説明

熱硬化型水分捕獲体形成用組成物、水分捕獲体および電子デバイス

【課題】紫外線照射を行わずに低温加熱による硬化のみで水分捕獲体を形成することができ、また硬化時にアウトガスの発生しない熱硬化型水分捕獲体形成用組成物、該組成物から形成された水分捕獲体、および該水分捕獲体を備えた電子デバイスを提供する。
【解決手段】本発明に係る熱硬化型水分捕獲体形成用組成物は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する化合物(A)と、硬化性モノマー(B)と、を含有する。
−[Al(OR)−O]− …(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ置換もしくは非置換の、アルキル基、アリール基またはアルキルカルボニル基を表す。nは2〜6の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化型水分捕獲体形成用組成物、該組成物から形成された水分捕獲体、および該水分捕獲体を備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水分によって障害を受ける電子デバイス、例えばキャパシタや有機EL素子等は、水分を排除するために密閉した状態で使用する必要がある。しかしながら、このような密閉型の電子デバイスに使用される封止剤のみでは、水分の侵入を完全に阻止することはできない。このため、デバイス内に徐々に侵入する水分を除去する仕組みがなければ、電子デバイスの機能は時間の経過に伴い徐々に低下してしまう。
【0003】
例えば、代表的な密閉型電子デバイスである有機EL素子は、駆動期間の長期化に伴って、有機EL素子内に侵入した水分により輝度や発光効率等の発光特性が徐々に低下するという問題がある。
【0004】
このような密閉型電子デバイスを外部より侵入する水分から保護する手段として、あらかじめデバイス内に有機金属化合物を含有する水分捕獲体を配置し、デバイス内部を低湿度環境に保つ技術が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−298598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている有機EL素子用水分吸収剤は、紫外線硬化剤および有機金属化合物からなる水分吸収物質を含んでおり、紫外線を照射することで硬化させて水分捕獲体を形成するものである。このように有機EL素子用水分吸収剤を紫外線照射により硬化させる場合、有機EL素子内部に配置される有機発光層が劣化するおそれがあるため、紫外線照射量を高くすることは不可能であった。一方、有機EL素子用水分吸収剤を加熱により硬化させる場合でも、あまりに高温(例えば100℃を超える温度)を要することになれば紫外線照射の場合と同様に有機発光層への悪影響が懸念される。
【0007】
また、有機EL素子用水分吸収剤を加熱により硬化させる場合、該水分吸収剤に含まれる有機材料等からアウトガスが発生することがある。かかるアウトガスがデバイス内部に拡散すると、デバイスを構成する電荷輸送層や有機発光層等の有機材料に吸収されたり、デバイス内に存在する空隙の体積膨張を起こしたりするおそれがある。その結果、デバイスにピンホールが発生し、さらにはデバイスが変形して水分の侵入が促進されてデバイスの寿命が短くなる場合があった。
【0008】
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上記課題を解決することで、紫外線照射を行わずに低温加熱による硬化のみで水分捕獲体を形成することができ、また硬化時にアウトガスの発生しない熱硬化型水分捕獲体形成用組成物、該組成物から形成された水分捕獲体、および該水分捕獲体を備えた電子デバイスを提供するものである。なお、本発明において、「低温加熱」とは、100℃以下の温度で加熱することをいう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係る熱硬化型水分捕獲体形成用組成物の一態様は、
下記一般式(1)で表される構成単位を有する化合物(A)と、
硬化性モノマー(B)と、
を含有する。
−[Al(OR)−O]− …(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ置換もしくは非置換の、アルキル基、アリール基またはアルキルカルボニル基を表す。nは2〜6の整数を表す。)
【0011】
[適用例2]
適用例1の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物において、前記化合物(A)が下記一般式(2)で表される化合物であることができる。
【化1】

(式(2)中、Rは、それぞれ置換もしくは非置換の、アルキル基、アリール基またはアルキルカルボニル基を表す。)
【0012】
[適用例3]
適用例1または適用例2の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物において、さらに、溶剤(C)と、開始剤(D)と、を含有することができる。
【0013】
[適用例4]
適用例3の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物において、前記溶剤(C)が、流動パラフィン、スクワレン、スクワランおよび水添ポリオレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
【0014】
[適用例5]
適用例3または適用例4の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物において、前記開始剤(D)が油溶性アゾ化合物であることができる。
【0015】
[適用例6]
適用例3ないし適用例5のいずれか一例の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物において、前記溶剤(C)の含有割合が20質量%以上50質量%以下であることができる。
【0016】
[適用例7]
適用例3ないし適用例6のいずれか一例の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物において、前記開始剤(D)の含有割合が前記硬化性モノマー(B)100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下であることができる。
【0017】
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか一例の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物において、前記化合物(A)の含有割合が20質量%以上50質量%以下であることができる。
【0018】
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか一例の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物において、前記硬化性モノマー(B)の含有割合が20質量%以上50質量%以下であることができる。
【0019】
[適用例10]
本発明に係る水分捕獲体の一態様は、適用例1ないし適用例9のいずれか一例の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物を用いて形成されることを特徴とする。
【0020】
[適用例11]
本発明に係る電子デバイスの一態様は、適用例10の水分捕獲体を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る熱硬化型水分捕獲体形成用組成物によれば、紫外線照射を行わずに低温加熱による硬化のみで、優れた水分捕獲能を有する水分捕獲体を形成することができる。また、硬化時にアウトガスとなる成分が発生しない。したがって、本発明に係る熱硬化型水分捕獲体形成用組成物を使用することにより、電子デバイスを構成する電荷輸送層や有機発光層へのダメージを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL素子を模式的に示す断面図である。
【図2】第2の実施形態に係る有機EL素子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例をも含む。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基およびメタクリロイル基を表し、(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートを表すものとする。
【0024】
1.熱硬化型水分捕獲体形成用組成物
本実施の形態に係る熱硬化型水分捕獲体形成用組成物(以下、単に「組成物」ともいう)は、下記一般式(1)で表される構成単位を有する化合物(A)と、硬化性モノマー(B)と、を含有する。
−[Al(OR)−O]− …(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ置換もしくは非置換の、アルキル基、アリール基またはアルキルカルボニル基を表す。nは2〜6の整数を表す。)
【0025】
以下、本実施の形態に係る組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0026】
1.1.化合物(A)
本実施の形態に係る組成物は、上記一般式(1)で表される構成単位を有する化合物(A)を含有する。化合物(A)の機能の一つとしては、化合物(A)中に存在するAl−OR結合が水分と反応することにより、水分を捕獲することが挙げられる。このような化合物(A)を用いることにより、水分捕獲能に優れた硬化体を得ることができる。すなわち、本実施の形態に係る組成物から形成される硬化体を水分を捕獲する用途に用いるため
には、該硬化体中に実質的にAl−OR結合が存在している必要がある。そのためには、本実施の形態に係る組成物中においても、実質的にAl−OR結合が存在している必要がある。
【0027】
上記一般式(1)中、Rは、置換もしくは非置換の、アルキル基、アリール基またはアルキルカルボニル基であり、nは2〜6の整数を表している。ここで、複数存在するRは同一または異なっていてもよく、直鎖状、環状または分岐鎖を有していてもよい。
【0028】
Rの炭素数は、好ましくは5〜30であり、より好ましくは6〜20であり、特に好ましくは7〜18である。化合物(A)が加水分解することによりRに由来するアルカンやアルコール等の加水分解成分が発生するが、Rの炭素数が前記範囲にあると、これらの加水分解成分の沸点が高くなりアウトガスの成分となりにくく、また後述する溶剤(C)との相溶性が良好となるため好ましい。なお、加水分解成分の沸点は、1気圧において200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。200℃以上であれば、例えば電子デバイス内への加水分解成分の拡散を抑制することができる。
【0029】
なお、上記化合物(A)は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。下記一般式(2)中、Rは、上記一般式(1)中のRと同義である。
【0030】
【化2】

【0031】
さらに、上記化合物(A)は、下記式(3)または下記式(4)で表される化合物であることがより好ましく、下記式(3)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
上記式(3)で表される化合物の市販品としては、例えばオリープAOO(製品名、ホープ製薬株式会社製、50%AF(アロマフリー)ソルベント溶液)が挙げられる。また、上記式(4)で表される化合物の市販品としては、例えばオリープAOS(製品名、ホープ製薬株式会社製、50%AF(アロマフリー)ソルベント溶液)が挙げられる。
【0035】
本実施の形態に係る組成物中における化合物(A)の含有割合は、組成物の全質量を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上50質量%以下である。化合物(A)の含有割合が前記範囲にあると、水分を捕獲する作用を硬化体において効果的に発現させることができるため好ましい。さらに、化合物(A)の含有割合が前記範囲にあると、組成物に後述するような適度な粘度を付与することができ、硬化体を形成する際の成膜等の作業性が良好となる。
【0036】
1.2.硬化性モノマー(B)
本実施の形態に係る組成物は、硬化性モノマー(B)を含有する。硬化性モノマー(B)は、硬化体を形成する際に高分子量化してバインダ(マトリックス)として作用することで、上述の化合物(A)の塗布・成膜性を向上させることができる。また、化合物(A)が加水分解することにより発生する分解生成物をバインダ中に捕獲することにより、該分解生成物が電子デバイス内に拡散することを抑制できる。
【0037】
硬化性モノマー(B)としては、分子中に1個以上の重合性反応基を有する化合物であれば特に制限されない。このような重合性反応基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基等が挙げられるが、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0038】
本発明で使用することのできる(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートや、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これら単官能(メタ)アクリレートや多官能(メタ)アクリレートは併用してもよい。なお、硬化性モノマー(B)として多官能(メタ)アクリレートを使用することで、硬化体中に架橋構造が構築されてより強固な硬化体となるため好ましい。
【0039】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート、1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2−プロパノール、9,9−ビス[4−[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]フェニル]−9H−フルオレン等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上記例示した多官能モノマーの市販品としては、例えばビスコート#195、#230、#260、#335HP、#540、#700(以上、大阪有機化学工業株式会社製);TMPT、9G、9PG、701、BPE−500、DCP、DOD−N、HD−N、NOD−N、NPG(以上、新中村化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0041】
一方、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,6−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用
いることができる。
【0042】
本実施の形態に係る組成物中における硬化性モノマー(B)の含有割合は、組成物の全質量を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上50質量%以下である。硬化性モノマー(B)の含有割合が前記範囲にあると、水分捕獲能を損なわずに良好な硬化体を形成することができる。さらに、硬化性モノマー(B)の含有割合が前記範囲にあると、組成物に後述するような適度な粘度を付与することができ、硬化体を形成する際の成膜等の作業性が良好となる。
【0043】
1.3.溶剤(C)
本実施の形態に係る組成物には、溶剤(C)を添加してもよい。溶剤(C)を添加することで、上述の化合物(A)を溶解させて均一な溶液とすることができる。溶剤(C)は、上述の化合物(A)を溶解させることができれば特に制限されない。溶剤(C)としては、上述の化合物(A)との相溶性の観点から、脂肪族炭化水素であることが好ましく、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、水添ポリオレフィン等がより好ましい。これらの溶剤は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。なお、溶剤(C)が流動パラフィン、スクワレン、スクワランおよび水添ポリオレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種である場合には、これらの溶剤が低温加熱によりアウトガスの成分となることを抑制できる点でも好ましい。
【0044】
本実施の形態に係る組成物中における溶剤(C)の含有割合は、組成物の全質量を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上50質量%以下である。溶剤(C)の含有割合が前記範囲にあると、上述の化合物(A)を溶解させて均一な溶液とすることが容易となるため好ましい。さらに、溶剤(C)の含有割合が前記範囲にあると、組成物に後述するような適度な粘度を付与することができ、硬化体を形成する際の成膜等の作業性が良好となる。
【0045】
1.4.開始剤(D)
本実施の形態に係る組成物には、開始剤(D)を添加してもよい。開始剤(D)は、加熱により分解して上述の硬化性モノマー(B)を重合し得る活性種を発生させることができれば特に制限されない。
【0046】
加熱により分解してラジカルを発生して重合を開始するラジカル重合開始剤としては、例えば油溶性アゾ化合物、油溶性過酸化物等が挙げられるが、油溶性アゾ化合物であることが好ましい。また、加熱により電子デバイスを構成する電荷輸送層や有機発光層へのダメージを低減する観点から、低温加熱(100℃以下)で分解し得るラジカル重合開始剤であることが特に好ましい。
【0047】
このような油溶性アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。上記例示したアゾ化合物の市販品としては、V−70、V−65、V−601、V−59、V−40、VF−096、V−30、VAm−110、VAm−111(以上、和光純薬工業株式会社製)等が挙げられる。
【0048】
このような油溶性過酸化物としては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等が挙げられる。上記例示した過酸化物の市販品としては、パーブチルZ、パーヘキサ25B(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0049】
本実施の形態に係る組成物中における開始剤(D)の含有割合は、前記硬化性モノマー(B)100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。開始剤(D)の含有割合が前記範囲にあると、重合反応が速やかに進行すると共に、組成物を硬化させた際に開始剤による悪影響を及ぼすことがない。
【0050】
1.5.バインダ成分
本実施の形態に係る組成物は、硬化性モノマー(B)以外のバインダ成分をさらに添加してもよい。バインダ成分の機能の一つとしては、バインダ(マトリックス)として作用し、上述の化合物(A)の塗布・成膜性をさらに向上させることが挙げられる。
【0051】
バインダ成分は、上述の化合物(A)の特性を損なうことなくバインダ(マトリックス)として作用する材料であれば特に限定されないが、共役ジエン系共重合体、水添された共役ジエン系共重合体、ポリイミド骨格を有する重合体(例えば、国際公開第2009/37834号パンフレット参照)、ポリアミド骨格を有する重合体、ポリエーテル系重合体等を使用することができる。特に塗布・成膜性を向上させる観点から、共役ジエン系共重合体、水添された共役ジエン系共重合体、ポリエーテル系重合体等が好ましい。
【0052】
1.6.その他の添加剤
1.6.1.安定化剤
本実施の形態に係る組成物には、安定化剤をさらに添加してもよい。安定化剤を添加することにより、本実施の形態に係る組成物のゲル化を低減でき、貯蔵安定性が良好となる。好ましい安定化剤としては、例えばヒドロキノン類やフェノール類等が挙げられる。具体的には、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4−tert−ブチルカテコール、ブチルヒドロキシアニソール、3,5−ジブチルヒドロキシトルエン、DL−α−トコフェロール(以上、いずれも東京化成工業株式会社より入手可能);N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩(和光純薬工業株式会社より入手可能)等が挙げられる。これらの安定化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
本実施の形態に係る組成物中における安定化剤の含有割合は、10〜500ppmであることが好ましく、50〜300ppmであることがより好ましい。安定化剤の含有量が前記範囲にあると、組成物の貯蔵安定性が良好となるため十分な常温可使時間が得られると共に、組成物の硬化性も損なわれない点で好ましい。
【0054】
1.6.2.伝熱性フィラー
本実施の形態に係る組成物には、必要に応じて伝熱性を高めるためのフィラーを混合してもよい。有機EL素子を複数配置した有機EL照明装置は発熱することがあり、素子近傍の温度が高くなることに起因して、輝度や発光効率等の発光特性に悪影響を与えるという不具合が生じることがある。しかしながら、本実施の形態に係る組成物に伝熱性のフィラーを混合することにより、放熱性を高めて素子を水分から保護すると同時に、発熱による弊害からも素子を保護できる点で好ましい。
【0055】
伝熱性フィラーとしては、無機粒子等の公知のフィラーを使用することができる。また、伝熱性フィラーとして無機粒子を使用する場合、本実施の形態に係る組成物を用いて形成された硬化体の熱伝導性を向上させるだけでなく、上述の化合物(A)が吸湿により分
解されて発生する成分(分解生成物)を吸着させて、硬化体の内部に該分解生成物を捕獲しておくことができる。これにより、前記分解生成物が硬化体の可塑剤として作用することを防止することができ、例えば80℃を超える使用環境下においても熱流動により変形することがない。さらに無機粒子の他の機能としては、本実施の形態に係る組成物を用いて形成された硬化体の機械的強度を向上させること、該硬化体の吸湿能を高めること等が挙げられる。
【0056】
無機粒子の材質としては、金属酸化物または金属窒化物であることが好ましい。金属酸化物としては、例えばシリカ(シリカゲルを含む)、スメクタイト、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、マグネシア、放熱材料用に使用される各種ガラス粉末等が挙げられる。金属窒化物としては、例えば窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。また、金属酸化物や金属窒化物ではないが、炭化ケイ素、炭化ホウ素、活性炭を無機粒子として使用することもできる。これらの中でも、熱流動性を抑制する観点から、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、炭化ケイ素、炭化ホウ素およびスメクタイトから選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましく、さらに熱伝導性に優れている観点から、アルミナおよび/または窒化ホウ素の粒子であることが特に好ましい。これらの無機粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0057】
無機粒子の平均粒径は、好ましくは5〜5,000nmであり、より好ましくは5〜2,000nmであり、さらに好ましくは5〜500nmであり、特に好ましくは5〜100nmである。平均粒径が前記範囲にあると、本実施の形態に係る組成物を用いて形成された硬化体の熱流動による変形を防止することができる。特に平均粒径が5〜100nmであると、透明性にも優れた硬化体を形成できる点で有利である。また、平均粒径が前記範囲にあると、組成物に後述するような適度な粘度を付与することが容易となり、硬化体を形成する際の作業性(塗布性等)が良好となる。さらに、平均粒径が前記範囲にあると、無機粒子が分解生成物を捕捉するのに十分な表面積を有することになり、これにより硬化体の熱流動による変形を抑制できるため好ましい。
【0058】
本実施の形態に係る組成物中における無機粒子の含有量は、組成物の全質量を100質量%とした場合、硬化体の熱伝導性を向上させる観点では、好ましくは0.1質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上60質量%以下である。さらに、硬化体の透明性を確保する観点では、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。なお、無機粒子の含有量が0.1質量%以上であれば、熱流動により変形しない硬化体を得ることが可能となる。
【0059】
1.7.組成物の製造方法
本実施の形態に係る組成物は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、化合物(A)および溶剤(C)を十分に混合・撹拌することにより、化合物(A)を完全に溶解させた溶液1を調製する。一方、硬化性モノマー(B)(必要に応じてバインダ成分、安定化剤、その他の添加剤を加えたもの)を撹拌しながら開始剤(D)を添加して均一な溶液2を調製する。次いで、溶液2に溶液1を添加して、さらに混合・撹拌することにより本実施の形態に係る組成物を得ることができる。なお、これらの成分を混合・攪拌する方法は特に制限されない。
【0060】
1.8.組成物の物性および用途
本実施の形態に係る組成物は、20℃における粘度が50〜500,000cPであることが好ましい。粘度が前記範囲にあることにより、組成物をODF法やディスペンス法により直接、素子基板へ塗布し、硬化させることができる。これにより、本実施の形態に係る組成物をフィルム状等の成形体としてあらかじめ作製しておき、それを素子へ組み込
む工程を経る必要がなくなるので工程を簡略化することができる。また、本実施の形態に係る組成物に光酸発生剤等を添加して、感光性を付与すれば、微細なパターニングが可能となる。なお、上記粘度は、フォーリング・ニードル法により測定される値を示す。
【0061】
本実施の形態に係る組成物によれば、紫外線照射を行わずに低温加熱による硬化のみで、優れた水分捕獲能を有する水分捕獲体を形成することができる。また、硬化時にアウトガスとなる成分が発生しない。このようにして得られる水分捕捉体は、電子デバイスを構成する電荷輸送層や有機発光層へのダメージを大幅に低減することができるので、有機EL素子、有機TFT、有機太陽電池、有機CMOSセンサー等の水分捕獲体として有用であり、特に有機EL素子の水分捕獲体に好適に用いられる。
【0062】
2.水分捕獲体
本実施の形態に係る水分捕獲体は、上記組成物をガラス基板等の基材上に塗布して成膜した後、加熱して硬化させることにより得られる硬化体である。本発明において「硬化体」とは、上記組成物を加熱することにより、もとの組成物よりも粘度または硬度が上昇したものをいう。当該硬化体は、Al−OR結合を有する化合物(A)を含有している。このAl−OR結合が水分と反応することにより水分を捕獲することで、本願発明の作用効果を奏することができるのである。したがって、当該硬化体を水分を捕獲する用途に用いるためには、該硬化体中に実質的にAl−OR結合が存在している必要がある。
【0063】
塗布方法としては、スピンコータ、ロールコータ、スプレーコータ、ディスペンサ、インクジェット装置を用いる方法等が挙げられる。
【0064】
硬化の際の温度は、加熱により電子デバイスを構成する電荷輸送層や有機発光層へのダメージを低減する観点から、30℃〜100℃であることが好ましく、40℃〜95℃であることがより好ましく、50℃〜90℃であることが特に好ましい。
【0065】
得られた硬化体の形状は、特に限定されないが、例えばフィルム形状を有する。該硬化体がフィルム形状を有する場合、その膜厚は、例えば5〜100μmである。
【0066】
本実施の形態に係る硬化体中における化合物(A)の含有割合は、硬化体の全質量を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上50質量%以下である。化合物(A)の含有割合が前記範囲にあると、水分を捕獲する機能を十分に発現させることができるため好ましい。さらに化合物(A)の含有割合が前記範囲にあると成膜性が良好となり、硬化体に透明性を付与しやすくなる点で好ましい。
【0067】
3.電子デバイス
本実施の形態に係る電子デバイスは、上記水分捕獲体を電子デバイスの内部に備えている。水分を嫌う電子デバイスであれば、いかなる電子デバイスにも上記水分捕獲体を搭載することができる。以下、代表的な密閉型電子デバイスである有機EL素子の一例について図面を参照しながら説明する。
【0068】
図1は、第1の実施形態に係る有機EL素子を模式的に示す断面図である。図1に示すように、有機EL素子100は、有機EL層10と、有機EL層10を収納して外気から遮断するための構造体20と、構造体20内に形成された捕獲剤層30と、からなる。
【0069】
有機EL層10は、有機材料からなる有機発光材料層が互いに対向する一対の電極の間に挟持されてなる構造であればよく、例えば陽極/電荷(正孔)輸送剤/発光層/陰極等の公知の構造をとることができる。
【0070】
捕獲剤層30は、上述の水分捕獲体である。捕獲剤層30は、図1に示すように、有機EL層10と離間して形成されている。
【0071】
図1中、構造体20は、基板22と、封止キャップ24と、接着剤26とからなる。基板22としてはガラス基板等、封止キャップ24としてはガラスからなる構造体等が挙げられる。なお、構造体20の構造は、有機EL層10を収納することができればよく、特に限定されない。
【0072】
図2は、第2の実施形態に係る有機EL素子200を模式的に示す断面図である。図2に示すように、有機EL素子200は、構造体20内に形成された捕獲剤層30が有機EL層10に密着させるように形成されている点で、有機EL素子100とは異なる。捕獲剤層30は、揮発性成分の残留や発生が少ない硬化体であるため、有機EL層10の表示特性を損なうことがない。また、捕獲剤層30は、有機EL層10へ水分が侵入することを防止すると共に、有機EL層10を保護することもできる。
【0073】
4.実施例
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0074】
4.1.環状アルミニウムオキサイドアシレート溶液の調製
4.1.1.環状アルミニウムオキサイド2−エチルヘキシレート溶液の調製
200mLの三口フラスコに、化合物(A)としてオリープAOO(ホープ製薬株式会社製、商品名、50%AF(アロマフリー)ソルベント溶液)120gおよび溶剤(C)として平均分子量470の流動パラフィン(株式会社MORESCO製、商品名「モレスコホワイトP350−P」)15gを乾燥窒素雰囲気下仕込んだ。攪拌しながら真空ポンプにより減圧して133Paを維持し、ゆっくりと加熱しながらAFソルベントを留去した。最終的に溶液温度を150℃から180℃に設定してAFソルベントを完全に飛ばした。露点−70℃のグローブボックス内に容器を移し、得られた環状アルミニウムオキサイド2−エチルヘキシレートのモレスコホワイトP350−P溶液の重量が75gになるまで、モレスコホワイトP350−Pを追加し、粘調な微黄色の溶液を得た。
【0075】
同様にして、平均分子量420の流動パラフィン(株式会社MORESCO製、商品名「モレスコホワイトP260」)、水添ポリ(C6−12オレフィン)(日光ケミカルズ株式会社製、商品名「シンセラン4SP」)、スクワレン(株式会社岸本特殊肝油工業所製)、スクワラン(株式会社岸本特殊肝油工業所製)のそれぞれを溶剤(C)として用いた環状アルミニウムオキサイド2−エチルヘキシレート溶液を調製した。環状アルミニウムオキサイド2−エチルヘキシレートの濃度は、必要に応じて調整した。
【0076】
4.1.2.環状アルミニウムオキサイドステアレート溶液の調製
200mLの三口フラスコに、化合物(A)としてオリープAOS(ホープ製薬株式会社製、商品名、50%AF(アロマフリー)ソルベント溶液)120gおよび溶剤(C)として平均分子量470の流動パラフィン(株式会社MORESCO製、商品名「モレスコホワイトP350−P」)15gを乾燥窒素雰囲気下仕込んだ。攪拌しながら真空ポンプにより減圧して133Paを維持し、ゆっくりと加熱しながらAFソルベントを留去した。最終的に溶液温度を150℃から180℃に設定してAFソルベントを完全に飛ばした。露点−70℃のグローブボックス内に容器を移し、得られた環状アルミニウムオキサイドステアレートのモレスコホワイトP350−P溶液の重量が75gになるまで、モレスコホワイトP350−Pを追加し、粘調な微黄色の溶液を得た。
【0077】
4.2.硬化性モノマー(B)
以下に示す実施例および比較例において、市販されている下記の化合物を硬化性モノマー(B)として使用した。
・トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「TMPT」)
・ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「9G」)
・ポリプロピレングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「9PG」)
・1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール(新中村化学工業株式会社製、商品名「701」)
・エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「BPE−500」)
・トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「DCP」)
・1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「HD−N」)
・1,9−ノナンジオールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「NOD−N」)
・ネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「NPG」)
【0078】
4.3.開始剤(D)
以下に示す実施例および比較例において、市販されている下記の化合物を開始剤(D)として使用した。
・ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製、商品名「V−601」)
・2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)2−メチルプロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製、商品名「VF−096」)
・2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製、商品名「VAm−110」)
・t−ブチルパーオキシベンゾエート(日油株式会社製、商品名「パーブチルZ」)
・2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油株式会社製、商品名「パーヘキサ25B」)
【0079】
4.4.安定化剤
以下に示す実施例において、市販されている下記の化合物を安定化剤として使用した。・ヒドロキノンモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製、略称「MEHQ」)
・4−tert−ブチルカテコール(東京化成工業株式会社製、略称「TBC」)
・3,5−ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成工業株式会社製、略称「BHT」)
・DL−α−トコフェロール(東京化成工業株式会社製、略称「VE」)
・アルミニウム N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン(和光純薬工業株式会社製、商品名「Q−1301」)
【0080】
4.5.実施例および比較例
4.5.1.フィルムの作製
下記のようにして、実施例1〜24および比較例1〜2において評価するフィルムを作製した。
【0081】
まず、露点−60℃以下、酸素5ppm以下のグローブボックス中で、表に記載の硬化
性モノマー(B)に相当する成分および必要に応じて所定量の安定化剤を添加して均一な溶液とした後、表に記載の開始剤(D)に相当する成分を混合し、十分に攪拌して均一な溶液とした。その後、上記で調製した所定量の環状アルミニウムオキサイドアシレート溶液を表に記載の濃度となるように溶剤を加えて濃度を調整した後、必要量を添加して、組成物A〜Zを得た。組成物A〜Zの組成を表1〜表3に示す。
【0082】
次いで、長辺66mm、短辺24mmの1.1mm厚ガラスに、長辺58mm、短辺13mm、深さ0.3mmの掘り込みがあるザクリガラスを用意し、そこに組成物A〜Zのいずれか1種を200μL塗布した後、80〜90℃の温度で10分〜1時間加熱することにより熱硬化させてフィルムを成形した。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
なお、表1〜表3における各成分は、上述した各成分の商品名またはその略称をもって表している。
【0087】
4.5.2.評価方法
上記で得られた各フィルムについて、吸湿性、熱流動性(耐熱性)、成膜性、ガラス密着性および貯蔵安定性(ゲル化時間)を下記の方法により評価した。なお、熱流動性は、
下記の方法により別途フィルムを作製して評価した。その結果を表1〜表3に併せて示す。
【0088】
(1)吸湿性
あらかじめ重量を精秤した長辺66mm、短辺24mmの1.1mm厚ガラスに、長辺58mm、短辺13mm、深さ0.3mmの掘り込みがあるザクリガラスを用意し、そこに組成物A〜Zのいずれか1種を200μL塗布した後、所定温度および所定時間にて加熱して硬化体を得た。そこで、再度重量を精秤し、硬化体の重量を計算しておいた。これを大気中に出して、重量を経時で測定し、重量変化がなくなった時点の重量増加量を百分率で表したものを吸水率とした。吸水率(%)は、1%以上が好ましく、1.5%以上がより好ましく、2%以上が特に好ましい。
【0089】
(2)熱流動性(耐熱性)
まず、組成物A〜Zのいずれか1種をサンプル管中に適量入れて、80℃で10分ないし1時間加熱することにより、膜厚2mmのフィルムを前記サンプル管の底部に作製した。次に、大気中で前記フィルムを十分に吸湿させた後、さらに蓋を閉めシールし、サンプル管の底部が上(成膜面が上)となるように固定した状態で85℃の環境下に静置した。その後336時間経過した時点のフィルムの状態を観察した。なお、熱流動性の評価基準は、フィルムに変化が認められなかった場合を「○」、フィルムが下方へ垂れて変形が認められた場合を「×」とした。
【0090】
(3)成膜性
上記で得られたフィルムについて、目視によりフィルムにクラックおよび凹凸が発生していないものを「○」、フィルムにクラックまたは凹凸が認められた場合を「×」とした。なお、有機EL等の用途に適用する場合には、クラックおよび凹凸の発生が抑制されているものが好ましい。
【0091】
(4)ガラス密着性
上記で得られたフィルムについて、大気中でガラスから剥離しないものを「○」、剥離するものを「×」とした。なお、ガラス基板への密着性が要求される表示材料等の用途に適用する場合は、ガラス密着性が良好なものが好ましい。
【0092】
(5)貯蔵安定性
組成物の調製後、すぐに得られた組成物を透明ガラス容器に少量加え、密閉して保管した。組成物をガラス容器に加えてから組成物に流動性が認められなくなった時点までの経過時間をゲル化時間として評価した。流動性の確認は、ガラス容器を傾けて、そのときの組成物の状態を目視で観察することにより行った。
【0093】
4.5.3.評価結果
表1の結果から、実施例1〜24の組成物から形成されたフィルムによれば、いずれも優れた吸湿性および耐熱性を具備することが判った。また、実施例1〜24の組成物によれば、成膜性およびガラス密着性にも優れているフィルムが得られることが判った。また、安定化剤を添加した実施例20〜24では常温での可使時間が添加しないものよりも長くなることが判った。
【0094】
比較例1では、組成物中に化合物(A)が含まれていないため、吸湿性をほとんど有しなかった。比較例2では、組成物中に硬化性モノマー(B)が含まれていないため、硬化不良となり、耐熱性、成膜性およびガラス密着性が損なわれた。
【0095】
以上の結果より、本発明に係る熱硬化型水分捕獲体形成用組成物から形成されたフィル
ムは、吸水率および耐熱性に優れると共に、成膜性、ガラス密着性にも優れていることが判った。
【0096】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0097】
10…有機EL層、20…構造体、22…基板、24…封止キャップ、26…接着剤、30…捕獲剤層、100・200…有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位を有する化合物(A)と、
硬化性モノマー(B)と、
を含有する、熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
−[Al(OR)−O]− …(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ置換もしくは非置換の、アルキル基、アリール基またはアルキルカルボニル基を表す。nは2〜6の整数を表す。)
【請求項2】
前記化合物(A)が下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
【化5】

(式(2)中、Rは、それぞれ置換もしくは非置換の、アルキル基、アリール基またはアルキルカルボニル基を表す。)
【請求項3】
さらに、溶剤(C)と、開始剤(D)と、を含有する、請求項1または請求項2に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
【請求項4】
前記溶剤(C)が、流動パラフィン、スクワレン、スクワランおよび水添ポリオレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
【請求項5】
前記開始剤(D)が油溶性アゾ化合物である、請求項3または請求項4に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
【請求項6】
前記溶剤(C)の含有割合が20質量%以上50質量%以下である、請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
【請求項7】
前記開始剤(D)の含有割合が前記硬化性モノマー(B)100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下である、請求項3ないし請求項6のいずれか一項に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
【請求項8】
前記化合物(A)の含有割合が20質量%以上50質量%以下である、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
【請求項9】
前記硬化性モノマー(B)の含有割合が20質量%以上50質量%以下である、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の熱硬化型水分捕獲体形成用組成物を用いて形成された水分捕獲体。
【請求項11】
請求項10に記載の水分捕獲体を備えた電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−108057(P2013−108057A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182969(P2012−182969)
【出願日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】