説明

熱現像感光材料

【課題】本発明の課題は、塗布面状に優れ、迅速に画像形成可能な有機溶剤塗布型熱現像感光材料を提供することにある。
【解決手段】支持体の少なくとも一方の面上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、熱現像のための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層、および少なくとも1つの非感光性層を有する熱現像感光材料であって、前記バインダーの50質量%以上が主鎖中にα−オレフィン単位を1モル%〜20モル%含有する変性ポリビニルアセタール樹脂であり、前記非感光性層がフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックス、もしくは下記一般式(FC−1)で表されるフッ素化合物の少なくとも一方を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱現像感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッター又はレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度及び鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる医療診断用及び写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら光感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】
一般画像形成材料の分野でも同様の要求はあるが、医療用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。現在、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像の出力システムとしては満足できるものがない。
【0004】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、多くの文献に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。そして熱現像感光材料による医療用画像形成システムとして富士メディカルドライイメージャーFM−DP Lが発売された。
【0005】
有機銀塩を利用した熱画像感光材料が広く利用されるようになり、より迅速に画像形成することが求められた。一般に、熱現像温度を高くすると熱現像時間が短くなるが、かぶりの増大、解像力の劣化などの弊害を伴うため、熱現像感光材料に最適な熱現像温度と現像時間の領域がある。この最適領域をより迅速な領域にするには熱現像感光材料組成の改良が必要になってくる。従来、還元剤の添加量の増加や、現像促進剤の添加とその量の増大、画像形成層のバインダー量を減らし、バインダーに対するバインダー以外の固形分量比率を高めることなどが知られていた。しかしながら、このような処方はいずれもかぶりの増大、解像力の劣化などの弊害を伴う問題を有していた。
【0006】
有機銀塩を利用した熱画像感光材料の製造方法として、メチルエチルケトンなどの有機溶剤を溶媒として塗布し乾燥することにより製造する方法が知られている。
画像形成層のバインダーとしてポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール類が一般に用いられてきた(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
熱画像感光材料の画像形成層は画像形成に必要な感光性ハロゲン化銀、還元剤、非感光性有機銀塩、必要により銀の色調を制御する色調剤などの全てを予めバインダー中に分散した保有するため、バインダーに対するこれら成分のトータル固形分比率が高く、塗布液粘度が高く流動性に乏しくなるため、塗布工程の生産性が劣る問題があった。塗布溶剤を増やして固形分含量を低くすることにより粘度を低下させることができるが、溶剤量が増大し、塗布乾燥および溶剤回収の負荷が増大し、好ましくない。
【0008】
塗布適性を改良するために、変性ポリビニルアセタールを用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。α−オレフィンを共重合したポリニルアセタールをバインダーとして用いるとチキソトロピー性が強まり、塗布液を塗布する際の流動性が改良されると共に塗布後に静置して乾燥する際には自然流動しない好ましい特性を有することが開示されている。
【0009】
しかしながら、画像形成層のバインダーは膜を形成するマトリックスとしての機能だけではなく、画像形成に必要は各成分の画像形成までの間安定に保存する保護機能、露光で生じた潜像を中心とした現像反応の場の提供、さらに、画像形成後は画像を物理的に安定に保存する保護機能、および変色や退色などの化学的変質を防ぐ保護機能などの総合的な機能が求められる。これらの総合性能は単にバインダーの改良のみによって達成できるものではなく、熱現像感光材料の多くの構成要素の改良を総合することによって解決されることが望まれた。特に、迅速に画像形成可能で、かつ上記総合性能を満足するすることが望まれた。
【非特許文献1】D.H.Klosterboer著、「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第9章、第279頁、1989年発行
【特許文献1】特開2006−17877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、塗布面状に優れ、膜付きが良好であり、迅速に画像形成可能な熱現像感光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、以下の熱現像感光材料によって達成された。
<1> 支持体の少なくとも一方の面上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、熱現像のための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層、および少なくとも1つの非感光性層を有する熱現像感光材料であって、前記バインダーの50質量%以上が主鎖中にα−オレフィン単位を1モル%〜20モル%含有する変性ポリビニルアセタール樹脂であり、前記非感光性層がフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックス、もしくは下記一般式(FC−1)で表されるフッ素化合物の少なくとも一方を含有することを特徴とする熱現像感光材料:
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rfは3個以上17個以下のフッ素原子を有するアルキル基またはアルケニル基を表し、LおよびL’は連結手または二価の連結基を表し、Yは連結手または(p+q)価の連結基を表し、Zはアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基またはノニオン性極性基を表す。p及びqは各々1〜3の整数を表す。但し(p+q)が2の時、L、L’およびYがともに連結手であることはない。)。
<2> 前記画像形成層における前記変性ポリビニルアセタール樹脂に対する前記非感光性有機銀塩および前記感光性ハロゲン化銀の合計銀量が質量比で25%以上〜35%以下であることを特徴とする<1>に記載の熱現像感光材料。
<3> 前記変性ポリビニルアセタール樹脂が残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17モル%以上35モル%以下、かつ、重合度が200以上〜3000以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載の熱現像感光材料。
<4> 前記変性ポリビニルアセタール樹脂が変性ポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<5> 前記α−オレフィンがエチレンであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<6> 前記フッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスが、少なくともフッ素原子を分子内に有するアクリレートもしくはメタクリレートと疎水基を有するモノマーの共重合ポリマーラテックスであることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<7> 前記フッ素原子を分子内に有するアクリレートもしくはメタクリレートが下記一般式(1)で表されることを特徴とする<6>に記載の熱現像感光材料:
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、Rは水素原子もしくはフッ素原子もしくはメチル基を表し、Rはメチレン基、エチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基を表し、Xは水素原子もしくはフッ素原子を表し、nは1〜20の整数、mは0または1を表す。)。
<8> 前記疎水基を有するモノマーが下記一般式(2)で表されることを特徴とする<6>または<7>に記載の熱現像感光材料:
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、Rは水素もしくはメチル基を表し、Yはアルキル基もしくは脂環基もしくは芳香族基を表す。)。
<9> 前記一般式(FC−1)において、前記pが2または3であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<10> 前記フッ素化合物が下記一般式(FC−2)または(FC−3)で表される化合物である事を特徴とする<1>〜<9>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、Rf、L、およびZは請求項9におけると同義である。但し、Rf、L、およびZはそれぞれ同じでも異なっていてもよい)。
<11> 前記連結基Zが下記一般式(FC−1−A)で表される基であることを特徴とする<1>〜<10>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、Rはアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、AおよびBは、一方が水素原子を、他方が−(CH−を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0または1の整数を表す。)。
<12> 前記連結基Zが下記一般式(FC−1−B)で表される基であることを特徴とする<1>〜<10>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0または1の整数を表す。)。
<13> 前記Rfが下記一般式(FC−1−C)で表されることを特徴とする<1>〜<12>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、Rcは炭素数0〜4の直鎖アルキレン基を表し、Reは炭素数2〜6のパーフルオロアルキレン基を表し、Wは水素原子またはフッ素原子を表す。)。
<14> 前記Rfが下記一般式(FC−1−D)で表されることを特徴とする<1>〜<13>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、Rf、およびRfはそれぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1から3のパーフルオロアルキル基を表す)。
<15> 前記RfがC17基であることを特徴とする<14>に記載の熱現像感光材料。
<16> 前記非感光性層が、前記支持体の前記画像形成層を有する面側の最外層であることを特徴とする<1>〜<15>のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
<17> 前記最外層のバインダーの50質量%以上が親水性ポリマーであることを特徴とする<16>に記載の熱現像感光材料。
<18> 前記最外層がマット剤を含有することを特徴とする<16>または<17>に記載の熱現像感光材料。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、塗布面状に優れ、膜付きが良好であり、迅速に画像形成可能な熱現像感光材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の熱現像感光材料は、支持体の少なくとも一方の面上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、熱現像のための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層、および少なくとも1つの非感光性層を有する熱現像感光材料であって、前記バインダーの50質量%以上が主鎖中にα−オレフィン単位を1モル%〜20モル%含有する変性ポリビニルアセタール樹脂であり、前記非感光性層がフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスを有することを特徴とする熱現像感光材料。
好ましくは、前記画像形成層における前記変性ポリビニルアセタール樹脂に対する前記非感光性有機銀塩および前記感光性ハロゲン化銀の合計銀量が質量比で25%以上〜35%以下である。
【0030】
本発明者らは、有機溶剤を用いて塗布される熱現像感光材料の総合的性能改良、特に迅速に画像形成し得る熱現像感光材料の探索を進めた結果、画像形成層バインダーとして、主鎖中にα−オレフィン単位を1モル%〜20モル%含有する変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、かつフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスを含有する非感光性層を画像形成層の上層に設けることが有効であること、そして、該変性ポリビニルアセタール樹脂の含有率を上記範囲にコントロールすることにより、塗布面状に優れ、かつ迅速な画像形成が可能な熱現像感光材料がえられることを見出した。
α−オレフィン単位が1モル%未満では塗布性の改善効果が乏しく、20モル%以上では保存性の劣化が激しく、上記改良手段をもってしても十分な改良は望めなかった。
【0031】
好ましくは、前記変性ポリビニルアセタール樹脂が残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17モル%以上35モル%以下、かつ、数平均重合度が200以上〜3000以下である。
好ましくは、前記変性ポリビニルアセタール樹脂が変性ポリビニルブチラール樹脂である。
好ましくは、前記α−オレフィンがエチレンである。
好ましくは、前記フッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスが、少なくともフッ素原子を分子内に有するアクリレートもしくはメタクリレートと疎水基を有するモノマーの共重合ポリマーラテックスである。より好ましくは、前記フッ素原子を分子内に有するアクリレートもしくはメタクリレートが上記一般式(1)で表される。
好ましくは、前記非感光性層がさらに上記一般式(FC−1)で表されるフッ素化合物を含む。より好ましくは、前記一般式(FC−1)において、前記pが2または3である。また、好ましくは、前記連結基Zが上記一般式(FC−1−A)で表される基または上記一般式(FC−1−B)で表される基である。また、好ましくは、前記Rfが上記一般式(FC−1−C)で表される。さらに好ましくは、前記RfがC基である。
好ましくは、前記非感光性層が、前記支持体の前記画像形成層を有する面側の最外層である。さらに好ましくは、前記最外層のバインダーの50質量%以上が親水性ポリマーであるこ。さらに好ましくは、前記最外層がマット剤を含有する。
【0032】
(変性ポリビニルアセタール樹脂の説明)
本発明の熱現像性感光材料の画像形成層に用いられる変性ポリビニルアセタール樹脂(以下、単に変性ポリビニルアセタール樹脂ともいう)は、主鎖中にα−オレフィン単位を含有する。上記α−オレフィン単位としては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20の直鎖状又は環状のアルキル基に由来するものが好適である。上記範囲内であれば分岐や直鎖状の部位と環状の部位の両方を含んでいても良い。上記α−オレフィン単位の炭素数が20を超えると、原料として用いる変性ポリビニルアルコール樹脂の溶剤溶解性が低下するためにアセタール化反応が充分に進行せず変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができなかったり、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低く熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いることができなかったりすることがある。より好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は環状のアルキル基に由来するものであり、更に好ましくは炭素数2〜6の直鎖状アルキル基に由来するものである。具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレン等に由来する単位が好適である。
【0033】
本発明における変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖中における上記α−オレフィン単位の含有量の下限は1モル%、上限は20モル%である。1モル%未満であると、充分なチキソトロピー性が発揮できず、また、充分な透湿性低減効果が得られない。20モル%を超えると、原料として用いる変性ポリビニルアルコール樹脂の溶剤溶解性が低下するためにアセタール化反応が充分に進行せず変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができず、得られたとしても変性ポリビニルアセタール樹脂の溶剤溶解性が低く熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いることができない。好ましい上限は10モル%である。
【0034】
本発明における変性ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度の好ましい下限が40モル%、好ましい上限が78モル%である。40モル%未満であると、有機溶剤に不溶となり熱現像性感光材料の感光層のバインダー樹脂として用いることができないことがあり、78モル%を超えると、残存水酸基量が少なくなって変性ポリビニルアセタール樹脂の強靱性が損なわれ塗膜の強度が低下することがある。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0035】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、残存水酸基量の好ましい下限が17モル%、好ましい上限が35モル%である。17モル%未満であると、バインダー樹脂として用いたときに銀塩の分散性が悪く、感度が低下してしまうことがある。35モル%を超えると、得られる熱現像性感光材料の感光層の透湿性が高く、かぶりが発生したり、保存安定性が悪化したり、画像濃度が低下したりすることがある。
【0036】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、残存アセチル基量の好ましい上限が25モル%である。25モル%を超えると、得られる熱現像性感光材料同士のブロッキングが生じたり、得られる画像が鮮明でなくなったりすることがある。より好ましい上限は15モル%である。
【0037】
本発明における変性ポリビニルアセタール樹脂は、重合度の好ましい下限が200、好ましい上限が3000である。この範囲内であると、銀塩の分散性や、塗工したときの塗膜の強度、塗工性等のバランスを取り易い。より好ましい下限は300、より好ましい上限は1000である。
【0038】
本発明における変性ポリビニルアセタール樹脂は、メチルエチルケトン中に溶解して、E型粘度計を用いて25℃において剪断速度60s−1の条件で測定した粘度が4.0Pa・sとなるように調整した溶液において、E型粘度計を用いて25℃において剪断速度600s−1の条件で測定した粘度が3.0Pa・s以下である。このようなチキソトロピー性を有することにより、本発明における変性ポリビニルアセタール樹脂を適当な有機溶媒に溶解し、この溶液に脂肪酸の銀塩、有機還元剤、感光性ハロゲン化銀等を分散させた感光層組成物分散液は、塗工時には粘度が充分に低く塗工が容易である。即ち、高剪断速度時の粘度が低いために速い速度で塗工しても均一に塗工できることから、熱現像性感光材料の生産性を著しく向上させることができる。一方、塗工後に静置して乾燥させる際には粘度が充分に高く自然流延してしまったりすることがない。
上記溶液をE型粘度計を用いて25℃において剪断速度600s−1の条件で測定した粘度が3.0Pa・sを超えると、通常のポリビニルアセタール樹脂と同程度であり、生産性改善の効果が期待できない。好ましくは2.5以下である。
【0039】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、厚さ20μmのフィルム状に成形したときに、JIS Z 0208に準ずるカップ法により測定した透湿度が500g/m・day以下であることが好ましい。500g/m・dayを超えると、得られる熱現像性感光材料の感光層に浸透する水分が多くなり、かぶりが発生したり、保存安定性が悪化したり、得られる画像濃度が低下したりすることがある。
【0040】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、残存するハロゲン化物量が100ppm以下であることが好ましい。100ppmを超えると、感光性ハロゲン化銀が生成して、得られる熱現像性感光材料の保存性が低下したり、かぶり等の原因となったりすることがある。より好ましくは50ppm以下である。
【0041】
本発明における変性ポリビニルアセタール樹脂は、けん化度が75モル%以上、主鎖中にα−オレフィン単位を1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化することにより製造することができる。
上記変性ポリビニルアルコールは、ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化することにより得ることができる。この場合に用いるビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられ、なかでも経済的な観点から酢酸ビニルが好適である。また、上記エチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有する変性ポリビニルアセタールを得る場合には、更にエチレン性不飽和単量体を共重合させる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とα−オレフィンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0042】
本発明における変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記変性ポリビニルアルコールをアセタール化することにより製造することができる。アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下で上記変性ポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。また、ポリ酢酸ビニルのアルコール溶液中に酸触媒とアルデヒドとを添加することによっても製造することができる。
【0043】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、プロピルアルデヒド等のアセタール化できるアルデヒドであればどのようなアルデヒドを用いてもよい。なかでも、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとをそれぞれ単独で用いるか、又は、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとを併用すること好ましい。
また、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化された部分のうちアセトアルデヒドによりアセタール化された部分の割合が、全アセタール化部分に対して30%以上であることが好ましい。30%未満であると得られる変性ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移点が80℃以下となり、感光性銀塩の核成長が進み過ぎたり、銀塩の分散性が不充分で画像の解像度や鮮明度が不充分となったりすることがある。より好ましくは50%以上である。
【0044】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。なかでも、非ハロゲン性のものが好適である。非ハロゲン性の酸触媒を用いれば、残存ハロゲン化物量を100ppm以下とすることが容易になる。また、ハロゲン性の酸触媒を用いる場合には、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を水や水/アルコールの混合溶液等により充分に洗浄して精製することが好ましい。
また、上記合成反応を停止するために、通常アルカリ中和を行うが、その際使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
【0045】
(銀イオンのための還元剤)
本発明に用いられる銀イオンのための還元剤は銀画像を形成する還元剤である。
【0046】
本発明に用いられる銀イオンのための還元剤として、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質(好ましくは有機物質)を用いることが出来る。このような還元剤の例は、特開平11−65021号の段落番号0043〜0045や、欧州特許公開第0803764A1号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
本発明に用いられる銀イオンのための還元剤として、好ましくは下記一般式(R)で表されるビスフェノール類である。
【0047】
【化9】

【0048】
一般式(R)において、R1dおよびR1d’は各々独立に置換又は無置換のアルキル基を表す。R2dおよびR2d’は各々独立に水素原子、ベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR4d−基を表す。R4dは水素原子、置換又は無置換のアルキル基を表す。R3dおよびR3d’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0049】
一般式(R)において、R1dおよびR1d’は各々独立に置換又は無置換のアルキル基を表す。好ましくは置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、前記一般式(1)のR1aおよびR2aの例に挙げたうち、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、アリール及びアルキルスルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、ハロゲン原子等があげられる。
【0050】
1dおよびR1d’として好ましくは炭素数1〜15の1級、2級または3級のアルキル基であり、具体的にはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、および1−メチルシクロプロピル基などが挙げられる。R1dおよびR1d’としてより好ましくは炭素数1〜4のアルキル基で、その中でもメチル基、t−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、メチル基、t−ブチル基が最も好ましい。
【0051】
2dおよびR2d’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基であり、R3dおよびR3d’も各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、前記一般式(1)のR1aおよびR2aの例に挙げた置換基がある。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、前記一般式(1)のR1aおよびR2aの例に挙げた置換基がある。好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、およびアシルアミノ基が挙げられる。
【0052】
2dおよびR2d’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、およびメトキシエチル基などが挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、またはt−ブチル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
3dおよびR3d’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0053】
Lは−S−基または−CHR4d−基を表す。R4dは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。R4dの無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、および3,5−ジメチル−3−シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルキル基の置換基の例はR1dの置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アリール及びアルキルスルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、およびスルファモイル基などが挙げられる。
【0054】
Lは好ましくは−CHR4d−基である。R4dとして好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、該アルキル基としては鎖状のアルキル基の他、環状のアルキル基も好ましく用いられる。また、これらのアルキル基の中にC=C結合を有しているものも好ましく用いることができる。アルキル基としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、または3,5−ジメチル−3−シクロヘキセニル基等が好ましい。R4dとして特に好ましいのは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、または2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基である。
【0055】
一般式(R)の化合物としてより好ましい構造は、R1dおよびR1d’がメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、または1−メチルシクロプロピル基であり、R2dおよびR2d’がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、またはメトキシエチル基であり、R3dおよびR3d’が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基であり、Lが−CHR4d−基であり、R4dがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、または3,5−ジメチル−3−シクロヘキセニル基である。
【0056】
一般式(R)の化合物としてさらに好ましい構造は、R1dおよびR1d’がメチル基、t−ブチル基、t−アミル基、または1−メチルシクロヘキシル基であり、R2dおよびR2d’がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、またはt−ブチル基であり、R3dおよびR3d’が水素原子であり、Lが−CHR4d−基であり、R4dが水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、または2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基である。
【0057】
1d、R1d’が3級のアルキル基でR2d、R2d’がメチル基の場合、R4dは炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、または2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基等)が好ましい。
1d、R1d’が3級のアルキル基でR2d、R2d’がメチル基以外のアルキル基の場合、R4dは水素原子が好ましい。
1d、R1d’が3級のアルキル基でない場合、R4dは水素原子または2級のアルキル基であることが好ましく、2級のアルキル基であることが特に好ましい。R4dの2級アルキル基として好ましい基はイソプロピル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基である。
【0058】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
【化10】

【0060】
本発明において還元剤の添加量は0.1g/m以上3.0g/m以下であることが好ましく、より好ましくは0.2g/m以上2.0g/m以下で、さらに好ましくは0.3g/m以上1.0g/m以下である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5モル%以上50モル%以下含まれることが好ましく、より好ましくは8モル%以上30モル%以下であり、10モル%以上20モル%以下で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0061】
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料に含有させてもよい。
有機溶剤を塗布溶媒として塗布する場合はメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤を用いて溶解して添加するのが一般的である。
【0062】
(感光性ハロゲン化銀の説明)
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ化銀を用いることができる。その中でも臭化銀およびヨウ臭化銀が好ましい。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでも良く、あるいは連続的に変化したものでも良い。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ化銀を塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0063】
2)粒子サイズ
本発明に用いるハロゲン化銀の粒子サイズは、ハロゲン化銀のサイズが大きいと、画像形成後の膜の透明度が低下するので好ましくない。好ましいハロゲン化銀の粒子サイズは0.20μm以下であり、より好ましくは0.01μm〜0.15μm、さらに好ましくは0.02μm〜0.12μmが良い。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡により観察し、投影面積(平板状粒子の場合は主平面の投影面積)と同面積の円に換算したときの直径の平均をいう。
【0064】
3)塗布量
この様なハロゲン化銀粒子の塗布量は、銀量で示して0.03g/m〜0.6g/m、好ましくは0.05g/m〜0.4g/m、さらに好ましくは0.07g/m〜0.3g/mである。後述する非感光性有機銀塩の銀1モルに対しては、0.01モル以上0.5モル以下、好ましくは0.02モル以上0.3モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上0.2モル以下である。
【0065】
4)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特開2000−347335号記載の方法も好ましい。
【0066】
例えば、有機銀塩の一部の銀を有機または無機のハロゲン化物でハロゲン化する、いわゆるハライデーション法も好ましく用いられる。ここで用いる有機ハロゲン化物としては有機銀塩と反応し、ハロゲン化銀を生成する化合物であればいかなるものでもよいが、N−ハロゲノイミド(N−ブロモスクシンイミドなど)、ハロゲン化4級窒素化合物(臭化テトラブチルアンモニウムなど)、ハロゲン化4級窒素塩とハロゲン分子の会合体(過臭化臭化ピリジニウム)などが挙げられる。無機ハロゲン化合物としては有機銀塩と反応しハロゲン化銀を生成する化合物で有ればいかなるものでもよいが、ハロゲン化アルカリ金属またはアンモニウム(塩化ナトリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、臭化アンモニウムなど)、ハロゲン化アルカリ土類金属(臭化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、ハロゲン化遷移金属(塩化第2鉄、臭化第2銅など)、ハロゲン配位子を有する金属錯体(臭化イリジウム酸ナトリウム、塩化ロジウム酸アンモニウムなど)、ハロゲン分子(臭素、塩素、ヨウ素)などがある。また、所望の有機無機ハロゲン化物を併用しても良い。ハライデーションする際のハロゲン化物の添加量としては有機銀塩1モル当たりハロゲン原子として1ミリモル〜500ミリモルが好ましく、10ミリモル〜250ミリモルがさらに好ましい。
【0067】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0068】
5)粒子形状
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体粒子、八面体粒子、14面体粒子、12面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができる。とくに、12面体粒子、14面体粒子、と平板状粒子が好ましい。本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal.J of Phot.Sci.Vol.28(1980)のp164−Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板上粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0069】
6)重金属
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第6族〜第13族の金属又は金属錯体を含有することができる。より好ましくは、周期律表の第6族〜第10族の金属又は金属錯体を含有することができる。周期律表の第6族〜第10族の金属又は金属錯体の中心金属として、好ましい具体例は、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、及び鉄である。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モル〜1×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0070】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)3−、[Ru(CN)4−、[Os(CN)4−、[Co(CN)3−、[Rh(CN)3−、[Ir(CN)3−、[Cr(CN)3−、及び[Re(CN)3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0071】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0072】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、又はアミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−4モル以上1×10−3モル以下である。
【0073】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感などのカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程の前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0074】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
【0075】
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0076】
その他の本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0077】
7)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持することが必要であり、分子量は、10,000〜1,000,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。また、フタル化処理したゼラチンを用いることも好ましい。これらのゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、粒子形成時に使用することが好ましい。
【0078】
8)化学増感
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、硫黄増感法、セレン増感法もしくはテルル増感法にて化学増感されていることが好ましい。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物、例えば、特開平7−128768号等に記載の化合物等を使用することができる。特に本発明においてはテルル増感が好ましく、特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0079】
本発明で用いられる硫黄、セレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8〜10−2モル、好ましくは10−7〜10−3モル程度を用いる。
【0080】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、上記のカルコゲン増感とともに金増感法により化学増感してもよい。金増感剤としては金の価数が+1価または+3価が好ましい。金化合物の代表的な例としては塩化金酸、臭化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムブロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールドなどが好ましい。また、米国特許第5858637号、特開2002−278016号に記載の金増感剤も好ましく用いられる。
併用する金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モルから10−3モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−4モルである。
【0081】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、温度としては40〜95℃程度である。
【0082】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0083】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、還元増感してもよい。還元増感剤としては、アスコルビン酸、二酸化チオ尿素が好ましく、その他に塩化第一錫、アミノイミノメタンスルホン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、又はポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でも良い。また、乳剤のpHを7以上またpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することが好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
【0084】
9)増感色素
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374号の一般式(I)で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2−96131号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特開2001−272747号、特開2001−290238号、特開2002−23306号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。本発明において増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、脱塩工程後、塗布までの時期が好ましく、より好ましくは脱塩後から化学熟成が終了する前までの時期である。
本発明における増感色素の添加量は、感度やかぶりの性能に合わせて所望の量にすることができるが、画像形成層のハロゲン化銀1モル当たり10−6モル〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10−4モル〜10−1モルである。
【0085】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0086】
10)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
【0087】
本発明における熱現像感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1、2から選ばれる化合物である。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0088】
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28頁〜32頁の表E及び表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」又は「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0089】
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開平2003−114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開平2003−114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開平2003−114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開平2003−114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開平2003−114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開平2003−75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開平2003−75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特開2004−239943号に記載の一般式(1)と同義)、又は化学反応式(1)(特開2004−245929号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特開2004−245929号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0090】
【化11】

【0091】
式中RED、REDは還元性基を表す。Rは炭素原子(C)とREDとともに5員若しくは6員の芳香族環(芳香族複素環を含む)のテトラヒドロ体、若しくはオクタヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。同一分子内に複数のRが存在する場合にはこれらは同じであっても異なっていても良い。Lは脱離基をあらわす。EDは電子供与性基をあらわす。Zは窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。Xは置換基を表し、m1は0〜3の整数を表す。Zは、−CR1112−、−NR13−、又は−O−を表す。
11、R12はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表す。R13は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Xはアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。Lはカルボキシ基若しくはその塩又は水素原子を表す。XはC=Cとともに5員のヘテロ環を形成する基を表す。YはC=Cとともに5員又は6員のアリール基又はヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、又はカチオンを表す。
【0092】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開平2003−140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特開2004−245929号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特開2004−245929号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0093】
【化12】

【0094】
式中、Xは1電子酸化される還元性基をあらわす。YはXが1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、又はベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。LはXとYを連結する連結基を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。同一分子内に複数のRが存在する場合にはこれらは同じであっても異なっていても良い。XはC=Cとともに5員のヘテロ環を形成する基を表す。YはC=Cとともに5員又は6員のアリール基又はヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、又はカチオンを表す。
【0095】
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、又は「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開平2003−156823号明細書の16頁右1行目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
【0096】
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
【0097】
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、または1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、又はイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、またはインダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、及びベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、及び5−メルカプトテトラゾール基である。
【0098】
吸着性基として、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する場合もまた特に好ましい。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基など)の好ましい例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、および3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が挙げられる。
【0099】
また窒素又はリンの4級塩構造も吸着性基として好ましく用いられる。窒素の4級塩構造としては具体的にはアンモニオ基(トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリール(又はヘテロアリール)アンモニオ基、アルキルジアリール(又はヘテロアリール)アンモニオ基など)又は4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。リンの4級塩構造としては、フォスフォニオ基(トリアルキルフォスフォニオ基、ジアルキルアリール(又はヘテロアリール)フォスフォニオ基、アルキルジアリール(又はヘテロアリール)フォスフォニオ基、トリアリール(又はヘテロアリール)フォスフォニオ基など)が挙げられる。より好ましくは窒素の4級塩構造が用いられ、さらに好ましくは4級化された窒素原子を含む5員環あるいは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基が用いられる。特に好ましくはピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基が用いられる。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよい。
【0100】
4級塩の対アニオンの例としては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、BF、PF、およびPh等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、それとともに分子内塩を形成していても良い。分子内にない対アニオンとしては、塩素イオン、ブロモイオン又はメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
【0101】
吸着性基として窒素又はリンの4級塩構造有するタイプ1、2で表される化合物の好ましい構造は一般式(X)で表される。
【0102】
一般式(X) (P−Q−)−R(−Q−S)
【0103】
一般式(X)においてP、Rは、各々独立して増感色素の部分構造ではない窒素又はリンの4級塩構造を表す。Q、Qは、各々独立して連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NR−、−C(=O)−、−SO−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、又はこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Sはタイプ(1)又は(2)で表される化合物から原子を一つ取り除いた残基である。iとjは1以上の整数であり、i+jが2〜6になる範囲から選ばれるものである。好ましくはiが1〜3、jが1〜2の場合であり、より好ましくはiが1又は2、jが1の場合であり、特に好ましくはiが1、jが1の場合である。一般式(X)で表される化合物はその総炭素数が10〜100の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜70、さらに好ましくは11〜60であり、特に好ましくは12〜50である。
【0104】
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は、感光性ハロゲン化銀乳剤調製時、熱現像感光材料製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば感光性ハロゲン化銀粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することもできる。添加位置として好ましくは、感光性ハロゲン化銀粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時から非感光性有機銀塩と混合される前までである。
【0105】
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は、水、メタノール、またはエタノールなどの水可溶性溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高く又は低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高く又は低くして溶解し、これを添加しても良い。
【0106】
本発明におけるタイプ1、タイプ2の化合物は感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層中に使用するのが好ましいが、感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する画像形成層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。これらの化合物の添加時期は、増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10−9モル〜5×10−1モル、更に好ましくは1×10−8モル〜5×10−2モルの割合でハロゲン化銀乳剤層(画像形成層)に含有する。
【0107】
11)吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物
本発明においては、分子内にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物を含有させることが好ましい。本吸着性レドックス化合物は下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0108】
式(I) A−(W)n−B
式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0又は1を表し、Bは還元基を表す。
【0109】
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、又はハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(又はその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、又はエチニル基等が挙げられる。
【0110】
吸着基としてメルカプト基(又はその塩)とは、メルカプト基(又はその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(又はその塩)の置換したヘテロ環基又はアリール基又はアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環若しくは縮合環の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、およびトリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていても良い。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li、Na、K、Mg2+、Ag、またはZn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていても良い。
吸着基としてチオン基とは、鎖状若しくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、又はジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、又は配位結合で銀イオンに配位し得る、−S−基又は−Se−基又は−Te−基又は=N−基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、またはプリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、およびベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。
吸着基としてスルフィド基又はジスルフィド基とは、−S−、又は−S−S−の部分構造を有する基すべてが挙げられる。
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基又は4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。
吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。
【0111】
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
【0112】
式(I)中、Aで表される吸着基として好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、2−メルカプト−5−アミノチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、または2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、又はイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)であり、さらに好ましい吸着基は2−メルカプトベンズイミダゾール基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基である。
【0113】
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、またはヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO−、−O−、−S−、および−NR−、これらの連結基の組み合わせ等が挙げられる。ここでRは水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、アリール基を表わす。
Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。
【0114】
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン−6−オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、及びハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類等から水素原子を1つ除去した残基が挙げられる。もちろん、これらは任意の置換基を有していても良い。
【0115】
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150頁−208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282頁−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton−Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
本発明におけるBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0V〜約0.7Vの範囲である。
【0116】
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類、フェノール類、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類から水素原子を1つ除去した残基である。
【0117】
本発明における式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基又はポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0118】
本発明における式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明における式(I)の化合物の分子量は好ましくは100〜10000の間であり、より好ましくは120〜1000の間であり、特に好ましくは150〜500の間である。
【0119】
以下に本発明における式(I)の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0120】
【化13】

【0121】
さらに欧州特許1308776A2号明細書p73〜p87に記載の具体的化合物1〜30、1”−1〜1”−77も本発明における吸着基と還元性基を有する化合物の好ましい例として挙げられる。
【0122】
これらの化合物は公知の方法にならって容易に合成することができる。本発明における式(I)の化合物は、一種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
【0123】
本発明における式(I)の化合物は、ハロゲン化銀乳剤層(画像形成層)に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また画像形成層に使用するのが好ましいが、画像形成層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10−6モル以上1モル以下、好ましくは1×10−5モル以上5×10−1モル以下、さらに好ましくは1×10−4モル以上1×10−1モル以下である。
【0124】
本発明における式(I)の化合物は、水、メタノール、またはエタノールなどの水可溶性溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸又は塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。また、固体分散物として添加することもできる。
【0125】
12)ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。 感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0126】
13)ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
本発明の感光性ハロゲン化銀の粒子は、上記のようにコンバージョン法によって作製することもできるが、非感光性有機銀塩の存在しないところで形成され、化学増感されることが特に好ましい。
【0127】
有機銀塩は、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて、有機酸の少なくとも一部を有機酸のアルカリ金属ソープにした後、水溶性銀塩(例えば硝酸銀)を加えることによって作製されるが、感光性ハロゲン化銀はそのどの段階でも添加することができる。主な混合段階としては、A)有機酸に予めハロゲン化銀を加えておき、アルカリ金属塩を加え、次に水溶性銀塩を添加する、B)有機酸のアルカリ金属ソープを作製後にハロゲン化銀を混合し、その後、水溶性銀塩を添加する、C)有機酸のアルカリ金属ソープを作製し、その一部を銀塩化してからハロゲン化銀を加え、その後に残りの銀塩化を行う、D)有機銀塩を作製した後に、ハロゲン化銀を混合する4工程がある。好ましいのは、B)、またはC)である。
【0128】
ハロゲン化銀を含む有機銀塩は微粒子に分散して用いることが好ましい。微粒子に分散する手段として、高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0129】
14)ハロゲン化銀の塗布液への混合
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0130】
(非感光性有機銀塩)
1)組成
本発明に用いることのできる非感光性有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀イオン供給体として機能し、銀画像を形成せしめる銀塩である。本発明に用いることのできる非感光性有機銀塩としては、好ましくは、炭素数が10〜30、より好ましくは15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。脂肪酸銀塩の好ましい例としては、リグノセリン酸銀、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、エルカ酸銀およびこれらの混合物などを含む。本発明においては、これら脂肪酸銀の中でも、ベヘン酸銀含有率が好ましくは50モル%以上100モル%以下、より好ましくは85モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは95モル%以上100モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。更に、エルカ酸銀含有率が2モル%以下、より好ましくは1モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。
【0131】
また、ステアリン酸銀含有率が1モル%以下であることが好ましい。前記ステアリン酸銀含有率を1モル%以下とすることにより、Dminが低く、高感度で画像保存性に優れた有機酸の銀塩が得られる。前記ステアリン酸銀含有率としては、0.5モル%以下が好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。
【0132】
さらに、脂肪酸銀塩としてアラキジン酸銀を含む場合は、アラキジン酸銀含有率が6モル%以下であることが、低いDminを得ること及び画像保存性の優れた銀塩を得る点で好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。
【0133】
2)形状
本発明に用いることができる脂肪酸銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状いずれでもよい。
本発明においてはりん片状の脂肪酸銀塩が好ましい。また、長軸と単軸の長さの比が5以下の短針状、直方体、立方体またはジャガイモ状の不定形粒子も好ましく用いられる。これらの脂肪酸銀粒子は長軸と単軸の長さの比が5を越える長針状粒子に比べて熱現像時のかぶりが少ないという特徴を有している。特に、長軸と単軸の比が3以下の粒子は塗布膜の機械的安定性が向上し好ましい。本明細書において、りん片状の脂肪酸銀塩とは、次のようにして定義する。脂肪酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、脂肪酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
【0134】
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは15≧x(平均)≧1.5である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0135】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上0.3μm以下が好ましく0.1μm以上0.23μm以下がより好ましい。c/bの平均は1以上9以下であることが好ましく、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは1以上4以下、最も好ましくは1以上3以下である。
【0136】
前記球相当直径を0.05μm以上1μm以下とすることにより、感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる。前記球相当直径としては、0.1μm以上1μm以下が好ましい。
本発明において、球相当直径の測定方法は、電子顕微鏡を用いて直接サンプルを撮影し、その後、ネガを画像処理することによって求められる。
前記リン片状粒子において、粒子の球相当直径/aをアスペクト比と定義する。リン片状粒子のアスペクト比としては、感光材料中で凝集を起こしにくく、画像保存性が良好となる観点から、1.1以上30以下であることが好ましく、1.1以上15以下がより好ましい。
【0137】
脂肪酸銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。脂肪酸銀塩の形状の測定方法としては脂肪酸銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、脂肪酸銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した脂肪酸銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0138】
3)調製
本発明に用いられる脂肪酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、同2001−163889号、同2001−163890号、同2001−163827号、同2001−33907号、同2001−188313号、同2001−83652号、同2002−6442、同2002−49117号、同2002−31870号、同2002−107868号等を参考にすることができる。
【0139】
なお、脂肪酸銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、かぶりが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明では、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の脂肪酸銀塩1モルに対し1モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1モル%以下であり、さらに好ましいのは積極的な感光性銀塩の添加を行わないものである。
【0140】
本発明において脂肪酸銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液をそれぞれ独立に調製して後に混合して熱現像感光材料を製造することが可能である。また、2種以上の脂肪酸銀塩水分散液、あるいは2種以上の感光性銀塩水分散液を混して用いることは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0141】
4)添加量
本発明の脂肪酸銀塩は所望の量で使用できるが、ハロゲン化銀も含めた全塗布銀量として0.05g/m〜3.0g/mが好ましく、より好ましくは0.1g/m〜1.8g/m、さらに好ましくは0.2g/m〜1.2g/mである。
【0142】
(現像促進剤)
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特開2002−278017号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物がより好ましい。
【0143】
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
−NHNH−Q
(式中、Qは炭素原子で−NHNH−Qと結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Qはカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。)
【0144】
一般式(A−1)において、Qで表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、またはチオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0145】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
【0146】
で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、およびN−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
【0147】
で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、および2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Qで表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0148】
で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、および4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Qで表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、および4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
【0149】
で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、およびN−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Qで表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQで表される5員〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0150】
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Qとしては5員〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Qはカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
【0151】
【化14】

【0152】
一般式(A−2)においてRはアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、または炭酸エステル基を表す。R、Rはそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。RとRは互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0153】
は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、またはシクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基、または4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、または2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。Rは好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、またはベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
【0154】
は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。Rは水素原子、アルキル基、またはアシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はRと同様である。Rがアシルアミノ基である場合RはRと連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
【0155】
一般式(A−2)においてRとRが互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、Rはカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。Rはアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0156】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0157】
【化15】

【0158】
(水素結合性化合物)
本発明における還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)またはアミノ基(−NHR、Rは水素原子またはアルキル基)を有する場合、特に前述のビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
水酸基またはアミノ基と水素結合を形成する基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、および含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
本発明で、特に好ましい水素結合性の化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
【0159】
【化16】

【0160】
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、および4−アシルオキシフェニル基などが挙げられる。
【0161】
21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、および2−フェノキシプロピル基などが挙げられる。
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、および3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
【0162】
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、およびベンジルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、およびビフェニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、およびN−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0163】
21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
【0164】
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0165】
【化17】

【0166】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に欧州特許1096310号明細書、特開2002−156727号、特開2002−318431号に記載のものがあげられる。
本発明の一般式(D)の化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料中で使用することができるが、固体分散物として使用することが好ましい。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基、アミノ基を有する化合物と水素結合性の錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(D)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
【0167】
本発明の一般式(D)の化合物は還元剤に対して、1モル%〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは20モル%〜100モル%の範囲である。
【0168】
(かぶり防止剤)
1)有機ポリハロゲン化合物
以下、本発明で用いることができる好ましい有機ポリハロゲン化合物について具体的に説明する。本発明の好ましいポリハロゲン化合物は下記一般式(H)で表される化合物である。
【0169】
一般式(H)
Q−(Y)n−C(Z)(Z)X
【0170】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、ZおよびZはハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
一般式(H)においてQは好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または窒素原子を少なくとも一つ含むヘテロ環基(ピリジン、キノリン基等)である。
【0171】
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216等を参考にすることができる。
このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子、電子求引性基で置換されたアルキル基、電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、およびスルファモイル基等が挙げられる。電子求引性基として特に好ましいのは、ハロゲン原子、カルバモイル基、またはアリールスルホニル基であり、特にカルバモイル基が好ましい。
【0172】
Xは好ましくは電子求引性基である。好ましい電子求引性基は、ハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、カルバモイル基であり、特に好ましくは臭素原子である。
およびZは好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは臭素原子である。
【0173】
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−、−SO−、−C(=O)N(R)−、または−SON(R)−を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO−、または−C(=O)N(R)−であり、特に好ましくは−SO−、−C(=O)N(R)−である。
ここでいうRとは水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0174】
一般式(H)において、Qがアルキル基の場合、好ましいYは−C(=O)N(R)−であり、Qがアリール基またはヘテロ環基の場合、好ましいYは−SO−である。
一般式(H)において、該化合物から水素原子を取り去った残基が互いに結合した形態(一般にビス型、トリス型、テトラキス型と呼ぶ)も好ましく用いることが出来る。
一般式(H)において、解離性基(例えばCOOH基またはその塩、SOH基またはその塩、POH基またはその塩等)、4級窒素カチオンを含む基(例えばアンモニウム基、ピリジニウム基等)、ポリエチレンオキシ基、水酸基等を置換基に有するものも好ましい形態である。
【0175】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示す。
【0176】
【化18】

【0177】
上記以外の本発明に用いることが出来るポリハロゲン化合物としては、US3874946号、US4756999号、US5340712号、US5369000号、US5464737号、US6506548号、特開昭50−137126号、同50−89020号、同50−119624号、同59−57234号、特開平7−2781号、同7−5621号、同9−160164号、同9−244177号、同9−244178号、同9−160167号、同9−319022号、同9−258367号、同9−265150号、同9−319022号、同10−197988号、同10−197989号、同11−242304号、特開2000−2963、特開2000−112070、特開2000−284410、特開2000−284412、特開2001−33911、特開2001−31644、特開2001−312027号、特開2003−50441号明細書の中で当該発明の例示化合物として挙げられている化合物が好ましく用いられるが、特に特開平7−2781号、特開2001−33911、特開2001−312027号に具体的に例示されている化合物が好ましい。
【0178】
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、10−4モル〜1モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3モル〜0.5モルの範囲で、さらに好ましくは1×10−2モル〜0.2モルの範囲で使用することが好ましい。
本発明において、かぶり防止剤を熱現像感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
【0179】
2)その他のかぶり防止剤
その他のかぶり防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0180】
本発明における熱現像感光材料はかぶり防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は熱現像感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては画像形成層を有する面の層に添加することが好ましく、画像形成層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、画像形成層に加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。
また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。
本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0181】
(その他の添加剤)
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号、特開平9−304875号、特開2001−100358号、特開2002−303954号、特開2002−303951等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0182】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317号や特開2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸または4メチルフタル酸との組み合わせである。
【0183】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の画像形成層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0184】
4)染料、顔料
本発明の画像形成性層には、色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。また、特願2005−048988号に記載の一般式(I)〜(IV)で表わされる非水溶性アゾメチン染料を併用することが好ましい。
【0185】
5)造核剤
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に造核剤を添加することが好ましい。造核剤やその添加方法及び添加量については、特開平11−65021号号公報段落番号0118、特開平11−223898号公報段落番号0136〜0193、特開2000−284399号明細書の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11−91652号明細書記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、造核促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0186】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有させることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料で造核剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、およびヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、およびヘキサメタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1mあたりの塗布量)は感度やかぶりなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1mg/m〜500mg/mが好ましく、0.5mg/m〜100mg/mがより好ましい。
【0187】
(塗布液の調製および塗布)
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0188】
(層構成および構成成分)
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて少なくとも1層のフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスを含有する非感光性層を有する。
非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と表面保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0189】
また、光学フィルター層としては、(a)または(b)の層として設けられる。ハレーション防止層は、(c)または(d)の層として熱現像感光材料に設けられる。
【0190】
本発明におけるフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスを含有する非感光性層は、好ましくは、支持体の画像形成層を有する面とは同一面側の最外層である。
【0191】
1)フッ素原子を分子内に有するポリマーラテックス
本発明におけるフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスは、フッ素原子を分子内に有するいかなるモノマーより得られるもので良いが、好ましくは少なくともフッ素原子を分子内に有するアクリレートもしくはメタクリレートと疎水基を有するモノマーの共重合ポリマーラテックスである。
【0192】
<フッ素原子を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーを共重合成分としたポリマーラテックス>
本発明の重合体は、少なくともフッ素含有アクリレート及び/又はフッ素含有メタクリレートのモノマー単位を重合することにより得られるが、これは以下の一般式により表すことが出来る。
【0193】
CH=C(R)COOL(Rf)X
Rは、メチル基、水素原子、フッ素原子であり、Lは、単なる結合であるか、直鎖もしくは分岐したアルキル基であるかヒドロカルビル基であって、O、S、NまたはPのような置換もしくは無置換の異原子が介在しても良く、Rfは、直鎖もしくは、分岐鎖、環状鎖である完全フッ素化された炭素原子の繋がり、Xは水素原子もしくはフッ素原子である。
【0194】
このなかでも一般式(1)で示されるモノマーであることが好ましい。
【0195】
【化19】

【0196】
式中、Rは水素原子もしくはフッ素原子もしくはメチル基を表し、Rはメチレン基、エチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基を表し、Xは水素原子もしくはフッ素原子を表し、nは1〜20の整数、mは0または1を表す。
【0197】
本発明に用いられる疎水基を有するモノマーにおける疎水基とは、水和可能なイオン性基もしくは水和可能な非イオン性基を有しないことであり、具体的には、一官能もしくは多官能カルボキシル基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアミノ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基を有しないことである。
【0198】
一般式(1)で表される構成単位の構造の中で、最も重要な点は、式中のnが1〜4であることである。
【0199】
撥水性等の面から見ると、一般にパーフルオロアクリレートやパーフルオロメタクリレートのパーフルオロ基の炭素の数(一般式(1)のn)は、撥水性が飽和する、8以上が好ましいとされているが、本発明者らは、鋭意検討を進めたところnが1〜4の範囲内であることにより、本願に最適なポリマーを得ることが出来ることを見出した。
【0200】
一般式(1)で示される構成単位は、該当するフルオロアルキルアクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルα−フルオロアクリレートなどのモノマーを重合することにより得ることが出来る。
【0201】
特に、フルオロアルキルアクリレートや、フルオロアルキルメタクリレートが好ましく、市販品としては、以下の商品名でダイキン化成品販売社より販売されており入手可能である。
【0202】
例えば、M−1110(2,2,2,−トリフルオロエチルメタクリレート)、
M−1210(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート)、
M−1420(2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート)、
M−1433(3−(ペンタフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル、
M−5210(1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタクリレート)、
M−5410(1H,1H,5H−置くタフルオロプロピルメタクリレート)、
M−7210(1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタクリレート)、
M−7310(1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート)、
A−1110(2,2,2,−トリフルオロエチルアクリレート)、
A−1210(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート)、
A−1420(2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート)、
A−1433(3−(ペンタフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル、
A−5210(1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート)、
A−5410(1H,1H,5H−オクタフルオロプロピルアクリレート)、
A−7210(1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート)、
A−7310(1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート)がある。
【0203】
次に一般式(1)と共重合可能な構成単位について説明する。この構成単位は、例えば、前記一般式(2)で示すことが出来、該当するアクリレートもしくはメタクリレートを共重合することにより得ることが出来る。
【0204】
【化20】

【0205】
式中、Rは水素もしくはメチル基を表し、Yはアルキル基もしくは脂環基もしくは芳香族基を表す。
具体的には、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso−ノニルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等)、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、iso−ノニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等)、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートを挙げることが出来るがこれらに限定されない。
【0206】
続いてこれらの構成単位と共重合できるエポキシ単位を有する構成単位であるが、これらは、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド等を共重合することにより導入することができる。
【0207】
本発明におけるポリマーラテックスは、さらに第3の共重合成分として酸基を有するモノマーを有するのが好ましい。酸基としてはスルホニル基、カルボキシル基、およびリン酸基等が挙げられる。
【0208】
本発明におけるポリマーラテックスは、フッ素含有モノマーを少なくとも5質量%共重合して含有することが好ましい。より好ましくは10質量%以上共重合して含有する。
本発明におけるポリマーラテックスは、一般式(1)で表される構成単位、一般式(2)で表される構成単位、および酸基を有するモノマー成分の共重合比率は、それぞれ順にx、y、およびzとするとx=5質量%〜99.5質量%、y=0.5質量%〜95質量%、およびz=0.5質量%〜20質量%の範囲より選ばれるのが好ましい。
【0209】
本発明におけるフッ素原子を含有する共重合体の組成として、好ましいものの具体例を以下に上げるが、これらに限定されるものではない。
【0210】
【表1】

【0211】
【表2】

【0212】
【化21】

【0213】
【化22】

【0214】
【表3】

【0215】
【表4】

【0216】
本発明のポリマーは、単量体より、ビニル系不飽和基を重合させる公知の方法により重合することが出来る。例えば、ラジカル開始剤を用いたラジカル重合、アニオン開始剤を用いたアニオン重合、チーグラーナッタ触媒などの遷移金属触媒を用いた配位アニオン重合、カチオン開始剤を用いたカチオン重合など、その単量体にあった重合方法を選ぶことが出来る。
【0217】
本発明におけるフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスの塗布量は、0.1g/m以上3.0g/m以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.2g/m以上1.3g/m以下である。
【0218】
2)フッ素系界面活性剤
本発明における非感光性層は、さらに界面活性剤であるフッ素化合物を含有することが好ましい。本発明に用いられる好ましいフッ素系界面活性剤は、一般式(FC−1)で表されるフッ素化合物である。
以下に一般式(FC−1)で表されるフッ素化合物について詳細に説明する。該フッ素化合物は、3個以上13個以下のフッ素原子を有するアルキル基を1つ以上有する事を特徴とする。該フッ素化合物としてはアニオン性、カチオン性、ベタイン性、ノニオン性のいずれでもよいが、その中でもアニオン性またはノニオン性化合物が好ましく、アニオン性化合物が最も好ましい。更にこれらは低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよいが低分子化合物であることがより好ましい。
【0219】
【化23】

【0220】
前記Rfで表されるアルキル基またはアルケニル基は、フッ素原子数が3個以上17以下であって、好ましくは3〜12の範囲であり、より好ましくは5〜9の範囲である。また、該アルキル基または該アルケニル基の炭素原子数は1〜16が好ましく、2〜12がさらに好ましく、3〜9が最も好ましい。該アルキル基またはアルケニル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよいが直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。
【0221】
フッ素原子を有するアルキル基、またはアルケニル基の具体例としては、以下の基が挙げられる。
【0222】
【化24】

【0223】
前記Lは単なる結合または2価の連結基を表し、2価の連結基としてはアルキレン基、アルキレンオキシ基、オキシアルキレンオキシ基、パーフルオロオキシアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレンオキシ基、チオアルキレン基、アリーレン基、フェニレン基、フェニレンオキシ基、オキシフェニレンオキシ基、カルボニル基、−SONR−、−CONR−、−OCO−、−COO−、ヘテロ原子、またはこれらの基を組み合わせた基等が挙げられるが、オキシアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレンオキシ基、オキシフェニレン基、−SONR−、−CONR−または−OCO−であることが好ましく、−SONR−、−CONR−または−OCO−であることがさらに好ましく、−OCO−であることが特に好ましい。RおよびRは水素原子またはアルキル基を表す。
【0224】
前記L’は単なる結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基としてはスルホニル基、オキシアルキレン基、オキシフェニレン基等が好ましい。
【0225】
前記Zはアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基、またはノニオン性極性基を表すが、アニオン性基またはノニオン性基であることが好ましい。
アニオン性基とはpKaが7以下の酸性基およびそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を言う。具体的には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホン酸基、およびこれらの塩類などが挙げられる。このうち、好ましくはスルホ基およびその塩類である。塩類を形成するカチオン種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、及びメチルピリジニウムなどが挙げられ、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、及びアンモニウムであり、なかでもリチウムであることが好ましい。
【0226】
カチオン性基としては、好ましくは有機のカチオン性置換基であり、より好ましくは窒素または燐のカチオン性基である。さらに好ましくはピリジニウムカチオンまたはアンモニウムカチオンであり、より好ましくはトリアルキルアンモニウムカチオンであり、該カチオン性基のカウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。
ノニオン性基としては水酸基、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、ポリアルキレンオキシ基が好まし好ましく、なかでもポリオキシエチレン基が好ましい。ポリオキシアルキレン基の長さに特に制限はないが、繰り返し数が5から50であることが好ましく、10から30であることがさらに好ましい。
【0227】
前記Yは、単なる結合又は(p+q)価の連結基を表し、該連結基としてはアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、オキシアルキレンオキシ基、アリーレン基、オキシフェニレン基、フェニルオキシ基、オキシフェニルオキシ基、カルボニル基、−SON−、−CON−、−OCO−、−COO−、ヘテロ原子またはこれらの基を組み合わせた基等が挙げられる。pおよびqは各々1〜3の整数を表すが、(p+q)は2または3である事が好ましく、3であることが最も好ましい。
本発明におけるフッ素化合物は、下記一般式(FC−2)または(FC−3)で表される化合物である事が特に好ましい。
【0228】
【化25】

【0229】
式中、Rf、L、およびZはFC−1におけるものと同義である。但し、Rf、L、およびZはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0230】
2価の連結基としては、下記一般式(FC−1−A)に示す構造が好ましく、3価の連結基としては、下記一般式(FC−1−B)に示す構造が好ましい。
【0231】
【化26】

【0232】
【化27】

【0233】
前記一般式(FC−1−A)中、Rはフッ素原子を有しないアルキル基を表し、炭素数が2ないし18が好ましく、より好ましくは炭素数4ないし12のアルキル基である。
およびRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、aは0または1の整数を表す。
【0234】
およびRで表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。前記置換基としては、どんな置換基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、又は燐酸エステル基等が好ましい。
前記一般式(FC−1−A)中、AおよびBは、一方が水素原子を、もう一方が単結合またはメチレン基を表す。
【0235】
前記一般式(FC−1−B)中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、aおよびbは0または1の整数を表す。RおよびRで表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、また環状構造を有していてもよい。前記アルキル基は置換基を有しても良く、置換基としては、どんな置換基でもよいが、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはCl)、カルボン酸エステル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、又は燐酸エステル基等が好ましい。
【0236】
以下に一般式(FC−1)で表されるフッ素化合物の具体例を示すが、本発明で用いる事ができる化合物は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0237】
【化28】

【0238】
【化29】

【0239】
【化30】

【0240】
【化31】

【0241】
【化32】

【0242】
式中、C11は下記部分構造式1を、C17は下記部分構造式2を表す。
【0243】
【化33】

【0244】
上記式中c−は環状であることを表す。上記一般式(FC−1)で表される化合物の合成方法については、特表平10−500950号公報、同10−158218号公報、同11−504360号公報および特表2000−505803号公報を参考にする事ができる。
【0245】
本発明におけるフッ素化合物の好ましい使用量は、0.1mg/m〜100mg/mの範囲で、より好ましくは0.3mg/m〜30mg/mの範囲、さらに好ましくは1mg/m〜10mg/mの範囲である。
【0246】
3)表面保護層
本発明におけるフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスを含有する非感光性層は、好ましくは表面保護層である。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。
複数層有する場合、フッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスを含有する非感光性層、好ましくは最外層である。
本発明の表面保護層のバインダーの50質量%以上は、親水性ポリマーが好ましい。親水性ポリマーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m当たり)としては0.3g/m〜4.0g/mが好ましく、0.3g/m〜2.0g/mがより好ましい。
【0247】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(ポリマーバインダー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m当たり)としては0.3g/m〜5.0g/mが好ましく、0.3g/m〜2.0g/mがより好ましい。
【0248】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は感光材料1m当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1mg/m〜400mg/m、より好ましくは5mg/m〜300mg/mである。
【0249】
本発明においてマット剤の形状は定型、不定形のいずれでもよいが好ましくは定型で、球形が好ましく用いられる。平均粒径は0.5μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1.0μm〜8.0μm、さらに好ましくは2.0μm〜6.0μmの範囲である。また、サイズ分布の変動係数としては50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは、30%以下である。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。また、変動係数が小さいマット剤で平均粒径の比が3より大きいものを2種併用することも好ましい。
【0250】
また、画像形成層面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0251】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0252】
本発明において、マット剤は熱現像感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0253】
5)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0254】
6)硬膜剤
本発明の画像形成層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION」(Macmillan Publishing Co.,Inc.刊、1977年刊)、77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0255】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0256】
7)帯電防止剤
本発明においては金属酸化物あるいは導電性ポリマーを含む導電層を有することが好ましい。帯電防止層は下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねてもよく、また別途設けてもよい。帯電防止層の導電性材料は金属酸化物中に酸素欠陥、異種金属原子を導入して導電性を高めた金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物の例としてはZnO、TiO、SnOが好ましく、ZnOに対してはAl、Inの添加、SnOに対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、TiOに対してはNb、Ta等の添加が好ましい。
特にSbを添加したSnOが好ましい。異種原子の添加量は0.01モル%〜30モル%の範囲が好ましく、0.1から10モル%の範囲がより好ましい。金属酸化物の形状は球状、針状、板状いずれでもよいが、導電性付与の効果の点で長軸/単軸比が2.0以上、好ましくは3.0〜50の針状粒子がよい。金属酸化物の使用量は好ましくは1mg/m〜1000mg/mの範囲で、より好ましくは10mg/m〜500mg/mの範囲、さらに好ましくは20mg/m〜200mg/mの範囲である。
【0257】
本発明の帯電防止層は画像形成層面側、バック面側のいずれに設置してもよいが、支持体とバック層との間に設置することが好ましい。本発明の帯電防止層の具体例は特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載されている。
【0258】
8)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130℃〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。支持体に画像形成層もしくはバック層を塗布するときの、支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましい。
【0259】
9)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、画像形成層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0260】
10)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F.Kistler、Petert M.Schweizer著「LIQUID FILM COATING」(CHAPMAN&HALL社刊、1997年)、399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1にある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。本発明において特に好ましい塗布方法は特開2001−194748号、同2002−153808号、同2002−153803号、同2002−182333号に記載された方法である。
【0261】
本発明の塗布液を調合する場合において2種の液を混合する際は公知のインライン混合機、インプラント混合機が好ましく用いられる。本発明の好ましいインライン混合機は特開2002−85948号に、インプラント混合機は特開2002−90940号に記載されている。
本発明における塗布液は塗布面状を良好に保つため脱泡処理をすることが好ましい。本発明の好ましい脱泡処理方法については特開2002−66431号に記載された方法である。
【0262】
本発明の塗布液を塗布する際には支持体の耐電による塵、ほこり等の付着を防止するために除電を行うことが好ましい。本発明において好ましい除電方法の例は特開2002−143747に記載されている。
本発明においては非セット性の画像形成層塗布液を乾燥するため乾燥風、乾燥温度を精密にコントロールすることが重要である。本発明の好ましい乾燥方法は特開2001−194749号、同2002−139814号に詳しく記載されている。
【0263】
本発明の熱現像感光材料は成膜性を向上させるために塗布、乾燥直後に加熱処理をすることが好ましい。加熱処理の温度は膜面温度で60℃〜100℃の範囲が好ましく、加熱時間は1秒〜60秒の範囲が好ましい。より好ましい範囲は膜面温度が70℃〜90℃、加熱時間が2秒〜10秒の範囲である。本発明の好ましい加熱処理の方法は特開2002−107872号に記載されている。
【0264】
また、本発明の熱現像感光材料を安定して連続製造するためには特開2002−156728号、同2002−182333号に記載の製造方法が好ましく用いられる。
【0265】
11)包装材料
本発明の熱現像感光材料は生保存時の写真性能の変動を押えるため、もしくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。酸素透過率は25℃で50mL/atm・m・day以下であることが好ましく、より好ましくは10mL/atm・m・day以下、さらに好ましくは1.0mL/atm・m・day以下である。水分透過率は10g/atm・m・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m・day以下である。
該酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号。特開2000−206653号明細書に記載されている包装材料である。
【0266】
12)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特開2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
【0267】
(画像形成方法)
1)露光
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、好ましくはレーザーによる走査露光が用いられる。レーザーとしては赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーを用いることが出来る。好ましくは、赤色〜赤外半導体レーザーであり、レーザー光のピーク波長は、600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。
一方、近年、特に、SHG(Second Harmonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。青色レーザー光のピーク波長は、300nm〜500nm、特に400nm〜500nmが好ましい。
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0268】
2)熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃〜250℃であり、好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは110℃〜130℃である。現像時間としては1秒〜60秒が好ましく、より好ましくは3秒〜30秒、さらに好ましくは5秒〜25秒である。
【0269】
熱現像の方式としてはドラム型ヒーター、プレート型ヒーターのいずれを使用してもよいが、プレート型ヒーター方式がより好ましい。プレート型ヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒーターからなり、かつ前記プレートヒーターの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒーターとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒーターを2〜6段に分けて先端部については1℃〜10℃程度温度を下げることが好ましい。例えば、独立に温度制御できる4組のプレートヒーターを使用し、それぞれ112℃、119℃、121℃、120℃になるように制御する例が挙げられる。
このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を抑えることもできる。
【0270】
熱現像機の小型化および熱現像時間の短縮のためには、より安定なヒーター制御ができることが好ましく、また、1枚のシート感材を先頭部から露光開始し、後端部まで露光が終わらないうちに熱現像を開始することが望ましい。本発明に好ましい迅速処理ができるイメージャーは例えば特開2002−289804号および同−091114号に記載されている。
【0271】
3)システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカル・ドライレーザーイメージャーFM−DPL、およびDRYPIX7000を挙げることができる。FM−DPLに関しては、Fuji Medical Review No.8,page39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM規格に適応したネットワークシステムとして富士フィルムメディカル(株)が提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0272】
(本発明の用途)
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用途、印刷製版用途、マイクロ写真用途、および工業用途などの熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【実施例】
【0273】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.
1.PET支持体の作製、および下塗り
1−1.製膜
【0274】
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66 (フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融し下記構造の染料BBを0.04質量%含有させた。その後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
【0275】
【化34】

【0276】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cmで巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0277】
1−2.表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/mの処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0278】
2.バック層塗布液の調製と塗布
830gのMEKを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB381−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社、Vitel PE2200B)4.5gを添加し溶解した。この溶解した液に、染料Bを0.30g添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gとフッ素系活性剤(大日本インク社、メガファックF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1重量%の濃度でディゾルバー型ホモジナイザーにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)75gを添加、攪拌し、バック面の塗布液を調製した。
【0279】
このように調製したバック層塗布液を、支持体上に、乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布乾燥を行った。乾燥温度100℃、露天温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0280】
3.画像形成層、中間層、および表面保護層
3−1.塗布用材料の準備
【0281】
1)ハロゲン化銀乳剤の調製
水5429mLに、フタル化ゼラチン88.3g、PAO化合物(HO(CHCHO)n−(CH(CH)CHO)17−(CHCHO)m−H;m+n=5〜7)の10質量%メタノール水溶液10mL、臭化カリウム0.32gを添加溶解し40℃に保った中へ、0.67mol/Lの硝酸銀水溶液659mlと1Lあたり0.703molのKBrおよび0.013molのKIを溶解した液とを特公昭58−58288号、同58−58289号に示される混合攪拌機を用い、pAg8.09に制御しながら同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。1分後、0.63Nの水酸化カリウム溶液20mLを添加した。6分経過後、0.67mol/Lの硝酸銀水溶液1976mlと1Lあたり0.657molのKBr、0.013molの沃化カリウムおよび30μmolの六塩化イリジウム酸二カリウムを溶解した液とを、温度40℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、38℃に降温した。
【0282】
これに、56質量%酢酸水溶液18mLを添加してハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2Lを残して上澄み液を取り除き、水10Lを加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。さらに、沈降部分1.5Lを残し、上澄み液を取り除き、更に10Lを加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1.5Lを残し、上澄み液を取り除いた後、水151mLに無水炭酸ナトリウム1.72g溶解した液を加え、55℃に昇温した。さらに120分攪拌した。最後にpHが5.0になるように調整し、銀量1mol当たり1161gになるように水を加えた。
この乳剤は、平均粒子サイズ40nm、粒子サイズの変動係数12%、[100]面比率92%のヨウ化銀含量が2モル%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0283】
2)非感光性有機銀塩調製
4720mLの純水にベヘン酸0.3776モル、アラキジン酸0.2266モル、ステアリン酸0.1510モルを添加し80℃で溶解した後、1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液540.2mLを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。上記の有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、上記ハロゲン化銀乳剤を45.3gと純水450mlを添加し、IKA JAPAN社製ホモジナイザー(ULTRA−TURRAXT−25)により13200rpm(機械振動周波数として21.1KHz)にて5分間撹拌した。次に、1mol/Lの硝酸銀溶液702.6mLを2分間かけて添加し、10分間攪拌し、有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、40℃にて重量減がなくなるまで酸素分圧容量10%の温風で循環乾燥機にて乾燥を行い、感光性ハロゲン化銀を含む粉末有機銀塩を得た。
【0284】
3−2.画像形成層塗布液の調製
1)画像形成層塗布液1の調製
ポリビニルブチラール粉末(Monsant社 Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン(MEK)1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバーDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら上記の非感光性有機銀塩500gを徐々に添加して十分に混合しスラリー状とした。
【0285】
上記スラリーをエスエムテー社製GM−2型圧力式ホモジナイザーで、2パス分散することにより感光性乳剤分散液を調製した。この際、1パス時の処理圧は280kg/cmであり、2パス時の処理圧は560kg/cmとした。
【0286】
得られた有機銀塩分散物50gにMEK15.1gを加え、ディゾルバー型ホモジナイザーで1000rpmにて撹拌しながら21℃に保温し、N,N−ジメチルアセトアミド2分子/臭酸1分子/臭素1分子の会合体の10重量%メタノール溶液390μLを加え、攪拌混合した。さらに臭化カルシウムの10重量%メタノール溶液494μLを添加して20分間攪拌した。
【0287】
続いて、15.9重量%のジベンゾ−18−クラウン−6と4.9重量%の酢酸カリウムとを含むメタノール溶液167mgを添加して10分間攪拌した後18.3質量%2−クロロ安息香酸、34.2質量%のサリチル酸−p−トルエンスルホネート、分光増感色素A1とA2をそれぞれ銀1モル当たり1×10−6モルとなるように添加し、1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分間攪拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsant社 Butvar B−79)13.31gを添加して30分間攪拌した後、9.4重量%のテトラクロロフタル酸溶液1.08gを添加して15分間撹拌した。攪拌を続けながら、還元剤−1を銀1モル当たり0.4モル添加した。
【0288】
1.1質量%の4−メチルフタル酸および染料1のMEK溶液12.4gを添加し、10質量%のDesmodur N3300(モーベイ社脂肪族イソシアネート)1.5gを続けて添加し、7.4質量%のポリハロゲン化合物−1のMEK溶液13.7g、7.2質量%のフラタジンのMEK溶液4.27gを添加した。
【0289】
2)画像形成層塗布液2〜6の調製
画像形成層塗布液1の調製において用いたポリビニルブチラール(Monsant社 Butvar B−79)の代わりに、下記のα−オレフィン単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂、および比較の還元剤−1の代わりに一般式(R1)で表される還元剤を用いた。これらの組合せを表5に示した。変性ポリビニルアセタール樹脂は、特開2006−17877に記載の方法で合成された。
【0290】
【表5】

【0291】
3−3.表面保護層塗布液の調製
<表面保護層塗布液−1の調製>
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水785mLに溶解し、流動パラフィンの10質量%乳化物を10g、ヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリットの10質量%乳化物を30g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸15質量%メタノール溶液40mL、フッ素系界面活性剤(F−1)の1質量%溶液を11mL、フッ素系界面活性剤(F−2)の1質量%水溶液を11mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を28mL、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径3.6μm、体積加重平均の分布60%)25gを混合したものを表面保護層塗布液とし、4.2mL/mになるようにコーティングダイへ送液した。
【0292】
<表面保護層塗布液−2〜4の調製>
表面保護層塗布液−1において、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径3.6μm、体積加重平均の分布60%)およびメチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックスを除き、代わりに、表5に記載のフッ素原子含有ポリマーラテックスに用いて、その他は同様にして塗布液−2〜4を調製した。
【0293】
<ポリマーラテックス>
・L−A:メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)。
・L−1(フッ素系):FS−6010(フロロテクノロジー製)。
・L−2(フッ素系):AG−7000(旭硝子製)。
・L−3(フッ素系):NDN−2000(日華化学製)。
【0294】
3−4.熱現像感光材料の作製
画像形成層塗布液と表面保護層塗布疲を押し出しコーターで、バック層を塗布した支持体のバック層とは反対の面に順次塗布することにより、熱現像感光材料を作製した。塗布は、感光層は塗布銀量1.9g/m、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになるようにして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥した。
【0295】
以下、実施例で用いた化合物を示す。
【0296】
【化35】

【0297】
【化36】

【0298】
【表6】

【0299】
【化37】

【0300】
4.性能評価
4−1.画像露光及び熱現像処理
高周波重量にて波長800nm〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザーを露光源とした露光機を試作し、上記の作製した試料の画像形成層面側から、この露光機によりレーザー走査による露光を与えた。この際に、感光材料の露光面への走査レーザー光の入射角度を75度として画像を記録した。その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて感光材料の保護層とドラム表面が接触するようにして、124℃で15秒熱現像した。
また、同様に各試料を画像露光した後、試料の搬送速度を速めて、124℃で10秒熱現像する迅速熱現像処理も行った。
得られた画像濃度を濃度計で測定した。
【0301】
4−2.評価項目
(面状ムラ)
塗布された試料の画像形成層を有する面側の塗布面状を観察し官能評価した。
評価は、厚みムラ、塗布スジ、および凝集物などの異物の有無と、反射光で観察したときに光沢ムラの有無を評価ポイントとした。
◎:塗布面状が均一であり、いずれのムラも観察されない。
○:光沢ムラが観察されるが、厚みムラ、塗布スジ、および凝集物などの異物は観察されず、画像形成に支障がないレベル。
△:厚みムラ、塗布スジ、および凝集物などの異物が画像形成に影響する程度に観察されるが、許容範囲である。
×:厚みムラ、塗布スジ、および凝集物などの異物が観察され、画像ムラとなる重大レベル。
【0302】
(現像後の乳剤面の膜付きの評価)
白灯に7分間曝光した試料に対し、現像処理を行った。フィルムが排出された直後の時間から5分後に下記の方法で乳剤面の膜付きを評価した。
【0303】
かみそりでフィルムに垂直に傷を付け、その上から市販のセロテープ(登録商標)を接着し、テープを引き剥がしたときのフィルムから乳剤膜が剥がれた面積で評価した。
ランク5:全く剥がれない。
ランク4:剥離した部分が、テープを接着した面積の1/4未満。
ランク3:剥離した部分が、テープを接着した面積の1/4以上1/2未満。
ランク2:剥離した部分が、テープを接着した面積の1/2以上3/4未満。
ランク1:剥離した部分が、テープを接着した面積の3/4以上。
【0304】
(かぶり)
各試料の未露光部の濃度と比較試料1の未露光部の濃度との相対値を、かぶり(fog)とした。
(感度)
かぶり+濃度1.0を与える露光量の逆数の対数値を感度とし、試料No.1の15秒現像における感度との相対感度(S1.0)で表した。
(Dmax)
各試料の露光量の増加で飽和する最大濃度を試料No.1の15秒現像における飽和濃度との相対値でDmaxとして表した。
【0305】
4−3.評価結果
得られた結果を表6に示した。
【0306】
【表7】

【0307】
本発明の試料は、バインダー量を減らしても、面状が悪化せず、かつ膜付きがよく、迅速熱現像によってもかぶりが低く、高感度で高Dmaxを示した。
一方、比較試料においては、バインダー量を減らすと面状が悪化し、かぶりが増大した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面上に、少なくとも感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、熱現像のための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層、および少なくとも1つの非感光性層を有する熱現像感光材料であって、前記バインダーの50質量%以上が主鎖中にα−オレフィン単位を1モル%〜20モル%含有する変性ポリビニルアセタール樹脂であり、前記非感光性層がフッ素原子を分子内に有するポリマーラテックス、もしくは下記一般式(FC−1)で表されるフッ素化合物の少なくとも一方を含有することを特徴とする熱現像感光材料:
【化1】

(式中、Rfは3個以上17個以下のフッ素原子を有するアルキル基またはアルケニル基を表し、LおよびL’は連結手または二価の連結基を表し、Yは連結手または(p+q)価の連結基を表し、Zはアニオン性基、カチオン性基、ベタイン性基またはノニオン性極性基を表す。p及びqは各々1〜3の整数を表す。但し(p+q)が2の時、L、L’およびYがともに連結手であることはない。)。
【請求項2】
前記画像形成層における前記変性ポリビニルアセタール樹脂に対する前記非感光性有機銀塩および前記感光性ハロゲン化銀の合計銀量が質量比で25%以上〜35%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
【請求項3】
前記変性ポリビニルアセタール樹脂が残存アセチル基量が25モル%以下、残存水酸基量が17モル%以上35モル%以下、かつ、重合度が200以上〜3000以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱現像感光材料。
【請求項4】
前記変性ポリビニルアセタール樹脂が変性ポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
【請求項5】
前記α−オレフィンがエチレンであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
【請求項6】
前記フッ素原子を分子内に有するポリマーラテックスが、少なくともフッ素原子を分子内に有するアクリレートもしくはメタクリレートと疎水基を有するモノマーの共重合ポリマーラテックスであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
【請求項7】
前記フッ素原子を分子内に有するアクリレートもしくはメタクリレートが下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項6に記載の熱現像感光材料:
【化2】


(式中、Rは水素原子もしくはフッ素原子もしくはメチル基を表し、Rはメチレン基、エチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基を表し、Xは水素原子もしくはフッ素原子を表し、nは1〜20の整数、mは0または1を表す。)。
【請求項8】
前記疎水基を有するモノマーが下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の熱現像感光材料:
【化3】


(式中、Rは水素もしくはメチル基を表し、Yはアルキル基もしくは脂環基もしくは芳香族基を表す。)。
【請求項9】
前記一般式(FC−1)において、前記pが2または3であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
【請求項10】
前記フッ素化合物が下記一般式(FC−2)または(FC−3)で表される化合物である事を特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【化4】


(式中、Rf、L、およびZは請求項9におけると同義である。但し、Rf、L、およびZはそれぞれ同じでも異なっていてもよい)。
【請求項11】
前記連結基Zが下記一般式(FC−1−A)で表される基であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【化5】

(式中、Rはアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、AおよびBは、一方が水素原子を、他方が−(CH−を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0または1の整数を表す。)。
【請求項12】
前記連結基Zが下記一般式(FC−1−B)で表される基であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【化6】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0または1の整数を表す。)。
【請求項13】
前記Rfが下記一般式(FC−1−C)で表されることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【化7】

(式中、Rcは炭素数0〜4の直鎖アルキレン基を表し、Reは炭素数2〜6のパーフルオロアルキレン基を表し、Wは水素原子またはフッ素原子を表す。)。
【請求項14】
前記Rfが下記一般式(FC−1−D)で表されることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の熱現像感光材料:
【化8】

(式中、Rf、およびRfはそれぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1から3のパーフルオロアルキル基を表す)。
【請求項15】
前記RfがC17基であることを特徴とする請求項14に記載の熱現像感光材料。
【請求項16】
前記非感光性層が、前記支持体の前記画像形成層を有する面側の最外層であることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
【請求項17】
前記最外層のバインダーの50質量%以上が親水性ポリマーであることを特徴とする請求項16に記載の熱現像感光材料。
【請求項18】
前記最外層がマット剤を含有することを特徴とする請求項16または請求項17に記載の熱現像感光材料。

【公開番号】特開2008−203531(P2008−203531A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39526(P2007−39526)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】