説明

燃焼器ライナ

【課題】整備性及び熱耐久性が高い燃焼器ライナの提供。
【解決手段】燃焼領域13を囲うと共に複数のエフュージョン冷却孔が形成された内壁部30と、内壁部30に対し間をあけて設けられると共に複数のインピンジ冷却孔が形成された外壁部20とを備える二重壁冷却構造の燃焼器のライナ12であって、内壁部30は、分割された複数の板状部材40から形成されており、複数の板状部材40のそれぞれを挿抜自在にガイドすると共に、複数の板状部材40のそれぞれを熱膨張による変形を吸収可能な間隔をあけて支持する支持案内手段50を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器ライナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン等の燃焼器は、高温の燃焼ガスに曝されるため、燃焼領域を囲うライナを冷却する必要がある。燃焼器ライナを冷却する手段として、インピンジメント冷却(impingement cooling)方式がある。本方式は、ライナ壁を内壁部と外壁部の二重壁構造とし、外壁部に複数のインピンジ冷却孔を形成することによって、燃焼器の内外の差圧を利用して、インピンジ冷却孔から冷却ガスを内壁部に向けて噴射・衝突させることで、燃焼ガスに曝される側に配置される内壁部を冷却する方式である。
【0003】
また、燃焼器ライナを冷却する手段として、エフュージョン冷却(effusion cooling)方式がある。本方式は、内壁部に複数のエフュージョン冷却孔を形成することによって、二重壁間を流通する冷却ガスによる対流冷却に加えて、その冷却ガスをエフュージョン冷却孔から燃焼領域側に流出させ、高温の燃焼ガスに曝される内壁部の表面にガスフィルムを形成して冷却する方式である。
【0004】
下記特許文献1には、インピンジメント冷却方式とエフュージョン冷却方式とを併せ持つ二重壁冷却構造の燃焼器ライナが開示されている。この燃焼器ライナは、燃焼領域側にハチの巣状(ハニカム状)に冷却ガスを流出せしめることを特徴としており、内壁部を正六角形の複数の内壁用部材で構成し、各内壁用部材を、所定形状の接合部材を介して外壁用部材と接合することによって支持している。この接合部材の内壁用部材及び外壁用部材への接合は、拡散溶接によりなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−254317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、接合部材を介して内壁用部材及び外壁用部材を拡散溶接等によって一体的に接合した場合、整備性が悪くなるという問題がある。すなわち、熱膨張等によって内壁用部材にクラック(亀裂)が入った場合に、ライナ部品一式を全て交換する必要がある。
【0007】
また、接合部材を介して内壁用部材及び外壁用部材を拡散溶接等によって一体的に接合した場合、熱耐久性が悪くなるという問題がある。すなわち、二重壁冷却構造を採用する場合、高温の燃焼ガスに曝される内壁部と、低温の冷却ガスが流通している外壁部とでは、熱膨張差が大きい。そうすると、内壁用部材の自由な熱膨張が当該接合によって阻害され、過大な熱応力が発生し、クラックが入り易くなる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、整備性及び熱耐久性が高い燃焼器ライナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、燃焼領域を囲うと共に複数のエフュージョン冷却孔が形成された内壁部と、上記内壁部に対し間をあけて設けられると共に複数のインピンジ冷却孔が形成された外壁部とを備える二重壁冷却構造の燃焼器ライナであって、上記内壁部は、分割された複数の板状部材から形成されており、上記複数の板状部材のそれぞれを挿抜自在にガイドすると共に、上記複数の板状部材のそれぞれを熱膨張による変形を吸収可能な間隔をあけて支持する支持案内手段を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、内壁部を形成する複数の板状部材のそれぞれが支持案内手段によって挿抜自在にガイドされるので、整備すべき板状部材を選択的に取り外すことが容易に可能となる。また、支持案内手段は、複数の板状部材のそれぞれを熱膨張による変形を吸収可能な間隔をあけて支持するので、板状部材のそれぞれが自由に熱膨張でき、過大な熱応力の発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明においては、上記支持案内手段は、上記板状部材の両側をガイドするレール部材を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、レール部材によって板状部材の両側がガイドされ、レールが延在する方向に板状部材が挿抜自在となる。
【0011】
また、本発明においては、上記支持案内手段に支持された上記板状部材を上記外壁部に対して位置決めする位置決め手段を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、外壁部に対して板状部材を位置決めすることによって、二重壁間のクリアランスが一定に規定されるため、冷却効率を考慮した板状部材の形状等の設計が容易になる。
【0012】
また、本発明においては、上記位置決め手段は、上記板状部材と上記外壁部との間の距離を保持すると共に上記外壁部に対して上記板状部材の熱膨張方向に可動自在な可動部材とを有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、外壁部に対する板状部材の距離を保持しつつ、板状部材が熱膨張しても、その熱膨張に応じて可動部材が外壁部に対して可動するので、当該位置決めによって板状部材の熱膨張が阻害されることはない。
【0013】
また、本発明においては、上記位置決め手段は、上記可動部材と、上記板状部材と上記外壁部との間の距離を保持すると共に上記外壁部に対して固定される固定部材と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、固定部材及び可動部材で外壁部に対する板状部材の距離を保持しつつ、固定部材を中心として板状部材が熱膨張しても、その熱膨張に応じて可動部材が外壁部に対して可動するので、当該位置決めによって板状部材の熱膨張が阻害されることはない。
【0014】
また、本発明においては、上記固定部材は、上記板状部材の中央位置に配置され、上記可動部材は、上記板状部材の中央位置の周りに1または複数配置されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、板状部材の中央位置に固定部材を配置すれば、熱膨張によって発生する板状部材の縁部の変位量は略均一になるため、クリアランスや板状部材の形状等の設計が容易になる。
【0015】
また、本発明においては、上記燃焼領域に燃料を供給する燃料供給ノズルが周方向に間隔をあけて複数配置されるアニュラー形状を呈しており、上記支持案内手段に支持された上記複数の板状部材は、上記周方向に配置された上記複数の燃料供給ノズルと対応して配置されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、アニュラー(環)型のライナの周方向おいては、燃料供給ノズルが配置された位置に応じて燃焼が生じ、また、温度分布が生じることから、燃料供給ノズルの配置に応じて板状部材を配置することによって、分割された各板状部材の熱膨張を偏らせることなく略均一にすることができる。
【0016】
また、本発明においては、上記板状部材には、上記外壁部に向かって突出する複数の放熱ピンが設けられているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、高温に曝される板状部材の熱を、伝熱により二重壁間に導くと共に、二重壁間における熱放出面積を増加させて、二重壁間を流通する冷却ガスによる冷却効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、整備性及び熱耐久性が高い燃焼器ライナが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態における燃焼器ライナを有するガスタービンの構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態における燃焼器の構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態における内壁部を形成する板状部材の斜視図である。
【図4】図1の矢視A−Aにおけるライナの断面構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態における支持案内手段の要部拡大図である。
【図6】本発明の第2実施形態における燃焼器の構成図である。
【図7】本発明の第2実施形態における位置決め手段の構成図である。
【図8】本発明の第2実施形態における固定部材と可動部材との配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における燃焼器ライナを有するガスタービン1の構成図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン4とを有する。圧縮機2は、吸気口5から外気を吸気し、吸気した外気を、タービン軸6と共に回転する圧縮機動翼7と、ハウジング8に固定された圧縮機静翼9と、の間で圧縮して昇圧させる構成となっている。昇圧した圧縮空気は、燃焼器3が配置された圧縮空気室10に供給される。
【0021】
燃焼器3は、燃料供給ノズル11を介して供給される燃料ガスと、圧縮機2から供給される圧縮空気とを混合し、その混合ガスを、ライナ12によって形成される燃焼領域13内において燃焼させ、その燃焼ガスをタービン4に供給する構成となっている。
タービン4は、タービン軸6と共に回転するタービン動翼14と、ハウジング8に固定されたタービン静翼15とによって、燃焼器3から供給される燃焼ガスから回転運動エネルギーを得る構成となっている。タービン翼を通過した燃焼ガスは、排気口16を介して外部に排気される。
【0022】
燃焼器3は、圧縮空気室10内に設置されている。圧縮空気室10は、ハウジング8により外郭が構成され、タービン軸6周りに環状空間を形成する。燃焼器3は、圧縮空気室10の環状空間に沿って設けられたライナ(燃焼器ライナ)12を有する。本実施形態のライナ12は、タービン軸6周りに沿って環形状(アニュラー形状)を呈する、いわゆるアニュラー型ライナを採用している。なお、ライナ12としては、円筒状を呈する、いわゆるカン(缶)型ライナを採用しても良い。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態における燃焼器3の構成図である。
ライナ12の圧縮機2から圧縮空気が供給される側(紙面左側)には、燃料供給ノズル11が接続されている。燃料供給ノズル11は、環状となったライナ12に対し、所定間隔毎に複数接続されている。各燃料供給ノズル11の周りには、スワラ18が設けられている。スワラ18は、圧縮機2から供給された圧縮空気を、燃料供給ノズル11近傍から燃焼領域13に導き入れると共に旋回流を与えて、圧縮空気と燃料ガスとが混合した混合ガスを生成する構成となっている。
【0024】
ライナ12は、外壁部20と内壁部30とを備える二重壁冷却構造を有する。内壁部30は、燃焼領域13に面し、燃焼領域13を囲う構成となっている。外壁部20は、内壁部30に対し間をあけて設けられている。すなわち、内壁部30と外壁部20との間には、符号Sで示す領域(以下、間隙Sと称する)が形成されている。
外壁部20には、複数のインピンジ冷却孔21が形成されている。インピンジ冷却孔21は、圧縮空気室10から圧縮空気(冷却ガス)を間隙Sに導き入れて、内壁部30に向けて噴射・衝突させることで、燃焼領域13側に配置されている内壁部30を冷却する構成となっている。
【0025】
図3は、本発明の第1実施形態における内壁部30を形成する板状部材40の斜視図である。
内壁部30は、分割された複数の板状部材40から形成されている。すなわち、本実施形態では、複数の板状部材40が集まって、一つの内壁部30が形成されている。板状部材40は、平面視で略長方形状を呈している。板状部材40には、複数のエフュージョン冷却孔31と、複数のピン(放熱ピン)32とが設けられている。
【0026】
エフュージョン冷却孔31は、傾斜して形成されており、図2に示すように、間隙Sと燃焼領域13を連通させる構成となっている。インピンジ冷却孔21から間隙Sに導入された圧縮空気は、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、エフュージョン冷却孔31を流通し、内壁部30の熱を奪って燃焼領域13側に流出する。そして、燃焼領域13側に流出した圧縮空気は、内壁部30の内面(外壁部20と対向する側と逆側の面)30aに沿って流れて空気膜を形成し、燃焼領域13から内壁部30に伝わる入熱を低減させるよう機能する。
【0027】
ピン32は、間隙Sにおいて、外壁部20に向かって突出して設けられている。このピン32は、板状部材40に一体で形成、あるいは溶接、または別部品として嵌合させる等により形成されている。ピン32は、高温に曝される内面30a側からの熱を、伝熱により間隙S内に導くと共に、間隙Sにおける板状部材40の熱放出面積を増加させて、間隙Sを流通する圧縮空気による冷却効率を高めるよう機能する。
【0028】
図4は、図1に示す矢視A−Aにおけるライナ12の断面構成図である。図5は、本発明の第1実施形態における支持案内手段50の要部拡大図である。なお、図4では、ライナ12の内殻側は不図示とし、ライナ12の外殻側のみの断面概略図を示している。また、図4及び図5では、視認性の向上のため、エフュージョン冷却孔31やピン32等を不図示としている。
図4及び図5に示すように、外壁部20には、上記構成の板状部材40を支持案内する支持案内手段50が設けられている。支持案内手段50は、複数の板状部材40のそれぞれを挿抜自在にガイドすると共に、複数の板状部材40のそれぞれを熱膨張による変形を吸収可能な間隔をあけて支持する構成となっている。
【0029】
支持案内手段50は、板状部材40の両側をガイドするレール部材51を有する。本実施形態のレール部材51は、ライナ長さ方向(図4及び図5において紙面垂直方向)に延在して設けられている。また、本実施形態のレール部材51は、ライナ周方向において間隔をあけて複数設けられている。支持案内手段50は、複数のレール部材51によって形成される板状部材40を収容可能なスロットをライナ周方向に複数備えている。そして、板状部材40は、レール部材51によって両側がガイドされ、レール部材51が延在するライナ長さ方向に挿抜自在とされている。
【0030】
レール部材51は、図5に示すように、板状部材40の側面側をガイドするガイド部52と、板状部材40の底面側を支持する支持部53とを有する。ガイド部52は、外壁部20に溶接等により接合され、外壁部20からその内側に向かって立設している。支持部53は、ガイド部52に一体で形成されており、ガイド部52の立設方向と直交する方向に突出するフック形状を呈している。
【0031】
隣り合うレール部材51の対向し合う支持部53同士の間の距離は、板状部材40の幅よりも小さくなっている。板状部材40と支持部53とは、内壁部30と外壁部20との間の領域(間隙S)と、燃焼領域13との圧力差によって接触している。この圧力差は、圧縮機2から圧縮空気室10に供給される圧縮空気の圧力により生じるものである。この間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、板状部材40が支持部53に押し付けられることにより、板状部材40と支持部53と間の気密性が確保される。
【0032】
一方、隣り合うレール部材51の対向し合うガイド部52同士の間の距離は、板状部材40の幅よりも大きくなっている。より詳しくは、隣り合うレール部材51の対向し合うガイド部52同士の間の距離は、燃焼器3の稼動時における板状部材40の熱膨張に応じた距離に設定されている。この距離は、燃焼器3の稼動時に板状部材40が曝される温度、板状部材40の材質の線膨張係数、板状部材40の形状等に基づいて導出される。なお、板状部材40は、耐熱性の金属材から形成されており、より詳しくは、ニッケル系やコバルト系の金属材から形成されている。
【0033】
図4に示すように、支持案内手段50に支持された複数の板状部材40は、ライナ周方向に配置された複数の燃料供給ノズル11と対応して配置されている。燃料供給ノズル11は、ライナ周方向において間隔をあけて複数(本実施形態では12ノズル)配置されており、内壁部30は、燃料供給ノズル11と同数で分割された複数枚(本実施形態では12枚)の板状部材40から形成されている。本実施形態の各燃料供給ノズル11と、各板状部材40とは、それぞれ一対一で配置されている。
【0034】
続いて、上記構成を有する燃焼器3のライナ12に係る作用効果について説明する。
【0035】
図2に示すように、外壁部20外側を流動する圧縮空気は、燃焼器3の内外の差圧によりインピンジ冷却孔21に導入される。インピンジ冷却孔21に導入された圧縮空気は、内壁部30に衝突し、燃焼領域13側に配置されている内壁部30を冷却する。
内壁部30に衝突した圧縮空気は、立設するピン32の間を流通する。ピン32は、高温に曝される内面30a側からの熱を伝熱により間隙S内に導くと共に、間隙Sにおける内壁部30の熱放出面積を増加させて、間隙Sを流通する圧縮空気による冷却効率を高める。
【0036】
ピン32の間を流通した圧縮空気の一部は、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、エフュージョン冷却孔31に導入される。エフュージョン冷却孔31に導入された圧縮空気は、傾斜した長い経路を流通する過程で内壁部30の熱を奪って燃焼領域13側に流出する。そして、燃焼領域13側に流出した圧縮空気は、内壁部30の内面30aに沿って流れて空気膜を形成し、燃焼領域13から内壁部30に伝わる入熱を低減させるよう機能する。
このように、本実施形態の二重壁冷却構造によれば、インピンジ冷却、ピン32による伝熱促進、傾斜エフュージョン冷却の3つの冷却機能を併せ持つため、高い冷却性能が得られる。
【0037】
本実施形態の内壁部30は、分割構造であるため整備性に優れる。内壁部30を形成する複数の板状部材40のそれぞれは、図4及び図5に示すように、外壁部20に設けられた支持案内手段50によって支持されている。支持案内手段50は、板状部材40の両側をガイドするレール部材51を有しており、レール部材51が延在する方向に板状部材40が挿抜自在とされている。本実施形態のレール部材51は、ライナ長さ方向に延在しており、保持器であるリテーナ19(図2参照)を外せば、板状部材40をライナ長さ方向に容易に抜き取ることができる。したがって、特定の板状部材40にクラック等が入り損傷した場合には、その損傷した板状部材40のみを選択的に取り外して交換や補修等を行うことができる。
【0038】
また、支持案内手段50は、図5に示すように、複数の板状部材40のそれぞれを熱膨張による変形を吸収可能な間隔をあけて支持する。板状部材40は、レール部材51に対して接合されておらず、また、燃焼器3の稼動時の熱膨張を考慮した間隔をあけてガイド部52が配置されているので、その熱膨張が阻害されず、過大な熱応力が発生することはない。なお、燃焼器3の稼動時には、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、板状部材40が支持部53に押し付けられるため、板状部材40と支持部53と間の気密性は確保される。したがって、板状部材40と支持部53と間のクリアランスにより、上述した冷却機能の効率が低下することもない。したがって、本実施形態の内壁部30は、熱耐久性に優れる。
【0039】
また、本実施形態では、図4に示すように、燃焼領域13に燃料を供給する燃料供給ノズル11がライナ周方向に間隔をあけて複数配置され、支持案内手段50に支持された複数の板状部材40は、ライナ周方向に配置された複数の燃料供給ノズル11と対応して配置されている。アニュラー型のライナ12においては、燃料供給ノズル11が配置された位置に応じて燃焼が生じ、また、それに応じてライナ周方向に温度分布が生じる。このため、燃料供給ノズル11の配置に応じて板状部材40を配置することによって、分割された各板状部材40の熱膨張を偏らせることなく略均一にすることができる。これにより、各板状部材40が自由に熱膨張するための、隣り合うレール部材51の対向し合うガイド部52同士の間の距離の調整等が容易となり、結果、熱耐久性が向上する。
【0040】
したがって、上述の本実施形態によれば、燃焼領域13を囲うと共に複数のエフュージョン冷却孔31が形成された内壁部30と、内壁部30に対し間をあけて設けられると共に複数のインピンジ冷却孔21が形成された外壁部20とを備える二重壁冷却構造の燃焼器3のライナ12であって、内壁部30は、分割された複数の板状部材40から形成されており、複数の板状部材40のそれぞれを挿抜自在にガイドすると共に、複数の板状部材40のそれぞれを熱膨張による変形を吸収可能な間隔をあけて支持する支持案内手段50を有するという構成を採用することによって、複数の板状部材40のそれぞれが支持案内手段50によって挿抜自在にガイドされるので、整備すべき板状部材40を選択的に取り外すことができる。また、支持案内手段50は、複数の板状部材40のそれぞれを熱膨張による変形を吸収可能な間隔をあけて支持するので、板状部材40のそれぞれが自由に熱膨張でき、過大な熱応力の発生を抑制することができる。
したがって、本実施形態では、整備性及び熱耐久性が高い燃焼器3のライナ12が得られる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図6は、本発明の第2実施形態における燃焼器3の構成図である。
【0042】
図6に示すように、第2実施形態では、支持案内手段50のレール部材51がライナ周方向に延在して配置されている点で、上述した第1実施形態と異なる。すなわち、第2実施形態では、板状部材40が、ライナ周方向において挿抜自在にガイドされる構成となっている。
また、ライナ12の構成が、燃料供給ノズル11が接続されるライナ根元側と、その逆のライナ先端側とで異なっている。ライナ先端側には、位置決め手段60が設けられている。
【0043】
図7は、本発明の第2実施形態における位置決め手段60の構成図である。
位置決め手段60は、支持案内手段50に支持された板状部材40を外壁部20に対して位置決めする構成となっている。上述した第1実施形態では、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、板状部材40を支持部53に押し付け、内壁部30と外壁部20との二壁間のクリアランスを維持していた。しかし、そのようにすると、所定の冷却効率を得るためには、二重壁間のクリアランスが最悪の場合を想定して、板状部材40の大きさや形状等を設計する必要がある。
【0044】
そこで、第2実施形態では、位置決め手段60によって、外壁部20に対して板状部材40を位置決めし、二重壁間のクリアランスを一定に規定することとしている。これにより、二重壁間のクリアランスの管理が容易となり、併せて冷却効率を考慮した板状部材40の形状等の設計が容易になる。
位置決め手段60は、板状部材40と外壁部20との間の距離を保持すると共に外壁部20に対して固定される固定部材61と、板状部材40と外壁部20との間の距離を保持すると共に外壁部20に対して板状部材40の熱膨張方向に可動自在な可動部材62とを有する。
【0045】
固定部材61及び可動部材62はそれぞれ、板状部材40に削り出しや溶接、または別部品として嵌合させる等によって設けられたネジ63と、ネジ63に螺合するナット64とを有する。固定部材61のネジ63は、外壁部20の内側と外側とに配置されたナット64によって締結固定され、外壁部20に対して相対移動不可な構成となっている。一方、可動部材62のネジ63は、ネジ63よりも大きく形成された外壁部20の孔部22を挿通し、外側に配置されたナット64に螺合して、外壁部20に対して少なくとも板状部材40と平行な面方向に相対移動可能な構成となっている。
【0046】
図8は、本発明の第2実施形態における固定部材61と可動部材62との配置を示す平面図である。
図8に示すように、固定部材61は、板状部材40の中央位置に配置され、可動部材62は、板状部材40の中央位置の周りに4つ、略等間隔で配置されている。板状部材40の中央位置に固定部材61を配置すると、固定部材61を中心として板状部材40の熱膨張が発生することとなる。
【0047】
上記構成によれば、固定部材61及び可動部材62によって、外壁部20に対する板状部材40の距離を保持することができる。また、固定部材61を中心として板状部材40が熱膨張しても、その熱膨張に応じて可動部材62が外壁部20に対して可動するので、当該位置決めによって板状部材40の熱膨張が阻害されることはない。
また、板状部材40の中央位置に固定部材61を配置すれば、当該固定点からの熱膨張によって発生する板状部材40の縁部の変位量は略均一になるため、板状部材40の形状や孔部22の形状若しくはそれらの大きさ、クリアランス等の設計が容易になる。
【0048】
なお、上記構成の位置決め手段60を設けると、クリアランスの管理が容易になるものの拘束点が生じるので、上述した第1実施形態の構成の方が熱耐久性に関しては比較的有利である。そこで、図6に示すように、第2実施形態では、燃焼ガスにより高温(例えば2000℃)の雰囲気に曝されるライナ根元側においては第1実施形態と同様の構成を採用し、ライナ根元側よりも温度の低いライナ先端側においては位置決め手段60を採用している。これにより、温度分布に応じた効果的なライナ構造とすることが可能となる。
【0049】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、位置決め手段60は、固定部材61と可動部材62とによって構成したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、可動部材62のみで位置決め手段60を構成してもよい。また、上記実施形態の可動部材62の個数や配置は一例であって、一つであってもよいし、また配置も等間隔でなくともよい。
【0051】
また、例えば、上記実施形態では、固定部材61及び可動部材62はそれぞれ、ネジ63とナット64等とを組み合わせて構成されると説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ピンとフランジとを組み合わせた構成としても良い。
【0052】
また、例えば、上記実施形態では、ガスタービンの燃焼器に本発明を適用したが、他の燃焼器、例えばジェットエンジンのアフターバーナー等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
12…ライナ(燃焼器ライナ)、11…燃料供給ノズル、13…燃焼領域、20…外壁部、21…インピンジ冷却孔、30…内壁部、31…エフュージョン冷却孔、32…ピン(放熱ピン)、40…板状部材、50…支持案内手段、51…レール部材、60…位置決め手段、61…固定部材、62…可動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼領域を囲うと共に複数のエフュージョン冷却孔が形成された内壁部と、前記内壁部に対し間をあけて設けられると共に複数のインピンジ冷却孔が形成された外壁部とを備える二重壁冷却構造の燃焼器ライナであって、
前記内壁部は、分割された複数の板状部材から形成されており、
前記複数の板状部材のそれぞれを挿抜自在にガイドすると共に、前記複数の板状部材のそれぞれを熱膨張による変形を吸収可能な間隔をあけて支持する支持案内手段を有することを特徴とする燃焼器ライナ。
【請求項2】
前記支持案内手段は、前記板状部材の両側をガイドするレール部材を有することを特徴とする請求項1に記載の燃焼器ライナ。
【請求項3】
前記支持案内手段に支持された前記板状部材を前記外壁部に対して位置決めする位置決め手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の燃焼器ライナ。
【請求項4】
前記位置決め手段は、前記板状部材と前記外壁部との間の距離を保持すると共に前記外壁部に対して前記板状部材の熱膨張方向に可動自在な可動部材を有することを特徴とする請求項3に記載の燃焼器ライナ。
【請求項5】
前記位置決め手段は、
前記可動部材と、
前記板状部材と前記外壁部との間の距離を保持すると共に前記外壁部に対して固定される固定部材と、を有することを特徴とする請求項4に記載の燃焼器ライナ。
【請求項6】
前記固定部材は、前記板状部材の中央位置に配置され、
前記可動部材は、前記板状部材の中央位置の周りに1または複数配置されていることを特徴とする請求項5に記載の燃焼器ライナ。
【請求項7】
前記燃焼領域に燃料を供給する燃料供給ノズルが周方向に間隔をあけて複数配置されるアニュラー形状を呈しており、
前記支持案内手段に支持された前記複数の板状部材は、前記周方向に配置された前記複数の燃料供給ノズルと対応して配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃焼器ライナ。
【請求項8】
前記板状部材には、前記外壁部に向かって突出する複数の放熱ピンが設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃焼器ライナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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