説明

燃料電池電源システムおよびその制御方法

【課題】二次電池を外部給電用、燃料電池を二次電池充電用とした燃料電池電源システムで充電と燃料電池の稼働の効率を向上させ、システムの耐久性を高める。
【解決手段】外部負荷に電気を供給する二次電池、二次電池を充電する燃料電池、燃料電池に水素を供給する水素吸蔵合金容器、二次電池の電圧を測定する二次電池電圧測定部、燃料電池の出力を測定する燃料電池出力測定部、燃料電池の動作を制御する制御部を備え、制御部は、二次電池電圧測定部および燃料電池出力測定部の測定結果を受け、二次電池の電圧が所定の電圧を下回ると判定すると燃料電池を起動し、燃料電池が動作した充電中に燃料電池の出力が所定の出力を下回ると判定すると燃料電池の動作を停止する制御を行うことで、燃料電池は高い効率(FC効率)で発電され、二次電池への充電ロスを小さくして充電できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池の出力で二次電池を充電しつつ二次電池の電気を外部負荷に供給する燃料電池電源システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源の行き届かない場所での電源用あるいは非常用電源に使用される電源供給システムとして、二次電池と燃料電池とを利用した燃料電池電源が提案されている。
例えば、外部負荷には二次電池から電気を供給し、燃料電池を充電用の電源として使用する電源装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この電源装置は、自動車などに搭載され、メタノールを改質した水素ガスなどを燃料電池の原料として使用する。
また、上記電源装置は、燃料電池からバッテリーに充電する時、バッテリー容量の30〜90%で運転制御することで、燃料電池の燃料から電気エネルギーに変換するのに常に最大発電効率で発電することを可能にしている。
また、商用電源のない野外での電源として二次電池はバッファーとして用い、燃料電池から外部負荷への電気供給を行う野外用ポータブル燃料電池電源が提案されている(非特許文献1、2)。二次電池は、負荷起動時などに起きる瞬時の高電流に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−253189号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「第51回電池討論会講演要旨集」、三重大学工学部分子素材工学科、2010、p338
【非特許文献2】「燃料電池夏号vol.10」、燃料電池開発情報センター、2010、p110−114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した従来技術のうち、燃料電池からバッテリーに充電する前者の装置の場合、バッテリー容量が80%以上の時に充電すると充電ロスが大きくなる。
また、上記電源装置は、バッテリー(2次電池)の容量を残容量検出装置により得て、燃料電池の起動停止を行うとしている。この残容量検出の具体的な方法として、バッテリー(2次電池)の充電電流を検出し、この充電流量値が通常の1/2以下となった時に燃料電池を停止するとしている。しかし、電源システムを負荷に電気を供給しながら充電する場合、バッテリー容量は正確に確認することは難しい。一般的にバッテリー(2次電池)容量を検知する手段としては、充電放電を数十分以上停止して開放電圧を計測するか、一定の充電あるは放電であれば電流を計測する方法もある。しかし、この方法では外部負荷に変動がある場合正確なバッテリー(2次電池)容量は計測できない。
【0006】
また、前記従来技術のうち、後者の野外用燃料電池電源は、バッテリー(2次電池)はバッファー的な役割を持たせているにすぎず、基本的に負荷出力は燃料電池発電出力と同等またはそれ以下となり、負荷出力が小さい場合は低い発電効率で運転されることになる。すなわち、負荷が小さい場合、制御用の消費電力がシステム効率に大きく左右される課題がある。
また、燃料電池の燃料となる水素は、水素吸蔵合金容器(MHキャニスター)から水素を供給しているが、燃料電池出力を高出力に対応するには、MHキャニスターサイズを大きくし、放出時吸熱するため容器を均一に加熱する必要がある。一般的にMHの加熱源には燃料電池の排熱を利用している。しかし、MHキャニスターが大きくなると燃料電池の排熱を均一に伝えることが難しく、このため発電出力を大きくすることは簡単ではない。
【0007】
なお、燃料電池の耐久性は、一般的に報告されているのは単体セルの評価のみで、システムの耐久性としてはあまり公開されていない。負荷変動に対応した燃料電池電源システムでは5,000時間程度が限界と考えられ、数年間続けて運転するものに対しては課題がある。
【0008】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、負荷変動のある外部負荷に対し、高い効率で燃料電池を稼働でき、また、燃料電池を含むシステムの耐久性を向上させることができる燃料電池電源システムおよびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の燃料電池電源システムのうち第1の本発明は、
外部負荷に電気を供給する二次電池と、
前記二次電池を充電する燃料電池と、
前記燃料電池に水素を供給する水素吸蔵合金容器と、
前記二次電池の電圧を測定する二次電池電圧測定部と、
前記燃料電池の出力を測定する燃料電池出力測定部と、
前記燃料電池の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記二次電池電圧測定部および前記燃料電池出力測定部の測定結果を受け、前記二次電池電圧測定部の測定結果によって前記二次電池の電圧が所定の電圧を下回ると判定すると前記燃料電池を起動し、前記燃料電池が動作した前記充電中に前記燃料電池出力測定部の測定結果によって前記燃料電池の出力が所定の出力を下回ると判定すると前記燃料電池の動作を停止することを特徴とする。
【0010】
上記本発明によれば、二次電池から外部負荷に電気が供給され、二次電池の電圧と燃料電池の出力とによって燃料電池の充電動作を制御することができ、負荷変動のある外部負荷に対しても、高い効率で充電と燃料電池の稼働を行うことができる。
なお、制御部は、CPUとこれを動作させるプログラムとを主にして構成することができる。また、この他に、リレーなどを用いた電気回路で構成することもできる。
また、二次電池は、バッテリー容量を負荷出力容量に合わせたものを用いることができる。二次電池の種別は本発明としては特に限定されるものではなく、鉛電池、Ni−水素電池、Liイオン電池などを使用することができる。
また、本発明の燃料電池電源システムは可搬性に優れ、商用電源の行き届かない場所での電源用あるいは非常用電源に好適に使用することができる。
【0011】
第2の本発明の燃料電池電源システムは、前記第1の本発明において、前記制御部は、前記燃料電池の動作制御を、前記水素吸蔵合金容器からの水素供給量の調整によって行うことを特徴とする。
【0012】
上記本発明によれば、燃料電池の動作制御を水素吸蔵合金容器からの水素流量の増減や、水素供給のON−OFFなどによって行うことができる。
【0013】
第3の本発明の燃料電池電源システムは、前記第1または第2の本発明において、前記所定の出力は、前記二次電池の充電に際し電池容量が定格電池容量の80%に達する時点での燃料電池の出力として、予め決定されていることを特徴とする。
【0014】
上記本発明によれば、充電効率が低下する定格電池容量80%以上での充電を停止して、全体としての充電効率を高めることができる。なお、上記所定の出力の決定は、二次電池に対する初期時の充電特性によって定めることができる。
【0015】
第4の本発明の燃料電池電源システムは、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記所定の出力が、前記燃料電池の定格出力の40%として、予め決定されていることを特徴とするの燃料電池電源システム。
【0016】
上記本発明によれば、充電効率および燃料電池効率に好適な閾値を定めて燃料電池の動作を制御することができる。
【0017】
第5の本発明の燃料電池電源システムは、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記所定の電圧が、前記二次電池の定格電圧として、予め決定されていることを特徴とする。
【0018】
第6の本発明の燃料電池電源システムは、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記水素吸蔵合金容器は、可搬型で、常温で水素放出が可能な水素吸蔵合金が収容されており、前記水素吸蔵合金容器に収容されている水素吸蔵合金の最大水素吸蔵量が1m以下であって、
前記燃料電池は、固体高分子型であり、定格出力が500W以下であることを特徴とする。
【0019】
上記本発明によれば、燃料電池電源システムを可搬型にして野外での電源として容易に使用することを可能にする。水素吸蔵合金の最大水素吸蔵量が1mを越えると、水素吸蔵合金容器のサイズを大きくする必要があり可搬性に劣る。また、燃料電池が定格出力で500Wを越えると、これに供給するための水素吸蔵合金容器のサイズが必然的に大きくなり、可搬性に劣ることになる。また、燃料電池は低出力機器を使用するためシステムが単純であり低コスト化が可能となる。
【0020】
第7の本発明の燃料電池電源システムは、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、当該システムを駆動する駆動電源を有し、該駆動電源は、前記燃料電池が停止している間は、駆動対象を制限したセーブモードに移行することを特徴とする。
【0021】
上記本発明によれば、充電を停止している間は、燃料電池電源システムでの電力使用量を小さくすることができる。
【0022】
第8の本発明の燃料電池電源システムは、前記第7の本発明において、前記駆動電源に、前記二次電池を含むことを特徴とする。
【0023】
上記本発明によれば、二次電池を駆動電源の全部または一部として使用することが出来る。
【0024】
第9の本発明の燃料電池電源システムは、前記第7または第8の本発明において、前記セーブモードでは、前記二次電池電圧測定部の駆動と、前記二次電池電圧測定部の測定結果に応じて前記燃料電池を起動する動作を行う前記制御部の一部の駆動のみを対象とすることを特徴とする。
【0025】
上記本発明によれば、燃料電池の制御に必要な電力のみを使用することができる。
【0026】
第10の本発明の燃料電池電源システムの制御方法は、二次電池を燃料電池で充電しつつ前記二次電池から外部負荷に電気を供給する燃料電池電源システムを制御する方法であって、
前記二次電池の電圧が所定の電圧を下回ると判定する場合、前記燃料電池を起動し、前記燃料電池が動作した前記充電中に前記燃料電池の出力が所定の出力を下回ると判定する場合、前記燃料電池の動作を停止することを特徴とする。
【0027】
上記本発明によれば、効率的な充電および燃料電池の稼働を行うようにシステムを制御することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上、説明したように、本発明によれば、常に燃料電池は高い効率(FC効率)で発電され、かつ、二次電池への充電ロスを小さくして充電することができる。
また、二次電池を使用することによって、燃料電池出力よりも大きい容量の電源負荷に対応できる。
正確に把握が可能な二次電池の電圧および燃料電池の出力に応じて燃料電池を制御することで、燃料電池を連続して運転することなく稼動時間を抑えることで燃料電池およびシステム全体の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の燃料電池電源システムの制御ブロック図である。
【図2】同じく、制御方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】同じく、二次電池である鉛バッテリーの特性を示すグラフである。
【図4】同じく、充電時のバッテリー容量と燃料電池の出力との関係を示すグラフである。
【図5】同じく、二次電池に対する充電時の過充電を説明する図である。
【図6】同じく、燃料電池出力とFC効率との関係を示すグラフである。
【図7】同じく、燃料電池電源システムの評価試験結果を示すグラフである。
【図8】同じく、シミュレーションによるバッテリー容量とシステム効率の時間的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の一実施形態の燃料電池電源システムを添付図面に基づいて説明する。
【0031】
なお、下記用語は以下に定義される。
・FC効率(燃料電池効率):FCユニット単体の効率で、供給水素量に対し得られたFC出力の割合。
・システム効率:システム全体の効率で、供給水素量に対し得られたシステム出力の割合。
(計算式:出力Wh/(水素量NL×2.9944)×100)
・充電ロス:二次電池において、充電に要した電力量と放電し得られた電力量の割合。
・稼働率:システムの稼動(負荷に電源供給)時間に対する燃料電池の稼働時間の割合。
【0032】
燃料電池電源システム1は、鉛バッテリーなどからなる二次電池2を備えており、二次電池2は、外部負荷容量に合わせた性能を有している。二次電池2の定格容量は、可搬性を考慮して例えば80Ah以下とする。
二次電池2の出力は、直接または図示しないDC/DCコンバーターやDC/ACコンバーター、給電用の制御器などを介して外部負荷に供給される。二次電池2には、出力電圧を測定する二次電池電圧計10が接続されており、二次電池電圧計10の測定結果は、制御部7に送信される。二次電池電圧計10は、本発明の二次電池電圧測定部に相当する。
【0033】
二次電池2には、固体高分子型の燃料電池3の出力側が接続されている。燃料電池3は、可搬性を考慮して例えば定格出力500W以下とする。燃料電池3の出力側には、燃料電池3の出力電流を計測する燃料電池電流計12が介設されている。燃料電池電流計12の測定結果は、制御部7に送信される。また、燃料電池3には、燃料電池3の出力電圧を測定する燃料電池電圧計11が接続されており、燃料電池電圧計11の測定結果は制御部7に送信される。燃料電池電圧計11と燃料電圧電流計12とは、協働して本発明の燃料電池出力測定部として機能する。
なお、二次電池2と燃料電池3とは直接接続してもよく、また、図示しないDC/DCコンバーターやDC/ACコンバーター、充電用の制御器などを介して接続してもよい。
【0034】
燃料電池3には、可搬型の水素吸蔵合金容器4が水素供給管5を介して接続されており、燃料電池3へ原料としての水素を供給することができる。なお、可搬型とは、設置固定されるものではなく、燃料電池電源システム内の部材として移動可能であることを意味している。
水素吸蔵合金容器4には、常温で水素放出が可能な水素吸蔵合金(図示しない)が収容されており、水素吸蔵合金容器4における最大水素吸蔵量は1m以下である。水素吸蔵合金としては、AB系合金、AB系合金などを用いることができる。なお、水素吸蔵合金容器4は、燃料電池3の排熱を水素吸蔵合金の水素放出の駆動源に利用することができるが、排熱を利用しない構成や燃料電池が停止していて排熱を利用できない場合にも、常温で水素吸蔵合金から水素を放出することができる。例えば水素放出可能な温度としては、15℃を例示することができる。
水素供給管5には、電磁弁6が介設されており、水素供給管5を通る水素の流量の調整および水素の供給遮断が可能になっている。電磁弁6には、制御部7から制御信号が送信されて開度が調整される。
【0035】
制御部7は、CPUとこれを動作させるプログラムとを主として構成されており、制御部7には、燃料電池3の動作を制御する動作パラメータなどを記憶した記憶部70を有している。記憶部70には、燃料電池3を起動する際の閾値となる二次電池2の所定の電圧がデータとして記憶され、さらに動作中の燃料電池3を停止する際の閾値となる燃料電池3の所定の出力がデータとして記憶されている。
制御部7は、上記したように燃料電池3の起動と停止の制御を行うとともに、燃料電池3の出力に応じて電磁弁6の開度を調整し、燃料電池3への水素の供給量を適正量に調整することができる。
【0036】
制御部7には、制御部7を駆動し、さらに電磁弁6や図示しない制御器などを駆動するように二次電池2が接続されている。したがって、二次電池2は、本発明の駆動電源として作用する。なお、本発明としては、二次電池2とともに、または二次電池とは別に駆動電源8を有し、上記駆動を行うものであってもよい。
また、制御部7では、セーブモード用のCPUまたは動作領域を有しており、二次電池電圧計10の測定結果を受信し、記憶部70のデータを読み出して測定結果と読み出しデータとの対比や対比結果に基づいて電磁弁6を駆動する動作に対し電力を供給するセーブモード用電力供給ラインと、制御部7の他の部分への電力供給ラインとが独立している。電力供給ラインの選定は、セーブモードで動作する制御部7で実行することができ、セーブモードでは、セーブモード用電力供給ラインにのみ二次電池2(または二次電池2および/または駆動電源8)から電力が供給され、他の電力供給ラインへの電力供給を遮断することができるように構成されている。
【0037】
以下に、燃料電池電源システム1における制御手順を図2のフローチャートに基づいて説明する。制御は、制御部7によって自動的に実行される。なお、本発明の制御方法では、以下の手順に基づいて手動で燃料電池3の制御を行うことも可能であり、その際に記憶部70からのデータ読み出しは必須とされるものではない。
【0038】
燃料電池電源システム1の稼働開始に際しては、二次電池2からの電力供給を制限するセーブモードで制御部7を稼働する。または、セーブモードでなく、通常のモードで稼働する。
まず、二次電池2の出力電圧を監視して起動信号を出す制御2の手順を実行する。
すなわち、制御部7では、二次電池電圧計10の測定結果を受けるとともに、記憶部70から二次電池2に関する所定電圧データを読み出す。この例では、所定の電圧は定格電圧である。前記測定結果と読み出しデータとを対比し、二次電池電圧が定格電圧未満であるかを判定する(ステップs1)。この例では、誤差などを考慮して二次電池電圧が定格電圧を3%下回ったら定格電圧未満と判定する。測定電圧が定格電圧以上の場合、セーブモードの状態ではセーブモードを維持し、セーブモードでない場合はセーブモードに移行し、上記ステップs1の判定を繰り返す(ステップs2)。
【0039】
ステップs1で、測定電圧が定格電圧未満の場合、燃料電池を制御する制御1の手順を実行する。この例では、測定電圧が定格電圧を3%下回らなければ定格電圧以上と判定する。制御1では、先ずセーブモードを解除する(ステップs3)。
なお、上記では、定格電圧以上か、定格電圧未満かで判定を行う際に、定格電圧に対し3%下回るかで判定を行ったが、本発明としては、定格電圧を下回る閾値(所定の電圧)を適宜定め、この閾値を基準にして判定を行うことが可能である。
【0040】
ステップs3後、燃料電池3を起動する(ステップs4)。燃料電池3の起動では、充電用の制御器などを有する場合には、これを含む燃料電池システムとして起動する。
燃料電池3の起動後は、二次電池2の充電を行う(ステップs5)。
【0041】
二次電池2の充電では、燃料電池電圧計11および燃料電池電流計12の測定結果に基づいて制御部7で燃料電池3の発電出力を算出する。なお、二次電池2では、充電の進行とともに充電電流が低下し、これに伴って燃料電池3の発電出力が低下する。
また、これとともに記憶部70から燃料電池3に関する所定の出力データを読み出し、前記で算出した出力と対比する。なお、この例では、所定の出力は、燃料電池の定格出力の40%で設定されている。
発電出力が所定の出力以上である場合、ステップs5の手順に戻って充電を継続する。
発電出力が所定の出力未満である場合、燃料電池3または燃料電池システムを停止し(ステップs7)、制御1を抜けて制御2のステップs1に戻り、二次電池2の電圧監視を行う。二次電池2の電圧が定格電圧以上であれば、セーブモードに移行し(ステップs2)、燃料電池電源システム1における電力消費を最小にする。
【0042】
上記手順を繰り返すことで、燃料電池3の動作制御を適切に行って、効率のよい充電と効率のよい燃料電池稼働とを行うことができ、燃料電池3の稼働効率も向上する。
【実施例1】
【0043】
以下に、本発明の実施例を説明する。
図3は、容量20Ah、定格電圧12Vの鉛バッテリーに充電した後の、放電の進行による開放電圧を計測した結果を示すものである。この試験により開放電圧とバッテリー容量との関係を把握した。
ディープサイクルの鉛バッテリーは、一般的に下限が30%程度まで使用できる。その時の開放電圧は、図3に示されるように鉛バッテリーの定格電圧とほぼ一致する。このことから、燃料電池の起動はバッテリー電圧が定格電圧を下回ったときに起動するよう制御すればよい。起動時の基準は二次電池が鉛バッテリー以外の場合でも同様である。
【0044】
また、定格50Wの燃料電池にて、容量20Ahの鉛バッテリーに充電した時のFC出力とバッテリー容量との関係を把握した(図4参照)。充電の進行(バッテリー容量の増加)に伴って燃料電池出力は低下する。燃料電池の出力が20W(定格出力の40%)に至ると、バッテリー容量は略80%となる。したがって、燃料電電池の出力が所定値、ここでは定格出力の40%を下回ると、バッテリー容量が80%以上になって充電効率が低下する。このため、燃料電池の出力が所定値を下回る場合には、燃料電池を停止することでシステムの効率を向上させることができる。
なお、二次電池の容量が異なる場合、二次電池容量を小さくすると燃料電池出力は小さくなり、二次電池容量を大きくすると燃料電池出力は大きくなる。二次電池の放電状態によって燃料電池の出力は変わる。すなわち、燃料電池と二次電池の組み合わせによって燃料電池の定格出力は変わってくる。そして、二次電池の容量に見合う出力を燃料電池は有することが必要になる。このような条件では、図4に示すように、二次電池の容量の大きさに拘わらず、充電時には、燃料電池の定格出力に対する比率が40%のときに二次電池容量はおおよそ80%程度になっている。したがって、燃料電池の動作制御では、充電時に燃料電池の出力が40%を下回ると、燃料電池の動作を制御するのが充電効率の点で望ましい。
一般的に二次電池に充電する時は、図5に示すように、バッテリー容量の1.2倍から1.6倍の容量で充電される。また、二次電池に充電したバッテリー容量に対して使用できる容量は15%程度の充電ロスが生じる。この充電ロスは、バッテリー容量がフル(100%)に近くなるほど大きくなる。このため、二次電圧容量が80%以下で燃料電池から充電されるように制御される。
【0045】
さらに、燃料電池単体の特性調査として、定格50Wの燃料電池における出力とFC効率の関係を把握した(図6参照)。燃料電池の出力が20W以上(定格出力の40%以上)でFC効率が顕著に向上している。
これらの試験結果から、燃料電池からバッテリー(二次電池)に充電する際、燃料電池の効率(FC効率)を高い状態でバッテリーに充電するため、燃料電池を定格出力の40%以上で運転するように制御するのが好ましい。
【0046】
図7に、容量20Ah、定格電圧12Vの鉛バッテリーと定格50Wの燃料電池を使用し、図2に示した制御手順で燃料電池電源システムを稼働させた際の評価試験結果を示す。
出力負荷は5W一定とし、定格50Wの燃料電池電源を稼働率33%で運転した。
安定した出力とシステム効率が得られた。
【0047】
また、同条件によるシミュレーション結果を図8に示す。シミュレーションの結果、バッテリー容量が50〜70%の範囲で運転され、システム効率は約31%と良い一致を示した。
【0048】
さらに、シミュレーションによる負荷出力に対するシステム効率および燃料電池稼働率を評価した。その結果を表1に示す。
負荷が燃料電池の定格の1/5(10W)以下になってもシステム効率が落ちることはない。出力に応じて燃料電池の稼働率を大きく下げることができ、耐久性が向上する。また、二次電池の選択によって燃料電池の出力以上の負荷にも対応が可能となる。
【0049】
【表1】

【符号の説明】
【0050】
1 燃料電池電源システム
2 二次電池
3 燃料電池
4 水素吸蔵合金容器
5 水素供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部負荷に電気を供給する二次電池と、
前記二次電池を充電する燃料電池と、
前記燃料電池に水素を供給する水素吸蔵合金容器と、
前記二次電池の電圧を測定する二次電池電圧測定部と、
前記燃料電池の出力を測定する燃料電池出力測定部と、
前記燃料電池の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記二次電池電圧測定部および前記燃料電池出力測定部の測定結果を受け、前記二次電池電圧測定部の測定結果によって前記二次電池の電圧が所定の電圧を下回ると判定すると前記燃料電池を起動し、前記燃料電池が動作した前記充電中に前記燃料電池出力測定部の測定結果によって前記燃料電池の出力が所定の出力を下回ると判定すると前記燃料電池の動作を停止することを特徴とする燃料電池電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記燃料電池の動作制御を、前記水素吸蔵合金容器からの水素供給量の調整によって行うことを特徴とする請求項1記載の燃料電池電源システム。
【請求項3】
前記所定の出力は、前記二次電池の充電に際し電池容量が定格電池容量の80%に達する時点での燃料電池の出力として、予め決定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池電源システム。
【請求項4】
前記所定の出力が、前記燃料電池の定格出力の40%として、予め決定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池電源システム。
【請求項5】
前記所定の電圧が、前記二次電池の定格電圧として、予め決定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池電源システム。
【請求項6】
前記水素吸蔵合金容器は、可搬型で、常温で水素放出が可能な水素吸蔵合金が収容されており、前記水素吸蔵合金容器に収容されている水素吸蔵合金の最大水素吸蔵量が1m以下であって、
前記燃料電池は、固体高分子型であり、定格出力が500W以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池電源システム。
【請求項7】
当該システムを駆動する駆動電源を有し、該駆動電源は、前記燃料電池が停止している間は、駆動対象を制限したセーブモードに移行することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池電源システム。
【請求項8】
前記駆動電源に、前記二次電池を含むことを特徴とする請求項7記載の燃料電池電源システム。
【請求項9】
前記セーブモードでは、前記二次電池電圧測定部の駆動と、前記二次電池電圧測定部の測定結果に応じて前記燃料電池を起動する動作を行う前記制御部の一部の駆動のみを対象とすることを特徴とする請求項7または8に記載の燃料電池電源システム。
【請求項10】
二次電池を燃料電池で充電しつつ前記二次電池から外部負荷に電気を供給する燃料電池電源システムを制御する方法であって、
前記二次電池の電圧が所定の電圧を下回ると判定する場合、前記燃料電池を起動し、前記燃料電池が動作した前記充電中に前記燃料電池の出力が所定の出力を下回ると判定する場合、前記燃料電池の動作を停止することを特徴とする燃料電池電源システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−114909(P2013−114909A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260166(P2011−260166)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】