説明

燃料電池システム

【課題】簡素で低コストな構造によって燃料電池内の圧力上昇を抑制することが可能なリリーフ構造を有する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池、燃料ガスの供給流路、燃料オフガスや生成水の排出流路、および燃料オフガスや生成水を流通、遮断する排気排水弁27を備えた燃料電池システムであって、排気排水弁27は燃料電池に連通する1次流通路37aおよび外部に連通する2次流通路38aと、1次流通路37aと2次流通路38aとの間に環状に形成された弁座41と、弁座41と接離可能な弁部43aが形成された弁体43と、弁体43に固定された出力部材44を有し弁座41を閉鎖位置と離間位置との間で移動させる弁体作動装置33と、弁部43aが弁座41に押圧される方向に出力部材44を所定の付勢力で付勢し、所定のリリーフ圧力が1次流通路37aに付与された場合に弁部43aを弁座41から離間させる弾性部材48と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に流通する燃料ガス流路にリリーフ弁が設けられた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給によって発電を行なう燃料電池システムが提案され、自動車等様々な分野で実用化されている。このような燃料電池システムでは、例えば特許文献1に示すように、燃料ガス流路に供給される燃料ガスの過剰な圧力上昇を抑制し燃料電池の破損を防止するためにリリーフ弁を設けたものがある。特許文献1におけるリリーフ弁50は、燃料ガス流路31上において燃料電池内の燃料ガス圧力および流量を調整するインジェクタ35の下流側に設けられている。そして燃料ガス流路31内(燃料電池内)の圧力が上昇し設定圧力値を越えると、スプリングによって閉弁方向に押圧され閉弁していたリリーフ弁50の弁体の弁部が燃料ガス流路31内の圧力に押されて弁座から離間し開弁する。そして燃料ガスを、離間した弁部と弁座との間のすきまから外部に放出し燃料ガス流路31内の圧力上昇を抑制して燃料電池を保護している。このとき、従来の技術では、燃料ガス流路31の設定値以上への圧力上昇時にのみリリーフ弁50の弁体が開弁されるため、設定値以下の圧力状態が長く続くと弁体は長期間開弁作動されることがない。これによってゴム製の弁部が弁座に固着し、開弁圧が上昇してしまう虞がある。そこで特許文献1では制御装置4によって定期的にインジェクタ35を作動させて燃料ガスを噴射し、燃料ガス流路31内の圧力がリリーフ弁50の開弁圧力より若干高い圧力となるよう制御している。これによって強制的にリリーフ弁50を開弁させ、弁部が弁座に固着するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−130495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、特許文献1に開示される従来の技術では、リリーフ弁50の弁部を固着させないために、制御装置4によってインジェクタ35を作動させ弁体を強制作動させて固着を防止している。これにより、システムが複雑化し高コストな構造になっている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、簡素で低コストな構造によって燃料電池内の圧力上昇を抑制することが可能なリリーフ構造を有する燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、燃料極に燃料ガスを供給し、酸化剤極に酸化剤ガスを供給することによって発電する燃料電池と、前記燃料電池に供給される前記燃料ガスが流通する供給流路と、前記燃料電池から排出される燃料オフガスや生成水が流通する排出流路と、前記排出流路に設けられ前記燃料電池から排出された前記燃料オフガスや前記生成水を流通および遮断する排気排水弁と、を備えた燃料電池システムであって、前記排気排水弁は、前記燃料電池に連通する1次流通路および外部に連通する2次流通路と、前記1次流通路と前記2次流通路との間に介在し環状に形成された弁座と、前記弁座に対して進退移動し前記弁座と接離可能な弁部が形成された弁体と、前記弁体に固定された出力部材を有し、前記弁座を閉鎖位置と離間位置との間で移動させる弁体作動装置と、前記弁部が前記弁座に押圧される方向に前記出力部材を所定の付勢力で付勢し、所定のリリーフ圧力が前記1次流通路に付与された場合に前記弁部を前記弁座から離間させる弾性部材と、
を備える。
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項2に係る発明は、請求項1において、前記弁体作動装置はソレノイド弁であり前記出力部材はプランジャである。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、燃料電池システムが有する排気排水弁に対し、共通の構成によって、定期的に作動される排気排水弁が本来有する燃料オフガスや生成水を流通および遮断する機能と、作動頻度が少ないリリーフ機能とを同時に実現した。リリーフ機能は燃料電池内(排出流路内)圧力、即ち燃料電池に連通する排気排水弁の1次流通路内圧力が設定したリリーフ圧力に上昇したとき弁体を該上昇したリリーフ圧力によって機械的に開弁させて圧力上昇を抑制し燃料電池を破損から保護するものである。本発明においては燃料オフガスや生成水を流通および遮断するための弁体と、圧力をリリーフするための弁体とは共用されるよう構成される。このため、排気排水弁の本来の機能である流通および遮断動作によって弁体は定期的に開閉作動が行なわれるので、使用頻度の低いリリーフ機能が作動するときにも弁体の弁部が弁座に固着しリリーフ圧力が上昇してしまう虞を低減できる。このような構成により制御装置が不要で低コスト、かつ信頼性が高いリリーフ弁を実現できる。
【0009】
上記のように構成した請求項2に係る発明によれば、請求項1において、弁体作動装置はソレノイド弁であり出力部材はプランジャである。このように簡易な構造で安価なソレノイド弁を弁体作動装置として用いることで燃料オフガスや生成水の流通および遮断が簡易に制御でき、低コストで小型の排気排水弁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る排気排水弁の構成を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る排気排水弁において弁体が弁座と当接する閉鎖位置を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る排気排水弁において弁体が弁座から離間する離間位置およびリリーフしたときの開弁状態を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る排気排水弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。図1は、燃料電池システム1の構成図である。本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池自動車(FCHV)、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に適用できるが、車両のみならず各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)や定置型電源にも適用可能である。
【0012】
燃料電池システム1は、燃料電池2と、酸化剤ガスとしての空気(酸素)を燃料電池2に供給する酸化剤ガス配管系3と、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池2に供給する燃料ガス配管系4と、動力系5と、冷却系6と、制御装置7とを備えている。
【0013】
燃料電池2は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数の単セルを積層したスタック構造を備えている。単セルは、イオン交換膜(例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等)からなる電解質の一方の面に酸化剤極(カソード)を有し、他方の面に燃料極(アノード)を有し、さらに酸化剤極及び燃料極を両側から挟みこむように一対のセパレータを有している。一方のセパレータの酸化剤ガス流路2aに酸化剤ガスである空気(酸素)が供給され、他方のセパレータの燃料ガス流路2bに燃料ガスである水素が供給される。以降の説明においては、酸化剤ガスは空気(酸素)と称し、燃料ガスは水素ガスと称す。供給された水素ガス及び空気(酸素)の電気化学反応により、燃料電池2は電力を発生する。燃料電池2での電気化学反応は発熱反応であり、固体高分子電解質型の燃料電池2の温度は、冷却系6によっておよそ60〜80℃に保持されている。
【0014】
酸化剤ガス配管系3は、燃料電池2に供給される空気(酸素)が流れる酸化剤ガス供給流路11と、燃料電池2から排出された酸化剤オフガス(以降、空気(酸素)オフガスと称す)が流れる酸化剤ガス排出流路12とを有している。酸化剤ガス供給流路11の下流端は酸化剤ガス流路2aの上流端に連通し、酸化剤オフガス排出流路12の上流端は酸化剤ガス流路2aの下流端に連通している。
【0015】
酸化剤ガス供給流路11には、上流から順番にエアフィルタ13、エアコンプレッサ14、空気(酸素)を冷却するインタークーラ15および三方弁16が設けられている。
【0016】
エアコンプレッサ14は、モータおよびモータの作動によって回転駆動され空気を下流側に圧送するコンプレッサ部(いずれも図略)を有し、モータと制御装置7とが電気的に接続されている。そしてエアコンプレッサ14は、モータが作動されることによってエアフィルタ13を介して供給された清純な空気(酸素)を燃料電池2に向けて圧送する。このとき圧送する空気量は、制御装置7から送信される指令値による。
【0017】
三方弁16は、モータおよびモータの作動によって開閉する開閉弁(いずれも図略)を有し、モータと制御装置7とが電気的に接続されている。三方弁16は、酸化剤ガス供給流路11を介してインタークーラ15に連結される吸気口16a、燃料電池2の酸化剤ガス流路2aの上流端に連結される排気口16bおよびエア調圧弁17の下流側の酸化剤ガス排出流路12に連結される排気口16cを有している。このような構成によって吸気口16aから流入した空気(酸素)が分岐点で分流され排気口16bと排気口16cとにそれぞれ排出される。このとき排気口16bと排気口16cとにそれぞれ分流される空気(酸素)量の分配比率は、モータによって制御される開閉弁の位置によって決定されるよう構成されている。そして開閉弁の作動量は、制御装置7からの送信される指令値によって制御される。三方弁16の排気口16cと酸化剤ガス排出流路12との間はバイパス通路18によって連通されている。酸化剤ガス排出流路12に接続されるバイパス通路18の接続点は、後に詳述する酸化剤ガス排出流路12のエア調圧弁17よりも下流側部位(燃料電池2が接続されていない側)に接続されている。
【0018】
酸化剤オフガスが排出される酸化剤ガス排出流路12上には、エア調圧弁17が設けられている。エア調圧弁17は、モータおよびモータの作動によって開閉する開閉弁(いずれも図略)を有し、モータと制御装置7とが電気的に接続されている。エア調圧弁17は2ポートの流体制御弁であり、酸化剤ガス排出流路12を介して燃料電池2の酸化剤ガス流路2aの下流端に連結されるエア調圧弁吸気口17aと、下流側に排出するエア調圧弁排出口17bとを有している。制御装置7はエア調圧弁17の弁体の開度を調整し、燃料電池2内に残存した空気の排出量を調整することにより燃料電池2内の圧力を制御している。
【0019】
一方、燃料ガス配管系4は、図1に示すように燃料電池2に供給される水素ガスが流れる燃料ガス供給流路21(本発明の供給流路に該当する)と、燃料電池2から排出された燃料オフガス(以降、水素オフガスと称す)が流れる燃料ガス排出流路22(本発明の排出流路に該当する)とを有している。また燃料ガス供給流路21と、燃料ガス排出流路22との間には水素オフガスを燃料ガス供給流路21に環流させるための循環流路23を有している。燃料ガス供給流路21の下流端は燃料電池2の燃料ガス流路2bの上流端に連通し、燃料ガス排出流路22の上流端は燃料ガス流路2bの下流端に連通している。
【0020】
燃料ガス供給流路21上には、上流から順番に水素タンク24と、調圧弁25とが設けられている。なお、図示しないが水素タンク24の水素ガスの出口部には制御装置7によって開閉制御される遮断弁が設けられ、通常使用時には開弁し、未使用時および緊急時には遮断されるようになっている。
【0021】
調圧弁25は、燃料電池2の燃料ガス流路2b内の水素ガス圧力および流量を調整するためのものである。よって、要求される調圧性能および流量調整性能を有していればどのような構造の調圧弁でもよい。本実施形態においては、特開2008−130495号公報に開示されているインジェクタを適用している。その構造および作動については特開2008−130495号公報に説明されている通りであるので、詳細な説明は省略する。なお、調圧弁25としてインジェクタを適用したときには、前記従来技術に説明されるようにインジェクタの上流側に複数個の調圧弁を設け、該複数個の調圧弁によって適正な圧力に減圧した水素ガスをインジェクタによってさらに調圧することが好ましい。これによって精度よく燃料ガス流路2b内の水素ガス圧力および流量を調整できる。なお、調圧弁25はインジェクタに限らず、酸化剤ガス排出流路12上に設けたエア調圧弁17と同様の構造でも良い。またダイヤフラムを利用した機械式の調圧弁でもよい(上記複数個の調圧弁も同様)。
【0022】
燃料ガス排出流路22の上流端は燃料電池2の燃料ガス流路2bの下流端に連通している。燃料ガス排出流路23上には上流から順番に、気液分離器26、排気排水弁27および排出ガス希釈器28が設けられている。
【0023】
気液分離器26は燃料オフガスを燃料電池2の電池反応により生成された生成水から分離する。そのため燃料電池2の燃料ガス流路2bの下流端から排出された燃料オフガスおよび生成水を燃料ガス流路2bの下流端に連結される吸入口26aから吸入し、生成水から燃料オフガスを分離したのちに、水素オフガスを一方の燃料ガス排出口26bから排出し、生成水を他方の生成水排出口26cから排出する。
【0024】
後に詳述する本発明に係る排気排水弁27は、吸入口27aが燃料ガス排出流路22を介して気液分離器26の生成水排出口26bと連結されている。排気排水弁27は、制御装置7と接続され、制御装置7からの指令によって作動することにより、気液分離器26で回収した生成水および分離しきれなかった水素オフガスを排出口27bから下流側に排出(パージ)するものである。なお、このとき排気排水弁27の後述する1次流通路37aと燃料ガス排出流路22の端部との間には、生成水を貯留するための図示しない貯留部材を有し、排気排水弁27の1次流通部37は該貯留部材に固定されている。
【0025】
排出ガス希釈器28は、吸入口28aが燃料ガス排出流路22を介して排気排水弁27の排出口27bと連結および連通されている。また排出ガス希釈器28の酸化剤ガス吸入口28bが、エア調圧弁17の下流側の酸化剤ガス排出流路12と連結および連通され、排出口28cが外部に連通している。排気排水弁27から排出された、特に水素オフガスは、酸化剤ガス吸入口28bを介して酸化剤ガス排出流路12から流入した空気(酸素)および、空気(酸素)オフガスと排出ガス希釈器28内で混合されて水素オフガスの容積比が希釈される。これによって、水素の容積比は可燃容積比を下回り安全な状態で排出口28cから外部に排出される。
【0026】
循環流路23は、一端を気液分離器26の燃料ガス排出口26bに連結および連通され、他端を調圧弁25の下流側の燃料ガス供給流路21に連結および連通される。循環流路23上には、水素ポンプ29が設けられ、水素ポンプ29は気液分離器26によって分離された水素オフガスを加圧して燃料ガス供給流路21へ環流させる。
【0027】
ここで、本発明に係る排気排水弁27について詳細に説明する。排気排水弁27は、図2に示すように、弁ケーシング31と弁機構32と弁機構32を駆動させる弁体作動装置33とを備えている。
弁ケーシング31は、ボデー部34とカバー部35とを有している。ボデー部34は、例えばガラス繊維でフィラー強化されたポリフェニレンスルファイド樹脂製で、前述した貯留部材に例えばボルトにより固定されるフランジ部36と、フランジ部36に対して直角な方向に突設された管状の1次流通部37と、フランジ部36に突設されるとともに1次流通部37の周囲に配設された管状の2次流通部38とを備えている。フランジ部36より2次流通部38が突設され、2次流通部38より先端に向かって段部を設けて1次流通部37の外周が形成されている。1次流通部37には気液分離器26の燃料ガス排出口26bに前述の貯留部材を介して連通する1次流通路37aが形成され、2次流通部38には排出ガス希釈器28の吸入口28aに連通する2次流通路38aが形成されている。1次流通部37の先端側には円筒状の嵌合部が形成され、該嵌合部の基端部に周設された段部にはゴム製のOリング55が設けられている。2次流通部38の先端側には円筒状の嵌合部が形成され、該嵌合部の基端部に周設された段部にはゴム製のOリング56が設けられている。
【0028】
そして、排気排水弁27が貯留部材に取り付けられる場合に、排気排水弁27の1次流通部37の先端側の嵌合部は、貯留部材に設けられた嵌合穴に嵌合され、1次流通部37の嵌合部の基端部に設けられたOリング55によってシールされて1次流通路37aが気液分離器26の燃料ガス排出口26bと連通される。また2次流通部38の先端側の嵌合部は、貯留部材に設けられた嵌合穴に嵌合され、2次流通部38の嵌合部の基端部に設けられたOリング56によってシールされて、2次流通路38aが排出ガス希釈器28の吸入口28aに連通される。
【0029】
1次流通部37の基端側にはフランジ部36の中央部に一端面側(図2において上方側)を開放して穿設された弁収納部39が形成され、弁収納部39の中央部には1次流通路37aが開口するとともに該1次流通路37aの開口の周囲には2次流通路38aが開口している。1次流通路37aの開口縁は内側に向かってテーパ状に小径となるように弁収納部39側に突設され、該開口縁には環状の弁座41が形成されている。弁収納部39の周囲端面には後述する弁体のダイヤフラム部の周端部を固定する固定溝42が周設されている。
【0030】
フランジ部36の周端側には貯留部材に取付けるための取付穴36aと後述する支持板を組付ける組付穴36bとが設けられている。取付穴36a及び組付穴36bには金属製の雌ねじ部材が夫々埋設されている。
【0031】
カバー部35は、例えばナイロン系樹脂製で、円筒状の円筒部35aが形成されるとともに、円筒部35aの先端部にはコネクタを構成するコネクタ支持部35bがカバー部35の長手方向に対して直角に突設されている。コネクタ支持部35bには後述するソレノイド47に接続された端子35cが設けられるとともに、図略のソケットに着脱可能に係止する係止爪35dが形成されている。カバー部材の先端部にはコネクタ支持部35bの取付方向に対して直角な方向に後述する支持帯体が嵌入するガイド溝35eが形成されている。
【0032】
弁機構32は、弁体43と、プランジャ44と、前述の弁座41とから主に構成される。
弁体43は、例えばゴム製で、弁座41に接離する弁部43aと、弁部43aの周囲に一体に形成されたダイヤフラム部43bと、弁部43aの裏側に形成された係止部43cとを有し、弁収納部39に収納されている。
ダイヤフラム部43bの周縁は前述の固定溝42に嵌入固定され、これらの弁部43a及びダイヤフラム部43bによって、弁収納部39は1次流通路37aの開口側及び2次流通路38aの開口側が外気に対して気密状態で隔離される。
【0033】
プランジャ44は、例えばフェライト系ステンレス製の磁性体であって、円柱状に形成され、弁体43側の端部には弁体43の係止部43cが係止する被係止爪44aが形成されている。プランジャ44において弁体43とは反対側の端部には、有底のばね収納穴44bがプランジャ44の軸方向に沿って穿設され、後述するコイルスプリング(弾性部材)が収納される。このプランジャ44は弁体作動装置33の出力部材である。
【0034】
弁体作動装置33は、前述のプランジャ44(出力部材)、プランジャをガイドするスリーブ45、コア部材46、ソレノイド47、コイルスプリング48(弾性部材)、ヨーク部材等より構成される。
スリーブ45は、例えば非磁性体であるオーステナイト系ステンレス鋼製で、有底円筒状のガイド部45aとガイド部45aの開口端部にガイド部45aの軸方向に対して直角な半径方向に延在する取付フランジ部45bとを有している。取付フランジ部45bは、弁収納部39の周縁に弁体43のダイヤフラム部43bを介して密着するように設けられる。ガイド部45aには弁体43が固定されたプランジャ44が摺動可能に設けられ、弁体43の弁部43aが弁座41に対して接離するようになっている。また、前記ばね収納穴44bに圧縮されて収納されたコイルスプリング48の先端部がスリーブ45の底部分に当接するとともに、コイルスプリング48の基端部がばね収納穴44bの底部分に当接することで、プランジャ44及び弁体43を弁座41に向かって付勢している。このとき弁部43aと弁座41とが当接する位置を閉鎖位置という(図3参照)。
【0035】
コイルスプリング48(弾性部材)は、弁部43aが受圧する排気排水弁27の1次流通路37a内圧力が予め設定されたリリーフ圧力Prに到達したときに弁部43aが開弁されるようなばね荷重で設定され配置される。つまり、閉鎖位置において、コイルスプリング48のセット荷重が、弁部43aが受圧する排気排水弁27の1次流通路37a内圧力(予め設定されたリリーフ圧力Pr)に弁部43aの受圧面積を乗じた値と等しくなるよう設定する。これによって、1次流通路37a内圧力がリリーフ圧力Prを越えるとコイルスプリング48は撓み始め、弁部43aは弁座41から離間して1次流通路37a内圧力、延いては燃料電池2内圧力の上昇を抑制することができる。なお、予め設定されるリリーフ圧力Prは、通常運転において水素オフガスや生成水を排出するときの1次流通路37a内圧力よりも高い圧力で設定されるのはいうまでもない。
【0036】
スリーブ45は、支持板49を介して例えばボルトによりボデー部34に固定される。支持板49は、例えば磁性体である電磁ステンレス鋼製で、後述する支持帯体53を支持する支持穴(図略)と支持板49をボデー部34に組付ける組付穴49aとスリーブ45のガイド部45aが貫通する貫通穴49bとが設けられている。
【0037】
ソレノイド47はボビン54に巻回され、ボビン54には作動穴54aが貫設されている。ソレノイド47のプラス極及びマイナス極の端部は図略の電源に接続され、制御装置9の指令によって所定電流が印加される。ソレノイド47が巻回されたボビン54は前記カバー部35の内周壁部に一体成型により配設されている。ボビン54の作動穴54aには一端(弁体43)側よりスリーブ45のガイド部45aが挿入され、ボビン54の作動穴54aの他端側より円柱状のコア部材46が挿入されている。
【0038】
コア部材46は、例えば磁性体であるフェライト系ステンレス製で、挿入された先端部がスリーブ45の底部分(図2においてガイド部45aの上端部)に当接する。コア部材46の基端部側(図2において上端側)には係止フランジ46aが設けられ、ボビン54の作動穴54aの一端縁(弁体の反対側)に係止される。コア部材46の基端部は、コ字状に屈曲成型された支持帯体53によって支持固定される。
【0039】
支持帯体53は、例えば磁性体である電磁ステンレス鋼製で、両側が直角に屈曲された中央部分には、コア部材46の基端部が嵌入する嵌入穴53aが形成されている。支持帯体53の中央部分から直角に折曲されて延在する二つの先端部には、前記支持板49の支持穴に係合する係合爪(図略)が形成されている。支持帯体53の幅方向を前記カバー部35のガイド溝35eに嵌合させるとともに、嵌入穴53aにコア部材46の基端部を嵌入させ、そして、係合爪を支持板49の支持穴に係合させることで、カバー部35及びコア部材46をボデー部34に組付け固定する。なお、支持板49及び支持帯体53は、磁力線が漏れるのを防ぐヨークとしての役目を担っている。そして、弁体作動装置33は、制御装置7の指令によって弁体43に固定されたプランジャ44(出力部材)を作動させ、弁座41を閉鎖位置と離間位置(図4参照)との間で移動させる。
【0040】
図1に示すように、動力系5は、車両を走行させるためのトラクションモータ51を備えている。トラクションモータ51は燃料電池2の正極および負極と接続されており、燃料電池2の発電によって駆動される。
また、冷却系6は冷却ポンプ52を備え、燃料電池2内に冷却水を循環させて燃料電池2を冷却している。
【0041】
制御装置7は、前述したようにエアコンプレッサ14、三方弁16、エア調圧弁17、調圧弁25、水素ポンプ29、冷却ポンプ52および排気排水弁27等と電気的に接続されている。制御装置7は、車両に設けられたアクセル等の操作量を検出し、加速要求値(例えばトラクションモータ51等の負荷装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、これらシステム内の各種機器の動作を制御する。なお、負荷装置とは、トラクションモータ51のほかに、燃料電池2を作動させるために必要な補機装置(例えばエアコンプレッサ14、水素ポンプ29、冷却ポンプ52のモータ等)、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等を含む電力消費装置を総称したものである。
【0042】
制御装置7は、図示していないコンピュータシステムによって構成されている。かかるコンピュータシステムは、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース及びディスプレイ等を備えるものであり、ROMに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、各種制御動作が実現されるようになっている。
次に燃料電池システム1の作動について説明する。燃料電池システム1の通常運転時においては、まず燃料電池2から引き出すべき電力(要求電力)が制御装置7で演算される。そして制御装置7が演算された結果に基づいて、各アクチュエータに指令を送信し必要量の水素ガスおよび空気(酸素)をそれぞれ燃料ガス供給流路21および酸化剤ガス供給流路11を介して燃料電池2のアノード極とカソード極とに供給し発電が行なわれる。
【0043】
酸化剤ガス配管系3においては、制御装置7によって送信された指令値に基づいてエアコンプレッサ14の作動量が制御され、エアフィルタ13を介して吸引された酸素を含んだ必要流量の空気が下流側に圧送される。圧送され昇温した空気(酸素)は、インタークーラ15によって冷却される。そして、通常時においては、三方弁16に流入した空気(酸素)は、全量、排気口16bから酸化剤ガス供給流路11を介して燃料電池2の酸化剤ガス流路2aに供給される。酸化剤ガス流路2aに供給された空気(酸素)は、エア調圧弁4のバルブ開度を制御することにより、燃料電池2内に残存した空気(酸素)の圧力を制御している。そして燃料電池2で反応に使用されなかった空気(酸素)はエア調圧弁17のエア調圧弁排気口17bから酸化剤ガス供給流路11および排出ガス希釈器28を介して外部に排出される。
【0044】
なお、排出ガス希釈器28においては、燃料ガス配管系4の燃料ガス排出流路22を介して排出された水素オフガスと空気(酸素)とが混合され、可燃範囲外となった状態で水素オフガスおよび生成水とともに外部に排出されている。なお、低温時等において燃料電池2の昇温を行ないたい場合や、排出ガス希釈器28に多量の空気(酸素)を供給したい場合等には、三方弁16に流入した空気(酸素)を、排気口16bおよび排気口16cから分流させ、燃料電池2と排出ガス希釈器28とに流通させる制御が実施される。
【0045】
燃料ガス配管系4においては、制御装置7によって、水素タンク24の遮断弁が開弁される。それとともに、制御装置7によって送信された指令値に基づいて、調圧弁25のバルブ開度が制御される。これにより水素ガスが、燃料ガス供給流路21を介して燃料電池2の燃料ガス流路2bに要求流量および要求圧力で供給される。なお、前述したように、このとき調圧弁25の上流側においては、図示しない複数の調圧弁によって水素ガスが減圧され、該減圧された水素ガスが調圧弁25に供給されているものとする。そして、このようにカソード側とアノード側とに供給された空気(酸素)および水素ガスによって、発電が行われる。
【0046】
燃料ガス排出流路22には、燃料電池2で発電のための反応に使用されなかった水素オフガスと、発電のための反応によって生成された生成水が排出される。気液分離器26に導入される前の生成水は、水蒸気とミスト状のものが混ざっている。水素オフガスおよび生成水は気液分離器26に導入される。気液分離器26に導入された水蒸気は凝縮し、ミスト状生成水は凝集して図示しない貯留部に貯留され、生成水が水素オフガスから分離される。排気排水弁27が開弁すると貯留された生成水が水素オフガスの圧力により排出ガス希釈器28側に排出される。このとき、排出された生成水には水素オフガスが混入している。
【0047】
生成水から分離された水素オフガスは気液分離器26の燃料ガス排出口26bから水素ポンプ29の作動によって圧縮され循環流路23を介して燃料ガス供給流路21に環流され、再度燃料電池2に供給される。これによりムダに水素ガスを捨てることがなく燃費の向上を図ることができる。
【0048】
また分離後の少量の水素オフガスを含む生成水は、自重によって重力方向下方に移動し気液分離器26の生成水排出口26cから燃料ガス排出流路22を介して排気排水弁27の1次流通路37aに流入する。なお、このとき排気排水弁27の1次流通路37aと、上流側にある燃料ガス排出流路22の端部との間には上述したように、生成水を貯留するための貯留部材(図略)を有し、排気排水弁27の1次流通路37aは該貯留部材に固定されている。
【0049】
そして、一定量の生成水が貯留部材に貯留されると、制御装置7の指令によって排気排水弁27の弁体が開弁され、生成水を下流側に排出し排出ガス希釈器28を介して外部に放出する。通常運転時において、1次流通路37aに付与される圧力Poは事前の評価で取得されている。そしてPoに弁体43が受圧する受圧面積を乗じた力の大きさ(付勢力)より大きくなるよう設定されている、弁体43を閉鎖位置に向って付勢するコイルスプリング48の付勢力によって弁体43が開弁することはない。これによって弁体43は、制御装置7によってコイルに電流が印加された場合だけ弁体43が開弁し生成水を弁体43と弁座41との間から排出することができる。このとき排気排水弁27が生成水を排出するタイミングは任意に設定すればよい。例えば一定時間毎に排出してもよいし、貯留された生成水の水位を所定の水位センサによって確認し、水位が一定値に達したときに排出するよう制御してもよい。
そして生成水とともに排出される分離しきれなかった少量の水素オフガスは排出ガス希釈器28で空気(酸素)によって希釈され安全な状態で外部に放出される。
【0050】
次に、制御装置7の指令によって排気排水弁27の弁体が開弁されていない排出待機状態において、燃料電池2内の圧力が所定の値(リリーフ圧力)を超えて上昇した場合について説明する。調圧弁25の不完全な閉弁等によって、燃料電池2内の圧力が所定の値(リリーフ圧力Pr)を超えて上昇したときには、上昇した圧力は、燃料ガス排出流路22を通って、気液分離器26、排気排水弁27が固定される貯留部材および排気排水弁27の1次流通路内の圧力を上昇させる。これにより、排気排水弁27の弁体43は受圧面積に、上昇した圧力を乗じた大きさの付勢力を弁体43が開弁する方向に向って受ける。そして、このとき、上昇した圧力が弁体43を閉鎖位置に向って付勢するコイルスプリング48の付勢力よりも大きいとコイルスプリング48は撓み始め、弁体43は弁座41から離間し閉鎖位置から開弁する。そして上昇した圧力を、2次流通路38a側を介して下流側に排出する。これによって、燃料電池2内の圧力は下降し破損等を良好に防止することができる。
【0051】
上述の説明から明らかなように本実施形態においては、燃料電池システムが有する排気排水弁27に対し、共通の構成によって、定期的に作動される、本来排気排水弁27が有する燃料オフガスや生成水を流通および遮断する機能と、作動頻度が少ないリリーフ機能とを実現した。リリーフ機能は燃料電池2内(排出流路内)圧力、即ち燃料電池に連通する排気排水弁27の1次流通路37a内圧力が設定したリリーフ圧力Prに上昇したとき弁体43を該上昇した圧力によって機械的に開弁させて圧力上昇を抑制し燃料電池2を破損から保護するものである。このとき燃料オフガスや生成水を流通および遮断するための弁体43と、圧力をリリーフするための弁体43とは共用されるよう構成されている。このため、排気排水弁27の本来の機能である流通および遮断動作によって弁体43は定期的に開閉作動が行なわれるので、使用頻度の低いリリーフ機能が作動するときにも弁体43の弁部43aが弁座41に固着しリリーフ圧力が上昇してしまう虞を低減できる。このような構成により制御装置が不要で低コスト、かつ信頼性が高いリリーフ機能を実現できる。
【0052】
また本実施形態においては、弁体作動装置33はソレノイド47を利用した電磁弁(ソレノイド弁)であり出力部材はプランジャ44である。このように簡易な構造で安価なソレノイド47を弁体作動装置33に用いることで燃料オフガスや生成水の流通および遮断が簡易に制御でき、低コストで小型の排気排水弁を得ることができる。
【0053】
次に、第2の実施形態について、図5に基づき説明する。第1の実施形態においては、弁体作動装置としてソレノイド47を利用した。しかし、第2の実施形態では、空気圧の制御によって弁体を作動させるダイヤフラム式の制御弁を弁体作動装置として適用する。排気排水弁以外は、第1の実施形態と同様であるので、同様部分については説明を省略する。また、同様の構成については同じ符号を付して説明する。
【0054】
第2の実施形態に係る排気排水弁67は、ボデー64と、弁体作動装置73と、弁機構72とを有している。
ボデー64は1次流通路77aおよび2次流通路78aと、1次流通路77aと2次流通路78aとを分離する弁座81とを有している。1次流通路77aは、燃料ガス排出流路22を介して気液分離器26の生成水排出口26bと連結されている。また2次流通路78aは下流側の排出ガス希釈器28に連通されている。
【0055】
弁体作動装置73はダイヤフラム室61と、弁軸63(出力部材)と、弾性部材であるコイルスプリング88と、を有している。
ダイヤフラム室61は、円環状を呈するゴム製のダイヤフラム62と、ダイヤフラム62の中央部でダイヤフラム62を固定するダイヤフラム固定部材65と、図5において上方からダイヤフラム62の外周部をボデー64との間で気密に挟持する上蓋68とによって囲繞され形成されている。上蓋68には外気と連通する吸排気パイプ68aが設けられ、吸排気パイプ68aは3方弁の2つのポートを介してエアコンプレッサと接続されている(いずれも図示しない)。3方弁のもう一つのポートは大気に解放されている。
【0056】
エアコンプレッサは、制御装置7に接続され、制御装置7の指令によって所定圧力Pdの空気を3方弁に圧送する。3方弁は、制御装置7に接続され制御装置7の指令によって、図略のバルブが2位置で切替えられる。これによってエアコンプレッサから圧送された所定圧力Pdの空気をダイヤフラム室61に流通させること、および大気解放用のポートを介してダイヤフラム室61を大気に解放することが選択できるようになっている。
【0057】
出力部材である弁軸63はダイヤフラム固定部材65の中央部に固定される。また弁軸63の下端は円板状の弁体83の中央に固定されている。
ダイヤフラム室61内には弾性部材であるコイルスプリング88が配設されている。コイルスプリング88の一端はダイヤフラム固定部材65の上面に当接し、他端が上蓋68の内面に当接し支持されている。これにより、コイルスプリング88はダイヤフラム固定部材65および弁軸63を図5において下方に付勢し弁体83の後述する弁部83aを後述する弁座81に押圧している(この状態を閉鎖状態という)。
【0058】
また通常、燃料電池システムが作動し、閉鎖状態を維持する場合には、ダイヤフラム室61内にはエアコンプレッサの作動によって前述の所定圧力Pdの空気圧が付与され、ダイヤフラム室61内は所定圧力Pdで加圧される。これによってダイヤフラム62およびダイヤフラム固定部材65が該所定圧力Pdを受圧する。所定圧力Pdはダイヤフラム固定部材65および弁軸63を上記と同様に図5において下方に所定の付勢力で付勢し弁体83の弁部83aを弁座81に押圧している。
【0059】
このように、閉鎖状態においては、コイルスプリング88および所定圧力Pdによって生じる合計の付勢力によって弁体83が下方に付勢されている。このとき、コイルスプリング88のセット荷重および所定圧力Pdの大きさは、コイルスプリング88および所定圧力Pdによる下方への付勢力が、予め設定されるリリーフ圧力Prが1次流通路77aに付与された時に、リリーフ圧力Prに弁体83の受圧面積を乗じて算出される弁体83の開弁方向への付勢力よりも小さくなるよう設定される。さらに、コイルスプリング88のセット荷重は、ダイヤフラム室61内に所定圧力Pdが付与されない状態において、1次流通路77a内の水素オフガスの通常圧力Pcによって弁部83aが弁座81から離間し開弁できる荷重となるよう設定されている。
【0060】
弁機構72は、弁体83と、弁座81とを有している。弁体83にはゴム製の前述した弁部83aが下面外周部に円環状に形成されている。弁座81は、図5に示すように弁部83aと当接するようボデー64に形成されている。
【0061】
次に、弁部83aを弁座81から離間させる開弁時の制御について説明する。開弁時には制御装置7の指令によって3方弁が作動され、3方弁の大気解放用ポートとダイヤフラム室61とが連通される。これによって、ダイヤフラム室61が大気に解放されて減圧され、ダイヤフラム固定部材65、弁軸63および弁体83はコイルスプリング88のセット荷重のみによって下方に付勢されている状態になる。このような状態において、前述したように1次流通路77a内の水素オフガスの圧力が通常の圧力Pcを有していると、弁体83が圧力Pcを受圧し、圧力Pcによる受圧力がコイルスプリング88のセット荷重に打ち勝って弁体83を開弁させ1次流通路77aと2次流通路78aとを連通させる。これによって1次流通路77a内の水素オフガスおよび生成水は水素オフガスの圧力Pcによって押し出され弁部83aと弁座81との間および2次流通路78aを介して下流に排出される。なお、このとき弁軸63はガイド穴63aを有しガイド穴63aがダイヤフラムの上蓋68に固定されたガイド軸66にガイドされて上下に移動する。
【0062】
また、燃料電池システムが作動中であり、閉鎖状態が維持されるよう制御されている状態において、1次流通路77aにリリーフ圧Prを越える圧力が付与されると、弁体83は、弁体83の受圧面積に、上昇した圧力を乗じた大きさの付勢力を弁体83が開弁する方向に向って受ける。そして、このとき、リリーフ圧Prを越える圧力によって発生した弁体83を開弁させる付勢力は、前述したようにコイルスプリング88および所定圧力Pdによって発生する弁体83を閉鎖位置に向って付勢する付勢力よりも大きいので、コイルスプリング88が撓み始め、ダイヤフラム室61内が圧縮されながら、弁体83の弁部83aは弁座81から離間し閉鎖位置から開弁する。これによって1次流通路77aで上昇した圧力が、2次流通路78a側を介して下流側に排出され、燃料電池2内の圧力が下降し破損等を良好に防止することができる。このように第2の実施形態においても、排気排水機能とリリーフ機能とを同時に備えた排気排水弁が実現でき、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお、第1の実施形態に係る弁体作動装置は、ソレノイド弁に限らない。例えばステッピングモータやDCモータのように回転駆動するモータを使用し、回転運動を直線方向への移動に変換して弁体の開閉制御を行なってもよい。
【0064】
また、本実施形態においては、弾性部材としてコイルスプリングを適用した。しかし、この態様に限らず、弾性部材は、スプリングワッシャや板ばねを複数枚、積層したものでもよいし、空気ばねを使用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…燃料電池システム、2…燃料電池、3…酸化剤ガス配管系、4…燃料ガス配管系、5…動力系、6…冷却系、7…制御装置、11…酸化剤ガス供給流路、12…酸化剤ガス排出流路、21…燃料ガス供給流路、22…燃料ガス排出流路、23…循環流路、27、67…排気排水弁、33、73…弁体作動装置、37a、77a…1次流通路、38a、78a…2次流通路、41、81…弁座、43、83…弁体、44…出力部材(プランジャ)、47…ソレノイド、48、88…弾性部材(コイルスプリング)、62…ダイヤフラム、63…出力部材(弁軸)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極に燃料ガスを供給し、酸化剤極に酸化剤ガスを供給することによって発電する燃料電池と、
前記燃料電池に供給される前記燃料ガスが流通する供給流路と、
前記燃料電池から排出される燃料オフガスや生成水が流通する排出流路と、
前記排出流路に設けられ前記燃料電池から排出された前記燃料オフガスや前記生成水を流通および遮断する排気排水弁と、
を備えた燃料電池システムであって、
前記排気排水弁は、
前記燃料電池に連通する1次流通路および外部に連通する2次流通路と、
前記1次流通路と前記2次流通路との間に介在し環状に形成された弁座と、
前記弁座に対して進退移動し前記弁座と接離可能な弁部が形成された弁体と、
前記弁体に固定された出力部材を有し、前記弁座を閉鎖位置と離間位置との間で移動させる弁体作動装置と、
前記弁部が前記弁座に押圧される方向に前記出力部材を所定の付勢力で付勢し、所定のリリーフ圧力が前記1次流通路に付与された場合に前記弁部を前記弁座から離間させる弾性部材と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記弁体作動装置はソレノイド弁であり前記出力部材はプランジャである燃料電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−93255(P2013−93255A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235580(P2011−235580)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】