説明

燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物及びそれを成形して得た燃料配管部品

【課題】従来の脂肪族ポリアミド樹脂に比較して、十分な相対粘度ηrが達成され、成形可能温度幅が広く、耐熱性、溶融成形性、及び成形サイクルが低減でき、低吸水性を損なうことなく、耐薬品性、耐加水分解性、燃料バリア性に優れたポリアミド樹脂を含む燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物と、それを成形して得られる、耐低温衝撃性等の環境耐性、耐薬品性及び燃料の不透過性に優れる燃料配管部品とを提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂(成分A)を含む燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物であって、前記成分Aが、ジカルボン酸由来の単位とジアミン由来の単位とが結合してなり、前記ジカルボン酸が蓚酸(化合物a)を含み、前記ジアミンが1,6−ヘキサンジアミン(化合物b)及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(化合物c)を含み、前記化合物bと前記化合物cのモル比が99:1〜50:50である燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物及びそれを成形して得た燃料配管部品に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、ポリアミド樹脂の呼称は、JIS6920−1に基づく場合もある。
ナイロン6(PA11)、ナイロン66(PA12)などに代表される結晶性ポリアミドは、その優れた特性と溶融成形の容易さから、衣料用、産業資材用繊維、あるいは汎用のエンジニアリングプラスチックとして広く用いられているが、一方では吸水による物性変化、酸、高温のアルコール、熱水中での劣化などの問題点も指摘されており、より寸法安定性、耐薬品性に優れたポリアミドへの要求が高まっている。
【0003】
ジカルボン酸成分として蓚酸を用いるポリアミド樹脂はポリオキサミド樹脂と呼ばれ、同じアミノ基濃度の他のポリアミド樹脂と比較して融点が高いこと、吸水率が低いことが知られ(特許文献1)、吸水による物性変化が問題となっていた従来のポリアミドが使用困難な分野での活用が期待される。
【0004】
これまでに、ジアミン成分として種々の脂肪族直鎖ジアミンを用いたポリオキサミド樹脂が提案されている。例えば、
非特許文献1には、ジアミン成分として1,6−ヘキサンジアミンを用いたポリオキサミド樹脂が開示され、
非特許文献2には、ジアミン成分が1,9−ノナンジアミンであるポリオキサミド樹脂(以下、PA92ともいう)が開示され、
特許文献2には、種々ジアミン成分と、ジカルボン酸エステルとして蓚酸ジブチルを用いたポリオキサミド樹脂が開示され、
特許文献3には、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンの2種のジアミンを特定の比率で用いたポリオキサミド樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−57033号公報
【特許文献2】特表平5−506466号公報
【特許文献3】WO2008/072754号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S.W.Shalaby,J.Polym.Sci.,11,1(1973)
【非特許文献2】L.Franco,et al.,Macromolecules,31,3912(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
非特許文献1に開示されるポリオキサミド樹脂については、融点(約320℃)が熱分解温度(窒素中の1%重量減少温度;約310℃)と近いため、溶融重合、溶融成形が困難であり実用に耐えうるものではなく、
非特許文献2に開示されるポリオキサミド樹脂については、蓚酸源として蓚酸ジエチルを用いた場合の製造法とその結晶構造を開示しているが、ここで得られるPA92は固有粘度が0.97dL/g、融点が246℃のポリマーであり、強靭な成形体が成形出来ない程度の低分子量体しか得られておらず、
特許文献2に開示されるポリオキサミド樹脂については、固有粘度が0.99dL/g、融点が248℃のPA92を製造したことが示されているが、強靭な成形体が成形出来ない程度の低分子量体しか得られていないという問題点があり、
特許文献3に開示されるポリオキサミド樹脂については、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンの2種のジアミンを特定の比率で用いたポリオキサミド樹脂が示されているが、これらポリオキサミド樹脂は成形可能温度幅が広く、成形加工性に優れ、かつ低吸水性、耐薬品性、耐加水分解性、燃料バリア性などにも優れるが、融点が240℃前後であり、成形サイクル性と高融点であることが要求される電気・電子機器用途に対しては、耐熱性がやや劣る。
【0008】
従来の樹脂製の燃料配管部品は、ガソリン、アルコール/ガソリン混合燃料等の燃料の壁面透過性が大きく、ガソリン、アルコール/ガソリン混合燃料等の空気中への拡散による大気汚染、ならびに自動車燃費の悪化という問題があるため、より高い燃料の不透過性が求められている。
また、燃料配管部品においても、従来のポリアミド樹脂は、吸水による物性変化、酸、高温のアルコール、熱水中での劣化などの問題点も指摘されており、またより耐薬品性、寸法安定性に優れたポリアミド樹脂への要求もある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、
従来のポリオキサミド樹脂と比較して、
窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で測定した示差走査熱量法により測定した融点Tm(℃)(以下、融点Tmともいう)と
窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で測定した熱重量分析における1%重量減少温度Td(℃)(熱分解温度)との温度差(Td−Tm)(℃)(以下、温度差(Td−Tm)ともいう)から見積もられる成形可能温度幅が広く、
融点Tmから見積もられる耐熱性に優れ、
適度な溶融粘度を有し溶融成形性に優れ、成形サイクルが低減でき、
脂肪族直鎖ポリオキサミド樹脂に見られる低吸水性を損なうことなく、従来の脂肪族ポリアミド樹脂に比較して、耐薬品性、耐加水分解性、燃料バリア性に優れた成形体を成形できるポリアミド樹脂を含む燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物と、それを成形して得られる、耐低温衝撃性等の環境耐性、耐薬品性及び燃料の不透過性に優れる燃料配管部品とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)ポリアミド樹脂(成分A)を含む燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Aが、ジカルボン酸由来の単位とジアミン由来の単位とが結合してなり、
前記ジカルボン酸が蓚酸(化合物a)を含み、
前記ジアミンが1,6−ヘキサンジアミン(化合物b)及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(化合物c)を含み、
前記化合物bと前記化合物cのモル比が99:1〜50:50である燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物、及び
(2)上記(1)記載の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物を成形して得た燃料配管部品
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、
従来のポリオキサミド樹脂と比較して、
温度差(Td−Tm)から見積もられる成形可能温度幅が広く、
融点Tmから見積もられる耐熱性、および
温度差(Tm−Tc)から見積もられる溶融成形性に優れ、
脂肪族直鎖ポリオキサミド樹脂に見られる低吸水性を損なうことなく、従来の脂肪族ポリアミド樹脂に比較して、耐薬品性、耐加水分解性、燃料バリア性に優れた成形体を成形できるポリアミド樹脂を含む燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物と、それを成形して得られる、耐低温衝撃性等の環境耐性、耐薬品性及び燃料の不透過性に優れる燃料配管部品とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】クイックコネクターの例
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔成分A〕
(1)成分Aの構成
本発明におけるポリアミド樹脂である成分Aは、
ジカルボン酸成分が蓚酸であり、ジアミン成分が1,6−ヘキサンジアミン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミンからなる、即ち、
ジカルボン酸由来の単位とジアミン由来の単位とが結合してなるポリアミド樹脂であって、
前記ジカルボン酸が蓚酸(化合物a)を含み、
前記ジアミンが1,6−ヘキサンジアミン(化合物b)及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(化合物c)を含み、
前記化合物bと前記化合物cのモル比が99:1〜50:50であり、
好ましくは、96%硫酸を溶媒とし、濃度が1.0g/dlの前記成分Aの溶液を用いて25℃で測定した相対粘度ηrが1.8〜6.0である。
【0014】
成分Aは、化合物a、b及びcを用いて、好ましくはこれらの混合物を用いて重縮合することで、高分子量で、高融点で、融点と熱分解温度の差が大きく溶融成形性に優れ、さらに直鎖ポリオキサミド樹脂に見られる低吸水性を損なうことなく、従来のポリアミドに比較して耐薬品性、耐加水分解性ならびに燃料バリア性に優れる。
【0015】
成分Aは、耐薬品性、耐加水分解性及び燃料バリア性を確保する観点から、化合物bと化合物cのモル比は、
好ましくは、99:1〜55:45モル%未満であり、
より好ましくは、99:1〜60:40モル%である。
なお、以下、化合物b及び化合物cのモル比は、成分A中の化合物b由来の単位と化合物c由来の単位のモル比も意味する。
【0016】
成分Aのアミノ末端基濃度は、成形加工性、機械的性質、成形外観などの観点から、
好ましくは1.5×10−5〜1.0×10−4eq/gであり、
より好ましくは1.3×10−5〜1.0×10−4eq/gであり、
更に好ましくは7.0×10−4〜1.0×10−4eq/gである。
成分Aのアミノ末端基濃度は、
分子量を小さく重合するとすることによって、増やすことができ、
分子量を大きく重合するとすることによって、減らすことができる。
成分Aのアミノ末端基濃度は、120℃のフェノール:メタノール=9:1混合溶液に成分Aを溶解し、0.05NのHClで、指示薬としてチモールブルーを用い中和的定により求めた。
【0017】
成分Aの製造で、化合物a(蓚酸)を直接原料として使用すると、化合物a(蓚酸)そのものは熱分解してしまい、成分Aの融点がその熱分解温度を超えることから、製造時には蓚酸源化合物(以下、蓚酸源ともいう)を用い、蓚酸源由来の蓚酸とジアミンとを重縮合して得る。この蓚酸は、蓚酸ジエステル等の蓚酸源由来のものであり、これらはアミノ基との反応性を有するものであればよい。
蓚酸源として、重縮合反応における副反応を抑制する観点から蓚酸ジエステルが好ましく、蓚酸ジメチル、蓚酸ジエチル、蓚酸ジn−(またはi−)プロピル、蓚酸ジn−(またはi−、またはt−)ブチル等の脂肪族1価アルコールの蓚酸ジエステル、蓚酸ジシクロヘキシル等の脂環式アルコールの蓚酸ジエステル、蓚酸ジフェニル等の芳香族アルコールの蓚酸ジエステル等が挙げられる。
蓚酸ジエステルの中でも炭素原子数が3を超える脂肪族1価アルコールの蓚酸ジエステル、脂環式アルコールの蓚酸ジエステル、芳香族アルコールの蓚酸ジエステルがさらに好ましく、
その中でも蓚酸ジブチル及び蓚酸ジフェニルがさらに好ましく、
蓚酸ジブチルがさらに好ましい。
【0018】
(2)成分Aの相対粘度
成分Aは、
カルボン酸成分として化合物aである蓚酸を用い、
ジアミン成分として、化合物bである1,6−ヘキサンジアミンと、化合物cである2−メチル−1,5−ペンタンジアミンを重縮合することで、融点が好ましくは200〜330℃の範囲にすることができ、融点が330℃を超える化合物aと化合物bとを重縮合して得られるポリアミド樹脂(以下、比較成分A2ともいう)に比べ、後述する成分Aの後重合工程での溶融重合において、副反応が起こり高分子量化を阻害するような過度の高温条件にする必要がないため、高分子量化(相対粘度を増加させること)が可能である。
従って、成分Aは、従来のポリアミド樹脂に比べて相対粘度を増大できるので、優れた溶融成形性を有する。
溶融成形後の成形物が脆くなり物性が低下する傾向を避けることと、溶融成形時の溶融粘度が高くなり成形加工性が悪くなる傾向を避ける観点と、相対粘度ηrと溶融粘度が一定以上に高く、過度に高くないことが好ましいとされる自動車部材や電気・電子部品のような用途に好適であるという観点から、成分Aの濃度が1.0g/dlの96%濃硫酸溶液を用い、25℃で測定した相対粘度ηrは、
好ましくは1.8〜6.0であり、好ましくは1.8〜4.5であり、より好ましくは1.8〜3.0であり、更に好ましくは1.85〜2.5、更に好ましくは1.85〜2.2であるようにすることができる。
なお、後述する成分Aの後重合工程での溶融重合において、減圧度を上げることで、相対粘度ηrを増大することができる。
【0019】
また、同様の観点から、成分Aの溶融粘度は、好ましくは100〜700Pa・s、より好ましくは110〜600Pa・s、更に好ましくは120〜500Pa・s、更に好ましくは130〜400Pa・s、更に好ましくは150〜300Pa・s、更に好ましくは160〜220Pa・s、更に好ましくは170〜200Pa・sである。
【0020】
さらに、同様の観点から、成分Aの数平均分子量は、好ましくは10000〜50000であり、より好ましくは11000〜40000であり、更に好ましくは11000〜35000である。
【0021】
数平均分子量(Mn)は、1H−NMRスペクトルから求めたシグナル強度をもとに、例えば、蓚酸源として蓚酸ジブチル、ジアミン成分として1,6−ヘキサンジアミン(化合物b)と2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(化合物c)を90:10のモル%比で用いて製造したポリアミド〔以下、PX6−2(化合物b/化合物c=90/10)と略称する〕の場合は下式により算出した。
Mn=np×170.21+n(NH)×115.20+n(OBu)×129.13+n(NHCHO)×29.14
なお、1H−NMRの測定条件は以下の通りである。
・使用機種:ブルカー・バイオスピン社製 AVANCE500
・溶媒:重硫酸
・積算回数:1024回
また、前記式中の各項は以下のように規定される。
・np=Np/[(N(NH)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(NH)=N(NH)/[(N(NH)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(NHCHO)=N(NHCHO)/[(N(NH)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・n(OBu)=N(OBu)/[(N(NH)+N(NHCHO)+N(OBu))/2]
・Np=Sp/sp−N(NHCHO)
・N(NH)=S(NH)/s(NH
・N(NHCHO)=S(NHCHO)/s(NHCHO)
・N(OBu)=S(OBu)/s(OBu)
但し、各項は以下の意味を有する。
・Np:PA62(化合物B/化合物C=90/10)の末端ユニットを除いた、分子鎖中の繰り返しユニット総数。
・np:分子1本当たりの分子鎖中の繰り返しユニット数。
・Sp:PX6−2(化合物b/化合物c=90/10)の末端を除いた、分子鎖中の繰り返しユニット中のオキサミド基に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(3.1ppm付近)の積分値。
・sp:積分値Spにカウントされる水素数(4個)。
・N(NH):PX6−2(化合物b/化合物c=90/10)の末端アミノ基の総数。
・n(NH):分子1本当たりの末端アミノ基の数。
・S(NH):PX6−2(化合物b/化合物c=90/10)の末端アミノ基に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(2.6ppm付近)の積分値。
・s(NH):積分値S(NH)にカウントされる水素数(2個)。
・N(NHCHO):PX6−2(化合物b/化合物c=90/10)の末端ホルムアミド基の総数。
・n(NHCHO):分子1本当たりの末端ホルムアミド基の数。
・S(NHCHO):PX6−2(化合物b/化合物c=90/10)のホルムアミド基のプロトンに基づくシグナル(7.8ppm)の積分値。
・s(NHCHO):積分値S(NHCHO)にカウントされる水素数(1個)。
・N(OBu):PX6−2(化合物b/化合物c=90/10)の末端ブトキシ基の総数。
・n(OBu):分子1本当たりの末端ブトキシ基の数。
・S(OBu):PX6−2(化合物b/化合物c=90/10)の末端ブトキシ基の酸素原子に隣接するメチレン基のプロトンに基づくシグナル(4.1ppm付近)の積分値。
・s(OBu):積分値S(OBu)にカウントされる水素数(2個)。
【0022】
(3)成分Aの物性
成分Aは、さらに、化合物b及びcの重縮合比率を変更することで、
温度差(Td−Tm)を、比較成分A2に比べて大きく、化合物aと化合物cとを重縮合して得られるポリアミド樹脂(以下、比較成分A1ともいう)に比べて小さく、
融点Tmを、比較成分A2に比べて低く、比較成分A1に比べて高く、
1%重量減少温度Tdを、比較成分A1に比べて高く、
飽和吸水率を、比較成分A2に比べて小さく、比較成分A1に比べて大きくすることができる。
【0023】
即ち、成分Aは、従来のポリオキサミド樹脂と比較して、
相対粘度ηr(高分子量化)、
温度差(Td−Tm)から見積もられる成形可能温度幅、
融点Tmから見積もられる耐熱性、
溶融粘度から見積もられる溶融成形性、及び
低吸水性のいずれをも十分に確保することができる。
【0024】
成分Aは、成形可能温度幅、耐熱性、溶融成形性及び低吸水性のいずれをも十分に確保した上で、化合物bの重合比率(モル比)の高さに由来する耐薬品性、耐加水分解性及び燃料バリア性に特に寄与する。
自動車用途では融雪剤として用いられる塩化カルシウムに対する耐性が要求される観点から、成分Aは、耐塩化カルシウム性にも優れる。
【0025】
成分Aは、成形可能温度幅、耐熱性、溶融成形性及び低吸水性のいずれをも十分に確保する観点から、
Tmは、好ましくは260〜330℃であり、より好ましくは265〜330℃であり、
Tdは、好ましくは341〜370℃、より好ましくは345〜370℃、更に好ましくは350〜365℃であり、
Tcは、好ましくは231〜305℃、より好ましくは231〜303℃であり、
温度差(Td−Tm)は、好ましくは10〜95℃、より好ましくは20〜95℃、更に好ましくは25〜95℃であり、
飽和吸水率は、好ましくは0〜2.4、より好ましくは1〜2.4、更に好ましくは2〜2.4、更に好ましくは2.3〜2.4である。
【0026】
(4)成分Aの製造
成分Aは、ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができるが、高分子量化および生産性の観点から、
好ましくは、ジアミン及び蓚酸ジエステルをバッチ式又は連続式で重縮合反応させることにより得ることであり、
より好ましくは、ジアミン及び蓚酸ジエステルを前重縮合工程と後重縮合工程からなる二段重合法もしくは、WO2008−072754公報記載の加圧重合法によって得ることである。
更に好ましい二段重合法及び加圧重合法としては、具体的には、以下の操作で示される。
【0027】
(4−1)二段重合法
(i)前重縮合工程:まず反応器内を窒素置換した後、ジアミン(化合物b及びc)及び化合物aの蓚酸源である蓚酸ジエステルを混合する。混合する場合にジアミン及び蓚酸ジエステルが共に可溶な溶媒を用いても良い。ジアミン成分及び蓚酸源成分が共に可溶な溶媒としては、トルエン、キシレン、トリクロロベンゼン、フェノール、トリフルオロエタノールなどを用いることができ、特にトルエンを好ましく用いることができる。例えば、ジアミンを溶解したトルエン溶液を50℃に加熱した後、これに対して蓚酸ジエステルを加える。
このとき、蓚酸ジエステルと上記ジアミンの仕込み比は、高分子量化の観点から、蓚酸ジエステル/上記ジアミンで、0.8〜1.5(モル比)、好ましくは0.91〜1.1(モル比)、更に好ましくは0.99〜1.01(モル比)である。
【0028】
このように仕込んだ反応器内を攪拌及び/又は窒素バブリングしながら、常圧下で昇温する。反応温度は、最終到達温度が80〜150℃、好ましくは100〜140℃の範囲になるように制御するのが好ましい。最終到達温度での反応時間は3時間〜6時間である。
【0029】
(ii)後重縮合工程:更に高分子量化を図るために、前重縮合工程で生成した重合物を常圧下において反応器内で徐々に昇温する。昇温過程において前重縮合工程の最終到達温度、すなわち好ましくは80〜150℃から、最終的に、
好ましくは295℃以上350℃以下、より好ましくは298℃以上345℃以下、更に好ましくは298℃以上340℃以下の温度範囲にまで到達させる。
昇温時間を含めて好ましくは1〜8時間、より好ましくは2〜6時間保持して反応を行うことが好ましい。さらに後重合工程において、必要に応じて減圧下での重合を行うこともできる。減圧重合を行う場合の好ましい最終到達圧力は13.3Pa〜0.1MPaである。
【0030】
(4−2)加圧重合法
まずジアミンを耐圧容器内に入れ窒素置換した後、封圧下において反応温度まで昇温する。その後、反応温度において封圧状態を保ったまま蓚酸化合物を耐圧容器内に注入し、重縮合反応を開始させる。反応温度は、ジアミンと蓚酸化合物の反応によって生じるポリアミドが、スラリー状、もしくは溶液状態を維持でき、かつ熱分解しない温度であれば特に制限されない。例えば、成分aの場合、上記反応温度は、150℃から250℃が好ましい。ここで、蓚酸ジブチルとジアミンの仕込み比は、蓚酸ジブチルのモル量/ジアミンの総モル量で、0.8〜1.5(モル比)、好ましくは0.91〜1.1(モル比)、更に好ましくは0.99〜1.01(モル比)である。
次に耐圧容器内を封圧状態に保ちながらポリアミド樹脂の融点以上かつ熱分解しない温度以下に昇温する。例えば、成分aの場合、融点は245〜300℃であることから、250℃以上350℃以下、好ましくは255℃以上340℃以下、更に好ましくは260℃以上335℃以下に昇温する。所定温度に到達するまでの耐圧容器内の圧力は、およそ生成するアルコールの飽和蒸気圧から0.1MPa、好ましくは1MPaから0.2MPaに調整する。所定温度に到達後は、生成したアルコールを留去しながら放圧し、必要に応じて常圧窒素気流下もしくは減圧下において継続して重縮合反応を行う。減圧重合を行う場合の好ましい最終到達圧力は13.3Pa〜0.1MPaである。
【0031】
(5)成分Aにおけるジカルボン酸として使用できる成分
成分Aにおいて、本発明の効果を損なわない範囲で化合物a以外の他のジカルボン酸成分を使用する事が出来る。
化合物a(蓚酸)以外の他のジカルボン酸成分としては、
マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸、
また、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、
さらに、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸
などを単独で、あるいはこれらの任意の混合物を重縮合反応時に添加することもできる。
さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
他のジカルボン酸成分を使用する場合、その割合は、化合物a(蓚酸)に対して、25モル%以下であり、15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、0モル%(即ち、ジカルボン酸成分が化合物aだけからなること)がさらに好ましい。なお、化合物a(蓚酸)に対する他のジカルボン酸成分のモル比は、成分A中の、化合物a由来の単位と他のジカルボン酸成分由来の単位のモル比も意味する。
【0032】
成分Aにおいて、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物b及びc以外の他のジアミン成分を使用する事が出来る。
1,6−ヘキサンジアミン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミン以外の他のジアミン成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの脂肪族ジアミン、
さらに、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン、
さらにp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミン、
などを単独で、あるいはこれらの任意の混合物を重縮合反応時に添加することもできる。
他のジアミン成分を使用する場合、その割合は、化合物b及びcに対して25モル%以下であり、15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましく、0モル%(即ち、ジアミン成分が化合物b及びcだけからなること)がさらに好ましい。なお、化合物b及びcに対する他のジアミン成分のモル比は、成分A中の、化合物b及びc由来の単位と他のジアミン成分由来の単位のモル比も意味する。
【0033】
(6)成分Aの成形加工
成分Aの成形方法としては、射出、押出、中空、プレス、ロール、発泡、真空・圧空、延伸などポリアミドに適用できる公知の成形加工法はすべて可能であるが、成形サイクル性を短縮する観点から、中でも、燃料配管部品による成形加工において好適であり、これらの成形法によってフィルム、シート、成形品、繊維などに加工することができる。
【0034】
〔燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物〕
(成分Aの含有量)
本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)は、成形時の生産性を向上するための良好な成形可能温度幅、耐熱性、溶融成形性(以下、熱特性ともいう)を確保し、燃料配管部品品の耐低温衝撃性等の環境耐性、耐薬品性及び液体、蒸気及び/又は気体の不透過性を確保する観点から、
樹脂組成物中の成分Aの含有量が、好ましくは、50〜100質量%、より好ましくは、55〜100質量%、更に好ましくは、60〜100質量%である。
【0035】
(その他の成分)
燃料配管部品用途では、その他の成分として以下を含むことが好ましい。
【0036】
(1)成分A以外のポリマー
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、各ポリマーの特性を利用するために、
成分A以外の他のポリアミド類、例えば、ポリオキサミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド及び脂環式ポリアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアミド、及び/又はポリアミド外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマー、エラストマーを含めることができる。
【0037】
成分A以外のポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、成分A100質量部に対して、好ましくは0〜50質量部、より好ましくは0〜40質量部、更に好ましくは0〜30質量部である。
【0038】
(2)添加剤
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、添加剤を含むことができる。添加剤として、例えば、顔料、染料、着色剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、銅化合物等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、ガラス繊維、潤滑剤、フィラー、補強繊維、補強粒子、発泡剤等を挙げることができる。
【0039】
上記成分A以外のポリマー及び/又は添加剤の添加方法は、それぞれを成分Aに分散させることができる方法であれば、特に制限されるものではなく、その効果を損なわない任意の時点において、成分Aに添加することができる。
例えば、成分A以外のポリマー及び/又は添加剤を、
成分Aの重縮合反応時、またはその後に添加することもできる。
【0040】
(3)層状珪酸塩
本発明の樹脂組成物は、成分Aのみで、耐低温衝撃性等の環境耐性、耐薬品性及び液体、蒸気及び/又は気体の不透過性に優れる燃料配管部品を作製することができるが、さらに高精度の寸法安定性が求められる用途においては、本発明の樹脂組成物に層状珪酸塩をさらに含ませることができる。
また、層状珪酸塩を添加することにより、本発明の樹脂組成物から作製した燃料配管部品の剛性、耐低温衝撃性等の環境耐性、耐薬品性及び液体、蒸気及び/又は気体の不透過性を向上させることができる。
【0041】
上記層状珪酸塩は、一辺の長さが0.002〜1μmで、厚さが6〜20Åである平板状のものであることが好ましい。また、上記層状珪酸塩は、成分Aの中で、各層が約20Å以上の層間距離を保ち、均一に分散されるものであることが好ましい。
【0042】
ここで、「層間距離」とは、平板状をなす層状珪酸塩の各重心の間の距離をいい、「均一に分散する」とは、各層が主にランダムな状態で存在し、層状珪酸塩の50質量%以上、好ましくは70質量%以上が、複層物を形成することなく単層に分散していることをいう。
【0043】
上記層状珪酸塩の量は、当該層状珪酸塩の効果が発揮される量であれば、特に制限されるものではないが、燃料配管部品の剛性、耐候性及び/又は耐熱性、並びに液体又は蒸気に対するバリア性を向上させる観点と、樹脂組成物の成形加工性と耐衝撃性を確保する観点とから、成分A100質量部に対して、
好ましくは0.05〜10質量部、
より好ましくは0.05〜8質量部、
更に好ましくは0.05〜5質量部である。
【0044】
上記層状珪酸塩の原料としては、珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウムの層から構成される層状フィロ珪酸鉱物、すなわち、珪酸アルミニウム質フィロ珪酸塩又は珪酸マグネシウム質フィロ珪酸塩を例示することができる。具体的には、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト等を例示することができ、これらは天然のものであっても、合成されたものであってもよい。
【0045】
また、上記層状珪酸塩を成分Aに分散させるために、通常、膨潤化剤が用いられる。当該膨潤化剤は、粘土鉱物の層間を拡げる役割と、粘土鉱物に層間ポリマーを取り込む力を与える役割とを有するものである。上記膨潤化剤としては、本発明の場合には、1,6−ヘキサンジアミン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミンを用いることが好ましい。
【0046】
なお、上記層状珪酸塩は、ミキサー、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ジェットミル、叩解機等を用いて粉砕し、予め所望の形状及びサイズのものとしておくことが好ましい。
【0047】
上記層状珪酸塩を添加する方法は、上記層状珪酸塩が成分Aに均一に分散し得る方法である限り、特に制限はない。例えば、層状珪酸塩の原料が多層状粘土鉱物である場合には、特開昭62−74957号に開示されるように、層状珪酸塩を塩酸等によりイオン化し、ここに膨潤化剤、例えば、1,6−ヘキサンジアミン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミンを添加して、あらかじめ層状珪酸塩の各層の間隔を広げる。次いで、当該層の間に成分Aの原料を導入し、さらに当該層の間で上記原料を重合させることができる。
【0048】
また、膨潤化剤として有機化合物を用いて層間を約100Å以上に予め広げ、これを成分Aと溶融混合して、各層をポリアミド樹脂に分散させてもよい。
【0049】
(4)可塑剤
本発明のポリアミド樹脂組成物には、低温における耐衝撃性、および柔軟性付与の観点から、可塑剤を配合することが好ましい。
可塑剤としては、同様の観点から、
好ましくは、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド及び/又はp−ヒドロキシ安息香酸と炭素数6〜21の直鎖又は分岐鎖アルコールとのエステル(たとえば、2−エチルヘキシル、p−ヒドロキシベンゾエート)であり、
より好ましくは、ベンゼンスルホン酸ブチルアミドである。
【0050】
可塑剤の配合量は、燃料配管部品の安定な破壊圧力を確保し、ブリードアウトを抑制する観点から、本発明のポリアミド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、
好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部、更に好ましくは10〜15質量部である。
【0051】
(5)導電性充填材
【0052】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、燃料配管部品が電気運搬回路を形成することにより、燃料等の流体の搬送時に発生する静電気の散逸が可能になり、スパークによる部品の破損や爆発防止が可能となるという観点から、導電性充填材を配合することが好ましい。
例えば、燃料配管部品が導電化された継手と導電化されたチューブを接合されて電気運搬回路を形成するような場合が好ましい。
【0053】
導電性とは、たとえば、ガソリンのような引火性の流体が樹脂のような絶縁体に連続的に接触した場合、静電気が蓄積してスパークが発生し、燃料が引火する可能性があるが、この静電気が蓄積しない程度の電気特性をいう。これにより、燃料等の流体の搬送時に発生する静電気によるスパークの発生を防止可能になる。
【0054】
本発明でいう導電性充填材とは、樹脂に導電性能を付与するために添加されるすべての充填材が包含され、粒状、フレーク状及び繊維状フィラーなどが挙げられる。
【0055】
粒状フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等が好適に使用できる。フレーク状フィラーとしては、アルミフレーク、ニッケルフレーク、ニッケルコートマイカ等が好適に使用できる。
また、繊維状フィラーとしては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維、炭素被覆セラミック繊維、カーボンウィスカー、アルミ繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維といった金属繊維等が好適に使用できる。
繊維状フィラーは、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる燃料配管部品の機械的物性を向上する観点からも好ましい。
これらの中では、炭素繊維並びにカーボンブラック好適に使用できる。
【0056】
カーボンブラックには、導電性付与に一般的に使用されているカーボンブラックはすべて包含される。
好ましいカーボンブラックとしては、アセチレンガスを完全燃焼して得られるアセチレンブラックや、原油を原料にファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラック等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
またカーボンブラックは、その平均粒径、比表面積、DBP吸油量、灰分などの特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。
そのカーボンブラックの特性に特に制限は無いが、良好な鎖状構造を有し、凝集密度の大きいものが好ましい。
カーボンブラックの大きさは、耐衝撃性を安定に確保しつつ、より少量で優れた電気伝導度を得る観点から、
平均粒径が、
500nm以下であることが好ましく、
5〜100nmであることがより好ましく、
10〜70nmであることがさらに好ましく、
比表面積(BET法)が、
10〜1500m/g以上であることが好ましく、
300〜1500m/g以上であることがより好ましく、
500〜1500m/gであることがさらに好ましく、
DBP(ジブチルフタレ−ト)吸油量が、
50〜500ml/100g以上であることが好ましく、
100〜500ml/100gであることがより好ましく、
300〜500ml/100g以上であることがさらに好ましい。
平均粒径は、電子顕微鏡法により、任意の100粒を選び、それらの粒径の算術平均値とした。
DBP吸油量は、ASTM−D2414に定められた方法で測定する。
【0058】
これら、導電性充填材は、チタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0059】
導電性充填材の配合量は、用いる導電性充填材の種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度などとのバランスの観点から、
ポリアミド樹脂を含む樹脂全体100質量部に対して、2〜30重量部が好ましく選択される。
【0060】
またかかる導電性充填材は、十分な帯電防止性能を得る意味で、
それを配合したポリアミド樹脂組成物を溶融押出して得られる燃料配管部品の体積抵抗が、好ましくは109Ωcm以下、より好ましくは106Ωcm以下となる程度の量を配合する。
【0061】
導電性充填材の配合量は、用いる導電性充填材の種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度などとのバランスの観点から、
ポリアミド樹脂を含む樹脂全体100質量部に対して、2〜30重量部が好ましく選択される。
【0062】
(6)有機繊維及び無機充填材
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる燃料配管部品の機械的物性を向上する観点から、好ましくは燃料配管用継手の用途において、有機繊維及び/又は無機充填材(但し、導電性充填材は除く)を配合することが好ましい。
【0063】
有機繊維としては、アラミド繊維等が挙げられる。
【0064】
無機充填材としては、ガラス繊維や炭素繊維、ワラストナイトやチタン酸カリウムウイスカー等の無機繊維、
モンモリロナイト、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、シリカ、クレイ、カオリン、ガラスパウダー、ガラスビーズ等の無機フィラーが用いられる。
【0065】
無機繊維としては、
繊維径が、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.03〜30μm、更に好ましくは0.05〜20μm、
繊維長が、好ましくは0.1〜15mm、より好ましくは0.5〜15mm、更に好ましくは0.5〜10mm、
のものを使用することが好ましい。
但し、本発明のポリアミド樹脂組成物を溶融混錬して燃料配管部品を成形する際に、無機繊維が切断等して、本発明のポリアミド樹脂組成物又は燃料配管部品内では、
無機繊維の繊維径が0.01〜50μm、好ましくは0.03〜30μm、
無機繊維の繊維長が、0.5〜10mm、好ましくは0.7〜5mm程度になっている場合がある。
【0066】
無機繊維では、ガラス繊維が、補強効果が高く好適に使用される。
ガラス強化することにより、本発明の燃料配管部品の締結部のクリープ耐性が高く変形が発生しなくなり、永続的なシールが可能となる。
【0067】
本発明の燃料配管部品、好ましくは燃料配管用継手を成形するための本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物において、有機繊維及び/又は無機充填材の使用量は、本発明の燃料配管部品の成形性、表面状態及び機械的強度を安定に確保する観点から、本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物中で、好ましくは5〜65重量%、より好ましくは10〜60重量%、更に好ましくは10〜50重量%である。
【0068】
〔燃料配管部品〕
本発明の燃料配管部品は、本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる、液体又は蒸気態様の燃料のバリア性を必要とする各種用途に適用することができる。
適用可能な用途としては、例えば、ガソリンタンク、アルコールタンク、フユーエルチューブ、ブレーキオイルタンク、クラッチオイルタンク、パワーステアリングオイルタンク等の燃料タンクそのもの、また、
フユーエルストレーナー、クーラー用フルオロカーボンチューブ、フルオロカーボンタンク、キャニスター、エアークリーナー、吸気系部品、タイヤインナーライナー、タンクバルブ、フューエルデリバリーパイプ、クイックコネクター、EGR部品、オイルストレーナー等の燃料タンク用部品、燃料チューブ、燃料配管用継手が好ましく、
燃料タンク用部品、燃料チューブ、燃料配管用継手がより好ましい。
【0069】
(1)燃料タンク用部品
本発明の燃料タンク用部品は、本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物を、射出、押出、中空、プレス、ロール、発泡、真空・圧空、延伸など、その用途に応じた従来公知の成形方法を用いて成形し、振動溶着工法、ダイスライドインジェクション、ダイロータリーインジェクションや二色成形といった射出溶着工法、超音波溶着工法、スピン溶着工法、熱板溶着工法、熱線溶着工法、レーザー溶着工法、高周波誘導加熱溶着工法などを用いて対象物に適用できる。なお、燃料タンク用部品の形成時において、ポリアミド樹脂の温度は、該ポリアミド樹脂を変質させない温度に維持することが好ましい。
【0070】
(2)燃料チューブ
本発明の燃料配管部品は、本発明のポリアミド樹脂を成形して得られ、好ましくは、本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物をからなる層(以下、層1ともいう)を有することが好ましい。
【0071】
本発明の燃料配管部品は、層1だけからなる単層チューブでもよいが、層1と層1以外の層を1以上積層した多層チューブとして用いることが好ましい。
実用の燃料配管部品では多層チューブが多く用いられている。
【0072】
本発明の燃料配管部品を多層チューブとする場合、燃料の不透過性を安定に確保し、燃料配管部品に求められる多くの要求特性を同時に満たす観点から、層1の厚さは、燃料チューブの肉厚の20〜80%が好ましく、30〜70%がより好ましい。
【0073】
燃料配管部品の外径は、種々の燃料の流量を考慮して設計でき、肉厚は、種々の燃料の透過性が増大せず、また燃料チューブの破壊圧力を維持できる厚さであり、かつ燃料チューブの組み付け作業容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持することができる薄さで設計することができるが、
外径は、好ましくは4〜15mm、より好ましくは3〜13mm、
肉厚は、好ましくは0.5〜2mm、より好ましくは0.7〜1.8mmである。
【0074】
本発明の燃料配管部品の層1以外の層としては、成形性やバリア性の観点から、
好ましくは、フッ素樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、PA11樹脂及びPA12からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂、
より好ましくはPA11樹脂及びPA12からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂と可塑剤(好ましくは、前述の好適可塑剤)とを含む樹脂組成物からなることが好ましい。
可塑剤の含有量は、燃料配管部品の安定な破壊圧力を確保し、ブリードアウトを抑制する観点から、層1以外の層の樹脂成分100質量部に対して、
好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部、更に好ましくは10〜15質量部である。
【0075】
本発明の燃料配管部品を構成する少なくとも1つの層には、導電性向上の観点から、導電性充填材(好ましくは、前述の好適な導電性充填材)を、前述の好適配合量で配合されていることが好ましい。
【0076】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTEF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等を挙げることができる。また、ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)のように一部に塩素を含んだ樹脂や、エチレン等との共重合体であってもよい。
【0077】
高密度ポリエチレン樹脂としては、力学特性を考慮すると平均分子量が20万〜30万前後のものが好ましい。高密度ポリエチレン樹脂は、低温脆化温度が−80℃以下であり、耐低温衝撃性が優れる。
【0078】
また、層1以外の層は、上記組成物層との接着性が悪い場合には、接着層を介して設けてもよい。
【0079】
本発明の燃料配管部品を製造する方法としては、押出成形が好ましく用いられ、多層燃料配管部品を製造する方法としては、例えば、構成する層の数又は材料の数に対応する数の押出機より押し出された溶融樹脂を、一つの多層チューブ用ダイスに導入し、ダイス内又はダイスを出た直後に各層を接着させ、その後通常のチューブ成形と同様にして製造する方法、また、一旦単層チューブを成形した後、そのチューブの外側又は内側に他の層をコーティングする方法等を挙げることができる。
【0080】
多層燃料チューブ等の多層チューブを製造する方法としては、例えば、
構成する層の数または材料の数に対応する数の押出機より押出された溶融樹脂を、1つの多層チューブ用ダイスに導入し、
ダイス内またはダイスを出た直後に各層を接着させ、
その後通常のチューブ成形と同様にして製造する方法、また、
一旦単層チューブを成形した後、
そのチューブの外側に他の層をコーティングする方法等を挙げることができる。
チューブの形状は直管であってもいいし、蛇腹状に加工されていても構わない。
直管の多層チューブに対しては、その外側に保護層を設けるようにしてもよく、
その形成材料としては、例えば、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコンゴム等のゴムを挙げることができる。
【0081】
例えば、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)の成形機を用いて、
本発明の樹脂組成物を押出温度340℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂を積層管状体に成形し、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、
本発明の樹脂組成物を成形してなる単層チューブを製造できる。
【0082】
例えば、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)の成形機を用いて、
本発明の樹脂組成物を押出温度340℃、
PA11を押出温度260℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形し、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、
本発明の樹脂組成物を成形してなる層1(内層)、
PA6を成形してなる層2(外層)とする2層ホースを製造できる。
【0083】
例えば、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)の成形機にて、
本発明の樹脂組成物を押出温度340℃、
PA11を押出温度260℃、
PA12を押出温度260℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタ−によって合流させ、積層管状体に成形し、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、
本発明の樹脂組成物を成形してなる層1(最内層)、
PA6を成形してなる層2(中間層)、
PA12を成形してなる層3(最外層)とする3層チューブを製造できる。
【0084】
例えば、多層チューブ成形用装置として、最内層用押出機、内層用押出機、中間層用押出機および外層用押出機を備え、この4台の押出機から吐出された樹脂をアダプターによって集めチューブ状に成形するダイス、チューブを冷却し寸法制御するサイジングダイおよび引取り機等からなる装置を用いることができる。
この場合、例えば、
最内層(層4)用押出機のホッパーに本発明のPA11を含む樹脂組成物を、
内層用(層3)押出機のホッパーにPA12を含む樹脂組成物を、
中間層(層1)用押出機のホッパーに本発明の樹脂組成物を、
外層用押出機のホッパーにその他の樹脂組成物を投入して多層チューブを作製できる。
【0085】
例えば、高温薬液及び/又はガス搬送用積層ホース製造法としては、
層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内あるいは外において同時に積層する方法(共押出法)、
あるいは、一旦、単層ホースあるいは、上記の方法により製造された高温薬液及び/又はガス搬送用積層ホースを予め製造しておき、外側に順次、必要に応じては接着剤を使用し、樹脂を一体化せしめ積層する方法(コーティング法)が挙げられる。
【0086】
燃料配管部品としては、自動車燃料配管系用のチューブ等の燃料配管部品が好ましく挙げられる。
【0087】
(3)燃料配管用継手
本発明の燃料配管用継手の製造は、本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物を射出成形法その他、樹脂製継手の製造方法として公知のいずれの方法によってもよい。
【0088】
本発明の燃料配管用継手の具体例としては、
好ましくは、燃料配管用クイックコネクターであり、
より好ましくは、燃料配管用クイックコネクターの筒状本体部が、本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる燃料配管用クイックコネクターが挙げられる。
【0089】
図1には、代表的なクイックコネクター1の断面を示す。
本図に示すクイックコネクター1は、スチールチューブ2の端部とプラスチックチューブ3の端部を相互結合している。スチールチューブ2の端部から離れた位置にあるフランジ形状部4とコネクター1のリテーナー5により着脱可能に係合し、O−リング6の列によって燃料を封止する。また、プラスチックチューブ3とコネクター1の接合部では、コネクター端部は径方向へ突出した複数のあご部8を有する細長いニップル7を形成している。
プラスチックチューブ3の端部はニップル7の外面に密着嵌合し、あご部8との機械的な接合とチューブとニップル間に備えたO−リング9により燃料を封止する。
【0090】
クイックコネクターの製造法としては、筒状本体やリテーナー、O−リング等各パーツを射出成形などで作成した後、所定の場所にアッセンブリーして組みたてる方法が挙げられる。
【0091】
上記クイックコネクターはチューブ、好ましくは樹脂を含む樹脂組成物から成形されるチューブ(以下、樹脂チューブともいう)と係合した形のアッセンブリーに組みたてられ、燃料配管部品として用いられる。
【0092】
クイックコネクターと樹脂チューブとは、嵌合により機械的に接合してもよいが、スピン溶着、振動溶着、レーザー溶着、超音波溶着等の溶着方法により接合することが好ましい。これにより気密性を向上させることができる。
【0093】
また、挿入後、オーバーラップする部分に十分締めつけ力をかけられる、厚肉の樹脂チューブや熱収縮チューブ、クリップ等を用い気密性を向上させることもできる。
【0094】
樹脂チューブは、その途中に波形領域を有するものであってもよい。このような波形領域とは、チューブ本体途中の適宜の領域を、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、またはコルゲート形状等に形成した領域である。かかる波形の折り目が複数個環状に配設されている領域を有することにより、その領域において環状の一側を圧縮し、他側を外方に伸張することができるので、応力疲労や層間の剥離を伴うことなく容易に任意の角度で曲げることが可能になる。
【0095】
樹脂チューブは、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物からなる層を含むことが好ましく、他にバリア層を含む多層構造をとることが好ましく、PBT、PBN、フッソ樹脂、PA92、クレーがナノ分散したナイロン、EVOHなどがバリア層を形成する樹脂として使用できる。
【0096】
また、液体燃料が流動するラインでは導電層が最内層に含まれている構成が静電気による破損防止のため好ましい。
【0097】
上記樹脂チューブの外周の全部または一部には、石ハネ、他部品との摩耗、耐炎性を考慮して、
エピクロルヒドリンゴム、NBR、NBRとポリ塩化ビニルの混合物、
クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、NBRとEPDMの混合物ゴム、
塩化ビニル系、オレフィン系、エステル系、アミド系等の熱可塑性エラストマー等
から構成されるソリッドまたはスポンジ状の保護部材(プロテクター)を配設することができる。
保護部材は既知の手法によりスポンジ状の多孔体としてもよい。多孔体とすることにより、軽量で断熱性に優れた保護部を形成できる。また、材料コストも低減できる。
あるいは、ガラス繊維などを添加してその強度を改善してもよい。
保護部材の形状は特に限定されないが、通常は、筒状部材または多層チューブを受け入れる凹部を有するブロック状部材である。
筒状部材の場合は、予め作製した筒状部材に多層チューブを後で挿入したり、あるいは多層チューブの上に筒状部材を被覆押出しして両者を密着して作ることができる。
両者を接着させるには、保護部材内面あるいは前記凹面に必要に応じ接着剤を塗布し、これに多層チューブを挿入または嵌着し、両者を密着することにより、多層チューブと保護部材の一体化された構造体を形成する。
【0098】
本発明におけるクイックコネクターは、O−リングや溶着等の気密性向上技術と合わせることにより、燃料ガソリン混合燃料等の壁面透過量が少なく、クリープ変形耐性等の特性に優れたものとすることができる。
したがって、本発明におけるクイックコネクターは、燃料バリア性に優れた樹脂チューブ、好ましくは本発明の燃料チューブと組み合わせて、厳しい燃料放出規制に対して柔軟に対応できる優れた燃料ラインシステムとして有用である。
【実施例】
【0099】
〔実施例及び比較例〕
実施例1−1〜5、実施例2−1〜4、実施例3−1、2及び5、実施例4−1〜4、
実施例6−1〜6の中間層及び外層並びに実施例6−7の外層
において、本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物を製造した。
実施例3−1、2及び5、実施例4−1〜4において、本発明の燃料配管部品である燃料配管部用継手を製造し、
実施例5−1〜5において、本発明の燃料配管部品である単層燃料チューブを製造し、
実施例6−1〜5において、本発明の燃料配管部品である3層燃料チューブを製造し、
実施例7において、本発明の燃料配管部品であるガソリンタンク及びフューエルチューブを製造した。
【0100】
(1)実施例1−1(成分A:PX6−1)
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、ダイアフラムポンプを直結した原料投入口、窒素ガス導入口、放圧口、圧力調節装置及びポリマー抜出し口を備えた内容積が約150リットルの圧力容器に、
化合物a(1,6−ヘキサンジアミン)15.407kg(132.58モル)と
化合物b(2−メチル−1,5−ペンタンジアミン)811.1g(6.98モル)の混合物(化合物aと化合物bのモル比が95:5)を仕込み、
圧力容器の内部を純度が99.9999%の窒素ガスで0.5MPaに加圧した後、
次に常圧まで窒素ガスを放出する操作を5回繰り返し、窒素置換を行った後、
封圧下、攪拌しながら系内を昇温した。
約30分間かけてシュウ酸ジブチルの温度を80℃にした後、
シュウ酸ジブチル28.230kg(139.56モル)をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。
供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。
その後、2時間かけて温度を330℃まで昇温した。
その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.75MPaに調節した。重縮合物の温度が330℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。
常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、4.5時間反応させた。
その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.1MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。
紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。
得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=1.95であった。
【0101】
(2)実施例1−2(成分A:PX6−2)
化合物a14.717kg(126.64モル)と化合物b1.635kg(14.07モル)の混合物(化合物aと化合物bのモル比が90:10)を仕込み、
シュウ酸ジブチル28.462kg(140.71モル)を仕込んだほかは、
実施例1と同様に反応を行ってポリアミドを得た。
得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーで、ηr=2.05であった。
【0102】
(3)実施例1−3(成分A:PX6−3)
化合物a12.16kg(104.64モル)と化合物b5.212kg(44.85モル)の混合物(化合物aと化合物bのモル比が70:30)を仕込み、
シュウ酸ジブチル30.238kg(149.49モル)をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。
供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。
その後、1.5時間かけて温度を290℃まで昇温した。
その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.5MPaに調節した。重縮合物の温度が290℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。
常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を310℃にし、310℃において1.5時間反応させた。
その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.1MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。
紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。
得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=2.40であった。
【0103】
(4)実施例1−4(成分A:PX6−4)
化合物a10.294kg(88.583モル)と化合物b6.863kg(59.057モル)の混合物(化合物aと化合物bのモル比が60:40)を仕込み、
シュウ酸ジブチル29.864kg(147.64モル)をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。
供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。
その後、1.5時間かけて温度を275℃まで昇温した。
その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.5MPaに調節した。
重縮合物の温度が270℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。
常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を290℃にし、290℃において2時間反応させた。
その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.1MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。
紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。
得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=2.68であった。
【0104】
(5)実施例1−5(成分A:PX6−5)
化合物a8.361kg(71.947モル)と化合物b8.361kg(71.947モル)の混合物(化合物aと化合物bのモル比が50:50)を仕込み、
シュウ酸ジブチル29.107kg(143.89モル)をダイアフラムフポンプにより流速1.49リットル/分で約17分間かけて反応容器内に供給すると同時に昇温した。
供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。
その後、1.5時間かけて温度を260℃まで昇温した。
その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.5MPaに調節した。
重縮合物の温度が260℃に達した直後から放圧口よりブタノールを約20分間かけて抜き出し、内圧を常圧にした。
常圧にしたところから、1.5リットル/分で窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を275℃にし、275℃において3時間反応させた。
その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.1MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。
紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。
得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、ηr=2.61であった。
【0105】
(6)比較例1−1:(ポリアミド樹脂:PX6−6)
(i)前重縮合工程:撹拌機、還流冷却器、窒素導入管、原料投入口を備えた内容積が1Lのセパラブルフラスコの内部を純度が99.9999%の窒素ガスで置換し、
脱水済みトルエン500ml、
1,6−ヘキサンジアミン58.7209g(0.5053モル)を仕込んだ。
このセパラブルフラスコをオイルバス中に設置して50℃に昇温した後、
シュウ酸ジブチル102.1956g(0.5053モル)を仕込んだ。
次にオイルバスの温度を130℃まで昇温し、還流下、5時間反応を行った。
なお、原料仕込みから反応終了までの全ての操作は50ml/分の窒素気流下で行った。
(ii)後重縮合工程:上記操作によって得られた前重合物を撹拌機、空冷管、窒素導入管を備えた直径約35mmφのガラス製反応管に仕込み、反応管内を13.3Pa以下の減圧下に保ち、次に常圧まで窒素ガスを導入する操作を5回繰り返した後、50ml/分の窒素気流下290℃に保った塩浴に移し、直ちに昇温を開始した。1時間かけて塩浴の温度を340℃とした後、容器内を約66.5Paまで減圧し、さらに2時間反応させた。
続いて常圧まで窒素ガスを導入したのち、塩浴から取り出し50ml/分の窒素気流下で室温まで冷却してポリアミド樹脂を得た。
得られたポリマーは黄色のポリマーであり、ηr=1.65であった。
【0106】
(7)比較例1−2〜4
燃料配管部品用樹脂組成物のポリアミド樹脂として、
ナイロン6(宇部興産製、UBEナイロン1015B:PA6)(比較例1−2)、
ナイロン66(宇部興産製、UBEナイロン2020B:PA66)(比較例1−3)及び
ナイロン12(宇部興産製、UBESTA3020U:PA12)(比較例1−4)のペレットを使用した。
【0107】
(8)実施例2−1〜4並びに比較例4〜4
表1に示される組成で、実施例1−1で製造したPX6−1に、
ガラスファイバー(日東紡績株式会社製CS−3J−265S)及び/又は
カーボンファイバー(三菱化学製K223SE)を
日本製綱製TEX44二軸押出機にて混練し、
ストランドを冷却水槽にて冷却固化した後、ペレタイザーにて実施例2−1のペレットを得た。表1中では、ガラスファイバーをGF、カーボンファイバーをCFと記載した。
実施例2−1において、PX6−1を実施例1−4で製造したPX6−4に置き換えた以外は同じ条件で実施例2−4のペレットを得た。
実施例1−2で製造したPX6−2に、
ガラスファイバー(日東紡績株式会社製CS−3J−265S)30質量%を
日本製綱製TEX44二軸押出機にて混練し、
ストランドを冷却水槽にて冷却固化した後、ペレタイザーにて実施例2−2のペレットを得た。
実施例2−2において、PX6−2を実施例1−3及び4で製造したPX6−3及び4、PA12にそれぞれ置き換えた以外は同じ条件で実施例2−3〜4及び比較例2−4のペレットを得た。
【0108】
(9)実施例3−1、2及び5、比較例3〜4、実施例4−1〜4、比較例4−4、実施例4−1〜4並びに比較例4−4
(株)日本製鋼所製のスクリュー径30mmの押出機(シリンダー温度250〜340℃)を用いて、外径8mm、肉厚2mm、長さ100mmのプラスチック状の燃料配管用継手を製造した。
【0109】
(10)実施例5−1〜5並びに比較例2及び4
実施例1−1〜5で製造したポリアミド樹脂、PA6及びPA66について、(株)日本製鋼所製のスクリュー径30mmの押出機(シリンダー温度250〜340℃)を用いて、外径1/2インチ、厚み1mmの単層チューブを製造した。
【0110】
(11)実施例6−1〜7並びに比較例6−2及び3
多層チューブ成形用装置として、内層用押出機、中間層用押出機および外層用押出機を備え、この3台の押出機から吐出された樹脂をアダプターによって集めチューブ状に成形するダイス、チューブを冷却し寸法を制御するサイジングダイおよび引き取り機などからなる装置(品名Plabor、プラスチック工学研究所(株)製)を用い、チューブ断面の内径6mm、外径8mmの3層チューブを作製した。
チューブの内層、中間層および外層の樹脂組成物の組成と厚さは表3に示した。
なお、原料として以下を使用した。
樹脂r1:フッ化ビニリデン樹脂(セフラルソフト、セントラル硝子製)
樹脂r2:高密度ポリエチレン樹脂(8600A、東ソー製)
可塑剤:
ベンゼンスルホン酸ブチルアミド(BBSA、Proviron社製)
(表3中では、BSBAと記載されている)
接着剤:マレイン酸変性ポリエチレン(UボンドF1100、宇部興産製)
【0111】
(12)実施例7
実施例1〜5で製造したPX6−1〜PX6−5、PA6、PA66及びPA12を用いて、射出成形により、燃料配管部品であるガソリンタンク及びガソリン燃料を輸送するためのフューエルチューブを製造した。
射出成形条件は、
ポリアミド樹脂としてPX6−1〜3を使用する場合では300℃、
ポリアミド樹脂としてPX6−4〜6を使用する場合では340℃、
ポリアミド樹脂としてPA6を使用する場合では260℃、
ポリアミド樹脂としてPA66を使用する場合では290℃
ポリアミド樹脂としてPA12を使用する場合では230℃
金型温度80℃の電子写真装置部品により成形して試験用プレートを得た。
射出成形条件は、射出圧力:一次圧650kg/cm、射出時間:11秒、冷却時間:20秒とした。
本発明の燃料配管部品であるガソリンタンク及びフューエルチューブは、PA6、PA66及びPA12と同等以上の成形性を有していた。
【0112】
下記の条件で製造又は使用した実施例1−1〜5及び比較例1〜4におけるポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂組成物について、相対粘度、溶融粘度、融点、1%重量減少温度、飽和吸水率、耐薬品性、耐加水分解性、ドライ及びウェットにおける物性、液体又は蒸気バリア性(エタノール蒸気透過性、E10透過係数、耐カルシウム性)、機械的物性の耐燃料浸漬性を、
実施例1−1、2及び5、比較例1−3〜4、実施例2−1〜4及び比較例2−4において、アイゾット衝撃強度及び電気抵抗を測定することで、ポリアミド樹脂組成物におけるガラス繊維(無機繊維)と炭素繊維(導電性充填材)の添加効果を確認した。
結果を表1に示す。
【0113】
実施例3−1、2及び5、比較例3−3〜4、実施例4−1〜4並びに比較例4−4において、本発明の燃料配管部品である燃料配管用継手について、燃料バリア性(燃料透過量(全透過量及びHC透過量)を測定し、
実施例5−1〜5並びに比較例5−2及び4において、単層燃料チューブの蒸気バリア性(透湿度)を測定した。
結果を表2に示す。
【0114】
実施例6−1〜7及び比較例6−2〜3において、3層燃料チューブの低温衝撃性、燃料バリア性(燃料透過性)及び耐燃料性を測定した。
結果を表3に示す。
【0115】
〔物性測定、成形、評価条件〕
以下の内容で行った。
【0116】
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度ηr
ηrは実施例1−1〜5並びに比較例1−1〜2の各ポリアミド樹脂の96%硫酸溶液(濃度:1.0g/dl)を使用してオストワルド型粘度計を用いて25℃で測定した。
【0117】
(2)ポリアミド樹脂の溶融粘度
実施例1〜5及び比較例1〜2の各ポリアミド樹脂の溶融粘度はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製溶融粘弾性測定装置ARESに25mmのコーン・プレートを装着して、窒素中、
ポリアミド樹脂としてPX6−1〜3を使用した場合では340℃、
ポリアミド樹脂としてPX6−4〜5を使用した場合では300℃、
ポリアミド樹脂としてPA6を使用した場合ではでは260℃、
せん断速度0.1s−1の条件で測定した。
【0118】
(3)ポリアミド樹脂の融点(Tm)
実施例1−1〜5及び比較例1〜3の各ポリアミド樹脂のTmは、PerkinELmer社製PYRIS Diamond DSC用いて窒素雰囲気下で測定した。
ポリアミド樹脂としてPX6−1〜2及び6を含む場合のTmは、
30℃から350℃まで10℃/分の速度で昇温し(昇温ファーストランと呼ぶ)、
350℃で3分保持したのち、
−100℃まで10℃/分の速度で降温し(降温ファーストランと呼ぶ)、
次に350℃まで10℃/分の速度で昇温した(昇温セカンドランと呼ぶ)。
ポリアミド樹脂としてPX6−3〜5、PA6、PA66及びPA12を含む場合のTmは、
30℃から310℃まで10℃/分の速度で昇温し(昇温ファーストランと呼ぶ)、
310℃で3分保持したのち、
−100℃まで10℃/分の速度で降温し(降温ファーストランと呼ぶ)、
次に310℃まで10℃/分の速度で昇温した(昇温セカンドランと呼ぶ)。
昇温セカンドランの吸熱ピーク温度をTmとした。
【0119】
(4)ポリアミド樹脂の1%重量減少温度Td
実施例1〜5及び比較例1〜3の各ポリアミド樹脂のTdは島津製作所社製THERMOGRAVIMETRIC ANALYZER TGA−50を用い、熱重量分析(TGA)により測定した。
20ml/分の窒素気流下室温から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、Tdを測定した。
【0120】
(5)試験用フィルム、プレートの成形条件
(5−1)試験用フィルム
東邦マシナリー社製真空プレス機TMB−10を用いてフィルム成形して実施例1−1〜5及び比較例1−1〜3の各ポリアミド樹脂の試験用フィルムを得た。
500〜700Paの減圧雰囲気下、
ポリアミド樹脂としてPX6−1〜3を使用する場合では300℃、
ポリアミド樹脂としてPX6−4〜6を使用する場合では340℃、
ポリアミド樹脂としてPA6を使用する場合では260℃、
ポリアミド樹脂としてPA66を使用する場合では290℃
で5分間加熱溶融させた後、
5MPaで1分間プレスを行いフィルム成形した。
次に減圧雰囲気を常圧まで戻したのち室温5MPaで1分間冷却結晶化させて試験用フィルムを得た。
【0121】
(5−2)試験用プレート
樹脂温度
ポリアミド樹脂としてPX6−1〜3を使用する場合では300℃、
ポリアミド樹脂としてPX6−4〜6を使用する場合では340℃、
ポリアミド樹脂としてPA6を使用する場合では260℃、
ポリアミド樹脂としてPA66を使用する場合では290℃
金型温度80℃の電子写真装置部品により成形して試験用プレートを得た。
射出成形条件は、射出圧力:一次圧650kg/cm、射出時間:11秒、冷却時間:20秒とした。
【0122】
(6)ポリアミド樹脂の飽和吸水率
試験用フィルム(寸法:20mm×10mm、厚さ0.25mm;質量約0.05g)を23℃のイオン交換水に浸漬し、
所定時間ごとに試験用フィルムを取り出し、フィルムの質量を測定した。
試験用フィルムの質量の増加率が0.2%の範囲内で3回続いた場合に試験用フィルムへの水分の吸収が飽和に達したと判断して、
水に浸漬する前の試験用フィルムの質量(Xg)と飽和に達した時の試験用フィルムの質量(Yg)から下記式(1)により飽和吸水率(%)を算出した。
飽和吸水率(%)=100×(Y−X)/X (1)
【0123】
(7)ポリアミド樹脂の耐薬品性
試験用フィルムを以下に列挙する薬品中に7日間浸漬した後に、フィルムの重量残存率(%)及び外観の変化を観測した。濃塩酸、64%硫酸、30%NaOH水溶液、5%KMnOのそれぞれの溶液においては23℃、ベンジルアルコールでは50℃において浸漬した試料について試験を行った。
【0124】
(8)ポリアミド樹脂の耐加水分解性
試験用フィルムを、オートクレーブに入れ、水(pH=7)、0.5mol/l硫酸(pH=1)又は1mol/l水酸化ナトリウム水溶液(pH=14)内で、121℃、60分間処理した後の重量残存率(%)及び外観変化を調べた。
【0125】
(9)ポリアミド樹脂の機械的物性
試験用プレートを、
成形後直ちに調湿せずに23℃で評価したものをドライ、
成形後に湿度65%、温度23℃で調湿した後に23℃で評価したものをウェットとして表中に記載した。
【0126】
(9−1)引張強度:ASTM D638に記載のTypeIの試験片のダンベル形状に成形した試験用プレートを用いてASTM D638に準拠して測定した。
(9−2)曲げ弾性率:試験用プレートを用いてASTM D790に準拠し測定した。
(9−3)荷重たわみ温度(熱変形温度):試験用プレートを用いてASTM D648に準拠し、荷重1.82MPaで測定した。
【0127】
(10)ポリアミド樹脂の吸水率
試験用フィルム(寸法:20mm×10mm、厚さ0.25mm;質量約0.05g)を使用して、23℃及び湿度65%RHの条件下に置いた以外は、(6)飽和吸水率の測定方法に従って、吸水率(平衡吸水率)(%)を算出した。
【0128】
(11)ポリアミド樹脂のエタノール蒸気透過係数
ステンレス製の容器にエタノールを50ml入れ、試験用フィルムを用いて、PTFE製のガスケットをかませた容器に蓋をし、ねじ圧力にて締め付けた。カップを60℃恒温槽に入れ、槽内は窒素を50ml/minで流した。重量の経時変化を測定し、時間当たりの重量変化率が安定した時点で、エタノール蒸気透過係数を次式から計算した。試料の透過面積は78.5cm2である。
エタノール蒸気透過係数(g・mm/m・day)
=[透過重量(g)×フィルム厚さ(mm)]
/[透過面積(mm)×日数(day)×圧力(atom)]
【0129】
(12)ポリアミド樹脂のE10燃料透過係数
JIS Z0208に従い、射出成形で成形したφ75mm、厚み1mmの試験片を用いて測定雰囲気温度60℃でのE10燃料透過試験を行った。
燃料にはイソオクタンとトルエンを体積比で1:1としたFuelCにエタノールを10%混合して用いた。
燃料透過測定試料面には常に燃料が接触するように透過面を下向きにして設置した。
E10燃料透過係数(g・mm/m・day)
=[透過重量(g)×フィルム厚さ(mm)]
/[透過面積(mm)×日数(day)×圧力(atom)]
ポリアミド樹脂としてPX6−1〜3を使用する場合では300℃、
ポリアミド樹脂としてPX6−4〜6を使用する場合では340℃、
ポリアミド樹脂としてPA6を使用する場合では260℃、
ポリアミド樹脂としてPA66を使用する場合では290℃
ポリアミド樹脂としてPA12を使用する場合では230℃
金型温度80℃の電子写真装置部品により成形して試験用プレートを得た。
射出成形条件は、射出圧力:一次圧650kg/cm、射出時間:11秒、冷却時間:20秒とした。
【0130】
(13)ポリアミド樹脂の耐塩化カルシウム性
試験用フィルムを、23℃の飽和塩化カルシウム水溶液に浸漬した。一日後、試験用フィルムの外観を目視で観察し、クラックの有無を評価した。
【0131】
(14)ポリアミド樹脂の初期接着強度
以下の方法でテストピース(ASTM D638に記載のTypeIの試験片)を作製した。
すなわち、TypeIの試験片製造用の金型の半分にした金属片をインサートし、金属片がインサートされていない部分に無水マレイン酸にて変性されたポリエチレンを射出充填する。
次に、射出充填された無水マレイン酸にて変性されたポリエチレンが十分に冷却した後、金型内の金属片を除去して、金属片が除去された金型部分に評価対象の樹脂を射出充填する。このようにして、TypeIの試験片の上半分が無水マレイン酸にて変性されたポリエチレン樹脂と、TypeIの試験片の下半分が価対象の樹脂で、TypeIの試験片の中央部にこれらの樹脂の界面を有するテストピースを得る。
射出成形条件は、
ポリアミド樹脂としてPX6−1〜3を使用する場合では300℃、
ポリアミド樹脂としてPX6−4〜6を使用する場合では340℃、
ポリアミド樹脂としてPA6を使用する場合では260℃、
ポリアミド樹脂としてPA66を使用する場合では290℃
ポリアミド樹脂としてPA12を使用する場合では230℃
無水マレイン酸にて変性されたポリエチレンを使用する場合では200℃
金型温度80℃の電子写真装置部品により成形して試験用プレートを得た。
射出成形条件は、射出圧力:一次圧650kg/cm、射出時間:11秒、冷却時間:20秒とした。
このテストピースを用い、評価対象の樹脂が、引張速度毎分50mmで無水マレイン酸にて変性されたポリエチレンと金属片との境界面から剥離するか境界面以外の部分で破壊する(基材破壊)までの最大引張強度を測定し、初期接着強度とした。
【0132】
(15)ポリアミド樹脂の燃料浸漬後接着強度
初期接着強度の評価と同様の手順で成形された試験片をオートクレーブに入れ、FuelC+エタノール10%混合燃料を同試験片が完全に浸漬するまで封入した。そのオートクレーブを60℃温水槽内に350時間放置した。その後取出した試験片について上記と同様に最大引張強度を測定し、燃料浸漬後接着強度とした。
【0133】
(16)アイゾット衝撃値
試験用プレート(試験片寸法3.2mm×12.7mm×127mm)を用いてASTM D256に準拠し、23℃で測定した。
【0134】
(17)電気抵抗
試験用プレート(試験片寸法3.2mm×12.7mm×127mm)を用いて使用して、ASTMD−257に準拠して測定した。
【0135】
(18)燃料配管用継手の燃料透過量
燃料配管用継手の片端を密栓し、
内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)と
エタノールを90/10体積比に混合したエタノール/ガソリンを入れ、
残りの端部も密栓した。
その後、全体の重量を測定し、次いで継手を60℃のオ−ブンに入れ、
重量変化を測定し、
燃料透過量(全透過量とその内に含まれる炭化水素成分の透過量(HC透過量)の両者を示す)を評価した。
【0136】
(19)単層燃料チューブの透湿度
単層燃料チューブを300mmの長さに切断し、その中に水分吸収剤である塩化カルシウムを充満するまで充填し、密封した。次に、このチューブを40℃で相対湿度90%の雰囲気中に10日以上放置し、1日の平均的な単位面積当たりの透湿度を測定した。
【0137】
(20)3層チューブの低温衝撃性
得られた多層チューブの低温衝撃性はSAE J844に準拠して測定した。
【0138】
(21)3層チューブの燃料透過性
30cmにカットした3層チューブの片端を密栓し、
内部に市販ガソリンとエチルアルコールを1:1に混合したアルコールガソリンを入れ、
残りの片端も密栓した後、全体の重量を測定し、次いで試験チューブを60℃のオーブンに入れ、重量変化(g/24時間)を測定し燃料透過性を評価した。
【0139】
(22)3層チューブの耐燃料性
燃料透過試験後の3層チューブの表面を目視で観察して、クラックの有無を調べた。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
表1〜3から、本発明の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物は、ナイロン6及びナイロン66等の材料と比較して低吸水であり、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、wet条件下での機械的物性に優れ、そしてジアミン成分として1,6−ヘキサンジアミン単体を用いたポリアミド樹脂(PX6−6)よりも成形可能温度幅が広く溶融成形性に優れ、さらに高分子量化が可能で、それを成形して、耐低温衝撃性等の環境耐性、耐薬品性及び燃料の不透過性に優れる燃料配管部品を製造することができることが分かる。
なお、PX6−6を使用したポリアミド樹脂組成物は、Td−Tmが小さいため、溶融混練できず、成形もできなかった。
【符号の説明】
【0144】
1 クイックコネクター
2 スチールチューブ
3 プラスチックチューブ
4 フランジ形状部
5 リテーナー
6 O−リング
7 ニップル
8 あご部
9 O−リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(成分A)を含む燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Aが、ジカルボン酸由来の単位とジアミン由来の単位とが結合してなり、
前記ジカルボン酸が蓚酸(化合物a)を含み、
前記ジアミンが1,6−ヘキサンジアミン(化合物b)及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(化合物c)を含み、
前記化合物bと前記化合物cのモル比が99:1〜50:50である燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、層状ケイ酸塩を含む請求項1記載の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、有機繊維及び/又は無機充填材(但し、導電性充填材は除く)を含む請求項1又は2記載の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、導電性充填材を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる燃料配管部品。
【請求項6】
前記燃料配管部品が、燃料タンク用部品である請求項5記載の燃料配管部品。
【請求項7】
前記燃料配管部品が、燃料チューブである請求項5又は6記載の燃料配管部品。
【請求項8】
前記燃料チューブが、請求項1〜4のいずれか1項記載の燃料配管部品用ポリアミド樹脂組成物からなる層を有する請求項7記載の燃料配管部品。
【請求項9】
前記燃料チューブが、さらに、フッ素樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、PA11樹脂及びPA12からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂と可塑剤とを含む樹脂組成物からなる層を含む請求項7又は8記載の燃料配管部品。
【請求項10】
前記燃料配管部品が、燃料配管用継手である請求項5又は6記載の燃料配管部品。
【請求項11】
前記燃料配管用継手が、燃料配管用クイックコネクターである請求項10記載の燃料配管部品。

【図1】
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【公開番号】特開2013−95800(P2013−95800A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237916(P2011−237916)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】