性化合物の含有量は、その化合物の種類等に応じて適宜設定できるが、一般的には本発明の熱変色性組成物中0.05〜98重量%程度、特に0.5〜77重量%とすることが望ましい。前記含有量が0.05重量%未満の場合は発色濃度が低くなるおそれがある。また、上記含有量が98重量%を超える場合は地発色が大きくなるおそれがある。
【0028】
また、本発明では、電子供与性呈色性有機化合物との関係では、電子供与性呈色性有機化合物1重量部に対して電子受容性化合物0.1〜100重量部、特に0.5〜20重量部とすることが好ましい。
【0029】
減感剤
減感剤としては、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【0030】
【化6】

【0031】
(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を含む。
【0032】
前記mは、5以上の整数を示し、好ましくは9〜21の整数であり、より好ましくは11〜17の整数である。前記nは、5以上の整数を示し、好ましくは10〜22の整数であり、より好ましくは12〜18の整数である。
【0033】
前記m及びnは、前記化合物(1)(2)が同一になる場合の組み合わせを除く。例えば、m=5,n=6のときは前記化合物(1)(2)はともにC11COOC13(カプロン酸ヘキシル)となるので、このような場合のm及びnの組み合わせは除かれる。
【0034】
上記2種の化合物としては、(A)ラウリン酸ステアリル及びステアリン酸ラウリルの組み合わせ又は(B)パルミチン酸ステアリル及びステアリン酸パルミチルの組み合わせを含むことが好ましい。これらの組み合わせを用いることにより、より精度の高いΔHの制御が可能になる。例えば、これら(A)又は(B)の組み合わせ(減感剤として2成分系)を採用する場合には、ΔHを0℃に近づけること、好ましくは0℃≦ΔH≦1℃とすることができる。また、前記化合物(1)(2)の割合を連続的に変えることによりΔHを連続的に大きくすることもできる。
【0035】
本発明では、減感剤として前記化合物(1)(2)からなる2成分系を採用することが望ましい。ただし、ΔHの制御を大きく妨げない範囲内で他の減感剤を併用することも可能である。例えば、下記の減感剤を用いることもできる。
【0036】
(a)アルコール類…n−セチルアルコール、n−オクチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ヘキシレングリコール等
(b)エステル類…ミリスチン酸エステル、ラウリン酸エステル、フタル酸ジオクチル等
(c)ケトン類…メチルヘキシルケトン、ベンゾフェノン、ステアロン等
(d)エーテル類…ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジステアリルエーテル等
(e)酸アミド化合物類…オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、カプロン酸アニリド等
(f)炭素数6以上の脂肪酸…ラウリン酸、ステアリン酸、2−オキシミリスチン酸等
(g)芳香族化合物…ジフェニルメタン、ジベンジルトルエン、プロピルジフェニル、イソプロピルナフタリン、1,1,3−トリメチル−3−トリル−インダン、ドデシルベンゼン等
(h)チオール類…n−デシルメルカプタン、n−ミリスチルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン、イソセチルメルカプタン、ドデシルベンジンメルカプタン等
(i)スルフィド類…ジ−n−オクチルスルフィド、ジ−n−デシルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジエチルフェニルスルフィド等
(j)ジスルフィド類…ジ−n−オクチルジスルフィド、ジ−n−デシルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジナフチルジスルフィド等
(k)スルホキシド類…ジエチルスルホキシド、テトラメチレンカルボキシド、ジフェニルスルホキシド等
(l)スルホン類…ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジベンジルスルホン等
(m)アゾメチン類…ベンジリデンラウリルアミン、p−メトキシベンジリデンラウリルアミン、ベンジリデンp−アニシジン等
(n)脂肪酸一級アミン塩類…オレイン酸ステアリルアミン、ステアリン酸ミリスチルアミン、ベヘニン酸ステアリルアミン等
減感剤の含有量(合計量)は、その化合物の種類等に応じて適宜設定できるが、一般的には本発明の熱変色性組成物中1〜99重量%程度、特に19〜99重量%、さらには60〜90重量%とすることが望ましい。前記含有量が1重量%未満の場合は地発色が大きくなるおそれがある。また、上記含有量が99重量%を超える場合は発色濃度が低くなるおそれがある。
【0037】
本発明では、2種の減感剤の含有割合は、限定的ではないものの、一般的には(前記(1)の化合物):(前記(2)の化合物)=1:0.4〜2.5(重量比)の範囲内で設定することが望ましい。この範囲内でΔHを0℃により近づけることが可能となる。
【0038】
また、本発明では、2種の減感剤は、その融点の差が30℃未満、特に20℃以下である。このような組み合わせで2種の減感剤を使用することにより、より好適にΔHを制御することが可能となる。
【0039】
その他の成分
本発明の熱変色性組成物では、必要に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、非熱変色性顔料、非熱変色性染料、蛍光増白剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、溶剤、増粘剤等の公知の添加剤を組成物中に配合しても良い。
【0040】
(2)熱変色性組成物の製造方法
本発明の熱変色性組成物は、これらの成分を攪拌機、ミキサー、ホモジナイザー等の公知の混合機に投入し、均一に混合することによって調製することができる。この場合、加熱しながら混合することが好ましい。加熱温度は限定的ではないが、通常は120〜180℃程度とすれば良い。
【0041】
特に、本発明は、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び減感剤を含む熱変色性組成物を製造する方法であって、
前記減感剤として、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【0042】
【化7】

【0043】
(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を配合するに際して、両者の配合割合を変えることにより変色温度ヒステリシスΔHを変化させて所望の変色温度ヒステリシスを有する熱変色性組成物を得ることを特徴とする製造方法、を包含する。
【0044】
すなわち、前記(1)(2)の配合割合を変えることにより、その配合割合に応じたΔHを設定することができる。具体的には、前記(1)及び(2)の合計量を100重量部とすれば、0重量部<[前記(1)の割合又は前記(2)の割合]<100重量部の範囲内で連続的に変えることにより、所望のΔHを得ることができる。特に、前記のように、(前記(1)の化合物):(前記(2)の化合物)=1:0.4〜2.5(重量比)の範囲内で設定することが望ましい。この範囲内でΔHを0℃により近づけることが可能となる。
【0045】
また、前記のとおり、本発明では、2種の減感剤においては、その融点の差が30℃未満、特に20℃以下であることが好ましい。このような融点の組み合わせで2種の減感剤を使用することにより、より好適にΔHを制御することが可能となる。
【0046】
本発明は、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び減感剤を含む熱変色性組成物において、変色温度ヒステリシスΔHを制御する方法であって、
前記減感剤として、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【0047】
【化8】

【0048】
(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を配合するに当たり、両者の化合物の配合割合を変えることにより変色温度ヒステリシスΔHを変化させる方法を包含する。この方法の条件は、前記の製造方法と同様にすれば良い。
【0049】
(3)熱変色性マイクロカプセル
本発明は、前記の熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包してなる熱変色性マイクロカプセルを包含する。内容物として本発明の熱変色性組成物を用いるほかは、公知のマイクロカプセルと同様の構造を採用することができる。例えば、熱変色性組成物を含む内容物を壁膜により内包してなるマイクロカプセルが挙げられる。
【0050】
内容物としては、熱変色性組成物のほか、必要に応じて溶剤(溶解助剤)、乳化剤等か含まれていて良い。
【0051】
熱変色性組成物の含有量は限定的ではないが、一般的にはマイクロカプセルを100重量%とすると6〜98重量%程度、特に75〜95重量%とすることが望ましい。
【0052】
溶剤としては、熱変色性組成物と壁膜原料とを均一に溶解させることができ、熱変色性能を阻害しないものである限り、公知の溶剤から適宜選択することができる。特に、後工程で取り除けるものが望ましい。例えば、エステル系溶剤(但し、前記(1)(2)の化合物を除く。)、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤、含窒素系溶剤、シリコン系溶剤、含ハロゲン系溶剤等が使用できる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0053】
乳化剤は、内容物を水中で乳化する際に油滴表面に吸着して安定化させる両親媒性物質を好適に用いることができる。これらは公知の乳化剤から採用することができる。例えば、水溶性天然高分子、水溶性合成高分子、界面活性剤、無機微粒子等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。乳化剤は、壁膜を構成する樹脂成分の種類等に応じて適宜決定することができる。例えば、樹脂成分がエポキシ樹脂である場合には、乳化剤としてアラビアゴム、ゼラチン等の多糖類のほか、カゼイン等も好適に使用することができる。また例えば、樹脂成分としてメラミンホルマリン樹脂を用いる場合には、乳化剤としてエチレン無水マレイン酸共重合体等を好適に用いることができる。さらに、樹脂成分としてウレタン(イソシアネート)を用いる場合には、ゼラチン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。
【0054】
壁膜としては、通常は樹脂系壁膜を好適に採用することができる。樹脂としては、例えば各種の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を使用するこができる。より具体的には、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、尿素−メラミン系樹脂等が挙げられる。これら樹脂成分は1種又は2種以上で使用することができる。マイクロカプセルを製造する際は、これらの原料を用い、これらを高分子化することにより好適にマイクロカプセル化することができる。
【0055】
(4)熱変色性マイクロカプセルの製造方法
本発明の熱変色性マイクロカプセルの製造方法としては、内容物として本発明の熱変色性組成物を用いるほかは、公知のマイクロカプセル化に従って実施することができる。マイクロカプセル化の方法として、例えば界面重合法(重縮合、付加重合)、インサイチュー重合法、コアセルベーション法、液中乾燥法、噴霧乾燥法等を挙げることができる。
【0056】
具体的に、本発明のマイクロカプセルの製造方法の一例としては、例えば、1)溶剤の存在下又は不存在下において、壁膜を構成し得る主原料(架橋剤を除く。)を熱変色性組成物と混合又は溶解することにより溶液を調製する第1工程、2)得られた溶液を乳化剤水溶液中に添加し、O/Wエマルションを調製する第2工程、3)架橋剤又はその溶液をO/Wエマルションに添加する第3工程を含む方法により、好適にマイクロカプセルを製造することができる。以下、各工程について説明する。
【0057】
第1工程
第1工程では、溶剤の存在下又は不存在下において、壁膜を構成し得る主原料(架橋剤を除く。)を熱変色性組成物と混合又は溶解することにより溶液を調製する。
【0058】
熱変色性組成物は、前記で説明したものを用いる。熱変色性組成物の使用量は、通常は乳化剤水溶液100重量部に対して5〜50重量部、特に10〜40重量部となるようにすることが好ましい。前記使用量が5重量部未満の場合は、生産性が低下することがある。また、前記使用量が50重量部を超える場合は、乳化が困難になるおそれがある。
【0059】
前記主原料及び架橋剤としては、前記(3)で説明した壁膜を構成する成分となるものを使用すれば良い。この場合、特にマイクロカプセル化の方法に応じて適宜設定することがより望ましい。例えば、インサイチュー重合法でマイクロカプセル化する場合において、壁膜をメラミン樹脂、ポリウレア樹脂等とする場合は、主原料としてメラミン、尿素等を用い、架橋剤としてホルマリンを使用すれば良い。インサイチュー重合法でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がウレタン樹脂等である場合は、主原料としてイソシアネート化合物を用い、架橋剤としてポリアルコールを使用すれば良い。例えば、界面重合法(重縮合)でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がエポキシ樹脂等である場合は、主原料としてエポキシ化合物を用い、架橋剤としてポリアミン化合物を使用すれば良い。界面重合法(重縮合)でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がウレタン樹脂、ウレアウレタン樹脂等である場合は、主原料としてイソシアネート化合物を用い、架橋剤としてポリアミン化合物、ポリアルコール、水等を使用すれば良い。界面重合法(重縮合)でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がポリアミド樹脂等である場合は、主原料として酸クロライド化合物を用い、架橋剤としてポリアミン化合物を使用すれば良い。界面重合法(付加重合)でマイクロカプセル化する場合において、壁膜がアクリル樹脂等である場合は、主原料としてアクリル化合物を用い、架橋剤としてペルオキシ化合物を使用すれば良い。
【0060】
主原料及び架橋剤の使用量は特に制限されない。主原料は、乳化剤水溶液100重量部に対して通常1〜50重量部の範囲内、好ましくは2〜10重量部の範囲内で適宜設定することができる。架橋剤は、乳化剤水溶液100重量部に対して通常0.5〜25重量部の範囲内、好ましくは1〜5重量部の範囲内で適宜設定することができる。主原料又は架橋剤の使用量が少なすぎる場合又は多すぎる場合は、反応が不十分となり、カプセル(壁膜)の強度、耐熱性等が低くなるおそれがある。
【0061】
第1工程では、必要に応じて溶剤を使用することができる。溶剤としては前記で掲げたものを用いることができる。
【0062】
溶剤の使用量は限定的ではないが、通常は乳化剤水溶液100重量部に対して0〜100重量部の範囲内、好ましくは0〜400重量部の範囲内で適宜設定することができる。
【0063】
第2工程
第2工程では、得られた溶液を乳化剤水溶液中に添加し、O/Wエマルションを調製する。
【0064】
乳化剤水溶液は、前記の乳化剤を水に溶解して得られる水溶液を使用できる。乳化剤水溶液の濃度は、乳化剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、一般に0.1〜15重量%、特に0.5〜8重量%とすることが好ましい。前記濃度が0.2重量%を下回る場合は、乳化が困難となるおそれがある。前記濃度が15重量%を超える場合は、起泡することがある。
【0065】
本発明では、O/Wエマルションの調製は、攪拌法、膜透過法等の公知の方法に従って実施することができる。この場合のO/Wエマルションの液滴径は0.1〜20μm程度の範囲内で適宜設定すれば良い。
【0066】
第3工程
第3工程では、架橋剤又はその溶液をO/Wエマルションに添加する。架橋剤としては、前記で列挙した各架橋剤を用いることができる。架橋剤の溶液は、例えば架橋剤を水に溶解して得られる架橋剤水溶液を好適に用いることができる。この場合の水溶液の濃度は限定されないが、通常は1〜100重量%程度の範囲内で適宜すれば良い。架橋剤の添加方法は特に制限されないが、滴下することにより添加することが好ましい。
【0067】
また、特殊な例として、壁膜原料にイソシアネート化合物を用いる場合は、架橋剤を新たに添加しなくても乳化剤水溶液中の水とイソシアネートの反応によって生じるアミン化合物を架橋剤として利用することができる。
【0068】
架橋剤又はその溶液を添加した後、架橋が進行し、架橋が完了すれば、所望のマイクロカプセルをスラリーの形態で得ることができる。その後、必要に応じて、例えばろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法に従って、マイクロカプセルを固形分として回収することもできる。また、必要に応じて、マイクロカプセルを洗浄することもできる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。なお、本発明は、実施例に限定されない。
【0070】
実施例1〜10及び比較例1〜2
表1に示す各成分を120〜180℃で加熱しながら攪拌機にて均一に混合することによって、各熱変色性組成物を調製した。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例11〜20及び比較例3〜4
実施例1〜10及び比較例1〜2で得られた熱変色性組成物を表2に示す材料を用いてマイクロカプセル化した。まず、溶解助剤(溶剤)を用いてカプセル壁膜となる樹脂主剤(主原料)と熱変色性組成物とを均一に混合し、溶解し、溶液を得た。次いで、30〜60℃に加温した乳化剤水溶液中に、中せん断攪拌しながら前記溶液を添加した。次に、高せん断攪拌を行うことにより前記溶液からO/Wエマルション(液滴の粒径:5μm程度)を得た。その後、低せん断攪拌に切り換え、架橋剤水溶液を前記O/Wエマルションに滴下した。60〜90℃の温度下で3〜12時間反応を行った後、室温まで冷却することにより、マイクロカプセルが分散したスラリーを得た。
【0073】
【表2】

【0074】
試験例1
実施例及び比較例で得られた熱変色性組成物及びマイクロカプセルの熱変色性について調べた。
【0075】
<サンプルの作製>
実施例1〜10及び比較例1〜2にあっては、70〜100℃に加熱した熱変色性組成物をNo.5ろ紙上に0.05g滴下し、120℃で10分加熱することによって含浸させたものを測色用サンプルとした。
【0076】
実施例11〜20及び比較例3〜4にあっては、室温まで冷却されたマイクロカプセルスラリーをケント紙上にスクリーン印刷し、室温で2時間乾燥したものを測色用サンプルとした。
【0077】
<評価>
サンプルの測色は、色差計(製品名「CR−300」ミノルタ製)を用い、発色濃度は白色校正板からの色差ΔE*で表示した。
【0078】
測定手順としては、−10℃からサンプルが完全に消色する温度まで1℃刻みで加熱して測色を繰り返した。図2の実線で示すように、色差ΔE*を温度(横軸)に対してプロットしたものを消色曲線とした。
【0079】
サンプルが完全に消色する温度から−10℃まで1℃刻みで冷却して測色を繰り返した。図2の点線で示すように、色差ΔE*を温度(横軸)に対してプロットしたものを発色曲線とした。
【0080】
前記の消色曲線及び発色曲線において、図3に示すように、各曲線の色差ΔE*の最大値(ΔE*max)と最小値(ΔE*min)との変色幅をΔEとし、各曲線において[ΔE*min+(ΔE/2)]に対応する温度を変色温度(消色温度t1,発色温度t2)とした。なお、図3は、消色曲線の場合を説明する図であるが、発色曲線もこれに準拠する。
【0081】
次いで、上記で求められたt1及びt2より、変色温度ヒステリシスΔH=|t2−t1|(絶対値)を算出した。その結果を表1及び表2にそれぞれ示す。さらに、表1及び表2の結果を図4及び図5にそれぞれ示す。
【0082】
表1及び表2ならびに図4及び図5の結果より、減感剤の割合に応じて変色温度ヒステリシスΔHも連続的又は段階的に制御できることがわかる。特に、図4及び図5からも明らかなように、ΔHと減感剤の含有量との関係がほぼ直線的であることから、減感剤の含有量に応じて比較的精密にΔHを微調整することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】熱変色性組成物において、変色温度ヒステリシスの有無について説明するための図である。
【図2】試験例において用いられる消色曲線及び発色曲線を示す図である。
【図3】試験例において、消色温度t1(及び発色温度t2)を説明するための消色曲線である。
【図4】表1のΔHと減感剤の含有量との関係を示すグラフである。
【図5】表2のΔHと減感剤の含有量との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び減感剤を含む熱変色性組成物であって、
前記減感剤として、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【化1】

(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を含むことを特徴とする熱変色性組成物。
【請求項2】
前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の重量比が1:0.4〜2.5である、請求項1に記載の熱変色性組成物。
【請求項3】
前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の合計含有量が、熱変色性組成物中60〜90重量%である、請求項1又は2に記載の熱変色性組成物。
【請求項4】
変色温度ヒステリシスが5℃未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱変色性組成物。
【請求項5】
前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の融点の差が30℃未満である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱変色性組成物。
【請求項6】
前記2種の化合物として、(1)ラウリン酸ステアリル及びステアリン酸ラウリルの組み合わせ又は(2)パルミチン酸ステアリル及びステアリン酸パルミチルの組み合わせを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の熱変色性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の組成物をマイクロカプセルに内包してなる熱変色性マイクロカプセル。
【請求項8】
電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び減感剤を含む熱変色性組成物を製造する方法であって、
前記減感剤として、少なくとも下記一般式(1)及び(2)に示す2種の化合物;
【化2】

(前記(1)及び(2)において、mは5以上の整数を示し、nは5以上の整数を示す。但し、m及びnは、前記(1)と(2)とが同じ化合物となる場合の値を除く。)
を配合するに際して、両者の配合割合を変えることによりヒステリシスを変化させて所望の変色温度ヒステリシスを有する熱変色性組成物を得ることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の重量比が1:0.4〜2.5である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の合計含有量が、熱変色性組成物中50〜90重量%である、請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
変色温度ヒステリシスが5℃未満である、請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記(1)の化合物と前記(2)の化合物の融点の差が30℃未満である、請求項8〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記2種の化合物として、(1)ラウリン酸ステアリル及びステアリン酸ラウリルの組み合わせ又は(2)パルミチン酸ステアリル及びステアリン酸パルミチルの組み合わせを含む、請求項8〜12のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−31314(P2008−31314A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206866(P2006−206866)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】