説明

爪切り

【解決手段】刃体18と歯車列と可動操作部14とを上下両側支持板2,3間の収容室で先端部側から基端部側にわたり長手方向Xへ並べ、可動操作部14を上下両側支持板2,3間の収容室から幅方向Yの両側で外方に突出させている。可動操作部14の回動操作を歯車列により刃体18の回動として伝達することができる。
【効果】爪を切り易くするために刃体18の上下両側刃先19a,20aの向きの変更を行い易くして使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対向する両刃先を互いに接近離間し得る刃体を支持体に対し回動可能に支持して刃体の両刃先の向きを変更し得る爪切りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示された爪切りでは、支持体の上下両支持板間に刃体を回動可能に支持してこの刃体の両刃先の向きを変更することにより、爪を切り易くして使い勝手を良くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−169227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された爪切りにおいて、両刃先の向きを変更する際には、刃体の周辺に入れた指で刃体に触れて刃体を回動させる必要があるため、刃体に対する回動操作が行い難くなって使い勝手が悪くなっていた。
【0005】
この発明は、両刃先の向きを変更して爪を切り易くするために刃体を支持体に対し回動可能に支持した爪切りにおいて、刃体に対する回動操作を行い易くして使い勝手をより一層良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜8)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明において、相対向する両刃先19a,20aを互いに接近離間し得る刃体18を支持体1に対し回動可能に支持した爪切りは、この刃体18を回動させて両刃先19a,20aの向きを変更し得る操作手段14,23を備えている。請求項1の発明では、操作手段14,23により、刃体18に対する回動操作を行い易くして使い勝手を良くすることができる。
【0007】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記操作手段は、例えば刃体18に対し別に設けられ、可動操作部14と、この可動操作部14の動きを刃体18の回動として伝達する伝動部23とを備えている。請求項2の発明では、刃体18に対し可動操作部14を別に設けて指を刃体18に触れにくくした場合にも、可動操作部14を操作して刃体18を回動させることができる。
【0008】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記刃体18は前記支持体1の先端部側に支持され、前記可動操作部14はこの先端部に対し反対側になる支持体1の基端部側に支持され、前記伝動部23はこの刃体18と可動操作部14との間に介在されて例えば支持体1に支持されている。なお、伝動部23を刃体18と可動操作部14とに支持してもよい。請求項3の発明では、支持体1に対し刃体18と可動操作部14とを先端部側と基端部側とに並べてコンパクトに配置することができる。
【0009】
請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記支持体1は一対の支持板2,3とこの両支持板2,3間に設けられた収容室9とを有し、前記刃体18と可動操作部14と伝動部23とはこの両支持板2,3間の収容室9で支持体1に支持されている。請求項4の発明では、刃体18と可動操作部14と伝動部23とを両支持板2,3間の収容室9で支持体1に対しコンパクトに支持することができる。なお、刃体18や可動操作部14や伝動部23については、それらの全体が収容室9内に収容されていてもよいし、それらの一部が収容室9外へ突出していてもよい。
【0010】
請求項2または請求項3または請求項4の発明を前提とする請求項5の発明において、前記可動操作部14は、前記支持体1に対し回動可能に支持され、刃体18と可動操作部14とが並ぶ並設方向Xに対し直交する幅方向Yへ支持体1から外側に突出している。請求項5の発明では、支持体1に対し刃体18と可動操作部14とを並べてコンパクトに配置した際に、可動操作部14が支持体18から幅方向Yの外側に突出しているので、可動操作部14に対する回動操作を行い易い。
【0011】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項2から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第6の発明において、前記伝動部は歯車列23である。第6の発明では、複数の歯車24,26,28,29を並べた簡単な構造の歯車列23により伝動部を構成することができる。
【0012】
請求項2の発明を前提とする第7の発明において、前記支持体1は、一対の支持板2,3と、この両支持板2,3間に設けられた収容室9とを有し、前記刃体18は互いに開放された前記両支持板2,3の先端部側の収容室9で支持体1に支持され、前記可動操作部14はこの先端部に対し反対側になる両支持板2,3の基端部側の収容室9で支持体1に支持され、前記伝動部23はこの刃体18と可動操作部14との間に介在されてこの収容室9で支持体1に支持されている。例えば、一対の支持板2,3のうち少なくとも一方は、両支持板2,3を互いに接近離間し得る弾性を有している。第7の発明では、刃体18と可動操作部14と伝動部23とを両支持板2,3間の収容室9で支持体1に対しコンパクトに支持することができるとともに、両支持板2,3に対し刃体18と可動操作部14とを先端部側と基端部側とに並べてコンパクトに配置することができる。
【0013】
第7の発明を前提とする第8の発明において、前記刃体18は、両刃先19a,20aが両支持板2,3の先端部間の収容室9に収容される収容状態と、両刃先19a,20aが両支持板2,3の先端部間の収容室9から突出する突出状態とを取り得る複数の回動位置間で回動し得る。第8の発明では、両刃先19a,20aが収容状態を取り得るので、不使用時に刃先19a,20aを衣服などに引っ掛けたり刃先19a,20aを損傷したりすることをなくすことができる。
【0014】
第7の発明または第8の発明を前提とする第9の発明において、前記可動操作部14は前記支持体1に対し回動可能に支持されている。第9の発明では、可動操作部14に対する操作を行い易い。
【0015】
第9の発明を前提とする第10の発明において、前記可動操作部14は前記両支持板2,3間の収容室9から外側へ突出している。第10の発明では、可動操作部14に対する回動操作を行い易い。
【0016】
第10の発明を前提とする第11の発明において、前記両支持板2,3の基端部には刃体18と可動操作部14とが並ぶ並設方向Xに対し直交する幅方向Yの間隔W10が最も広い指当部10を設け、前記可動操作部14はその指当部10より先端側で両支持板2,3間の収容室9から外側へ突出している。第11の発明では、指当部10に指や手の平を当てながら可動操作部14を容易に回動操作することができる。
【0017】
請求項5の発明または第9〜11の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第12の発明において、前記可動操作部14の回動操作角度に対する刃体18の回動角度の伝動角度比を1以上に設定した。第12の発明では、可動操作部14の回動操作角度以上に刃体18が回動するので、刃体18の両刃先19a,20aの回動向きを変更し易い。
【0018】
請求項5の発明または第9〜12の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第13の発明において、前記可動操作部14が所定回動角度毎に回動して支持体1に係止し得るとともにその係止を解除し得るように、可動操作部14と支持体1との間に係脱部16,7を設けている。第13の発明では、可動操作部14の不用意な回動に伴う刃体18の不用意な回動を抑制することができる。
【0019】
請求項5の発明または第9〜13の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第14の発明において、前記可動操作部14の回動中心14aと前記刃体18の回動中心18aとを互いに平行にした場合、可動操作部14の回動操作向きと刃体18の回動向きとを互いに逆向きにするように伝動部23を設けた。また、請求項5の発明または第9〜13の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第15の発明において、前記可動操作部14の回動中心14aと前記刃体18の回動中心18aとを互いに平行にした場合、可動操作部14の回動操作向きと刃体18の回動向きとを互いに同じ向きにするように伝動部23を設けた。第14〜15の発明では、刃体18と可動操作部14とを同じ向きから見て可動操作部14を回動操作することができるので、刃体18の両刃先19a,20aの回動向きを変更し易い。
【0020】
請求項4の発明または第7〜15の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第16の発明において、前記刃体18は、一対の刃板部19,20の基端部を互いに一体に繋ぐ屈曲部21を有し、相対向する両刃先19a,20aのうち、一方の刃先19aを一方の刃板部19の先端部に設けるとともに、他方の刃先20aを他方の刃板部20の先端部に設けた。例えば、一対の刃板部19,20のうち少なくとも一方は、互いに接近離間し得る弾性を有している。第16の発明では、刃体18を容易に成形することができる。
【0021】
第16の発明を前提とする第17の発明において、前記両刃板部19,20の屈曲部21は両刃板部19,20を互いに接近離間し得る弾性を有し、両刃板部19,20の先端部と基端部とを結ぶ長手方向Xに対し直交する幅方向Yで両刃板部19,20の先端部側の幅寸法W19,W20より屈曲部21の幅寸法W21を小さくした。第17の発明では、弾性を有する屈曲部21で両刃板部19,20を撓ませ易いとともに、屈曲部21の弾性により、相対向する両刃先19a,20aを互いに離間させた非押圧状態に刃体18を復帰させることができる。
【0022】
第16の発明または第17の発明を前提とする第18の発明において、前記両刃板部19,20の先端部側と両支持板2,3の先端部側とに支軸33を挿通し、刃体18はこの支軸33に対し両支持板2,3間の収容室9で回動可能に支持され、この支軸33の一端部には一方の支持板2の外側で押圧操作てこ34を支持するとともに、この支軸33の他端部を他方の支持板3の外側に係止し、この押圧操作てこ34により一方の支持板2及び一方の刃板部19を押圧して両刃先19a,20aを互いに接近し得るようにした。第18の発明では、刃体18の回動中心部として支軸33を兼用した簡単な構造にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、両刃先19a,20aの向きを変更して爪を切り易くするために刃体18を支持体1に対し回動可能に支持した爪切りにおいて、刃体18に対する回動操作を行い易くして使い勝手をより一層良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態にかかる爪切りを上方から見た分解斜視図である。
【図2】本実施形態にかかる爪切りを下方から見た分解斜視図である。
【図3】(a)は本実施形態にかかる爪切りにおいて刃体の突出状態を示す組付け斜視図であり、(b)は同じく部分組付け斜視図であり、(c)は本実施形態にかかる爪切りにおいて両刃先の収容状態を示す組付け斜視図である。
【図4】(a)は本実施形態にかかる爪切りにおいて刃体の突出状態を示す組付け平面図であり、(b)は同じく組付け底面図である。
【図5】(a)は本実施形態にかかる爪切りにおいて刃体の突出状態を示す組付け側面図であり、(b)は図4(a)のA−A線断面図であり、(c)は図4(a)のB−B線部分断面図である。
【図6】(a)は上記爪切りの刃体の別例を示す斜視図であり、(b)は同じく部分断面図である。
【図7】(a)は上記爪切りの刃体の別例を示す斜視図であり、(b)は同じく部分断面図である。
【図8】(a)は上記爪切りの刃体の別例を示す斜視図であり、(b)は同じく部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態にかかる爪切りについて図1〜5を参照して説明する。
図3(a)に示す支持体1は図1,2に示すようにプラスチック例えばガラス繊維強化ナイロン樹脂などにより成形された上側の支持板2と下側の支持板3とからなる。この上側支持板2及び下側支持板3の長手方向Xの前後両側になる先端部側(前側)とその先端部側に対し反対側になる基端部側(後側)とのうち、上側支持板2の基端部外周には突条重合部4が弧状に形成されているとともに、その突条重合部4に囲まれた基端部下側には長手方向Xに対し直交する幅方向Yの両側で一対の係止腕部5が下方に突設されている。下側支持板3の基端部外周には溝状重合部6が弧状に形成され、その溝状重合部6に囲まれた基端部上側には係止壁部7が形成されているとともにこの係止壁部7を挟む幅方向Yの両側で一対の係止凹部8が形成されている。図5(b)(c)に示すように、この上側支持板2の突条重合部4と下側支持板3の溝状重合部6とは上下方向Zで相対向して互いに嵌合されて重合され、この上側支持板2の両係止腕部5が下側支持板3の両係止凹部8に係入されて、図5(a)に示すように上側支持板2と下側支持板3とが互いに取着されている。上側支持板2の先端部と下側支持板3の先端部とは上下方向Zで互いに間隔をあけて相対向し、この上下両側支持板2,3間にはそれらの先端部から基端部にわたり収容室9が形成されて長手方向Xの前方と幅方向Yの両側へ開放されている。この上下両側支持板2,3は上下方向Zへ互いに接近離間し得る弾性を有している。
【0026】
前記上下両側支持板2,3の基端部には図4(a)(b)に示すように上下両側支持板2,3の先端部と基端部とを結ぶ長手方向Xに対し直交する幅方向Yの幅寸法W10(約25mm)が最も広い指当部10が形成されている。上側支持板2にはその指当部10より先端側で幅方向Yの両側に窪み11aを有する支持部11が形成され、その支持部11の下側には突条重合部4より先端側で支軸12の雄軸12aが形成されている。下側支持板3にはその指当部10より先端側で幅方向Yの両側に膨らみ13aを有する支持部13が形成され、その支持部13の上側には溝状重合部6より先端側で支軸12の雌軸12bが形成されている。上下両側支持板2,3が互いに重合された際に、上側支持板2の雄軸12aと下側支持板3の雌軸12bとが図5(b)に示すように互いに挿嵌されるとともに雄ねじ12cにより連結されて支軸12が上下両側支持板2,3間の収容室9で架設される。下側支持板3の下側には支持部13から先端部側にわたり爪やすり3aが凹所3bに埋め込まれて露出している。前記雄ねじ12cはこの爪やすり3aで隠される。
【0027】
図1,2に示す可動操作部14(操作手段)は、プラスチック例えばポリアセタール樹脂などにより略円板状に成形され、上側端面部と下側端面部との間で貫設された支持孔15と、外周部に周方向へ並設された多数の指当て凹部16と、上側端面部に周方向へ並設された多数の回動位置目印凹部17とを有している。この上側端面部には、この回動位置目印凹部17以外に、1,2,3・・・の番号や、後記の刃体18の回転方向を示す矢印や、赤、青、黄などの色による変化表示部を付してもよい。前記上下両側支持板2,3の支持部11,13間の収容室9に嵌め込まれた可動操作部14は、前記支軸12(雄軸12aと雌軸12bと雄ねじ12c)に対し可動操作部14の支持孔15を挿嵌した状態で、支軸12を中心に回動可能に支持され、上下両側支持板2,3の支持部11,13間の収容室9から幅方向Yの両側で外方へ突出している。この可動操作部14については、収容室9から幅方向Yの片側でのみ外方へ突出させてもよい。この可動操作部14の各指当て凹部16(係脱部)には前記下側支持板3の係止壁部7(係脱部)が可動操作部14の回動操作に伴い係脱可能に係止されている。
【0028】
図1,2に示す刃体18は、例えばステンレス鋼などにより成形され、上側の刃板部19と下側の刃板部20とからなる。この上下両側刃板部19,20の基端部が屈曲部21で互いに一体に繋がれている。上側刃板部19の先端部には上側の刃先19aが形成され、下側刃板部20の先端部には下側の刃先20aが上側刃先19aに相対向して形成されている。上下両側刃板部19,20には上下両側刃先19a,20aより基端側に支持孔22が相対向して形成されている。この上下両側刃板部19,20の屈曲部21は上下両側刃板部19,20を上下方向Zへ互いに接近離間し得る弾性を有し、上下両側刃板部19,20は屈曲部21から前方へ互いに平行に延びている。上下両側刃板部19,20の先端部と基端部とを結ぶ長手方向Xに対し直交する幅方向Yで上下両側刃板部19,20の先端部側の幅寸法W19,W20(約11mm)より屈曲部21の幅寸法W21(約5mm)が小さくなっている。
【0029】
図1,2に示す伝動部としての歯車列23(操作手段)は、前記可動操作部14の下側端面部に一体成形された平歯車24と、前記下側支持板3の上側に突設された軸部25に対し回動可能に挿嵌されてこの可動操作部14の平歯車24に噛み合う平歯車26と、この下側支持板3の上側に突設された軸部27に対し回動可能に挿嵌されてこの平歯車26に噛み合う平歯車28と、この平歯車28に噛み合う平歯車29とからなる。これらの平歯車24,26,28,29はプラスチック例えばポリアセタール樹脂などにより成形されている。前記下側刃板部20の支持孔22の両側に連通して係止孔22aが形成されているとともに、この平歯車29には支持孔30の両側で係止突部31が形成され、図3(b)に示すようにこの平歯車29が下側刃板部20の下側に重合された状態でこの両係止孔22aに両係止突部31が係入される。これらの平歯車24,26,28,29は下側支持板3の内側に隠される。
【0030】
前記上下両側支持板2,3の先端部側には支持孔32が形成されている。前記刃体18の上下両側刃板部19,20と平歯車29とはこの先端部間で収容室9に嵌め込まれ、上下両側支持板2,3の支持孔32と上下両側刃板部19,20の支持孔22と平歯車29の支持孔30とに鉄製の支軸33が下側支持板3の支持孔32側から挿通され、刃体18が平歯車29とともにこの支軸33に対し回動可能に支持されている。この刃体18の回動中心18aと前記可動操作部14の回動中心14aとは互いに平行に上下方向Zへ延びている。前記可動操作部14の上側端面部と下側端面部とは上下両側刃板部19,20間の範囲にある。
【0031】
この支軸33の下端部に形成された頭部33aは下側支持板3の下側に係止されて支軸33の上方への移動を阻止している。この支軸33の上端部は上側支持板2の上方へ突出し、この上端部には軸孔33bが形成されている。図1,2に示す押圧操作てこ34はプラスチック例えばガラス繊維強化ナイロン樹脂などにより成形され、その先端部には二股状の力点部35が形成され、この力点部35の内側に一対の突軸35aが相対向して形成されている。この押圧操作てこ34は上側支持板2の上側に載せられ、この押圧操作てこ34の力点部35の内側にこの支軸33の上端部が挿入されて、この上端部の軸孔33bに押圧操作てこ34の両突軸35aが回動可能に支持されている。このような組付け状態では、支持体1の上下両側支持板2,3と刃体18の上下両側刃板部19,20とはそれぞれ互いに最も離間した状態で静止している。
【0032】
この押圧操作てこ34は、図5(a)に示すように、上側支持板2の上側に寝かせた倒伏状態と、上下反転して上側支持板2の上側から斜め上方へ立ち上がる起立状態とを取る。この起立状態で押圧操作てこ34を下方へ押さえると、押圧操作てこ34の力点部35が上側支持板2を押圧するとともに、上側支持板2の支持孔32の外周壁部が上側刃板部19を押圧して、上下両側刃先19a,20aを互いに接近させる。支持孔32よりも前方にある上側支持板2の先端縁部で上側刃板部19を押圧してもよい。押圧操作てこ34に対する押圧を解除すると、上側支持板2及び上側刃板部19が弾性により非押圧状態に復帰して上下両側刃先19a,20aが互いに離間する。
【0033】
可動操作部14を回動操作すると、可動操作部14の各指当て凹部16が下側支持板3の係止壁部7から抵抗を受けながら順次所定回動角度毎に係脱され、その係脱に伴う抵抗が使用者の手指に操作感覚として伝わる。その回動操作により、前記歯車列23を介して刃体18が可動操作部14の回動操作向きに対し逆の回動向きに支軸33に対し回動して複数の回動位置を取り、上下両側刃先19a,20aの向きを変更することができる。それらの回動位置において、刃体18は、図3(c)に示すように上下両側刃先19a,20aが上下両側支持板2,3の先端部間の収容室9に収容される収容状態と、図3(a)に示すように上下両側刃先19a,20aがその収容室9から突出する突出状態とを取り得る。可動操作部14の回動操作角度に対する刃体18の回動角度の伝動角度比が1以上例えば約1.2〜2.0になるように歯車列23が設定されている。
【0034】
ちなみに、爪切りにおける長手方向Xの全長は約75mm、可動操作部14の直径(幅方向Yの寸法)は約26mm、可動操作部14の厚み(上下方向Zの寸法)は約7mmに設定されている。
【0035】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 可動操作部14の回動操作を歯車列23により刃体18の回動として伝達することができるので、刃体18に対し可動操作部14を別に設けて指を刃体18に触れにくくした場合にも、可動操作部14を回動操作して刃体18を回動させることができる。従って、上下両側刃先19a,20aの向きの変更を行い易くして使い勝手を良くすることができる。
【0036】
(2) 刃体18と歯車列23と可動操作部14とを上下両側支持板2,3間の収容室9で先端部側から基端部側にわたり長手方向X(並設方向)へ並べてコンパクトに配置することができる。
【0037】
(3) 可動操作部14が上下両側支持板2,3間の収容室9から幅方向Yの外側に突出しているので、可動操作部14に対する回動操作を行い易い。
(4) 上下両側刃板部19,20の先端部側と上下両側支持板2,3の先端部側とに挿通した支軸33に対し刃体18を収容室9で回動可能に支持し、支軸33の頭部33aを下側支持板3に係止するとともに、支軸33の上端部に支持した押圧操作てこ34により、上側支持板2及び上側刃板部19を押圧して上下両側刃先19a,20aを互いに接近し得るようにした。従って、刃体18の回動中心部として支軸33を兼用した簡単な構造にすることができる。
【0038】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 伝動部としては、歯車列23以外に、ベルトなどによる巻掛け伝動手段を採用してもよい。
【0039】
・ 歯車列23の平歯車24,26,28,29を省略し、平歯車29に代えて、刃体18とともに回動する可動操作部を設けてもよい。
・ 可動操作部14の回動操作向きと刃体18の回動向きとを互いに同じ向きにするように歯車列23を設けてもよい。
【0040】
・ 操作手段としては、支持体1に可動操作部をスライド可能に支持し、その可動操作部に対するスライド操作をラック及びピニオンなどを介して刃体18の回動として伝達してもよい。
【0041】
・ 支持体1としては上側支持板2を省略し、可動操作部14及び歯車列23を下側支持板3に支持するとともに、押圧操作てこ34を上側刃板部19上で支持してもよい。
・ 支持体1としては下側支持板3を省略し、可動操作部14及び歯車列23を上側支持板2に支持するとともに、押圧操作てこ34を上側刃板部19上で支持してもよい。
【0042】
・ 例えば上側支持板2の上側や下側支持板3の下側などの収容室9の外側で可動操作部14を支持体1に支持してもよい。
・ 押圧操作てこ34を可動操作部として兼用し、その押圧操作てこ34の動きを伝動部を介して刃体18の回動として伝達してもよい。
【0043】
・ 上下両側刃板部19,20間における幅方向Yの両側を爪飛散防止カバーで塞いでもよい。また、その爪飛散防止カバーを着脱可能にしてもよい。
・ 上下両側刃先19a,20aを長手方向Xへ互いにずらすことなく当接させるばかりでなく、上下両側刃先19a,20aを互いに当接させた状態でその上下両側刃先19a,20aを長手方向Xへ互いにずらしてもよい。例えば、上側刃先19aを下側刃先20aよりも後側へ0.01〜0.15mmずらして刃先19a,20aの劣化を防止することができる。
【0044】
・ 可動操作部14を上方から見た外形状を、十二角形などの多角形や星形や楕円形や矢印形などの異形状にしてもよい。
・ 刃体18や可動操作部14の回動に伴い、例えばLED電球などのライトを点灯させたり音楽を流したりすることができる電気回路を内蔵させてもよい。
【0045】
・ 可動操作部14を刃体18と機械的に連動させず、例えばスイッチをオンオフするごとに、例えば押しボタンスイッチを一回押すごとに、スイッチから電気的信号を送って刃体18を所定角度(例えば5度や10度や15度など)回動させるようにしてもよい。
【0046】
・ 図6(a)(b)に示すように、刃体18の上下両側刃板部19,20において、上下両側刃先19a,20aの付近で幅方向Yの両側から補強板部36を相対向して一体に屈曲させ、上下両側刃先19a,20aを互いに当接させた際にこの補強板部36により上下両側刃板部19,20の撓みを抑制して切れ味を維持するようにしてもよい。なお、上下両側刃板部19,20のうち一方にのみ同様な補強板部36を形成してもよい。
【0047】
・ 図7(a)(b)に示すように、刃体18の上側刃板部19において、上側刃先19aの付近に、上側刃板部19の下側で幅方向Yへ並ぶ複数の凸部37aと上側刃板部19の上側で幅方向Yへ並ぶ複数の凹部37bとを有する補強リブ37を形成してもよい。また、図8(a)(b)に示すように、刃体18の上側刃板部19において、上側刃先19aの付近に、上側刃板部19の下側で幅方向Yへ延びる凸条38aと上側刃板部19の上側で幅方向Yへ延びる凹条38bとを有する補強リブ38を形成してもよい。上下両側刃先19a,20aを互いに当接させた際に、それらの補強リブ37,38により上側刃板部19の撓みを抑制して切れ味を維持することができる。なお、同様な補強リブ37,38を刃体18の下側刃板部20にも形成してもよい。例えば、これらの補強リブ37,38はプレス加工により刃体18と一体成形する。
【符号の説明】
【0048】
1…支持体、2…上側支持板、3…下側支持板、9…収容室、14…可動操作部(操作手段)、18…刃体、19…上側刃板部、19a…上側刃先、20…下側刃板部、20a…下側刃先、23…伝動部としての歯車列(操作手段)、Y…幅方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体には相対向する両刃先を互いに接近離間し得る刃体を回動可能に支持した爪切りにおいて、この刃体を回動させて両刃先の向きを変更し得る操作手段を備えたことを特徴とする爪切り。
【請求項2】
前記操作手段は、可動操作部と、この可動操作部の動きを刃体の回動として伝達する伝動部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【請求項3】
前記刃体は前記支持体の先端部側に支持され、前記可動操作部はこの先端部に対し反対側になる支持体の基端部側に支持され、前記伝動部はこの刃体と可動操作部との間に介在されていることを特徴とする請求項2に記載の爪切り。
【請求項4】
前記支持体は一対の支持板とこの両支持板間に設けられた収容室とを有し、前記刃体と可動操作部と伝動部とはこの両支持板間の収容室で支持体に支持されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の爪切り。
【請求項5】
前記可動操作部は、前記支持体に対し回動可能に支持され、刃体と可動操作部とが並ぶ並設方向に対し直交する幅方向へ支持体から外側に突出していることを特徴とする請求項2または請求項3または請求項4に記載の爪切り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−200577(P2011−200577A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72756(P2010−72756)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)