説明

燃焼器ライナ

【課題】熱負荷に対する耐久性を向上させることのできる燃焼器ライナの提供。
【解決手段】燃焼領域を囲う内壁部30と該内壁部30に対し間をあけて設けられた外壁部20とを備える二重壁構造を有し、内壁部30と外壁部20との間に流通する圧縮空気を内壁部30に形成されたエフュージョン冷却孔から燃焼領域側に流出させる燃焼器のライナであって、内壁部30は、分割された複数の板状部材40から形成されており、複数の板状部材40は、隣り合う板状部材40の板面の一部が互いに重複して配列されているという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器ライナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン等の燃焼器は、高温の燃焼ガスに曝されるため、燃焼領域を囲うライナを冷却する必要がある。特許文献1には、燃焼領域を囲う内壁部と該内壁部に対し間をあけて設けられた外壁部とを備える二重壁構造を有し、内壁部と外壁部との間に流通する冷却ガスを内壁部に形成された冷却孔から燃焼領域側に流出させる冷却方式(所謂、エフュージョン冷却方式)を採用する燃焼器ライナが開示されている。
【0003】
エフュージョン冷却方式を採用する場合、冷却孔に冷却ガスを効率的に流すため、二重壁間の領域と燃焼領域との圧力差を確保する必要がある。ところで、燃焼領域側の内壁部を一体化することは、その構造上の問題、また、加工性やコスト等の関係で困難であるため、パネル化することが一般的である。しかしながら、燃焼領域側の内壁部をパネル化している場合、隣り合うパネル同士の隙間からの冷却ガスのリークが発生し、上記圧力差を確保することが困難となる。
【0004】
このため、特許文献1の燃焼器ライナでは、分割したパネルの周囲に二重壁のギャップに相当する高さの仕切り壁を形成し、パネルをバスタブ構造としている。そして、隣り合うパネルの仕切り壁同士を互いに接触させることで、パネル間の隙間の気密性を確保し、二重壁間の領域と燃焼領域との圧力差を維持する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−336845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パネルをバスタブ構造とすると、隣り合うパネル間の境界には仕切り壁が存在することとなる。そうすると、二重壁間を流通する冷却ガスが、パネル間を跨いで行き来することができず、冷却ガスの流れが滞る上に、当該境界付近では冷却ガスが流通できないので、無冷却の状態となり、その部分が高温となる。これにより急激な温度分布が発生すると、過大な熱応力発生の原因になる等、燃焼器ライナの耐久性上において問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱負荷に対する耐久性を向上させることのできる燃焼器ライナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、燃焼領域を囲う内壁部と該内壁部に対し間をあけて設けられた外壁部とを備える二重壁構造を有し、上記内壁部と上記外壁部との間に流通する冷却ガスを上記内壁部に形成された冷却孔から上記燃焼領域側に流出させる燃焼器ライナであって、上記内壁部は、分割された複数の板状部材から形成されており、上記複数の板状部材は、隣り合う板状部材の板面の一部が互いに重複して配列されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、内壁部を分割された複数の板状部材で形成し、隣り合う板状部材同士が部分的な重なりを持つ積層構造とすることにより、板状部材間の気密性を確保し、且つ、従来技術のような仕切り壁が存在しないため、内壁部と外壁部との間の冷却ガスは、板状部材間を行き来して、ライナ壁全面で流動することが可能となる。これにより、板状部材間の境界付近の領域においても、それ以外の領域と同等の冷却性能が確保される。したがって、壁部が局所的に高温となることや、その温度分布による過大な熱応力の発生が防止され、ライナ耐久性が向上する。
【0009】
また、本発明においては、上記重複する板状部材同士は、上記内壁部と上記外壁部との間の領域と、上記燃焼領域との圧力差によって接触しているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、隣り合う板状部材同士に部分的な重なりを持たせることで、二壁間の領域と燃焼領域との圧力差によって、重複する板状部材同士が押し付けられるため、板状部材間の気密性を確保することができる。
【0010】
また、本発明においては、上記板状部材は、上記外壁部に支持された支持部材によって支持されており、上記支持部材は、上記支持する板状部材に対して上記外壁部側において重なる板状部材がある場合、それらが重なる重複領域近傍に沿って配置されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、燃焼領域側の板状部材を支持する支持部材の支持位置を、それらが重なる重複領域に沿って配置することで、圧力差によって外壁部側の板状部材が、燃焼領域側の板状部材に押し付けられる場合等、その押し付けによる荷重を支持部材に適切に受けさせることができる。
【0011】
また、本発明においては、上記複数の板状部材は、ライナ長さ方向またはライナ周方向における上記燃焼ガスの流れに関し、上記板状部材が、その流れの下流側で隣り合う上記板状部材の上記燃焼領域側において重なるよう順次配列されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、燃焼領域側に流出した冷却ガスが、燃焼ガスの流れに伴って、ライナ長さ方向またはライナ周方向で隣り合う板状部材間を上流から下流に流動するときの、冷却ガスの流れの円滑性を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱負荷に対する耐久性を向上させることのできる燃焼器ライナが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における燃焼器ライナを有するガスタービンの構成図である。
【図2】本発明の実施形態における燃焼器の構成図である。
【図3】本発明の実施形態における板状部材の配列を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における板状部材の配列を示す平面図である。
【図5】図2において符号Aで示す部分の拡大図である。
【図6】図2における矢視B−B断面図である。
【図7】本発明の別実施形態における板状部材を示す斜視図である。
【図8】本発明の別実施形態における板状部材の配列を説明するための図である。
【図9】本発明の別実施形態における板状部材間のシール構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態における燃焼器ライナを有するガスタービン1の構成図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン4とを有する。圧縮機2は、吸気口5から外気を吸気し、吸気した外気を、タービン軸6と共に回転する圧縮機動翼7と、ハウジング8に固定された圧縮機静翼9と、の間で圧縮して昇圧させる構成となっている。昇圧した圧縮空気は、燃焼器3が配置された圧縮空気室10に供給される。
【0016】
燃焼器3は、燃料供給ノズル11を介して供給される燃料ガスと、圧縮機2から供給される圧縮空気とを混合し、その混合ガスを、ライナ12によって形成される燃焼領域13内において燃焼させ、その燃焼ガスをタービン4に供給する構成となっている。
タービン4は、タービン軸6と共に回転するタービン動翼14と、ハウジング8に固定されたタービン静翼15とによって、燃焼器3から供給される燃焼ガスから回転運動エネルギーを得る構成となっている。タービン翼を通過した燃焼ガスは、排気口16を介して外部に排気される。
【0017】
燃焼器3は、圧縮空気室10内に設置されている。圧縮空気室10は、ハウジング8により外郭が構成され、タービン軸6周りに環状空間を形成する。燃焼器3は、圧縮空気室10の環状空間に沿って設けられたライナ(燃焼器ライナ)12を有する。本実施形態のライナ12は、タービン軸6周りに沿って略環状を呈する、いわゆるアニュラー型ライナを採用している。なお、ライナ12としては、円筒状を呈する、いわゆるカン(缶)型ライナを採用しても良い。
【0018】
図2は、本発明の実施形態における燃焼器3の構成図である。
図2に示すように、ライナ12の圧縮機2から圧縮空気が供給される側(紙面左側)には、燃料供給ノズル11が接続されている。燃料供給ノズル11は、環状となったライナ12に対し、所定間隔毎に複数接続されている。各燃料供給ノズル11の周りには、スワラ18が設けられている。スワラ18は、圧縮機2から供給された圧縮空気を、燃料供給ノズル11近傍から燃焼領域13に導き入れると共に旋回流を与えて、圧縮空気と燃料ガスとが混合した混合ガスを生成する構成となっている。
【0019】
ライナ12は、外壁部20と内壁部30とを備える二重壁冷却構造を有する。内壁部30は、燃焼領域13に面し、燃焼領域13を囲う構成となっている。外壁部20は、内壁部30に対し間をあけて設けられている。すなわち、内壁部30と外壁部20との間には、符号Sで示す領域(以下、間隙Sと称する)が形成されている。
外壁部20には、複数のインピンジ冷却孔21が形成されている。インピンジ冷却孔21は、圧縮空気室10から圧縮空気(冷却ガス)を間隙Sに導き入れて、内壁部30に向けて噴射・衝突させることで、燃焼領域13側に配置されている内壁部30を冷却する構成となっている。
【0020】
一方、内壁部30には、複数のエフュージョン冷却孔(冷却孔)31が形成されている。エフュージョン冷却孔31は、間隙Sと燃焼領域13を連通させる構成となっている。インピンジ冷却孔21から間隙Sに導入された圧縮空気は、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、エフュージョン冷却孔31を流通し、内壁部30の熱を奪って燃焼領域13側に流出する。そして、燃焼領域13側に流出した圧縮空気は、内壁部30の内面(外壁部20と対向する側と逆側の面)30aに沿って流れて空気膜を形成し、燃焼領域13から内壁部30に伝わる入熱を低減させるよう機能する。
【0021】
また、内壁部30には、複数のピン32が形成されている。ピン32は、間隙Sにおいて、内壁部30から外壁部20に向かって突出して設けられている。このピン32は、内壁部30に一体で形成、あるいは溶接等により一体的に形成されている。ピン32は、高温に曝される内面30a側からの熱を、伝熱により間隙S内に導くと共に、間隙Sにおける内壁部30の熱放出面積を増加させて、間隙Sを流通する圧縮空気による冷却効率を高めるよう機能する。
【0022】
上記構成の内壁部30は、分割された複数の板状部材40から形成されている。複数の板状部材40は、隣り合う板状部材40の板面の一部が互いに重複して配列されている。
図3は、本発明の実施形態における板状部材40の配列を示す斜視図である。図4は、本発明の実施形態における板状部材40の配列を示す平面図である。なお、同図では、視認性の向上のため、エフュージョン冷却孔31やピン32等を不図示としている。
【0023】
図3及び図4に示すように、複数の板状部材40のそれぞれは、平面視で矩形状(本実施形態では長方形状)に形成されている。この板状部材40は、耐熱性を有するニッケルやコバルト系の金属材から形成されている。複数の板状部材40は、隣り合う板状部材40の板面の一部が互いに重複して、マトリックス(行列)状に配列されている。すなわち、個々の板状部材40の四辺のいずれもが、隣り合う板状部材40の一部と、一定の重なりを持って配列されている。
【0024】
板状部材40は、外壁部20に支持された支持部材50によって支持されている。支持部材50は、ボルト51と、ナット52とを有する。ボルト51は、燃焼領域13側から板状部材40及び外壁部20を挿通し、その先端部が圧縮空気室10側に突出している。ナット52は、圧縮空気室10側に突出したボルト51の先端部に螺合している。ナット52は、圧縮空気室10側において外壁部20と係止することでボルト51を支持している。ボルト51は、燃焼領域13側においてそのヘッドが板状部材40と係止することで板状部材40を支持している。なお、燃焼領域13側に配置されるボルト51は、耐熱性を有するニッケル系やコバルト系の金属材から形成することが好ましい。
【0025】
図5は、図2において符号Aで示す部分の拡大図である。なお、同図においても、視認性の向上のため、エフュージョン冷却孔31やピン32等を不図示としている。
図5に示すように、重複する板状部材40同士は、内壁部30と外壁部20との間の領域(間隙S)と、燃焼領域13との圧力差によって接触している。この圧力差は、圧縮機2から圧縮空気室10に供給される圧縮空気の圧力により生じるものである。すなわち、本実施形態のように隣り合う板状部材40同士に部分的な重なりを持たせることで、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、重複する板状部材40同士が押し付けられるため、板状部材40間の気密性を確保することができる。
【0026】
なお、板状部材40は、外壁部20に対して、ボルト51のヘッドとナット52との間の所定範囲において相対移動自在に支持されている。ここで、板状部材40には同図において不図示のピン32(図2参照)が設けられており、ピン32がスペーサとして機能するため、例えば外壁部20と板状部材40とが密着して圧縮空気が間隙Sに導入されず、圧力差が確保されないといったことを防止することができる。なお、ピン32とは別に専用のスペーサを設けても良い。
【0027】
支持部材50は、図5に示すように、支持する板状部材40(符号40Aで示す)に対して外壁部20側において重なる板状部材40(符号40Bで示す)がある場合、それらが重なる重複領域X近傍の位置を支持するように配設されている。このように、燃焼領域13側の板状部材40を支持する支持部材50の支持位置を、それらが重なる重複領域X近傍の位置に設定することで、圧力差によって外壁部20側の板状部材40Bが、燃焼領域13側の板状部材40Aに押し付けられる場合に、その押し付けによる荷重を支持部材50に適切に受けさせることができる。
【0028】
図2に戻り、内壁部30を形成する複数の板状部材40は、燃焼領域13における燃焼ガスの流れ方向に応じた方向に配列されている。同図において符号F1が付された矢印は、ライナ長さ方向(タービン軸6の軸方向)に関する燃焼ガスの流れを示している。
図2に示すように、複数の板状部材40は、ライナ長さ方向における燃焼ガスの流れF1に関し、板状部材40が、その流れの下流側で隣り合う板状部材40の燃焼領域13側において重なるよう順次配列されている。
【0029】
図6は、図2における矢視B−B断面図である。同図において符号F2が付された矢印は、ライナ周方向に関する燃焼ガスの流れを示している。すなわち、燃焼ガスは、スワラ18の作用によって旋回流が付与され、ライナ長さ方向だけでなくライナ周方向にも流れが生じており、全体として燃料供給ノズル11を中心とした螺旋状の流れとなっているためである。
図6に示すように、複数の板状部材40は、ライナ周方向における燃焼ガスの流れF2に関し、板状部材40が、その流れの下流側で隣り合う板状部材40の燃焼領域13側において重なるよう順次配列されている。
【0030】
続いて、上記構成を有する燃焼器3のライナ12の冷却構造に係る作用効果について説明する。
【0031】
図2に示すように、外壁部20外側を流動する圧縮空気は、燃焼器3の内外の差圧によりインピンジ冷却孔21に導入される。インピンジ冷却孔21から導入された圧縮空気は、間隙Sを流通する。ここで、内壁部30は、分割された複数の板状部材40から形成されており、複数の板状部材40は、隣り合う板状部材40の板面の一部が互いに重複して配列されている。そして、重複する板状部材40同士は、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって接触している(図5参照)。
【0032】
このように、隣り合う板状部材40同士に部分的な重なりを持たせることで、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、重複する板状部材40同士が押し付けられるため、従来技術のように仕切り壁を形成せずとも、板状部材40間の気密性を確保することができる。また、仕切り壁がないので、圧縮空気は、間隙Sにおいて板状部材40間を行き来して、ライナ12の壁面全域で流動することができる。そうすると、板状部材40間の境界付近の領域においても、それ以外の領域と同等の冷却性能が確保される。したがって、壁部が局所的に高温となることや、その温度分布による過大な熱応力の発生が防止され、ライナ12の熱的な耐久性が向上する。
【0033】
また、本実施形態においては、板状部材40は、外壁部20に支持された支持部材50によって支持されており、図5に示すように、支持部材50は、支持する板状部材40Aに対して、外壁部20側における板状部材40Bが重なる重複領域Xに沿って配置され、重複領域X近傍の位置を支持している。このため、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって外壁部20側の板状部材40Bが、燃焼領域13側の板状部材40Aに押し付けられる荷重を、支持部材50に適切に受けさせることができる。また、支持部材50は、板状部材40をそれぞれ独立して支持しており、板状部材40はそれぞれ独立して自由に熱伸びできるので、内壁部30が一体ものの場合よりも、内壁部30全体で発生する熱応力が低下する。
【0034】
また、間隙Sを流通する圧縮空気は、間隙Sと燃焼領域13との圧力差によって、やがてエフュージョン冷却孔31を通り、内壁部30の熱を奪って燃焼領域13側に流出する。ここで、図2に示すように、複数の板状部材40は、ライナ長さ方向における燃焼ガスF1の流れに関し、板状部材40が、その流れF1の下流側で隣り合う板状部材40の燃焼領域13側において重なるよう順次配列されている。したがって、燃焼領域13側に流出した圧縮空気が、燃焼ガスの流れF1に伴って、ライナ長さ方向で隣り合う板状部材40間を上流から下流に流動するときの、空気の流れの円滑性を確保することができる。すなわち、当該配置を逆に配置した場合には、板状部材40間に当該空気の流れを堰き止めようとする段差が生じることとなるが、図2に示すように配列すれば、そのようなことはない。
【0035】
また、図6に示すように、複数の板状部材40は、ライナ周方向における燃焼ガスF2の流れに関し、板状部材40が、その流れF2の下流側で隣り合う板状部材40の燃焼領域13側において重なるよう順次配列されている。したがって、同様に、燃焼領域13側に流出した圧縮空気が、燃焼ガスの流れF2に伴って、ライナ周方向で隣り合う板状部材40間を上流から下流に流動するときの、空気の流れの円滑性を確保することができる。
このように、内壁部30を形成する複数の板状部材40は、燃焼領域13における燃焼ガスの流れ方向に応じた方向に配列されている。この構成によれば、燃焼領域13側に流出した圧縮空気による内壁部30の内面30aに沿う流れの円滑性を確保し、膜冷却(所謂、フィルム冷却)の機能を十分に発揮させることができる。
【0036】
したがって、上述の本実施形態によれば、燃焼領域13を囲う内壁部30と該内壁部30に対し間をあけて設けられた外壁部20とを備える二重壁構造を有し、内壁部30と外壁部20との間に流通する圧縮空気を内壁部30に形成されたエフュージョン冷却孔31から燃焼領域13側に流出させる燃焼器3のライナ12であって、内壁部30は、分割された複数の板状部材40から形成されており、複数の板状部材40は、隣り合う板状部材40の板面の一部が互いに重複して配列されているという構成を採用することによって、内壁部30を分割された複数の板状部材40で形成し、隣り合う板状部材40同士が部分的な重なりを持つ積層構造とすることにより、板状部材40間の気密性を確保し、且つ、従来技術のような仕切り壁が存在しないため、内壁部30と外壁部20との間の圧縮空気は、板状部材40間を行き来して、ライナ壁全面で流動することが可能となる。これにより、板状部材40間の境界付近の領域においても、それ以外の領域と同等の冷却性能が確保される。したがって、壁部が局所的に高温となることや、その温度分布による過大な熱応力の発生が防止され、ライナ耐久性が向上する。
したがって、本実施形態では、熱負荷に対する耐久性を向上させることのできる燃焼器3のライナ12が得られる。
【0037】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0038】
例えば、図7及び図8に示すように、板状部材40をそれぞれ円弧形状にし、隣り合う板状部材40の板面の一部を互いに重複して配列しても良い。
図7は、本発明の別実施形態における板状部材40を示す斜視図である。図8は、本発明の別実施形態における板状部材40の配列を説明するための図である。
図8に示すように、ライナ中心(符号100で示す)周りに円筒状に板状部材40を配置していく場合、板状部材40を円弧状にすることにより、板状部材40の間を隙間がないように効率的に配列することが可能となる。すなわち、板状部材40が直線状である場合、例えば、図8において符号101で示す円弧中心から接線方向に配置していくことになる。そうすると、板状部材40の間の隙間をなくすためには、端部の一部を削り落とす等の処理が必要になる場合がある。
したがって、板状部材40の枚数を少なくして効率よくライナ12を組み立てるためには、板状部材40を図7に示すように円弧状にした方が好ましい。
なお、板状部材40が直線状であっても一枚当りの長さを短くして配列していけば、端部の一部を削り落とす等することなく、板状部材40の間の隙間をなくすことは可能である。
【0039】
また、例えば、図9に示すように、板状部材40の重複領域Xにスペーサ60を設けても良い。スペーサ60は、円柱状に形成され、板状部材40に一体的に設けられている。この構成によれば、ナット52を締め付けることで、板状部材40に設けられたスペーサ60が、外壁部20に押し付けられるため、圧力差のみならずメカニカルに板状部材40Aと板状部材40Bとの間がシールされる。これにより、重複領域Xにおける気密性をより高めることができる。
【0040】
また、例えば、上記実施形態では、板状部材40と、支持部材50のボルト51とがそれぞれ別体で形成された形態について説明したが、板状部材40とボルト51とが一体として形成された形態を採用しても良い。これにより部品点数を削減することができ、組立性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
12…ライナ(燃焼器ライナ)、13…燃焼領域、20…外壁部、30…内壁部、31…エフュージョン冷却孔(冷却孔)、40…板状部材、50…支持部材、F1…燃焼ガスの流れ、F2…燃焼ガスの流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼領域を囲う内壁部と該内壁部に対し間をあけて設けられた外壁部とを備える二重壁構造を有し、前記内壁部と前記外壁部との間に流通する冷却ガスを前記内壁部に形成された冷却孔から前記燃焼領域側に流出させる燃焼器ライナであって、
前記内壁部は、分割された複数の板状部材から形成されており、
前記複数の板状部材は、隣り合う板状部材の板面の一部が互いに重複して配列されていることを特徴とする燃焼器ライナ。
【請求項2】
前記重複する板状部材同士は、前記内壁部と前記外壁部との間の領域と、前記燃焼領域との圧力差によって接触していることを特徴とする請求項1に記載の燃焼器ライナ。
【請求項3】
前記板状部材は、前記外壁部に支持された支持部材によって支持されており、
前記支持部材は、前記支持する板状部材に対して前記外壁部側において重なる板状部材がある場合、それらが重なる重複領域近傍に沿って配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃焼器ライナ。
【請求項4】
前記複数の板状部材は、ライナ長さ方向またはライナ周方向における前記燃焼ガスの流れに関し、前記板状部材が、その流れの下流側で隣り合う前記板状部材の前記燃焼領域側において重なるよう順次配列されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃焼器ライナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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