説明

爪切り

【解決手段】上刃体5と下刃体6とからなる刃体本体3に対し押圧操作てこ4を回動支持部12で回動可能に支持し、押圧操作てこ4の圧接部8により上刃体5上で上刃体5を押圧して上刃先5aと下刃先6aとを互いに当接させる使用状態Qを取り得る。使用状態Qでは、押圧操作てこ4の圧接部8を互いに異なる形態に変更して、上刃体5に対する押圧操作てこ4の離間距離Hを互いに相違させるとともに上刃先5aと下刃先6aとの間隔Sを互いに相違させた複数の押圧可能状態を取り得る。
【効果】手のサイズや爪のサイズなどの使用者の身体的条件に応じて使用状態Qにおける押圧可能状態を変更することができるので、爪切りの使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先を有する両刃体からなる刃体本体を操作部で押圧して両刃体の刃先を互いに当接させることができる使用状態を取り得る爪切りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示された爪切りでは、上刃先を有する上刃体と下刃先を有する下刃体とからなる刃体本体に対し押圧操作てこを回動支持部で回動可能に支持し、その押圧操作てこに設けた圧接部によりこの上刃体上で上刃体を押圧して上刃先と下刃先とを互いに当接させることができる使用状態を取り得る。この押圧操作てこにおいて、圧接部は、下記特許文献1の力点部に該当し、てこ本体に対し移動可能に支持され、上刃体に対し押圧操作てこを倒した不使用状態と、上刃体に対し押圧操作てこを起こした使用状態とを取り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−93006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように押圧操作てこの圧接部が上刃体上で上刃体を押圧し得る使用状態では、一つの押圧可能状態しか取り得ないので、上刃体に対する押圧操作てこの離間距離が一定になって手のサイズに応じた爪切りの使い勝手が悪くなったり、上刃先と下刃先との間隔が一定になって爪のサイズに応じた爪切りの使い勝手が悪くなったりするおそれがあった。
【0005】
この発明は、例えば手のサイズや爪のサイズに応じた爪切りの使い勝手を良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜7に示す第1実施形態、図8〜9に示す第2実施形態、図10〜11に示す第2実施形態の別例)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる爪切り(第1実施形態に対応)においては、上刃先5aを有する上刃体5と下刃先6aを有する下刃体6とからなる刃体本体3に対し押圧操作てこ4を回動支持部12で回動可能に支持し、その押圧操作てこ4に設けた圧接部8によりこの刃体本体3を押圧して上刃先5aと下刃先6aとを互いに当接させることができる使用状態Qを取り得る。この使用状態Qでは、押圧操作てこ4と刃体本体3との相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。例えば、この相対位置関係の相違とは、上刃先5aと下刃先6aとを互いに当接させる操作方向への押圧操作てこ4の回動位置が互いに異なることである。
【0007】
請求項2の発明にかかる爪切り(第1実施形態に対応)においては、上刃先5aを有する上刃体5と下刃先6aを有する下刃体6とからなる刃体本体3に対し押圧操作てこ4を回動支持部12で回動可能に支持し、その押圧操作てこ4に設けた圧接部8によりこの刃体本体3を押圧して上刃先5aと下刃先6aとを互いに当接させることができる使用状態Qを取り得る。この使用状態Qでは、押圧操作てこ4と刃体本体3との相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得るように押圧操作てこ4と刃体本体3との間で作用する変更手段を設けた。例えば、この相対位置関係の相違とは、上刃先5aと下刃先6aとを互いに当接させる操作方向への押圧操作てこ4の回動位置が互いに異なることである。
【0008】
請求項1〜2の発明では、前記使用状態Qにおける押圧可能状態Q1,Q2が複数設定されているので、使用者の身体的条件に応じてその押圧可能状態Q1,Q2を変更すれば、爪切りの使い勝手を良くすることができる。
【0009】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明(第1実施形態に対応)において、前記変更手段は、固定部9と可動部29とを有する変形部8を有し、その固定部9に対し可動部29を移動可能に支持して、その変形部8を互いに異なる複数の形態に変更し得る。請求項3の発明では、固定部9と可動部29とを有する変形部8において固定部9に対し可動部29を移動させて変形部8を互いに異なる複数の形態に変更するだけの簡単な構成により、押圧操作てこ4と刃体本体3との相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。
【0010】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明(第1実施形態に対応)において、前記変更手段の変形部は、上刃体5上で上刃体5を押圧し得るように押圧操作てこ4に設けた圧接部8であって、その圧接部8を互いに異なる形態に変更して、使用状態Qで押圧操作てこ4と上刃体5との相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。請求項4の発明では、変更手段の変形部を押圧操作てこ4の圧接部8により兼用して部品点数を減らした簡単な構成にすることができる。
【0011】
請求項1の発明を前提とする請求項5の発明(第1実施形態に対応)において、前記押圧操作てこ4は上刃体5上で上刃体5を押圧し、この押圧操作てこ4の基端部が前記回動支持部12で回動可能に支持され、この回動支持部12から延びるこの押圧操作てこ4の先端部が上刃体5に対しなす位置を互いに異なるように変更して、使用状態Qで複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。請求項5の発明では、手のサイズが大きい使用者は上刃体5に対する押圧操作てこ4の離間距離Hを大きくし、手のサイズが小さい使用者は上刃体5に対する押圧操作てこ4の離間距離Hを小さくすれば、爪切りの使い勝手を良くすることができる。
【0012】
請求項6の発明にかかる爪切りは、第1実施形態と第2実施形態及びその別例とに対応し、刃先5a,6a,41a,42aを有する両刃体5,6,41,42からなる刃体本体3,40を操作部4,43で押圧して両刃体5,6,41,42の刃先5a,6a,41a,42aを互いに当接させることができる使用状態Qを取り得る。その使用状態Qでは、両刃体5,6,41,42の刃先5a,6a,41a,42aの間隔Sを互いに相違させた複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。
【0013】
請求項6の発明では、爪のサイズが大きい使用者は両刃体5,6,41,42の刃先5a,6a,41a,42aの間隔Sを大きくし、爪のサイズが小さい使用者は両刃体5,6,41,42の刃先5a,6a,41a,42aの間隔Sを小さくすれば、爪切りの使い勝手を良くすることができる。
【0014】
請求項7の発明にかかる爪切り(第1実施形態に対応)においては、上刃先5aを有する上刃体5と下刃先6aを有する下刃体6とからなる刃体本体3に対し押圧操作てこ4を回動支持部12で回動可能に支持し、その押圧操作てこ4に設けた圧接部8によりこの刃体本体3を押圧して上刃先5aと下刃先6aとを互いに当接させることができる使用状態Qを取り得る。その使用状態Qでは、上刃体5の上刃先5aと下刃体6の下刃先6aとの間隔Sを互いに相違させた複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。
【0015】
請求項7の発明では、爪のサイズが大きい使用者は上下両刃体5,6の刃先5a,6aの間隔Sを大きくし、爪のサイズが小さい使用者は上下両刃体5,6の刃先5a,6aの間隔Sを小さくすれば、爪切りの使い勝手を良くすることができる。
【0016】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項3の発明または請求項4の発明を前提とする第8の発明(第1実施形態に対応)において、前記変更手段は、可動部29を固定部9内に収容して変形部8の形態を変更し得る収容状態Aと、可動部29を固定部9から突出させて変形部8の形態を変更し得る突出状態Bとを取る。第8の発明では、変形部8の形態を大きく変化させずに使用状態Qにおける押圧可能状態Q1,Q2を可動部29の収容状態Aと突出状態Bとで容易に区別することができる。
【0017】
請求項3の発明または請求項4の発明または第8の発明を前提とする第9の発明(第1実施形態に対応)において、前記変更手段は、固定部9に対し可動部29を回動可能に支持することにより、変形部8を互いに異なる複数の形態に変更し得る。第9の発明では、固定部9に対し可動部29を回動可能に支持するだけの簡単な構成により、変形部8を互いに異なる複数の形態に変更することができる。また、第8の発明については、変形部8において固定部9に対する可動部29の突出寸法を変更し易い。
【0018】
第9の発明を前提とする第10の発明(第1実施形態に対応)において、前記刃体本体3に対し押圧操作てこ4を回動可能に支持する回動支持部12は、上刃体5と下刃体6とに挿通した支軸14を下刃体6に係止するとともに上刃体5上に突出させて上刃体5上でその支軸14に押圧操作てこ4を回動可能に支持したものであり、この回動支持部12における押圧操作てこ4の回動中心線11aと前記可動部29の回動中心線27aとは互いに離間している。第10の発明では、可動部29の回動中心線27aを支軸14の回動中心線11aと並べて配設することにより、回動支持部12と変更手段の変形部8とをコンパクトにまとめることができる。
【0019】
第10の発明を前提とする第11の発明(第1実施形態に対応)にかかる変更手段の変形部8において、可動部29は前記押圧操作てこ4の回動中心線11aの方向の両側に配設された固定部9に配設されている。第11の発明では、可動部29を前記回動支持部12の支軸14を回避して配設することにより、回動支持部12と変更手段の変形部8とをコンパクトにまとめることができる。
【0020】
請求項3の発明、または第8〜11の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第12の発明(第1実施形態に対応)において、前記変更手段の変形部8は押圧操作てこ4に設けられ、その変形部8の可動部29を移動させる操作摘み31を押圧操作てこ4に設けた。第12の発明では、押圧操作てこ4の操作摘み31により可動部29を移動操作し易い。
【0021】
請求項6の発明を前提とする第13の発明(第2実施形態及びその別例に対応)において、前記操作部43は両刃体41,42を互いに開閉させる両柄44,45であって、その両柄44,45の開度を調節する規制部材46により、使用状態Qで複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。第13の発明では、規制部材46により両柄44,45の開度を調節して両刃体41,42の刃先41a,42aの間隔Sを容易に変更することができる。
【0022】
請求項7の発明を前提とする第14の発明(第1実施形態に対応)において、前記押圧操作てこ4は上刃体5上で上刃体5を押圧し、この押圧操作てこ4の基端部が前記回動支持部12で回動可能に支持され、この回動支持部2から延びるこの押圧操作てこ4の先端部が上刃体5に対しなす位置を互いに異なるように変更して、使用状態Qで複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。第14の発明では、手のサイズが大きい使用者は上刃体5に対する押圧操作てこ4の離間距離Hを大きくし、手のサイズが小さい使用者は上刃体5に対する押圧操作てこ4の離間距離Hを小さくすれば、爪切りの使い勝手を良くすることができる。
【0023】
請求項5または請求項7の発明、または第14の発明を前提とする第15の発明(第1実施形態に対応)において、前記押圧操作てこ4は、上刃体5を押圧し得る圧接部8を互いに異なる形態に変更して、使用状態Qで複数の押圧可能状態Q1,Q2を取り得る。第15の発明では、押圧操作てこ4の圧接部8を利用して部品点数を減らした簡単な構成により、複数の押圧可能状態Q1,Q2にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、例えば手のサイズや爪のサイズなどの使用者の身体的条件に応じて使用状態Qにおける押圧可能状態Q1,Q2を変更することができるので、爪切りの使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態にかかる爪飛散防止カバー付き爪切りにおいてその分解斜視図である。
【図2】(a)は第1実施形態にかかる爪飛散防止カバー付き爪切りにおいて押圧操作てこを上刃体上に倒した不使用状態で押圧操作てこの操作摘みを前進位置に切り替えるとともにカバー口蓋を閉塞した状態を示す側面図であり、(b)は同じくカバー口蓋を閉塞した状態を示す平面図であり、(c)は同じくカバー口蓋を開放した状態を示す側面図であり、(d)は上記爪切りにおいて爪飛散防止カバーから取り出した爪切り本体で押圧操作てこを上刃体上に倒した不使用状態を示す側面図である。
【図3】(a)は図2(d)の爪切り本体で押圧操作てこを上刃体上から起こした使用状態を示す側面図であり、(b)は(a)の押圧操作てこを押圧した使用状態を示す側面図である。
【図4】(a)は図3(a)に示す爪切り本体を側面から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく部分拡大断面図である。
【図5】(a)は上記押圧操作てこの操作摘みを後退位置に切り替えた状態を示す図2(a)相当側面図であり、(b)は同じく図2(b)相当平面図であり、(c)は同じく図2(c)相当側面図であり、(d)は同じく図2(d)相当側面図である。
【図6】(a)は図5(d)の爪切り本体で押圧操作てこを上刃体上から起こした使用状態を示す側面図であり、(b)は(a)の押圧操作てこを押圧した使用状態を示す側面図である。
【図7】(a)は図6(a)に示す爪切り本体を側面から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく部分拡大断面図である。
【図8】(a)は第2実施形態にかかる爪切りにおいて両柄間のばねを第一位置に切り替えて両柄を互いに開いた使用状態を示す正面図であり、(b)は(a)の両柄を互いに閉じた使用状態を示す正面図である。
【図9】(a)は第2実施形態にかかる爪切りにおいて両柄間のばねを第二位置に切り替えて両柄を互いに開いた使用状態を示す正面図であり、(b)は(a)の両柄を互いに閉じた使用状態を示す正面図である。
【図10】(a)は第2実施形態の別例にかかる爪切りにおいて両柄間のばねを第一位置に切り替えて両柄を互いに開いた使用状態を示す正面図であり、(b)は(a)の両柄を互いに閉じた使用状態を示す正面図である。
【図11】(a)は第2実施形態の別例にかかる爪切りにおいて両柄間のばねを第二位置に切り替えて両柄を互いに開いた使用状態を示す正面図であり、(b)は(a)の両柄を互いに閉じた使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明の第1実施形態にかかる爪切りについて図1〜7を参照して説明する。
この爪切りは、図1に示すように刃体本体3と押圧操作てこ4とを有する爪切り本体1と、図2(a)(b)(c)及び図5(a)(b)(c)に示すようにこの爪切り本体1を収容する爪飛散防止カバー2とを備えている。
【0027】
前記刃体本体3は、先端部に上刃先5aを有する板状の上刃体5と、先端部に下刃先6aを有する板状の下刃体6とからなり、この上刃体5の基端部とこの下刃体6の基端部とが互いに取着され、この上刃先5aと下刃先6aとが互いに離間するように上刃体5及び下刃体6に持たせた弾性力に抗して上刃先5aと下刃先6aとが互いに当接し得る。なお、この上刃体5及び下刃体6は、ステンレス鋼やチタンやセラミックスなどにより成形されている。
【0028】
前記押圧操作てこ4の基端部から先端部側へてこ本体7が延設され、このてこ本体7の基端部には二股状の両支持腕部9を有する圧接部8が形成されているとともに、このてこ本体7の外周には皮製の指当て7aがてこ本体7の先端部側から基端部側にわたり巻かれている。この圧接部8の両支持腕部9間に形成された切欠凹部10で両支持腕部9には支持突起11が相対向して形成されている。なお、このてこ本体7は、ステンレス鋼やチタンやセラミックスやプラスチックなどにより成形されている。
【0029】
図3(a)及び図4(a)(b)並びに図6(a)及び図7(a)(b)に示すように、前記押圧操作てこ4を前記刃体本体3に対し回動可能に支持する回動支持部12においては、上刃先5a及び下刃先6aの付近で上刃体5及び下刃体6に形成された支持孔13に支軸14がその軸線回りで回動可能に挿通され、その支軸14の下端部に形成された頭部14aが下刃体6の支持孔13の周縁部下側に係止されるとともに、支軸14の上端部が上刃体5上に突出して前記圧接部8の切欠凹部10に挿入され、その支軸14の上端部の外周両側に形成された支持凹部15に前記圧接部8の両支持腕部9の支持突起11が係入されている。従って、押圧操作てこ4は、図2(b)及び図5(b)に示すように上刃体5上で支軸14に対し両支持突起11間を結ぶ回動中心線11aを中心にして回動可能に支持されるとともに、支軸14の回動に伴い支軸14の軸線を中心にして回動し、図2(d)及び図5(d)に示すように上刃体5上に倒されて表側が上を向く不使用状態Pと、図3(a)及び図6(a)に示すように上刃体5上で起こされて上刃体5に対し裏側が上を向いて傾斜する使用状態Qとを取る。
【0030】
前記爪飛散防止カバー2においては、袋部16から底壁部17と両側壁部18とが口部19まで延設されてその底壁部17の上方と口部19とで開放され、その両側壁部18の外側に凹条の爪やすり20が延設されているとともに、その口部19の外側で両側壁部18には口部19を開閉し得る口蓋21が回動可能に支持されている。なお、爪飛散防止カバー2の袋部16や底壁部17や両側壁部18や口蓋21は、ステンレス鋼やアルミニウムやプラスチックなどにより成形されている。この爪飛散防止カバー2に爪切り本体1を収容した状態では、刃体本体3の基端部が袋部16に挿入され、刃体本体3の下刃体6が底壁部17に面し、上下両刃先5a,6aが口部19で露出し、刃体本体3の上刃体5上で押圧操作てこ4が露出して前記不使用状態Pまたは使用状態Qを取る。
【0031】
前記押圧操作てこ4のてこ本体7において、押圧操作てこ4の回動中心線11aの方向の両側で配設された二股状の両支持腕部9を含む圧接部8には表側で形成された山状の力点部22と裏側で形成された非圧接面23とを有し、表側には操作凹所24がこの力点部22に隣接して形成されているとともに、この圧接部8の両支持腕部9にはこの操作凹所24から連続する収容凹部25が形成されている。この力点部22には当接面22aが頂部22bから前記押圧操作てこ4の回動中心線11a側へ傾斜して延びるように形成されている。この操作凹所24及び収容凹部25には、可動レバー26と操作摘み31と止めねじ32と板ばね36などが組み込まれる。なお、この可動レバー26及び操作摘み31も、ステンレス鋼やチタンやセラミックスやプラスチックなどにより成形されている。この可動レバー26は、前記押圧操作てこ4の回動中心線11aに対し操作凹所24側へ離間する位置で力点部22に対し頂部22bの付近で支持ピン27により回動可能に支持された支点部28と、この支点部28から二股状に延びて両収容凹部25に嵌め込まれる可動腕部29と、この可動腕部29とは反対側へ操作凹所24上に向けて二股状に延びる操作腕部30とを有している。この可動腕部29には当接面29aが前記力点部22の当接面22aに隣接して形成され、この両操作腕部30には押接突部30aが形成されている。前記操作凹所24の表側には操作摘み31がてこ本体7の長手方向へ移動可能に嵌め込まれ、その操作摘み31に形成された凹凸状の表面には長手方向の両側で傾斜状の指当てが形成されている。この操作凹所24の裏側に形成された長孔24aから止めねじ32が長孔24aの延設方向に沿って移動可能に挿入されて前記可動レバー26の両操作腕部30間を通ってこの操作摘み31に螺合され、この止めねじ32の下端に形成された頭部32aがこの長孔24aの周縁部に係止されて操作摘み31が操作凹所24の表側から抜け落ちないように保持されるとともに止めねじ32と一体的に移動し得る。前記可動レバー26の両操作腕部30に面する操作摘み31の内側には押接回避凹部34が形成されているとともにこの押接回避凹部34と前記可動レバー26の支点部28との間で押接部35が形成されて押接回避凹部34と並んでいる。この操作凹所24内には二股状の板ばね36が支持され、その板ばね36の両弾性腕部36aが前記止めねじ32の両側に配置されて前記可動レバー26の両操作腕部30を操作摘み31側へ圧接している。この操作凹所24の裏側は止めねじ32の頭部32aが見えないように蓋体33により閉塞されている。
【0032】
図3(a)及び図4(a)(b)に示すように前記操作摘み31を前記可動レバー26の支点部28側へ接近させた前進位置Fに移動させると、前記両操作腕部30が板ばね36の両弾性腕部36aの弾性力により操作摘み31側へ押されて支点部28の回動中心線27aを中心に回動し、この両操作腕部30の押接突部30aがこの操作摘み31の押接回避凹部34に挿入されてその押接突部30aと押接回避凹部34とに形成された斜面が互いに接触し、前記可動レバー26の両可動腕部29が支点部28の回動中心線27aを中心に回動して前記両支持腕部9の収容凹部25に収容された収容状態Aとなり、両可動腕部29の当接面29aが力点部22の当接面22aに対し略面一となった状態で保持される。図6(a)及び図7(a)(b)に示すようにこの操作摘み31を前記可動レバー26の支点部28側から離間させた後退位置Rに移動させると、両操作腕部30の押接突部30aの斜面と操作摘み31の押接回避凹部34の斜面との間で生じる分力により、その押接突部30aがその押接回避凹部34から外れて操作摘み31の押接部35により板ばね36の両弾性腕部36aの弾性力に抗して押されて両操作腕部30が支点部28の回動中心線27aを中心に回動し、可動レバー26の両可動腕部29が支点部28の回動中心線27aを中心に回動して収容凹部25から突出した突出状態Bとなり、両可動腕部29の当接面29aが力点部22の頂部22bから力点部22の当接面22aに対し最大突出寸法約1.3mmで突出して傾斜するように延びて段差をなす。
【0033】
ちなみに、前記固定部としての両支持腕部9と前記可動部としての両可動腕部29とを有する前記変形部としての圧接部8により、押圧操作てこ4側の変更手段が構成され、力点部22の当接面22aや可動腕部29の当接面29aが当接し得る上刃体5の当接面5bにより、上刃体5側の変更手段が構成されている。
【0034】
図2(a)(b)に示す状態では、爪切り本体1の刃体本体3が爪飛散防止カバー2に収容され、その爪飛散防止カバー2の口部19が口蓋21により閉じられているとともに、上刃体5上に押圧操作てこ4が倒されて不使用状態Pになっている。その押圧操作てこ4においては、操作摘み31が前進位置Fにあるため、可動レバー26の両可動腕部29が両支持腕部9の収容凹部25に収容された収容状態Aとなっている。この口蓋21を回動させて口部19から退避させると、図2(c)に示す状態となり、この口蓋21と爪飛散防止カバー2の袋部16とで支えて載置すれば、爪飛散防止カバー2を載置面から浮かすことができ、単に爪飛散防止カバー2の底壁部17を載置するだけの場合と比較して、上下両刃先5a,6aを載置面からより一層浮かすことができる。なお、この爪飛散防止カバー2から爪切り本体1を取り出した状態でその爪切り本体1の使用手順を述べる。
【0035】
図2(d)に示すように不使用状態Pにある爪切り本体1において、押圧操作てこ4を支軸14の軸線回りで回動させるとともに押圧操作てこ4の圧接部8を上下反転させてその圧接部8の力点部22の当接面22aを上刃体5上の当接面5bに当てがうと、図3(a)及び図4(a)(b)に示す使用状態Qとなる。この使用状態Qでは、上刃体5の基端部に対する押圧操作てこ4の先端部の離間距離H(約56mm)を大きく設定することができるとともに、上刃体5の上刃先5aと下刃体6の下刃先6aとの間隔S(約3.2mm)を大きく設定することができる。その際、上刃体5に対する押圧操作てこ4の傾斜角度(約40度)も大きくなる。図3(a)に示す使用状態Qで押圧操作てこ4の先端部と上刃体5の基端部とに指を当てがって押圧操作てこ4を下方へ押さえると、図3(b)に示すように、押圧操作てこ4の力点部22で上刃体5が下方へ押圧されて上刃先5aと下刃先6aとが互いに当接する。その際、上刃体5の基端部に対する押圧操作てこ4の先端部の離間距離hは約23mmである。
【0036】
図5(a)(b)(c)(d)は図2(a)(b)(c)(d)に、図6(a)(b)は図3(a)(b)に、図7(a)(b)は図4(a)(b)に、それぞれ対応し、操作摘み31が前進位置Fから後退位置Rに切り替えられている。従って、図5(d)に示すように不使用状態Pにある爪切り本体1において、押圧操作てこ4を支軸14の軸線回りで回動させるとともに押圧操作てこ4の圧接部8を上下反転させてその圧接部8の力点部22の当接面22aを上刃体5上の当接面5bに当てがうと、図6(a)及び図7(a)(b)に示す使用状態Qとなる。この使用状態Qでは、上刃体5の基端部に対する押圧操作てこ4の先端部の離間距離H(約43mm)を小さく設定することができるとともに、上刃体5の上刃先5aと下刃体6の下刃先6aとの間隔S(約2.2mm)を小さく設定することができる。その際、上刃体5に対する押圧操作てこ4の傾斜角度(約32度)も小さくなる。図6(a)に示す使用状態Qで押圧操作てこ4の先端部と上刃体5の基端部とに指を当てがって押圧操作てこ4を下方へ押さえると、図6(b)に示すように、押圧操作てこ4の力点部22で上刃体5が下方へ押圧されて上刃先5aと下刃先6aとが互いに当接する。その際、上刃体5の基端部に対する押圧操作てこ4の先端部の離間距離hは図3(b)に示す場合と同様に約23mmであるが、図3(b)に示す場合と図6(b)に示す場合とでその離間距離hを互いに異なるようにしてもよい。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態にかかる爪切りについて図8〜9を参照して説明する。
一対の刀身37,38が回動中心部39により開閉可能に支持されてX状に交差し、この両刀身37,38には回動中心部39よりも先端側で刃先41a,42aを有する両刃体41,42が刃体本体40として設けられているとともに、この両刀身37,38には回動中心部39よりも基端側で両柄44,45が操作部43として設けられている。一方の刀身37の柄44には規制部材としての板ばね46がその柄44の長手方向へ複数段階で移動可能に支持されて止めねじ47により取着され、その板ばね46の先端部46aが他方の刀身38の柄45に当接し得る。この止めねじ47を緩めて一方の柄44に対し板ばね46を移動調節すると、板ばね46の先端部46aが他方の柄45に対し当接する位置を図8(a)または図9(a)に示すように変更することができる。従って、図8(a)に示すように板ばね46の弾性力により両柄44,45が互いに開いた使用状態Qでは両柄44,45間の離間距離Hや両刃体41,42の刃先41a,42aの間隔Sを大きく設定することができる押圧可能状態Q1となり、図9(a)に示すように板ばね46の弾性力により両柄44,45が互いに開いた使用状態Qでは両柄44,45間の離間距離Hや両刃体41,42の刃先41a,42aの間隔Sを小さく設定することができる押圧可能状態Q2となる。図8(a)または図9(a)に示す使用状態Qで両柄44,45を板ばね46の弾性力に抗して互いに閉じると、図8(b)または図9(b)に示すように両刃体41,42も互いに閉じて両刃先41a,42aが互いに当接する。なお、一方の柄44で板ばね46を止めねじ47を中心に回動させてその先端部46aを他方の柄45から離せば、板ばね46の弾性力が柄45に作用しない状態で両柄44,45を互いに閉じて保管することができる。
【0038】
図10〜11に示す第2実施形態の別例においては、一方の刀身37の柄44に規制部材として止めねじ47により取着された板ばね46がその止めねじ47を中心に回動可能に支持され、その板ばね46には互いに長さの異なる一対の弾性腕部46b,46cが形成されている。止めねじ47を中心に板ばね46を回動させると、図10(a)に示すように板ばね46の一方の弾性腕部46bが他方の柄45に当接し、図11(a)に示すように板ばね46の他方の弾性腕部46cが他方の柄45に当接する。従って、図10(a)に示すように板ばね46の弾性力により両柄44,45が互いに開いた使用状態Qでは両柄44,45間の離間距離Hや両刃体41,42の刃先41a,42aの間隔Sを大きく設定することができる押圧可能状態Q1となり、図11(a)に示すように板ばね46の弾性力により両柄44,45が互いに開いた使用状態Qでは両柄44,45間の離間距離Hや両刃体41,42の刃先41a,42aの間隔Sを小さく設定することができる押圧可能状態Q2となる。図10(a)または図11(a)に示す使用状態Qで両柄44,45を板ばね46の弾性力に抗して互いに閉じると、図10(b)または図11(b)に示すように両刃体41,42も互いに閉じて両刃先41a,42aが互いに当接する。なお、一方の柄44で板ばね46を止めねじ47を中心に回動させてその両弾性腕部46b,46cを他方の柄45から離せば、板ばね46の弾性力が柄45に作用しない状態で両柄44,45を互いに閉じて保管することができる。
【0039】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 第1実施形態においては、手のサイズや爪のサイズなどの使用者の身体的条件に応じて、使用状態Qで上刃体5に対する押圧操作てこ4の離間距離Hや上下両刃体5,6の刃先5a,6aの間隔Sを変更して、押圧操作てこ4と上刃体5との相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態Q1,Q2にすることができるので、爪切りの使い勝手を良くすることができる。
【0040】
* 第2実施形態及びその別例においても、手のサイズや爪のサイズなどの使用者の身体的条件に応じて、使用状態Qで両柄44,45の離間距離Hや両刃体41,42の刃先41a,42aの間隔Sを変更して、両柄44,45の相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態Q1,Q2にすることができるので、爪切りの使い勝手を良くすることができる。
【0041】
* 第1実施形態においては、回動支持部12の付近で押圧操作てこ4にある既存の圧接部8の形態を変形させるだけの簡単な構成により、使用状態Qにおける押圧可能状態Q1,Q2を複数設定することができる。
【0042】
* 第2実施形態及びその別例においては、両柄44,45間にある既存の板ばね46を利用するだけの簡単な構成により、使用状態Qにおける押圧可能状態Q1,Q2を複数設定することができる。
【0043】
* 第1実施形態においては、不使用状態Pで押圧操作てこ4の操作摘み31が上向きになるので、操作摘み31を前進位置Fまたは後退位置Rに操作し易いが、使用状態Qで操作摘み31が下向きになって上刃体5と押圧操作てこ4との間に位置するので、押圧操作てこ4の押圧時に邪魔にならない。
【0044】
* 従来は手のサイズに応じて各種サイズの爪切りを使い分けることがあるが、第1実施形態や第2実施形態及びその別例においては、手のサイズが変わっても一つの爪切りだけを用意すればよい。
* 第1実施形態や第2実施形態及びその別例においては、両刃先5a,6a,41a,42aの間隔Sが大きい爪切りを手の小さい使用者例えば子供が利用すると、指先の肉を切るかもしれないという恐怖心を感じるおそれがあるが、両刃先5a,6a,41a,42aの間隔Sが小さい爪切りを利用することでそのおそれを少なくして使用者に安心感を与えることができる。また、親が子供の爪を切る場合も子供に安心感を与えることができる。
【0045】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 押圧操作てこ4に形成した変形部としての圧接部8に代えて、その変形部を上刃体5に設けてもよい。
【0046】
・ 押圧操作てこ4における操作摘み31の移動方式については、スライド方式以外に回動方式や押しボタン方式であってもよい。
・ 押圧操作てこ4の圧接部8において、可動腕部29の可動方式については、回動方式以外にスライド方式であってもよい。
【0047】
・ 押圧操作てこ4の圧接部8において、収容凹部25に対する可動腕部29の収容状態Aをなくし、収容凹部25に対する可動腕部29の突出状態Bのままで可動腕部29の突出寸法を変化させて形態を変更してもよい。
【0048】
・ 押圧操作てこ4の圧接部8の形態を変更して、使用状態Qで押圧可能状態Q1,Q2を複数(二以上)設定するばかりではなく、上下両刃先5a,6aを互いに当接させたままの状態で保持できるようにすれば、保管時に上下両刃先5a,6aが傷付きにくくなるとともに、爪飛散防止カバー2から爪の切りかすが不用意に落下しにくくなる。
【符号の説明】
【0049】
1…爪切り本体、3…刃体本体、4…操作部としての押圧操作てこ、5…上刃体、5a…上刃先、6…下刃体、6a…下刃先、8…変形部としての圧接部、9…固定部としての支持腕部、12…回動支持部、29…可動部としての可動腕部、40…刃体本体、41,42…刃体、41a,42a…刃先、43…操作部、44,45…柄、46…規制部材としての板ばね、Q…使用状態、Q1,Q2…押圧可能状態、S…上下両刃先の間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上刃先を有する上刃体と下刃先を有する下刃体とからなる刃体本体に対し回動支持部で回動可能に支持した押圧操作てこに設けた圧接部によりこの刃体本体を押圧して上刃先と下刃先とを互いに当接させることができる使用状態を取り得る爪切りにおいて、この使用状態で押圧操作てこと刃体本体との相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態を取り得ることを特徴とする爪切り。
【請求項2】
上刃先を有する上刃体と下刃先を有する下刃体とからなる刃体本体に対し回動支持部で回動可能に支持した押圧操作てこに設けた圧接部によりこの刃体本体を押圧して上刃先と下刃先とを互いに当接させることができる使用状態を取り得る爪切りにおいて、この使用状態で押圧操作てこと刃体本体との相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態を取り得るように押圧操作てこと刃体本体との間で作用する変更手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【請求項3】
前記変更手段は、固定部と可動部とを有する変形部を有し、その固定部に対し可動部を移動可能に支持して、その変形部を互いに異なる複数の形態に変更し得ることを特徴とする請求項2に記載の爪切り。
【請求項4】
前記変更手段の変形部は、上刃体上で上刃体を押圧し得るように押圧操作てこに設けた圧接部であって、その圧接部を互いに異なる形態に変更して、使用状態で押圧操作てこと上刃体との相対位置関係を互いに相違させた複数の押圧可能状態を取り得ることを特徴とする請求項3に記載の爪切り。
【請求項5】
前記押圧操作てこは上刃体上で上刃体を押圧し、この押圧操作てこの基端部が前記回動支持部で回動可能に支持され、この回動支持部から延びるこの押圧操作てこの先端部が上刃体に対しなす位置を互いに異なるように変更して、使用状態で複数の押圧可能状態を取り得ることを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【請求項6】
刃先を有する両刃体からなる刃体本体を操作部で押圧して両刃体の刃先を互いに当接させることができる使用状態を取り得る爪切りにおいて、その使用状態で両刃体の刃先の間隔を互いに相違させた複数の押圧可能状態を取り得ることを特徴とする爪切り。
【請求項7】
上刃先を有する上刃体と下刃先を有する下刃体とからなる刃体本体に対し回動支持部で回動可能に支持した押圧操作てこに設けた圧接部によりこの刃体本体を押圧して上刃先と下刃先とを互いに当接させることができる使用状態を取り得る爪切りにおいて、その使用状態で上刃体の上刃先と下刃体の下刃先との間隔を互いに相違させた複数の押圧可能状態を取り得ることを特徴とする爪切り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−172573(P2010−172573A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20195(P2009−20195)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)